トークンやNFT、DeFi、DAOといったブロックチェーン事業を本番リリースする前に、スマートコントラクトに脆弱性が残っていないか不安を感じていませんか。一度デプロイしたコントラクトは基本的に修正できず、わずかな実装ミスが資金の流出やサービス停止に直結します。
そこで多くの事業者が、第三者にコードを検証してもらうスマートコントラクト監査を導入しています。ところが監査サービスは国内外に数多く存在し、監査手法や対応チェーン、料金体系もさまざまで、どの会社に何をいくらで頼めばよいのか判断が難しいのが実情です。
本記事では、スマートコントラクト監査サービス11社を、監査手法・対応チェーン・料金相場・監査実績・日本語対応の有無といった軸で比較・解説します。国内で日本語対応を受けられるサービスと海外のグローバル監査ファームを横並びで整理し、自社の規模や用途に合った依頼先を選ぶための検討材料としてご活用ください。
また、自社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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スマートコントラクト監査とは
スマートコントラクト監査とは、ブロックチェーン上で動作するスマートコントラクトのソースコードを、第三者の専門家が検証し、脆弱性やロジックの不備を洗い出す作業です。監査の結果は監査レポートとしてまとめられ、開発者は指摘された問題を修正してから本番環境へデプロイします。
スマートコントラクトが一般的なソフトウェアと異なるのは、デプロイ後のコードが原則として書き換えられず、コードと扱う資産がそのまま公開される点です。この性質が監査の役割を大きくしていますが、その理由は次の章で詳しく見ていきます。
監査では、自動解析ツールによるスキャンと、監査人がコードを一行ずつ読み込むマニュアルレビューを組み合わせ、既知の攻撃パターンに対する耐性や、仕様どおりに資金が移動するかを確認します。ここからは、監査が主な検証対象とする脆弱性の種類を見ていきます。
スマートコントラクトの主な脆弱性
スマートコントラクトの脆弱性は、プログラムの書き方に起因するものが中心です。代表的なものとして、次のような種類が知られています。
- リエントランシー(再入攻撃):送金処理の途中で、攻撃者のコントラクトから同じ関数を繰り返し呼び出し、残高の更新前に何度も引き出しを実行する攻撃です。The DAO事件の原因となったことで広く知られています。
- 整数オーバーフロー/アンダーフロー:計算結果が扱える数値の上限や下限を超え、意図しない値に変わってしまう不具合です。残高やトークン発行量の計算で悪用されると、資産の水増しにつながります。
- アクセス制御の不備:本来は管理者しか呼び出せないはずの関数に、権限チェックが抜けている状態です。第三者が資金の引き出しや設定変更を実行できてしまいます。
- 価格オラクルの操作:外部から取得する価格情報を一時的に歪め、担保評価や交換レートを不正に有利にする攻撃です。DeFiプロトコルで被害が目立ちます。
- ロジック・仕様の不備:文法的には正しくても、設計意図とコードの挙動がずれているケースです。自動ツールでは検出しにくく、監査人による仕様との突き合わせが有効です。
これらのうち、リエントランシーや整数演算の不具合は自動解析ツールが得意とする領域ですが、仕様との食い違いや複数コントラクトをまたぐ複雑な攻撃は、経験を積んだ監査人による読み込みでなければ見つけにくいとされます。監査サービスを選ぶ際に監査手法が重要になるのは、このためです。
スマートコントラクト監査が必要な理由
スマートコントラクト監査が本番リリース前の前提とされるようになった背景には、修正できないコードに資産が直接ひも付くという構造と、過去に繰り返されてきた大規模な資金流出があります。ここでは、監査の必要性を過去の事例から確認します。
スマートコントラクトの不具合は、通常のシステム障害と違い、そのまま資産の喪失に直結します。一度攻撃を受けて資金が流出すると取引は取り消せず回収は極めて困難で、コードが公開されているため攻撃者は脆弱性を見つけ次第すぐに悪用できます。開発チーム内のレビューだけでは見落としが避けられないことから、第三者の視点でコードを検証する監査の役割が重視されています。
過去の主なハッキング事例と被害額
スマートコントラクトの脆弱性を突いた攻撃は、これまでに何度も大きな被害を生んできました。代表的な事例を挙げます。
- The DAO(2016年):リエントランシーの脆弱性を突かれ、約360万ETH(当時の時価で数千万ドル規模)が不正に引き出されました。イーサリアムがハードフォークで対応する事態となり、スマートコントラクトの安全性が広く問われる契機になりました。
- Wormhole(2022年):ブロックチェーン間で資産を橋渡しするブリッジの署名検証に不備があり、約12万ETH(当時の時価で約3.2億ドル相当)が流出しました。クロスチェーン領域の監査の重要性を示す事例として知られています。
個別の事故だけでなく、被害は業界全体で続いています。セキュリティ企業 CertiK の年次レポート「Hack3d: The Web3 Security Report 2024」によると、2024年の暗号資産関連の被害総額は約23.6億ドルに達しました。件数は760件で、前年比約31.6%増でした。被害の多くはフィッシングや秘密鍵の漏えいによるものですが、スマートコントラクトの脆弱性を突いた攻撃も被害要因として残っており、デプロイ前にコード自体を第三者が検証する需要は続いています。
これらの事故は、いずれもデプロイ前の第三者検証で発見しうる種類の脆弱性が原因でした。被害額の大きさは、監査にかけるコストが、事故が起きた場合の損失に比べて小さいことを示しています。各事故の詳細は下記の出典を参照してください。
出典・参考資料(3件)
スマートコントラクト監査は、ブロックチェーン事業を狙う攻撃への対策の一つにすぎません。取引のモニタリングやウォレット・鍵の保護まで含めて全体像から守り方を整理したい場合は、以下の記事で主な攻撃手法と、監査を含む対策サービスの選び方をタイプ別に解説しています。
ブロックチェーンセキュリティとは?主な攻撃・脆弱性と対策サービスの選び方を解説
暗号資産やNFT、DeFiなどのブロックチェーンサービスを事業に取り入れるとき、スマートコントラクトの脆弱性を突かれて資産が流出したり、不正な取引で被害を受けたりしないか、不安を感じていませんか。ブロックチェーンは「改ざんに強い」と言われる…
スマートコントラクト監査サービスの選び方
監査サービスは、監査手法や対応する技術、実績、拠点によって性格が大きく異なります。比較表を読む前に、自社の基準でサービスを評価できるよう、押さえておきたい選定軸を整理します。
監査手法の違い(マニュアル・自動解析・形式検証・バグバウンティ)
監査の手法は一つではなく、複数の方法を組み合わせるのが一般的です。それぞれの特性を理解しておくと、サービスの説明を読み解きやすくなります。

- マニュアル監査:監査人がコードを読み込み、仕様との整合やロジックの不備を確認します。自動ツールでは見つけにくい設計上の欠陥に強く、監査の質は監査人の経験に左右されます。
- 自動解析(静的解析・ファジング):Slither や Mythril などのツールでコードを機械的に走査し、既知のパターンやテストケースで異常を検出します。網羅性と速度に優れ、マニュアル監査の前処理として使われます。
- 形式検証:コントラクトが満たすべき性質を数学的に定義し、その性質が常に成り立つことを証明する手法です。高い保証が得られる一方、対応できるサービスは限られます。
- バグバウンティ・監査コンペ:Immunefi のようなバグバウンティや、Code4rena のような監査コンテストで、多数のセキュリティ研究者に脆弱性の発見を委ねる方法です。第三者監査とは提供形態が異なり、監査ファームによる検証を補完する位置づけで使われます。
多くの監査サービスは、自動解析で網羅的に洗い出したうえで、監査人によるマニュアルレビューで仕様面を詰める二段構えを採っています。形式検証まで対応するか、監査後にバグバウンティを組み合わせるかは、扱う資産規模やプロトコルの複雑さに応じて検討するとよいでしょう。
本記事では、監査レポートを成果物とする第三者監査ファームを比較対象とし、バグバウンティや監査コンペはこれを補完する選択肢として位置づけています。
対応チェーン・開発言語への対応
監査を依頼できるかどうかは、まず自社の技術スタックにサービスが対応しているかで決まります。これは、いくら実績が豊富でも外せないハード条件です。
スマートコントラクトの開発言語は、イーサリアム系(EVM)で使われる Solidity が主流ですが、Solana では Rust、Aptos や Sui では Move が用いられます。監査ファームによって得意とする言語やチェーンは異なり、EVM系を中心とするところもあれば、複数のエコシステムを幅広くカバーするところもあります。
自社が使うチェーンと言語に監査実績があるかは、依頼前に確認しておきたいポイントです。特に複数チェーンにまたがるブリッジやクロスチェーンの仕組みを扱う場合は、そのチェーン間連携部分の監査経験があるかが重要になります。
監査実績・評判の見方
監査の質は外部から測りにくいため、実績や第三者からの評価が判断材料になります。ただし、数値の見せ方はサービスごとに異なるため、比べる際には注意が必要です。
各社が公表する監査件数や、監査対象が扱う資産の総額(保護資産額)は、そのファームの経験量を示す目安になります。ただし、集計対象や期間の取り方が各社で異なるため、数値の大小だけで単純に優劣を判断するのは適切ではありません。
あわせて、監査レポートを公開しているか、著名なプロトコルの監査を手がけているか、監査ツールを自社開発してオープンソースで公開しているかといった、検証可能な事実を確認すると、実力を見極めやすくなります。監査後に発見された脆弱性への対応方針が示されているかも、信頼性を測る一つの視点です。
国内サービスか、海外グローバルファームか
依頼先を国内サービスと海外ファームのどちらにするかは、監査の質だけでなく、コミュニケーションの取りやすさや契約のしやすさにも関わる判断です。
国内の監査サービスは、要件定義から監査レポートの説明、修正後の再監査までを日本語でやり取りでき、国内法人としての契約・請求に対応します。専門的な指摘の意図を正確にすり合わせやすく、監査のやり取りを日本語で進めたい事業者にとって負担の少ない選択肢です。
一方、海外のグローバル監査ファームは、世界的な監査実績や大規模プロトコルの監査経験が豊富で、DeFiなどで海外の投資家やユーザーからの信頼を得たい場合に選ばれます。英語でのやり取りが基本となるため、社内に対応できる体制があるか、あるいは日本のパートナー経由で依頼できるかを確認しておくとよいでしょう。
自社がどのタイプに適しているか判断が難しい場合は、以下の診断ツールで自社に合う候補を絞り込めます。続く比較表では、この国内・海外の区分でサービスを一覧にしています。
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【比較表】スマートコントラクト監査サービス11社の比較
ここからは、自社の課題や要件に合わせた客観的な比較・選定ができるよう、主要なスマートコントラクト監査サービス11社を、国内で日本語対応を受けられるサービスと海外のグローバル監査ファームに分けてご紹介します。監査手法・対応チェーン・料金の目安・監査実績・日本語対応の有無を横並びで確認できます。
表の見方として、対応言語や料金が「要問い合わせ」の欄は、各社が公式に数値や範囲を公開していないことを示します。特にSolana(Rust)やAptos・Sui(Move)など非EVM系での監査可否は、公式に明記のない社が多いため、依頼前に各社へ確認してください。監査実績の欄も、守秘契約により具体的なプロジェクト名を公開していない社があり、その場合は問い合わせ時に実績を確認できます。
国内で日本語対応を受けられる監査サービス
| サービス名 | Hi AUDIT | Bunzz Audit | Spize audit | KEKKAI Audit | GMO Flatt Security ブロックチェーン診断 | NRIセキュア ブロックチェーン診断 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社TECHFUND | Bunzz pte ltd | 株式会社テコテック | 株式会社KEKKAI | GMO Flatt Security株式会社 | NRIセキュアテクノロジーズ株式会社 |
| 監査手法 | 自動監査(ノーコード)+専門家によるマニュアル監査 | AI監査+専門監査人による検証(二段レポート) | 専門家による監査(海外監査企業との連携支援も可) | 専門家による手動レビュー中心(AI補助) | ホワイトボックス診断(ソースコード診断)中心の手動診断 | 静的解析(主)+動的解析(従)の組み合わせ |
| 対応チェーン・言語 | Solidity(SolidityScan連携で700種類以上の脆弱性を検出) | EVM系チェーン(Solidity) | NFT・DeFi・GameFi など Web3全般(対応言語は要問い合わせ) | スマートコントラクト・DApp のデプロイ前コード監査(対応言語は要問い合わせ) | スマートコントラクト・Web3サービス(対応言語は要問い合わせ) | Ethereum・Hyperledger Fabric/Solidity・Go・Java |
| 料金の目安 | 成果報酬型(発見された脆弱性の重大度・件数に応じて課金) | 21万円〜(1点)/42万円(2点) | 要問い合わせ(個別見積もり) | 要問い合わせ(個別見積もり) | 要問い合わせ(個別見積もり) | 要問い合わせ(個別見積もり) |
| 主な監査実績・特徴 | JPYC・Oasys・double jump.tokyo など国内Web3プロジェクトの監査実績 | 最短48時間・100種類以上の脆弱性パターンに対応。Futaba Protocol・LOCKON Finance など | 2018年からのブロックチェーン構築実績。設計〜発行〜監査を一貫依頼可 | リアルタイム保護製品で培ったオンチェーン分析の知見を監査に活用 | オンチェーンとWebアプリを一括診断。NFTサービスへの診断事例を公開 | 2017年提供開始。スマートコントラクト診断とアーキテクチャ評価の2メニュー |
| 日本語対応 | ● | ●日本発(日本語相談可) | ● | ● | ● | ● |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
海外のグローバル監査ファーム
| サービス名 | CertiK | OpenZeppelin | Trail of Bits | Quantstamp | ConsenSys Diligence |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | CertiK(米国) | Zeppelin Group Ltd(英国) | Trail of Bits, Inc.(米国) | Quantstamp, Inc.(米国) | Consensys Software Inc.(米国) |
| 監査手法 | 手動レビュー+AI自動レビュー+形式検証(オプション) | 静的解析+手動レビュー(各行を最低2名の研究者が確認) | マニュアルレビュー+自社製の自動解析ツール(Slither・Echidna 等) | マニュアルレビュー+仕様照合+シンボリック実行 など | AIエージェント(Chonky)の事前スキャン+ベテラン監査人の手動レビュー |
| 対応チェーン・言語 | Ethereum・BNB Chain・Polygon など多数のL1/主要スマートコントラクト言語 | Solidity・Cairo・Rust・Go・Noir/Ethereum・EVM系ほか | Ethereum/EVM・Solana・Move・Cosmos・Starknet・TON など9エコシステム | Ethereum・Solana・Polygon など55以上のエコシステム | Ethereum(EVM)中心/Solidity・Vyper |
| 料金の目安 | 要問い合わせ(非公開) | 要問い合わせ(非公開) | 要問い合わせ(1時間の無料技術相談枠あり) | 要問い合わせ(非公開) | 要問い合わせ(Enterprise向け個別見積もり) |
| 主な監査実績・特徴 | Binance・OKX・Ethereum Foundation など。監査後のオンチェーン監視まで自社製品でカバー | Uniswap・Aave・Coinbase など。OpenZeppelin Contracts の開発元 | Uniswap・MakerDAO・Compound など。監査レポートをGitHubで公開 | Aave・Curve・MakerDAO など。契約リスク保険 Chainproof も提供 | Uniswap V2・Gnosis Safe など初期DeFi。Mythril 等のOSSツールを自社開発 |
| 日本語対応 | △英語中心(日本語はパートナー経由) | △英語中心(Pacific Meta 経由の窓口あり) | ×公式に記載なし(英語) | △英語中心(国内体制は要確認) | △英語中心(Pacific Meta 経由の窓口あり) |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
スマートコントラクト監査サービスの個別紹介
比較表で取り上げたサービスについて、監査手法や対応範囲、実績を個別に見ていきます。まずは国内で日本語対応を受けられるサービスから紹介します。
国内で日本語対応を受けられる監査サービス
1. Hi AUDIT(株式会社TECHFUND)

Hi AUDITは、システム開発やスタートアップ支援を手がける株式会社TECHFUNDが提供するセキュリティ監査サービスです。スマートコントラクトをアップロードするだけでノーコードで実行できる自動監査と、専門家によるマニュアル監査の両方に対応します。
料金面では、監査で脆弱性が見つかった場合にのみ、その重大度と件数に応じて課金する成果報酬型を採用しています。JPYCやOasys、double jump.tokyoといった国内のWeb3プロジェクトの監査実績を公開しています。
2025年10月には、CredShields社のセキュリティスキャナー「SolidityScan」との連携を発表しました。これにより自動検出できる脆弱性を700種類以上へ拡張し、スマートコントラクトのセキュリティ標準「OWASP Smart Contract Security」に準拠した検出に対応しています。
スマートコントラクト監査を主力としつつ、Webアプリケーションなどの脆弱性診断にも対応領域を持ちます。
2. Bunzz Audit(Bunzz pte ltd)

AIによる脆弱性スキャンと専門監査人による検証を組み合わせるのが、日本発のスタートアップBunzz pte ltdが提供するBunzz Auditです。AIが100種類以上の脆弱性パターンを網羅的に洗い出したうえで専門監査人がその結果を検証する二段構成をとり、最短48時間で監査レポートを提供します。
対象はEVM系チェーンのSolidityコードです。料金はスマートコントラクト1点あたり21万円から、2点で42万円と公開されており、個別見積もりが多い監査サービスのなかで費用感を事前に把握しやすい点が特徴です。導入前の無料相談にも対応します。
3. Spize audit(株式会社テコテック)

証券取引管理システムの開発を主力とする株式会社テコテックは、Web3.0ソリューション群「Spizeシリーズ」の一メニューとしてSpize audit(スパイズオーディット)を提供しています。ブロックチェーンセキュリティの専門家が、NFT・DeFi・GameFiなどのスマートコントラクトを監査します。
2018年からブロックチェーンシステムの構築を手がけてきた実績と、暗号資産・取引所システムの開発で培った知見をもとに監査を行います。自社での監査に加え、CertiKなど海外のセキュリティ企業によるコード監査の支援にも対応できます。
トークン発行やNFT・ゲーム導入といったシリーズ内の他メニューと組み合わせ、設計から発行、監査までを一貫して依頼できる点も特徴です。料金は公開されておらず、監査範囲に応じた見積もりとなるため、資料請求やミーティングで確認するとよいでしょう。
4. KEKKAI Audit(株式会社KEKKAI)

デプロイ前のスマートコントラクトやDApp(ブロックチェーン上で動く分散型アプリ)のコードをレビューし、脆弱性チェックの結果とセキュリティスコアをレポートにまとめるのがKEKKAI Auditです。提供するのは、東京・虎ノ門に本社を置くWeb3セキュリティ専業の株式会社KEKKAIで、事業者向けブランド「KEKKAI LABS」の一環に位置づけられています。
同社は、危険な取引を署名前に検知して警告するブラウザ拡張機能などのリアルタイム保護製品を運用しており、そこで蓄積した24時間365日のオンチェーン分析の知見を監査に活かしているとしています。監査は専門家による手動レビューを中心に、AIを補助的に用いる構成です。
料金は監査範囲に応じた個別見積もりで、監査範囲を決めるためのコンサルティングや資料提供が用意されています。国内に拠点を置くため、要件のすり合わせから監査レポートの説明まで日本語で進められる点も、初めて監査を依頼する事業者には確認しておきたいところです。
5. ブロックチェーン診断(GMO Flatt Security株式会社)

GMO Flatt Security株式会社の「ブロックチェーン診断」は、ソースコードを解析するホワイトボックス診断を中核に据えた脆弱性診断サービスです。NFTや暗号資産、DeFi、メタバースといったWeb3関連サービスを対象とし、リエントランシーやフロントランニング、ロジックの不備などを検証します。
ブロックチェーン部分の診断と、それに接続するWebアプリケーション部分の診断を組み合わせられるため、オンチェーンとフロントエンド双方のリスクを一度に確認できる構成になっています。同社は2024年にGMOインターネットグループへ参画し、2025年1月に現在の商号へ変更しています。
料金は公式に定価が公開されておらず、対象の仕様や規模に応じた個別見積もりとなります。NFTサービスへの診断導入事例が公式に公開されており、詳しい費用や対応言語は問い合わせで確認する形です。
6. ブロックチェーン診断(NRIセキュアテクノロジーズ株式会社)

ブロックチェーン診断は、野村総合研究所グループのセキュリティ専業会社であるNRIセキュアテクノロジーズ株式会社が、2017年から提供している診断サービスです。スマートコントラクトのソースコードを対象とする「スマートコントラクト診断」と、ウォレット管理やシステム全体を評価する「アーキテクチャ評価」の2つのメニューで構成されています。
スマートコントラクト診断はEthereumやHyperledger Fabricに対応し、Solidity・Go・Javaで書かれたコードを、静的解析を主・動的解析を従として組み合わせて検証します。不正な引き出しやトランザクション順序の操作、NFTの不正な取得・鋳造など、ブロックチェーン固有の観点で脆弱性を洗い出します。
アーキテクチャ評価では、マルチシグやコールドウォレットといった対策から、Webアプリケーション・サーバー・ネットワークまでを多層防御の観点で見ます。料金は監査対象に応じた個別見積もりです。
海外のグローバル監査ファーム
続いて、世界的に監査実績を持つ海外のグローバル監査ファームを紹介します。いずれも英語でのやり取りが基本となるため、社内体制やパートナー経由での依頼可否をあわせて確認してください。
7. CertiK(CertiK Inc.)

米国ニューヨークに本社を置く CertiK(CertiK Inc.)は、2018年にイェール大学・コロンビア大学の計算機科学者が設立した Web3 セキュリティ企業です。スマートコントラクト監査に、契約が仕様どおり動作することを数学的に確かめる形式検証を組み込んだ点を特徴としています。
監査は、専門家による手動レビュー、AIを用いた自動レビュー、オプションの形式検証という3層で構成されます。監査後もオンチェーン監視の「Skynet」やコンプライアンス分析の「SkyInsights」まで自社製品でカバーし、Binance・OKX・Ethereum Foundation などの監査実績を公式サイトに掲げています。
一方で、日本法人や日本語版の公式サイトは確認できず、日本国内での問い合わせや日本語サポートは HashKey DX などのパートナー経由が中心です。監査料金は公開されておらず、案件ごとの個別見積もりとなります。
8. OpenZeppelin(Zeppelin Group Ltd)

スマートコントラクト開発で多くの開発者に利用されているオープンソースライブラリ「OpenZeppelin Contracts」の開発元が、OpenZeppelin(Zeppelin Group Ltd)です。2015年からスマートコントラクトセキュリティの領域で活動し、2017年から監査を提供しています(ライブラリと監査サービスは別プロダクトです)。
監査は、事前監査・セキュリティ監査・修正レビュー・継続的サポートの4段階で進み、監査対象コードの各行を最低2名の研究者が確認する体制をとっています。独自の静的解析ツール「Code Inspector」による事前スクリーニングや、ファジングなどのテスト技術も組み合わせます。
対応言語は Solidity のほか Cairo・Rust・Go・Noir に及び、Uniswap・Aave・Coinbase・Ethereum Foundation などの監査実績を公式サイトで開示しています。料金は公開されておらず、見積もりは問い合わせフォームから受け付けています。
やり取りは英語が基本ですが、2026年8月に日本市場向けで Pacific Meta株式会社と提携し、日本語での相談窓口を設けています。
9. Trail of Bits(Trail of Bits, Inc.)

Trail of Bits, Inc. は、スマートコントラクトのロジックだけでなく、ノードやブリッジ、ガバナンス、オフチェーンインフラまでを監査対象に含める方針を掲げる、2012年設立の米国の独立系セキュリティ企業です。ソフトウェアセキュリティ全般を手がけ、ブロックチェーン監査はその一領域という位置づけです。
静的解析ツールの Slither、ファジングツールの Echidna・Medusa など、他の監査会社や開発者にも利用されているオープンソースツールを自社で開発している点が特徴です。監査レポートを GitHub で継続的に公開しており、依頼前に過去の実績を確認できます。
対応エコシステムは Ethereum・EVM 系に加え、Solana、Aptos・Sui(Move)、Cosmos、Starknet、TON など9つに及びます。正式な監査は個別見積もりですが、1時間の技術相談枠「Book office hours」を無料で利用できます。日本語対応に関する公式の記載は確認できません。
10. Quantstamp(Quantstamp, Inc.)

監査後の継続監視やインシデント対応、さらに契約リスクを補償する保険まで手がけるのが、米国サンフランシスコ発の Quantstamp, Inc. です。2017年の創業以来、スマートコントラクト監査を中核に据えています。
監査手法は、マニュアルレビュー、仕様との照合、テストカバレッジ分析、シンボリック実行などを組み合わせるものです。自社がインキュベートした保険ブランド「Chainproof」(Sompo が出資、Munich Re が再保険)を通じて、監査に加えて契約リスクを補償する保険という選択肢も用意しています。
2019年には野村ホールディングスやデジタルガレージの出資を受けて日本法人を設立した経緯がありますが、現在の日本語対応や国内体制の稼働状況は公式サイトからは確認できません。監査料金は公開されておらず、依頼内容に応じた個別見積もりとなります。
11. ConsenSys Diligence(Consensys Software Inc.)

MetaMask や Infura を展開する Consensys Software Inc. のセキュリティ部門が、ConsenSys Diligence です。2017年から Ethereum 上のスマートコントラクト監査を手がけ、Uniswap V2 や Gnosis Safe など初期の代表的な DeFi プロジェクトの監査実績を持ちます。
監査は、10万件以上の脆弱性データで訓練したという独自のAIエージェント「Chonky」による事前スキャンと、ベテラン監査人による手動レビューを組み合わせる手法です。シンボリック実行ツールの Mythril や仕様記述ツールの Scribble など、開発者向けのオープンソースツールも自社で公開しています。
監査対象は Solidity・Vyper が中心で、フル監査の料金は個別見積もり(要問い合わせ)です。2026年5月には東京拠点の Pacific Meta株式会社と提携し、日本の機関投資家やブロックチェーン事業者向けの窓口を設けています。
スマートコントラクト監査の費用相場
スマートコントラクト監査の費用は、対象となるコードの規模や複雑さによって大きく変わるため、一律の相場を示しにくい領域です。ここでは、費用を左右する要因と、料金の考え方を整理します。
監査費用は、監査対象のコード行数、コントラクトの数や相互の依存関係、扱う金額の規模、監査手法(マニュアルのみか、形式検証まで含むか)、納期などの組み合わせで決まります。小規模なトークンコントラクトであれば数十万円台から依頼できるサービスもありますが、複数コントラクトが連携する大規模なDeFiプロトコルでは、数百万円から数千万円規模になることもあります。
海外のグローバル監査ファームの多くは料金を公開しておらず、個別見積もりとしています。国内サービスでは、成果報酬型や、監査規模に応じたパッケージ料金を提示するところもあります。正確な費用は、監査対象のコードと要件を伝えたうえで見積もりを取るのが確実です。
個別見積もりが多い一方で、料金を公開しているサービスもあります。1点あたり21万円からの定額型や、脆弱性が見つかった場合のみ費用が発生する成果報酬型など、依頼前に費用感をつかめる料金体系も提示されており、個別の金額は比較表の「料金の目安」で確認できます。
見積もりを取る際は、金額だけでなく再監査(修正後の再チェック)が含まれるか、追加費用が発生するかもあわせて確認しておくと、総額を把握しやすくなります。
監査依頼の流れと監査前の準備
初めて監査を依頼する場合、どのような流れで進むのか、事前に何を準備すればよいのかが分かりにくいものです。ここでは、依頼から再監査までの一般的な流れと、監査をスムーズに進めるための準備を解説します。

監査を依頼する前に準備すること
監査の精度と効率は、依頼側の準備に大きく左右されます。監査人がコードの意図を正確に理解できるほど、仕様と実装のずれを見つけやすくなります。
- 要件・仕様の明文化:コントラクトが何をするべきかを文書化します。仕様書があることで、監査人は「意図どおりに動いているか」を判断でき、ロジックの不備を発見しやすくなります。
- テストコードの整備:想定する正常系・異常系のテストを用意しておくと、監査対象の挙動が明確になり、監査人の理解が早まります。
- コードの確定と整理:監査の直前まで開発を続けると、監査対象がぶれてしまいます。監査に出すコードのバージョンを固定し、コメントや命名を整えておきます。
- 対象範囲の明確化:監査してほしいコントラクトと、対象外とする範囲を切り分けておくと、見積もりと監査の焦点が定まります。
監査レポートの見方と再監査
監査が完了すると、発見された問題をまとめた監査レポートが提出されます。レポートには通常、脆弱性ごとに深刻度(Critical・High・Medium・Low など)が付与され、問題の内容と修正の推奨事項が記載されます。
開発側は指摘に沿ってコードを修正し、修正が正しく反映されているかを監査人が再確認します。この再監査までを一連のプロセスとして提供するサービスが多く、初回の指摘対応が料金に含まれるか、別料金かはサービスによって異なります。
監査レポートを公開するかどうかも、外部への信頼を示すうえで検討ポイントになります。深刻度の高い指摘が残ったままデプロイすることは避け、Critical・High の項目は修正と再確認を済ませてからリリースするのが基本です。
まとめ
スマートコントラクト監査は、一度デプロイすると修正できないコードに資産が直接ひも付くという性質から、本番リリース前の重要な工程になっています。過去の大規模な資金流出事故の多くは、デプロイ前の第三者検証で発見しうる脆弱性が原因でした。
監査サービスを選ぶ際は、監査手法(マニュアル・自動解析・形式検証の組み合わせ)、自社の対応チェーン・開発言語への対応、監査実績や評判、そして国内で日本語対応を受けられるか海外の大手に頼むかを軸に検討します。
費用は監査対象の規模で大きく変わるため、要件を固めたうえで複数社から見積もりを取り、再監査の範囲まで含めて比較するのがよいでしょう。本記事の比較表と診断ツールを、自社に合う監査サービスを見つける手がかりとしてご活用ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. スマートコントラクト監査と脆弱性診断(セキュリティ診断)は何が違いますか?
スマートコントラクト監査と脆弱性診断に、明確な線引きはありません。どちらもスマートコントラクトのコードを検証して脆弱性を洗い出す点は共通しており、実務ではほぼ同じ意味で使われます。
強いて分ければ、「監査」は監査レポートを成果物とする第三者検証を、「診断」は既存のセキュリティ診断サービスの一メニューを指す傾向があります。ただし呼称にこだわるより、検証範囲と手法(自動解析・マニュアルレビュー・形式検証)で選ぶのが実務的です。
Q. スマートコントラクト監査に出す前に、ソースコードの秘密保持契約(NDA)は結べますか?
スマートコントラクト監査では、多くの監査会社が発注前のNDA(秘密保持契約)締結に対応しています。未公開・未デプロイのコードを預ける以上、秘密保持は依頼側から確認して問題ありません。
NDAの可否や条項の内容は会社ごとに異なるため、見積もり依頼や資料請求の段階で、秘密保持の範囲・監査レポートの取り扱い・監査後のコード削除の可否などをあわせて確認しておくと安心です。
Q. スマートコントラクト監査は複数社に相見積もりを取ってもよいですか?
スマートコントラクト監査で複数社から相見積もりを取ることは、まったく問題ありません。料金や監査範囲を非公開とする会社が多いため、複数の見積もりを比べることで費用感と対応範囲の妥当性を判断しやすくなります。
比較する際は、監査対象のコード範囲・監査手法・再監査の有無といった前提を各社で揃えることが大切です。前提がずれたまま金額だけを比べると、安く見えても監査範囲が狭い、といった見落としが生じます。
Q. スマートコントラクト監査を受けている間、開発は止めなければなりませんか?
スマートコントラクト監査の間、開発全体を止める必要はありませんが、監査に出したコードのバージョンは固定します。監査は特定時点のコードを対象とするため、監査中に対象コードを書き換えると検証が成立しなくなるためです。
新機能の開発や別モジュールの作業は、監査対象と切り分けた別ブランチで並行して進められます。ただし監査対象のコードに修正を加えた場合は、その部分をあらためて監査してもらう必要があります。
Q. コントラクトをアップデートするたびにスマートコントラクト監査は必要ですか?
スマートコントラクト監査は特定バージョンのコードに対する検証のため、ロジックを変更・アップグレードした部分は、その都度あらためて監査を受けるのが原則です。「監査済み」という事実は、変更後のコードには及びません。
アップグレード可能なプロキシ型のコントラクトや、仕様変更・機能追加を予定している場合は、変更範囲に絞った差分監査に対応できるかを依頼先の選定段階で確認しておくと、改修のたびの負担を抑えられます。
Q. スマートコントラクト監査を受けたことは、対外的にどう示せばよいですか?
スマートコントラクト監査を受けたことは、監査レポートの公開が最も分かりやすい示し方ですが、公開は義務ではありません。利用者や投資家への信頼につながる一方、修正前の指摘内容まで見えると悪用の糸口になり得るため、公開の範囲は慎重に判断します。
全文を公開しない場合でも、監査企業のポートフォリオへの掲載、監査バッジの表示、要約版レポートの提示といった方法で、監査を受けた事実を対外的に示せます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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