アルバイトやパートの応募が集まらない、採用してもすぐに辞めてしまう――そんな悩みの解決策として、働いた分の給与を給料日前に受け取れる「給与前払いサービス」を導入する企業が、飲食・小売・介護・物流・人材派遣などの業種を中心に増えています。2023年には賃金のデジタル払いも解禁され、選択肢はさらに広がりました。
一方で、サービスによって「前払いの原資を誰が用意するか」の仕組みが異なり、企業が負担する費用や従業員が支払う手数料、勤怠・給与システムとの連携範囲も大きく変わります。数多くのサービスから自社に合う1つを選ぶには、どの観点で比較すればよいのでしょうか。
本記事では、主要な給与前払いサービス15社を「立替払い型」「自社払い(デポジット)型」「両対応型」の3タイプに分けて比較します。各社が公開している範囲で従業員1回あたりの手数料や、連携できる勤怠・給与計算システムの具体名を横並びに整理し(金額が非公開のサービスは「要問い合わせ」と明記しています)、給与前払いの導入を検討する企業が、自社に合うサービスを判断できる材料をまとめました。
比較する15サービスは、それぞれ前払い原資の出し手によって費用構造が異なります。自社の資金余力を圧迫したくないか、従業員の手数料負担を抑えたいかによって適したタイプが変わるため、まずはタイプの違いから押さえていきます。
また、自社の資金余力や導入目的に合わせて適したタイプ・サービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
給与前払いサービスとは
給与前払いサービス(給与即時払い・給料前払いサービスとも呼ばれます)は、従業員がすでに働いた分の給与を、給料日を待たずに申請して受け取れるようにする、企業向けの福利厚生・人材確保支援サービスです。従業員はスマートフォンのアプリやWebから前払いを申請し、多くのサービスでは最短即日で指定口座やセブン銀行ATMなどから受け取れます。
企業が制度を自前で運用しようとすると、申請の受付や振込、給与計算との突き合わせといった事務が毎月発生します。給与前払いサービスは、この一連の事務を仕組み化・代行し、勤怠データと連携して前払い可能額を自動で算出する点に価値があります。導入する企業側の狙いは、前払いに対応できることによる採用時の訴求力向上と、従業員の定着率改善、そして前払い対応にかかる労務・経理の負担軽減です。
導入が広がる背景
給与前払いサービスの導入が広がっている背景には、人手不足の深刻化があります。アルバイト・パートの比率が高い業種では、応募数や定着率が採用コストに直結するため、「働いた分をすぐ受け取れる」ことを求人の訴求材料にしたい企業が増えています。
制度面の追い風もあります。2023年4月には労働基準法施行規則の改正により、資金移動業者の口座への賃金支払い(いわゆる賃金のデジタル払い)が解禁されました。これにより、銀行口座を介さずにアプリ上のウォレットへ前払い分を受け取る運用にも対応するサービスが登場し、受け取り方法の選択肢が広がっています。
給与前払いサービスの3つのタイプ(立替払い型・自社払い型・両対応型)
ここからは、給与前払いサービスを選ぶうえで最初に押さえたい「前払い原資を誰が用意するか」という分類軸を解説します。この違いによって、企業が負担する費用と従業員が支払う手数料のどちらを抑えられるかが変わります。大きく分けて、サービス会社が立て替える「立替払い型」、企業が原資を用意する「自社払い(デポジット)型」、両方を選べる「両対応型」の3つがあります。
立替払い型(サービス会社が前払い分を立て替える)
立替払い型は、従業員への前払い分をサービス提供会社が立て替えて支払い、企業は給料日にまとめて精算する方式です。企業が前払いの原資を事前に用意する必要がないため、自社の資金繰りを圧迫せずに導入できます。企業側の初期費用・月額費用を無料としているサービスも多く、コストを抑えて始めやすいのが特徴です。
その代わり、立て替えにかかるコストは従業員が支払う手数料に反映される傾向があり、前払いを申請するたびに従業員が数百円程度、または前払い額に対する一定料率の手数料を負担するのが一般的です。自社のキャッシュフローを増やさずに前払い制度を導入したい企業に向いています。
自社払い(デポジット)型(企業が原資を用意する)
自社払い型は、企業が前払いの原資となる資金をあらかじめ専用口座に預託し、その資金から従業員へ前払いを行う方式です。デポジット型・預託型とも呼ばれます。サービスによっては、企業の口座から従業員へ直接振り込む方式や、専用端末で現金を渡す方式もありますが、いずれも原資を企業が用意する点は共通です。
原資を企業が用意するため、従業員が負担する手数料を低く抑えやすく、賃金は使用者が支払うという原則に沿った運用がしやすい点が特徴です。
企業側にはシステム利用料として月額費用が発生することが多く、前払い件数に応じた従量料金がかかる場合もあります。ある程度の資金余力があり、従業員の手数料負担を抑えて利用率を高めたい企業に向いています。従業員の負担が軽いほど制度が実際に使われやすく、採用・定着への効果につながりやすいためです。
両対応型(原資方式を選べる)
両対応型は、立替払いと自社払い(デポジット)の両方に対応し、企業が原資方式を選べるサービスです。資金に余裕があるときは自社払いを選んで従業員の手数料負担を軽くし、資金繰りが厳しいときは立替払いに切り替えて一時的な負担を避ける、といった使い分けができます。
季節による繁閑差が大きい企業や、将来的に運用方針を変える可能性がある企業にとっては、方式を固定しない両対応型が選択肢になります。導入時にどちらの方式で始めるかは、次章の診断ツールや、後半の「資金繰りからの判断」も参考にしてください。
各タイプに該当する主なサービスは、以下の比較表と個別紹介で整理しています。まずは自社の状況に合うタイプを、診断ツールで確認してみましょう。
30秒でわかる|自社に合う給与前払いサービス診断
【比較表】給与前払いサービス比較一覧
ここからは、主要15サービスを前払い原資のタイプ・企業の費用・従業員の手数料・勤怠給与連携・振込スピードの観点で横並びに比較します。手数料や連携先が公開されていない項目は「要問い合わせ」と表記しています。サービス名をクリックすると、各社の個別紹介にジャンプできます。
| サービス名 | Airワーク 給与支払 | Advanced pay SAISON | 前払いできるくん | CRIA(クリア) | ほぼ日払い君 | デジペイメント | 前給 | JOBPAY | 速払いサービス | 楽天早トク給与 | エスプリプラス | THE給与 | 即給byGMO | Payme | PAYMO |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 前払い原資タイプ | 立替払い型 | 立替払い型 | 立替払い型 (立替型・クレジットカード型の2プラン) | 立替払い型 | 立替払い型 | 立替払い型(要確認) | 自社払い型 (給与支払制度/社内融資制度を選択) | 自社払い(デポジット)型 | 自社払い(直接払い)型 | 自社払い(デポジット)型 (楽天銀行法人口座から振込) | 自社払い(デポジット)型 | 自社払い(現金備え置き型) | 両対応型 (デポジット/立替/預託の3方式) | 両対応型 (立替/デポジット/クレジットカードの3プラン) | 両対応型 (立替払い/直接払い) |
| 企業の初期費用 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 要問い合わせ | 0円 | 0円 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ (専用端末の購入・リース) | 0円 | 0円 | 0円 |
| 企業の月額費用 | 0円 | 0円 (月額固定費なし・従量制) | 0円 | 0円 | 0円 | 要問い合わせ | 要問い合わせ (利用に応じた手数料のみ) | 要問い合わせ (利用人数などで変動) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ (月額固定費あり) | 要問い合わせ | 0円 |
| 従業員の手数料(1回あたり) | 110〜440円 (申請額×1.65%+110円、税込/負担者を選択可) | 要問い合わせ (セブン銀行ATM受取は手数料不要) | 申請額の6%+振込手数料210円(税込) ※立替型プラン。企業が一部負担も可 | 要問い合わせ | 495円 (固定額) | 要問い合わせ (振込手数料は標準で企業負担0円) | 要問い合わせ | 440円(税込) (引き出し額にかかわらず一律) | 要問い合わせ | 楽天銀行受取は0円 他行受取は銀行により異なる | 要問い合わせ (実額の振込手数料方式) | 0円 (引き出し手数料無料) | 要問い合わせ (企業が肩代わりする設定も可) | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 勤怠・給与システム連携 | freee人事労務・KING OF TIME・ジョブカン勤怠管理など | KING OF TIME・ジョブカン勤怠管理(自動連携) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | プロキャス(CSV連携) | CSVアップロード・API連携 (対応ソフト名は非公開) | 要問い合わせ (利用中のシステムに合わせ対応) | 自社「JOBPAY打刻」 (外部システム連携は要問い合わせ) | 要問い合わせ (基幹システムに合わせカスタム連携) | KING OF TIME(API連携)・AKASHI その他は無償の変換ツールでCSV対応 | 自社「給与Pro」など (他社製システムは要問い合わせ) | 勤怠データのCSV/テキスト出力 (連携先ソフト名は非公開) | COMPANY・KING OF TIME・ShiftMAX・Zeem人事給与など API・SFTP・CSV取込に対応 | ジョブカン勤怠管理・IEYASU(API連携) クラウドサイン(電子契約) | 要問い合わせ (公式に情報開示なし) |
| 振込スピード・受取方法 | 最短10分 賃金デジタル払い(COIN+)にも対応 | セブン銀行受取は24時間365日即時 セブン銀行ATMで現金受取(口座不要) | 最短即日(即時着金) | セブン銀行ATM・セブン-イレブンのレジで現金受取(口座不要) 銀行口座への振込も対応 | 最短10秒・24時間365日リアルタイム振込 (みずほ・GMOあおぞら・セブン銀行・PayPay銀行など) | 要問い合わせ (PC・スマホ・自動音声電話から申請) | デジタルウォレット「ララPayプラス」にチャージ セブン銀行ATMで出金 | 専用カードで全国のATMから引き出し(口座登録不要・24時間365日) 銀行口座へリアルタイム振込 | 自社口座から従業員口座へ直接振込 PayPay給与受取に対応 | 楽天銀行受取は即時 他行受取は翌日以降 | モアタイムシステム参加金融機関宛は24時間365日リアルタイム コンビニ・銀行ATMで引き出し | 事業所内の専用端末から生体認証で現金受取 (銀行振込を介さず・24時間稼働) | どの銀行口座宛でも24時間365日リアルタイム PayPay給与受取に対応 | デポジットプランはセブン銀行/GMOあおぞらネット銀行でリアルタイム振込 | セブン銀行リアルタイム振込で振込先を問わず24時間365日即日振込 |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※料金・原資タイプ・仕様は各サービスの公式サイトにもとづき2026年9月17日時点で作成しています。税込表記を含み、公開されていない項目は「要問い合わせ」と表記しました。内容は変更される場合があるため、最新情報は各社の公式情報をご確認ください。
タイプ別の給与前払いサービス個別紹介
比較表で全体像をつかんだうえで、ここからは各サービスの特徴・実績・向いている企業を、前払い原資のタイプ別に紹介します。自社が候補とするタイプの中から、実績や連携範囲を見比べてください。
立替払い型のサービス
サービス会社が前払い分を立て替え、企業の初期・月額費用を抑えやすいタイプです。自社の資金繰りを増やさずに導入したい企業向けの6サービスを紹介します。
1. Airワーク 給与支払(株式会社リクルート)

毎月の給与振込と、働いた分の即時受け取りを1つの画面で扱えるのが、株式会社リクルートが提供する「Airワーク 給与支払」です。従業員は勤怠実績が反映された範囲で24時間365日オンライン申請でき、最短10分で受け取れます。
前払い分はリクルートが立て替え、企業へは口座振替で後日精算する立替型のため、企業側で原資を準備する必要がありません。初期費用・月額費用はいずれも0円で、給与即払いの手数料は1回あたり「申請金額×1.65%+110円」(税込・最低110円、最高440円)です。この手数料を企業と従業員のどちらが負担するかを選べます。
freee人事労務やKING OF TIME、ジョブカン勤怠管理など複数の勤怠・人事システムと連携できます。2025年1月からは賃金のデジタル払いにも対応し、スマートフォンアプリ「エアワレット」上のCOIN+残高で受け取る選択肢も加わりました。
2. Advanced pay SAISON(株式会社セゾンパーソナルプラス)

クレジットカード大手のクレディセゾンが2017年に始め、現在はグループの株式会社セゾンパーソナルプラスが運営する給与前払いサービスです。企業の勤怠データと連携して、前払い可能額を自動で割り出します。
運営会社が前払い分を立て替え、企業は正規の給与支給日にまとめて精算する立替払い型で、専用口座の開設やデポジットは不要です。初期費用は0円、月額固定費はかからず、システム利用料は従量制です。従業員が負担する利用手数料の額とあわせて具体的な金額は公開されていないため、見積もりで確認するとよいでしょう。
受け取り手段が幅広いのも特徴です。セブン銀行の口座なら24時間365日いつでも即時に受け取れ、口座を持たない従業員はセブン銀行ATMで現金を受け取れます。勤怠管理のKING OF TIMEやジョブカン勤怠管理と自動連携し、LINEのトーク画面から申請することもできます。
3. 前払いできるくん(株式会社前払いできるくん)

「立替型プラン(審査あり)」と「クレジットカード型プラン(審査なし)」の2つから選べる給与前払いサービスです。正社員・パート・アルバイト・業務委託など、雇用形態を問わず利用できます。
運営は株式会社前払いできるくんで、2026年4月にネクステージグループへ事業が承継されました。企業側の導入費・月額費は0円で、デポジットの準備も不要です。立替型プランの従業員手数料は申請額の6%のシステム利用料に、1回あたり210円(税込)の振込手数料が加わり、申請額から差し引かれます。このシステム利用料は、企業側が一部または全部を負担する設定もできます。
申請アプリは日本語のほか、英語・中国語・ベトナム語に対応します。カスタマーサポートは電話(平日10:30〜17:30)で受け付けています。
4. CRIA(クリア、株式会社ペイメントフォー)

セブン銀行ATMやセブン-イレブンのレジで、銀行口座を使わずに前払い分を現金で受け取れる給与前払いサービスです。運営は株式会社ペイメントフォー(旧・株式会社メタップスペイメント)です。
前払い資金は運営会社が全額立て替え、企業へは後日まとめて請求する立替払い型で、企業側の資金準備は生じません。初期費用・月額費用はともに0円です。従業員が支払う手数料の具体額は公式サイトに記載がないため、資料請求で確認してください。
口座を持たない従業員でも、全国のセブン銀行ATM・セブン-イレブンのレジで現金を受け取れる点が、この仕組みの中心です。人材サービスの綜合キャリアグループ傘下2社では、導入後に応募からの就業率が10%以上向上したと発表されています。
5. ほぼ日払い君(株式会社BANQ)

申請から最短10秒での振り込みを掲げる、オンデマンド型の給与前払いサービスです。運営する株式会社BANQは、求人サイト「バイトル」を展開するdip株式会社(東証プライム上場)の子会社です。
都度の振込をBANQが立て替え、企業は給料日に一括で精算する立替方式のため、日々のキャッシュアウトは発生しません。初期費用・月額費用はいずれも無料で、従業員が支払う手数料は1回あたり495円の固定額です。前払いできるのは、支給想定額の最大70%までです。
みずほ銀行やGMOあおぞらネット銀行、セブン銀行、PayPay銀行など幅広い金融機関へ、24時間365日リアルタイムで振り込めます。勤怠管理サービス「プロキャス」とはCSV連携し、情報セキュリティの国際規格ISO/IEC 27001(ISMS)の認証取得を公式サイトで示しています。
6. デジペイメント(株式会社デジプレート)

PC・スマートフォンに加えて、自動音声電話からも前払いを申請できる給与前払いサービスです。兵庫県西宮市の株式会社デジプレートが、2015年から提供しています。
自動音声電話ではプッシュボタンの操作で申請でき、インターネットの操作に不慣れな従業員でも利用できます。既存の勤怠・給与システムはそのままに、勤怠実績のCSVアップロードやAPI連携で導入できます。
初期費用・月額費用はキャンペーン中として公開されておらず、想定される月間の利用回数に応じて設定されるため、金額は問い合わせで確認します。振込手数料は標準で企業側の負担が0円で、企業が負担する設定へ変更することもできます。従業員向けのサポートセンター運用を代行する有償オプションも用意されています。
自社払い(デポジット)型のサービス
企業が原資を用意し、従業員の手数料負担を抑えやすいタイプです。制度の利用率を高めて定着効果を狙いたい企業向けの6サービスを紹介します。
7. 前給(きらぼしテック株式会社)

2005年に前身サービスが始まった老舗の給与前払いサービスで、現在は東京きらぼしフィナンシャルグループのきらぼしテック株式会社が運営しています。ビジネスモデル特許(特許第7784902号)を保有し、導入社数は累計2,000社以上、勤怠登録者数は70万人以上と公式サイトで示しています。
前給は、企業が「給与支払制度」または「社内融資制度」のいずれかを選んで導入する仕組みです。企業自身の資金・制度の範囲で前払いする方式で、外部の事業者が未確定の給与を立て替えるものではありません。企業側の初期費用は0円で、月額費用は公式サイトに具体額の記載がなく「利用に応じた手数料のみ」と案内されているため、金額は問い合わせで確認します。
受け取った資金はデジタルウォレット「ララPayプラス」にチャージでき、セブン銀行ATMでの出金や買い物に使えます。連携できる勤怠・人事システムについては「現在お使いのシステムに合わせて対応できる」と案内されるのみで、対応ソフトの具体名は公式サイトに明示されていないため、導入前に確認するとよいでしょう。
8. JOBPAY(株式会社JOBPAY)

専用の「JOBPAYカード」があれば、銀行口座を登録しなくても全国のATMから前払い分を引き出せます。この方式で特許を取得しているのが、株式会社JOBPAYの給与前払いサービス「JOBPAY」です。同社は2023年2月に株式会社キュリカから社名とサービス名(旧・CYURICA)を変更しました。
企業が前払いに使う資金を事前にJOBPAY社へ預け、その資金から従業員へ前払いする自社払い(デポジット)型です。従業員が負担する手数料は引き出し額にかかわらず1回440円(税込)の一律で、企業側の初期費用は0円です。企業の月額費用は利用人数などで変わるため、見積もりで確認してください。
カードは全国10万台以上のATMに対応し、24時間365日・事前申請なしで使えます。運営会社は情報セキュリティの国際規格ISO/IEC 27001:2022を取得し、資金移動業者(関東財務局長第00065号)として登録済みです。勤怠は自社提供の「JOBPAY打刻」と連携でき、他社の勤怠システムとの連携可否は問い合わせで確認します。
9. 速払いサービス(株式会社エーピーシーズ)

人材大手マイナビのグループ会社である株式会社エーピーシーズが、20年にわたり提供してきた給与前払いサービスです。導入企業数は600社、年間取引件数は275万件以上、利用者数は60万人超と、公式サイトが2026年9月時点の実績を示しています。
前払い分は導入企業の自社口座から従業員本人の口座へ直接振り込む自社払い(直接払い型)で、申請受付から金額計算・振込・問い合わせ対応までをエーピーシーズが業務委託の形で代行します。ISMS認証とプライバシーマークを取得済みです。
初期費用・月額費用・従業員手数料は公式サイトに具体額の記載がないため、要問い合わせです。申請アプリは日本語のほか英語・ベトナム語・ポルトガル語に対応し、有人窓口(平日9:00〜18:00)に加えチャットは24時間受け付けています。2025年1月にはPayPay給与受取を使ったデジタル払いにも対応しました。
10. 楽天早トク給与(楽天カード株式会社)

楽天カード株式会社が提供する「楽天早トク給与」は、受取口座に楽天銀行を指定すると特典がまとまって得られる点が分かりやすい特徴です。従業員はWeb上から24時間365日いつでも前払いを申請でき、企業は勤怠データを連携して運用します。
前払い給与は企業の楽天銀行法人口座から直接振り込まれる自社払い(デポジット)方式で、楽天カードが立て替えるわけではありません。そのため企業は原資を法人口座に用意しておく必要があります。従業員が楽天銀行で受け取れば振込手数料は0円・即時入金で、月3回まで1回5ポイントの楽天ポイントが付きます。他行受取は申請日の翌日以降の入金で、手数料は銀行によって異なります。
勤怠管理はKING OF TIMEとAPI連携し、AKASHIとも連携するほか、その他のシステムは無償の変換ツールを使ってCSVで取り込めます。企業向けの料金は現在の公式サイトに記載がなく要問い合わせで、従業員が負担する利用料は導入企業ごとに異なります。企業向けのコールセンターは平日・土日の9:30〜17:30(年末年始を除く)に対応します。
11. エスプリプラス(株式会社シスプロ)

勤務済みの給与を、モアタイムシステムに対応した金融機関宛なら24時間365日いつでもリアルタイムで受け取れる給与前払いサービスです。運営するのは、給与計算システムなどを手がける株式会社シスプロです。旧称「エスプリ」の後継として、振込の即時化に対応しました。
企業があらかじめセブン銀行口座へ前払い原資を入金し、その口座から従業員へ前払いする自社払い(デポジット型)で、金融事業者が立て替える方式ではありません。前払いできるのは働いた分の上限8割までで、受け取った資金はコンビニや銀行のATMからも引き出せます。
企業側のシステム利用料や従業員が負担する振込手数料は、公式のサービスページに金額の記載がなく、案内元によって表記に幅があります。正確な費用は資料請求で確認してください。連携は自社の給与計算・Web給与明細「給与Pro」などが案内されており、他社製の勤怠・給与システムとの連携可否は個別の問い合わせが必要です。
12. THE給与(株式会社照栄/株式会社ドラEVER)

銀行振込を介さず、事業所内に置いた専用端末から従業員が生体認証で現金を受け取る、現金端末型の給与前払いサービスです。開発元は株式会社照栄で、現行機種の販売・案内は株式会社ドラEVERが担っています。主に運送・物流・警備業界向けに展開しています。
多くのサービスが銀行振込やATM引き出しで前払いするのに対し、THE給与は企業が専用端末(自社ATM型)にあらかじめ現金を補充し、従業員が静脈認証などでその場から引き出す仕組みです。前払い代行業者を介さない自社払い型のため、立替や与信審査は生じず、従業員が支払う引き出し手数料は0円です。
同じ端末で静脈認証・顔認証による出退勤管理も行え、上位機種のTRCD-002では経費精算やアルコールチェックなどの機能も加わります。端末の購入・リース費用は搭載機能によって変わり、現行価格は公式サイトに記載がないため、問い合わせで確認します。
両対応型のサービス
立替払いと自社払いを状況に応じて選べるタイプです。運用方針を固定したくない企業向けの3サービスを紹介します。
13. 即給byGMO(GMOペイメントゲートウェイ株式会社)

三井住友銀行とさくら情報システムが2007年から手がけてきた前払い事務代行「即給」を土台に、GMOペイメントゲートウェイが決済・送金の仕組みを組み合わせて2021年に立ち上げた給与前払いサービスです。三井住友銀行との提携によって運営されています。
前払いの原資は、企業が自社資金を専用口座に用意するデポジット型、GMOペイメントゲートウェイが立て替える立替型、両者を併用する預託型の3方式から選べます。立替型は企業が事前に資金を準備する必要がなく最短1週間で導入でき、自社資金で賄うデポジット型は導入まで最短1ヶ月です。
従業員はどの銀行口座宛でも土日祝を含む24時間リアルタイムで受け取れ、PayPayでの給与受取にも対応します。KING OF TIMEなど勤怠・労務システムとの連携やAPI・SFTP取込を備え、導入は15,000社以上(2026年5月31日時点)に上ります。企業側の初期費用は0円で、月額費用と従業員の利用料は公式サイトに金額の記載がなく要問い合わせです。
14. Payme(株式会社ペイミー)

従業員がアプリから申請した前払い給与を、資金方式に応じて複数のプランで運用できるのが、株式会社ペイミーの「Payme」です。2017年の提供開始以来、導入企業は800社を超えています(2025年3月時点)。
用意されているのは、ペイミーが原資を立て替える立替プラン、企業がセブン銀行またはGMOあおぞらネット銀行の口座に事前入金するデポジットプラン、企業のクレジットカードで立て替えるクレジットカードプランの3つです。デポジットプランでは、これらの口座を介したリアルタイム振込に対応します。
勤怠管理のジョブカンやIEYASU、電子契約のクラウドサインと連携し、勤怠データの取込や雇用契約からの登録を自動化できます。運営元の株式会社ペイミーはISMS(ISO/IEC 27001)とプライバシーマークを取得しています。初期費用は無料で、月額費用と従業員の手数料は公式サイトに金額の掲載がないため個別の確認が必要です。
15. PAYMO(株式会社バイオン)

株式会社バイオンの法人向けサービス「PAYMO」は、正社員やパート・アルバイトの給与に加え、業務委託スタッフや協力会社への報酬前払いにも対応します。給与所得者と外部スタッフの両方を、1つの仕組みで前払いできます。
原資の方式は、バイオン側が前払い金を立て替える立替払い型と、企業の口座から利用者へ直接振り込む直接払い型の2つを軸に、トップページではデポジット型を加えた3プランとして案内されています。立替払い型は最短3日で導入でき、セブン銀行口座の開設を前提とする直接払い型は導入まで約1か月です。
セブン銀行のリアルタイム振込と連携し、振込先の銀行を問わず24時間365日の即日振込に対応します。企業側の初期費用・月額費用はいずれも0円です。従業員が負担する手数料は公式サイトに金額の記載がないため、導入時に確認が必要です。
立替払い型と自社払い型はどちらを選ぶ?資金繰りからの判断
タイプ別に各社を見たところで、自社はどちらの原資方式が合うのかを判断する視点を整理します。判断の軸になるのは、月間の前払い件数・金額の見込みと、その原資を自社で用意できる資金余力があるかどうかの2点です。
従業員数が多く、毎月の前払い申請額がまとまった規模になる場合、自社払い型ではその分の資金を常に専用口座へ用意し続ける必要があります。手元資金に余裕があり、従業員の手数料負担を抑えて利用率を上げたい企業は、自社払い型が向きます。手数料が低いほど従業員が使いやすく、採用・定着の効果が出やすいためです。
反対に、資金繰りに余裕をもたせたい企業や、まず小さく制度を試したい企業は、原資の準備が不要な立替払い型が無難です。企業側の初期・月額費用を無料としているサービスも多く、導入のハードルを下げられます。判断に迷う場合や、繁閑差で資金余力が変動する場合は、後から方式を切り替えられる両対応型を選んでおくと、運用しながら調整できます。
判断の目安は、月間の前払い申請額をおおよそ見積もることです。従業員数と、給料日前に前払いを使いそうな人の割合、1人あたりの平均申請額をかけ合わせると、毎月どれくらいの資金を用意し続ける必要があるかが見えてきます。その額を常時用意しても運転資金に支障がなければ自社払い型、申請額が読みにくい・手元資金を厚く保ちたいなら立替払い型、と月次の申請規模から逆算すると、方式選びで迷いにくくなります。
給与前払いサービスの選び方
ここからは、原資方式を絞り込んだうえで各社を比較する際の6つの選び方を解説します。自社の導入目的(採用強化・事務削減・従業員の負担軽減)に照らして、優先する観点を決めてください。
従業員が負担する手数料は誰が・いくらか
従業員が前払いを申請するたびに支払う手数料は、制度が実際に使われるかどうかを左右する重要な要素です。手数料の形は、1回あたり定額(数百円程度)のものと、前払い額に対する料率(数%)のものがあり、少額を頻繁に受け取る使い方では定額型が、まとまった額を受け取る使い方では料率型が割安になる場合があります。
従業員の負担が重いと利用率が伸びず、採用・定着への効果が出にくくなります。手数料を企業側が一部負担できるサービスもあるため、想定する利用頻度と負担の分担方針を踏まえて比較しましょう。
勤怠・給与計算システムと連携できるか
前払い可能額は勤怠実績にもとづいて算出されるため、自社が使っている勤怠管理・給与計算システムと連携できるかどうかが、担当者の事務負担を左右します。連携できれば勤怠データが自動で取り込まれ、前払い可能額の計算や給与との突き合わせを手作業で行う必要がなくなります。
連携方式にはAPI連携とCSVアップロードがあり、対応する勤怠・給与ソフトの具体名はサービスによって異なります。比較表の「勤怠・給与システム連携」列で、自社が使っているソフトに対応しているかを確認してください。対応ソフトが明記されていない場合は、CSVでの取り込みが可能かを含めて問い合わせるとよいでしょう。
そもそも自社の給与計算をこの機会にシステム化・見直したい場合は、連携のしやすさや対応する勤怠システムの範囲を製品ごとに比較した以下の記事も参考になります。
従業員が使いやすいアプリ・多言語対応か
前払いを申請するのは従業員自身のため、申請アプリの操作が分かりやすいかどうかも利用率に影響します。外国人スタッフが多い職場では、アプリやサポートが多言語に対応しているかも確認したいポイントです。
操作が複雑だったり、対応言語が限られていたりすると、制度を整えても使われないまま終わることがあります。従業員層に合った使いやすさを備えているかを、導入前のデモや無料相談で確かめておくと安心です。
申請から振込までのスピードと受け取り方法は自社に合うか
「すぐに受け取れる」ことを訴求材料にするなら、申請から入金までのスピードは重要です。モアタイムシステムに対応した金融機関宛なら24時間365日ほぼ即時に振り込めるサービスや、セブン銀行ATMで銀行口座を介さず現金を受け取れるサービスもあります。
従業員が銀行口座を持っていないケースがある職場では、ATMでの現金受け取りやデジタルマネーでの受け取りに対応しているかが判断材料になります。受け取り方法の選択肢が多いほど、幅広い従業員が使いやすくなります。
導入・運用のサポート体制は十分か
導入時の初期設定や従業員への周知、運用中の問い合わせ対応をどこまで支援してもらえるかも、担当者の負担に関わります。従業員からの問い合わせ窓口をサービス側が代行してくれる場合、労務担当が個別対応に追われずに済みます。
サポートの手段(電話・メール・チャット)や対応時間はサービスによって差があります。従業員が前払いを申請するのは夜間や休日のことも多いため、想定する利用シーンに合った窓口があるかを確認しましょう。
口座開設・資金準備の要否は許容できるか
自社払い(デポジット)型では、前払い原資を預ける専用口座(セブン銀行口座など)の開設や、原資の入金が必要になる場合があります。導入にあたって新たな口座開設や一定額の資金準備が発生するかは、事前に確認しておきたい点です。
立替払い型ではこうした資金準備が不要なことが多い一方、自社払い型では原資を回転させる運用が必要です。自社の経理体制で無理なく運用できる方式かどうかを、資金繰りの観点と合わせて判断してください。
給与前払いサービスの料金相場
ここでは、給与前払いサービスの費用感を、企業が負担するコストと従業員が負担する手数料に分けて整理します。金額はサービスや原資方式によって幅があり、非公開のものも少なくないため、正確な費用は比較表と各社の見積もりで確認してください。
企業が負担する初期費用・月額費用の目安
企業が負担する初期費用は、多くのサービスで無料としています。月額費用は、立替払い型では無料のサービスが目立つ一方、自社払い(デポジット)型ではシステム利用料として月額数千円から数万円程度、または前払い件数に応じた従量料金がかかる場合があります。
企業側の月額費用を公開せず「要問い合わせ」としているサービスも多いため、自社の従業員数や想定利用件数を伝えて見積もりを取ると、実際の負担額を把握できます。
従業員が負担する手数料の目安
従業員が前払い1回あたりに支払う手数料は、定額型ではおおむね数百円程度(サービスにより百円台から五百円台まで幅があります)、料率型では前払い額に対して数%程度が目安です。立替払い型は従業員の手数料がやや高め、自社払い型は低めに設定される傾向があります。
手数料の水準は制度の利用率に直結するため、料金相場は「安いほどよい」ではなく、自社の従業員がどの程度の頻度・金額で利用するかを想定して比較することが大切です。各社の具体的な手数料は比較表で確認できます。
給与前払いサービスを導入するメリット
給与前払いサービスの導入で企業が得られる効果を、採用・定着・事務負担の観点から整理します。
採用の応募数・定着率の改善につながる
「働いた分をすぐ受け取れる」ことは、アルバイト・パートの求職者にとって分かりやすい魅力です。求人票に前払い対応を記載することで、給与面での訴求力が高まり、応募数の増加が期待できます。急な出費に対応できる安心感は、既存従業員の定着にもつながります。
前払い対応の事務負担を削減できる
前払いの申請受付や振込、給与計算との突き合わせを自社で手作業で行うと、担当者に毎月の負担がかかります。サービスを使えば、勤怠データとの連携により前払い可能額の算出や振込が自動化され、労務・経理の作業を減らせます。従業員からの申請対応をサービス側の窓口に任せられる場合、問い合わせ対応の負担も軽くなります。
企業の追加負担を抑えて福利厚生を拡充できる
立替払い型を選べば、企業は前払い原資を用意せずに制度を導入でき、初期・月額費用が無料のサービスもあります。大きな追加コストをかけずに福利厚生を1つ増やせるため、採用競争力を高める手段として取り入れやすい点もメリットです。
給与前払いサービス導入・運用の注意点
導入効果を得るためには、事前に押さえておきたい注意点があります。デメリットと、導入後に利用率を高める工夫を整理します。
従業員の手数料負担で利用が伸びないことがある
従業員が支払う手数料が高いと、制度を用意しても実際には使われず、採用・定着への効果が出にくくなります。導入前に、自社の従業員が想定する利用頻度でどの程度の手数料負担になるかを試算し、必要に応じて企業側が手数料を一部負担する設計も検討しましょう。
自社払い型は資金繰りへの影響を見込む必要がある
自社払い(デポジット)型では、前払い原資を常に用意しておく必要があるため、月間の前払い額が大きいと資金繰りへの影響が生じます。給料日までの一時的な立て替えとはいえ、原資の回転を織り込んだ資金計画が必要です。資金余力に不安がある場合は、原資準備が不要な立替払い型を選ぶ判断もあります。
利用率を高めるには周知と使いやすさの工夫が要る
制度を導入しても、従業員に知られていなければ使われません。求人票や社内掲示、入社時の説明などで周知を徹底することが、効果を出す前提になります。あわせて、申請アプリの操作が分かりやすいか、外国人スタッフが多い職場なら多言語に対応しているかも、利用率を左右します。導入後は利用状況を確認し、周知の方法を見直していくとよいでしょう。
給与前払いをめぐる法制度
給与前払いサービスの導入を社内で検討・説明する際には、制度面の基礎を押さえておくと社内での検討や従業員への周知がスムーズになります。ここでは、労働基準法との関係、給与ファクタリングとの違い、貸金業規制との関係を、一次情報にもとづいて整理します。
労働基準法第25条(非常時払い)と給与前払いの関係
労働基準法(昭和22年法律第49号)第25条は、労働者が出産・疾病・災害などの費用に充てるために請求する場合、使用者は支払期日前でも、すでに働いた分の賃金を支払わなければならないと定めています。これは「非常時払い」と呼ばれ、給与前払いの法的な下地となる規定です。
使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。
出典:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第二十五条|e-Gov法令検索
条文が支払いを義務づけるのは、すでに働いた分の賃金(既往の労働に対する賃金)までです。まだ働いていない期間分の賃金は対象になりません。給与前払いサービスは、この非常時払いを含む前払い対応の事務を仕組み化・代行する位置づけであり、対象となるのはあくまで勤務済みの労働に対する賃金相当額です。
給与前払いと給与ファクタリングの違い
給与前払いと混同されやすいものに「給与ファクタリング」があります。給与前払いは、雇用主またはその委託を受けた事業者が、すでに働いた分の賃金を支払日前に立て替えて支給する仕組みです。一方、給与ファクタリングは、第三者の業者が個人(労働者)の賃金債権を買い取って金銭を交付し、その個人を通じて資金を回収するもので、金融庁は次のように、貸金業に該当すると明示しています。
「給与ファクタリング」などと称して、業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します。
出典:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
貸金業の登録を受けずにこうした取引を行う業者はヤミ金融であり、金融庁は、法外な利息や違法な取り立て、生活の破綻といった被害の危険性を注意喚起しています。企業が導入する給与前払いサービスは、こうした個人向けの給与ファクタリングとは仕組みも法的な位置づけも異なります。従業員に制度を案内する際は、両者の違いを正しく伝えることが、トラブルの予防につながります。
給与前払いサービスと貸金業規制の関係
企業向けの給与前払いサービスが貸金業に該当するかどうかについては、金融庁がグレーゾーン解消制度にもとづき見解を示しています。ただし、これは一定の前提条件を満たすスキームについての判断であり、すべての給与前払いサービスが無条件に貸金業に当たらないという意味ではありません。金融庁は、以下の前提の下で貸金業に該当しないと回答しています。
本サービスは従業員の勤怠実績に応じた賃金相当額を上限とした給与支払日までの極めて短期間の給与の前払いの立替えであって、導入企業の支払い能力を補完するための資金の立替えを行っているものではなく、手数料についても導入企業の信用力によらず一定に決められているとの前提の下では、導入企業又は従業員に対する信用供与とは言えず、また、導入企業においても、信用供与を期待しているとまでは言えないことから、貸金業法上の「貸付け」行為に該当せず、貸金業に該当しないものと考えられる。
出典:グレーゾーン解消制度に基づく回答(平成30年12月20日)|金融庁
ここで示された前提は、(1)賃金相当額を上限とすること、(2)給与支払日までの極めて短期間の立て替えであること、(3)導入企業の支払能力を補完する資金の立て替えではないこと、(4)手数料が導入企業の信用力によらず一定であること、の4点です。
回答には、これらの前提と相違し実質的に貸付けと認められる場合は「貸金業に該当する可能性が高い」とのただし書きも付されています。給与前払いサービスを選ぶ際は、こうした要件を満たす設計になっているかも確認の視点になります。
出典・参考資料は以下のとおりです。
出典・参考資料(5件)
まとめ
給与前払いサービスは、前払い原資を誰が用意するかによって「立替払い型」「自社払い(デポジット)型」「両対応型」に分かれ、企業の費用負担と従業員の手数料負担のどちらを抑えられるかが変わります。自社の資金余力を圧迫したくなければ立替払い型、従業員の負担を抑えて利用率を高めたければ自社払い型、方針を固定したくなければ両対応型が候補になります。
タイプを絞り込んだうえで、従業員の手数料、勤怠・給与システムとの連携、アプリの使いやすさ、振込スピード、サポート、資金準備の要否といった観点で各社を比較すると、自社に合うサービスを選びやすくなります。まずは気になるサービスの資料を取り寄せ、手数料や連携範囲を見比べて検討を進めましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 給与前払いサービスとは何ですか?
A. 給与前払いサービスとは、従業員がすでに働いた分の給与を、給料日を待たずに申請して受け取れるようにする企業向けのサービスです。従業員はスマートフォンのアプリやWebから前払いを申請し、多くのサービスでは最短即日で指定口座やセブン銀行ATMなどから受け取れます。企業にとっては、前払い対応の事務を仕組み化・代行し、採用力の向上や従業員の定着につなげる福利厚生の一つという位置づけです。
Q. 給与前払いサービスは立替払い型と自社払い型のどちらを選べばよいですか?
A. 給与前払いサービスは、自社の資金繰りを圧迫したくなければ立替払い型、従業員の手数料負担を抑えて利用率を高めたければ自社払い(デポジット)型が基本の選び方です。
立替払い型はサービス会社が前払い分を立て替えるため企業の初期・月額費用を抑えやすい反面、従業員が支払う手数料は高くなりやすく、自社払い型は企業が原資を用意する代わりに従業員負担を軽くできます。両方式を切り替えられる両対応型もあるため、自社の資金余力と導入目的に合わせて選ぶとよいでしょう。詳しくは本文の「立替払い型と自社払い型はどちらを選ぶ?」も参考にしてください。
Q. 給与前払いサービスの導入に企業のコストや従業員の手数料はどれくらいかかりますか?
A. 給与前払いサービスの費用は、企業側は初期費用が無料のサービスも多く月額数千円〜数万円程度、従業員側は前払い1回あたり数百円程度の手数料を負担するのが一般的です。
立替払い型は企業費用を無料にする代わりに従業員の手数料が高めになりやすく、自社払い型は企業に月額費用がかかる代わりに従業員負担を抑えやすい、という関係にあります。実際の料金は方式やサービスによって異なるため、資料で個別に確認することをおすすめします。
Q. 給与前払いは企業に義務づけられていますか?
A. 給与前払いのうち、労働基準法第25条が定める「非常時払い」については、従業員が出産・疾病・災害などの費用のために請求した場合、使用者はすでに働いた分の賃金を支払う義務があります。
ただし対象は勤務済みの労働に対する賃金に限られ、まだ働いていない期間分まで支払う義務はありません。給与前払いサービスは、この非常時払いを含む前払い対応の事務を仕組み化するものであり、日常的な前払いへの対応まで法律で一律に義務づけられているわけではありません。
Q. 給与前払いと給与ファクタリングは何が違いますか?
A. 給与前払いは雇用主やその委託を受けた事業者がすでに働いた分の賃金を立て替えて支給する仕組みで、第三者が労働者の賃金債権を買い取る給与ファクタリングとは仕組みも法的な位置づけも異なります。
金融庁は、業として賃金債権を買い取り資金を回収する給与ファクタリングは貸金業に該当するとの見解を示し、無登録業者による被害への注意喚起も行っています。企業が導入する給与前払いサービスは、こうした個人向けの給与ファクタリングとは別のものであり、従業員に案内する際は両者の違いを正しく伝えることがトラブルの予防につながります。
Q. 給与前払いサービスは勤怠・給与計算システムと連携できますか?
A. 給与前払いサービスの多くは、勤怠管理システムや給与計算システムと連携し、勤務実績にもとづく前払い可能額を自動で算出できます。連携によって前払い対応の事務負担を大きく減らせる一方、対応しているソフトや連携方式はサービスごとに異なります。自社で使っている勤怠・給与システムに対応しているか、どの範囲まで自動化できるかは、選定時に必ず確認しておきたいポイントです。
Q. 給与前払いサービスは賃金のデジタル払いに対応していますか?
A. 給与前払いサービスの中には、銀行口座を介さずにアプリ上のウォレットなどで前払い分を受け取れる、賃金のデジタル払いに対応したものもあります。2023年4月の労働基準法施行規則の改正で資金移動業者の口座への賃金支払いが解禁され、受け取り方法の選択肢が広がりました。対応状況はサービスによって異なるため、従業員のニーズに合う受け取り方法が用意されているかを確認するとよいでしょう。
Q. 中小企業でも給与前払いサービスを導入できますか?
A. 給与前払いサービスは、初期費用が無料で少人数から始められるサービスも多く、中小企業でも導入できます。とくに立替払い型は企業が前払いの原資を用意する必要がないため、資金余力が限られる企業でも始めやすい方式です。アルバイト・パート比率が高く採用や定着に課題を抱える企業ほど、求人の訴求力向上や離職防止といった効果を得やすい傾向があります。
法人向けサービスを課題別に探すならMCB FinTechカタログ
MCB FinTechカタログでは、決済・金融・バックオフィス領域の法人向けサービスを課題別に探し、気になるサービスの資料をまとめて請求できます。給与前払いサービスのほかの課題も、あわせてご確認ください。
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。










