低金利が続くなか、預金口座に積み上がった余剰資金をどう活かすか、頭を悩ませている経営者や財務担当の方は少なくありません。インフレと円安で現預金の実質的な価値が目減りし、本業とは別の収益源を確保したいという声も増えています。
一方で、法人の資産運用は個人の運用とは前提が異なります。使える税制、決算での扱い、守るべき優先順位が違うため、個人向けの「おすすめ」をそのまま持ち込むと判断を誤りかねません。どの運用手段が自社に合うのか、何から確認すればよいのか、迷いやすいところです。
本記事では、法人が選べる資産運用の手段を5つのタイプに整理し、主要なサービスを横並びで比較・解説します。個人とは違う税制・会計の前提、運用を始める前に押さえる鉄則、目的やリスク許容度に応じた選び方、ポートフォリオの配分例まで整理しました。自社の余剰資金に合った運用先を判断するための材料としてご活用ください。
また、運用をプロに任せる・実物資産や暗号資産に預ける先を、具体的なサービスまで絞り込みたい方に向けて、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
一括ダウンロードする
法人が今、資産運用に取り組む理由
手元の余剰資金をそのまま普通預金に置いておくことにも、実はコストがあります。ここでは、法人が資産運用を検討する主な背景を3つの観点から整理します。運用手段そのものの話に入る前に、なぜ運用が選択肢になるのかを短く押さえておきましょう。
インフレ・円安で目減りする現預金
物価が上昇する局面では、名目の残高が変わらなくても、現預金で買えるモノやサービスの量は減っていきます。円安が進めば、輸入コストや海外取引の負担も増します。預金金利が物価上昇率を下回る状況では、資金を動かさずに保有し続けること自体が、実質的な価値を少しずつ失う判断になりかねません。
資産運用は、こうした購買力の低下に対して、株式・債券・不動産など値動きや利回りの異なる資産に資金を振り向け、現預金一辺倒のリスクを分散する手段になります。
本業に次ぐ第2の収益源
本業の売上は、景気や取引先の状況、季節変動の影響を受けます。運用による利息・配当・分配金などのインカム(保有しているだけで得られる収益)は、本業とは異なる要因で動くため、収益の柱を複線化する役割を果たします。
設備投資や採用に回すまでに時間のある待機資金を、一定期間だけ運用に充てるという使い方もあります。事業のキャッシュフローを圧迫しない範囲であれば、遊んでいる資金に働いてもらう発想は現実的です。
損益通算で本業損失と相殺できる
法人には、個人のような所得区分(利子所得・配当所得・譲渡所得など)がありません。運用で生じた損益は本業の損益と同じ「所得」の中で計算されるため、本業が赤字の年でも運用益を取り込めますし、運用で損失が出れば本業の利益と相殺して課税所得を圧縮できます。個人の運用にはない法人特有の利点です(具体的な扱いは次章で整理します)。
個人とは違う、法人の資産運用の税制・会計
法人の資産運用を考えるうえで、個人の運用と最も大きく異なるのが税制と会計の扱いです。損益の計算方法、使える制度、決算での評価まで前提が違うため、ここを押さえずに運用を始めると、決算時に想定外の税負担が生じることがあります。実際の判断は顧問税理士と行うことを前提に、法人特有のポイントを整理します。

法人税率と損益通算・繰越控除10年
法人には所得区分がなく、本業と運用の損益を一本の所得で通算できます。運用で損失が出ても本業の利益と相殺でき、青色申告法人なら欠損金を原則10年繰り越せます。
個人が利子・配当・譲渡益を所得区分ごとに計算し、上場株式等の売却益や配当を申告分離課税(税率は所得税・住民税あわせて原則20.315%)で切り分けるのに対し、法人には所得区分がありません。法人税法は、各事業年度の所得を益金から損金を差し引いた一本の金額として計算すると定めています。
内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
出典:法人税法 第22条第1項|e-Gov法令検索
この一本計算により、本業で生じた損失と資産運用で生じた利益(またはその逆)を、同じ所得の中で相殺できます。運用の利子・売却益や、後述する期末の評価損益は、原則として益金・損金に算入されます。ただし配当には別段の定めがあります。国内株式などから受け取る配当等は「受取配当等の益金不算入」(法人税法第23条)の対象となり、株式の区分に応じ全額・50%相当・20%相当が益金に算入されません。
法人の所得には、法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税がかかります。資本金1億円以下の中小法人には所得の一定額まで軽減税率が設けられているなど、規模によって実効的な負担は変わります。
運用で損失が出た場合も、青色申告法人であれば欠損金を翌期以降に繰り越し、将来の所得と相殺できます(法人税法第57条第1項)。
繰越しの要件について、国税庁は「欠損金の繰越控除をする法人は、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人です」と説明しています。
繰越期間は、2018年(平成30年)4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金で原則10年です(それ以前に開始した事業年度分は9年)。控除限度は大法人が所得の50%ですが、中小法人等は所得の100%まで控除できます。
NISA・特定口座が使えない
NISAも源泉徴収ありの特定口座も法人名義では使えません。運用損益はすべて法人税の課税所得に取り込まれます。
個人の運用で活用されるNISA(少額投資非課税制度)やつみたて投資枠、源泉徴収ありの特定口座は、いずれも法人名義では利用できません。NISAの対象者について、国税庁のタックスアンサーは次のように定めています。
国税庁は、NISAの対象者を「18歳以上(口座開設の年の1月1日現在)の居住者等」としています。この居住者等とは個人を指すため、法人名義の口座ではNISAを利用できません。特定口座(源泉徴収あり)も同様に個人向けの制度です。
出典・参考資料(1件)
その結果、法人の運用損益は非課税制度で切り離すことができません。一般口座での取引として決算・申告で損益を計算し、法人税の課税所得に取り込むことになります。個人向けの「非課税で運用できる」という前提は、法人には当てはまらない点に注意が必要です。
決算での期末時価評価・為替換算
まだ売却していない含み損益でも、売買目的の有価証券の評価損益や外貨建て資産の為替差損益は、決算で課税所得に算入され得ます。
法人の運用では、まだ売却していない含み損益(評価損益)が決算の課税所得に影響することがあります。まず、短期的な売買を目的として保有する有価証券(売買目的有価証券)は、法人税法第61条の3により期末に時価評価し、含み損益を益金・損金に算入します。
対象は「売買目的有価証券」に限られます。一方、長期保有を目的とする有価証券(売買目的外)は原則として原価法で、期末の含み損益は課税に影響しません。すべての株式・投資信託の含み益が毎期課税されるわけではない点を、区分して理解しておく必要があります。
外貨建ての資産も、決算での扱いに注意が必要です。米ドル建て資産や外貨建てMMF(外貨建ての公社債投資信託)などのうち期末時換算法で換算するものは、法人税法第61条の9により、期末に円換算した金額と帳簿価額との差額(為替換算差額)を益金・損金に算入します。
対象は「期末時換算法により換算するもの」に限られ、資産の区分ごとに発生時換算法・期末時換算法のどちらを選定するかで、期末に為替差損益が生じるかどうかが変わります。
決算で為替差益が計上されると、実際に売却していなくても課税対象になり得ます。外貨建て資産を持つ場合は、換算方法の選定と期中のモニタリングが重要です。
また、投資信託の分配金や売却益も原則として法人の課税所得に含まれますが、商品によって取り扱いが異なります。具体的な処理は、保有する商品ごとに顧問税理士へ確認することをおすすめします。
運用を始める前に押さえる3つの鉄則と避けたい失敗・リスク
法人の資産運用は、個人の資産形成とは目的が異なります。会社の資金は事業を継続させるためのものであり、運用はあくまで余剰資金の活用です。ここでは、運用を始める前に押さえておきたい3つの鉄則と、陥りやすい失敗・内在するリスクを整理します。
鉄則1:本業の資金繰りを最優先する
運用は本業の資金繰りが安定していることが前提です。仕入れ・人件費・税金の支払い、借入の返済といった事業運営に必要な資金を運用に回してしまうと、いざというときに資金が拘束されて動かせず、黒字倒産のような事態にもつながりかねません。まず必要運転資金を確保し、それを超える部分だけを運用の対象とするのが基本です。
鉄則2:流動性を確保する
流動性とは、資産を必要なときにどれだけ早く現金化できるかを指します。運用資産の中に、すぐ引き出せるものと、換金までに時間がかかるものが混在している点を理解しておく必要があります。
たとえば預金は即時に近い形で引き出せますが、不動産や不動産クラウドファンディングは換金まで数週間から年単位を要することがあります。急な設備投資や資金需要に備え、運用資産の一部は流動性の高いものに配分し、全額を長期・低流動の資産に固定しないことが基本です。
鉄則3:余剰資金の範囲で運用する
運用に回す金額は、当面の事業運営に影響しない余剰資金の範囲にとどめます。目安の一つに「年商×売上総利益率×20%」といった概算で運用の上限額を仮置きし、そこから必要運転資金を差し引いて調整する方法があります。ただしこれはあくまで一般的な目安の一例で、確立された基準ではありません。事業の成長段階や資金需要に応じて水準を見直すことが望まれます。
よくある失敗パターン
行動面での失敗には、いくつか典型的なパターンがあります。1つ目は、出口戦略を決めずに始めることです。どの水準で利益を確定するか、どこまでの損失を許容するかを事前に決めていないと、含み損を抱えたまま塩漬けになりやすくなります。
2つ目は、節税を目的に運用商品を選んでしまうことです。税負担の軽減を主目的にすると、本来の運用リターンや流動性が二の次になり、結果的に非効率な資金配分になりがちです。3つ目は、購入後のモニタリング不足です。運用は買って終わりではなく、定期的に配分や損益を確認し、事業や市場の変化に応じて見直す前提で臨む必要があります。
元本割れ・流動性・想定外課税のリスク
運用そのものに内在するリスクも押さえておきます。まず、預金以外の多くの運用手段には元本割れの可能性があります。株式・投資信託・不動産・暗号資産はいずれも価格が変動し、購入額を下回ることがあります。
次に流動性のリスクです。換金に時間がかかる資産に資金を寄せすぎると、必要なときに現金化できません。
そして法人で特に見落とされやすいのが、想定外課税のリスクです。前章で見たとおり、売買目的有価証券の含み益・外貨建て資産の為替差益・市場暗号資産の評価益は、実際に売却していなくても決算で課税所得に算入され得ます。手元にキャッシュがないまま納税が生じることを避けるため、期中から評価損益を試算し、納税資金を見込んでおくことが欠かせません。
一括ダウンロードする
法人が選べる資産運用の5つのタイプ
法人が選べる運用手段は多岐にわたりますが、リスク許容度と運用目的で整理すると、大きく5つのタイプに分けられます。まず全体像を一覧で示し、その後にそれぞれのタイプを解説します。自社がどのタイプを軸にするかを考えながらご覧ください。

| タイプ | 代表的な運用手段 | 期待リターンの目安 | リスク・流動性 | 法人税務の主な留意点 | 該当する主なサービス |
|---|---|---|---|---|---|
| 元本重視の安定運用 | 預金・国内債券・米国債・外貨建てMMF・債券中心の投資信託 | 低め(インカム中心) | リスク低め/流動性は高め(預金は即時、債券は満期・中途換金) | 利子は益金算入。外貨建ては期末時換算法の選定により為替差損益が課税対象になり得る | —(金融機関の預金・債券商品) |
| バランス運用(安定+成長) | バランス型・分散型の投資信託、REIT、高配当株の一部、投資一任(ファンドラップ) | 中程度(分散で値動きを抑制) | リスク中程度/流動性は中程度 | 分配金・売却益は原則として課税所得に含まれる(商品により扱いが異なる) | ダイワファンドラップ・野村ファンドラップ・日興ファンドラップ |
| リターン重視の積極運用 | 国内外の株式、成長株、アクティブ型の投資信託 | 高め(価格変動が大きい) | リスク高め/売買の流動性は高いが価格変動が大きい | 売却益・評価損益(売買目的有価証券)は益金・損金算入。配当は受取配当等の益金不算入の別段の定めあり | —(証券会社の株式・投資信託) |
| 現物・実物資産 | 不動産投資、不動産クラウドファンディング、保障を兼ねる外貨建て生命保険 | 中〜高め(分配・値上がり益、案件による) | リスク中〜高め/流動性は低め(換金まで期間を要する) | 分配金・賃料収入は益金算入。生命保険は損金算入の可否が契約により異なる | COZUCHI・大家どっとこむ |
| 新しい選択肢(暗号資産の運用) | 暗号資産の保有・運用(トレジャリー/DAT)、ステーキング | 高め(価格変動が大きい) | リスク高め/流動性は銘柄・方式による | 市場暗号資産を自己の計算で保有すると原則として期末時価評価され評価損益が課税対象(法人税法第61条) | CRYPTO Maxi・ステーキングサービス |
この後の比較表・診断で具体的なサービス名まで絞り込めるのは、運用をプロに任せる・預ける3タイプです。具体的には、バランス運用(ファンドラップ)、現物・実物資産(不動産クラウドファンディング)、新しい選択肢(暗号資産の運用)が対象になります。
一方、元本重視の安定運用(預金・国内債券・米国債・外貨建てMMFなど)と、リターン重視の積極運用(自分で選ぶ国内外株式・投資信託)は、証券会社や銀行の口座を通じて自社で行います。始め方は本記事後半の「資産運用の相談先と始め方」で案内します。
ここからは、各タイプがどのような運用で、どんなリスク・リターン・流動性を持ち、法人税務ではどこに注意すべきか、どんな企業に向くかを順に解説します。
1. 元本重視の安定運用
元本の保全を最優先し、利息を中心にインカムを積み上げるタイプです。定期預金、国内債券、米国債、外貨建てMMF、債券中心の投資信託などが該当します。値動きが比較的小さく、預金や満期のある債券は流動性も確保しやすいのが特徴です。
期待リターンは低めですが、その分、元本割れのリスクを抑えられます。法人税務では受取利子が益金に算入され、外貨建て資産を持つ場合は期末の為替換算差損益に注意が必要です。運用に多くの時間を割けない企業や、近い将来に使う予定のある待機資金を短期で置いておきたい企業に向いています。
始め方は、ネット証券や都市銀行の法人口座を開設し、定期預金・個人向け国債や外貨建てMMFなどを自社で選ぶ形になります。銘柄の選定や管理を自社で担うため、手間とモニタリング体制が前提です。具体的な相談先は本記事後半の「相談先と始め方」を参照してください。
2. バランス運用(安定+成長)
安定性と成長性のバランスを取りながら、複数の資産に分散します。バランス型・分散型の投資信託、REIT(不動産投資信託)、高配当株の一部などに加え、運用の判断そのものを専門家に任せる投資一任サービス(ファンドラップ)もこのタイプに含まれます。株式・債券・不動産などに分散することで、値動きのぶれを一定程度抑えられます。
期待リターンは中程度で、流動性・リスクも中庸です。分配金や売却益は原則として法人の課税所得に含まれますが、商品によって扱いが異なります。運用に人手や専門知識を割きにくく、プロに任せて手間を抑えつつ分散したい企業に向いています。
3. リターン重視の積極運用
相対的に高いリターンを狙って、価格変動を受け入れる運用です。国内外の株式、成長株、アクティブ型の投資信託などが該当します。売買の流動性は高いものの、価格の振れ幅が大きく、元本割れの可能性も相応にあります。
短期売買を目的に保有する有価証券は、決算で期末時価評価され、含み損益が益金・損金に算入されます。配当については受取配当等の益金不算入という別段の定めがあります。運用のモニタリングに一定のリソースを割け、値動きを許容できる余剰資金がある企業に向いています。
始め方は、ネット証券や対面証券の法人口座を開設し、国内外の株式や投資信託を自社で選ぶ形になります。銘柄選定と管理を自社で担うため、手間とモニタリング体制が前提です。相談先は本記事後半の「相談先と始め方」を参照してください。
4. 現物・実物資産
株式や債券などの金融資産とは値動きの要因が異なる、実物資産に投資するタイプです。現物不動産への直接投資、1万円程度から少額で分散できる不動産クラウドファンディング、保障機能を兼ねた外貨建て生命保険などが該当します。賃料収入や分配金といったインカムを得つつ、金融市場とは違う分散効果を狙えます。
一方で、換金まで数週間から年単位を要することがあり、流動性は低めです。分配金・賃料収入は益金に算入され、生命保険は契約内容により損金算入の可否が変わります。すぐに使う予定のない資金を中長期で寝かせられ、実物資産で分散したい企業に向いています。
また、外貨建て生命保険は本記事では個別のサービスを扱いません。保障と運用を兼ねる商品のため、活用する場合は税務や保障設計の観点から、税理士などの相談先で検討してください。
5. 新しい選択肢(暗号資産の運用)
暗号資産を法人の運用対象に組み込む選択肢も広がりつつあります。企業が暗号資産を財務資産として保有・運用する暗号資産トレジャリー(DAT=Digital Asset Treasury)や、保有する暗号資産をブロックチェーンの検証作業に拠出して報酬を得るステーキングといった手段があります。
伝統的な資産にはない成長性を期待して組み入れる動きが広がりつつある一方で、価格変動が大きく、銘柄や方式によっては流動性も限られます。
税務面では特に注意が必要です。活発な市場が存在する暗号資産(市場暗号資産)を法人が自己の計算において保有していると、原則として期末に時価評価され、含み損益が課税所得に算入されます。
内国法人が期末時において短期売買商品等(時価法により評価した金額(以下この項において「時価評価金額」という。)をもつてその期末時における評価額とするものに限る。以下この項及び次項において同じ。)を有する場合(暗号資産にあつては、自己の計算において有する場合に限る。)には、当該短期売買商品等に係る評価益(略)又は評価損(略)は、第二十五条第一項(資産の評価益)又は第三十三条第一項(資産の評価損)の規定にかかわらず、その期末時の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
出典:法人税法 第61条第3項|e-Gov法令検索
2024年度(令和6年度)の税制改正で、法人が保有する暗号資産の期末評価は3つに区分されました。市場暗号資産で以下に当たらないものは時価法です。第三者が発行し譲渡制限が付された特定譲渡制限付暗号資産は時価法または原価法から選定し、自社が発行し継続して保有する特定自己発行暗号資産は原価法となります。この扱いは2024年(令和6年)4月1日以後に終了する事業年度から適用されます。
含み益が課税されると納税資金の確保が課題になります。暗号資産の運用は価格変動・流動性・期末時価評価課税のリスクを理解したうえで、余剰資金の範囲で慎重に検討する領域です。
出典・参考資料(1件)
暗号資産を運用する法人では、こうした期末評価や損益を決算までに正確に計算する必要があります。取引履歴の集約から法人決算向けの損益計算までを支援する専用ツールもあり、対応取引所や法人対応の観点での比較は以下の記事で確認できます。
目的・リスク許容度・経営フェーズによるタイプの選び方
5つのタイプのうち、どれを自社の軸にするかは、運用の目的・許容できるリスク・経営のフェーズによって変わります。ここでは「目的とリスク許容度」と「経営フェーズ」の2つの観点から、自己診断の切り口を整理します。
目的とリスク許容度で選ぶ
まず、その資金が「使う予定のある待機資金」なのか「当面使う予定のない余裕資金」なのかを切り分けることから始めます。近い将来に使う資金は、元本の保全と流動性を重視して元本重視の安定運用が中心になります。使う予定のない資金であれば、リターンを取りにいく余地が生まれます。
次に、どの程度の値下がりを許容できるかを見極めます。元本割れをできる限り避けたいなら安定運用、値動きを受け入れて分散しながら成長も狙うならバランス運用、より高いリターンを求めて変動を許容できるなら積極運用が候補になります。
金融市場と異なる分散を求めるなら現物・実物資産、成長性を取りにいく新領域として位置づけるなら暗号資産の運用が選択肢に加わります。運用に割ける人手や専門知識が乏しい場合は、判断を委ねられる投資一任型が現実的です。
経営フェーズで選ぶ
経営のフェーズによっても適したタイプは変わります。創業期や成長投資が続く段階では、資金需要が読みにくく、いつでも動かせる流動性が重要です。この段階では余剰資金を絞り、元本重視の安定運用にとどめるのが無難です。
事業が安定し、キャッシュフローに厚みが出てきた段階では、中長期の余裕資金をバランス運用や現物・実物資産に振り向ける余地が広がります。潤沢な余剰資金があり、財務戦略として運用に踏み込む段階では、積極運用や新しい選択肢も含めた分散を検討できます。いずれの段階でも、本業の資金繰りを損なわない範囲にとどめる原則は変わりません。
運用をプロに任せる・実物資産や暗号資産に預ける先を、具体的なサービスまで絞り込みたい場合は、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。3つの質問に答えるだけで候補が挙がりますので、ぜひご活用ください。
一括ダウンロードする
【比較表】法人向け資産運用サービスを横並びで比較
ここからは、自社の課題や要件に合わせて客観的に比較・選定できるよう、法人が契約・投資できる主要な資産運用サービスを1つの表に横並びで整理しました。運用手段・対象、最低投資額、コスト、想定リターンの目安、流動性、法人対応の観点で見比べられます。投資一任・不動産クラウドファンディング・暗号資産と種類は異なりますが、法人の運用先を選ぶ観点は共通するため、同じ軸で並べています。
| サービス名 | ダイワファンドラップ | 野村ファンドラップ/野村SMA | 日興ファンドラップ | COZUCHI | 大家どっとこむ | CRYPTO Maxi | ステーキングサービス(Next Finance Tech) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 運用手段・対象 | 投資一任(プロに運用を任せる) 専用投信で国際分散投資 | 投資一任(プロに運用を任せる) 投資信託・個別有価証券で運用 | 投資一任(プロに運用を任せる) 世界の投資信託約100本に分散(標準モデル) | 不動産クラウドファンディング(匿名組合型) 現物不動産に小口投資 | 不動産クラウドファンディング(匿名組合型) 現物不動産に小口投資 | 暗号資産トレジャリー(DAT)事業の伴走コンサル 戦略設計〜運用実行〜IR〜監査法人対応 | 暗号資産のステーキング(ETH・SOL・BTC) バリデーターノード運用・ノンカストディアル方式 |
| 最低投資額 | 対面型: 300万円〜 オンライン型: 1万円〜 | 野村ファンドラップ: 500万円〜(バリュー)/1,000万円〜(プレミア) 野村SMA: 3,000万円〜 | 300万円〜(プライベート・プレミアム・セレクションは3,000万円〜) | 短期運用型: 1万円〜 中長期運用型: 10万円〜 | 1万円〜 | —(コンサルティング型・運用額の下限は設定なし) | 要問い合わせ(最低数量は公式に記載なし) |
| コスト(手数料・報酬) | 対面型: 年率0.385〜1.540%(税込。資産規模・運用スタイルで変動) オンライン型: 年率1.10%(税込) | 野村ファンドラップ: 投資一任報酬 最大0.418%+ファンドラップ報酬 最大1.320%(固定報酬制・年率税込) 野村SMA: 投資一任報酬 最大0.110%+SMA報酬 最大1.540% | 固定報酬型: 年率最大1.320%(税込) 成功報酬併用型: 基本報酬 年率最大1.188%(税込)+利益の11.0%(税込) | 出資時・運用手数料は無料 短期運用型の途中換金は事務手数料3.3〜5.5%(中長期運用型は無料) | 投資手数料は公式に明示なし(要問い合わせ) 分配金の振込手数料は投資家負担 | 月額70万円〜(税別)、平均120万円(税別) 成功報酬オプションあり | 要問い合わせ(手数料率は公式に非公開) |
| 想定リターン・利回りの目安 | 市場環境により変動(確定利回りなし) | 市場環境により変動(確定利回りなし) | 市場環境により変動(確定利回りなし) | 短期運用型: 年利4〜10%程度(公式試算例6.0%) 中長期運用型: 試算例4.5%(確定利回りではない) | 年利3.50〜12.00%(掲載ファンド例・税引前) | 確定利回りなし(暗号資産運用のため変動が大きい。要問い合わせ) | チェーンの状況・契約により変動(要問い合わせ) |
| 流動性・解約 | 契約締結日の3カ月後から毎営業日解約申込み可能 | 運用開始日から3カ月経過後に解約可(解約時は信託財産留保額を負担) | 要問い合わせ(法人契約時の解約条件は公式に明記なし) | 短期運用型: 主に3ヵ月〜3年(途中換金は最短約7週間) 中長期運用型: 主に3〜5年(換金申込は無料・最短約2週間) | 運用期間 主に3ヶ月〜12ヶ月 原則途中解約不可(やむを得ない事由の場合のみ) | 銘柄・方式により異なる(契約はパッケージ型・要問い合わせ) | 銘柄・方式により異なる(要問い合わせ) |
| 法人対応・向いている企業 | 法人契約可(コースにより新規契約可否が異なる。安心つながるラップは不可)。条件は要問い合わせ 運用を専門家に任せたい企業向け | 法人契約可(財務戦略支援ページに投資一任サービスとして明記。全国店舗の対面契約。法人専用要件は要問い合わせ) 運用を専門家に任せたい企業向け | 法人契約可(約款で法人向け「金銭」運用規定を確認。最低額・料率が個人と同一かは要問い合わせ) 運用を専門家に任せたい企業向け | 法人出資可(Web完結ではなく運営事務局への個別問い合わせ登録) 実物資産に少額から分散したい企業向け | 法人の投資家登録・会員登録に公式対応 数ヶ月〜1年の資金拘束を許容できる企業向け | 上場企業・上場企業傘下の暗号資産保有企業向け 攻めの運用と会計・内部統制を一括で任せたい企業 | 暗号資産交換所・金融機関・事業会社などの法人向け 保有する暗号資産をステーキングで運用したい企業 |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
ステーキングサービスで「要問い合わせ」が並ぶのは、手数料や最低数量、想定利回りが法人・対象チェーンごとの個別見積もりとなるためです。情報が乏しいのではなく、条件をカスタムで設計する性質によるものと捉えてください。
※上記は各社の公式情報等に基づく整理です(2026年9月時点)。最低投資額・手数料・想定リターン・法人契約の可否や条件は変動するため、契約前に必ず各社の最新情報をご確認ください。
法人向け資産運用サービスの個別紹介
比較表で全体像を確認したうえで、ここからは各サービスをタイプ別に個別に紹介します。運用手段の性格が異なるため、「大手証券に運用を任せる」「不動産に少額から分散する」「暗号資産で運用する」の3グループに分けて見ていきます。
バランス運用(大手証券に運用を任せる)
運用の判断そのものを専門家に委ねたい法人に向くのが、大手証券会社が提供する投資一任サービス(ファンドラップ)です。運用方針のヒアリングから資産配分の提案、売買、リバランス、運用報告までを一括して任せられます。ここでは法人契約が可能なファンドラップを紹介します。
1. ダイワファンドラップ(大和証券株式会社)

大和証券株式会社が投資一任契約に基づいて運用判断を引き受け、専用の投資信託を用いた国際分散投資を代行するサービスです。対面型は300万円以上、オンライン型は1万円以上と、資産規模に応じた複数のコースがそろっています。
対面型の投資顧問料は、資産規模の区分と運用スタイルに応じて年率0.385%〜1.540%(税込)、オンライン型は一律1.10%(年率・税込)です。毎月末の資産配分リバランスと3カ月ごとの運用報告書送付があり、運用状況はWebサービスでも確認できます。
法人契約は、対面型・オンライン型・プレミアムなど複数のコースで可能です(安心つながるラップは法人取扱い不可)。ただし法人契約時の最低金額・料率が個人向けと同一かは公式サイトに明記がなく、契約前に大和証券への個別確認が必要です。
2. 野村ファンドラップ(野村證券株式会社)

野村證券株式会社が全国の店舗で対面提供する投資一任サービスです。投資信託を組み合わせる「野村ファンドラップ」と、個別銘柄の選択まで反映できる上位の「野村SMA(エグゼクティブ・ラップ)」があり、最低契約金額は野村ファンドラップが500万円、野村SMAが3,000万円からとなっています。
野村ファンドラップは、インデックス運用中心の「バリュー・プログラム」とアクティブ運用中心の「プレミア・プログラム」を用意し、RR1からRR7の7段階でリスク水準を選べます。固定報酬制の場合、報酬は投資一任報酬 最大0.418%+ファンドラップ報酬 最大1.320%(いずれも年率・税込)です。
法人向けの財務戦略支援ページでも投資一任サービスとして案内されており、法人での契約が可能と判断できます。契約は店舗での対面が前提で、法人契約時の最低金額や必要書類が個人と同一かは単体ページに明示がないため、野村證券への個別確認が必要です。
3. 日興ファンドラップ(SMBC日興証券株式会社)

SMBC日興証券株式会社が2021年9月に開始した投資一任サービスで、証券会社のチャネルを通じて直接提供されます。資産配分の助言は、グループのSMBCグローバル・インベストメント&コンサルティング株式会社や、スイス系のエドモン・ドゥ・ロスチャイルド・グループが担う体制です。
最低投資金額は300万円以上で、3,000万円以上のプライベート・プレミアム・セレクションでは上位コースを選べます。報酬体系は固定報酬型が年率最大1.320%(税込)、成功報酬併用型が基本報酬 年率最大1.188%(税込)+利益の11.0%(税込)です。標準モデルは世界の約100本のファンドに分散し、R1からR7の7段階でリスク水準を調整します。
法人契約にも対応しており、約款や重要事項説明資料には、待機資金を個人向けの日興MRFではなく「金銭」で運用する法人向けの読み替え規定が明記されています。一方、最低投資金額や手数料率が個人契約と同一かは公式に明記がなく、SMBC日興証券への個別確認が必要です。
現物・実物資産(不動産に少額から分散)
現物不動産への直接投資はまとまった資金を要しますが、不動産クラウドファンディングを使えば1万円程度から複数の物件に分散して投資できます。運用は事業者が代行し、優先劣後方式(運営側が劣後出資して損失を先に負担する方式)などで一定の元本リスク低減が図られるのが一般的です。ここでは法人でも投資できるサービスを紹介します。
4. COZUCHI(LAETOLI株式会社)

COZUCHIは、LAETOLI株式会社が運営する不動産投資型クラウドファンディングです。不動産特定共同事業法に基づく匿名組合型のスキームで、1口1万円から現物不動産に小口で投資でき、物件の取得・管理・売却はLAETOLIが代行します。
運用タイプは短期運用型と中長期運用型の2種類です。短期運用型は最低1万円から、想定利回りは年利4〜10%程度(公式の試算例は年利6.0%)、運用期間は3ヵ月〜3年程度です。中長期運用型は最低10万円からで、公式ページの試算例では運用利回り4.5%が示されています(いずれも将来の運用成果を保証するものではありません)。
投資家が優先出資者、LAETOLIが劣後出資者となる優先劣後方式を採用しています。公式プレスリリース(2026年8月21日発表、累計148件・約1,413億円時点)では「これまで元本毀損が一度もなく」運用してきたと説明されていますが、元本保証商品ではありません。法人でも出資できますが、個人のようなWeb完結の即時登録ではなく、運営事務局への個別問い合わせによる登録が必要です。
5. 大家どっとこむ(株式会社グローベルス)

大家どっとこむは、分譲マンション開発や中古住宅再生を手がける株式会社グローベルス(Jグランド株式会社グループ)が運営する不動産投資型クラウドファンディングです。不動産特定共同事業法の電子取引業務の認可に基づき、会員登録から契約、入出金までをWeb上で完結できます。
一口1万円から出資でき、掲載ファンドの想定利回りは年利3.50%〜12.00%(税引前)、運用期間は3ヶ月〜12ヶ月が中心です。運営会社が劣後出資を行う優先劣後方式を採用し、劣後出資の範囲内の損失であれば優先出資者である投資家の元本が保護される設計です(元本保証ではありません)。
法人の会員登録・投資家登録に公式対応しており、FAQでは実質的支配者申告書など法人登録に必要な書類も案内されています。一方で運用期間中の途中解約は原則できず、やむを得ない事由がある場合に限られます。数ヶ月〜1年程度の資金拘束を許容できる余剰資金が対象になります。
新しい選択肢(暗号資産の運用)
暗号資産を法人の財務資産として保有・運用する場合、戦略設計から運用、会計・監査対応まで実務の負担が大きく、専門的な支援が有効です。ここでは、暗号資産トレジャリー(DAT)事業を支援するサービスと、保有する暗号資産のステーキングを担うサービスを紹介します。価格変動や期末時価評価課税のリスクを踏まえ、余剰資金の範囲で慎重に検討することが前提です。
そもそもステーキングがどのような仕組みで報酬を生むのか、対象となる暗号資産や運用時のリスクの基本から押さえておきたい方は、以下の解説記事もあわせてご覧ください。
6. CRYPTO Maxi(株式会社ICHIZEN HOLDINGS)

上場企業や上場企業傘下で暗号資産を保有・運用する企業を主な対象とするコンサルティングサービスです。暗号資産トレジャリー(DAT)事業の戦略設計から運用実行、IR発信、監査法人対応までを一つの契約で支援します。提供元の株式会社ICHIZEN HOLDINGSは、暗号資産メディアの運営を経て、上場企業のスキームのなかで暗号資産の会計・税務・監査対応の実務を重ねてきた経緯があります。
支援メニューは戦略設計・運用支援・IR/実務支援の3カテゴリー15ソリューションで構成され、必要な範囲を組み合わせるパッケージ型で提供されます。会計処理・監査法人対応・内部統制といった暗号資産を保有する法人特有の実務負担には、自社開発の内部統制ツール「CRYPTO Governance」を組み合わせて対応します。料金は事業規模やフェーズに応じた個別見積もりで、無料相談時に提示されます。
暗号資産の運用は価格変動が大きく、市場暗号資産を保有する法人では期末の時価評価による課税も生じ得ます。攻めの運用と会計・内部統制の両面で伴走を受けたい企業に向けて、リスクの説明と内部統制をあわせて設計する体制を採っています。
料金は月額70万円(税別)〜のパッケージ型で、主対象は上場企業やその傘下企業です。中小・非上場の企業が暗号資産を運用する場合は、保有する暗号資産を預けて報酬を得るステーキング(次項)や、型4の不動産クラウドファンディングのほうが現実的な選択肢になります。
暗号資産を財務資産として保有・運用する動きが、法人の現場でどこまで広がっているのか。同社の水野倫太郎氏は、市場の浸透状況について次のように語っています。

正直なところ、「ダット」という呼称自体はまだまだ浸透していないと感じます。一方で「トレジャリー企業」という言葉でいえば、メタプラネット様のような目立つ事例が出てきたこともあって、少しずつ広がってきている段階かなと思います。今後、暗号資産に関連する規制やルール整備が進むことで、企業が暗号資産を保有・運用するというあり方自体がさらに現実的なものになっていく余地は十分にあると考えています。
7. ステーキングサービス(株式会社Next Finance Tech)

ETH(イーサリアム)・SOL(ソラナ)・BTC(ビットコイン)の3通貨を対象に、暗号資産交換所・金融機関・事業会社などの法人へステーキングを提供するサービスです。ETHとSOLでは、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)チェーンのバリデーターノードを運用し、ネットワークの検証作業に暗号資産を拠出して報酬を得る仕組みに対応します。
ビットコインは本来PoSチェーンではありませんが、ビットコイン向けステーキングプロトコル「Babylon」のFinality Provider(ファイナリティ・プロバイダー)として参画し、BTCを担保とした検証への参加に対応しています。運用形態は顧客が資産の管理主体を保ったままステーキングに参加できるノンカストディアル方式で、日本語ダッシュボードとAPI連携を備えます。
提供元の株式会社Next Finance Techは、2025年4月にマネックスグループ傘下のコインチェックの持株会社であるCoincheck Group N.V.の完全子会社となりました。想定利回りや手数料はチェーンの状況や契約によって変わるため、具体的な条件は問い合わせが必要です。ステーキングにはバリデーターのペナルティ(スラッシング)や価格変動のリスクがある点も踏まえて検討します。
目的・リスク許容度別のポートフォリオ配分例
選んだタイプを、実際の配分イメージに落とし込んだ配分例で示します。以下はあくまで考え方を示す一例で、最適な配分は自社の資金需要・リスク許容度・経営フェーズによって変わります。いずれの型でも、本業の必要運転資金を確保したうえでの「余剰資金」を100とした配分として捉えてください。
安定重視型
元本の保全と流動性を最優先します。たとえば、預金・短期の国内債券などの安定資産を7割程度、外貨建てMMFや債券中心の投資信託を2割程度、値動きのあるバランス型投資信託を1割程度に抑えます。近い将来に使う可能性のある待機資金や、創業・成長投資の段階にある企業に向いた配分です。
バランス型
安定性と成長性の両立を狙う配分です。たとえば、預金・債券などの安定資産を4割程度、バランス型・分散型の投資信託やファンドラップなどのバランス運用を4割程度、不動産クラウドファンディングなどの現物・実物資産を2割程度に配分します。事業が安定し、中長期の余裕資金を運用に回せる段階の企業に適しています。
成長重視型
より高いリターンを狙い、値動きを許容します。たとえば、安定資産を2割程度に抑え、株式やアクティブ型投資信託などの積極運用を5割程度、現物・実物資産を2割程度、成長性を取りにいく新しい選択肢(暗号資産の運用)を1割程度に配分します。潤沢な余剰資金があり、運用のモニタリング体制も整えられる企業向けの配分で、価格変動と想定外課税のリスクを許容できることが前提です。
資産運用の相談先と始め方
方針が固まったら、実行に移す相談先を選びます。相談先ごとに得意領域や中立性が異なるため、目的に応じて使い分けるのが現実的です。
銀行・証券会社・IFA・税理士の使い分け
銀行は、預金や外貨預金、取扱いのある投資信託などを軸に、既存の取引関係の中で相談しやすいのが利点です。証券会社は、株式・債券・投資信託から投資一任サービスまで幅広い商品を扱い、法人の余剰資金運用の相談窓口として選択肢が多くなります。いずれも自社が取り扱う商品を提案する立場である点は理解しておきます。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)は、特定の金融機関に属さず、複数の商品を横断して助言する立場です。中立的な提案を受けたい場合の選択肢になります。税理士は、運用そのものの助言よりも、損益通算・繰越控除・期末評価・暗号資産の課税など、法人特有の税務・会計への影響を確認する相手として重要です。
余剰資金の運用にとどまらず、資金調達や財務戦略、事業承継といった経営課題まで含めて外部の専門家に相談したい場合は、金融コンサルティング会社も選択肢になります。専門領域ごとの違いや費用相場、依頼先の選び方は以下の記事で比較できます。
始め方の基本は、まず必要運転資金を差し引いて運用に回せる余剰資金を確定し、目的とリスク許容度から軸となるタイプを決め、複数のサービスの資料を取り寄せて条件を比較することです。決算での税務影響は、契約前に税理士へ相談しておくと、想定外の負担を避けやすくなります。
まとめ
本記事では、法人の資産運用について、個人と異なる税制・会計の前提、運用前の3つの鉄則、5つのタイプと選び方、ポートフォリオの配分例、相談先までを整理しました。
最も重要なのは、本業の資金繰りを損なわない余剰資金の範囲で運用し、損益通算や期末の時価評価・為替換算・暗号資産の課税といった法人特有の扱いを踏まえて判断することです。そのうえで、目的とリスク許容度から軸となるタイプを定め、元本重視の安定運用・バランス運用・積極運用・現物や実物資産・暗号資産の運用の中から、自社に合う運用先を比較して選びます。
MCB FinTechカタログでは、本記事で紹介したCRYPTO Maxi・ステーキングサービスの資料を無料でダウンロードできます。ファンドラップや不動産クラウドファンディングは各社公式サイトでご確認いただけますが、本記事の比較表で各社の条件を見比べて、自社に最適な運用先の検討を進めてください。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. 法人の資産運用とは何ですか?
A. 法人の資産運用とは、会社の余剰資金を預金・債券・投資信託・株式などに振り向け、本業とは別の収益やインフレへの備えを得る取り組みです。個人の運用と異なり、NISAが使えない・運用損益を本業と通算できる・決算で含み損益が評価されるなど税制と会計の前提が違うため、本業の資金繰りを損なわない余剰資金の範囲で行うのが原則です。
Q. 法人の資産運用はいくらから始めればよいですか?
A. 法人が運用に回してよいのは、当面の運転資金・仕入れ・人件費・納税・借入返済・設備投資に充てる予定のない「余剰資金」の範囲です。目安の一つに「年商×売上総利益率×20%」で運用上限を仮置きする考え方がありますが、これは一般的な目安の一例で厳密な基準ではありません。決算書の現預金から必要運転資金を差し引いて実際の運用可能額を見極め、成長段階や資金需要に応じて見直します。
Q. 法人の資産運用で得た利益にはどんな税金がかかりますか?
A. 個人のような所得区分や申告分離課税ではなく、本業の損益と合算した所得に法人税等が課されます。利子・分配金・売却益は原則益金に算入され、損失は本業利益と相殺(損益通算)でき、青色申告法人なら欠損金を原則10年繰り越せます。配当や含み損益には別段の定めもあるため、具体的な処理は顧問税理士に確認しましょう。
Q. NISAや特定口座は法人でも使えますか?
A. NISA(少額投資非課税制度)も源泉徴収ありの特定口座も、法人名義では利用できません。国税庁はNISAの対象者を「18歳以上(口座開設の年の1月1日現在)の居住者等」と定めており、この居住者等は個人を指すためです。その結果、法人の運用損益は非課税制度で切り離せず、一般口座での取引として決算・申告で損益を計算し、法人税の課税所得に取り込みます。
Q. 法人の資産運用にはどのような種類がありますか?
A. 法人が選べる運用手段は、リスク許容度と目的で「元本重視の安定運用」「バランス運用」「リターン重視の積極運用」「現物・実物資産」「暗号資産の運用」の5つのタイプに整理できます。預金・国内債券などの安定資産から、投資信託・不動産クラウドファンディング・暗号資産のステーキングまで幅広く、自社の目的とリスク許容度に応じて組み合わせるのが基本です。
Q. ファンドラップ(投資一任)と自分で運用するのは何が違いますか?
A. ファンドラップは、運用方針の設計から資産配分・売買・リバランス・運用報告までを証券会社などの専門家に一括して任せられる点が、自分で銘柄を選んで売買する運用との違いです。運用に人手や専門知識を割きにくい法人が手間を抑えて分散できる一方、投資顧問料などのコストがかかります。自社でモニタリング体制を組めるかどうかが選択の分かれ目になります。
Q. 法人向けの不動産クラウドファンディングは元本割れしませんか?
A. 不動産クラウドファンディングは元本保証の商品ではなく、元本割れの可能性があります。多くのサービスは事業者が劣後出資する優先劣後方式を採り、劣後出資の範囲内の損失は事業者側が先に負担する設計ですが、その範囲を超える損失が生じれば投資家の元本も毀損します。加えて運用期間中は原則として途中解約ができないため、数ヶ月〜年単位の資金拘束を許容できる余剰資金が対象になります。
Q. 法人が暗号資産で運用すると、含み益にも税金がかかりますか?
A. 活発な市場がある暗号資産を法人が自己の計算で保有すると、売却していなくても原則として期末に時価評価され、含み損益が課税所得に算入されます(法人税法第61条)。2024年度(令和6年度)改正で譲渡制限付きの特定暗号資産は原価法を選べるよう見直されましたが、通常の保有は時価法が原則です。含み益への課税で納税資金が要ることもあり、価格変動・流動性とあわせ余剰資金の範囲で慎重に検討します。
Q. 法人の資産運用は誰に相談すればよいですか?
A. 相談先は、銀行・証券会社・IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)・税理士を目的に応じて使い分けるのが現実的です。商品提案は取扱いの幅が広い証券会社や中立的に助言するIFAが担い、損益通算・期末評価・暗号資産課税など税務・会計への影響は税理士に確認します。まず運用に回せる余剰資金を決め、複数サービスの資料を比較してから相談すると判断がぶれにくくなります。
法人向け資産運用サービスの料金・手数料を一括チェック
最低投資額・手数料や報酬体系・想定リターンの目安・法人契約の可否は、サービスごとに条件が大きく異なります。まずは本記事の比較表で要点を一覧で見比べ、そのうえでCRYPTO Maxi・ステーキングサービスは資料を無料ダウンロードして具体的な費用や運用条件まで確認できます(ファンドラップ・不動産クラウドファンディングは各社公式サイトでご確認ください)。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。















