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不正アクセスの被害事例まとめ|実名企業の手口・原因・被害規模と自社の弱点点検

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取引先を装ったメール、放置されたVPN機器、使い回されたパスワード。こうした身近な入り口から社内システムに侵入され、個人情報の漏えいや業務停止に至る不正アクセスの被害が、企業の規模や業種を問わず相次いでいます。国家公安委員会などがまとめた不正アクセス行為の認知件数は、2025年(令和7年)に7,190件と前年から約34.2%増えました。

「自社は大丈夫か」を判断するには、まず実際に何が起きたのかを知ることが近道です。本記事では、実名で公表された不正アクセス事件を新しいものから取り上げ、発生時期・被害規模・手口・原因をそろえて紹介します。

そのうえで、事例に共通する原因・手口の型を整理し、自社の弱点を点検する観点と、型ごとの防止・早期検知の対策までを解説します。

【最新順】不正アクセスの被害事例まとめ(実名・時期・被害規模・手口・原因)

ここからは、実際に公表された不正アクセス事件を新しいものから紹介します。各事例で「いつ・どの企業で・どれくらいの規模の被害が・どんな手口と原因で」起きたのかを、公表資料をもとに整理しました。まず全体像を一覧で示し、続いて各事例を詳しく解説します。

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事例日本経済新聞社(2025年)損害保険ジャパン(2025年)KADOKAWA(2024年)マツダ(2023年)山形大学(2022年)つるぎ町立半田病院(2021年)カプコン(2020年)日本年金機構(2015年)
被害規模1万7,368人分最大約1,750万件相当(公表内訳の合計)254,241人分最大104,732件1,059人分電子カルテ等が約2か月停止累計15,649人分約125万件
侵入口・手口私物PCのマルウェア感染→Slackへ不正ログインWebシステムへの侵入フィッシング→ランサムウェアサーバー脆弱性の悪用管理者ID・パスワードの詐取→改ざんVPN機器の脆弱性→ランサムウェア旧型VPN装置への攻撃→ランサムウェア標的型攻撃メール→ウイルス感染
主な原因私物端末経由の認証情報窃取公開Webシステムへの不正アクセス(経路は非公表)従業員アカウント情報の窃取アプリケーションサーバーの脆弱性認証情報の詐取VPN脆弱性・設定不備旧型VPN機器の管理不備メール開封と共有フォルダの管理不備

※被害規模は各社・各機関の公表値。「件」と「人分」は公表元の表記に従っています。各事例の詳細と出典は以下をご覧ください。

日本経済新聞社(2025年)|私物PCのウイルス感染からSlackへ不正ログイン

日本経済新聞社は、2025年9月に被害を把握し、11月4日に業務用チャット「Slack」への不正ログインと情報流出を公表しました。流出したのは、Slackに登録されていた氏名・メールアドレス・チャット履歴など1万7,368人分です。

原因は、社員が個人で保有するパソコンのウイルス感染でした。同社は「社員の個人保有のパソコンがウイルスに感染し、スラックの認証情報が流出。この情報をもとに社員のアカウントに不正にログインしたとみられます」と説明しています。会社の管理が及びにくい私物端末が侵入の起点になった事例です。

出典・参考資料(1件)

損害保険ジャパン(2025年)|Webシステムへの侵入で最大約1,750万件相当

損害保険ジャパン株式会社は、2025年4月21日に自社Webシステムへの不正アクセスを確認し、6月11日に第2報を公表しました。フォレンジック調査の結果、4月17日から21日にかけて外部から侵入された第三者が顧客情報にアクセスできる状態にあったと推測されています。

当社内の Web システム(各種指標管理を主としたサブシステムです。)が第三者により不正にアクセスされたことを、4 月 21 日に確認いたしました。専門業者によるフォレンジック調査の結果、4 月 17 日から 4 月 21 日までの期間、外部から侵入した第三者がお客さまに関する情報にアクセスできる状態になっていたと推測され、外部に漏えいした可能性が否定できないことが判明いたしました。

出典:当社システムに対する不正アクセスの発生及び情報漏えいの可能性について(第2報)|損害保険ジャパン株式会社

漏えいの可能性がある情報は、「氏名・連絡先・証券番号」が記載された約337万件をはじめ、証券番号や事故番号のみのデータ約844万件などです。公表された内訳を合計すると、最大で約1,750万件相当にのぼります。マイナンバーカードおよびクレジットカードの情報は含まれていないと発表されています。

KADOKAWA(2024年)|フィッシングからランサムウェアへ、254,241人分が漏えい

株式会社KADOKAWAでは、2024年6月8日に大規模なサーバー障害が発生し、ドワンゴや角川ドワンゴ学園を含むグループでランサムウェア攻撃による被害が確認されました。従業員・クリエイター・取引先・在校生などの個人情報が合計254,241人分漏えいし、動画配信サービス「ニコニコ」などが長期間停止する事態にも至りました。

フィッシングなどの攻撃により従業員のアカウント情報が窃取されてしまったことが本件の根本原因であると推測

出典:ランサムウェア攻撃による情報漏洩に関するお知らせ|株式会社KADOKAWA

窃取した従業員のアカウント情報で社内ネットワークに侵入し、その先でランサムウェアを実行するという流れは、近年のランサムウェア被害に共通する典型的な経路です。

マツダ(2023年)|アプリケーションサーバーの脆弱性を悪用

マツダ株式会社は、2023年7月24日に不正な通信を検知し、9月15日の初報を経て11月28日に第2報を公表しました。原因は、アプリケーションサーバーの脆弱性を悪用したディレクトリサーバーへの不正アクセスです。社員・グループ会社社員・取引先担当者などの情報が、最大104,732件流出した可能性があると発表されています。

出典・参考資料(1件)

山形大学(2022年)|管理者ID・パスワードの詐取でサイトを改ざん

国立大学法人山形大学では、2022年10月26日に外部からの通報で不正アクセスが発覚しました。研究室の公開ホームページ用サーバで使っていたコンテンツ管理システム(CMS)の「管理者ID及びパスワードが詐取された」ことで学外から不正アクセスを受け、改ざんや不正プログラムの書き込みが行われました。流出の可能性がある個人情報は1,059人分です。

正規の認証情報さえ手に入れば、攻撃者は「正しい利用者」としてそのままログインできてしまいます。侵入を防ぐ入口対策だけでなく、正規アカウントの不審な利用を見つける視点が欠かせないことを示す事例です。

出典・参考資料(1件)

つるぎ町立半田病院(2021年)|VPN機器の脆弱性で電子カルテが約2か月停止

徳島県のつるぎ町立半田病院では、2021年10月31日未明にランサムウェアへの感染が発生し、電子カルテをはじめとする院内システムが停止しました。通常診療の再開は2022年1月4日で、復旧までにおよそ2か月を要しています。

侵入経路はVPN機器の脆弱性でした。有識者会議の調査報告書では、マルウェア対策ソフトが稼働していなかったことや、Windowsの自動更新が無効化され、サポートの終了したOSが残っていたことなど、複数の設定上の不備が指摘されています。地域医療を支える病院で長期の診療停止が起きたことは、業種を問わず不正アクセスが事業継続に直結することを示しました。

出典・参考資料(1件)

カプコン(2020年)|旧型VPN装置への攻撃、累計15,649人分が流出

株式会社カプコンでは、2020年10月に北米現地法人が保有していた予備の旧型VPN装置への攻撃を起点に社内ネットワークへ侵入され、ランサムウェアに感染しました。流出を確認した個人情報は、2021年4月の第4報時点で累計15,649人分にのぼります。

2020年10月、当社の北米現地法人(Capcom U.S.A., Inc.)が保有していた予備の旧型VPN装置に対するサイバー攻撃を受け

出典:不正アクセスによる情報流出に関するお知らせとお詫び【第4報】|株式会社カプコン

この事案では、報道によれば攻撃グループが約11.5億円(約1,100万ドル)の身代金を要求したとされます。ただしカプコンは、感染した機器に攻撃者からのメッセージファイルは残されていたものの、「同ファイルには身代金額の記載はありませんでした」としており、公式には金額を確知していないと説明しています。

緊急避難用として残していた旧型機器が侵入口になった点は、使わなくなった機器の管理という見落としがちな盲点を示しています。

日本年金機構(2015年)|標的型攻撃メールで約125万件が流出

日本年金機構では、2015年5月に標的型攻撃メールを起点とする不正アクセスが発生し、6月1日に公表されました。学術機関などを装ったメールの添付ファイルを職員が開いたことで端末がウイルスに感染し、LAN内の共有フォルダに保管されていた基礎年金番号や氏名などが外部に流出しました。流出件数は約125万件で、対象者は約101万4,653人分とされています。

流出したファイルが保管されていた共有フォルダにはパスワードが設定されておらず、メールという入り口の問題に加えて、内部の情報管理の甘さが被害を広げました。この事案を受けて検証委員会が設けられ、再発防止に向けた報告書がまとめられました。

出典・参考資料(2件)

不正アクセスとは|発生状況を統計で押さえる

事例を見てきたところで、不正アクセスの定義と全体の発生状況を簡単に押さえておきます。ここを踏まえると、次の「原因・手口の型」がより整理して読めます。

不正アクセスとは

不正アクセスは、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法、1999年〈平成11年〉制定)で禁止されている行為です。同法は、他人の識別符号(ID・パスワードなど)を無断で入力してログインする「識別符号窃用型」と、セキュリティ上の欠陥を突いてアクセス制御を回避する「セキュリティ・ホール攻撃型」を不正アクセス行為と定めています。

(第三条)何人も、不正アクセス行為をしてはならない。(第十一条)第三条の規定に違反した者は、三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

出典:不正アクセス行為の禁止等に関する法律|e-Gov法令検索

統計で見る発生状況

国家公安委員会・総務大臣・経済産業大臣が公表した資料によると、2025年(令和7年)における不正アクセス行為の認知件数は次のとおりです。

令和7年における不正アクセス行為の認知件数は 7,190 件であり、前年(令和6年)と比べ、1,832 件(約 34.2%)増加した。

出典:不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況(令和8年3月12日公表)|国家公安委員会・総務省・経済産業省

認知件数の推移を見ると、2021年(令和3年)1,516件、2022年2,200件、2023年6,312件、2024年5,358件、2025年7,190件と、ここ数年で大きく増えています。

認知件数の内訳では「インターネットバンキングでの不正送金等」が4,747件と最も多く、次いで「証券会社のインターネット取引サービスでの不正取引等」が1,484件と続きます。金融サービスの利用者になりすます不正アクセスが多くを占めていることがわかります。

手口の面では、検挙された不正アクセス禁止法違反の多くが、他人のID・パスワードを悪用する「識別符号窃用型」でした。その識別符号(ID・パスワード等)の入手方法の内訳を見ると、「パスワードの設定・管理の甘さにつけ込んで入手」が84件、「フィッシングサイトから入手」が77件、「インターネット上に流出・公開されていた識別符号を入手」が35件などとなっています。

出典・参考資料(1件)

不正アクセスの原因・手口の型|事例を横串で整理

個々の事例を並べると、侵入の入り口はいくつかの型に整理できます。ここでは、先ほどの事例を横串にして「結局どこから入られているのか」をまとめ、自社の弱点を点検する観点を添えます。

原因・手口の5つの型と、該当する事例

事例で確認できた侵入の入り口は、次の5つの型に大きく分けられます。

実名で公表された不正アクセス事例8件を、侵入の入り口ごとに5つの型へ整理した図。①VPN機器・ネットワーク境界の脆弱性(つるぎ町立半田病院・カプコン)、②フィッシング・標的型攻撃メール(KADOKAWA・日本年金機構)、③認証情報の窃取・使い回し(日本経済新聞社・山形大学)、④公開Webシステムを狙った侵入(損害保険ジャパン)、⑤既知の脆弱性の放置(マツダ)を示している。
  • VPN機器・ネットワーク境界の脆弱性:社外から社内へつなぐVPN機器などの弱点を突かれる型。半田病院・カプコンが該当します。
  • フィッシング・標的型攻撃メール:業務を装ったメールで従業員に添付ファイルを開かせ、マルウェア感染やアカウント情報の窃取につなげる型。KADOKAWA・日本年金機構が該当します。
  • 認証情報の窃取・使い回し:ID・パスワードを詐取されたり、私物端末のマルウェア感染で認証情報を盗まれたり、どこかで流出した認証情報を使い回されたりして、正規利用者になりすまされる型。日本経済新聞社・山形大学が該当します。
  • 公開Webシステムを狙った侵入:外部に公開しているWebシステムやクラウド環境を狙って侵入される型。損害保険ジャパンが該当します(同社は侵入の詳細な経路を公表していません)。
  • 既知の脆弱性の放置:修正プログラムが公開済みのサーバやアプリケーションの脆弱性を、更新せずに放置して悪用される型。マツダが該当します。

先ほど見た統計でも、検挙された不正アクセスでは他人のID・パスワードを悪用する「識別符号窃用型」が大半を占め、その入手方法はパスワード管理の甘さやフィッシングが上位でした。上記の型のうち、メールと認証情報にまつわる入り口が特に狙われやすいことがうかがえます。

自社の弱点を点検する観点

型ごとに、自社に同じ穴がないかを点検する観点を挙げます。事例を「他社の話」で終わらせず、自社の状況に当てはめる材料としてください。

  • 社外接続に使うVPN機器やネットワーク機器に、更新されていないもの・サポートが終了したものが残っていないか。使わなくなった機器が接続されたままになっていないか。
  • 取引先や公的機関を装ったメールに、従業員が添付ファイルを開いたりリンクを踏んだりしない体制と教育があるか。
  • 重要なシステムのログインが、IDとパスワードだけになっていないか。パスワードの使い回しを前提に、なりすましを検知できる仕組みがあるか。従業員の私物端末(シャドーIT)が業務でどこまで使われているか把握できているか。
  • 公開しているWebシステムやクラウドの設定、委託先の管理状況を定期的に点検できているか。
  • 自社が使うサーバ・アプリケーションの脆弱性情報を把握し、修正プログラムを適用できているか。

事例で見る不正アクセス被害の『その後』|復旧コストと発覚後の初動対応

不正アクセスの被害は、情報が漏れて終わりではありません。ここでは、起きたら実際に何が生じるのか、復旧にどれくらいかかるのか、そして自社で発覚したらまず何をすべきかを、事例をもとに整理します。導入の判断材料としても使える内容です。

不正アクセスで起きる被害の種類

事例で確認できた被害は、大きく次のように分けられます。多くの場合、これらは単独ではなく複合して発生します。

  • 個人情報・機密情報の漏えい:損害保険ジャパンの最大約1,750万件相当、KADOKAWAの254,241人分のように、大量の個人情報が外部に流出します。
  • Webサイトの改ざん・不正プログラムの設置:山形大学のように、公開サイトが書き換えられ、閲覧者への二次被害の恐れが生じます。
  • システムの停止・事業の中断:半田病院の電子カルテ停止やKADOKAWAのサービス停止のように、基幹業務そのものが止まります。
  • 身代金の要求:ランサムウェアによってデータを暗号化され、金銭を要求される場合があります。カプコンの事案でも、報道では身代金の要求があったとされています(同社は公式には金額を確知していないとしています)。

復旧・対応にかかった時間とコスト

被害の大きさは、漏えい件数だけでは測れません。半田病院では、電子カルテなどの院内システムが停止し、通常診療の再開まで約2か月を要しました。病院のように業務がシステムに依存している組織では、停止期間の長さがそのまま事業への打撃になります。

停止は病院だけの問題ではありません。KADOKAWAでは、ランサムウェア被害により動画配信サービス「ニコニコ」などの主要サービスが長期間にわたって停止し、事業全体に影響が及びました。

加えて、フォレンジック調査(侵入経路や被害範囲を特定する専門調査)、影響を受けた本人への連絡、システムの再構築、問い合わせ対応など、復旧には直接的な金銭コストと人的リソースが継続的にかかります。事例で公表される「流出◯万件」という数字の裏側には、こうした復旧の負担があることを見込んでおく必要があります。

被害発覚後の初動対応

万一、自社で不正アクセスが疑われたときの初動対応の基本的な流れを押さえておきます。事前に手順を決めておくことで、被害の拡大を抑えられます。

まず、被害を受けた端末やサーバをネットワークから切り離し、被害の拡大を止めることが最優先です。次に、原因究明のためにログなどの証拠を保全し、安易な再起動や初期化は避けます。あわせて、漏えいのおそれがあるアカウントはパスワードを変更し、多要素認証を有効にしておきます。

そのうえで、影響範囲の調査は専門の事業者に依頼し、警察や個人情報保護委員会など関係機関への相談・報告、影響を受ける可能性のある本人や取引先への連絡を進めます。

原因の型別|不正アクセスを早期検知・防止する対策

ここからは、事例で見えた5つの原因・手口の型に一対一で対応させて、防止と早期検知の対策を整理します。手当たり次第に対策を並べるより、自社で多い入り口の型に優先的に手を打つほうが効果的です。

型ごとの対策

  • VPN機器・ネットワーク境界の脆弱性へ:VPN機器やネットワーク機器の修正プログラムを速やかに適用し、サポートが終了した機器を更新することが求められます。使っていない機器は接続から外し、社外に公開されている資産を棚卸ししておくと安全です。
  • フィッシング・標的型攻撃メールへ:不審なメールを遮断するメールフィルタを整え、従業員が添付ファイルやリンクを不用意に開かないよう教育を続けることが有効です。認証情報が盗まれても悪用されにくいよう、多要素認証やFIDO(パスワードに頼らない認証方式)の導入も効果的です。
  • 認証情報の窃取・使い回しへ:重要システムのログインは多要素認証で守り、いつもと違う場所・端末からのログインを検知して追加認証を求めるリスクベース認証が有効です。パスワードの使い回しを避ける運用に加え、私物端末の業務利用の範囲を把握・管理することも欠かせません。
  • 公開Webシステム・委託先などへ:公開システムやクラウドの設定を定期的に診断し、アクセス権限を必要最小限に見直すことが求められます。委託先の管理状況も点検の対象に含めるとよいでしょう。
  • 既知の脆弱性の放置へ:自社の資産を可視化して脆弱性情報を継続的に把握し、定期的な脆弱性診断で修正漏れをなくすことが大切です。

ここで挙げたのは、事例で多かった原因の型を塞ぐための対策の要点です。多要素認証やパスワード管理、脆弱性への対応、社員教育など、企業が取るべき不正アクセス対策の全体像を一つずつ詳しく確認したい方は、次の記事で網羅的に整理しています。

不正検知ソリューションの役割(WAF・ファイアウォールとの違い)

ここまでの対策は、侵入を「防ぐ」ことに力点があります。しかし事例が示すとおり、正規の認証情報を使われたり、未知の手口で境界を越えられたりすると、入口対策だけでは侵入を完全には止めきれません。そこで重要になるのが、侵入されたあとや通常運用のなかで生じる異常を早期に見つける仕組みです。

ファイアウォールやWAF(Webアプリケーションファイアウォール)は、主に外部との境界で通信を許可・遮断する「入口の門番」の役割を担います。これに対して不正検知ソリューションは、その門を越えて内部に入り込んだ後の不審な挙動や、正規アカウントの異常な使われ方を見つけることに主眼を置きます。検知の対象とする場所によって、大きく次の3つに分けられます。

不正アクセス対策を二層で示した図。第1層は入口で防ぐ「門番」でファイアウォールとWAF、第2層は侵入後・運用中を見張る「見張り」=不正検知ソリューションで、ネットワーク型(NDR)・エンドポイント型(EDR/XDR)・アカウント不正型(ATO対策)の3つに分かれることを示している。
  • ネットワーク型(NDR):社内ネットワークを流れる通信を監視し、侵入後の内部での横移動(ラテラルムーブメント)や外部への不審な通信を検知します。VPN経由の侵入やランサムウェアの拡散を捉えるのに向きます。
  • エンドポイント型(EDR/XDR):パソコンやサーバなどの端末上の挙動を監視し、マルウェアの実行やランサムウェアの動きを検知・遮断します。メール経由の感染や脆弱性の悪用に対応します。
  • アカウント不正型(ATO対策):ログインや操作の挙動を分析し、なりすましログインやリスト型攻撃、Botによる総当たりを検知します。認証情報の窃取・使い回しへの備えになります。

自社で多い原因の型に合わせて、これらの検知の仕組みを入口対策と組み合わせることが、被害を早期に食い止める鍵になります。

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【比較表】不正アクセスの検知・防止に役立つソリューション

以下は、事例で見た手口の型(ネットワーク侵入・エンドポイント侵入・アカウント乗っ取り)に対応して、不正アクセスの検知・防止に役立つ主なソリューションの比較表です。

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比較項目Network BlackboxDarktraceCrowdStrike FalconSentinelOneSardineO-MOTION
検知の型ネットワーク型(NDR)ネットワーク型(NDR)エンドポイント型(EDR/XDR)エンドポイント型(EDR/XDR)アカウント不正型(ATO)アカウント不正型(ATO)
対応する不正アクセスの手口VPN経由の侵入・侵入後の内部拡散内部拡散・未知/新種の脅威メール経由の感染・ランサムウェア端末起点のランサムウェアなりすまし・リスト型・不正登録なりすまし・Bot/リスト型攻撃
主な検知方式100%フルパケットキャプチャ+振る舞い異常検知自己学習型AIによる異常検知機械学習+振る舞い検知(IOA)AIの自律検知+ロールバック復旧行動バイオメトリクス+デバイス分析端末特定+操作情報(行動分析)+IP
提供形態アプライアンス(ミラーリング導入)アプライアンス/ハイブリッドSaaS(軽量エージェント)SaaS(軽量エージェント)SaaS(クラウド)SaaS(JavaScriptタグ)
提供会社株式会社クワッドマイナージャパンダークトレース・ジャパン株式会社クラウドストライク合同会社SentinelOne Japan株式会社株式会社DGビジネステクノロジーかっこ株式会社
月額費用要問い合わせ要問い合わせ$7.99〜/台(Falcon Go)要問い合わせ要問い合わせ10万円〜(Lightプラン)
無料トライアル×デモ予約あり無償検証(PoV)15日間×××
詳細情報公式資料を見る詳細を見る詳細を見る詳細を見る公式資料を見る詳細を見る

※料金・提供形態は2026年9月時点の各社公式情報等にもとづきます。最新の内容は各社の公式情報をご確認ください。

この比較表で取り上げたのは、事例の手口に対応する代表的なソリューションです。検知の型ごとにさらに多くのサービスを、料金や選び方まで含めて比較検討したい方に向けて、以下の記事で不正アクセス検知システムの選び方を4つのタイプ別に詳しく解説しています。

主な不正検知ソリューションの紹介

ここからは、比較表で挙げたソリューションを、検知の対象ごとに紹介します。自社で多い原因の型に近いものから資料を確認すると、比較検討が進めやすくなります。

1. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxのウェブサイト

Network Blackboxは、社内ネットワークを流れる通信を丸ごと記録し、侵入後の不審な動きを可視化するネットワーク型(NDR)のソリューションです。株式会社クワッドマイナージャパンが提供しています。

通信を詳細に記録するため、VPN経由の侵入やランサムウェアの拡散、外部の指令サーバーとの不審な通信といった、境界を越えた後の挙動を後からさかのぼって調べられる点が特徴です。半田病院やカプコンのように、境界機器を突破された後の内部の動きを捉えたいケースに向いています。

2. Darktrace(ダークトレース)

Darktraceのウェブサイト

Darktraceは、自己学習型のAIが組織の通常状態を学び、そこからの逸脱を異常として検知するネットワーク型(NDR)のソリューションです。あらかじめ登録した攻撃パターン(シグネチャ)に頼らないため、未知の手口にも反応しやすい設計になっています。

ランサムウェアの拡散や内部不正、ネットワーク内部の横移動を、平常時との違いから捉えることを得意とします。攻撃の型が定型化しにくい状況で、いつもと違う通信をいち早く見つけたい企業に適しています。

3. CrowdStrike Falcon(クラウドストライク合同会社)

CrowdStrike Falconのウェブサイト

クラウドストライク合同会社が提供するCrowdStrike Falconは、パソコンやサーバといった端末の挙動を監視するエンドポイント型(EDR/XDR)のソリューションです。クラウドを基盤に、端末上で実行される不審な動きをリアルタイムに検知します。

標的型メールで送り込まれたマルウェアの実行や、ランサムウェアの不審な挙動を端末側で捉えて止めることに強みがあります。日本年金機構のようにメールを起点とする侵入や、カプコンのように端末で動くランサムウェアへの備えとして検討できます。

4. SentinelOne(センチネルワン)

SentinelOne (Singularity Platform)のウェブサイト

SentinelOneも、端末上の脅威を監視するエンドポイント型(EDR/XDR)のソリューションです。AIによる自律的な検知に加え、ランサムウェアによる被害を受けたファイルを感染前の状態に戻すロールバック機能を備えています。

侵入後の不審な挙動を自動で検知・遮断し、被害からの復旧までを見据えられる点が特徴です。端末を起点とするランサムウェア被害に備え、検知だけでなく復旧の手立ても重視したい企業に向いています。

5. Sardine(株式会社DGビジネステクノロジー)

Sardineのウェブサイト

Sardineは、ログインや操作時の行動を分析して、アカウントの乗っ取り(ATO)を検知するソリューションです。米Sardine AIが開発し、日本では株式会社DGビジネステクノロジーが提供しています。

端末の挙動や操作の癖といった行動の特徴から、本人になりすましたログインや、流出した認証情報を使い回すリスト型攻撃、不正なアカウント作成を見分けます。日本経済新聞社の事例のようななりすましログインへの備えとして活用できます。

6. O-MOTION(かっこ株式会社)

O-MOTIONのウェブサイト

かっこ株式会社が提供するO-MOTIONは、ログイン時のデバイス特定と操作の分析によって、不正ログインを検知するアカウント不正型のソリューションです。

Botによる総当たりやリスト型攻撃だけでなく、人が手作業で行うなりすましログインまで見分けられる点が特徴です。リスクの高いログインにだけ追加の認証を求めるリスクベース認証と組み合わせることで、正規利用者の利便性を保ちながら不正なログインを抑えられます。

まとめ

実名で公表された不正アクセス事例を振り返ると、侵入の入り口はVPN機器や既知の脆弱性、フィッシング、認証情報の詐取・使い回し、設定不備といった型に整理できます。被害は情報漏えいにとどまらず、システムの停止や長期の復旧、身代金の要求にまで及びます。

まずは事例の型を手がかりに、自社の弱点がどこにあるかを点検することが第一歩です。そのうえで、入口で防ぐ対策と、侵入後や通常運用のなかの異常を早期に見つける不正検知ソリューションを、自社で多い原因の型に合わせて組み合わせることが被害の抑制につながります。各ソリューションの詳細は、資料を取り寄せて比較検討を進めてみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 不正アクセスとは何ですか?

A. 不正アクセスとは、アクセス権限を持たない第三者が、他人のID・パスワードを無断で使ったり、システムの欠陥(セキュリティ・ホール)を突いたりして、本来は入れないネットワークやサービスに侵入する行為です。

日本では不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)で禁止されており、他人の識別符号を無断で使う「識別符号窃用型」と、アクセス制御を回避する「セキュリティ・ホール攻撃型」の2つが不正アクセス行為として定められています。

Q. 不正アクセスを禁止する法律はありますか?罰則はどうなりますか?

A. 不正アクセスは、不正アクセス禁止法(1999年〈平成11年〉制定)で明確に禁止されており、違反した場合は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。不正アクセスは、被害を受けた企業側の問題である前に、行為者に刑事罰が及ぶ犯罪行為です。また、攻撃を受けて個人情報が漏えいした企業側にも、状況に応じて個人情報保護法に基づく個人情報保護委員会への報告や本人への通知が求められます。

出典・参考資料(1件)

Q. 自社が不正アクセスの被害を受けていないか調べる方法はありますか?

A. 不正アクセスの兆候は、ログイン履歴・通信ログ・アカウントの利用状況を点検することである程度確認できます。身に覚えのない時間帯や海外IPアドレスからのログイン記録、管理者権限による不審な操作、外部の見慣れないサーバーとの通信、送った覚えのないメールなどが手がかりです。

ただし、本記事で紹介した事例の多くは外部からの通報や取引先の指摘で初めて発覚しており、自社だけで気づくのは簡単ではありません。通信や端末の挙動を常時監視して異常を自動で検知する仕組みを持つことで、発覚の遅れを縮められます。

Q. 不正アクセスが発覚したら、どう対応すればよいですか?

A. 不正アクセスが疑われたら、まず被害を受けた端末やサーバをネットワークから切り離して被害の拡大を止め、ログなどの証拠を保全することが最優先です。原因究明の手がかりを消さないよう、安易な再起動や初期化は避けます。

そのうえで、専門事業者による影響範囲の調査、警察や個人情報保護委員会への相談・報告、影響を受ける可能性のある本人や取引先への連絡を進めます。手順の詳細は本文の「被害発覚後の初動対応」で解説しています。

Q. 不正アクセスは検知して未然に防げますか?

A. 不正アクセスは、入口で侵入を防ぐ対策と、侵入後や通常運用中の異常を早期に検知する仕組みを組み合わせることで、被害を大きく抑えられます。ただし、正規の認証情報を悪用されたり未知の手口を使われたりすると入口対策だけでは止めきれないため、100%の防止は困難です。

だからこそ、通信・端末・ログインの挙動を監視して「いつもと違う」動きを見つける不正検知ソリューションが、被害を早期に食い止めるうえで有効になります。

Q. WAF・ファイアウォールと不正検知ソリューションは何が違いますか?

A. ファイアウォールやWAF(Webアプリケーションファイアウォール)が外部との境界で通信を許可・遮断する「入口の門番」であるのに対し、不正検知ソリューションはその門を越えて内部に入り込んだ後の不審な挙動や、正規アカウントの異常な使われ方を見つける「内側の見張り」である点が異なります。

両者は役割が競合するものではなく、入口で防ぐ層と、侵入を前提に異常を検知する層として組み合わせることで、守りが厚くなります。

Q. 中小企業でも不正アクセスの標的になりますか?

A. 中小企業も不正アクセスの標的になり、むしろ対策の手薄さを突かれたり、取引先を攻撃するための「踏み台」にされたりするリスクがあります。実際、本記事の事例でも、カプコンでは海外拠点に残っていた旧型VPN機器が、半田病院では地域の医療機関のシステムが侵入口になりました。

企業規模の大小そのものではなく、更新されていない機器・使い回されたパスワード・放置された脆弱性といった「穴」の有無が、狙われるかどうかを分けます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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