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損害賠償条項の例文|状況別の文例と有利・不利の見分け方・無効になる書き方

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契約書レビュー比較表(2026年版)のプレビュー

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契約書レビュー比較表(2026年版)

契約書を作成していて損害賠償の条項を書く番になったとき、あるいは取引先から届いた契約書に損害賠償条項が入っていたとき、「どう書けばよいのか」「この内容のまま締結して不利にならないか」と手が止まる場面は少なくありません。損害賠償条項は、契約違反があったときに誰がどこまで賠償するかを左右し、ときに会社の負担を大きく左右します。

損害賠償条項は、民法の原則をそのまま使うことも、契約当事者の合意で範囲や上限を調整することもできます。そのため、同じ「損害賠償」でも、賠償の範囲を絞るか広げるか、上限を設けるか、違約金を定めるかによって、契約の有利・不利が変わります。

本記事では、状況別にそのまま使える損害賠償条項の例文を示したうえで、各例文が自社の有利・不利にどう効くか、民法の原則とどう違うか、そして無効になりかねない危険な書き方の線引きまでを整理します。自社の立場に合った条項を書き起こす、または相手から提示された条項を確認するための材料としてご活用ください。

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損害賠償条項とは

損害賠償条項とは、契約の当事者が契約に違反して相手方に損害を与えた場合に、その損害をどこまで・どのように賠償するかを定める条項です。契約違反があったときに賠償を請求できる根拠を契約書の中で明確にし、賠償の範囲や上限、請求の条件を当事者の合意で整えておく役割を持ちます。

損害賠償条項を置かなくても、契約違反があれば民法の原則(債務不履行による損害賠償)に従って賠償を請求できます。ただし、民法の原則だけでは「どこまでの損害を賠償するのか」「上限はあるのか」が明確にならず、争いになりやすいところです。損害賠償条項は、この民法の原則を前提にしつつ、自社の立場に合わせて範囲や上限を調整するために置かれます。

損害賠償とよく似た定めに「違約金」があります。違約金は、あらかじめ賠償額を決めておく取り決めで、損害賠償とは請求の仕方が異なります。両者の違いと使い分けは「違約金・免責条項との関係と使い分け」で後述します。

状況別の損害賠償条項の例文

ここからは、損害賠償条項が契約書で実際にどう書かれるのかを、状況別の例文で見ていきます。賠償の範囲を絞るか広げるか、上限を設けるか、違約金として定めるかによって書き方が変わります。各例文の後に、その一文で何が変わるか・どちらの立場に有利かを添えます。

以下の例文は理解のための一般的なひな形であり、実際の契約では対象範囲や条件が案件ごとに異なります。条項の作成・確認は、弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。文中の「甲」「乙」は契約当事者を指し、立場の説明では受注側(役務や物を提供して対価を受け取る側。賠償を負いやすい側)と発注側(対価を払って提供を受ける側)に分けて述べます。

基本形(民法の原則に沿った書き方)

賠償の範囲や上限を特に限定せず、民法の原則どおりに賠償責任を定める形です。出発点となる最もシンプルな書き方で、範囲や上限を加える前のベースになります。

甲又は乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、相手方に対し、その損害を賠償する責任を負う。

賠償の範囲や上限に触れていないため、賠償の範囲は民法416条の原則(通常損害が中心)で判断されます。どちらの立場にも特段の有利・不利がない中立的な出発点で、ここに範囲の限定や上限を書き足して自社の立場に寄せていきます。

賠償範囲を通常損害に限定する(受注側=払う側に有利)

賠償する損害を「直接かつ通常の損害」に絞り、逸失利益(得られたはずの利益)や間接損害を外す形です。賠償を負うリスクが高い受注側(ベンダー・売主)が、想定外に大きな賠償を避けるために使います。

甲又は乙が前条に基づき負う損害賠償の範囲は、現実に発生した直接かつ通常の損害に限るものとし、逸失利益、特別損害及び間接損害を含まない。ただし、故意又は重大な過失による場合は、この限りでない。

「通常の損害に限る」と書くことで、逸失利益や、特別な事情から生じた損害を賠償の対象から外せます。あわせて使われる「直接損害」は契約違反から直接生じた損害、「間接損害」はそこから波及して生じた損害(取引先への対応費用や信用の低下による損失など)を指し、間接損害を外すほど賠償の範囲は狭まります。

ただし、「直接」「通常」といった言葉そのものに法律上の固定した定義があるわけではなく、ある損害がそこに含まれるかは最終的に解釈で判断されます。文言だけで線引きしたつもりでも、意図どおり狭められないことがあります。確実に外したい損害(逸失利益・データの復旧費用・第三者対応費用など)があれば、除外する項目を具体的に書き出しておくと行き違いを防げます。

賠償を負う側の負担を軽くする書き方で、受注側に有利です。ただし、故意・重過失の場合まで免れる書き方は無効になりうるため、多くの例文ではただし書きで除外しています(無効・危険になる書き方の線引きで後述)。

賠償額に上限を設ける(受注側=払う側に有利)

賠償できる金額に天井を設ける形です。範囲の限定とあわせて使われることが多く、万一のときの支払額を予測可能な範囲に収めたい受注側が用います。

甲又は乙が相手方に対して負う損害賠償の額は、本契約に基づき受領した対価の総額(又は金〇〇円)を上限とする。ただし、故意又は重大な過失による場合は、この限りでない。

上限額は「委託料の総額」「直近〇か月分の対価」「金〇〇円」などで定めます。賠償額が読めるようになるため受注側に有利な一方、発注側から見れば、損害が上限を超えても超過分を回収できないことを意味します。上限の金額や基準が自社にとって妥当かは、取引の規模と想定リスクに照らして見極めましょう。

賠償範囲を広げる(発注側=請求する側に有利)

賠償の対象を逸失利益や弁護士費用まで広げる形です。相手の違反で損害を被る立場になりやすい発注側(ユーザー・買主)が、回収できる範囲を広く確保するために使います。

本契約に違反して相手方に損害を与えた当事者は、相手方に対し、逸失利益、間接損害及び損害賠償請求に要した合理的な弁護士費用を含む一切の損害を賠償する責任を負う。

「一切の損害」「逸失利益を含む」と書くことで、賠償の範囲を民法の原則より広げられます。請求する側に有利な一方、賠償を負う側にとっては負担が大きく膨らむ書き方です。弁護士費用を含める場合、実際にどこまで認められるかには判例上の限界があるため、「弁護士費用を含む」で全額取れるのかもあわせてご確認ください。

違約金(賠償額の予定)を定める

賠償額をあらかじめ決めておく形です。違反があったときに損害額を立証しなくても決めた額を請求できるため、損害の算定が難しい取引で使われます。

甲又は乙が本契約に違反した場合、違反した当事者は、相手方に対し、違約金として金〇〇円を支払う。前項の違約金は、民法第420条に基づく損害賠償額の予定とする。

違約金は、損害額を立証しなくても決めた額を請求できる点が通常の損害賠償と異なります。その法的な位置づけ(民法420条による「賠償額の予定」の推定)や通常の損害賠償との使い分け、相手が労働者の場合の制限は、後述の違約金・免責条項との関係と使い分けで解説します。

弁護士費用を損害に含める

前の「賠償範囲を広げる」型のうち、特に弁護士費用に絞って取り込む形です。契約違反の対応で弁護士に依頼したときの費用まで相手に負担させたい場合に用います。

本契約に違反して相手方に損害を与えた当事者は、相手方に対し、当該違反により生じた損害(当該損害賠償請求に要した合理的な弁護士費用を含む。)を賠償する責任を負う。

契約で明記しておくことに意味がある書き方ですが、明記しても実額の全部が当然に認められるわけではありません。この点は後述の「弁護士費用を含む」で全額取れるのかで詳しく解説します。

請求できる期間を限定する

損害賠償を請求できる期間を短く区切る形です。契約終了後にいつまでも賠償請求を受ける状態を避けたい側が用います。

本条に基づく損害賠償の請求は、損害及びその発生の原因を知った日から〇か月以内に書面により行うものとし、当該期間を経過したときは、相手方に対する損害賠償請求権は消滅する。

請求できる期間を区切ることで、賠償を負う側は一定期間後にリスクから解放されます。請求する側にとっては、期間内に気づいて書面で通知しないと権利を失うため、短すぎる期間が設定されていないかを確認する必要があります。

遅延損害金(支払いの遅れに対する損害金)を定める

代金や報酬の支払いが遅れた場合の損害金(遅延損害金)の利率を定める形です。利率を定めておくと、遅延したときに民法の法定利率に代えて約定の利率を適用できます。

乙が本契約に基づく金銭の支払を遅延したときは、乙は甲に対し、支払期日の翌日から支払済みに至るまで、年〇%の割合による遅延損害金を支払う。

利率を定めなければ民法の法定利率(2020年4月以降の当初値は年3%)によります。高すぎる利率には歯止めがある点は、後述の無効・危険になる書き方の線引きで解説します。

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自社の立場でどう選ぶか(払う側/請求する側)

どの例文を選ぶべきかは、自社がその契約で「賠償を負いやすい側」か「賠償を請求する側」かによって変わります。同じ損害賠償条項でも、立場によって有利な書き方が逆になります。

損害賠償条項の立場別の整理。基本形は民法の原則どおりで中立の出発点。受注側(払う側、ベンダー・売主)に有利な書き方は、賠償範囲を通常の損害に限定、賠償額に上限を設ける、請求できる期間を区切る。発注側(請求する側、ユーザー・買主)に有利な書き方は、賠償範囲を逸失利益まで広げる、弁護士費用を損害に含める、賠償額の上限は設けない。

賠償を負いやすい側(受注側・払う側)の場合

役務や物を提供して対価を受け取る受注側は、自社の履行に問題があったときに賠償を求められる立場になりやすいため、賠償のリスクをできるだけ予測可能にすることが基本方針になります。具体的には、賠償範囲を「直接かつ通常の損害」に限定して逸失利益・間接損害を外し、賠償額に上限を設け、必要に応じて請求できる期間も区切ります。

相手から提示された契約書に、賠償範囲が「一切の損害」と広く定められていたり、上限の定めがなかったりする場合は、自社に不利な可能性があります。範囲の限定や上限の追加を交渉の対象にできないかを検討します。

前述の型を組み合わせると、受注側に有利な損害賠償条項は次のような一本の形になります(必要に応じて前述の請求期間の限定も加えます)。

甲又は乙が本契約に違反して相手方に損害を与えた場合に負う損害賠償の範囲は、現実に発生した直接かつ通常の損害に限り、逸失利益、特別損害及び間接損害を含まない。また、その賠償額の累計は、本契約に基づき相手方から受領した対価の総額を上限とする。ただし、故意又は重大な過失による場合は、この限りでない。

賠償を請求する側(発注側・請求する側)の場合

対価を払って提供を受ける発注側は、相手の違反で損害を被ったときに十分に回収できることが基本方針になります。賠償範囲を逸失利益や弁護士費用まで広げ、賠償額の上限は設けないか、設けるとしても自社が想定する損害をカバーできる水準にします。

相手から提示された契約書に、賠償範囲を狭く限定する定めや低い上限額が入っている場合は、自社が回収できる範囲が制限されます。重要な取引ほど、上限額の水準や範囲の限定が自社の想定するリスクに見合うかを見極めることが重要です。

反対に、請求する側に有利な損害賠償条項は、範囲を広く取り上限を設けない次のような形になります。

甲又は乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、相手方に対し、逸失利益、間接損害及び損害賠償請求に要した合理的な弁護士費用を含む一切の損害を賠償する責任を負う。

民法ではどうなっている?契約で何を・なぜ変えるのか

損害賠償条項を正しく書くには、前提となる民法のルールを押さえておく必要があります。損害賠償条項は、この民法の原則を出発点に、範囲や上限を当事者の合意で調整するものだからです。ここでは、契約違反の損害賠償に関わる民法の基本を整理します。

契約違反による損害賠償(民法415条)

契約上の義務(債務)が果たされなかった場合の損害賠償は、民法415条が定めています。損害賠償条項を置かなくても、この規定に基づいて賠償を請求できます。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

出典:民法第415条第1項|e-Gov法令検索

ただし書きのとおり、契約の趣旨や取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由(帰責事由がない場合)には、賠償責任を負いません。損害賠償条項で「故意又は過失がある場合に限り」などと帰責事由の範囲を定めるのは、この原則を契約で明確にする意味があります。契約関係がない場面でも、故意・過失で他人の権利を侵害すれば不法行為として損害賠償責任を負います(民法709条)。

賠償される損害の範囲(民法416条)

賠償の対象となる損害の範囲は、民法416条が定めています。損害賠償条項で範囲を限定したり広げたりするのは、この条文が定める原則を調整するものです。

第一項 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
第二項 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

出典:民法第416条|e-Gov法令検索

民法は、賠償の対象を原則として「通常生ずべき損害(通常損害)」とし、特別の事情による損害(特別損害)は、その事情を予見すべきであった場合に限って賠償の対象になるとしています。損害賠償条項で「通常の損害に限る」と書くのは特別損害などを外す方向、「一切の損害」と書くのは広げる方向の調整です。

2020年4月1日に施行された改正民法で、416条2項は「予見し、又は予見することができたとき」から「予見すべきであったとき」に改められ、予見の有無という事実の判断から、予見すべきだったかという規範的な評価へと基準が変わりました。古い契約書のひな形を流用する際は、現行の表現に沿っているか確かめましょう。

出典・参考資料(1件)

損害賠償条項に書くべき3つの要素

損害賠償条項を自分で組み立てたり、相手の条項を確認したりするときは、次の3つの要素に分けて見ると整理しやすくなります。前述の民法の原則(通常損害・特別損害の区別)を、この3要素で具体的に調整していくイメージです。

① 賠償責任の発生要件(どんなときに賠償するか)

どのような場合に賠償責任が生じるかを定める部分です。「故意又は過失がある場合に限り」「故意又は重大な過失がある場合に限り」と帰責事由を絞るほど、賠償を負う側の責任は限定されます(絞らないほど請求する側に有利)。

② 賠償の範囲(どこまでの損害を賠償するか)

賠償の対象となる損害の範囲を定める部分です。民法416条の通常損害を基準に、「直接かつ通常の損害に限る」と絞るか、「逸失利益・間接損害を含む一切の損害」と広げるかを決めます。ここで、「直接の損害に限る」「現実に生じた損害に限る」といった限定文言がどこまで有効に範囲を狭めるかは解釈に幅があり、表現だけで安心せず、何を外す意図なのかを明確にすることが大切です。

③ 賠償額の上限(いくらまで賠償するか)

賠償できる金額の上限を定める部分です。「委託料の総額」「金〇〇円」などを基準に上限を設けると、賠償を負う側は支払額を予測でき、請求する側は回収できる額が制限されます(上限の例文は前掲)。多くの条項では、故意・重過失の場合は上限を適用しないただし書きを置きます。

無効・危険になる書き方の線引き

損害賠償条項は当事者の合意で調整できますが、どんな内容でも有効になるわけではありません。相手の立場や取引の種類によっては、法律で無効とされたり、そもそも定めることが禁じられたりする書き方があります。レビューの際の危険信号として、代表的な線引きを押さえておきます。

損害賠償・違約金の定めが相手の属性で規制が変わることの整理。相手が消費者の場合、賠償責任の全部免除は無効で、故意・重過失まで免れる書き方も認められない(消費者契約法8条)。相手が労働者の場合、違約金や賠償額の予定を定めること自体が禁止(労働基準法16条)。相手が中小受託事業者(下請)の場合、損害賠償・違約金の名目で不当に代金を減額する定めは規制に触れるおそれ(下請法・取適法5条)。事業者間で一方的に過大な違約金や著しく不公平な免責は公序良俗違反で無効になりうる(民法90条)。番外として、遅延損害金の利率が高すぎる場合、貸付にあたる契約は利息制限法で超過部分が無効、一般の取引でも著しく高い利率は公序良俗違反になりうる。

相手が消費者の場合:全部免責は無効(消費者契約法8条)

相手が消費者である契約(利用規約など)では、事業者の賠償責任を全部免除する条項は無効です。一部免除でも、事業者側の故意・重過失による場合まで免れる書き方は認められません。

次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。/一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項/二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

出典:消費者契約法第8条第1項|e-Gov法令検索

さらに2023年6月1日に施行された改正で、一部免除の条項であっても、軽い過失の場合にだけ適用されると明示していない包括的な免責文言(いわゆるサルベージ条項)は無効とされました(消費者契約法8条3項)。事業者間(BtoB)の契約には直接適用されませんが、相手に消費者が含まれる利用規約などでは特に注意が必要です。

相手が労働者の場合:賠償額の予定は禁止(労働基準法16条)

相手が労働者である労働契約では、違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ決めておいたりすること自体が禁じられています。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

出典:労働基準法第16条|e-Gov法令検索

これは、あらかじめ賠償額を定める合意を禁じるもので、労働者が実際に与えた損害について相当な範囲で賠償を求めること自体を禁じるものではありません。業務委託契約でも、実態が労働契約と評価される場合には同様の規制が及びます。

一方的に過大な内容:公序良俗違反で無効になりうる(民法90条)

消費者契約や労働契約にあたらない事業者間の契約でも、一方的に過大な違約金や、著しく不公平な免責は、公序良俗に反するものとして無効とされる場合があります。

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

出典:民法第90条|e-Gov法令検索

相手が下請(中小受託事業者)の場合:下請法(取適法)の規制

製造委託・役務委託などで相手が中小の受託事業者の場合、いわゆる下請法による規制がかかります。この法律は2025年の改正で2026年1月1日に施行され、名称が中小受託取引適正化法(取適法)に改められました。あわせて用語も変わり、従来の親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者と呼ばれます。

委託事業者が中小受託事業者の責めに帰すべき理由なく代金を減額することや、不当に経済上の利益を提供させることなどが禁止されています(同法5条)。損害賠償・違約金の名目で実質的に代金を減らすような定めは、この規制に触れるおそれがあります。改正で禁止行為や適用対象が具体的にどう変わったのかは、下請法改正(取適法)で変わる6つのポイントで条文に沿って解説しています。

下請法(取適法)の対象にならない取引でも、取引上優越する側が不当に相手へ損害賠償や違約金を課す行為は、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」として問題になる場合があります。

遅延損害金の利率が高すぎる場合:貸付は利息制限法、一般の取引は公序良俗で無効になりうる

支払いの遅れに対する遅延損害金は、契約で利率を定めればその約定利率が優先しますが、高すぎる利率には歯止めがあります。契約が実質的に金銭の貸付にあたる場合は、利息制限法が遅延損害金(賠償額の予定)の利率の上限を定め、超過部分は無効になります。

業務委託や売買など一般の取引の遅延損害金そのものを利息制限法が直接制限するわけではありませんが、著しく高い利率は公序良俗違反(民法90条)として無効とされる場合があります。利率を定めなかった場合は民法の法定利率(2020年4月以降の当初値は年3%で、3年ごとに見直されます)によります。

出典・参考資料(5件)

違約金・免責条項との関係と使い分け

損害賠償条項と近い場面で登場するのが、違約金条項と免責条項です。役割が異なるため、使い分けと組み合わせを押さえておきます。

違約金(賠償額の予定)との使い分け

通常の損害賠償は、実際に生じた損害を立証して請求します。これに対して違約金は、あらかじめ決めた額を、損害額の立証なしに請求できる点が違います。民法420条3項により、違約金は「損害賠償額の予定」と推定されます。

第一項 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
第三項 違約金は、賠償額の予定と推定する。

出典:民法第420条|e-Gov法令検索

違約金を定めると損害額の立証が不要になる一方、原則として実際の損害が予定額を上回っても超過分を別途請求するのは難しくなります。損害額の立証が難しい取引では違約金が向き、実損を回収したい場合は通常の損害賠償条項が向きます。前述のとおり、相手が労働者の場合は賠償額の予定自体が禁止されます。

免責条項との関係

免責条項は、一定の損害について賠償責任を負わないことを定める条項で、損害賠償条項の範囲や上限を限定する形で組み合わされます。賠償範囲を「通常損害に限る」と絞ったり上限を設けたりするのも、広い意味では責任を限定する免責的な定めです。ただし、前述のとおり、相手が消費者の場合の全部免責や、故意・重過失まで免れる書き方は無効になりうるため、免責の範囲には線引きがあります。

「弁護士費用を含む」で全額取れるのか

損害賠償条項に「弁護士費用を含む」と書けば、紛争対応でかかった弁護士費用を全額取り戻せると考えがちですが、実際にはそう単純ではありません。裁判では、弁護士費用がどこまで損害と認められるかに一定の限界があります。

まず前提として、契約違反(債務不履行)を理由に相手の履行を求める一般的な場面では、契約に特段の定めがなければ、弁護士費用は損害賠償として請求できないのが原則とされています(最高裁令和3年1月22日判決)。だからこそ、弁護士費用も賠償の対象に含めたい場合は、損害賠償条項でその旨を明記しておく意味があります。

ただし、条項で明記しても、請求できる弁護士費用は「合理的な範囲」に限られ、実際に支払った額の全部が当然に認められるわけではありません。

参考として、不法行為に基づく損害賠償では、弁護士費用は事案の難易・請求額・認容額などを踏まえて相当と認められる範囲で損害に含まれるとされ(最高裁昭和44年2月27日判決)、実務では認容額の1割程度が目安とされてきました。

この「1割程度」は不法行為での目安であり、契約条項に自動的に適用される上限ではありませんが、「明記すれば実額を全部取り戻せる」という理解は誤りである点は共通します。

弁護士費用を条項に含めるかどうかは、取り戻せる範囲に限界があることを踏まえたうえで、抑止力としての意味も含めて判断するとよいでしょう。

出典・参考資料(1件)

損害賠償条項をレビューするときの確認ポイント

ここまでの内容を踏まえ、自社で作成した条項や、相手から提示された条項を確認するときの観点を整理します。次の点を順に見ていくと、不利な内容や無効のリスクに気づきやすくなります。

  • 賠償範囲が自社の立場に合っているか:賠償を負いやすい側なら「通常損害に限る」などの限定があるか、請求する側なら必要な範囲をカバーできているか。
  • 賠償額の上限の有無と水準:上限があるか、ある場合はその金額・基準が取引規模と想定リスクに見合うか。
  • 故意・重過失の扱い:範囲の限定や上限が、故意・重過失の場合にも及ぶ書き方になっていないか(及ぶと無効になりうる)。
  • 相手の属性による規制:相手が消費者・労働者・中小受託事業者の場合、無効・禁止になる定めが含まれていないか。
  • 解除条項・存続条項との整合:契約解除後も損害賠償条項が効力を持つよう、存続(残存)条項でカバーされているか。

これらの観点は、自社に損害賠償条項の判断に慣れた担当者がいれば自力でも確認できますが、重要な契約や判断に迷う条項は、契約書レビューの専門サービスや弁護士に確認すると、不利な条項や無効のリスクの見落としを防げます。

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不利な条項の見落とし・無効リスクを確認する方法

損害賠償条項を自力で調整したあと、あるいは相手から届いた条項を確認するとき、不利な内容や無効になりうる書き方を見落としていないかを第三者の目で確かめたい場面があります。ここでは、契約書のレビューをAIや弁護士に任せられるサービスを紹介します。以下は主要なサービスの比較です。

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サービス名CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)LAWGUE(ローグ)法務オートメーション「OLGA」
提供会社MOLTON株式会社FRAIM株式会社GVA TECH株式会社
レビュー方式AI+弁護士
(生成AIレビュー+弁護士審査プラン)
AI
(自社ナレッジを反映。判断は人が行う設計)
AI
(弁護士監修ひな型+自社基準でリスク検出)
対応ファイル形式Microsoft Word完結
(CloudLegal AIエディター)
Wordアドイン対応Word・PDF対応
(OCR対応)
初期費用0円要問い合わせ要問い合わせ
(中小企業向けプランは10万円〜/税別)
月額費用11,000円〜
(税込・ブロンズ)
要問い合わせ
(個別見積もり)
要問い合わせ
(中小企業向けプランは1万円〜/税別)
特徴Word上で不利な条文・欠落した条項を検出し修正案を提示。弁護士が内容を審査するレビュープランも選択できる自社の過去契約を踏まえたAIレビューと不足条項の提案。差分比較・新旧対照表のWord出力に強み数百種類超の契約書ひな型を標準搭載し、Word・PDFの差分比較に対応。提供元GVA TECHは東証グロース上場
詳細情報公式資料を見るオンライン相談を予約オンライン相談を予約

ここで取り上げた3サービスのほかにも契約書レビューサービスは数多くあります。AIによるレビューと弁護士によるレビューの違いや使い分け、費用、自社に合うサービスの選び方まで含めて幅広く比較したい場合は、以下の記事をご覧ください。

CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)のウェブサイト

CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)は、生成AIと弁護士の体制を組み合わせ、契約書の作成・AIによるレビュー・法務相談などをオンラインで提供する企業法務サービスです。社内に法務の専任者や顧問弁護士を置きにくい企業が、損害賠償条項を含む契約の確認を任せたい場合の選択肢になります。

Microsoft Word のサイドバーでAIと対話しながら不利な条文や欠落した条項を検出し、修正案を受け取れる「CloudLegal AIエディター」を備えるほか、弁護士が内容を審査する契約書レビュープランも用意されています。AIで素早く確認しつつ、重要な条項は弁護士の目も通したいという使い分けに向いています。

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金沢由樹氏
MOLTON株式会社 CSMO(最高営業・マーケティング責任者)
金沢由樹氏
独自インタビューより

特に分かりやすいのが対応スピードです。従来の顧問弁護士だと回答に1〜2週間かかることがありましたが、クラウドリーガルの弁護士相談や契約書レビュー・リーガチェックは1日、2日でお返しできています。また、クラウドリーガルで搭載しているリーガルAIも活用してさらに対応スピードを上げています。弁護士相談については、もちろん案件の種類や状況によって変わりますが、リードタイムが短くなるだけでも、現場の意思決定や契約の回転は変わってきます。

2. LAWGUE(ローグ)(FRAIM株式会社)

LAWGUE(ローグ)のウェブサイト

LAWGUE(ローグ)は、契約書や社内規程などの文書を「作成・編集・レビュー」する作業をAIで効率化する、FRAIM株式会社のクラウドサービスです。自社の過去の契約書(ナレッジ)を踏まえたAIレビューや、不足している条項の提案、類似条項の検索といった機能を備え、損害賠償条項を自社のひな形から書き起こす・直す作業を支援します。

編集履歴の自動管理や、新旧バージョンの差分比較、新旧対照表のWord出力など、条項を繰り返し修正する場面に強みがあります。AIの役割を「見つける」に限定し、最終的な判断は人が行う設計を掲げている点も特徴です。料金は利用人数や利用シーンに応じた個別見積もり方式のため、具体的な費用は問い合わせや資料で確認できます。

3. 法務オートメーション「OLGA」(GVA TECH株式会社)

法務オートメーション「OLGA」のウェブサイト

GVA TECH株式会社が提供するOLGA(オルガ)は、法務案件の受付から契約書のレビュー・管理までを一元化する法務オートメーションプラットフォームです。AI契約レビューのモジュールでは、契約書のリスク箇所をAIが自動で検出して修正案を提示し、Word・PDFのどちらにも対応します。弁護士が監修したひな形をベースにしつつ、自社のひな形やナレッジを設定したレビューもできます。

数百種類を超える契約書テンプレートを標準で備え、文書の差分比較にも対応するため、損害賠償条項の書き方のたたき台を得たい場合にも使えます。提供元のGVA TECHは東証グロース市場に上場しています。標準プランの料金は個別見積もりで、2026年には中小企業向けに初期費用10万円・月額1万円(いずれも税別)からのプランも新設されています。

まとめ

損害賠償条項は、契約違反があったときの賠償の範囲・上限・条件を定める条項で、民法の原則を出発点に当事者の合意で調整します。状況別の例文には、基本形のほか、賠償範囲を通常損害に限定する型(受注側に有利)、賠償額に上限を設ける型、範囲を逸失利益まで広げる型(発注側に有利)、違約金を定める型、弁護士費用を含める型などがあり、自社が賠償を負いやすい側か請求する側かによって選ぶべき書き方が変わります。

一方で、相手が消費者・労働者・中小受託事業者の場合には無効・禁止になる書き方があり、「弁護士費用を含む」と明記しても実額の全部が取れるとは限りません。自社で例文を調整したうえで、不利な条項や無効のリスクの見落としが心配なときは、契約書レビューの専門サービスや弁護士に確認することで、安心して締結に進めます。

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よくある質問(FAQ)

Q. 損害賠償条項とは何ですか?

A. 損害賠償条項とは、契約の当事者が契約に違反して相手に損害を与えたときに、その損害をどこまで・どのように賠償するかを定める条項です。民法の原則(債務不履行による損害賠償)を前提に、賠償の範囲や上限、請求の条件を当事者の合意で調整する役割を持ちます。

Q. 損害賠償条項がなくても損害賠償は請求できますか?

A. 損害賠償条項がなくても、契約違反があれば民法415条(債務不履行)に基づいて損害賠償を請求できます。ただし、民法の原則だけでは「どこまでの損害を賠償するか」「上限はあるか」が明確にならず争いになりやすいため、損害賠償条項を置いて範囲・上限・条件をあらかじめ定めておくことに意味があります。

Q. 損害賠償条項で民法と異なるルールを定めることはできますか?

A. 損害賠償条項では、賠償の範囲を通常損害に絞ったり、賠償額に上限を設けたりと、民法の原則を当事者の合意で調整できます。もっとも、どんな内容でも有効になるわけではなく、相手が消費者・労働者・中小受託事業者の場合などには、法律で無効・禁止とされる書き方がある点に注意が必要です。

Q. 損害賠償条項に賠償額の上限を設けるのは一般的ですか?

A. 賠償額の上限は、ベンダーや売主など賠償を負いやすい受注側の契約では一般的に設けられます。委託料の総額や一定の金額などを基準にし、多くは故意・重過失の場合に上限を適用しないただし書きを添えます。請求する側にとっては回収できる額が制限されるため、上限の金額や基準が取引規模と想定リスクに見合うかを確かめましょう。

Q. 損害賠償条項で無効になりやすい書き方はどれですか?

A. 相手が消費者の場合の全部免責(消費者契約法8条)、相手が労働者の場合の賠償額の予定(労働基準法16条)、一方的に過大な違約金・免責(公序良俗違反・民法90条)は、無効や禁止になりやすい書き方です。

事業者間の契約でも、賠償範囲の限定や上限が故意・重過失の場合にまで及ぶ書き方は無効になりうるため、「ただし、故意又は重大な過失による場合は、この限りでない。」といったただし書きで除外するのが一般的です。

Q. 損害賠償条項に「弁護士費用を含む」と書けば全額取り戻せますか?

A. 「弁護士費用を含む」と明記しても、取り戻せるのは合理的な範囲に限られ、実際に支払った額の全部が当然に認められるわけではありません。契約違反(債務不履行)では特段の定めがなければ弁護士費用は原則として請求できないため明記しておく意味はありますが、認められる額には判例上の限界があり、「含めれば実額を全部取れる」という理解は誤りです。

Q. 損害賠償条項とは別に違約金を定めた場合、両方を請求できますか?

A. 違約金を「損害賠償額の予定」として定めた場合、原則として、実際の損害が違約金の額を上回っても、超過分を別途請求することは難しくなります。民法420条3項により違約金は損害賠償額の予定と推定されるためで、あらかじめ決めた額のほかに実損を重ねて請求できるとは限りません。実損をしっかり回収したい取引では、違約金ではなく通常の損害賠償条項が向きます。

Q. 損害賠償条項で故意・重過失の例外(ただし書き)は必要ですか?

A. 賠償範囲の限定や賠償額の上限を定める場合、故意・重過失のときは適用しないただし書きを置くのが一般的で、実務上の必要性は高いといえます。故意・重過失の場合まで責任を免れる書き方は無効とされるおそれがあるためで、「ただし、故意又は重大な過失による場合は、この限りでない。」といった除外を入れて無効リスクを避けます。

Q. 損害賠償条項で遅延損害金の利率はどう定めますか?

A. 支払いの遅れに対する遅延損害金は、契約で利率を定めればその約定利率が優先し、定めがなければ民法の法定利率(2020年4月以降の当初値は年3%で、3年ごとに見直されます)によります。ただし、契約が実質的に金銭の貸付にあたる場合は利息制限法による上限があり、一般の取引でも著しく高い利率は公序良俗違反として問題になりえます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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