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取適法の対象は3ステップで判定できる|5類型・資本金・従業員数の早見表と対象外ケース

取適法の対象は3ステップで判定できる|5類型・資本金・従業員数の早見表のサムネイル画像

2026年1月1日、取適法(通称:中小受託取引適正化法)が施行されました。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、旧下請法を全面的に見直した新法です。対象となる取引の類型が5つに拡大され、資本金要件に加えて新たに従業員数基準も導入されています。本記事では、自社の外注取引や自分が請けている取引が新法の対象になるかを、判定に必要な要点で整理します。

本記事では、対象取引の5類型・資本金と従業員数の判定表・対象外規定を、1つの記事で判定できる形に整理します。判定は「取引類型に当てはまるか」「事業者規模の要件を満たすか」「除外規定に触れないか」の3ステップで完結する構成です。

さらに、対象になった場合に自社が負う義務と禁止行為の輪郭までカバーします。判定後の次アクションとして自社契約書の点検までを見通せる材料として活用してください。

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取適法の対象は3ステップで判定できる

取適法(中小受託取引適正化法)の対象になるかは、次の3ステップで判定できます。まず取引が5類型のいずれかに当てはまるかを見て、次に発注側と受託側の事業者規模が要件を満たすかを見て、最後に対象外の取引に該当しないかを確認します。

  1. 取引類型で判定する:製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託の5類型(対象となる取引の5類型)のいずれかに当てはまるか。1つも当てはまらなければ対象外。
  2. 事業者規模で判定する:発注側(委託事業者)と受託側(中小受託事業者)が、取引類型ごとに定められた資本金または従業員数の要件を満たすか(対象となる事業者の要件)。資本金と従業員数のどちらか一方でも該当すれば対象になります。
  3. 除外規定で判定する:建設工事の請負など、他法令により取適法の適用が除外される取引でないか(対象外となる取引)。

1〜3のすべてに該当すれば、その取引は取適法の対象です。各ステップの詳細は以降の節で解説します。

出典・参考資料(2件)

対象となる取引の5類型

取適法の対象取引は5つの類型に分かれます。旧下請法の4類型(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)に、2026年1月施行の改正で「特定運送委託」が新設されました。役務提供委託の定義そのものは旧下請法から大きく変わっていませんが、荷主から運送業者への納品運送は改正後は独立の「特定運送委託」でカバーされる形になりました。

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取引類型製造委託修理委託情報成果物作成委託役務提供委託特定運送委託
定義物品の製造・加工を他者に委託物品の修理を他者に委託プログラム・映像・設計図・広告制作物などの作成を委託他者への提供を目的とした役務の提供を委託荷主が販売・製造・修理・作成する物品を、取引相手方(買主等)に届けるための運送を運送事業者に委託
代表的な具体例部品製造の委託、OEM生産、下請け加工機械修理、車両整備、家電修理の受託業務システム開発、ソフトウェア開発、動画・音楽制作、設計図面作成運送・保管・情報処理・データ処理・BPO・清掃・警備などの受託業務荷主から運送業者への納品運送(従来は運送事業者間の再委託のみ対象)
改正での位置付け従来から継続従来から継続従来から継続従来から継続(定義は据え置き)2026年新設
出典・参考資料(2件)

製造委託(従来から継続)

製造委託は、事業者が業として販売する物品や請負製造する物品の製造・加工を他者に委託する取引を指します。旧下請法から継続する類型で、部品製造・OEM生産・下請け加工などが典型です。自社ブランドで販売するために製造委託する場合や、顧客から請け負った物品の製造を再委託する場合も含まれます。

修理委託(従来から継続)

修理委託は、事業者が業として請け負う物品の修理や、自社で使う物品の修理を他者に委託する取引です。機械・車両・家電・機器類の修理受託業務が該当し、自社の設備を維持管理するための修理を外部に委託する場合も含まれます。

情報成果物作成委託

情報成果物作成委託は、プログラム・映像・設計図・広告制作物などの「情報成果物」の作成を他者に委託する取引です。システム開発、ソフトウェア・アプリ開発、動画・音楽・アニメーション制作、設計図面作成、広告クリエイティブ制作などが該当します。

情報成果物の場合、自社利用目的でも対象になる点に注意が必要です。自社で使うためのソフトウェアやシステムを外部に開発委託する場合も、他の要件を満たせば取適法の対象となります。

役務提供委託(定義は旧下請法から継続)

役務提供委託は、他者への提供を目的とした役務の提供を委託する取引です。運送・保管・情報処理・データ処理・BPO・清掃・警備などの受託業務が代表例で、旧下請法から定義そのものは大きく変わっていません(政令で列挙されているのは、資本金グループの分岐=グループ①側で扱う対象の指定であり、役務提供委託の定義を絞る列挙ではありません)。

役務提供委託は情報成果物作成委託と異なり、自社利用目的の役務は対象になりません。第三者への提供を目的とする役務を再委託する場合が主な対象になります。

特定運送委託(2026年新設)

特定運送委託は、2026年1月施行の改正で新設された類型です。荷主が販売・製造・修理・作成する物品を、その取引相手方(買主等)に届けるための運送を運送事業者に委託する取引を指します。従来は運送事業者間の再委託のみが役務提供委託として対象でしたが、この納品運送は新たに独立の類型として対象化されました。

この改正により、製造業や小売業などが自社の商品輸送を運送業者に委託する取引にも取適法が適用される可能性があります。物流業界全体で契約条件・支払条件の見直しが必要になった類型です。

出典・参考資料(2件)

対象となる事業者の要件(資本金・従業員数の判定表)

取引類型が5類型のいずれかに当てはまったら、次は発注側と受託側の事業者規模が要件を満たすかを判定します。改正法では従来の資本金基準に加えて、2026年1月から新たに従業員数基準が導入されました。取引類型のグループごとに、発注側・受託側の資本金と従業員数の組み合わせで対象となる関係が決まります。

【判定表】5類型グループ × 発注側・受託側の資本金/従業員数

下表で、自社の取引類型がどちらのグループに当たるかを行で選び、発注側(委託事業者)と受託側(中小受託事業者)の資本金と従業員数の組み合わせを列で確認してください。資本金と従業員数はどちらか一方でも該当すれば対象になります。

「常時使用する従業員数」の数え方は公取委運用に従い、原則として正社員に加えてパート・アルバイトも算定に含めます(派遣社員は派遣元側でカウント)。

ここで言う「政令で定める情報成果物・役務提供委託」(グループ①側扱い)は、下請法施行令1条が「プログラム/運送/物品の倉庫における保管/情報処理」の4つを列挙しており、これらは資本金3億円/従業員300人ラインで判定します。それ以外の情報成果物作成(映像・音楽・広告制作物・設計図面)と役務提供(BPO・清掃・警備等)はグループ②で、資本金5,000万円/従業員100人ラインで判定します。

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取引類型グループグループ①:製造委託/修理委託/特定運送委託/政令で定める情報成果物・役務提供委託(プログラム・運送・物品の倉庫における保管・情報処理)グループ②:情報成果物作成委託/役務提供委託(グループ①に列挙された政令指定以外)
発注側/受託側の資本金要件発注側 3億円超 × 受託側 3億円以下、または 発注側 1,000万円超3億円以下 × 受託側 1,000万円以下発注側 5,000万円超 × 受託側 5,000万円以下、または 発注側 1,000万円超5,000万円以下 × 受託側 1,000万円以下
発注側/受託側の従業員数要件(2026年新設)発注側 300人超 × 受託側 300人以下発注側 100人超 × 受託側 100人以下
出典・参考資料(2件)

資本金要件

資本金要件は旧下請法から引き継がれた基準で、発注側と受託側の資本金階級を組み合わせて判定します。取引類型のグループにより、要件が異なります。

グループ①(製造委託・修理委託・特定運送委託、および政令で定めるプログラム・運送・物品の倉庫における保管・情報処理)では、発注側が資本金3億円超で受託側が3億円以下、または発注側が1,000万円超3億円以下で受託側が1,000万円以下の場合に対象となります。

グループ②(情報成果物作成委託・役務提供委託でグループ①の政令指定に含まれないもの)では、発注側が資本金5,000万円超で受託側が5,000万円以下、または発注側が1,000万円超5,000万円以下で受託側が1,000万円以下の場合に対象です。

受託側の資本金要件(各グループで定める3億円以下・5,000万円以下・1,000万円以下といった基準額以下)には、資本金・出資を持たない個人事業者(フリーランス)も含まれます。したがって発注側が上記の資本金または従業員数の要件を満たす事業者であれば、個人事業者への発注も取適法の対象になり得ます(この場合、後述のフリーランス法も併せて適用され得る点に注意してください)。

従業員数要件(2026年新設)

従業員数要件は改正で新設された基準です。資本金だけでは対象にならなかった中規模企業が対象化される可能性があります。

グループ①では、発注側の従業員数が300人超で受託側が300人以下の場合に対象となります。グループ②では、発注側が100人超で受託側が100人以下の場合に対象です。従業員数基準は資本金基準と違い、上下2階級ではなくこの1組のみが定められています。

資本金と従業員数のどちらか一方でも該当すれば対象

資本金要件と従業員数要件は「どちらも満たす必要はなく、一方でも該当すれば対象になる」というのが改正法の趣旨です。たとえば発注側の資本金が要件に満たなくても、従業員数が要件を満たせばその発注側は委託事業者として取扱われます。受託側も同様です。

このため、資本金の増減で取適法の対象外に持ち込む対応は改正後は難しくなり、より広い企業が新法の枠組みに入ってくることになります。

出典・参考資料(2件)

対象外となる取引(除外規定)

取引類型と事業者規模が要件を満たしていても、他法令によって適用が除外される取引や、そもそも取適法の類型に該当しない取引があります。ここでは条文で明確に除外されているケースと、解釈上の除外として実務で扱われているケースを分けて解説します。

建設工事の請負(改正法2条4項カッコ書きで明示除外)

建設業を営む者が請け負う建設工事は、改正法2条4項のカッコ書きで役務提供委託の対象から明示的に除かれています。建設工事の請負は建設業法による別の規制体系(一括下請負の禁止・下請代金の支払期限など)が適用されるためです。

ただし、建設工事に付随する運送や設計図面作成(情報成果物作成委託)などは、それ自体が5類型の別の取引として取適法の対象になる余地があります。「建設業だから全部対象外」と一括で判断せず、個別取引ごとに類型判定が必要です。

出典・参考資料(1件)

不動産取引・労働者派遣・金融商品取引等(解釈上の位置付け)

不動産の売買・賃貸借(宅地建物取引業法の規律対象)、労働者派遣契約(労働者派遣法の規律対象)、金融商品取引(金融商品取引法の規律対象)などは、そもそも5類型の「物品の製造・修理」「情報成果物の作成」「役務提供」に当てはまらないため、解釈上、取適法の対象になりません。改正法の条文で明示的に除外されているわけではなく、5類型の定義に照らして該当しないという整理です。

ただし、不動産管理業務のBPO・派遣スタッフを介したデータ処理業務・金融関連の情報成果物作成などは、周辺の付随業務が5類型に該当するケースがあります。「業界名や契約類型名で対象外と判断せず、個別取引の実体で類型判定する」のが基本原則です。

自社利用のためのサービス委託(役務提供の場合のみ対象外)

自社利用のためのサービス委託は、類型によって取扱いが分かれます。役務提供委託の場合、自社が使うために他者に役務を提供させる委託は対象外です。一方、情報成果物作成委託の場合は、自社利用目的でも対象になります。自社で使うためのソフトウェア・システム・広告物などを外部に作成委託する場合は、他の要件を満たせば取適法の対象になる点に注意が必要です。

「自社利用だから全部対象外」と一律に判断すると、情報成果物作成委託を見落として書面交付義務違反を犯すリスクがあります。自社利用でも情報成果物は対象、と覚えておくのが安全です。

業種別に見る「対象/対象外」ケース

ここまでの3ステップ判定を踏まえて、業種別の典型ケースで対象・対象外の判定例を紹介します。以下は公正取引委員会の概要資料と改正法条文に照らした一般的な整理で、個別の実務相談例に依拠したものではありません。実際の取引が対象になるかは、契約書の内容と自社・取引先の規模で個別に判定してください。

製造業(部品・OEM委託)

製造業では、自社製品を構成する部品の製造や、OEMでの完成品製造を他社に委託するのが典型です。取引類型としては製造委託に該当し、発注側の資本金または従業員数が要件を超え、受託側がその要件以下であれば対象になります。中堅メーカーが小規模な部品メーカーに継続的に発注しているケースは、旧下請法時代から対象で、改正法でも同様です。

IT・広告(システム開発/広告クリエイティブ制作)

IT業界のシステム開発委託や、広告業界のクリエイティブ制作委託は、情報成果物作成委託に該当します。自社利用目的の社内システム開発を外部に委託する場合や、クライアントから請け負った案件を再委託する場合も含まれます。この類型は自社利用でも対象になる点で、判定を見落としやすい業種です。

物流(特定運送委託の新設で何が変わったか)

物流業界では、荷主が自社商品の運送を運送業者に直接委託する取引が、2026年新設の特定運送委託として対象化されました。従来は運送業者間の再委託のみが役務提供委託として対象でしたが、改正後は荷主→運送業者の直接発注も対象に含まれます。製造業・小売業・EC事業者などが物流委託の契約書・支払条件を見直す必要のある改正です。

BPO・業務委託

BPO事業者にコールセンター運営・データ入力・経理業務などを委託する取引は、役務提供委託に該当する場合が多く、その役務を第三者への提供目的で再委託する形の取引が対象になります。自社の顧客対応をアウトソーシングする場合も、その役務が最終的に顧客(第三者)向けであれば対象になる余地があります。

小売・卸売(PB商品製造委託等)

小売業・卸売業では、プライベートブランド商品の製造をメーカーに委託する取引が典型的な製造委託に該当します。また、店舗運営に付随する広告制作・什器の設計図面作成なども、それぞれ情報成果物作成委託として個別に判定する対象になります。

対象判定で迷う境界例

業種別の典型ケースでも判定しきれない例外・グレーゾーンの取引があります。トンネル会社を介した取引・多段階の再委託・受託側にフリーランスが含まれる取引の3つは、実務で判定に迷うことが多い境界例です。

トンネル会社規制(実質的な発注者を迂回する取引の扱い)

実質的な発注者が資本金要件を回避するために、資本金の小さな子会社などを介して発注する取引(いわゆる「トンネル会社」を経由する取引)は、改正法2条10項により再委託をする事業者(トンネル会社)が「みなし委託事業者」、再委託を受ける事業者が「みなし中小受託事業者」として取扱われます。

具体的な要件は、①中間会社が親会社等から「役員の任免、業務の執行又は存立について支配」を受けており、かつ②委託業務の全部または相当部分を再委託する場合、という2つを両方満たすことです。

グループ会社間で発注ルートを設計する際は、この2要件を意識して契約構造を組み立てる必要があります。

再委託(一次受託→二次受託の適用関係)

一次受託者が受託した業務を、さらに他者に再委託する取引は、一次受託者と二次受託者の間で新たに取適法の判定を行います。一次受託者が委託事業者側の要件を満たし、二次受託者が中小受託事業者側の要件を満たせば、その再委託取引にも取適法が適用されます。

元請け・下請け・孫請けの3層構造で発注が行われるIT開発や建設周辺業務では、各層の間で個別に判定が必要になります。

フリーランスへの委託(フリーランス法との棲み分け)

受託側が個人(従業員なし)または一人法人(代表者1名以下・従業員なし)などの「特定受託事業者」に該当する場合、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が別に適用されます。

取適法とフリーランス法は要件が重なる範囲で並行して適用され、両法いずれにも違反する行為が委託事業者から行われた場合には、原則としてフリーランス法が優先適用されるとされています(政府広報オンライン)。フリーランス法の共同所管は公正取引委員会・中小企業庁(取引適正化)と厚生労働省(就業環境の整備)の3庁体制です。

したがって、フリーランスに発注する場合でも、書面交付や支払期日等の日常運用では、取適法とフリーランス法の両方の要件を意識する必要があります。要件の重なる部分については、より厳しい側に合わせておくと安全です。

出典・参考資料(1件)

旧下請法から取適法への変更点

取適法は旧下請法を全面的に見直した新法です。以下では、旧下請法から取適法への主な変更点をまとめて確認します。判定に必要な要点は前節までに書いているので、ここは「何が変わったか」の一覧として読んでください。

施行日:2026年1月1日

取適法(中小受託取引適正化法)は、令和7年(2025年)5月23日に「中小受託事業者取引適正化法等の一部改正法」(令和7年法律第41号)として公布され、2026年1月1日に施行されました。改正前の下請法時代に締結された既存契約についても、施行日以降の取引には改正法が適用されます。

用語の見直し(親事業者→委託事業者/下請事業者→中小受託事業者)

改正では、発注側を「親事業者」から「委託事業者」に、受託側を「下請事業者」から「中小受託事業者」に呼称変更しました。取引の実態を反映した中立的な用語への変更で、発注側・受託側の対等性を意識した見直しです。契約書・注文書・請求書などの実務書類でも、順次この用語への切り替えが求められます。

変更点マップ(適用範囲・義務・禁止行為の主な変更)

改正で変わった主なポイントを一覧で示します。各項目の詳細は関連節に戻って確認してください。

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変更項目取引類型事業者要件呼称支払条件
旧下請法4類型(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)資本金基準のみ親事業者・下請事業者手形払い可(法定利率考慮)
取適法(改正後)5類型(特定運送委託を新設)資本金基準+従業員数基準(2026年新設)委託事業者・中小受託事業者手形払いの実質原則禁止・振込手数料の売手負担を「減額」として禁止
出典・参考資料(2件)

対象になった場合に発生する義務・禁止行為(輪郭)

自社の取引が取適法の対象になると判定したら、次は委託事業者側にどのような義務が課され、どんな行為が禁止されるかを押さえる必要があります。ここでは義務・禁止行為・罰則の輪郭を示します。運用の細部は別記事で扱います。

4つの義務(支払期日60日/発注明示/遅延利息/書類保存)

取適法では、委託事業者に次の4つの義務が課されます。これらは受託側から求められて履行するのではなく、委託事業者が能動的に履行すべき義務です。条番号順に並べます。

  • 支払期日を60日以内に定める(改正法3条):受託側から給付を受領した日から60日以内、かつできる限り短い期間内で支払期日を定める義務があります。60日を超える支払期日を定めても契約自体が無効になるわけではなく、受領日から60日を経過した日の前日が支払期日とみなされます(支払期日を定めなかった場合は受領日が支払期日とみなされます)。
  • 発注内容の明示(書面または電磁的方法)(改正法4条「明示等」):委託事業者は、発注時に取引条件を書面または電磁的方法(電子メール等)で受託側に明示する義務があります。改正で書面と電磁的方法が並列化され、電磁的方法での明示に受託側の承諾は不要になりました。
  • 遅延利息の支払い(年率14.6%)(改正法6条・公取委規則):支払期日を過ぎて代金を支払う場合、公取委規則が定める年率14.6%の遅延利息を支払う義務があります。民法の法定利率とは別建てで、より高率です。
  • 書類の作成・2年間の保存(改正法7条・公取委規則):取引記録を書類として作成し、2年間保存する義務があります。

11の禁止行為(新設された「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」など)

取適法5条は、委託事業者に対して次の11の禁止行為を定めています(5条1項1〜7号+5条2項1〜4号)。

  • 受領拒否(1項1号)
  • 支払遅延(1項2号)
  • 代金の減額(1項3号)
  • 返品(1項4号)
  • 買いたたき(1項5号)
  • 購入強制・利用強制(1項6号)
  • 報復措置(1項7号)
  • 有償支給原材料等の対価の早期決済(2項1号)
  • 不当な経済上の利益の提供要請(2項2号)
  • 不当な給付内容変更・やり直し(2項3号)
  • 協議に応じない一方的な代金決定の禁止(2項4号・2026年新設)

改正で新設された代表的な禁止行為は、5条2項4号の「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」です。委託事業者が受託側と価格協議を行わずに一方的に代金を決めることを禁じるもので、価格転嫁を促進する趣旨で追加されました。

従来から実務で問題視されていた「振込手数料の売手負担」は、独立した禁止行為ではなく、5条1項3号の「代金の減額」の解釈上の一形態として整理されています。手形払いについても実質的に原則禁止の運用が敷かれ、電子記録債権や現金による支払への移行が進んでいます。各禁止行為の具体的な該当例は、別記事で詳細に解説します。

違反時の罰則の輪郭(勧告・公表・罰金)

禁止行為に違反した場合、公正取引委員会または中小企業庁の調査を経て、勧告・企業名の公表・罰金の対象になります。改正法10条は勧告の権限を、14条は50万円以下の罰金を定めており、16条の両罰規定により法人にも同額の罰金が科される場合があります。企業名の公表は取引先・金融機関・顧客との関係で実害が大きいため、勧告段階での是正が実務上の重要な分岐点になります。

出典・参考資料(2件)
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対象と判明したら次にすべきこと:既存契約書の点検

自社の取引が取適法の対象と判明したら、次に必要なのは既存の外注契約書の点検です。契約書ごとに、対象取引に該当するか・書面交付の要件を満たしているか・支払期日は60日以内になっているか・禁止行為に該当する条項が入っていないかを確認する作業が必要になります。

点検の方法は、社内の法務部門で1件ずつレビューする方式と、AI契約書レビューツールや弁護士に外注する方式があります。契約書の件数が多い場合や、法務部門のリソースが限られる中小企業では、AI契約書レビューによる一次スクリーニングと弁護士による最終確認の組み合わせが実務的です。

契約書レビューサービス3社の比較

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サービス名CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)法務オートメーション「OLGA」LAWGUE(ローグ)
提供形態AI×弁護士のBPaaS(レビュー結果を弁護士が確認)法務プラットフォーム型AIレビュークラウド文書作成・編集・レビュー統合型
主な機能AI契約書レビュー・雛形提供・専門家連携契約書作成〜審査〜締結後管理まで一気通貫自社ナレッジ型AIレビュー・不足条項提案
対象規模中小〜中堅企業中堅〜大企業中小〜大企業
詳細情報公式資料を見るミーティングを予約するミーティングを予約する
出典・参考資料(4件)

取適法対応に限らず契約書レビューサービスを幅広く比較検討したい場合は、以下の記事でタイプ別の選び方や料金相場を含めた全体像を確認できます。

CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)の公式サイト

CLOUD LEGALは、MOLTON株式会社が提供するAI×弁護士のBPaaS型契約書レビューサービスです。AIが契約書を自動レビューし、その結果を提携弁護士が確認する二段構えで、社内に法務専門人材がいない企業でも実効性のあるレビューを回せます。

取適法の対象取引に該当する外注契約の点検では、書面交付要件・支払期日60日・禁止行為条項の有無を、AIレビューで一次スクリーニングした後、専門家判断が必要な論点を弁護士が最終確認する使い方に向いています。中小〜中堅企業を主な対象規模としています。

2. 法務オートメーション「OLGA」

GVA TECHの法務オートメーションOLGAのウェブサイト

OLGAは、GVA TECH株式会社が提供する法務プラットフォーム型のクラウドサービスです。契約書の作成・審査・締結後の管理まで、法務業務の全プロセスを1つの環境で扱えます。旧GVA assist・AI-CON Pro の機能を統合したサービスです。

取適法対応では、既存契約書の一括アップロードと自動チェック・改正法に即した雛形の提供・改正論点のリスト化などをカバーします。中堅〜大企業で法務案件を横断的に管理したい環境に適しています。

3. LAWGUE(ローグ)

LAWGUE(ローグ)の公式サイト

LAWGUEは、FRAIM株式会社が提供するクラウド型の文書作成・編集・レビュー統合ワークスペースです。契約書の作成段階から編集・レビューまでを同じ環境で完結でき、自社ナレッジ型AIレビューによる不足条項の提案機能を備えています。

取適法対応の契約書点検では、既存契約書と自社の雛形との差分を可視化し、書面交付要件や禁止行為条項の抜け漏れを検出する使い方が可能です。契約書作成から改訂までを一気通貫で内製化したい企業に向いています。

まとめ

取適法(中小受託取引適正化法)の対象は、①取引が5類型(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託)のいずれかに当てはまるか、②発注側と受託側が資本金または従業員数の要件を満たすか、③除外規定に触れないか、の3ステップで判定できます。

資本金と従業員数はどちらか一方でも該当すれば対象になる点、特定運送委託が2026年新設で荷主から運送業者への直接委託が対象化された点、情報成果物作成委託は自社利用でも対象になる点が、旧下請法時代からの主要な変化です。

自社の取引が対象と判明したら、次は既存の外注契約書を書面交付・支払期日60日・禁止行為条項の観点で点検する段階に入ります。契約書の件数が多い場合はAI契約書レビューによる一次スクリーニングが実務的で、社内法務のリソースを本質的な判断に集中させることができます。

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よくある質問(FAQ)

Q. 取適法とは何ですか?

A. 取適法は、旧下請法を全面的に見直した新法「中小受託取引適正化法」(通称)の略称です。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、令和7年(2025年)5月23日に「令和7年法律第41号」として公布され、2026年1月1日に施行されました。

令和7年5月23日に「中小受託事業者取引適正化法等の一部改正法」(令和7年法律第41号)として公布され、旧下請法の題名・用語・適用範囲・禁止行為が全面的に見直されました。発注側を「委託事業者」、受託側を「中小受託事業者」と呼び、対象取引は5類型(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託)に整理されています。

Q. 取適法は旧下請法と何が違いますか?

A. 取適法は、旧下請法に比べて①対象取引に「特定運送委託」が加わって5類型に拡大され、②資本金基準に加えて従業員数基準(300人/100人)が新設され、③禁止行為に「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」が追加された点が主な違いです。

加えて、発注側の呼称が「親事業者」から「委託事業者」に、受託側が「下請事業者」から「中小受託事業者」に変わり、手形払いは実質的に原則禁止の運用へ移行しました。振込手数料の売手負担は、独立した禁止行為ではなく5条1項3号「代金の減額」の解釈上の一形態として整理されています。変更点の一覧は対象となる取引の5類型と本記事「旧下請法から取適法への変更点」節を参照してください。

Q. 取適法の資本金要件と従業員数要件は、どちらも満たす必要がありますか?

A. 取適法の事業者要件は、資本金と従業員数のどちらか一方でも該当すれば対象になり、両方を満たす必要はありません

改正法2条は、資本金または常時使用する従業員数のいずれかで発注側・受託側の関係を判定する構造をとっています。たとえば発注側の資本金が要件に満たなくても、従業員数が要件を満たせば発注側は「委託事業者」として扱われます。このため、資本金の増減で取適法の対象外に持ち込む対応は改正後は成り立ちにくくなりました。詳細な数値は対象となる事業者の要件(資本金・従業員数の判定表)を参照してください。

Q. 建設工事は取適法の対象になりますか?

A. 建設業を営む者が請け負う建設工事は、改正法2条4項カッコ書きで役務提供委託の対象から明示的に除かれているため、取適法の対象外です。

建設工事は建設業法(一括下請負の禁止・下請代金の支払期限など)による別の規制体系が適用されるためです。ただし建設工事に付随する運送や設計図面作成などは、それ自体が特定運送委託・情報成果物作成委託として取適法の対象になる余地があります。「建設業だから全部対象外」と一括判断せず、個別取引ごとに5類型判定を行ってください。

Q. 労働者派遣契約は取適法の対象になりますか?

A. 派遣元と派遣先の間の労働者派遣契約は、労働者派遣法の規律対象であり、取適法の5類型(物品の製造・修理/情報成果物作成/役務提供/特定運送)に当てはまらないため対象外です。

ただし、派遣スタッフを介したデータ処理・BPO業務などの周辺業務は、契約の実体が「役務提供」や「情報成果物作成」に該当する場合、取適法の対象になる余地があります。契約類型の名称ではなく個別取引の実体で判定するのが原則です。

Q. 自社利用のためのサービス委託は取適法の対象になりますか?

A. 自社利用目的の委託は類型で扱いが分かれ、役務提供委託は対象外ですが、情報成果物作成委託は自社利用目的でも取適法の対象になります。

たとえば自社の清掃・警備・社内向けデータ入力などを委託する場合は役務提供委託にあたり対象外ですが、自社で使うためのソフトウェア・システム・広告制作物を外部に開発/制作委託する場合は情報成果物作成委託にあたり、他の要件を満たせば対象です。「自社利用だから全部対象外」と一律に判断すると、情報成果物作成委託を見落として書面交付義務違反を犯すリスクがあるため注意してください。

Q. 取適法上、委託事業者・中小受託事業者の立場は取引ごとに変わりますか?

A. 委託事業者と中小受託事業者の関係は取引ごとに個別に判定されるため、同じ会社でもある取引では「委託事業者」、別の取引では「中小受託事業者」になることがあります。

判定は「取引類型(5類型のどれか)」と「発注側・受託側の資本金または従業員数の組み合わせ」で決まるため、相手方の規模が変わればその都度立場も変わります。多層の再委託(元請け・下請け・孫請け)では、一次受託者が二次受託者に対して委託事業者側の要件を満たす場合、その再委託取引にも取適法が適用されます。

Q. 2025年12月31日までに発注した既存の下請取引にも、取適法は遡及して適用されますか?

A. 取適法は2026年1月1日以降に発注する取引に適用され、それ以前に発注した取引には旧下請法が引き続き適用されるため、既存契約への遡及適用はありません。

判断の起点は納品日や支払日ではなく発注の時点です(改正法附則)。施行日をまたぐ継続的な取引では、同じ取引先でも発注時期によってどちらのルールが効くかが分かれるため、既存契約の見直しにあわせて2026年1月以降の新規発注分から取適法対応に切り替えるのが実務的です。

出典・参考資料(2件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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