取引が増えてきて帳簿を付け始めたものの、「仕訳帳に何をどう書けばいいのか」「総勘定元帳への転記はどうやるのか」で手が止まっていませんか。会計帳簿は種類が多く、簿記の解説を読んでも、いざ自分の取引を記入する段になると迷いやすい部分です。
会計帳簿は、日々の取引を記録する帳簿で、所得税法や会社法で作成と保存が義務づけられています。主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)と補助簿(現金出納帳・売上帳など)があり、取引が起きたら仕訳帳に記入し、そこから総勘定元帳へ転記していくのが基本の流れです。
本記事では、どの帳簿に何を書くのかを一覧で押さえたうえで、仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳の具体的な記入例を数字入りで示します。記帳のルールや保存期間、単式簿記と複式簿記の違いまでを順に解説し、手作業の負担を減らすクラウド会計ソフトの選択肢も紹介します。
目次
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会計帳簿とは(記帳・保存の義務)
会計帳簿とは、事業で発生した取引を日々記録していく帳簿の総称です。売上や仕入れ、経費の支払いといったお金の動きを記録し、その積み重ねが決算書(貸借対照表・損益計算書)を作る土台になります。帳簿を付けること自体が、税務申告や経営状況の把握の出発点です。
会計帳簿の作成と保存は、法律で義務づけられています。個人事業主は、白色申告の場合は所得税法第232条、青色申告の場合は所得税法第148条により、帳簿を備え付けて取引を記録し、一定期間保存することが求められます。法人(株式会社)は会社法第432条で、適時かつ正確な会計帳簿の作成が義務づけられています。
国税庁も、申告の必要がない事業者を含め、事業所得などを生ずべき業務を行うすべての人に記帳が必要だとしたうえで、記帳の手段として会計ソフトの利用を勧めています。
出典・参考資料(2件)
会計帳簿の作成は法律上の義務(付けないとどうなるか)
会計帳簿の作成・保存は任意の作業ではなく、法律上の義務です。法人の場合、会社法は適時・正確な会計帳簿の作成と、閉鎖から10年間の保存を定めています。
第四百三十二条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
出典:会社法第432条|e-Gov 法令検索
2 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
帳簿を付けていないと、いくつかの不利益が生じます。法人では会社法上の義務に反することになり、個人事業主では青色申告特別控除(最大65万円)を受けられません。税務調査の際に取引を証明できず、経費が認められにくくなるおそれもあります。日々の数字が残らないため、資金繰りや利益の把握が難しくなる点も見過ごせません。
出典・参考資料(1件)
どの帳簿を付ける?主要簿と補助簿の種類と役割
ここからは、会計帳簿にはどんな種類があり、それぞれ何を記録するのかを整理します。会計帳簿は、すべての取引を記録する「主要簿」と、特定の取引を詳しく記録する「補助簿」の2つに大きく分かれます。
主要簿は、仕訳帳と総勘定元帳の2つで、複式簿記では必ず作成します。補助簿は、現金の出入りや売掛金・買掛金など、主要簿を補う目的で必要に応じて用意する帳簿です。自社の取引内容に合わせて、使う補助簿を選びます。
| 区分 | 帳簿名 | 何を記録するか | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 主要簿 | 仕訳帳 | すべての取引を発生順に、借方・貸方で記録する | 必須 |
| 主要簿 | 総勘定元帳 | 仕訳帳の内容を勘定科目ごとにまとめ直す | 必須 |
| 補助簿 | 現金出納帳 | 現金の入出金と残高を記録する | 任意(必要に応じて) |
| 補助簿 | 預金出納帳 | 預金口座ごとの入出金と残高を記録する | 任意 |
| 補助簿 | 売上帳 | 売上取引の明細を記録する | 任意 |
| 補助簿 | 仕入帳 | 仕入取引の明細を記録する | 任意 |
| 補助簿 | 売掛帳(得意先元帳) | 取引先ごとの売掛金の発生と回収を記録する | 任意 |
| 補助簿 | 買掛帳(仕入先元帳) | 取引先ごとの買掛金の発生と支払を記録する | 任意 |
| 補助簿 | 固定資産台帳 | 固定資産の取得・減価償却・除却を記録する | 任意 |
補助簿は取引の実態に応じて作成するもので、現金取引が多ければ現金出納帳、掛け取引が多ければ売掛帳・買掛帳を用意します。すべてをそろえる必要はなく、自社の取引に関係する帳簿を選べば十分です。
【記入例】仕訳帳・総勘定元帳・補助簿の具体的な書き方
ここからは、実際の取引を例に、仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳をどう記入していくかを数字入りで見ていきます。記帳の流れを押さえてから、各帳簿の記入例を順に確認します。
記帳の流れ(取引発生から保存まで)
複式簿記での記帳は、取引の発生から保存まで次の流れで進みます。証憑(取引の証拠書類)の確認から始まり、仕訳帳への記入と総勘定元帳への転記が中心です。

- 取引が発生し、領収書・請求書などの証憑を確認する
- 取引を仕訳帳に記入する(借方・貸方に勘定科目と金額を振り分ける)
- 仕訳帳の内容を総勘定元帳へ転記する
- 現金・預金などの動きを補助簿にも記録する
- 帳簿の残高と実際の残高を照合する
- 帳簿と証憑を整理して保存する
仕訳帳の書き方(借方・貸方・勘定科目・金額つきの記入例)
仕訳帳は、すべての取引を発生順に記録する帳簿です。1つの取引を「借方」と「貸方」の2つの側面に分け、それぞれに勘定科目と金額を書きます。借方と貸方の金額は必ず一致します。
次の4つの取引を例に、仕訳帳への記入を見てみます。
- 4月1日:得意先に商品を220,000円で掛け販売した(代金は後日受け取り)
- 4月3日:得意先に商品を110,000円で販売し、代金を現金で受け取った
- 4月8日:事務用の文房具を5,500円分、現金で購入した
- 4月15日:取引先からの売掛金220,000円が普通預金に振り込まれた
これを仕訳帳に記入すると、次のようになります。借方・貸方のどちらに何の勘定科目を置くかが、仕訳のポイントです。
| 日付 | 借方(科目) | 借方金額 | 貸方(科目) | 貸方金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4/1 | 売掛金 | 220,000 | 売上 | 220,000 | 掛け売上 |
| 4/3 | 現金 | 110,000 | 売上 | 110,000 | 商品販売 |
| 4/8 | 消耗品費 | 5,500 | 現金 | 5,500 | 文房具購入 |
| 4/15 | 普通預金 | 220,000 | 売掛金 | 220,000 | 売掛金回収 |
仕訳では、増えた勘定科目を資産・費用なら借方、収益・負債なら貸方に置きます。4月1日は売掛金(資産)が増えて借方・売上を貸方に、4月3日は現金が借方・売上が貸方、4月8日は消耗品費(費用)が借方・現金の減少が貸方になります。4月15日は売掛金が減って貸方・普通預金が増えて借方に置き、どの取引でも借方合計と貸方合計は一致します。
借方・貸方のどちらに置くか迷ったときは、勘定科目のグループごとに増減の向きで判断します。この原則を押さえておくと、例に無い取引でも自分で振り分けられます。

| グループ | 増えたとき | 減ったとき | 主な勘定科目 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 借方 | 貸方 | 現金・普通預金・売掛金など |
| 費用 | 借方 | 貸方 | 仕入・消耗品費・地代家賃など |
| 負債 | 貸方 | 借方 | 買掛金・借入金・未払金など |
| 純資産(資本) | 貸方 | 借方 | 元入金・資本金など |
| 収益 | 貸方 | 借方 | 売上・雑収入など |
この記入例は、消費税を分けて記録しない税込経理(または免税事業者)を前提にしています。課税事業者で税抜経理を選ぶ場合は、仕入や経費の仕訳で「仮払消費税」、売上の仕訳で「仮受消費税」を分けて記入します。
総勘定元帳への転記の仕方(記入例)
総勘定元帳は、仕訳帳に記録した取引を勘定科目ごとにまとめ直す帳簿です。仕訳帳が取引を発生順に並べるのに対し、総勘定元帳は「現金」「売上」「消耗品費」といった科目別に集計し、各科目の残高を把握できるようにします。
先ほどの仕訳のうち、現金に関わる4月3日と4月8日の取引を「現金」勘定に転記すると、次のようになります。借方・貸方のどちらに記入されたかをそのまま移し、残高を計算していきます。
| 日付 | 相手科目 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4/3 | 売上 | 商品販売 | 110,000 | 110,000 | |
| 4/8 | 消耗品費 | 文房具購入 | 5,500 | 104,500 |
現金勘定の借方に110,000円が入って残高が110,000円になり、4月8日に貸方へ5,500円が記録されて残高は104,500円に減りました。1つの仕訳は借方と貸方の2つの勘定に分かれて転記されるので、4月3日の仕訳は「売上」勘定にも転記します。
| 日付 | 相手科目 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 【売上】勘定 | |||||
| 4/1 | 売掛金 | 掛け売上 | 220,000 | 220,000 | |
| 4/3 | 現金 | 商品販売 | 110,000 | 330,000 | |
4月3日の仕訳(借方:現金/貸方:売上)が、現金勘定では借方に、売上勘定では貸方に記録されている点が転記のポイントです。同じように、消耗品費勘定・普通預金勘定・売掛金勘定にもそれぞれ転記します。相手科目欄には仕訳の反対側の科目を書くと、あとから取引をたどりやすくなります。
補助簿の書き方(現金出納帳などの記入例)
補助簿は、特定の取引を詳しく記録する帳簿です。代表的な現金出納帳は、現金の入金・出金とその都度の残高を記録し、手元の現金残高が帳簿と合っているかを確認するために使います。
先ほどの現金取引を現金出納帳に記入すると、次のようになります。収入(入金)と支出(出金)を分けて書き、残高を更新していきます。
| 日付 | 摘要 | 収入 | 支出 | 残高 |
|---|---|---|---|---|
| 4/3 | 商品販売(売上) | 110,000 | 110,000 | |
| 4/8 | 文房具購入(消耗品費) | 5,500 | 104,500 |
月末には、現金出納帳の残高と、実際に手元にある現金の金額を照合します。金額が合わない場合は、記入漏れがないかを確認しましょう。
掛け取引が多い場合は、取引先ごとの売掛金の発生と回収を記録する売掛帳を使います。4月1日に220,000円を掛けで売り上げ、4月15日に普通預金へ回収した場合、売掛帳は次のようになります。買掛金は買掛帳に、同じ考え方で発生と支払を記録します。
| 日付 | 摘要 | 売上(発生) | 回収 | 残高 |
|---|---|---|---|---|
| 4/1 | 掛け売上 | 220,000 | 220,000 | |
| 4/15 | 普通預金へ回収 | 220,000 | 0 |
補助簿は主要簿を補う備忘の帳簿で、決算書は仕訳帳・総勘定元帳(主要簿)から作ります。そのため、同じ取引を主要簿と補助簿の両方に記録しても二重計上にはなりません。集計や決算に使うのはあくまで主要簿です。
会計帳簿を書くときのルールとやりがちな誤り
ここからは、帳簿に書くべき項目と、記帳のときに守りたいルール、初心者がつまずきやすい誤りを順に見ていきます。まず、帳簿に最低限書く項目から確認します。
帳簿に書く項目(売上・仕入・経費・雑収入の記載事項)
国税庁は、所得金額が正確に計算できるよう、取引を「整然と、かつ、明瞭に記録」することを求めています。
所得の金額が正確に計算できるよう、取引のうち、総収入金額及び必要経費に関する事項について「整然と、かつ、明瞭に記録」しなければなりません。
出典:帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)|国税庁
白色申告の場合、帳簿に書く記載事項は取引の種類ごとに定められています。売上・仕入は「取引の年月日・相手方の名称・金額」を、雑収入等は「取引の年月日・事由・相手方の名称・金額」を記録します。経費は科目に区分したうえで「取引の年月日・事由・支払先の名称・金額」を記録します。
| 区分 | 記載する項目 |
|---|---|
| 売上 | 取引の年月日/相手方の名称/金額 |
| 仕入 | 取引の年月日/相手方の名称/金額 |
| 雑収入等 | 取引の年月日/事由・相手方の名称/金額 |
| 経費 | 給料賃金・外注工賃・減価償却費・貸倒金・地代家賃・利子割引料などに区分し、それぞれ取引の年月日/事由・支払先の名称/金額 |
出典・参考資料(1件)
記帳の基本ルール(訂正・公私の区別・勘定科目の統一など)
正しく記帳するために、いくつかのルールを守ります。いずれも、税務調査や残高照合のときに帳簿の信頼性を保つためのものです。
- 訂正は記録を残す形で行う:手書きの帳簿では、誤りを修正液で消さず、二重線を引いて訂正印を押し、正しい内容を書き添えます。会計ソフトでは訂正・削除の履歴が自動で残る仕組みが使われます。
- 事業用とプライベートのお金を分ける:事業用の口座・現金と個人のお金を混在させると、どれが事業の取引か判別できなくなります。事業用の口座を分けておくと記帳が楽になります。
- 勘定科目の使い方を統一する:同じ内容の取引には毎回同じ勘定科目を使います。科目がぶれると、集計した数字の意味が読み取りにくくなります。
- 取引が発生したら早めに記帳する:まとめて処理しようとすると記入漏れや証憑の紛失が起きやすくなります。こまめに記帳するほど、残高照合でずれが見つけやすくなります。
初心者がやりがちな誤り
記帳に慣れないうちは、次のような誤りが起こりがちです。前項のルールと裏表の関係にあるので、合わせて押さえておくと避けやすくなります。
- 借方と貸方を逆に記帳する:どちらに何を置くか迷ったときは、資産が増えたら借方・減ったら貸方、という基本に立ち返ると整理しやすくなります。
- 同じ取引を二重に仕訳する:同じ取引を仕訳帳に2回入力したり、補助簿に記録した金額を改めて仕訳として計上したりするケースです(補助簿への記録自体は二重計上ではありません)。残高照合でずれが出たら、重複入力がないかを確認しましょう。
- 売上の計上時期を誤る:入金された日ではなく、商品の引き渡しやサービス提供が完了した日に売上を計上するのが原則です(発生主義)。
- 領収書・請求書を紛失する:証憑がないと取引を証明できません。記帳とあわせて、証憑を日付順に整理して保管します。
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単式簿記と複式簿記の違い(白色申告・青色申告65万円控除との関係)
帳簿の付け方には、単式簿記と複式簿記の2つの方式があります。どちらで記帳するかは、申告方式と、受けたい青色申告特別控除の金額によって決まります。
単式簿記は、家計簿のように1つの取引を1行で記録する簡易な方式です。複式簿記は、1つの取引を借方・貸方の両面で記録し、損益計算書と貸借対照表を導き出せる方式です。両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 単式簿記 | 複式簿記 |
|---|---|---|
| 記録方法 | 1つの取引を1行で記録 | 1つの取引を借方・貸方の両面で記録 |
| 難易度 | 簡単(簿記の知識が浅くても可) | やや高い(勘定科目の理解が必要) |
| 作成できる書類 | 収支の記録が中心 | 損益計算書・貸借対照表まで作成可能 |
| 向いている人 | 取引が少ない事業者、白色申告の人 | 青色申告で控除を狙う人、法人 |
| 青色申告特別控除 | 最大10万円(青色申告の場合) | 最大55万円または65万円 |
青色申告特別控除は、記帳方式と申告方法によって控除額が変わります。国税庁は、控除額ごとの要件を次のように定めています。
① 事業所得又は不動産所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者の方が、これらの所得に係る取引を「正規の簿記(※)の原則」により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書等(青色申告決算書)を確定申告書に添付して、当該確定申告書をその提出期限までに提出した場合には、その年分のこれらの所得金額から最高55万円を控除することができます。
出典:帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)|国税庁
② 上記①の方のうち、その年分の事業における仕訳帳及び総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付け及び保存を行い、確定申告期限までに一定の事項を記載した届出書を提出した方又はe-Taxによる電子申告を行った方は、最高65万円を控除することができます。
※ 「正規の簿記」とは、損益計算書と貸借対照表が導き出せる組織的な簿記の方式をいい、一般的には複式簿記をいいます。
控除額ごとに必要な記帳方法と申告・保存の要件を整理すると、次のようになります。白色申告には青色申告特別控除はなく、10万円の控除は青色申告で簡易な記帳(単式簿記)による場合です。
| 控除額 | 必要な記帳 | 申告区分・追加要件 |
|---|---|---|
| 控除なし | 単式(簡易)でも可 | 白色申告 |
| 10万円 | 単式(簡易)簿記 | 青色申告 |
| 55万円 | 複式簿記 | 青色申告+貸借対照表・損益計算書を添付し期限内に申告 |
| 65万円 | 複式簿記 | 55万円の要件に加え、仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件で電子保存、またはe-Taxで電子申告 |
出典・参考資料(1件)
青色申告で55万円・65万円の控除を目指す場合は、複式簿記に対応し控除要件に沿った帳簿を作れる会計ソフトを選ぶのが近道です。控除の要件や法人の青色申告対応まで含めてソフトを比較したい方は、以下の記事もご覧ください。
会計帳簿の保存期間(法人・個人事業主)
作成した会計帳簿と関係書類は、一定期間の保存が義務づけられています。保存期間は、法人か個人事業主か、個人の場合は白色申告か青色申告かによって異なります。
法人(株式会社)は、会社法により会計帳簿を閉鎖の時から10年間保存します。個人事業主は、白色申告と青色申告で保存する帳簿・書類と年数(おおむね5〜7年)が次のように分かれます。
| 区分 | 対象 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 法人(株式会社) | 会計帳簿・事業に関する重要な資料 | 10年 |
| 個人・白色申告 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
| 個人・白色申告 | 上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 |
| 個人・白色申告 | 棚卸表・請求書・納品書・領収書などの書類 | 5年 |
| 個人・青色申告 | 仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛帳などの帳簿 | 7年 |
| 個人・青色申告 | 決算関係書類(損益計算書・貸借対照表・棚卸表など) | 7年 |
| 個人・青色申告 | 現金預金取引等関係書類(領収証・預金通帳など) | 7年※ |
| 個人・青色申告 | その他の書類(請求書・見積書・契約書・納品書など) | 5年 |
白色・青色とも、消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存する請求書等や、インボイス発行事業者が交付した適格請求書の写しは、7年間の保存が必要です。※印の現金預金取引等関係書類は、前々年分の事業所得・不動産所得の金額が300万円以下の場合、5年間に短縮されます。
出典・参考資料(2件)
電子帳簿保存法(電子取引データの電子保存義務)と会計ソフトでの対応
保存に関して、近年の実務で押さえておきたいのが電子帳簿保存法です。メールやECサイトなど電子でやり取りした取引データについては、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが義務づけられています。
取引に関して、書面でやりとりしていた場合に保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当する電子取引データを受領又は交付した場合、その電子取引データの電子保存が義務付けられています。
出典:帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)|国税庁
この電子取引データの保存義務は、令和6年(2024年)1月以降に行う電子取引に適用されています。保存にあたっては、次の3つの要件を満たす必要があります。
- 改ざん防止の措置(タイムスタンプの付与、訂正削除履歴が残るシステムの利用、事務処理規程の整備など)をとる
- ディスプレイと操作説明書を備え付ける
- 「日付・金額・取引先」で検索できる状態にする
これらの要件を手作業で満たすのは手間がかかります。電子帳簿保存法に対応したクラウド会計ソフトを使うと、受領した証憑を取り込むだけで検索要件を満たす形で保存でき、訂正・削除の履歴も自動で残ります。
出典・参考資料(2件)
電子帳簿保存法については、対応を怠った場合の影響や、実務で対応を進めるときのポイントも押さえておくと安心です。制度の全体像を詳しく確認したい方は、以下の記事もご覧ください。
会計帳簿の作成方法を比較(手書き・Excel・会計ソフト)
会計帳簿を作成する方法には、手書き・Excel・会計ソフトの3つがあります。取引量や簿記の知識、電子帳簿保存法への対応のしやすさによって、向き不向きが分かれます。
| 作成方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 手書き | 道具が不要で始めやすい。帳簿の仕組みが身につきやすい | 転記・集計を手作業で行うため手間がかかり、計算ミスが起きやすい。取引が増えると現実的でない |
| Excel | 無料のテンプレートがあり、自動計算で集計できる | 関数やフォーマットの管理が必要。仕訳から決算書までの自動連携はなく、電子帳簿保存法の要件対応も自力で行う |
| 会計ソフト | 銀行・カード連携で取引を自動取得し、仕訳・転記・決算書作成まで自動化。電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応 | 月額の利用料がかかる。基本的な簿記の考え方は理解しておく必要がある |
取引が少ないうちは手書きやExcelでも対応できますが、取引が増えると転記や集計の負担が一気に大きくなります。国税庁も、日々の取引内容を入力するだけで簡単に記帳できるとして、会計ソフトを利用した記帳を勧めています。
出典・参考資料(1件)
記帳の手間を減らすクラウド会計ソフト
ここからは、仕訳帳への入力から総勘定元帳への転記、決算書の作成までを自動で回せるクラウド会計ソフトを紹介します。銀行口座やクレジットカードと連携して取引を自動取得し、AIが勘定科目を提案する仕組みが各社に共通しています。まずは主なサービスを比較表で確認してください。
| サービス名 | Tenbook(テンブック) | 弥生会計 Next | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | 会計ソフト+記帳・決算・申告の代行 | クラウド会計ソフト | クラウド会計ソフト | クラウド会計ソフト |
| 記帳の進め方 | 専門チームが記帳を代行(原則3名体制) | AIが自動仕訳を提案(自社で確認・承認) | AIが自動仕訳を提案(自社で確認・承認) | AIが自動仕訳を提案(自社で確認・承認) |
| 初期費用 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 月額費用 | 29,500円〜(免税事業者)/43,500円〜(課税事業者) | 2,900円〜(エントリー年契約の月額換算・税抜) | 法人2,980円〜(ひとり法人・年払い・税抜)/個人事業主980円〜(年払い・税抜) | 2,480円〜(ひとり法人・年払い・税抜)/ビジネス6,480円〜(年払い・税抜) |
| 対象規模 | 創業期〜中小企業(売上5億円以下が目安) | 法人向け(個人事業主は別製品) | 個人事業主〜上場企業(IPO準備含む) | ひとり法人〜中小(〜50名想定) |
| 銀行・カード連携 | ●10bookで対応 | ●2,500以上 | ●1,000以上 | ●2,300以上 |
| 電子帳簿保存法対応 | ●10bookが対応 | ●JIIMA認証取得 | ●JIIMA認証取得 | ●JIIMA認証取得 |
| 無料トライアル | 会計代行は要問い合わせ(10book単体は30日間) | 最大2か月 | 30日間 | 1か月 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
クラウド会計ソフトは対応する事業規模や料金、機能の幅が広く、ここで挙げた以外にも選択肢があります。規模・タイプ別の選び方や料金まで含めて広く比較したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【2026年】クラウド会計ソフト比較15選|規模・タイプ別の選び方と料金を解説
クラウド会計ソフトの導入を検討するとき、「製品が多すぎて自社に合うものが分からない」「インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しているか不安」「手入力やExcelでの記帳から早く脱却したい」といった悩みに突き当たる担当者は少なくありません。 選…
ここからは、各サービスの特徴を個別に見ていきます。会計ソフト単体で自力記帳を効率化するものと、記帳代行までまとめて任せられるものがあり、自社の体制に合わせて選べます。紹介するのは法人向けが中心のため、個人事業主の方は、各社が別途用意する個人事業主向けの確定申告プランが選択肢になります。
Tenbook(テンブック)(シンアカウンティングサービス株式会社)

Tenbookは、公認会計士・税理士が代表を務めるシンアカウンティングサービス株式会社が、自社開発のクラウド会計ソフト「10book」を基盤に、記帳代行から決算・法人税申告までをオンラインで一括代行するサービスです。ソフトを自分で操作して記帳するタイプではなく、専門チームが記帳そのものを引き受ける点が特徴で、経理の担当者を置きにくい新設法人や、経理担当の退職で業務が不安定になった企業に向きます。
原則3名のチーム体制で対応し、月次レポート・キャッシュフロー・債権債務をリアルタイムに把握できます。料金は免税事業者向けが月額29,500円、課税事業者向けが月額43,500円で、決算料は別途かかりません(いずれも初期費用0円)。会計サービスの主な対象は、創業期から売上5億円程度までの中小企業です。
記帳を社内の担当者だけで抱える体制のもろさについて、シンアカウンティングサービスの上田氏はインタビューで次のように語っています。
分かりやすいのは、経理リソースが不足している企業です。特に新設法人だと、経理に時間も人も割けないですし、経理フローを構築する知識や経験も不足しがちです。それと、経理担当者の退職などで業務が不安定になるケースもよくあります。属人的なフローになっていると引き継ぎが大変ですし、退職に伴って経理が回らなくなるリスクが出てきます。
弥生会計 Next(弥生株式会社)

長年にわたり会計ソフトを提供してきた弥生が2025年に正式リリースした法人向けクラウド会計サービスが、弥生会計 Nextです。会計(帳簿・決算書作成)に加えて、見積書・請求書発行、経費精算、証憑管理を1つのサービスに統合し、これらのデータが自動で会計処理に連携します。総勘定元帳・補助元帳の作成や、AIによる勘定科目の提案に対応しています。
料金はエントリープランが年額34,800円からで、初期費用は0円、最大2か月の無料体験があります。電子帳簿保存法では「優良な電子帳簿」のJIIMA認証(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会による認証)を取得しています。弥生会計 Nextは法人向けで、個人事業主は同社の「やよいの青色申告 オンライン」などが対象になります。
freee会計(フリー株式会社)

freee会計は、簿記の経験が浅くても使えるよう設計された点を前面に出すクラウド会計ソフトです。公式サイトでも経理の経験者・未経験者を問わず使えるとしており、提案された仕訳を確認・承認していく操作で帳簿が作られていきます。個人事業主から法人までをカバーし、1,000を超える金融機関・サービスと連携して取引を自動取得します。
銀行・カード連携による自動仕訳やAI-OCRでの証憑読み取り、ボタン操作での決算書作成に対応し、電子帳簿保存法ではJIIMA認証を取得しています。料金は個人事業主向けが年払いで月額980円から、法人向けは「ひとり法人」の年払いで月額2,980円から(いずれも税抜、スターター以上は従量課金が別途)で、30日間の無料お試しが用意されています。
マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド会計は、ひとり法人・中小企業向けの法人クラウド会計ソフトです。複式簿記に対応し、仕訳帳・現預金出納帳・総勘定元帳・補助元帳・残高試算表などの帳簿と、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書を作成できます。2,300以上の金融関連サービスと連携して明細を自動取得し、AIが勘定科目を提案します。
仕訳の入力は、振替伝票入力・簡単入力・仕訳帳入力の3方式から選べ、簿記の知識がある担当者は仕訳帳入力でキーボード中心に高速に記帳できます。料金は「ひとり法人」の年払いで月額2,480円から、中小企業向けの「ビジネス」が年払いで月額6,480円から(いずれも税抜)で、1か月の無料トライアルがあります。請求書・経費・給与など同社の他サービスと同一基盤で連携できる点も特徴です。
まとめ
会計帳簿は、すべての取引を記録する主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)と、取引を詳しく記録する補助簿に分かれます。記帳の基本は、取引を仕訳帳に借方・貸方で記入し、総勘定元帳へ勘定科目ごとに転記していく流れです。借方と貸方の金額が一致していること、記載事項を漏れなく書くこと、訂正の履歴を残すことが、正確な帳簿を保つポイントになります。
保存期間は法人10年、個人事業主は帳簿・書類と申告区分によって5〜7年と分かれ、電子取引データは電子帳簿保存法に沿って電子保存します。青色申告で65万円の控除を狙うなら複式簿記での記帳が前提です。取引が増えてきたら、仕訳から決算書作成までを自動化できるクラウド会計ソフトを使うと、記帳と保存の負担を大きく減らせます。
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よくある質問(FAQ)
Q. 会計帳簿は手書きで付けても問題ありませんか?
A. 会計帳簿は、手書きで付けても法律上は問題ありません。記載事項が整然と明瞭に記録されていれば、手書き・Excel・会計ソフトのいずれでも認められます。ただし取引件数が増えると転記や集計の負担が大きく、計算ミスや記入漏れも起きやすくなります。メールやECでやり取りした電子取引データは電子帳簿保存法で電子保存が必要な点にも注意が必要です。取引量が増えたら会計ソフトへの切り替えが現実的です。
Q. 会計帳簿は単式簿記と複式簿記のどちらで付ければよいですか?
A. 単式簿記と複式簿記のどちらで付けるかは、取引量と、受けたい青色申告特別控除の金額で判断します。取引が少なく収支の記録で十分な事業者や白色申告の人は単式簿記でも対応できます。青色申告特別控除の55万円・65万円を受けるには複式簿記が必須で、65万円はさらに電子帳簿保存かe-Taxでの電子申告が要ります。会計ソフトなら仕訳を入力するだけで複式簿記の帳簿が整います。
出典・参考資料(1件)
Q. 会計ソフトを使えば自動で正しい会計帳簿を作成できますか?
A. 会計ソフトは、転記や集計、決算書の作成を自動化できますが、最終的な内容の正しさは人の確認が必要です。銀行・カード連携やAIの勘定科目提案で入力の手間は大きく減りますが、提案された科目や税区分が取引の実態に合うかは利用者が確認・修正します。簿記の基本を理解して使うと、提案の正誤を判断でき、精度の高い帳簿を効率よく作れます。
Q. 領収書がない支出は会計帳簿に付けられず、経費にできないのですか?
A. 領収書がない支出でも、取引の事実が別の記録で確認できれば、記帳し経費計上できる場合があります。銀行の振込明細やクレジットカードの利用明細、支払先からのメール、出金伝票などが取引を裏づけます。こうした資料も残らない支出は経費と認められにくいため、支払いの記録を残し、日付・支払先・金額・内容を帳簿に明記しておくことが大切です。
Q. 会計帳簿はいつまで保存する必要がありますか?
A. 保存期間は、法人は会社法により10年、個人事業主は申告区分と帳簿の種類に応じて5〜7年です。白色申告は法定帳簿が7年、その他の帳簿や請求書・領収書などの書類が5年です。青色申告は仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿と決算関係書類が7年、請求書・契約書などの書類が5年です。消費税の仕入税額控除の要件として保存する請求書等や適格請求書の写しは7年です。
出典・参考資料(2件)
Q. 開業したばかりで売上がなくても会計帳簿は必要ですか?
A. 開業したばかりで売上がなくても、事業に関する取引があれば会計帳簿への記帳が必要です。開業準備のために支払った備品代や家賃、通信費などの支出も記録の対象になり、これらは開業費や必要経費として帳簿に残しておくことで、売上が立ったあとの所得計算や青色申告に活かせます。売上がない時期こそ、取引のたびに記帳する習慣を付けておくと、取引が増えたときに慌てずに済みます。
Q. 会計帳簿の記帳を税理士や記帳代行に依頼することはできますか?
A. 会計帳簿の記帳は、税理士や記帳代行サービスに依頼できます。領収書・請求書などの証憑を整理し、取引内容を説明できる状態で渡すのが前提で、記帳から決算・申告までまとめて任せられるサービスもあります。経理担当を置きにくい新設法人や、担当者の退職で業務が不安定な場合に向きます。手間を減らしたいなら会計ソフト、記帳そのものを任せたいなら記帳代行と、体制に合わせて使い分けます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















