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ハラスメント研修は義務化された?企業が講ずべき措置と中小企業の施行時期を解説

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ハラスメント研修は今は義務なのか、自社はきちんと対応できているのか。そう問われたときに、法律上の扱いを自分の言葉で説明できずに迷ったことはないでしょうか。調べても、義務だとする説明と義務ではないとする説明が混在し、どちらが正しいのか分かりにくいテーマです。

結論から示すと、「ハラスメント研修を実施しなさい」と正面から命じる条文はありません。一方で、事業主にはハラスメントの防止措置を講じることが法律で義務づけられており、その措置には従業員への方針の周知・啓発が含まれます。研修は、この周知・啓発を実際に果たすための中心的な手段として位置づけられています。

言い換えれば、義務なのは「研修という形式」そのものではなく「防止措置を講じること」であり、研修はそれを果たす代表的な手段だということです。この切り分けを押さえると、割れている情報を整理して理解できます。

本記事では、何が法律上の義務なのかを条文・指針・施行時期とともに整理し、対応が不十分な場合のリスクや2026年10月に義務化された最新の改正まで扱います。自社が何を・誰に実施すべきかを判断し、社内に根拠をもって示すための材料としてご活用ください。

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ハラスメント研修は義務?結論と3つの切り分け

ハラスメント研修が義務かどうかは、「研修という行為」「事業主の防止措置」「関係者の責務」という3つの層に分けて見ると正確に理解できます。順に確認します。

ハラスメント研修が義務かを3つの層で整理した図。第1層は労働施策総合推進法第31条の措置義務で、条文に研修の語はない。第2層は厚生労働省の指針で、義務は方針の周知・啓発であり研修はその手段の例。第3層は同法第32条で、研修の実施その他の配慮が努力義務とされ措置義務より弱い。研修そのものを命じる義務はないが、防止措置の手段として実質的に求められている。

第1層:措置義務の条文には「研修」の語がない

職場のパワーハラスメント(以下、パワハラ)の防止について事業主の義務を定めているのは、労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)です。その中心となる雇用管理上の措置義務は、次のように定められています。

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第31条第1項|e-Gov法令検索

この条文には「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」などの措置は挙げられていますが、「研修」という言葉そのものは出てきません。研修を実施すること自体を直接命じる規定ではない、という点が出発点になります。

2026年(令和8年)10月1日施行の改正により、労働施策総合推進法の条番号が繰り下がりました。パワーハラスメントの措置義務は以前の「第30条の2」から現在の「第31条」になっています(後述する研修の責務は第32条)。改正前の「第30条の2」で書かれた資料も残っていますが、同じ規定を指します。

第2層:防止措置は義務で、研修はその「手段の例」

事業主が講ずべき措置の具体的な内容は、厚生労働省の指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針、令和2年厚生労働省告示第5号)で定められています。この指針は、方針を周知・啓発していると認められる例として、次のように研修を挙げています。

職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行つてはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。

出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省

ここで重要なのは、指針が研修を「方針を周知・啓発していると認められる例」として挙げている点です。義務づけられているのは方針の周知・啓発という結果であり、研修はそれを達成する代表的な手段の一つという位置づけになります。周知・啓発の手段が研修に限定されているわけではありませんが、実務上はもっとも確実で記録も残しやすい手段として、多くの企業が研修を選んでいます。

第3層:関係者の責務として研修が「努力義務」になっている(措置義務より弱い)

研修という言葉が条文に唯一明記されているのが、事業主や労働者の責務を定めた条項です。

事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。

出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第32条第2項|e-Gov法令検索

ここでは「研修の実施その他の必要な配慮をする」ことが求められていますが、文末は「努めなければならない」となっており、これは努力義務にあたります。先ほどの措置義務(第31条)の「講じなければならない」と比べると、求められる強さが異なる点に注意が必要です。

3つの層を整理すると、研修という形式そのものを命じる義務はないものの、防止措置(方針の周知・啓発)が義務であり、その手段として研修が指針に例示され、さらに責務としても努力義務が課されている、という関係になります。「研修は直接の義務ではないが、実質的に求められている」という表現が、もっとも実態に近い理解です。

出典・参考資料(2件)

事業主が必ず講じるべき4つの措置(義務の中身)

ここからは、義務の中身である「講ずべき措置」を確認します。厚生労働省は、事業主が雇用管理上講ずべき措置を次の4つの柱に整理しています。

  • 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  • 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  • 併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
出典:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省

厚生労働省は、この4つについて「事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません」と明記しています。指針では、この4つの柱がさらに具体的な10項目に落とし込まれています。各柱がどの項目に対応するかを順に見ていきます。

事業主が必ず講じるべき4つの措置を整理した図。柱1は方針の明確化と周知・啓発で指針10項目の①②にあたり研修が担う中心的な手段。柱2は相談体制の整備で③④。柱3は事後の迅速かつ適切な対応で⑤から⑧。柱4は併せて講ずべき措置でプライバシー保護と不利益取扱いの禁止、⑨⑩。厚生労働省はこれらを必ず講じなければならないとしている。

①事業主の方針の明確化とその周知・啓発

ハラスメントの内容と「行ってはならない」という方針を明確にし、管理監督者を含む全ての労働者に周知・啓発することが求められます。あわせて、行為者を厳正に対処する旨の方針と対処内容を就業規則などの文書に定め、同じく周知・啓発する必要があります。指針の10項目のうち①②がこの柱にあたり、冒頭で述べた研修はこの周知・啓発を担う中心的な手段です。

②相談に応じ適切に対応するための体制の整備

相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知し、担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにします(10項目のうち③④)。窓口は社内に設ける方法のほか、外部の専門機関へ委託する方法もあります。担当者が内容や状況に応じて公平に対応できる体制をあらかじめ整えておくことが、相談窓口を実効性のあるものにします。

③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

相談を受けたら、事実関係を迅速かつ正確に確認し、確認できた場合は被害者への配慮の措置と行為者への措置をそれぞれ適正に行い、再発防止に向けた措置を講じます(10項目のうち⑤〜⑧)。事実確認から再発防止までを一連の手順として整えておくことが、この柱のポイントです。

④併せて講ずべき措置(プライバシー保護・不利益取扱いの禁止)

相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じて労働者に周知すること、そして相談したことや事実確認に協力したことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをしない旨を定めて周知・啓発することが求められます(10項目のうち⑨⑩)。相談をためらわせない環境づくりが、制度を実際に機能させる前提になります。

出典・参考資料(1件)

義務化はいつから?企業規模別の施行時期

パワーハラスメント防止の措置義務は、企業規模によって義務化の時期が分かれています。厚生労働省のリーフレットでは、施行時期を次のように説明しています。

(防止対策の強化が図られ、)2020年6月1日から施行されました。そのうち、パワーハラスメントの雇用管理上の措置義務について、中小事業主においても2022年4月1日から義務化されます

出典:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省

整理すると、大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から、パワーハラスメント防止の措置義務が適用されています。現在は企業規模を問わず義務化されており、「中小企業だからまだ対象外」ということはありません。

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企業規模別の施行時期大企業中小企業
パワハラ防止措置の義務化2020年6月1日2022年4月1日
補足セクハラ・妊娠出産等ハラスメント対策は以前から義務2022年3月31日までは努力義務だった

中小企業への適用開始は2022年4月1日です。「2024年4月から」とする情報は誤りで、厚生労働省の資料(リーフレット)がこの日付を示しています。

対応が不十分だとどうなる?罰則・指導・企業名公表

防止措置を講じなかった場合に、ただちに罰金や懲役が科されるわけではありません。労働施策総合推進法は、刑事罰ではなく行政による指導と公表の枠組みを定めています。

厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができる。

出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第42条第1項|e-Gov法令検索

さらに、勧告を受けた事業主がこれに従わなかった場合には、その旨を公表できると定められています。

厚生労働大臣は、(中略)の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。

出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第42条第2項|e-Gov法令検索

枠組みは「助言・指導・勧告を行い、勧告に従わなければ企業名を公表できる」というものです。直接の罰則がないからといって対応を後回しにすると、企業名の公表による信用の低下や、ハラスメントの放置そのものによる損害賠償請求・人材流出といったリスクにつながります。

出典・参考資料(1件)

義務の対象となるハラスメントの範囲と広がり

防止措置の義務はパワーハラスメントだけではありません。セクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントも以前から対象で、2026年10月には新たにカスタマーハラスメントなどが加わりました。研修の対象テーマを考えるうえで、まず範囲の全体像を押さえます。

職場のパワーハラスメントの定義と6つの類型

厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。

職場におけるパワーハラスメントは、以下の①から③までの3つの要素を全て満たすものをいい、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しません。

出典:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省

3つの要素とは、「優越的な関係を背景とした」言動であること、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動であること、「労働者の就業環境が害される」ことです。適正な範囲の業務指示や指導はパワーハラスメントにあたりません。代表的な言動は、次の6つの類型に整理されています。

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
  • 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  • 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
  • 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  • 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
出典:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省

この6類型は代表例であり、限定列挙ではありません。いずれの類型に当てはまらなくても、3つの要素を満たせばパワーハラスメントに該当し得ます。

セクシュアルハラスメント・妊娠出産等に関するハラスメント

セクシュアルハラスメントの防止措置は、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)第11条で事業主に義務づけられています。

妊娠・出産等に関するハラスメントは同法第15条(2026年10月の改正前は「第11条の3」)、育児休業・介護休業等に関するハラスメントは育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)第25条が、それぞれ相談体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを求めています。

これらはパワーハラスメントより前から義務化されており、研修でも標準的に取り上げるテーマです。

2026年10月1日から義務化されたカスタマーハラスメント・求職者等へのセクハラ

2026年(令和8年)10月1日施行の改正(令和7年法律第63号)により、新たにカスタマーハラスメントと、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になりました。厚生労働省は次のように説明しています。

本改正により、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「求職者等セクハラ」)の防止措置が事業主の義務となります(令和8年10月1日施行)。

出典:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省

カスタマーハラスメントの防止措置は労働施策総合推進法の第33条(新設)に、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置は男女雇用機会均等法の第13条(新設)に定められています。

施行日である2026年10月1日はすでに到来しており、これらは現時点で事業主に義務づけられた措置です。パワーハラスメントのような企業規模による段階的な適用は設けられておらず、企業規模を問わずこの日から対象になっています。

研修の対象テーマも、従来のパワハラ・セクハラ・マタハラに加えて、カスタマーハラスメントへの対応を含めて検討する段階に入っています。

出典・参考資料(5件)

ハラスメント研修の進め方:対象者・頻度・実施手段

義務の中身を踏まえたうえで、研修を実際にどう進めるかを整理します。法律や指針は研修の頻度や形式までは定めていないため、ここからは一般的な実務の考え方として読んでください。

研修の目的と措置の中での位置づけ

研修の目的は、ハラスメントの内容と「行ってはならない」という方針を全従業員に理解させ、相談窓口の存在や対応の流れを周知することにあります。前半で確認したとおり、研修は方針の周知・啓発という措置を果たすための中心的な手段です。方針を文書で定めただけでは従業員に浸透しにくいため、研修を通じて理解を促し、受講の記録を残しておくことが、措置を講じた事実を説明する裏づけにもなります。

対象者別のポイント(管理職向け・全従業員向け)

研修は対象者によって内容を変えると効果が高まります。管理職向けには、指導とハラスメントの線引き、相談を受けた際の初期対応、部下のマネジメントにおける注意点を重点的に扱います。

管理職はハラスメントの行為者にも相談の受け手にもなり得るため、実際の場面を想定した内容が求められます。全従業員向けには、ハラスメントの定義と6類型、禁止方針、相談窓口の使い方といった基礎を全員が共通して理解できるように設計します。

研修の実施手段(社内研修・外部研修・eラーニング)と頻度

研修の実施手段は大きく、社内の担当者が講師を務める集合研修、外部の専門家に依頼する外部研修、オンラインで受講するeラーニングに分かれます。集合研修は質疑や事例の共有がしやすい一方で、全員の日程調整や講師の準備に負担がかかります。

外部研修は専門性の高い内容を期待できますが、費用は相応にかかります。eラーニングは、全従業員が都合のよい時間に受講でき、受講状況を記録として残しやすい点が特徴で、毎年の定期的な実施や、入社時・昇進時の節目での実施に向いています。

集合研修・外部研修・eラーニングのどの形が自社の受講対象や実施体制に合うかをサービス単位で見比べたい場合は、各タイプを横断して整理した以下の記事が参考になります。

頻度に法令上の決まりはありませんが、方針の浸透と法改正への対応を踏まえ、年1回程度の定期実施に加え、新入社員・新任管理職といった節目で実施する企業が多く見られます。

研修をどの程度の頻度で続けるべきかを考えるうえでは、実施した研修がどこまで従業員に定着しているかも見逃せません。コンプライアンス教育サービスを提供する事業者は、人事担当者を対象に行った意識調査の結果を次のように述べています。

山田氏
株式会社リスキル ビジネスプロデューサー
山田氏
独自インタビューより

ただ、実際に多くの企業で研修が行われている一方で、現場の課題感はどこにあるのか。そこを確かめたくて、人事担当者413名を対象に「コンプライアンス教育に関する意識調査」を実施しました。対象は当社のお客様に限らない一般の人事担当者の方々です。その結果、約3割の企業様が現状の教育手法に「十分な効果を感じていない」と回答されました。要因を深掘りすると、「受講自体が作業化して形骸化している(62.8%)」「一時的な実施に留まり、内容を忘れてしまう(44.9%)」という声が上位を占めていたのです。

義務を満たせているか?自社の防止体制を点検するステップ

ここまでの内容をもとに、自社が義務を満たせているかを点検してみましょう。次の流れで確認すると、不足している箇所が見えてきます。

  1. ハラスメントの禁止方針と、行為者への対処方針を就業規則などの文書に定めているか
  2. 相談窓口を設け、その存在と使い方を全従業員に周知しているか
  3. 方針の周知・啓発として、管理職・全従業員に研修を実施できているか
  4. 相談を受けた際の事実確認・被害者配慮・行為者対応・再発防止の手順を整えているか
  5. 相談者等のプライバシー保護と、不利益取扱いの禁止を定めて周知しているか
  6. 研修の受講記録や方針の周知の記録を残し、措置を講じた事実を説明できるようにしているか

このうち「研修の実施」と「受講記録の管理」は、対象者が多い企業ほど手間がかかりやすい部分です。全従業員への配信と受講状況の記録を仕組みとして持てるかどうかが、義務を継続的に満たせるかの分かれ目になります。

研修の実施手段を選ぶ

前の章で挙げた手段のうち、全従業員へ方針と内容を確実に届けて受講記録まで残す観点では、eラーニングが扱いやすい形です。ここでは、ハラスメント防止をはじめとするコンプライアンス研修に対応し、受講管理の仕組みを備えたeラーニングを紹介します。まずは対応テーマや料金体系の違いを一覧で確認してください。

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サービス名OneCompliancemanebi eラーニングlearningBOX
ハラスメント対応テーマパワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ・ケアハラ・SOGIハラ・オンラインハラスメントパワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラパワハラ・セクハラ ほか(連携教材で計6テーマ)
カスハラ教材●カスハラ専用3コース(規制と義務/BtoB/クレーム対応)●「カスハラ対応と対策」コンテンツあり△公式に未記載
受講管理・記録●進捗の一元管理・CSV出力・自動リマインド●受講管理・効果測定(LMS型)●成績・学習進捗の管理
提供形態eラーニング(マイクロラーニング・PC/スマホ対応)eラーニング(クラウドLMS・約8,000教材見放題)+集合研修eラーニング(クラウド型LMS)
初期費用要お問い合わせ100,000円記載なし
月額費用受講者数に応じた従量課金
(要お問い合わせ)
19,800円〜
(LITE・39IDまで定額、2026年6月時点)
無料プランあり
有料は5,500円〜(税込・100アカウント単位、2026年6月時点)
無料で試せる仕組み無料トライアルあり無料デモあり無料プランあり(10アカウント・無期限)
詳細情報公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

1. OneCompliance(株式会社Oyster)

OneCompliance(ワンコンプライアンス)のウェブサイト

OneCompliance は、コンプライアンス領域に特化したeラーニングプラットフォームです。

法務・労務・情報セキュリティなどを横断する26のコースを備え、ハラスメント分野では予防研修を管理職向けと全従業員向けに作り分けています。2026年10月に義務化されたカスタマーハラスメントについても、規制と事業者の義務・事業者間(BtoB)のカスハラ・クレーム対応の3コースを用意しています。

管理者向けには、受講者別・コース別の進捗を一元管理できるダッシュボード(CSVエクスポート対応)や、未完了者への自動リマインダー、自社の規定を共有して随時閲覧させる機能などがそろい、受講記録を残す運用がしやすい設計です。

1コンテンツが数分単位のマイクロラーニング形式で、PC・スマートフォンの両方に対応します。料金は受講人数に応じた体系で具体額は非公開のため、資料請求や問い合わせでの確認が必要です(2026年6月時点)。無料トライアルも用意されています。

同社は、こうした受講管理の機能が、コンプライアンス研修に特有の運用のあり方を前提にしていると説明しています。

谷口氏
株式会社Oyster 代表取締役
谷口氏
独自インタビューより

コンプライアンス研修は「学びたい人が自由に選ぶ」よりも、「管理者が指定して期限までに受けてもらう」運用が中心になります。そのため、当社は、その前提に合わせて管理側機能を設計しています。

2. manebi eラーニング(株式会社manebi)

manebi eラーニングのウェブサイト

AIを搭載した学習管理システム(LMS)型のeラーニングで、コンプライアンス・ハラスメント・情報セキュリティから階層別・職種別研修、ビジネススキルまで幅広い教材を月額定額で利用できます。ハラスメント分野ではパワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラの教材をそろえ、コースマップ機能で自社に合わせた学習プログラムを組める点が特徴です。

2026年10月に義務化されたカスタマーハラスメントを扱う講座も用意されており、オンラインのeラーニングだけでなく集合研修の形でも研修を実施できます。

料金は初期費用100,000円で、39IDまで定額で使えるLITEプランが月額19,800円から用意されています(2026年6月時点)。自社オリジナル教材のアップロードにも対応するため、既存の研修コンテンツと組み合わせて運用したい企業にも向いています。無料デモで実際の操作感を確認できます。

3. learningBOX(learningBOX株式会社)

learningBOXのウェブサイト

learningBOX株式会社が提供するクラウド型の学習管理システムで、教材作成・テスト作成・採点・成績管理などeラーニング運用の基本機能をそなえています。10アカウントまで無期限で使える無料のフリープランがあり、導入のハードルが低い点が特徴です。付加サービス「learningBOX ON」を通じて、ハラスメント・コンプライアンスなどの既成の研修コンテンツを追加できます。

有料プランは100アカウント単位の従量課金制で、スタータープランは月額5,500円(税込)から利用できます(2026年6月時点)。コンプライアンス研修コンテンツには弁護士による監修が入っており、自作教材と組み合わせて自社向けの学習コースを設計することも可能です。まずは無料で試しながら、必要に応じて規模を広げたい企業に適しています。

ここで取り上げたサービスのほかにも、ハラスメント防止をはじめとするコンプライアンス研修に対応したeラーニングは数多くあります。対応テーマや料金体系、受講管理機能を横断的に見比べて自社に合うものを選びたい場合は、以下の記事で選び方とあわせて詳しく解説しています。

まとめ

ハラスメント研修は、「研修という形式」そのものを命じる義務ではありませんが、事業主にはハラスメントの防止措置が義務づけられており、研修はその方針の周知・啓発を担う中心的な手段に位置づけられます。

防止措置は方針の明確化・周知、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、併せて講ずべき措置の4つの柱からなり、パワーハラスメントは大企業で2020年6月1日、中小企業で2022年4月1日から義務化されています。2026年10月1日からはカスタマーハラスメントなども新たに対象に加わりました。

対応が不十分な場合は行政による指導や企業名の公表につながり得るため、方針の整備・相談窓口・研修の実施・記録の管理を一通り点検し、不足があれば早めに整えることが大切です。全従業員への研修と受講記録の管理を仕組みとして持ちたい場合は、ハラスメント防止に対応したeラーニングの資料を取り寄せ、対応テーマや受講管理機能、料金を比較してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. ハラスメント研修とは何ですか?

A. ハラスメント研修とは、職場のパワハラ・セクハラなどの定義や「行ってはならない」という方針、相談窓口の使い方を従業員に理解させ、ハラスメントの発生を防ぐための教育のことです。 事業主に義務づけられたハラスメント防止措置のうち「方針の周知・啓発」を実際に果たす中心的な手段として実施され、内容を理解させる対象の違いから、管理職向けと全従業員向けに分けて行うのが一般的です。

Q. ハラスメント研修は法律上の義務ですか?

A. ハラスメント研修は、「研修を実施しなさい」と正面から命じる条文がある直接の義務ではありませんが、事業主に義務づけられた防止措置(方針の周知・啓発)を果たす手段として実質的に求められています。

労働施策総合推進法第31条は、事業主に雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけており、厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)が、その周知・啓発の手段の例として研修を挙げています。さらに同法第32条は、事業主の責務として「研修の実施その他の必要な配慮」に努めることを求めています(努力義務)。

出典・参考資料(2件)

Q. ハラスメント研修は中小企業も義務の対象ですか?

A. 中小企業も対象で、パワーハラスメント防止の措置義務は2022年4月1日から企業規模を問わず全面的に適用されています。 大企業は2020年6月1日から義務化され、中小企業は2022年3月31日までは努力義務でしたが、2022年4月1日以降は中小企業も措置義務の対象です。

「中小企業は2024年4月から」とする情報は誤りで、厚生労働省の資料が示す正しい日付は2022年4月1日です。

出典・参考資料(1件)

Q. ハラスメント研修を実施していない場合、罰則はありますか?

A. 防止措置を講じていなくても、ただちに罰金や懲役といった刑事罰が科されることはありません。 ただし労働施策総合推進法第42条に基づき、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となり、勧告を受けてもこれに従わない場合は企業名を公表されることがあります。

直接の罰則がないからと対応を後回しにすると、企業名公表による信用の低下や、ハラスメントの放置そのものによる損害賠償請求・人材流出といったリスクにつながります。

出典・参考資料(1件)

Q. ハラスメント研修の対象者は誰ですか?パートや派遣社員も含まれますか?

A. ハラスメント防止措置の対象は、正社員だけでなくパートタイム労働者・契約社員などを含む、事業主が雇用するすべての労働者です。 そのため、周知・啓発の手段である研修も、雇用形態を問わず全ての労働者に行き渡らせることが望まれます。派遣労働者については、派遣元の事業主だけでなく、派遣先の事業主も自ら雇用する労働者と同様に措置を講じる必要があります。

出典・参考資料(1件)

Q. ハラスメント研修はどのくらいの頻度で実施すればよいですか?

A. 研修の頻度や時間に法令上の決まりはありませんが、年1回程度の定期実施に加え、新入社員・新任管理職といった節目で実施する企業が多く見られます。 方針を一度の研修で終わらせず繰り返し伝えることで理解が定着し、法改正にも対応しやすくなります。管理職向けと全従業員向けで内容や時間配分を分けると、それぞれの立場に必要な理解を促しやすくなります。

Q. ハラスメント研修は社内で実施するのと外部サービスを使うのとでは、どちらがよいですか?

A. 自社の実情に即した内容を無理なく回せるなら社内研修、専門性や受講管理の効率を重視するなら外部研修やeラーニングが向いています。 社内の集合研修は事例共有や質疑がしやすい一方、講師の準備や全員の日程調整の負担が大きくなります。外部研修は専門性の高い内容を期待でき、eラーニングは全従業員が都合のよい時間に受講できて受講記録も残しやすいため、対象者が多い企業ほど運用しやすい選択肢になります。

Q. ハラスメントの相談窓口は社内に設けるのと外部へ委託するのとでは、どちらがよいですか?

A. どちらにも利点があり、両方を併用すると相談者が状況に応じて使い分けやすくなります。 社内窓口は事情を把握したうえで迅速に動ける一方、相談者が社内の人に知られることをためらう場合があります。

外部委託の窓口は中立性・匿名性を保ちやすく、専門的な対応を期待できます。相談窓口の設置はハラスメント防止措置の一つとして義務づけられており、形式的に設けるだけでは足りず、実際に相談へ適切に対応できる体制にすることが求められます。

出典・参考資料(1件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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