職場で使われる「〜ハラスメント」という呼び名は、パワハラ・セクハラ・マタハラに加えて、カスタマーハラスメントやSOGIハラ、リモートハラスメントなど毎年のように増えています。相談を受けた側からすると、それぞれが「法律で対応が求められる類型」なのか「職場で問題になりうる俗称」なのかの線引きが分からず、社内周知の資料を作るのにも研修の対象範囲を決めるのにも判断がつきにくい状況です。
この呼び名の増加は、法改正の動きとも重なっています。2025年6月11日に公布された改正法により、カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントは、2026年10月1日から新たに事業主の措置義務の対象となります(厚生労働省リーフレット)。既存の4類型(パワハラ・セクハラ・妊娠出産等・育児介護休業等)とあわせて、企業が対応すべき範囲は施行日を境に4から6へ広がります。
本記事では、種類の一覧・定義・言動例・企業の防止措置義務・指導との境目・実装手段までを、社内周知と研修設計の骨子として使える形にまとめました。
目次
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ハラスメントとは何を指すか
ハラスメントは広く「相手を不快にさせる言動」を指す言葉として日常的に使われますが、本記事で扱うのは職場のハラスメント——事業主・上司・同僚・顧客等が労働者に対して行い、就業環境を害する言動です。家庭や学校の場面を含む広義のハラスメントではなく、労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・育児介護休業法が事業主に防止措置を義務づけている領域を主題として整理します。
「職場」の範囲も法令上は広く、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指します。オフィス内だけでなく、取引先の事業所や出張先、顧客先、業務で使用する車内、勤務時間外の懇親の場であっても業務の延長と評価されるものは含まれます。この範囲を踏まえて、まず職場で問題になる主な類型を一覧で確認します。
職場のハラスメントの種類一覧
以下は、職場で「〜ハラスメント」と呼ばれる主な言動を一覧にしたものです。表の上半分(1〜6行目)が事業主に防止措置が義務づけられている類型(既存4類型+2026年10月1日施行の新設2類型)で、下半分(7行目以降)が法令上の類型名ではない俗称です。「法律上の措置義務」列と「根拠条文」列で、それぞれの言動がどの法律に紐づくかを確認できます。
| 名称 | パワーハラスメント(パワハラ) | セクシュアルハラスメント(セクハラ) | 妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ) | 育児休業・介護休業等に関するハラスメント(パタハラ・育休ハラ・ケアハラを含む) | カスタマーハラスメント(カスハラ) | 求職者等に対するセクシュアルハラスメント | モラルハラスメント(モラハラ) | SOGI(性的指向・性自認)ハラスメント | リモートハラスメント(リモハラ) | 時短ハラスメント(ジタハラ) | アルコールハラスメント(アルハラ) | スメルハラスメント(スメハラ) | テクノロジーハラスメント(テクハラ) | ハラスメントハラスメント(ハラハラ) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 一文でいうと | 職場での優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて労働者の就業環境を害するもの | 職場での性的な言動に対する労働者の対応により労働条件で不利益を受ける、または就業環境が害されるもの(対価型・環境型) | 妊娠・出産や、妊娠・出産に関する制度(産前産後休業等)の利用に関する言動により、女性労働者の就業環境が害されるもの(対象は女性労働者に限定) | 育児休業・介護休業・子の看護休暇・介護休暇・所定労働時間の短縮措置等の利用に関する言動により、労働者の就業環境が害されるもの(男女とも対象) | 顧客等の言動で、業務の性質等に照らして社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するもの | 事業主が雇用する労働者が、求職者・インターン参加者等に行う性的な言動により、その求職活動等が阻害されるもの | 言葉や態度による精神的な嫌がらせ全般を指す一般用語。職場では優越的な関係を背景とすればパワハラの精神的な攻撃と重なる | 性的指向・性自認に関する差別的言動や本人の望まないアウティング。パワハラ指針では「個の侵害」「精神的な攻撃」の該当例として明示 | テレワーク・オンライン会議で行われる嫌がらせの俗称。内容によりパワハラ・セクハラのいずれかに該当する | 業務量を減らさないまま労働時間の短縮だけを迫る言動の俗称。内容によりパワハラの過大な要求に該当しうる | 飲酒を強要したり酔いに乗じて嫌がらせを行う俗称。業務の延長で行われる場合はパワハラ・セクハラで対応 | 体臭・香り(香水・柔軟剤)への過度な言及や、体臭を理由にした嫌がらせを行う俗称 | IT機器やソフトウェアの扱いを理由にした嘲笑・叱責の俗称。パワハラの精神的な攻撃に該当しうる | 何でもハラスメントだと主張して相手を萎縮させる言動の俗称。業務上必要な指導を封じる目的で使われる場合がある |
| 代表的な言動例 | 殴打・足蹴り、人格を否定する暴言、集団による無視、業務上明らかに不要な仕事の強制、私的なことへの過度な立ち入り 等 | 性的関係の要求と拒否を理由にした解雇・降格、身体接触の反復、性的な事柄の公然発言、ヌードポスターの掲示 等 | 産休の利用を申し出た労働者に「迷惑だ」と繰り返し発言する、妊娠報告を受けて退職や配置転換を強要する 等 | 育児休業の申請を撤回させる、時短勤務者に対して「使えない」と繰り返し発言する、介護休業を理由に降格する 等 | 暴行・威圧、土下座の強要、居座り・不退去、対応不可能な要求の反復、SNSでの中傷投稿の示唆 等 | 採用面接で面接官が性的な事柄を質問する、就職説明会後の懇親でインターン参加者に性的関係を要求する 等 | 無視、皮肉、人格を否定する発言 等 | 性的指向に関する侮辱的な言動、本人の了解なく他の労働者に性自認を暴露する 等 | オンライン会議で背景を執拗に詮索する、業務時間外にチャットで頻繁に連絡する 等 | 残業禁止を命じながら達成困難な業務量を課す、時間内に終わらなかったことのみを厳しく叱責する 等 | 一気飲みの強要、飲めない相手への繰り返しの飲酒要求 等 | 同僚の香水を「臭い」と繰り返し指摘する、体臭を理由に席替えを要求する 等 | ITツールに不慣れな年配社員を「そんなことも分からないのか」と揶揄する 等 | 指導に対して過剰にハラスメントを主張する、正当な業務命令を「パワハラだ」と拒む 等 |
| 法律上の措置義務 | あり | あり | あり | あり | あり(2026年10月1日から) | あり(2026年10月1日から) | なし(該当時はパワハラで対応) | なし(該当時はパワハラで対応) | なし(該当時は既存類型で対応) | なし(該当時はパワハラで対応) | なし(該当時は既存類型で対応) | なし(該当時はパワハラで対応) | なし(該当時はパワハラで対応) | なし(法令上の類型ではない) |
| 根拠条文 | 労働施策総合推進法第30条の2(2026年10月1日以降は第31条) | 男女雇用機会均等法第11条 | 男女雇用機会均等法第11条の3 | 育児介護休業法第25条 | 改正労働施策総合推進法第33条 | 改正男女雇用機会均等法第13条 | — | — | — | — | — | — | — | — |
※法令上の措置義務は厚生労働省の指針・告示および関係法令に基づく。俗称の代表的な言動例は職場での一般的な用例で、行為の該当性は個別に判断されます。
この一覧の読み方(法令上の類型と俗称の見分け方)
ハラスメントの「種類数」は書き手によって3・4・5・16・22・23といった幅で提示されますが、これは数え方の違いによるものです。事業主の措置義務という切り口で条文単位に数えると、施行前(2026年9月まで)は4類型、2026年10月1日以降は新設の2類型(カスハラ/求職者等セクハラ)が加わって6類型となります。
一方、パワハラを6類型(身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害)に分けて挙げ、俗称を加えて数える書き方では15〜23種になります。
俗称(モラハラ・SOGIハラ・リモハラ・時短ハラ 等)は法令上の類型名ではありませんが、行為の実態が既存類型に当てはまる場合は、その類型の措置義務の対象になります。たとえば性的指向・性自認に関する侮辱的な言動は、パワーハラスメント指針で「精神的な攻撃」「個の侵害」の該当例として明示されています。
俗称を並べて数を競うのではなく、「実際の言動がどの法令上の類型に該当するか」を判断できるようにすることが、社内周知と相談対応の実務では重要です。
法令上のハラスメントの定義と言動例
ここからは、事業主に防止措置が義務づけられている類型について、厚生労働省の指針原文を用いて定義と代表的な言動例を確認します。指針の文言はそのまま社内資料や研修教材にも転記できます。
パワーハラスメント(3要素・6類型と代表的な言動例)
パワーハラスメントは、厚生労働省告示による指針で3つの要素を全て満たすものと定義されています。
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省
指針では、代表的な言動を次の6類型に分けています。各類型には「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」が併記されており、6類型は限定列挙ではないと明記されています。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害):殴打、足蹴り、物を投げつける
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言):人格を否定する言動(性的指向・性自認に関する侮辱を含む)、他の労働者の面前での威圧的な叱責の反復、罵倒的な内容の電子メールを複数宛先に送信する
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視):意に沿わない労働者を長期間別室に隔離する、集団で無視して孤立させる
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害):業務と関係のない私的な雑用を強制的にさせる、達成不可能な業績目標を課して未達を叱責する
- 過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる・仕事を与えない):退職に追い込むため管理職に誰でも遂行可能な業務を行わせる、嫌がらせのために仕事を与えない
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること):職場外でも継続的に監視する、性的指向・性自認や病歴・不妊治療等の機微な個人情報を本人の了解なく他の労働者に暴露する
指針は同時に、「該当しないと考えられる例」として、社会的ルールを欠いた言動が改善されない労働者への一定程度強い注意や、業績目標達成のために業務内容を軽減した際の配慮的な措置なども挙げています。3要素の②「業務上必要かつ相当な範囲」を超えていないかを個別に判断する構造で、単に言動の表面だけで該当・非該当を機械的に決めるものではありません。
セクシュアルハラスメント(対価型・環境型と代表的な言動例)
セクシュアルハラスメントは、厚生労働省告示による指針で対価型と環境型の2つに分けられています。同性に対するものも、被害者の性的指向・性自認にかかわらず対象になる点も、指針で明記されています。
職場におけるセクシュアルハラスメントには、職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)と、当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)がある。
なお、職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものである。また、被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。
出典:事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)|厚生労働省
対価型の典型例として、事務所内で事業主が性的関係を要求し、拒否した労働者を解雇するケースなどが指針に挙げられています。環境型は、上司が繰り返し身体接触を行って労働者が就業意欲を失うケースや、抗議されているにもかかわらずヌードポスターを事務所内に掲示し続けるケースなどです。
「業務との関連性」「性的言動の内容」「頻度」「対応関係」の複合で判断される構造は、パワハラの3要素と同様に個別評価を前提とします。
妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)
妊娠・出産等に関するハラスメントは、女性労働者の妊娠・出産や、それに関する制度(産前産後休業・母性健康管理措置等)の利用に対する言動が対象です。指針は「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」の2類型に分けて定義しています。
職場における妊娠、出産等に関するハラスメントには、上司又は同僚から行われる以下のものがある。なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントには該当しない。
イ その雇用する女性労働者の労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業その他の妊娠又は出産に関する制度又は措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「制度等の利用への嫌がらせ型」という。)
ロ その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したことその他の妊娠又は出産に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「状態への嫌がらせ型」という。)
出典:事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)|厚生労働省
この指針は対象を「女性労働者」に限定しています。父親側の育児参加を巡る言動(一般に「パタハラ」と呼ばれるもの)は、次の育児休業・介護休業等ハラスメント指針で扱われる制度利用の言動として位置づけられる点に注意が必要です。均等法系(女性労働者に限定)と育介法系(男女とも対象)で根拠条文と適用が分かれるため、社内資料では両者を分けて示す方が、数え方の混乱を避けられます。
育児休業・介護休業等に関するハラスメント(ケアハラを含む)
育児休業・介護休業等に関するハラスメントは、育児介護休業法に基づく制度の利用に対する言動が対象です。妊娠・出産等ハラスメントが「女性労働者に限定」であるのに対し、こちらは男女を問わず対象になります。介護に関する制度が対象に含まれることから、俗称の「ケアハラ」(介護休業・介護休暇の利用への嫌がらせ)も本指針の枠組みで扱われます。
職場における育児休業等に関するハラスメントには、上司又は同僚から行われる、その雇用する労働者に対する制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるものがあること。なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、職場における育児休業等に関するハラスメントには該当しないこと。
出典:子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針(平成21年厚生労働省告示第509号)|厚生労働省
対象となる制度は、育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、育児のための所定労働時間の短縮措置、始業時刻変更等の措置、介護のための所定労働時間の短縮措置の10項目です。時短勤務者への「使えない」という発言や、育児休業申請の撤回を迫る言動などが、本指針の対象となります。
カスタマーハラスメント/求職者等に対するセクシュアルハラスメント
カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントは、2026年10月1日から新たに事業主の措置義務の対象となる類型です。定義は、2026年2月26日に公布された新指針に示されています。
カスタマーハラスメントは、パワハラと同様に3つの要素を全て満たすものと定義され、「顧客等」の範囲は購入者・取引先担当者・施設利用者・近隣住民など、事業に関係を有する者を広く含みます。
職場におけるカスタマーハラスメントは、職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。
なお、顧客等からの苦情の全てが職場におけるカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、職場におけるカスタマーハラスメントには当たらない。
出典:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第51号)|厚生労働省
言動の類型として、指針は「内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの」(要求に理由がない・契約で想定しているサービスを著しく超える要求・不当な損害賠償要求 等)と、「手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの」(暴行、脅迫、土下座の強要、威圧的な言動、継続的・執拗な言動、不退去・居座り 等)を挙げています。
クレーム対応そのものを萎縮させる制度ではなく、社会通念を明らかに超えた言動から労働者を守ることが目的です。
求職者等に対するセクシュアルハラスメントは、事業主が雇用する労働者による性的な言動が、求職者の求職活動等を阻害するものと定義されています。対象となる「求職活動等」には、企業の採用面接・就職説明会への参加、労働者への訪問、インターンシップ、教育実習・看護実習等が含まれ、SNSなどのオンラインを介したものも含まれます。
求職活動等におけるセクシュアルハラスメントは、事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されるものをいう。
なお、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものである。また、被害を受けた者の性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、当該者に対する求職活動等におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。
出典:事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第52号)|厚生労働省
企業に義務づけられている防止措置と施行時期
ハラスメントの類型が把握できたら、次に確認したいのが「どれが法律で企業に対応を求められているか」と、その施行時期です。事業主に措置義務が課されている類型は、2026年9月30日まで4つ、2026年10月1日から6つに増えます。

現在すでに措置義務がある類型(4類型・根拠条文つき)
本記事の公開時点(2026年9月)で事業主に措置義務が課されているのは、次の4類型です。カッコ内は2026年10月1日以降に付番改正で切り替わる条文番号を併記しました。
- パワーハラスメント:労働施策総合推進法第30条の2(2026年10月1日以降は第31条)
- セクシュアルハラスメント:男女雇用機会均等法第11条
- 妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ):男女雇用機会均等法第11条の3
- 育児休業・介護休業等に関するハラスメント(育休・ケアハラ):育児介護休業法第25条
付番改正の内容は、厚生労働省雇用環境・均等局長通達「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第10章の規定等の運用について」(雇均発0424第2号/令和8年4月24日)で確認できます。パワハラの根拠条文は施行後は第31条、企業名公表(後述)は第42条第2項に切り替わります。
パワーハラスメントの措置義務は、大企業では令和2年(2020年)6月1日から、中小企業では令和4年(2022年)4月1日から適用されています。厚生労働省の中小企業向けリーフレットで、この段階的な適用時期が明示されています。
令和2年6月1日に「改正 労働施策総合推進法」が施行されました。中小企業に対する職場のパワーハラスメントの防止措置は、令和4年4月1日から義務化されます(令和4年3月31日までは努力義務)。
出典:労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます|厚生労働省リーフレット
各条文の内容は、いずれも「事業主は……相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」という同じ枠組みで構成されており、罰則付きの禁止規定ではなく事業主の措置義務として設けられている点が共通します。
2026年10月1日から新たに義務になる類型(カスハラ/求職者等セクハラ)
2025年6月11日に公布された改正法により、次の2類型が2026年10月1日から新たに事業主の措置義務の対象となります。厚生労働省のリーフレットで施行日が明示されています。
令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!事業主の皆さまは、改正法や指針の内容に沿った対策を行う準備を進めてください。
出典:令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!|厚生労働省リーフレット
- カスタマーハラスメント:改正労働施策総合推進法第33条
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント:改正男女雇用機会均等法第13条
「公布」と「施行」は別の概念で、公布日は法律が官報に掲載された日、施行日はその法律の効力が実際に発生する日を指します。カスハラ・求職者等セクハラの防止措置義務についても、公布日は2025年6月11日ですが、事業主が対応を完了しておくべき期限は2026年10月1日です。
他媒体には公布日を施行日として紹介するものや、令和7年(2025年)を施行年としているものが見られますが、厚生労働省のリーフレット・告示・総合ページは「令和8年(2026年)10月1日」で一貫しています。
企業が講ずべき措置の中身
各ハラスメント指針は、事業主が講ずべき措置として共通の4つの柱を示しています。パワハラ指針の柱がその代表で、他の類型(セクハラ・妊娠出産等・育児介護休業等)にも同じ枠組みで並びます。
出典:パワーハラスメント指針(令和2年厚生労働省告示第5号)§4|厚生労働省
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 上記の措置と併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止 等)
カスタマーハラスメントの指針は、この4本の柱を基本としつつ、カスハラ特有の項目を加えた10項目の措置を定めています。
- 毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針の明確化と労働者への周知・啓発
- カスハラの内容およびあらかじめ定めた対処の内容(管理監督者への指示、労働者を1人で対応させない、犯罪に該当し得る言動の警察通報、本社・本部への情報共有 等)の労働者への周知
- 相談窓口の設置と労働者への周知
- 相談窓口担当者が適切に対応できる体制
- 事実関係の迅速かつ正確な確認
- 被害者に対する配慮のための措置
- 再発防止に向けた措置
- 特に悪質と考えられるカスハラへの対処方針の明確化と労働者への周知、対処を実行できる体制整備
- 相談者等のプライバシーを保護する措置と労働者への周知
- 相談したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止の定めと労働者への周知・啓発
2番目の「あらかじめ定めた対処の内容」と8番目の「特に悪質な事案への対処方針の明確化」が、既存4類型にはない独立項目として加わっている点が、対顧客対応を前提としたカスハラ指針の特徴です。
業務上の指導とパワーハラスメントの境目
相談を受けたときや、自身が管理職として指導を行うときに最も判断に迷うのが、「業務上の指導」と「パワーハラスメント」の境目です。厚生労働省の指針は、パワハラの3要素の②「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」の考え方を、判断の中心に置いています。
「業務上必要かつ相当な範囲」の判断軸
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指し、例えば、以下のもの等が含まれる。
- 業務上明らかに必要性のない言動
- 業務の目的を大きく逸脱した言動
- 業務を遂行するための手段として不適当な言動
- 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当である。
出典:パワーハラスメント指針(令和2年厚生労働省告示第5号)§2⑸|厚生労働省
ポイントは、指針が単一の物差しではなく複数の要素を総合的に考慮することを求めている点にあります。「本人が不快と感じたら即ハラスメント」ではありませんが、「業務上必要と自分で判断したから何でも許される」でもありません。同じ叱責でも、遅刻の再発に対する一時的な注意と、他の労働者の面前で長時間繰り返される威圧的な叱責では、指針が挙げる要素(頻度・継続性・場面・目的の相当性)で結論が変わります。
パワハラ指針は「該当しないと考えられる例」として、遅刻など社会的ルールを欠いた言動が改善されない労働者への一定程度強い注意や、業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者への一定程度強い注意を挙げています。指導そのものを萎縮させる規範ではなく、「業務上の必要性がある指導は該当しない」ことを明確にしたうえで、その境目を要素ごとに判断する構造になっています。
迷ったときの対処(相談窓口・記録・第三者への確認)
境目の判断が難しい場面では、自分の判断だけで完結させず、次の3つの動きを組み合わせるのが実務的です。1つ目は社内の相談窓口・人事への確認で、事案の事実関係を関係者以外の第三者の視点で整理してもらう動きです。2つ目は指導内容と経緯の記録で、日時・場面・発言の趣旨・対象者の状況を残しておくと、事後の判断で「業務上の必要性」と「相当な範囲」の両方を説明しやすくなります。
3つ目は外部相談窓口・専門家への確認です。厚生労働省委託の相談窓口「あかるい職場応援団」では、判例集や動画教材、実務Q&Aが公開されており、社内での判断に迷った際の参照先として活用できます。特に指針の各類型で「該当すると考えられる例/該当しないと考えられる例」がどのように示されているかは、実務で判断を組み立てる際の出発点になります。
出典・参考資料(1件)
判断の軸を持ったうえで、管理職として日々の指導や部下との関わりでどう話し、どう振り返るかまで踏み込みたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。傾聴・アサーティブコミュニケーション(I(アイ)メッセージ)・心理的安全性の確保に加え、自身の言動を客観視できる管理職向け/従業員向けのチェックリストを扱っています。
ここまでで、種類・定義・義務の線引き・指導との境目まで押さえました。次は、この判断軸を社内で共有し、周知・研修・相談窓口として実装する段です。企業に義務づけられた措置を実装するための研修教材の資料は、以下から一括で入手できます。
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一覧を踏まえて企業が着手すべき措置と実装
種類と定義、義務の線引き、指導との境目まで押さえたら、次は事業主が講ずべき措置を実務に落とし込む段階です。厚生労働省の指針が求める4本の柱(方針の明確化と周知・啓発/相談体制の整備/事後の迅速かつ適切な対応/併せて講ずべき措置)を、社内の実務でどう実装するかを整理します。
措置義務を未実施のまま放置した場合は、労働局からの助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名の公表の対象になりうるため、優先度は高い領域です。パワハラの措置義務違反への企業名公表は労働施策総合推進法第33条(2026年10月1日以降は第42条第2項)、セクハラ・妊娠出産等は男女雇用機会均等法第30条、育児介護休業等は育児介護休業法第56条の2にそれぞれ根拠が置かれています。
周知・啓発と研修(全社員/管理職/新入社員の階層別)
指針の1本目の柱は方針の明確化と周知・啓発です。就業規則・ハラスメント防止規程で会社の方針を明確化するとともに、その内容を全ての労働者に届く形で周知する必要があります。周知の手段は掲示・イントラネット・社内報などがありますが、施行日を境に義務範囲が広がる本改正では、既存の周知内容の更新も必要です。
研修は、全社員向けの基本研修と管理職向けの応用研修に分けて設計するのが一般的です。全社員向けでは類型の定義と相談窓口を、管理職向けでは指導との境目の判断軸と相談を受けたときの初期対応を扱います。新入社員研修や役員研修に組み込む形も含めて階層別に受講対象を分けると、内容を実務に合わせやすくなります。
受講記録の証跡化は、事後の労働局対応や被害者からの申立てへの説明材料としても機能します。
相談窓口の設置と運用(内部・外部・匿名の使い分け)
指針の2本目の柱は相談体制の整備です。窓口はハラスメントの類型を分けずに一元化することが望ましく、あらかじめ相談担当者と対応マニュアルを整えて労働者に周知します。内部窓口だけでは相談しづらいケースに備えて、外部の弁護士事務所・産業医・EAP事業者などを併設する構成も一般的です。
相談者のプライバシー保護と、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止は、指針が独立項目として明記する義務です。相談内容の関係者以外への漏洩を防ぐ運用ルール、匿名相談の受付経路(メール・専用フォーム・外部委託の EAP など、相談者が匿名性を選べる経路を用意する)、相談者・相談担当者・関係労働者の情報の取扱いポリシーを、規程レベルで整えておく必要があります。
相談を受けた/発生した場合の初期対応
相談を受けたときの初期対応は、事実関係の迅速かつ正確な確認から始まります。被害者・行為者・関係者に個別に聴取し、事実の把握と、双方の言い分の食い違いを整理します。事実が確認できた場合は行為者への処分・被害者への配慮措置・再発防止策の3つに分けて対応します。事実確認が困難な場合でも、被害者への配慮と再発防止のための研修・注意喚起は行うのが実務です。
この初期対応の質は、事後の労働局対応や訴訟対応でも問われる部分です。「相談を受けたのに動かなかった」「事実確認をせずに被害者に我慢を強いた」といった対応は、事業主の措置義務違反として指摘されうるため、対応フローを事前に文書化しておくことが有効です。
拠点が分かれる企業・専任者がいない企業の実装手段
本部と支店・店舗が分かれている企業、専任のコンプライアンス担当を置いていない中小・中堅企業では、集合研修を全拠点で同時開催するのが現実的でないケースが多くあります。この場合、eラーニング教材で全社員に均質な内容を届け、受講記録を証跡として残す形が、周知・研修の義務を満たす有力な手段になります。
市販のコンプライアンス研修eラーニングは、パワハラ・セクハラ・マタハラといった既存類型に加え、施行が近づくカスハラや、俗称として問題になりやすいSOGIハラ・リモハラまでを扱う教材が増えています。自社で教材をゼロから作らずに、既存の教材を活用して全社員に周知することで、専任担当がいなくても義務対応を進めやすくなります。次のセクションでは、この用途に向くサービスと選定の観点を整理します。
ハラスメント教材を含むコンプライアンス研修 eラーニングの活用
ハラスメント対応を教材で実装する際、市販のコンプライアンス研修eラーニングは、対象類型のカバー範囲・法定義務対応の明示・階層別の教材構成・受講管理機能の点で違いがあります。自社の実装計画(対象社員数、階層別の必要教材、証跡管理の要否)と、各サービスの公開する教材構成・受講管理を照らして選ぶのが実務的です。
ハラスメント教材を選ぶときの観点
ハラスメント教材を持つeラーニングを検討するときに確認したい観点は、大きく5つあります。1つ目はカバー類型の広さで、パワハラ・セクハラ・マタハラの3類型は多くのサービスが持ちますが、カスハラ・SOGIハラ・ケアハラ・リモハラまで扱う教材は限られます。施行が近いカスハラを含めた対応を検討するなら、公式の教材一覧で類型カバーを確認しておく必要があります。
2つ目は法定義務対応の明示です。教材の説明で「パワハラ防止法の施行時期」「事業主が講ずべき措置」に触れているサービスは、社内での位置づけを説明しやすくなります。3つ目は章立ての公開状況で、教材のシラバス(節構成・所要時間)を公開しているサービスは、社内での受講計画を組みやすいという実務的なメリットがあります。
4つ目は対象階層です。全社員向けの入門教材だけを持つサービスと、管理職向けの応用教材や新入社員向けの入門教材まで揃っているサービスがあります。
5つ目は受講管理・証跡の機能で、受講者ごとの進捗・修了状況を管理し、CSVエクスポート等で証跡として残せるLMS機能の有無を確認します。受講管理を持たない教材買い切り型(通信教育のテキスト+添削課題など)は、章立ての細かさや金融特化テーマといった別の強みで選ばれます。自社で受講管理LMSをすでに導入している場合は、教材コンテンツだけを追加する選択肢もあります。
次にご紹介するサービスの比較表です。
| サービス名 | OneCompliance | CAREERSHIP | グロービス学び放題 | manebi eラーニング | 銀行研修社 | きんざい | learningBOX |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社Oyster | 株式会社ライトワークス | 株式会社グロービス | 株式会社manebi | 株式会社銀行研修社 | 一般社団法人 金融財政事情研究会 | learningBOX株式会社 |
| 扱うハラスメント類型 | パワハラ/セクハラ/マタハラ/パタハラ/ケアハラ/SOGIハラ/オンライン +カスハラ(3コース) | パワハラ/セクハラ/スメハラ/リモハラ/カスハラ/SOGIハラ | パワハラ/セクハラ/マタハラ/パタハラ/ケアハラ/リモハラ/ハラハラ/カスハラ (eMBA「ハラスメント」科目) | パワハラ/セクハラ/マタハラ/パタハラ/カスハラ | セクハラ/マタハラ/パワハラ/その他ハラスメント +カスハラ(別講座) | セクハラ/パワハラ/マタハラ/その他(リモハラ・ジタハラ等) +カスハラ(別講座2本) | パワハラ/セクハラ(自社無料教材) +弁護士監修6テーマ(BUSINESS LAWYERS連携) |
| 法定義務対応の明示 | ●(カスハラ講座で改正労働施策総合推進法に言及) | △(「企業の義務」との一般表現のみ) | ×(公式訴求なし) | ●(パワハラ防止法の施行時期を明示) | ●(パワハラ防止法2020年6月施行に言及) | ×(講座ページで法令名の明示なし) | ●(中小企業義務化に合わせ提供と明示) |
| 章立ての公開 | ●(セッション数・所要時間を公開) | ×(コース本数・シラバス非公開) | ●(eMBA全4章3時間/別講座全8動画21分) | ●(コンテンツ例・所要時間を公開) | ●(テキスト2冊・全10章) | ●(Ⅰ〜Ⅳの4章+コラム) | △(連携分のみ公開/自社分は未公表) |
| 対象階層 | 管理職向け/全従業員向け | 階層別対応(詳細は要問い合わせ) | リーダー層/管理職以上 | 一般〜管理職+管理職向け別コース | 一般〜管理職(管理職限定ではない) | 全社員向け | 明示なし(要問い合わせ) |
| 受講管理・証跡 | 進捗ダッシュボード・CSV出力・自動リマインダー | LMSで進捗管理・研修管理・スキル管理 | 受講状況管理・アセスメント(詳細は要問い合わせ) | LMSで受講管理・効果測定 | なし(1講座ごとの買い切り型) | なし(1講座ごとの買い切り型) | LMS基本機能を無料プランから利用可 |
| 料金の目安 | 受講者数に応じた従量課金(要問い合わせ) 無料トライアルあり | まなびプレミアム 1,000ID 350円/月・人〜 本体LMSは要問い合わせ | 学び放題 6カ月11,550円/ID〜 プラス 6カ月46,200円/ID〜(税込) | 初期100,000円+月額19,800円〜 (LITE・39IDまで定額) | 通信講座 2カ月12,400円/3カ月14,700円(税込) eカスハラ講座 7,700円 | 通信講座 2カ月9,900円(税込) カスハラ講座 9,900円/Web課題対応版 9,680円 | 無料プラン10アカウント/有料は月額5,500円〜(100アカウント単位) ハラスメント教材は無料 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
情報セキュリティ・下請法・独禁法などハラスメント以外のテーマも含めたコンプライアンス研修eラーニング全般を横断で比較したい場合は、以下の記事で29サービスの機能・料金・選び方を整理しています。
コンプライアンス研修eラーニングおすすめ比較29選!料金・教材テーマ・選び方を解説
コンプライアンス研修を全社員に行き渡らせたいのに、集合研修では日程調整や会場手配が追いつかず、受講記録の管理も煩雑になっていませんか。ハラスメント防止や情報セキュリティ、個人情報保護など扱うべきテーマは年々増え、法改正のたびに教材を作り直す…
1. OneCompliance(株式会社Oyster)

株式会社Oysterが提供するコンプライアンス特化型のeラーニングプラットフォームです。ハラスメント予防をテーマにした管理職向け・全従業員向けの教材と、カスタマーハラスメントに関する3コース(規制と事業者の義務/BtoBカスハラ/クレーム対応)を持ちます。
パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ・ケアハラ・SOGIハラ・オンライン・ハラスメントの各類型を扱い、公式コース説明で対象階層と収録分数まで公開しています。
種類と定義を掴んだ後の研修実装を進めたい企業に、教材構成が対応するサービスです。カスハラ義務化を控えた対策を進めたい企業や、SOGIハラを含む新しい類型まで一括で扱いたい企業に適した選択肢です。
導入運用面で成果の出やすい企業像について、提供元の株式会社Oysterはインタビューで次のように述べています。

成果が出やすいのは、社内に専門知見がない企業様や、研修運用の工数が十分に確保できない企業様です。法令のキャッチアップ、研修コンテンツの準備、配信、進捗管理、未受講者のフォローまで、少人数で回さないといけない場面は多いので、そういう企業ほどフィットしやすいです。
2. CAREERSHIP(株式会社ライトワークス)

大企業向けのLMSとして展開されているCAREERSHIPは、コンテンツライブラリ「まなびプレミアム」の中で「ハラスメント対策シリーズ」を提供しています。パワハラ・セクハラ・スメハラ・リモハラ・カスハラ・SOGIハラまでを扱い、本カテゴリの中でも類型カバーが広い部類に入ります。1教材あたり3〜5分のマイクロラーニング形式で、隙間時間の受講と、新入社員・若手・管理職の階層別対応が可能です。
全社員への一括展開と受講管理を1つのLMSで完結させたい企業に向いており、大手企業を中心に導入実績が積み重なっています。「まなびプレミアム」の他の教材(コンプライアンス全般・情報セキュリティ・DX関連)と組み合わせて年間の研修計画を組むこともできます。
3. グロービス学び放題(株式会社グロービス)

グロービスが提供する法人向け動画学習サービスで、eMBAの「ハラスメント」科目(3時間・全4章)と、学び放題側の「メンバーと自分を守るためのハラスメント講座」(全8動画・約21分)を持ちます。eMBA科目はパワハラ・セクハラ・リモハラ・マタハラ/パタハラ・ケアハラ・ハラハラ・カスハラの各類型を扱い、俗称の範囲を広くカバーしたい企業に向く構成です。
eMBA相当の体系立てを求める場合は「プラス」プラン、管理職向けの短時間受講で運用したい場合は学び放題の該当講座が候補になります。動画は日本語字幕・英語字幕に対応しており、外国人労働者を含む職場の周知にも活用できます。
4. manebi eラーニング(株式会社manebi)

株式会社manebiが提供するeラーニング教材のうち、「ハラスメント研修」講座はeラーニング40〜60分と集合研修2時間の2つの形式で提供され、「ハラスメント基礎」「パワハラ防止法と企業が行うべき措置」等のコースでパワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ・カスハラをカバーします。管理職向けコースが別途用意されている点も、階層別に教材を分けたい企業の運用に合います。
特徴は、公式の教材説明でパワハラ防止法の施行時期を明示している点です。法令上の位置づけを社内で説明する材料が揃っており、研修の位置づけを説明しやすい構成です。月額定額で全教材を受講できるプランで、他のコンプライアンス教材(情報セキュリティ・下請法・独禁法など)と組み合わせて運用できます。
5. 銀行研修社(株式会社銀行研修社)

金融機関向けに研修教材の出版を長年手がけている銀行研修社は、「金融機関行職員のためのハラスメント防止講座」テキスト2冊・全10章を提供しています。テキスト2はセクハラ/マタハラ/パワハラ/その他ハラスメント行為の類型別に4章で構成されており、章立ての細かさは本カテゴリの中でも高い部類です。
受講料はテキスト2冊・2カ月受講で12,400円、3カ月で14,700円(税込、2026年8月時点)です。
加えて「eカスタマーハラスメントの適切対応を理解する講座」を7,700円で単独提供しており、2026年10月のカスハラ義務化に備えた個別受講にも対応します。金融特化教材の性格を持つため、金融機関以外の企業でも、種類ごとに教材が対応する構成を求める場合の候補になります。
6. きんざい(一般社団法人金融財政事情研究会)

金融財政事情研究会が提供する「ケースで学ぶ ハラスメント対策講座」は、Ⅰセクハラ/Ⅱパワハラ/Ⅲマタハラ/Ⅳその他ハラスメント(リモハラ・時短ハラスメント等)の章立てで、2カ月・9,900円(税込、2026年8月時点)で受講できます。加えて「悪質クレーマーも怖くない!営業店のカスタマーハラスメント対策実践講座」を通常版・Web課題対応版の2本提供しており、カスハラ義務化の準備に個別に対応できます。
公式サイトで対象を「金融機関および事業会社」と明示しており、金融機関以外の企業も受講対象です。ケーススタディ形式で「実際にどう判断するか」を扱う構成のため、指導との境目や具体的な相談対応の練習に向く教材です。
7. learningBOX(learningBOX株式会社)

learningBOXはLMSとしての機能を無料プランから提供しており、コンテンツライブラリ「learningBOX ON」でハラスメント教材を無料で受講可能にしています。2022年4月のパワハラ防止法中小企業義務化に合わせて提供が始まった経緯があり、「拠点が分かれ、専任担当を置けない中小企業がまず着手する」用途に向く構成です。
加えて有料の「BUSINESS LAWYERS COMPLIANCE」連携で、ハラスメント6テーマ(1本約10分・ドラマ仕立て・弁護士監修)を追加できます。
受講管理・修了証発行・進捗レポート等のLMS基本機能は無料プランでも利用でき、独自の社内教材の配信と組み合わせて運用することもできます。まず措置義務対応の周知・研修を始めたい中小企業の入口として、コストを抑えつつ受講記録の証跡化まで完結できる選択肢です。
まとめ
職場のハラスメントは、事業主に措置義務が課されている類型が2026年9月時点で4類型(パワハラ/セクハラ/妊娠出産等/育児介護休業等)、2026年10月1日から新設2類型(カスハラ/求職者等セクハラ)を加えて6類型になります。
俗称(モラハラ・SOGIハラ・リモハラ 等)は法令上の類型名ではありませんが、行為の実態が既存類型に該当する場合はその類型の措置義務の対象になり、パワハラ指針では性的指向・性自認に関する侮辱的な言動が「精神的な攻撃」「個の侵害」の該当例として明示されています。
業務上の指導とパワーハラスメントの境目は、指針の3要素(優越的な関係/業務上必要かつ相当な範囲/就業環境の侵害)と、要素ごとの総合考慮で判断されます。指導そのものを萎縮させる規範ではなく、「業務上の必要性がある指導は該当しない」ことを明確にしたうえで、頻度・継続性・場面・目的の相当性を要素として個別に判断する構造です。
迷ったときは社内の相談窓口・記録・第三者への確認を組み合わせるのが実務的な対処になります。
事業主が講ずべき措置の実装は、方針の明確化と周知・啓発/相談体制の整備/事後の迅速かつ適切な対応/併せて講ずべき措置の4本の柱を、自社の規模と拠点構成に合わせて設計する作業です。
集合研修が組みにくい企業では、eラーニング教材で全社員に均質な内容を届け受講記録を証跡として残す実装が有効で、市販の教材も類型カバーの広さや章立ての細かさで違いがあります。自社の実装計画に合わせて、複数サービスの資料で比較検討を進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 職場のハラスメントとは何ですか?
A. 職場のハラスメントとは、事業主・上司・同僚・顧客等が労働者に対して行い、労働者の就業環境を害する言動の総称です。
厚生労働省の指針・関係法令では、パワハラ(労働施策総合推進法)・セクハラ(男女雇用機会均等法)・妊娠出産等(同法)・育児介護休業等(育児介護休業法)の4つを事業主の措置義務の対象と位置づけており、2026年10月1日からはカスハラと求職者等セクハラの2類型が加わって6類型となります。
Q. 職場のハラスメントは全部で何種類ありますか?
A. 職場のハラスメントの「種類数」は数え方によって幅があり、事業主に措置義務が課される類型で数えると2026年9月まで4類型、2026年10月1日から6類型が把握の起点になります。
俗称(モラハラ・SOGIハラ・リモハラ・ジタハラ 等)まで含めて15〜23種と挙げる書き手もありますが、社内周知や優先順位を決める場面では、まず条文単位の6類型を軸に置き、俗称は既存類型のどれに該当しうるかで整理すると数え方の混乱を避けられます。
Q. モラハラやSOGIハラなど法令上の類型名でない俗称にも、企業は対応する義務がありますか?
A. 俗称そのものに紐づく単独の措置義務はありませんが、行為の実態が既存の法令上の類型に当てはまる場合はその類型の措置義務の対象になります。
たとえば性的指向・性自認に関する侮辱的な言動や、本人の了解のないアウティングは、パワーハラスメント指針で「精神的な攻撃」「個の侵害」の該当例として明示されています。俗称ごとに新しい規程を追加するのではなく、既存の類型指針にどう当てはまるかを社内資料で示す構成にすると、周知内容と措置義務の対応関係が読み手にも伝わりやすくなります。
Q. 2026年10月1日のカスハラ・求職者等セクハラ義務化に向けて、企業は具体的に何を準備すればよいですか?
A. 準備の中身は本文の「企業が講ずべき措置の中身」(4本の柱+カスハラ10項目)と「一覧を踏まえて企業が着手すべき措置と実装」に整理していますが、FAQ の切り口で補足すると次の2点が主管の分岐です。
- 主管部門: カスハラは現場・顧客対応部門(マニュアルと現場運用)、求職者等セクハラは人事・採用部門(採用面接・説明会・インターン等の場面まで通す)に主管が分かれます
- 完了期限: 施行日は2026年10月1日で、規程追加・マニュアル整備・現場周知・相談経路の設定を施行日時点で稼働状態にしておく必要があります。既存4類型で相談窓口があれば、対顧客・対求職者の相談経路として拡張するのが実務的です
Q. パワーハラスメント防止措置の義務は、中小企業にも適用されていますか?
A. パワーハラスメント防止措置は、中小企業にも令和4年(2022年)4月1日から義務として適用されています(大企業は令和2年6月1日から)。厚生労働省のリーフレットで段階的な適用時期が明示されており、令和4年3月31日までの努力義務期間はすでに終了しています。
企業規模を問わず、方針の明確化と周知・啓発・相談体制の整備・事後の適切な対応まで完了しておく必要があり、未実施のままカスハラ・求職者等セクハラの施行日を迎えると、対応範囲が一度に広がって着手が難しくなります。
Q. ハラスメント防止措置を怠った場合、企業に罰則はありますか?
A. 各ハラスメント防止規定は事業主の措置義務として設けられており、規定違反そのものに刑事罰は科されません。ただし労働局からの助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名の公表という行政上の措置が用意されています(労働施策総合推進法第33条/2026年10月1日以降は第42条第2項/男女雇用機会均等法第30条/育児介護休業法第56条の2)。
加えて、被害者から民事上の損害賠償請求(安全配慮義務違反・使用者責任等)を受けるリスクや、行為の内容によっては刑法(暴行・脅迫・名誉毀損等)による処罰が別途成立しうるため、「罰則がないから急がなくてよい」という扱いはできない領域です。
Q. 部下への指導は、どこからがパワーハラスメントになりますか?
A. 部下への指導は、業務上必要かつ相当な範囲を超えた時点でパワーハラスメントに該当しうる、というのが厚生労働省パワハラ指針の判断軸です。
同じ叱責でも、遅刻の再発に対する一時的な注意と、他の労働者の面前で長時間繰り返される威圧的な叱責では、指針が挙げる要素(目的・場面・頻度・継続性・行為者と対象者の関係性・対象者の心身の状況)で結論が変わります。
「業務上の必要性がある指導は該当しない」ことが指針で明示されている一方、必要性の名の下に人格否定や過大要求まで正当化はできない、という構造です。判断に迷う場面では、指導内容と経緯を記録に残しつつ、社内の相談窓口や第三者に確認する動きを組み合わせるのが実務的な対処になります。
Q. ハラスメント相談窓口は、社内窓口と外部窓口のどちらを設けるべきですか?
A. ハラスメント相談窓口は、社内窓口の設置が指針で求められる基本であり、加えて外部窓口を併設して相談者が選べる構成にするのが実務的です。
社内では相談しづらい類型(上司からのパワハラ・セクハラ等)や、匿名で相談したい事案に備え、弁護士事務所・産業医・EAP事業者などの外部窓口を用意すると、相談の入り口を広く保てます。
窓口をハラスメントの類型ごとに分けず、パワハラ・セクハラ・妊娠出産等・育児介護休業等・カスハラ・求職者等セクハラを一元的に受け付ける体制の整備も、指針が「一元的に相談に応じることのできる体制の整備」として求めている項目です。
Q. ハラスメント相談を受けた場合、記録はどこまで残し、いつまで保存すべきですか?
A. ハラスメント相談の記録は、相談日時・場所・相談者と対応者・事実関係の申立て内容・事後の対応措置と結果を、後日の申立てや行政対応・民事上の請求に耐える期間で保存するのが実務の基準です。
厚生労働省の指針は具体的な保存期間を法定していませんが、事業主に「事実関係の迅速かつ正確な確認」と「事後の迅速かつ適切な対応」を求めている以上、後日の照合に耐える形で残す必要があります。民法上の不法行為の時効や労働関係書類の保存年限を踏まえ、社内規程で保存期間を定めておく運用が一般的です。
プライバシー保護と、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止は指針が独立項目として明記する義務のため、記録は関係者以外に閲覧されない管理下で保管します。
Q. 男性の育児休業取得に関する嫌がらせ(いわゆるパタハラ)は、どの法律で対応する類型ですか?
A. 男性の育児休業取得に関する嫌がらせは、男女雇用機会均等法ではなく育児介護休業法第25条の「育児休業・介護休業等に関するハラスメント」で対応する類型です。
妊娠・出産等ハラスメント(均等法第11条の3)は指針が対象を女性労働者に限定しているのに対し、育児休業・介護休業等ハラスメントは男女を問わない対象範囲で、育休申請の撤回を迫る・時短勤務者への「使えない」発言・介護休業を理由とした降格 等が該当します。
俗称の「パタハラ」を単独の類型として扱うのではなく、根拠法(均等法系=女性労働者に限定/育介法系=男女とも対象)で分類しておくと、社内資料の説明が正確になります。
Q. 顧客からのクレームと、カスタマーハラスメント(カスハラ)の線引きはどこにありますか?
A. 顧客からのクレームは、社会通念上許容される範囲を超えた時点でカスタマーハラスメントに該当する、というのが厚生労働省カスハラ指針の考え方です。
指針は「顧客等からの苦情の全てがカスハラに該当するわけではなく、社会通念上許容される範囲で行われたものは正当な申入れ」と明記しています。そのうえで、要求内容の面では「契約で想定するサービスを著しく超える要求」「不当な損害賠償要求」等を、手段・態様の面では「暴行・脅迫・土下座の強要・威圧的な言動・不退去・居座り」等を該当例として挙げています。
正当な苦情への真摯な対応と、社会通念を明らかに超えた言動から労働者を守る対応の両立が、指針の設計思想です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。












