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残業代の計算方法をわかりやすく解説|基本式・割増率一覧・給与形態別の計算例と2023年改正の中小企業50%まで

残業代の計算方法をわかりやすく解説のサムネイル画像

営業のAさんが月30時間残業、経理のBさんが月10時間残業+深夜労働3時間——給与計算ソフトが出してきた残業代の数字が、本当に正しいかを自分で検算したい場面があります。そもそも計算式の理屈を、上司や監査に根拠条文つきで説明できるようにしておきたい担当者も多いはずです。

「25%割増」までは知っていても、月給から1時間あたりの賃金をどう出すか、除外できる手当はどれか、深夜と時間外が重なったときにどうするか——ここで手が止まった経験はないでしょうか。

本記事では、残業代の基本式から1時間あたり基礎賃金の求め方、割増率と重複時の合算率、給与形態別の具体的な計算例までを、労働基準法の該当条文とあわせて解説します。2023年4月から中小企業にも適用が広がった月60時間超の50%割増も、根拠条文・施行日と実数値の計算例で明示しました。自社ケースを電卓で追える粒度の式・率表・計算過程を、この記事で確認してください。

本記事の解説対象は、通常の所定労働時間制における月給・時給・日給・年俸の計算方法です。変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制・固定残業代(みなし残業代)を導入している企業では、計算方法や36協定の締結内容が変わるため、自社の労働時間制度をまず確認してください。

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残業代の計算式(基本式)

残業代(時間外労働に対する割増賃金)の計算式は、労働基準法第37条にもとづき次の3要素の掛け算で表せます。

残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間

3つの要素はそれぞれ次の節で確定します。①「1時間あたりの基礎賃金」は月給や時給から換算した1時間あたりの賃金で、除外できる手当と月平均所定労働時間の算式を押さえれば求まります。②「割増率」は時間外25%以上・深夜25%以上・法定休日35%以上・月60時間超50%以上の4本柱で、深夜や休日と重なった場合は合算します。③「残業時間」は法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えた分です。

実務で最も詰まりやすいのは①の「1時間あたりの基礎賃金」の出し方なので、次の節で分子(何を含め、何を除くか)と分母(月平均所定労働時間の求め方)を確定させます。

出典・参考資料(2件)

1時間あたり基礎賃金の求め方

ここでは、月給・時給・日給・年俸それぞれで「1時間あたりの基礎賃金」をどう出すかを確定させます。給与実務で最も判断が分かれるのは、月給制で「どの手当を含め、どの手当を除くか」と、「月平均所定労働時間をいくつで割るか」の2点です。労働基準法施行規則第19条・第21条にもとづいて、それぞれ具体式で解説します。

月給からの1時間あたり基礎賃金

月給制の場合、1時間あたりの基礎賃金は次の式で求めます。

1時間あたりの基礎賃金 = 月給(除外手当を除いた金額)÷ 月平均所定労働時間

労働基準法施行規則第19条第1項第4号が「月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額」と定めているため、分母には「月平均所定労働時間」を用います。

除外できる手当7項目(労基法37条第5項+施行規則第21条)

1時間あたりの基礎賃金の計算では、月給からすべての手当を含めるわけではありません。労働基準法第37条第5項は「家族手当」「通勤手当」を、労働基準法施行規則第21条は「別居手当」「子女教育手当」「住宅手当」「臨時に支払われた賃金」「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」の5項目を、それぞれ基礎賃金から除外すると定めています。あわせて7項目が除外対象です。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

7項目は限定列挙であり、この一覧に該当しない手当は基礎賃金に含めます。「役職手当」「精皆勤手当」「営業手当」などは、名称だけで除外できるものではなく、原則として基礎賃金に含める運用になります。

家族手当・住宅手当は、名称ではなく支給の実態で除外可否が分かれます。厚生労働省の解釈(平成11年3月31日基発第170号ほか)では、扶養家族数や住宅費用に応じて金額が変動する運用のみ除外対象です。

  • 除外できる例:家族手当が「配偶者1万円・子1人5,000円」のように扶養家族数に応じて増減する/住宅手当が家賃実費や地域家賃相場に応じて変動する
  • 除外できない例:家族手当が「配偶者の有無で0円か1万円か」の二値/住宅手当が「持家/賃貸で区別せず全員一律月2万円」の運用。これらは基礎賃金に含める必要があります

就業規則の手当マスタを、この7項目と実態要件の趣旨に照らして再確認してください。

月平均所定労働時間の算式

「月平均所定労働時間」は、1年間の所定労働時間を12か月で割って求めます。就業規則の年間所定休日と1日の所定労働時間から、次の式で算出します。

月平均所定労働時間 =(365日 − 年間所定休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月

年間所定休日が120日・1日の所定労働時間が8時間の企業であれば、(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 163.3時間となります。うるう年の場合は366日で計算します。就業規則上の「所定労働時間(1日単位)」と「年間所定休日」を確認し、給与計算ソフトのマスタと一致しているかを見てください。

時給・日給・年俸からの換算

月給以外の給与形態でも、1時間あたりの基礎賃金の求め方は同じ考え方で、分子と分母を給与形態ごとに置き換えます。

  • 時給制:時給がそのまま「1時間あたりの基礎賃金」になります。
  • 日給制:日給 ÷ 1日の所定労働時間 = 1時間あたりの基礎賃金。日給10,000円・1日の所定労働時間8時間なら、10,000 ÷ 8 = 1,250円になります。
  • 年俸制:年俸を12か月で割って月給を出したうえで、月給制と同じ式で1時間あたりに換算します。賞与も含む年俸なら「年俸 ÷ 12 ÷ 月平均所定労働時間」となり、賞与相当分(1か月を超える期間ごとに支払われる賃金)は除外対象になる点に注意してください。
  • 歩合給制:歩合給部分は、その賃金算定期間の総労働時間で割って1時間あたりの単価を出します。固定給と歩合給の混合の場合は、固定給部分と歩合給部分を別々に計算して合算します。
出典・参考資料(3件)

割増率一覧と重複時の合算率マトリクス

次に、基本式の「割増率」を確定させます。労働基準法第37条は、時間外労働・深夜労働・休日労働のそれぞれに最低割増率を定めており、2023年4月からは月60時間を超える時間外労働について中小企業にも50%以上の割増が適用されるようになりました。時間外と深夜、休日と深夜が重なった場合は、それぞれの率を合算します。

割増率一覧(種類 × 率 × 根拠条文)

労働の種類割増率(下限)根拠条文
時間外労働(法定労働時間超)25%以上労働基準法 第37条第1項 + 割増賃金令(平成6年政令第5号)
月60時間を超える時間外労働50%以上労働基準法 第37条第1項ただし書
深夜労働(原則22時〜翌5時。※)25%以上労働基準法 第37条第4項
法定休日労働35%以上労働基準法 第37条第1項 + 割増賃金令(平成6年政令第5号)

いずれも「以上」と定められている法定の最低率です。就業規則で30%・40%といったより高い率を設定することも可能で、その場合はその率が適用されます。「法定休日」は労働基準法第35条にもとづく週1日(または4週4日)の休日を指し、それ以外の会社休日(法定外休日)に働かせても35%の割増は必要ありません(時間外労働の枠内で25%以上の割増となります)。

※ 深夜労働の時間帯は原則として午後10時から翌午前5時までですが、労働基準法第37条第4項ただし書により、厚生労働大臣が認めた地域・期間では午後11時から翌午前6時に置き換わります(過去に北海道の一部などで指定例あり)。24時間シフトを持つ企業や北日本拠点の担当者は、自社が指定地域に該当するかを確認してください。

2023年4月から中小企業にも月60時間超50%が適用

月60時間を超える時間外労働への50%以上の割増は、労働基準法第37条第1項ただし書に定められている項目です。この規定は従来、中小企業には猶予措置(労基法附則第138条)により適用が免除されていましたが、働き方改革関連法(平成30年法律第71号)による附則第138条の削除にともない、2023年4月1日から中小企業を含むすべての企業に適用されました

「中小企業は50%割増の対象外」という記述は2023年3月以前の旧情報にもとづくもので、現在は誤りです。給与計算ソフトの割増率マスタが「月60時間超=25%」のままになっていないか、または「大企業のみ50%」の設定が残っていないかを確認してください(自動更新に対応したクラウド型ソフトは既定でこの改正に対応しています)。

重複時の合算率マトリクス

深夜労働は「時間外」「休日」とは別の枠で独立して発生する割増のため、時間外や休日と重なった場合はそれぞれの割増率を合算します。よくある組合せの合算率は次の通りです。

組合せ合算率計算根拠
時間外労働 + 深夜労働50%以上25%(時間外)+ 25%(深夜)
法定休日労働 + 深夜労働60%以上35%(法定休日)+ 25%(深夜)
月60時間超の時間外労働 + 深夜労働75%以上50%(60時間超)+ 25%(深夜)

ここで注意したいのは、法定休日労働と時間外労働は同時には発生しない点です。労働基準法上の「法定休日」に労働させた時間は、すべて休日労働として35%以上の割増を計算し、時間外労働の25%は重複させません。「1日8時間を超えたら時間外+休日で60%(=25+35)」ではなく、「法定休日に働かせた時間は全時間35%+(深夜があれば+25%)」と考えます。

根拠は、労働基準法第32条の週40時間規制が「法定休日を除く暦週の労働日」を対象とする点にあります。法定休日日の労働時間は週40時間の集計対象外として扱われ、時間外労働としてはカウントされません(昭和63年3月14日基発第150号)。

また、月60時間超の50%割増をカウントする対象時間にも法定休日労働は含みません(別枠でカウント)。

出典・参考資料(4件)
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給与形態別の具体的計算例

ここでは、月給・時給・日給・年俸の各給与形態について、実際に電卓で追える形で残業代を計算します。前述の①1時間あたり基礎賃金、②割増率、③残業時間の3要素をあてはめてください。

月給制の計算例(月給30万円・時間外30時間+深夜5時間)

基本給30万円、通勤手当1万円・家族手当2万円(それぞれ除外対象)、年間所定休日120日・1日の所定労働時間8時間の企業で、時間外労働30時間(うち5時間が深夜労働)を行った場合を計算します。

  • 基礎賃金の分子(除外後の月給):30万円(通勤手当・家族手当は除外)
  • 月平均所定労働時間:(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 163.3時間
  • 1時間あたりの基礎賃金:300,000 ÷ 163.3 ≒ 1,837円
  • 時間外労働(深夜以外の25時間):1,837 × 1.25 × 25 = 57,406円
  • 時間外+深夜労働(5時間):1,837 × 1.50 × 5 = 13,777.5 → 13,778円(50銭以上切り上げ)
  • 残業代合計:57,406 + 13,778 = 71,184円

月60時間を超えていないため、25%・50%(深夜合算)だけで済みます。この 1,837円は次のように算出しています。月平均所定労働時間は正確には(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 163.33…時間で、1時間あたり基礎賃金は 300,000 ÷ 163.33… = 1,836.73…円になります。これを円未満で「50銭以上は1円に切り上げ」の端数処理にかけて 1,837円としています。本文では月平均所定労働時間を 163.3 時間と1桁に丸めて表記していますが、金額の算出には丸める前の 163.33… を用います。

月60時間超のケースの計算例(時間外70時間・うち深夜5時間・うち60時間超10時間・うち60時間超かつ深夜2時間)

2023年4月からの中小企業50%適用が入ってくるケースを、実数値で追います。前の例と同じ会社(基本給30万円、月平均所定労働時間163.3時間、1時間あたり基礎賃金1,837円)で、時間外労働が月70時間発生し、そのうち深夜労働が5時間、そのうち60時間超が10時間(さらにそのうち深夜と重なった時間が2時間)というケースです。

70時間を「60時間まで/60時間超」の2区分と、「深夜あり/深夜なし」の2軸で切り分け、4区分ごとに計算します。

  • ①60時間以内・深夜なし(57時間):1,837 × 1.25 × 57 = 130,886円(25%割増)
  • ②60時間以内・深夜あり(3時間):1,837 × 1.50 × 3 = 8,266.5 → 8,267円(時間外25%+深夜25%=50%、50銭以上切り上げ)
  • ③60時間超・深夜なし(8時間):1,837 × 1.50 × 8 = 22,044円(60時間超50%割増)
  • ④60時間超・深夜あり(2時間):1,837 × 1.75 × 2 = 6,429.5 → 6,430円(60時間超50%+深夜25%=75%、50銭以上切り上げ)

合計:130,886 + 8,267 + 22,044 + 6,430 = 167,627円。60時間超50%適用を反映せず全時間 25%(深夜合算は 50%)で計算すると 149,256 + 13,778 = 163,034 円となり、約 4,593 円の未払いが発生します。

60時間超の月は、給与ソフトの割増率マスタが「月60時間超=50%」に切り替わっているかを必ず確認してください。

時給制の計算例(時給1,200円・時間外20時間)

時給1,200円のパートタイマーが、法定労働時間を超える時間外労働を20時間行った場合の計算です。

  • 1時間あたりの基礎賃金:1,200円(時給がそのまま基礎賃金)
  • 時間外労働(20時間):1,200 × 1.25 × 20 = 30,000円

時給制でも「法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間」だけが時間外労働として25%割増の対象になります。所定労働時間が1日6時間で契約している人が2時間多く働いても、8時間の法定枠内なら「法定内残業」となり、基礎賃金の1.0倍で計算します(次の節で詳述)。

日給制の計算例(日給10,000円・時間外10時間)

日給10,000円・1日の所定労働時間8時間の従業員が、月10時間の時間外労働を行った場合を計算します。

  • 1時間あたりの基礎賃金:10,000 ÷ 8 = 1,250円
  • 時間外労働(10時間):1,250 × 1.25 × 10 = 15,625円

年俸制の計算例(年俸600万円・時間外20時間)

年俸600万円(賞与相当を含む16分割ではなく、単純に12分割される契約)、年間所定休日120日・1日の所定労働時間8時間の従業員が、月20時間の時間外労働を行った場合を計算します。

  • 月給換算:6,000,000 ÷ 12 = 500,000円
  • 月平均所定労働時間:(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 163.3時間
  • 1時間あたりの基礎賃金:500,000 ÷ 163.3 ≒ 3,062円
  • 時間外労働(20時間):3,062 × 1.25 × 20 = 76,550円

(補足)年俸に賞与相当(1か月を超える期間ごとに支払われる賃金)を含めている場合は、その部分を基礎賃金の分子から除く必要があります。

たとえば「年俸600万円のうち賞与2か月分(夏冬各1か月)を含む」設計なら、年俸を14(12か月+賞与2か月分)で割った 600万 ÷ 14 = 約 42.8万円が1か月あたりの基礎額です。1時間あたり基礎賃金は 428,571 ÷ 163.3 ≒ 2,624円となり、時間外20時間なら 2,624 × 1.25 × 20 = 65,600円が残業代となります。

また、年俸額の中に「一定時間分の残業代を含む」とする固定残業代(みなし残業代)を設ける場合は、その相当時間分・相当金額分を就業規則と労働条件通知書に明示する必要があり、みなし時間を超えた分の残業代は追加で支払う義務があります。

法定内残業・端数処理・休憩時間の扱い

計算実務では、そもそも「残業に該当するか」の判定と、端数処理・休憩時間の扱いで見落としが起きやすい場面があります。労働基準法第32条・第34条・第36条にもとづく取り扱いを確認してください。

法定労働時間は労働基準法第32条が定める「1日8時間・週40時間」の上限で、この時間を超えると割増賃金の支払い義務が生じます。一方、所定労働時間は個々の企業が就業規則で定める労働時間で、たとえば1日7時間30分・週37.5時間などがあり得ます。

所定労働時間が法定より短い企業では、所定を超えて働かせても法定枠内であれば割増は不要です。所定7時間30分の企業で7時間45分働いた場合、超過15分は「法定内残業」となり、通常の時間単価(1.0倍)で支払えば足ります。ただし、就業規則で「所定超は1.25倍支給」と定めている場合はその規則が適用されます。

法定労働時間を超える時間外労働(「法定外残業」)を行わせるには、労働基準法第36条にもとづく労使協定(いわゆる36協定)を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。36協定なしに法定労働時間を超えて働かせると、割増賃金を払っていても違法(労基法第32条違反)となり、罰則の対象になります。

36協定の一般的な上限は月45時間・年360時間ですが、特別条項付きで一時的にこれを超える運用も可能です(ただし年720時間・月100時間未満・複数月平均80時間などの上限あり)。

端数処理は「事務簡便のため」の例外に限られる

1日ごとの労働時間や割増賃金額に端数が出た場合、事務簡便を目的とする一定の端数処理が例外的に認められています。厚生労働省東京労働局のリーフレット「しっかりマスター 割増賃金編」は、労働省通達(昭和63年3月14日基発第150号)を根拠として次の代表例を示しています。

  • 1か月における時間外労働の合計時間数に1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理
  • 1時間あたりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数がある場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理

ここで認められないのは「1日ごとの労働時間」の切り捨てです。日ごとに15分刻みや30分刻みで切り捨てる処理は労働基準法違反となり、実際に働かせた時間分の賃金を全額支払わなければなりません。「30分未満切り捨て」を日単位で運用している企業は多いですが、月合計での端数処理と混同しないよう注意が必要です。

休憩時間・手待ち時間の扱い

労働基準法第34条は、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければならないと定めています。休憩時間は労働時間には含めず、残業代の計算からも除外します。

一方、「手待ち時間」——電話番や来客対応のためにデスクを離れられない時間、業務指示があればすぐ動ける状態で待機している時間——は労働からの解放が保障されていないため、労働時間として賃金・残業代の対象になります。

判例(大星ビル管理事件、最高裁平成14年2月28日判決)は、仮眠時間中にも「不活動時間として労働からの解放が保障されているか」で労働時間性を判定するとしており、待機の実態次第で残業代の対象になる点に留意してください。

出典・参考資料(2件)

未払い残業代の時効と罰則

残業代の計算誤りや意図的な未払いは、後日の請求リスクと罰則の両方につながります。時効の考え方と罰則の内容を確認しておきましょう。

未払い残業代の請求時効(当面3年)

労働基準法第115条により、賃金の請求権は5年で消滅時効にかかります。ただし、労働基準法附則第143条第3項により、当面の間は3年と定められています。この改正は2020年4月1日の労基法改正で施行され、それ以前は2年でした。

2020年4月1日以降に支払日が到来する賃金から、時効は3年間さかのぼって請求可能です。過去3年分の残業代を一括請求されると、たとえば月2万円の未払いでも3年間で72万円、複数人だと数百万〜1,000万円規模の請求リスクになります。

罰則(労働基準法第119条)

労働基準法第37条の割増賃金を支払わなかった場合、労働基準法第119条により「6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科されます。労働基準監督署の是正勧告に従わない場合は書類送検・公表の対象にもなり、企業ブランドへの影響も大きな損失となります。

「知らなかった」「計算ソフトが自動でやっているから」は、罰則対象になったときの免罪符にはなりません。除外手当の判定・月平均所定労働時間・割増率・月60時間超50%の切替が、就業規則と法令の要求どおりに設定されているかは、担当者の責任で定期的に確認することが求められます。

出典・参考資料(2件)

給与計算ソフトによる自動化と検算のポイント

ここまでの計算を毎月手作業で行うのは、除外手当の判定や月60時間超の切替、深夜と時間外の合算など、ミスの温床になる場面が多くあります。給与計算ソフトを使えば、就業規則にもとづくマスタ設定さえ済ませておけば、勤怠データから残業代を自動計算できます。

給与計算ソフトが自動化する範囲

クラウド型の給与計算ソフトは、次の4点を自動で処理します。

  • 除外手当マスタ:手当ごとに「基礎賃金に含める/除外する」を初期設定しておくと、月々の給与計算で自動判定される
  • 月平均所定労働時間:就業規則の年間所定休日と1日の所定労働時間から算出した月平均所定労働時間を、1時間あたり基礎賃金の分母として自動適用
  • 割増率の自動判定:時間外・深夜・法定休日の各割増率と、重複時の合算率を勤怠データから自動計算
  • 月60時間超50%の自動切替:1か月の時間外労働が60時間を超えた時点で、自動的に50%割増(深夜重複時は75%)を適用

クラウド型は法令改正(社会保険料率・所得税率・労基法の割増率など)にも自動対応するため、2023年4月の中小企業50%適用のような改正が入ったときも、担当者側での設定変更なしに新しい率が反映されます。

ソフト出力を検算する際の設定確認箇所

給与計算ソフトが出す残業代の数字が想定と合わないとき、まず次の4点の設定を確認してください。

  1. 除外手当マスタ:役職手当・精皆勤手当・営業手当などが誤って「除外」に設定されていないか。労基法施行規則第21条の7項目以外は原則として基礎賃金に含める
  2. 月平均所定労働時間の値:就業規則の年間所定休日・1日の所定労働時間と、(365 − 年間所定休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12 の計算結果が一致しているか
  3. 割増率マスタ:時間外25%・深夜25%・法定休日35%・月60時間超50%の各率が、就業規則と法定率どおりに設定されているか(就業規則でより高い率を定めている場合はその率)
  4. 60時間超の切替設定:2023年4月1日以降、中小企業でも50%割増が適用される。「大企業のみ50%」の設定が残っていないか、または旧設定の「25%固定」のままになっていないか

手計算による検算が現実的でない従業員数になっている企業や、法令改正への追従漏れが心配な場合は、割増率の自動判定と法令自動対応が標準機能となっているクラウド型の給与計算ソフトへの切り替えが実務的な選択肢になります。

給与計算業務の効率化におすすめのサービス

ここでは、残業代の自動計算と法令改正対応を担う代表的な給与計算ソフトを紹介します。以下はご紹介する給与計算ソフトの比較表です。

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サービス名弥生給与 Next
提供形態クラウド型
対象規模300名未満の中小企業
残業代の自動計算時間外・深夜・法定休日・月60時間超50%を含む割増を勤怠データから自動計算
法令改正への自動対応公式で「法令改正にも自動対応」と訴求
勤怠システム連携弥生勤怠 Next(ヒューマンテクノロジーズ「KING OF TIME」のOEM)と連携。エントリー以上のプランで利用可
年契約月額(税抜)1,700円〜7,000円(月あたり換算・エントリー〜ベーシックプラス)
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対象規模・年末調整の対応範囲・勤怠システム連携など、給与計算ソフトを幅広く比較したい場合は、給与計算ソフト全体のまとめ記事で選び方を整理しています。

1. 弥生給与 Next(弥生株式会社)

弥生給与 Nextの公式サイト

弥生株式会社が提供するクラウド型の給与計算・勤怠管理・労務管理ソフトです。給与・賞与計算、Web給与明細配信、年末調整、法定調書作成に加え、勤怠管理(弥生勤怠 Next 連携)・労務管理(弥生労務 Next 連携)を1つのサービス上で統合的に扱えます。公式サイトでは「300名未満の中小企業」を主な対象と明記しており、20名以上・20名未満で導入導線を分けています。

残業代の計算では、就業規則にもとづく除外手当マスタと月平均所定労働時間の設定を初期に済ませておけば、勤怠データから割増賃金を自動計算できます。時間外25%・深夜25%・法定休日35%・月60時間超50%の各割増率と、深夜・休日と重なった場合の合算率も、勤怠実績から自動判定されます。法令改正への対応(社会保険料率・所得税率など)はクラウド型のため自動反映される仕組みです。

料金は年契約で、「エントリー」プラン(年20,400円、給与計算のみ自社・年末調整は税理士委託)、「ベーシックライト」プラン(年36,000円、給与・年末調整・勤怠管理まで自社)、「ベーシック」プラン(年55,200円、労務管理も含む)、「ベーシックプラス」プラン(年84,000円、電話サポート・労務相談含む)の新規契約可能な4プラン構成です。

いずれも2026年8月時点・税抜表記。旧「エントリーライト」プランは2026年7月28日をもって新規受付を終了しています。

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まとめ

残業代は「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間」の3要素で計算します。実務で判断が分かれるのは、月給からの基礎賃金の算出(除外手当7項目と月平均所定労働時間の算式)と、時間外・深夜・法定休日・月60時間超が重なった場合の合算率です。2023年4月からは中小企業にも月60時間超50%の割増が適用されるため、給与計算ソフトの設定が改正に追従できているかを確認してください。

未払い残業代の請求時効は当面3年、罰則は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。手計算による検算がミスの温床になる規模の企業では、除外手当マスタ・月平均所定労働時間・割増率・月60時間超切替を自動化するクラウド型の給与計算ソフトへの切り替えが、実務負担と法令追従漏れリスクの両方を下げる有効な選択肢となります。

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よくある質問(FAQ)

Q. 残業代の計算式をわかりやすく教えてください

残業代は、「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間」の3要素の掛け算で計算します。労働基準法第37条にもとづく計算方法です。

基礎賃金は月給や時給から換算した1時間あたりの賃金、割増率は時間外25%以上・深夜25%以上・法定休日35%以上・月60時間超50%以上の下限が定められています。実務で最も判断が分かれる「1時間あたりの基礎賃金」の求め方は本文の 1時間あたり基礎賃金の求め方 で詳述しています。

出典・参考資料(1件)

Q. 残業代の「1時間あたり基礎賃金」はどうやって計算しますか?

月給制の1時間あたり基礎賃金は、「除外手当を差し引いた月給 ÷ 月平均所定労働時間」で求めます。分子から除外できるのは労働基準法第37条第5項と施行規則第21条が定める7項目(家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金)に限られ、それ以外の手当は原則として基礎賃金に含めます。

分母の月平均所定労働時間は「(365日 − 年間所定休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月」で算出します。

出典・参考資料(1件)

Q. 残業代の割増率は法律上どう定められていますか?

残業代の割増率は、労働基準法第37条により時間外労働25%以上・深夜労働25%以上・法定休日労働35%以上・月60時間を超える時間外労働50%以上が下限として定められています

いずれも「以上」の下限規制なので、就業規則で30%・40%などより高い率を設定することも可能です。時間外と深夜、法定休日と深夜が重なった時間はそれぞれの率を合算します(合算率の詳細は本文の 重複時の合算率マトリクス を参照)。

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Q. 残業代の計算で「役職手当」は基礎賃金から除外できますか?

役職手当は、原則として基礎賃金に含めなければならず、除外はできません。労働基準法第37条第5項および施行規則第21条の除外7項目は限定列挙で、役職手当・精皆勤手当・営業手当などはこの一覧に該当しないためです。

名称が「家族手当」「住宅手当」であっても、扶養家族数や住宅費に応じて金額が変わらず一律支給されている場合は、実質的に除外対象外と解釈される点にも注意してください。

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Q. 固定残業代(みなし残業代)を導入していれば、追加の残業代計算は不要ですか?

固定残業代を導入していても、みなし時間を超えた分の残業代は別途計算して追加で支払う義務があります。就業規則および労働条件通知書に「固定残業代に相当する時間数」と「相当する金額」を明示することが前提で、超過分は本記事の計算式(1時間あたり基礎賃金 × 割増率 × 超過時間)で算出して支給する必要があります。

また、深夜労働・法定休日労働の割増分は固定残業代に含めない設計が一般的で、別途計算・支給が求められる点にも注意してください。

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Q. 年俸制の従業員にも残業代の支払いは必要ですか?

年俸制でも、労働基準法上の管理監督者に該当しない限り、残業代の支払いは必要です。年俸を12か月(賞与相当を含む場合はその月数を加えた数)で割って月給換算し、月給制と同じ式で1時間あたりの基礎賃金を出したうえで、時間外・深夜・法定休日の割増賃金を計算します。

「年俸制だから残業代は不要」との運用は労働基準法第37条違反となり、未払い残業代の請求・罰則(第119条:6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)の対象になります。

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Q. 深夜労働と時間外労働が重なった場合の割増率はどうなりますか?

深夜労働と時間外労働が重なった時間は、それぞれの割増率を合算して50%以上(時間外25% + 深夜25%)で計算します。深夜労働(22時〜翌5時)は労働基準法第37条第4項により時間外・休日とは別枠で発生する割増のため、時間外や休日と重なった場合は加算します。

組合せ別の合算率は、時間外+深夜=50%以上、法定休日+深夜=60%以上、月60時間超+深夜=75%以上です。ただし法定休日労働と時間外労働は同時には発生せず、法定休日に働かせた時間は全時間35%以上(深夜と重なれば+25%)で計算します。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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