「うちの会社は、ハラスメント対策をちゃんとやれているだろうか」——経営層や社内からそう問われ、あらためて自社の取り組みを点検しようとして、何をどこまでやれば十分なのか判断に迷う担当者は少なくありません。パワーハラスメント防止措置は、大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月からすべての企業に義務づけられ、2026年10月にはカスタマーハラスメント対策なども新たに義務化されます。
ハラスメント対策でつまずきやすいのは、「何がハラスメントか」という理解よりも、「会社として具体的に何をやらなければならないのか」という措置の全体像がつかめない点にあります。
方針の周知、相談窓口の設置、就業規則への明記、研修の実施、相談を受けた後の対応——やるべきことは複数にわたり、それぞれ根拠となる法律や指針があります。抜け漏れがあると、社員が安心して働けないだけでなく、企業が法的責任を問われる場面も生じます。
本記事では、事業主が講じるべきハラスメント対策の全項目を、自社の抜け漏れを点検できる形で整理します。各措置が義務か努力義務か・根拠となる法律・2026年10月からの新しい義務に加え、各措置の具体的な進め方から相談対応の手順、未整備の項目を埋める研修や相談窓口の選び方までを解説します。自社の対策を点検し、足りない部分を埋める材料としてご活用ください。
目次
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企業が講じるべきハラスメント対策(措置)の全項目
はじめに、事業主が講じなければならないハラスメント対策の全項目を確認します。パワーハラスメントについては、厚生労働省の指針が事業主の講ずべき措置を4つの柱に整理しており、この4本柱はセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等ハラスメントでも共通する枠組みです。まずは下のチェックで、自社に足りていない項目に当たりをつけてから、各項目の詳しい解説を読んでください。
これらは、厚生労働省の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(いわゆるパワハラ指針)が定める措置です。指針は、講ずべき措置を次の4つに整理しています。
(1) 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省
(2) 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3) 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
(4) (1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置

(4)の「併せて講ずべき措置」には、相談者・行為者のプライバシー保護と、相談等を理由とする不利益取扱いの禁止が含まれます。これら4本柱は、セクシュアルハラスメント・妊娠出産等ハラスメント・育児介護休業等ハラスメントでも、それぞれの指針で同じ構造で定められています。まずはこの6つのチェック項目を自社の現状と照らし合わせ、抜けている措置を洗い出すところから始めると、次に何をすべきかが見えてきます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf)
各措置は義務か努力義務か|根拠法と施行時期の対応表
ハラスメントの種類ごとに、防止措置が法律で義務づけられているのか、根拠となる法律と義務化の時期を整理します。パワハラ・セクハラ・マタハラ・育児介護休業等ハラスメントの防止措置は、いずれも各法律が「講じなければならない」と定める義務です。カスタマーハラスメントと求職者等セクシュアルハラスメントは、2026年10月1日から新たに義務となります。
| 対象ハラスメント | パワーハラスメント | セクシュアルハラスメント | 妊娠・出産等ハラスメント(マタハラ) | 育児・介護休業等ハラスメント(パタハラ・ケアハラ) | カスタマーハラスメント | 求職者等セクシュアルハラスメント | (参考)職場の安全への配慮 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 防止措置 | 義務 | 義務 | 義務 | 義務 | 義務(新設) | 義務(新設) | 民事上の義務 |
| 根拠となる法律(条項) | 労働施策総合推進法 第30条の2 | 男女雇用機会均等法 第11条 | 男女雇用機会均等法 第11条の3 | 育児・介護休業法 第25条 | 改正労働施策総合推進法(2026年10月施行) | 改正男女雇用機会均等法(2026年10月施行) | 労働契約法 第5条(安全配慮義務) |
| 義務化の時期 | 大企業:2020年6月/中小企業:2022年4月 | 2007年(措置義務化) | 2017年 | 2017年 | 2026年10月1日 | 2026年10月1日 | — |
※2026年9月時点の法令・指針にもとづきます。施行日等は今後の改正で変わる可能性があるため、最新の情報は各法令・厚生労働省の資料でご確認ください。
ここで注意したいのが、「義務」と「努力義務」の違いです。上表の防止措置はいずれも「講じなければならない」と定められた義務ですが、これとは別に、社員の関心・理解を深めるための研修の実施などは「努めなければならない」とされる努力義務です。たとえばパワーハラスメントについては、次のように定められています。
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第30条の2第1項|e-Gov法令検索
あわせて、労働契約法第5条は、使用者に対し、労働者が安全に働けるよう必要な配慮をする「安全配慮義務」を定めています。ハラスメントを放置して社員が心身に不調をきたした場合、この安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われることもあります。罰則の有無とは別に、対策を怠ることには民事上の責任というリスクが伴う、と理解しておくことが大切です。
出典・参考資料(5件)
- 出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第30条の2|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132)
- 出典:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第11条・第11条の3|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113)
- 出典:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第25条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076)
- 出典:労働契約法 第5条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128)
- 参考資料:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)
2026年10月から強化されるハラスメント対策(カスハラ・就活セクハラ義務化)
直近で対応が必要になるのが、2025年6月11日に公布された改正法(令和7年法律第63号)による、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化です。厚生労働省は次のように告知しています。
本改正により、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「求職者等セクハラ」)の防止措置が事業主の義務となります(令和8年10月1日施行)。
出典:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省
カスタマーハラスメントとは何を指すのか、2026年2月26日に公布された指針が定義を示しています。次の3つの要素をすべて満たすものがカスタマーハラスメントにあたります。
職場におけるカスタマーハラスメントは、職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。
出典:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第51号)|厚生労働省
ここでいう「顧客等」には、顧客や取引の相手方だけでなく、施設の利用者など事業に関係する幅広い相手が含まれます。一方で、商品やサービスへの正当な苦情はカスタマーハラスメントにあたりません。
企業には、顧客等からの著しい迷惑行為から社員を守るための相談体制の整備や、対応方法の周知などが求められることになります。施行までに、自社の顧客対応の実態に合わせて、相談窓口やマニュアルの整備を進めておくとよいでしょう。
あわせて、就職活動中の学生やインターンシップ参加者などに対するセクシュアルハラスメント(求職者等セクハラ)の防止措置も、同じく2026年10月1日から義務化されます。採用面接や説明会などの場面が対象となるため、採用に関わる社員への周知も必要です。
出典・参考資料(3件)
- 出典:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)
- 出典:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第51号)|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf)
- 参考資料:令和7年 労働施策総合推進法等の一部改正について|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html)
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各措置の具体的な進め方(方針の周知・相談窓口・就業規則・研修)
ここからは、講ずべき措置を実際にどう進めるかを、方針の周知・相談窓口・就業規則・研修の4つに分けて解説します。いずれも指針が定める措置に対応しており、自社の抜け漏れが見つかった項目から着手すると、無理なく体制を整えられます。
方針の明確化と社内への周知
最初の一歩は、「どのような言動がハラスメントにあたり、会社としてそれを許さない」という方針を明確にし、管理職を含む全社員に伝えることです。経営トップのメッセージとして社内報やイントラネットに掲示する、朝礼や全体会議で表明する、といった形が取られます。
方針を文書にまとめ、いつでも参照できる場所に置いておくと、周知の徹底につながります。ハラスメントの内容そのものの理解が浅いと方針も形骸化するため、後述の研修とあわせて進めると効果的です。
相談窓口の設置・運用
相談窓口は、社員が安心してハラスメントを相談できる入口です。指針は、相談担当者をあらかじめ定める、相談対応の制度を設ける、外部機関に相談対応を委託する、のいずれの方法も認めています。社内に窓口を置く場合は、担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるよう、対応の手順やプライバシー保護のルールをあらかじめ決めておくことが欠かせません。
社内に適任者がいない、相談のハードルを下げたいといった場合は、専門の相談員を抱える外部機関に窓口を委託する方法もあります。指針も外部委託を認められる例として挙げており、社内窓口と併設することも可能です。具体的なサービスは記事後半で紹介します。
就業規則・社内規程への明記
指針は、行為者を厳正に対処する旨の方針と対処の内容を、就業規則その他の服務規律を定めた文書に規定することを求めています。具体的には、ハラスメントを懲戒事由として就業規則に明記し、どのような行為にどの程度の処分が科されるのかを定めます。
相談したことや事実を述べたことを理由に不利益な取扱いをしない旨も、あわせて規定して周知します。規程を新設・改定した際は、社員への周知と、必要に応じた労働基準監督署への届出も忘れないようにしましょう。
就業規則の規定例や方針文の書き方は、厚生労働省「あかるい職場応援団」で公開されている資料が参考になります。自社の実情に合わせて条文を整える際の下敷きとして活用できます。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:あかるい職場応援団(ハラスメント対策の総合情報サイト)|厚生労働省(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)
研修の実施
研修は、方針の周知・啓発を実効あるものにする手段です。何がハラスメントにあたるのかという知識と、日々の言動でどう気をつけるかを社員一人ひとりに落とし込みます。効果を高めるには、一般社員向け・管理職向け・相談窓口担当者向けで内容を分けるのがポイントです。
管理職には部下への指導とパワーハラスメントの線引きを、窓口担当者には相談対応の実務を重点的に扱います。全社員に確実に受講してもらう運用が難しい場合は、進捗管理までできるeラーニングを使うと、受講状況の把握や未受講者へのフォローが効率化できます。
社員の関心と理解を深めるための研修の実施は、法律上は努力義務と位置づけられています。ただし、方針の周知・啓発は講ずべき措置の一部であり、その手段として研修が位置づく点に注意が必要です。「研修は努力義務だからやらなくてよい」とは言い切れず、方針を実効的に周知するうえで欠かせない取り組みといえます。
ハラスメントの種類と定義|指導との境界
ここでは、社内周知や研修の拠り所となるよう、主なハラスメントの種類と定義を整理します。それぞれの言動が「ハラスメントにあたるかどうか」の線引きは、社員が判断に迷いやすいところです。定義を正しく押さえておくことが、方針の周知や相談対応の土台になります。
パワーハラスメントの定義と6類型
職場のパワーハラスメントは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、という3つの要素をすべて満たすものと定義されます。
指針は代表的な言動を、身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害の6類型に整理しています。上司から部下への言動に限らず、同僚間や部下から上司への言動でも、優越的な関係を背景としていれば該当し得ます。
セクシュアルハラスメントの定義
セクシュアルハラスメントは、職場での性的な言動に対する労働者の対応により労働条件で不利益を受ける「対価型」と、性的な言動により就業環境が害される「環境型」に分けられます。男女雇用機会均等法は、性別にかかわらず、また同性間の言動も対象としています。相手が明確に拒否していなくても、就業環境を害していればセクシュアルハラスメントにあたり得ます。
マタハラ・パタハラ・ケアハラの定義
妊娠・出産・育児・介護に関するハラスメントも、防止措置が義務づけられています。妊娠・出産や、それに関する制度利用を理由とする就業環境を害する言動が妊娠・出産等ハラスメント(マタニティハラスメント)です。
育児休業・介護休業などの制度利用に関する言動によるものは、育児・介護休業法が対象とし、男性の育児参加に関するものはパタニティハラスメント、介護に関するものはケアハラスメントと呼ばれます。制度の利用を諦めさせるような言動が典型例です。
カスタマーハラスメントの定義
カスタマーハラスメントは、顧客等の言動であって、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものです。2026年10月1日から防止措置が義務化されます。定義や企業がとるべき対応の詳細は、前述の「2026年10月から強化されるハラスメント対策」をご覧ください。
指導とパワーハラスメントの境界(グレーゾーンの線引き)
管理職が最も迷うのが、業務上の指導とパワーハラスメントの線引きです。判断の軸になるのは、パワーハラスメントの定義にある「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」かどうかです。業務上の必要性があり、社会通念に照らして相当な方法での指導であれば、たとえ相手が不満を感じてもパワーハラスメントにはあたりません。
一方、人格を否定する言葉を使う、大勢の前で長時間叱責する、といった行き過ぎた方法は、必要かつ相当な範囲を超えたと判断されやすくなります。感情的にならず、人ではなく行動に対して、具体的に伝えることが、指導とハラスメントを分ける実務上のポイントです。
出典・参考資料(2件)
- 出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf)
- 参考資料:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)
ハラスメントの相談を受けたときの対応フロー
相談窓口に相談が寄せられたら、迅速かつ適切に対応する必要があります。指針が定める事後対応は、大きく次の流れで進めます。各段階で守るべき点をあわせて確認しておくと、二次被害やトラブルを防げます。

- 事実関係の迅速・正確な確認:相談者と行為者の双方、必要に応じて第三者から、事実関係を迅速かつ正確に確認します。相談者の意向を尊重し、聴き取りの過程でプライバシーが漏れないよう配慮します。
- 被害者への配慮の措置:ハラスメントの事実が確認できた場合、被害を受けた社員に対する配慮の措置を速やかに行います。行為者との関係改善に向けた援助や、配置転換などが該当します。
- 行為者への措置:就業規則の規定にもとづき、行為者に対する措置(指導・懲戒など)を適正に行います。処分の重さは行為の程度に見合ったものにします。
- 再発防止に向けた措置:事実が確認できなかった場合も含め、改めて方針を周知・啓発するなど、再発防止に向けた措置を講じます。
全段階を通じて守るべきなのが、相談者・行為者のプライバシー保護と、相談したことや事実を述べたことを理由とする不利益な取扱いの禁止です。相談したことで評価を下げられる、といった不安があると、社員は相談をためらいます。相談者が安心して声を上げられる運用こそが、対応フローの実効性を支えます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf)
ハラスメント対策の未整備項目を埋める方法(研修・相談窓口の外部委託)
自社の点検で「研修を実施できていない」「相談窓口がない」といった抜け漏れが見つかったら、それを埋める手段を検討します。ここでは、全社員向けのハラスメント研修を実施できるeラーニングと、相談窓口を外部に委託できるサービスを紹介します。
研修サービスは、パワハラ・セクハラだけでなくカスハラやSOGIハラといった類型まで教材がそろっているか、全社員に一括展開できるかが選定のポイントです。
相談窓口を外部に委託する場合は、相談員の専門資格・匿名相談への対応・社内窓口との併設可否・受付チャネルを確認するとよいでしょう。2026年10月に義務化されるカスタマーハラスメントの相談体制を整えるなら、顧客対応に関する相談まで受けられるかも各社に確認するとよいでしょう。
就業規則への明記や方針の整備が抜けている場合は、社会保険労務士への相談や、厚生労働省が公開するモデル規程・資料の活用が有効です。研修・相談窓口とあわせて、抜けている措置から順に整えていきましょう。
ここで取り上げるのは、ハラスメント対策に役立つ代表的なサービスです。教材テーマや料金、選び方まで含めてコンプライアンス研修のeラーニングをより広く比較検討したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
コンプライアンス研修eラーニングおすすめ比較29選!料金・教材テーマ・選び方を解説
コンプライアンス研修を全社員に行き渡らせたいのに、集合研修では日程調整や会場手配が追いつかず、受講記録の管理も煩雑になっていませんか。ハラスメント防止や情報セキュリティ、個人情報保護など扱うべきテーマは年々増え、法改正のたびに教材を作り直す…
以下はご紹介するサービスの比較表です。
| サービス名 | OneCompliance | manebi eラーニング | CAREERSHIP | learningBOX | 企業倫理ホットライン |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社Oyster | 株式会社manebi | 株式会社ライトワークス | learningBOX株式会社 | ダイヤル・サービス株式会社 |
| 提供形態 | eラーニング(コンプライアンス特化) | eラーニング(LMS型)+集合研修 | eラーニング(統合型LMS) | eラーニング(LMS+learningBOX ON) | 相談窓口の外部委託 |
| 対応ハラスメント類型 | パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ・ケアハラ・SOGIハラ・オンライン (カスハラは別立て3コース) | パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ (カスハラ対応コースあり) | パワハラ・セクハラ・スメハラ・リモハラ・カスハラ・SOGIハラ | パワハラ・セクハラ(無料教材) 連携教材でハラスメント6テーマ | — |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 100,000円 | 要問い合わせ | 0円(記載なし) | 要問い合わせ |
| 月額費用 | 受講者数に応じた従量課金(要問い合わせ) | 19,800円〜(LITE・39IDまで定額/STANDARD 39,800円) | 要問い合わせ(ユーザー数に応じた変動制) | 無料プランあり/有料は5,500円〜(税込・100アカウント単位) | 要問い合わせ(従業員規模等で見積もり) |
| 無料プラン・トライアル | 無料トライアルあり | 無料デモあり | 公式に明示なし | フリープランあり(10アカウント・無期限無料) | — |
| 監修 | 弁護士・専門家が監修 | 監修者の明示なし | 監修者の明示なし | 松田昌明弁護士(無料教材) | — |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 公式サイト |
1. OneCompliance(株式会社Oyster)

OneComplianceは、コンプライアンス領域に特化したeラーニングサービスです。ハラスメント予防研修は「管理職向け」「全従業員向け」に分かれ、パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラ・ケアハラ・SOGIハラ(性的指向・性自認に関するもの)にオンライン上のハラスメントまでを扱います。
カスタマーハラスメントは、規制と事業者の義務・事業者間のカスハラ・クレーム対応の3コースに分けて用意されており、2026年の義務化に向けた学習にも対応しやすい構成です。
弁護士などの専門家が監修し、法改正に応じてコンテンツを継続的に更新している点も特徴です。受講状況をダッシュボードで一元管理し、未受講者へ自動でリマインドを送れるため、全社員への確実な受講をめざす運用に向いています。料金は受講者数に応じた体系で、無料トライアルも用意されています。
研修は実施するだけでなく、全社員が最後まで受講してこそ実効性を持ちます。この受講完了について、提供元の株式会社Oysterは次のように述べています。

2. manebi eラーニング(株式会社manebi)

豊富な教材を月額定額で見放題にできるLMS型のeラーニングが、manebi eラーニングです。ハラスメント研修では、パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラの定義や判断基準に加え、「厳しい指導かパワハラか」「パワハラ防止法と企業が行うべき措置」「カスハラ対応と対策」といった実務に踏み込んだコンテンツを学べます。
eラーニングは1コース40〜60分程度、集合研修用の教材もそろい、ハラスメント以外のコンプライアンス・情報セキュリティ・ビジネススキルまで幅広く1サービスでカバーできます。ハラスメント研修を入口に、全社的な教育基盤を整えたい企業にも適しています。料金は月額定額制で、初期費用と月額費用が明示されている点も検討しやすいポイントです。
3. CAREERSHIP(株式会社ライトワークス)

大企業やグループ会社を含む複雑な組織での運用に強いのが、統合型LMSのCAREERSHIPです。eラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」と連携し、ハラスメント対策シリーズを配信できます。
カバーする類型は、パワハラ・セクハラに加え、スメハラ(においに関するもの)・リモハラ(リモートワークに関するもの)・カスハラ・SOGIハラまでと幅広く、種類を広く網羅して社内周知したい場合に選択肢になります。
教材は1本3〜5分のマイクロコンテンツが中心で、新入社員・若手・管理職といった階層別に対応し、全社員への一括展開もできます。「自社の研修は類型を十分にカバーできているか」を選定軸にする企業にとって、対応範囲の広さが強みになります。料金はユーザー数に応じた体系で、詳細は問い合わせが必要です。
4. learningBOX(learningBOX株式会社)

10アカウントまで無期限で無料で使えるのが、learningBOX(ラーニングボックス)です。付加サービス「learningBOX ON」を通じて、ハラスメントやコンプライアンスの研修コンテンツを追加でき、ハラスメント教材とコンプライアンス教材は無料で提供されています。無料のハラスメント教材はパワハラ・セクハラを扱い、松田昌明弁護士の監修が入っています。
この無料教材は、パワハラ防止措置が中小企業に義務化されるタイミングに合わせて提供された経緯があり、「まずはコストをかけずに法定義務への対応を始めたい」という中小企業の第一歩に向いています。本格運用に移る際は、100アカウント単位の有料プランへ段階的に拡張できます。自作教材と組み合わせて研修コースを設計できる柔軟さも特徴です。
5. 企業倫理ホットライン(ダイヤル・サービス株式会社)

相談窓口を社外に設けたい場合の選択肢が、ダイヤル・サービスの企業倫理ホットラインです。相談窓口の運営を専業とする企業が、社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・公認心理師などの資格を持つ相談員を通じて、通報や相談に対応します。実名・匿名のいずれの相談も受け付け、不正・違反だけでなく、労働環境や人間関係の悩みも扱います。
社内に窓口の担当者を置くのが難しい、相談のハードルを下げたい、専門的な聴き取りに任せたい、といった企業に向いています。指針も外部機関への相談対応の委託を認められる例として挙げており、社内窓口と併設して運用することもできます。
まとめ
ハラスメント対策は、「何がハラスメントか」を知るだけでなく、方針の明確化と周知・相談窓口の設置・事後の適切な対応・プライバシー保護と不利益取扱いの禁止という、事業主が講ずべき措置を漏れなく整えることが出発点です。パワハラ・セクハラ・マタハラなどの防止措置はすでに全企業の義務であり、2026年10月にはカスタマーハラスメント対策と求職者等セクハラ対策も義務に加わります。
まずは本記事のチェックリストで自社の抜け漏れを洗い出し、足りない項目から着手してください。研修が未実施なら全社員向けのeラーニング、相談窓口がなければ社内設置や外部委託と、埋める手段は用意されています。自社の状況に合った方法で、社員が安心して働ける職場づくりを進めましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. ハラスメント対策とは何ですか?
A. ハラスメント対策とは、事業主が法律にもとづいて講じなければならない、職場のハラスメントを防ぎ、発生したときに適切に対応するための一連の措置です。
具体的には、①どのような言動がハラスメントにあたり許さないという方針の明確化と周知、②相談窓口の設置と相談体制の整備、③相談を受けた後の事実確認・被害者への配慮・行為者への措置・再発防止、④相談者等のプライバシー保護と相談を理由とする不利益取扱いの禁止、という柱で構成されます。パワハラ・セクハラ・マタハラなど種類を問わず共通する枠組みです。
Q. ハラスメント対策は中小企業にも義務づけられていますか?
A. ハラスメント対策は、中小企業を含むすべての企業に義務づけられています。 パワーハラスメントの防止措置は、大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月から義務化され、企業規模にかかわらず講じることが求められます。セクシュアルハラスメント・妊娠出産等ハラスメント・育児介護休業等ハラスメントの防止措置も、同様にすべての企業の義務です。「規模が小さいから対象外」ということはありません。
出典・参考資料(1件)
- 出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第30条の2|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132)
Q. ハラスメント対策を怠ると罰則はありますか?
A. 防止措置を怠ったこと自体への直接の罰則はありませんが、行政の指導・勧告や企業名の公表、民事上の損害賠償責任の対象になり得ます。
厚生労働大臣は事業主に対し助言・指導・勧告を行うことができ、勧告に従わない場合は企業名が公表されることがあります。また、ハラスメントを放置して社員が心身に不調をきたした場合には、労働契約法第5条の安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われることもあります。「罰則がないから対応しなくてよい」とはいえません。
出典・参考資料(2件)
- 出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(助言、指導及び勧告並びに公表の規定)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132)
- 出典:労働契約法 第5条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128)
Q. ハラスメントの相談窓口は社内と外部のどちらに設けるべきですか?
A. 社内・外部のどちらでもよく、両方を併設することもできます。 指針は、社内に相談担当者を定める方法・社内に相談対応の制度を設ける方法・外部機関に相談対応を委託する方法のいずれも認めています。
社内窓口は事情を把握しやすく迅速に動ける一方で相談のハードルが上がりがちです。外部委託は専門の相談員に匿名でも相談しやすい反面、社内での情報共有に手続きが必要になります。社内に適任者がいない、相談のしやすさを高めたいといった場合は、外部委託や社内窓口との併設が選択肢になります。
Q. ハラスメント対策は就業規則にどう記載すればよいですか?
A. ハラスメントを懲戒事由として就業規則に明記し、行為の内容に応じた処分の種類・程度と、相談したことを理由に不利益な取扱いをしない旨をあわせて定めます。 指針は、行為者を厳正に対処する旨の方針と対処の内容を、就業規則その他の服務規律を定めた文書に規定するよう求めています。規定を新設・改定した際は、社員への周知と、必要に応じた労働基準監督署への届出も忘れないようにしましょう。
Q. ハラスメント研修の実施は義務ですか?
A. 社員の関心と理解を深めるための研修の実施は法律上は努力義務ですが、方針の周知・啓発を実効あるものにする手段として、実質的に欠かせない取り組みです。 方針の周知・啓発そのものは講ずべき措置に含まれ、その手段として研修が位置づくため、「努力義務だからやらなくてよい」とは言い切れません。一般社員・管理職・相談窓口担当者で内容を分け、eラーニングなどで全社員に確実に受講させる運用が効果的です。
Q. パワハラにならない指導のコツは何ですか?
A. 業務上の必要性があり、社会通念に照らして相当な方法での指導であれば、相手が不満を感じてもパワーハラスメントにはあたりません。 判断の軸は「業務上必要かつ相当な範囲を超えていないか」です。人格を否定する言葉を使わない、大勢の前で長時間叱責しない、感情的にならず人ではなく行動に対して具体的に伝える、といった点を意識すると、指導とハラスメントの線引きがしやすくなります。
Q. 「自爆営業」もパワハラにあたりますか?
A. 上司などの優越的な関係を背景に、業務上不要な商品の購入やノルマの自己負担を強いる「自爆営業」は、パワーハラスメントにあたり得ます。 パワハラ指針が示す6類型のうち、業務上明らかに不要なことを強制する「過大な要求」に該当する可能性があるためです。
厚生労働省も、労働者に対する商品の買取り強要等を労働関係法令上の問題として注意喚起しています。売上目標の達成を名目に自腹での購入を求める慣行がないか、自社の営業現場を点検しておくとよいでしょう。
出典・参考資料(2件)
- 出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf)
- 参考資料:職場におけるハラスメントの防止のために(労働者に対する商品の買取り強要等について)|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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