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飲食店のIT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)2026|個人店も対象、補助率と申請の流れを解説

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モバイルオーダーシステム比較表(2026年版)

「IT導入補助金は、うちのような個人経営の小さな飲食店でも使えるのだろうか」と気になっていませんか。結論から言えば、飲食店は個人経営でも家族経営でも、開業して間もない店でも申請の対象になります。人手不足でホールの注文受けと会計が回らない、インボイスやキャッシュレスへの対応に追われている、という店ほど補助を活かせる制度です。

ただし2026年の制度は、名称が「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」へ変わり、申請枠や補助率も更新されました。古い年度の数字と混同しないよう、本記事は令和7年度補正予算により2026年(令和8年度)から実施される最新の内容で統一しています。

本記事では、飲食店が対象になる条件、通常枠とインボイス枠でいくら補助されるか、モバイルオーダーやPOSレジなど補助対象になりうるITツールの種類、そして交付決定前に買うと対象外になるといった申請の注意点までを整理します。読み終えるころには、自店がいくらの自己負担でどのツールを導入できそうか、次に何をすればよいかが見えてくるはずです。

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飲食店(個人・小規模)はデジタル化・AI導入補助金の対象になるか

まず、多くの飲食店オーナーが最初に知りたい「うちは対象なのか」に答えます。飲食店は制度上「サービス業」に区分され、資本金5,000万円以下または従業員100人以下のいずれかを満たせば中小企業として対象になります。個人経営の店や家族経営の店は、この条件をまず問題なく満たします。

中小企業・小規模事業者の定義(飲食業の数値)

飲食業が該当する「サービス業」の中小企業の範囲は、公募要領で次のように定められています。

③サービス業(ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く) 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主

出典:デジタル化・AI導入補助金2026 事業概要|中小企業庁

「資本金5,000万円以下」または「従業員100人以下」のどちらか一方を満たせばよく、個人事業主も明記されています。街の飲食店であれば、この段階でほぼ対象に入ると考えて差し支えありません。

さらに、補助率が上がる「小規模事業者」に当てはまるかどうかは、後述の補助額に直結します。飲食業は「商業・サービス業」として、常時使用する従業員が5人以下であれば小規模事業者に該当します。

①商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く。) 常時使用する従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主

※「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条に規定する「予め解雇の予告を必要とする者」を意味する。なお、会社役員及び個人事業主は「予め解雇の予告を必要とする者」に該当しないため「常時使用する従業員」には該当しない。

出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領|中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局

注目したいのは、オーナー本人(個人事業主)や会社役員は「常時使用する従業員」に数えない点です。家族経営でオーナーが自ら店に立つ店では、雇用しているスタッフが5人以下であれば小規模事業者に該当し、補助率が優遇される枠を使える可能性があります。

個人事業主・家族経営・開業直後でも対象か

個人事業主は対象事業者として公募要領に明記されており、法人でなくても申請できます。開業して間もない店についても、交付申請の要件に「開業から何年以上」といった営業年数の条件はありません。「開業1年以上が必須」と誤解されることがありますが、公募要領の交付申請要件に営業年数の条件は定められていません。

ただし、個人事業主として申請する場合は、確定申告書など事業の実在を確認できる書類の提出が求められます。開業直後で確定申告をまだ済ませていない場合は、提出できる書類が申請時点でそろっているかを事前に確認しておくと安心です。具体的な必要書類は申請の回ごとに更新されるため、後述するIT導入支援事業者に相談しながら準備を進めましょう。

申請枠・補助率・補助上限|通常枠とインボイス枠でいくら補助されるか

ここからは、飲食店が使う主な2つの枠「通常枠」と「インボイス枠(インボイス対応類型)」で、いくら補助されるかを見ていきます。補助率は導入額の区分ごとに段階が分かれており、この段階を正しく押さえることが、実際の自己負担を見積もる出発点になります。まず全体像を表にまとめます。

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枠通常枠インボイス枠(インボイス対応類型)ハードウェア
補助率1/2以内(一定の要件を満たすと2/3以内)50万円以下の部分:3/4以内(小規模事業者は4/5以内)/50万円超〜350万円の部分:2/3以内1/2以内
補助上限5万〜450万円(ITツールのプロセス数による)350万円(会計・受発注・決済のうち2機能以上)/50万円(1機能)PC・タブレット等10万円/レジ・券売機等20万円
主な対象業務のデジタル化全般会計・受発注・決済の機能を持つソフト対象ソフトとセットで導入する機器

※2026年(令和8年度)のデジタル化・AI導入補助金の公募要領・事業概要にもとづく。各区分の詳細は以下の各項目と出典を参照。

通常枠

通常枠は、幅広い業務のデジタル化に使える枠です。導入するITツールが担うプロセス(業務工程)の数によって、補助額と上限が2段階に分かれます。

  • ITツールのプロセス数が1~3つまで:補助額5万円~150万円未満(補助率1/2以内)
  • ITツールのプロセス数が4つ以上:補助額150万円~450万円以下(補助率1/2以内)
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 事業概要(通常枠)|中小企業庁

補助率は原則2分の1です。なお、直近で地域別最低賃金の近傍で従業員を雇用しているなど一定の要件を満たすことを示した場合は、補助率が3分の2に引き上げられます。補助額の下限は5万円で、これに満たないごく少額のツール導入は想定されていません。

かつての「A類型」「B類型」という呼び方は旧IT導入補助金(2025年まで)のもので、2026年は「プロセス数1〜3/4つ以上」の区分に変わっている点に注意してください。

インボイス枠(インボイス対応類型)

インボイス枠(インボイス対応類型)は、会計・受発注・決済といった機能を持つソフトを対象に、通常枠より高い補助率が設定された枠です。飲食店では、インボイスに対応した会計連携付きのPOSレジなどがここに当てはまります。補助率は導入額の区分ごとに段階が分かれています。

ITツール:補助額50万円以下の部分は(補助率3/4以内、小規模事業者は4/5以内)、補助額50万円超~350万円の部分は(補助率2/3以内)

⇒導入するITツールが「会計」・「受発注」・「決済」の機能を2機能以上有する場合は、補助額350万円以下の申請が可能。(1機能の場合は、補助額50万円以下の申請が可能。)

出典:デジタル化・AI導入補助金2026 事業概要(インボイス枠)|中小企業庁

ここは段階を省かずに読むことが大切です。50万円以下の部分は中小企業で4分の3、小規模事業者ならさらに高い5分の4が補助されます。50万円を超えて350万円までの部分は3分の2です。また、対象になる機能が1つだけの場合は補助額50万円以下までの申請にとどまり、会計・受発注・決済のうち2機能以上を備えると350万円以下まで申請できます。

インボイス枠(インボイス対応類型)の補助率が導入額の部分ごとに決まることを示した図解。50万円以下の部分は補助率4分の3以内(小規模事業者は5分の4以内)、50万円超〜350万円の部分は補助率3分の2以内。会計・受発注・決済のうち2機能以上を備えると350万円まで、1機能なら50万円まで申請できる。

なぜ個人・小規模の店ほど補助率で有利になるのか

ここまでの数字を並べると、小規模事業者に該当する店が有利になる仕組みが見えてきます。インボイス枠の50万円以下の部分では、中小企業の4分の3に対して小規模事業者は5分の4と、補助率がさらに上がります。前述のとおり、飲食店は雇用スタッフが5人以下であれば小規模事業者に該当し、オーナー本人や役員はこの人数に含めません。

導入額が小さめの個人店ほど、この高い補助率がそのまま自己負担の軽さに直結します。実際の導入額でいくらの自己負担になるかは、後述の「実質いくら?導入モデル別の自己負担額の例」で具体的に示します。

ハードウェア(PC・タブレット・レジ・券売機)の扱い

飲食店では、モバイルオーダーやセルフレジを入れるときにタブレットやレジ端末などのハードウェアも必要になります。ハードウェアは、インボイス枠のなかで次のとおり補助の対象になります。

  • PC・タブレット等:補助額10万円まで(補助率2分の1)
  • レジ・券売機等:補助額20万円まで(補助率2分の1)

ここで見落としやすいのが、ハードウェア単体では申請できないという条件です。公募要領では、会計・受発注・決済のいずれかの機能を持つソフトウェアとあわせて導入する場合に限り、PC・タブレット等が対象になると定められています。

しかも、これらのハードウェアはソフトの購入先として選んだIT導入支援事業者から購入することが条件です。「タブレットだけ」「レジだけ」を補助金で買うことはできない、と押さえておきましょう。

(ア)「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を有するカテゴリー1(ソフトウェア)とあわせて導入する場合に限り、PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機の購入費用及びこれらに係る運搬費をインボイス対応類型における対象とする。

出典:デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)公募要領|中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局

補助対象になるITツール|飲食店の課題から選ぶ

「入れたいツールは補助の対象になるのか」を考える前に、1つ押さえておくべき条件があります。補助対象になるのは、IT導入支援事業者が提供し、事務局にあらかじめ登録されたITツールに限られます。

ITツールとは、本事業においてIT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に登録された中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上に資するソフトウェア(AIを含む。)・オプション・役務・ハードウェアの総称を指す。

出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領|中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局

気になるサービスが対象かどうかは、事務局に登録済みのITツールかどうかで決まります。登録状況は事務局ポータルの「ITツール検索」で調べられます。以下では、飲食店でよくある課題から、補助対象になりうるツールの種類を整理します。いずれも「登録されていれば対象になる種別」であり、個別のサービスが登録済みかは申請前に確認してください。

ホール・客席の人手不足 → モバイルオーダー・セルフオーダー

ホールのスタッフが足りず、注文取りと配膳に手が回らない店では、来店客が自分のスマートフォンから注文するモバイルオーダーや、客席で注文を完結させるセルフオーダーが選択肢になります。注文をとる人員を減らし、スタッフを調理や接客の要所に回せるのが導入効果です。テーブルのQRコードから注文する方式が主流で、多くはPOSレジやキッチンへの表示と連携します。

会計・レジ締めの手間 → POSレジ・会計ソフト

閉店後のレジ締めや売上集計、確定申告のための記帳に時間を取られている店では、POSレジと会計ソフトの連携が効きます。売上データが会計ソフトへ自動で流れる仕組みにすれば、手入力の転記と計算ミスを減らせます。会計機能を持つツールはインボイス枠の対象になりやすく、補助率の面でも有利になりやすい領域です。

レジ締めや会計の効率化そのものを主目的にするなら、POSレジの比較から検討を始めると効率的です。以下の記事では、飲食店を含む業種別の選び方や費用相場をふまえて主要なPOSレジを比較しています。

現金管理・インボイス対応 → キャッシュレス決済・セルフレジ・券売機

レジの現金管理や、インボイス制度に対応した領収書・レシートの発行に不安がある店では、キャッシュレス決済やセルフレジ、券売機が課題の解決策になります。会計・決済の機能を備えたツールはインボイス枠に当てはまりやすく、レジ・券売機のハードウェアも、対象ソフトとあわせて導入すれば上限20万円まで補助の対象になります。

予約・在庫・勤怠の管理 → 予約管理・在庫管理・勤怠管理

電話予約の取りこぼしや、仕入れの在庫管理、シフトと勤怠の集計に手間がかかっている店では、予約管理・在庫管理・勤怠管理といったバックオフィス系のツールも対象になりえます。これらは複数の業務プロセスをまとめてデジタル化する使い方になりやすく、通常枠でプロセス数に応じた補助額を狙える領域です。自店で最も時間を奪われている業務から優先して選ぶのが、費用対効果を高めるコツです。

実質いくら?導入モデル別の自己負担額の例

ここからは、実際の自己負担がいくらになるかを、いくつかのモデルケースで示します。補助額は「導入額 × 補助率」で決まり、区分ごとに補助率が変わるため、同じ導入内容でも枠の選び方で負担が変わります。以下はあくまで計算例であり、実際の補助額は申請するツールの登録内容や審査によって変わります。

補助の対象になる経費には、ソフトウェアの購入費のほか、クラウド型サービスの利用料(最大2年分)や導入関連費も含まれます。以下の「導入額」は、これらを含む補助対象経費の額を指します。毎月の利用料がかかるクラウド型サービスでも、最大2年分までは補助の対象として見込めます。

出典・参考資料(1件)

導入額ごとの補助額と自己負担のめやすを、補助率が高いインボイス枠(小規模事業者の場合)と通常枠で並べると、次のとおりです。

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導入額30万円50万円100万円
インボイス枠(小規模事業者)補助 約24万円/自己負担 約6万円補助 約40万円/自己負担 約10万円補助 約73万円/自己負担 約27万円
通常枠補助 15万円/自己負担 15万円補助 25万円/自己負担 25万円補助 50万円/自己負担 50万円

※インボイス枠は会計・受発注・決済の機能を持つソフトを小規模事業者が申請した場合の概算(50万円以下の部分は4/5、50万円超の部分は2/3で計算)。小規模事業者=常時使用する従業員5人以下。実際の補助額は登録ツール・審査により異なります。

例1:個人経営の居酒屋(小規模事業者)が会計連携付きインボイス対応POSを導入

オーナーとアルバイト数名で営む居酒屋で、会計連携付きのインボイス対応POSレジを40万円で導入するケースです。雇用スタッフが5人以下なら小規模事業者に該当し、インボイス枠の50万円以下の部分は補助率5分の4が適用されます。

  • 導入額:40万円(インボイス枠・50万円以下の部分)
  • 補助額:40万円 × 4/5 = 32万円
  • 自己負担:8万円

例2:従業員6名のダイニングがモバイルオーダー+POS+会計を導入

従業員6名の店で、モバイルオーダー・POS・会計連携をまとめて90万円で導入するケースです。同じ導入内容でも、どの枠で申請するかで自己負担が変わります。

  • 通常枠(補助率1/2)で申請した場合:補助額45万円、自己負担45万円
  • 会計・受発注・決済のうち2機能以上を備え、インボイス枠で申請できた場合:50万円以下の部分は3/4(37.5万円)、50万円超の40万円分は2/3(約26.7万円)で、補助額は合わせて約64万円、自己負担は約26万円

このように、対象機能を満たしてインボイス枠で申請できるかどうかで、自己負担が20万円近く変わることもあります。ただし、モバイルオーダー単体は必ずしも会計・受発注・決済の機能に当たるとは限らず、どの機能が対象と認められるかは導入するツールによります。

加えて、タブレットやレジなどのハードウェアは、対象ソフトとセットで導入すれば上限(PC・タブレットは10万円、レジ・券売機は20万円)の範囲で別途2分の1が補助されます。どの枠でどこまで対象になるかは、導入するツールを扱うIT導入支援事業者に相談しながら詰めましょう。

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申請の流れと落とし穴|交付決定前の購入は対象外

補助金は、申請すればすぐに使えるわけではありません。手続きの順番を間違えると、せっかく導入したのに補助の対象外になってしまうことがあります。まずは申請の流れを押さえましょう。

申請は、次の順序で進みます。GビズIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言は交付申請の必須要件です。省力化ナビの活用は、採点で有利になる加点項目で、必須ではありませんが、やっておくと審査上のメリットがあります。

  1. GビズIDプライムを取得する(必須)
  2. SECURITY ACTION(★一つ星/★★二つ星)を宣言する(必須)
  3. 中小機構の「省力化ナビ」で自店の課題と解決策を確認する(任意・加点)
  4. IT導入支援事業者に相談し、導入するITツールを選ぶ
  5. IT導入支援事業者と一緒に交付申請する
  6. 交付決定を受けてからツールを発注・導入する
  7. 実績報告を行い、補助金を受け取る
デジタル化・AI導入補助金の申請の流れを示した図解。STEP1 GビズIDプライム取得(必須)、STEP2 SECURITY ACTIONの宣言(必須)、STEP3 省力化ナビで課題確認(任意・加点)、STEP4 IT導入支援事業者に相談しツール選定、STEP5 交付申請、STEP6 交付決定を受けてから発注・導入(交付決定前に契約・発注したツールは補助対象外)、STEP7 実績報告を行い補助金を受け取る(後払い)の順で進む。

聞き慣れない用語を補足します。GビズIDプライムは、行政の各種オンライン申請に共通で使える、法人・個人事業主向けのデジタルIDです。発行までに日数がかかることがあるため、申請を考え始めたら早めに取得しておくと安心です。SECURITY ACTIONは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むと自己宣言する制度で、★一つ星または★★二つ星のいずれかを宣言します。

省力化ナビは、中小機構が提供する自己診断で、自店の課題に合った解決策を確認できます(申請の必須要件ではなく、取り組むと審査で加点される項目です)。「プロセス数」は、導入するITツールがカバーする業務工程の数を指し、通常枠の補助上限を左右します。実績報告は、ツールの導入・支払いを終えたあとに、その結果を事務局へ報告する手続きです。

GビズIDプライムとSECURITY ACTIONについては、公募要領に次のとおり定められています。

  • (ウ)GビズIDプライムを取得していること。
  • (エ)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」又は「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行うこと。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領|中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局

落とし穴1:交付決定前に契約・購入すると対象外

最も多い失敗が、交付決定を待たずにツールを契約・発注してしまうケースです。公募要領でも、交付決定前に契約・発注したITツールは補助対象になりません。

交付決定前にITツールを契約、発注した場合は補助対象とならない。(1)ITツールの契約、発注:交付決定後に契約、発注を行うこと。

出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領|中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局

「良さそうなツールを見つけたので先に契約した」あとで補助金を申請しても、対象にはなりません。導入したいツールがあっても、申請して交付決定を受けるまでは発注しないことが鉄則です。

落とし穴2:補助金は後払い(先に費用を立て替える)

補助金は、導入した費用がその場で割り引かれる仕組みではありません。交付決定を受けてツールを発注・導入し、代金を支払ったうえで実績報告を行い、その後に補助金が振り込まれます。いったんは店側が全額を立て替える必要があります。手元資金や運転資金の計画に、この立て替え期間を織り込んでおきましょう。

落とし穴3:ハードウェア単体では申請できない

前述のとおり、PC・タブレットやレジ・券売機などのハードウェアは、会計・受発注・決済の機能を持つソフトとセットで導入する場合に限って対象になります。「古くなったタブレットだけ買い替えたい」「レジ端末だけ補助金で」という使い方はできません。ソフトの導入とあわせて計画することが前提です。

落とし穴4:既存ツールからの乗り換えは対象になるか

すでに使っているツールを別のツールに乗り換える場合に補助対象になるかは、公募要領に一律の定めがありません。補助の対象として明確なのは、事務局に登録されたITツールを新たに導入する費用です。今使っているツールと同じ機能への単純な置き換えが対象になるかは、導入内容によって判断が分かれるため、申請前にIT導入支援事業者へ確認するのが確実です。

ここまでの申請要件・注意点の根拠となる公募要領は、事務局ポータルからまとめて確認できます。

出典・参考資料(2件)

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)とは|2026年の変更点と申請スケジュール

最後に、制度そのものの位置づけと2026年の変更点を整理します。「IT導入補助金」で検索された方に補足すると、この制度は2026年(令和8年度)から名称が変わっています。

令和7年度補正予算事業から、「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」と名称を変更しました

出典:デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました|中小企業庁

正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」で、通称が「デジタル化・AI導入補助金2026」です。制度の目的は、中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上に向けて、AIを含むITツールの導入を支援することにあります。ソフトウェア・サービスの導入を後押しする枠組みという点は従来と変わりませんが、名称にAIが加わり、AIを含むツールの導入も正面から支援対象に位置づけられました。

注意したいのは、過去にIT導入補助金の交付を受けたことがある事業者への扱いです。2022年から2025年までのIT導入補助金で交付決定を受けた事業者は、通常なら任意である労働生産性向上などの要件が必須になるなど、2回目以降の申請には追加の条件が課されます。過去に使ったことがある店でも申請自体は可能ですが、要件が上乗せされる点は事前に確認しておきましょう。

申請のスケジュールは、締切の回ごとに事務局が公表します。2026年9月時点で公表されている内容では、交付申請の受付は2026年3月30日に始まっており、通常枠・インボイス枠などの直近の締切は2026年9月29日、その回の交付決定は2026年11月9日ごろが予定されています。

募集は複数の締切回に分けて行われるため、直近の締切に間に合わなくても、次の回で申請できます。GビズIDプライムの取得など準備には日数がかかるので、間に合いそうな締切回から逆算して早めに動くとよいでしょう。締切日は回ごとに更新されるため、申請を検討する際は事務局ポータルの事業スケジュールで最新の日程を必ず確認してください。

出典・参考資料(1件)

補助金の対象になりうる飲食店向けITツールを比較

ここからは、補助対象になりうる飲食店向けのモバイルオーダー・セルフオーダーサービスを具体的に紹介します。いずれも来店客のスマートフォンやタブレット端末から注文を受けられるサービスで、ホールの人手不足の解消や、会計・決済のデジタル化に使えます。

実際に補助の対象になるかは、各サービスがIT導入支援事業者を通じて事務局に登録されているかによります。導入を検討する際は、各社に補助金の活用可否をあわせて確認してください。

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サービス名ダイニー モバイルオーダーSquare モバイルオーダーAirレジ オーダーSTORES モバイルオーダーOkage Go
初期費用要問い合わせ0円
(Square Kiosk端末は29,980円/台)
0円
(店内版+キッチンプリンターは110,000円)
0円
(テーブルオーダーの0円は2026年6月時点。今後変更の可能性あり)
0円〜
(セルフでおトクプラン。POS連動型は268,000円〜)
月額費用要問い合わせPOS 0円〜13,000円
テーブルQRは別途Squareオンラインビジネス プラス以上(3,375円〜)
テーブルオーダー 17,600円〜
テイクアウト 0円
テーブルオーダー 7,700円〜(年契約)
テイクアウト 0円
0円〜
(セルフでおトクプラン。POS連動型は月20,000円〜)
無料で始められるか要問い合わせ△(POS本体は無料。テーブルQR注文は有料プランが必要)△(テイクアウトは月額0円。店内版は有料)△(テイクアウトは0円。テーブルオーダーは有料)●(セルフでおトクプランは初期・月額0円。LINEミニアプリ経由が前提)
注文方式テーブルオーダー
(QR・客のスマホ)
テーブルQR
セルフレジ(Square Kiosk)
オンライン注文
テーブルオーダー(店内版)
ハンディ
テイクアウト(店外版)
テーブルオーダー
テイクアウト
テーブルオーダー
(QR・客のスマホ)
テイクアウト・デリバリー(店外版)
決済手数料VISA/Master 2.48%
JCB/Diners 3.10%
(条件を満たす中小事業者は最大1.888%)
3.6%(テーブルQR注文・プラス)
3.3%(プレミアム)
店外版 注文3%+決済3.24%
(店内版はAirペイ連携)
テーブルオーダー 3.24%固定
テイクアウト 3.6%+10円
(スタンダードプラン併用で対面1.98%〜)
VISA/Master 3.3%
JCB等 3.9%
(オンライン決済時)
POS・決済連携自社ダイニーPOSレジ
ダイニー モバイル決済
Square POSレジ
Square決済・キオスク
Airレジ(無料POS)
Airペイ
自社STORESレジ
STORES決済
POS・ハンディ・キッチンディスプレイ連動
LINEミニアプリ決済
多言語対応日英中韓(自動翻訳)要問い合わせブラウザ翻訳機能要問い合わせ英・中(簡/繁)・韓
詳細情報サービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

※上記は2026年9月時点の各社公式情報にもとづく内容です。料金・プランは変更される場合があります。補助金の対象になるかは、各サービスがIT導入支援事業者を通じて事務局に登録されているかによります。最新の料金と補助金の活用可否は各社にご確認ください。

上で取り上げたのは、飲食店で使われる代表的なモバイルオーダー・セルフオーダーです。業態や予算に合うサービスをもっと広く見比べたい場合は、以下の記事で費用・機能・業態別の選び方までふまえて22サービスを比較しています。

1. ダイニー モバイルオーダー(株式会社ダイニー)

ダイニー モバイルオーダーのウェブサイト

ダイニー モバイルオーダーは、飲食店向けのモバイルオーダーと、顧客IDに注文履歴を紐づけて管理するPOS(ID-POS)を組み合わせたサービスです。来店客はテーブルに貼られたQRコードを自分のスマートフォンで読み取り、LINEのワンタップ認証で注文ページを開けるため、専用アプリのダウンロードが不要です。

注文とLINEから得られる顧客IDを自動でひも付け、「誰が・いつ・何を頼んだか」を把握できるのが特徴です。居酒屋・焼肉・カフェなど幅広い業態で使われ、公式サイトでは導入店舗約3,000店、利用会員数2,000万人突破と案内されています。料金は導入プランによって異なるため、公式サイトでの見積り依頼が必要です。

2. Square モバイルオーダー(Square株式会社)

Square モバイルオーダー(セルフオーダー)のウェブサイト

Square(スクエア)は、POSレジと決済を中核とするプラットフォームで、レストラン向けの「Square レストランPOS」にセルフオーダー機能を組み合わせて使えます。テーブルのQRコードから注文する方式に加え、店内設置のタッチパネル型セルフレジ「Square Kiosk」やオンライン注文にも対応します。

注文データはPOSレジへ自動で反映され、キッチンプリンターやキッチンディスプレイにも送られます。決済端末や決済サービスまで1つのブランドでそろえられる点が導入のしやすさにつながります。なお、テーブルのQRコード注文機能は「Square オンラインビジネス」のプラスプラン以上が必要で、無料プランでは利用できないため、料金体系は公式サイトで確認しておくとよいでしょう。

3. Airレジ オーダー(株式会社リクルート)

Airレジ オーダーのウェブサイト

株式会社リクルートが提供するAirレジ オーダーは、無料のクラウドPOSレジ「Airレジ」や決済サービス「Airペイ」とまとめて導入できる飲食店向けのオーダーシステムです。来店客が自席のスマートフォンから注文する店内版(セルフオーダー)、スタッフが操作するハンディ、来店前にネットで事前注文する店外版の3方式を提供します。

キッチンモニターやキッチンプリンター、POSレジと連携し、注文から会計までを一続きに扱えます。公式には、モバイルオーダーシステムの導入店舗数でシェアNo.1(サンプル調査にもとづく推計)と案内されています。すでに広く使われているAirシリーズでそろえたい店に向く選択肢です。

4. STORES モバイルオーダー(STORES 株式会社)

STORES モバイルオーダーのウェブサイト

STORES モバイルオーダーは、店内飲食のテーブルオーダーとテイクアウトの事前注文を1つのシステムで受けられるサービスです。テイクアウトオーダーは初期費用・月額費用ともに0円から始められ、2025年8月にテーブルオーダー機能が追加されました。

テーブルオーダーは年契約で月額7,700円(税込)からで、初期費用は2026年6月時点で0円と案内されています(今後変更の可能性がある旨の注記あり)。ネットショップや予約などSTORESの各サービスと組み合わせて使え、小規模な飲食店やカフェから導入しやすい価格設計が特徴です。最新の料金は公式の料金ページで確認してください。

5. Okage Go(Okage株式会社)

Okage Goのウェブサイト

Okage Goは、来店客が自分のスマートフォンでQRコードを読み取り、アプリのダウンロードや会員登録なしで注文できるモバイルオーダーです。客席に専用端末を置く必要がなく、店内版(テーブルオーダー)と店外版(テイクアウト・デリバリー)の両方を提供します。

LINEミニアプリを使った「セルフでおトクプラン」では、初期費用・月額費用ともに0円で、決済手数料のみで導入できる料金体系が公式サイトで案内されています(LINE公式アカウント連携を伴う利用が前提)。POSレジやハンディ、キッチンディスプレイと連動する「Okage DX Platform」の一部として、規模に応じた拡張もできます。

まとめ|まずはIT導入支援事業者への相談から

飲食店は、個人経営でも家族経営でも、開業して間もない店でも、デジタル化・AI導入補助金の対象になります。会計連携付きのインボイス対応POSを入れる小規模の店なら、導入額の5分の4が補助され、自己負担を導入額の2割程度に抑えられるケースもあります。

人手不足の解消ならモバイルオーダー、レジ締めや記帳の効率化ならPOS・会計ソフトというように、自店で最も時間を奪われている課題から選ぶと、費用対効果を高めやすくなります。

申請では、交付決定を受ける前に契約・購入しないこと、補助金は後払いで先に立て替えが必要なことを押さえておきましょう。そして最初の一歩は、導入したいツールを扱うIT導入支援事業者に相談することです。対象になるツールかどうか、どの枠でいくら補助されるかは、支援事業者と一緒に確認できます。

まずは気になるサービスの資料を集め、補助金の活用可否とあわせて比較するところから始めてみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)とは何ですか?

A. デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツール(ソフトウェア・サービス等)を導入する費用の一部を国が補助する制度です。正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」で、2026年(令和7年度補正予算事業)からIT導入補助金より名称を変更しました。飲食店では、POSレジやモバイルオーダー、会計ソフトなどの導入に活用できます。

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Q. 個人経営や家族経営の小さな飲食店でも補助の対象になりますか?

A. 飲食店は、個人経営でも家族経営でも、開業して間もない店でも対象になります。飲食業はサービス業に区分され、資本金5,000万円以下または従業員100人以下のいずれかを満たせば中小企業として対象で、個人事業主も公募要領に明記されています。

さらに、雇用しているスタッフが5人以下であれば小規模事業者に該当し、補助率が優遇される枠を使える可能性があります(オーナー本人や会社役員はこの人数に含めません)。なお、公募要領の交付申請要件に「開業◯年以上」といった営業年数の条件はありません。

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Q. 飲食店は通常枠とインボイス枠のどちらを選べばよいですか?

A. 会計・受発注・決済の機能を持つツール(インボイス対応POSレジなど)を導入するなら、補助率が高いインボイス枠が有利になりやすいです。インボイス枠は50万円以下の部分が補助率4分の3(小規模事業者は5分の4)で、通常枠の2分の1より手厚くなります。

一方、勤怠管理や予約管理などインボイス対応が絡まない業務のデジタル化は通常枠が対象です。どちらの枠が自店の導入内容に合うかは、IT導入支援事業者と相談して決めましょう。

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Q. POSレジやタブレットなどのハードウェアだけを補助金で購入できますか?

A. ハードウェア単体では申請できず、会計・受発注・決済の機能を持つソフトウェアとあわせて導入する場合に限り対象になります。インボイス枠では、PC・タブレット等が上限10万円、レジ・券売機等が上限20万円、いずれも補助率2分の1で対象です。これらのハードウェアは、ソフトの購入先として選んだIT導入支援事業者から購入することが条件で、「タブレットだけ」「レジだけ」を補助金で買うことはできません。

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Q. いま使っているツールから別のツールへ乗り換える費用も補助の対象になりますか?

A. 補助対象として公募要領で明確なのは、事務局に登録されたITツールを新たに導入する費用です。今使っているツールと同じ機能への単純な置き換えが対象になるかは、公募要領に一律の定めがなく、導入内容によって判断が分かれます。乗り換えを検討している場合は、その導入が登録ITツールの新規導入として要件を満たすか、申請前にIT導入支援事業者へ確認しておくと安心です。

Q. 申請してから補助金を受け取るまでどのくらいかかりますか?

A. 補助金は後払いで、交付決定を受けてツールを導入・支払いした後、実績報告を経てから振り込まれます。そのため、いったんは店側が費用を全額立て替える必要があります。

手続きは「交付申請→交付決定→発注・導入→支払い→実績報告→補助金交付」の順で進み、締切から交付決定までだけでも公表スケジュール上で1か月以上かかります(たとえば2026年9月29日締切回の交付決定は同年11月9日ごろの予定)。締切日程は回ごとに更新されるため、申請前に事務局ポータルで最新の日程を確認してください。

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Q. デジタル化・AI導入補助金は他の補助金と併用できますか?

A. 同じ経費に対して国の複数の補助金を重複して受け取ることは、原則としてできません(二重取りの禁止)。対象とする経費が異なれば、別の制度と組み合わせて活用できる場合もあります。ただし併用の可否や条件は各制度の公募要領で定められ、年度・枠によって変わるため、具体的な組み合わせを検討する際はIT導入支援事業者や各制度の窓口に確認するのが確実です。

Q. 過去にIT導入補助金を使ったことがあっても2026年に申請できますか?

A. 過去に交付を受けた店でも2026年の申請は可能ですが、追加の要件が課されます。2022年から2025年までのIT導入補助金で交付決定を受けた事業者は、通常なら任意である労働生産性向上などの要件が必須になります。上乗せされる条件の詳細は回ごとに異なるため、公募要領やIT導入支援事業者で事前に確認しておきましょう。

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Q. 複数のITツールをまとめて1回で申請できますか?

A. 複数のITツールをまとめて申請できます。通常枠は、導入するツールが担う業務プロセスの数に応じて補助上限が上がる仕組みで、複数の業務を一度にデジタル化する使い方が想定されています。ただし対象になるのは、いずれも事務局に登録されたITツールを、IT導入支援事業者を通じて導入する場合に限られます。どのツールをどの枠で組み合わせるかは、支援事業者と相談しながら決めるのがよいでしょう。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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