「来月の仕入れや給与の支払いに、手元の資金は足りるだろうか」と考えたとき、まず知りたいのは自社に必要な運転資金が今いくらかという具体的な金額です。
運転資金は、売掛金や在庫、買掛金といった決算書の数字を使って計算できます。計算方法には「在高方式」と「回転期間方式」の2つがあり、自社の数字を当てはめれば必要額を求められます。求めた金額は、融資をいくら申し込むかを判断する土台にもなります。
本記事では、運転資金の2つの計算方法を数字を当てはめた具体例で示し、業種別の目安や、計算して不足が分かったときの改善策・調達手段まで解説します。自社の決算書を手元に置きながら、必要な運転資金を実際に計算してみましょう。
目次
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運転資金の計算方法は「在高方式」が基本
必要な運転資金を求める最も基本的な方法が、決算書(貸借対照表)の残高をそのまま使う「在高方式(ざいだかほうしき)」です。まずは計算式そのものと、自社の数字を当てはめた例を見ていきましょう。
運転資金=売上債権+棚卸資産−仕入債務
在高方式の計算式は次のとおりです。
運転資金 = 売上債権(売掛金+受取手形)+ 棚卸資産 − 仕入債務(買掛金+支払手形)
商品を仕入れてから販売し、代金を回収するまでには時間差があります。売上はまだ現金になっていない売掛金として、商品は在庫(棚卸資産)として資金が寝ている一方で、仕入代金は買掛金として支払いを待ってもらえます。その差額として立て替えが必要になる金額が運転資金です。

この式は、会計実務で広く用いられる標準的な計算式です。式を構成する売上債権・棚卸資産・仕入債務(仕入債務は財務省の統計では「買入債務」と呼ばれます)は、法人企業統計でも企業の財務を測る指標の対象として扱われる、決算書から拾える標準的な科目です。
式の各項は決算書(貸借対照表)のどこを見るか
計算でつまずきやすいのが、式の各項に決算書のどの数字を入れるかです。いずれも貸借対照表(B/S)から拾う形になります。
| 売上債権 | 棚卸資産 | 仕入債務 | |
|---|---|---|---|
| 貸借対照表の該当科目 | 売掛金+受取手形 | 商品・製品・仕掛品・原材料など | 買掛金+支払手形 |
| どこにあるか | 資産の部(流動資産) | 資産の部(流動資産) | 負債の部(流動負債) |
棚卸資産には、販売前の商品だけでなく、製造途中の仕掛品や原材料も含まれます。売上債権・仕入債務は、手形取引がある場合は受取手形・支払手形も合算した金額を用います。
【計算例】数字を当てはめて運転資金を求める
実際に数字を入れてみます。売掛金600万円・受取手形200万円・棚卸資産300万円・買掛金400万円・支払手形100万円の会社を例にします。
| 売上債権(売掛金600万+受取手形200万) | 棚卸資産 | 仕入債務(買掛金400万+支払手形100万) | 必要運転資金(答え) | |
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 800万円 | 300万円 | 500万円 | 600万円 |
| 計算上の扱い | + | + | − | 800万+300万−500万 |
この会社では、事業を回すために常時600万円の資金を立て替えておく必要がある、と読み取れます。自社の決算書の数字に置き換えれば、同じ手順で必要運転資金を求められます。
もう一つの計算方法「回転期間方式」の式と求め方
在高方式が決算書の残高をそのまま使うのに対し、売上の規模に対して資金がどれだけ寝ているかを「期間(月数)」でとらえるのが回転期間方式です。ここでは式と、各回転期間の出し方を数字で確認します。
回転期間方式の計算式
必要運転資金 = 平均月商 ×(売上債権回転期間 + 棚卸資産回転期間 − 仕入債務回転期間)
回転期間とは、売上高に対して各科目の残高が何か月分あるかを示す指標です。たとえば売上債権回転期間は、売掛金や受取手形が現金として回収されるまでにおよそ何か月かかるかを表します。財務省の法人企業統計では、売上債権回転期間を次のように定義しています。
売上債権回転期間とは、売上高に対する売上債権の割合を言い、企業が所有する売上債権がどれくらいの期間で回収できるかを計る尺度です。
出典:法人企業統計調査からみる日本企業の特徴(売上債権回転期間)|財務省 財務総合政策研究所
売上債権回転期間(月)= 売掛金+受取手形[期首・期末平均] ÷(売上高/12)
各回転期間(売上債権・棚卸資産・仕入債務)を式と数字で求める
3つの回転期間は、いずれも「対象の残高 ÷ 平均月商(売上高÷12)」で求めます。先ほどの在高方式と同じ会社(売上債権800万円・棚卸資産300万円・仕入債務500万円)で、平均月商が1,000万円(年商1億2,000万円)の場合を見てみましょう。ここでは簡便的に期末の残高を用いています(厳密には期首・期末の平均を使います)。
| 売上債権回転期間 | 棚卸資産回転期間 | 仕入債務回転期間 | |
|---|---|---|---|
| 計算式 | 800万 ÷ 1,000万 | 300万 ÷ 1,000万 | 500万 ÷ 1,000万 |
| 結果 | 0.8か月 | 0.3か月 | 0.5か月 |
これを式に当てはめると、必要運転資金は 1,000万円 ×(0.8 + 0.3 − 0.5)= 1,000万円 × 0.6 = 600万円 となり、在高方式で求めた金額と一致します。2つの方式は同じ運転資金を別の角度から求めているため、同じ会社の数字なら答えも同じになります。
在高方式と回転期間方式はどう使い分けるか
2つの方式は、先ほど見たように同じ会社なら同じ必要運転資金を求めるものですが、向いている場面が異なります。使い分けの目安を整理します。
| 使う数字 | 測れること | 向く場面 | |
|---|---|---|---|
| 在高方式 | 決算書の残高(金額) | 今この時点で必要な金額 | 手早く現状の必要額を知りたいとき |
| 回転期間方式 | 各回転期間(月数)と平均月商 | 売上規模に対する資金の寝かせ方の効率、将来の売上見込みに応じた必要額 | 売上の増減を見込んだ試算や、同業他社・自社の過去と比べて効率を確かめたいとき |
まず在高方式で今の必要額をつかみ、売上の増加を見込んだ試算や資金効率の確認をしたいときに回転期間方式を使う、という順序が実務的です。回転期間方式は平均月商を掛けるため、売上が伸びれば必要運転資金も比例して増えることが式から読み取れます。
運転資金はいくら必要?業種別に見た目安
計算した金額が多いのか少ないのかを判断するには、業種ごとの水準と比べるのが役立ちます。必要運転資金は、在庫を多く抱える業種や代金回収までが長い業種ほど大きくなり、現金商売に近い業種ほど小さくなります。
中小企業庁「令和6年中小企業実態基本調査(令和5年度決算実績)確報」の拡大推計から、1企業あたりの売上債権・棚卸資産・仕入債務・売上高を算出し、在高方式の運転資金を売上高の月数(運転資金回転期間)に換算すると、業種による差が明確に表れます。
| 製造業 | 建設業 | 情報通信業 | 卸売業 | 小売業 | 運輸業,郵便業 | 宿泊業,飲食サービス業 | (全業種合計) | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 運転資金回転期間(月商の何か月分) | 約2.2か月 | 約1.3か月 | 約1.1か月 | 約1.0か月 | 約1.0か月 | 約0.6か月 | 約0.3か月 | 約1.3か月 |
※ 月数は中小企業実態基本調査 令和6年確報の拡大推計から1企業あたりに換算し、(売上債権+棚卸資産−仕入債務)÷平均月商で算出した値です。原典が月数として公表している値ではありません。対象企業や集計方法が異なる他の調査とは数値が食い違うことがあるため、絶対値そのものの比較には向きません。
在庫と売上債権の大きい製造業は月商の2か月分を超える一方、現金回収が中心の宿泊・飲食サービス業は1か月に満たない水準です。ここでの月数はあくまで同業と比べるための相対的な目安として使い、自社の正確な必要額は前述の計算で求めてください。自社の計算結果を同業の水準と比べれば、必要額が過大か過小かの見当がつきます。
「運転資金は月商の3か月分」といった目安が語られることもありますが、これは広く知られた経験則で、公的な統計が示す数値ではありません。上の業種別水準のように、自社の業種・取引条件に即して判断するほうが実態に合います。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:令和6年中小企業実態基本調査(令和5年度決算実績)確報|中小企業庁(e-Stat 統計表一覧)
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運転資金の種類と「増加運転資金」の計算
運転資金は、発生する理由によっていくつかの種類に分けられます。種類を押さえると、融資を申し込む際に「何のための資金か」を説明しやすくなります。
運転資金の4つの種類
- 経常運転資金:通常の事業活動で常に必要になる運転資金。在高方式で求める「売上債権+棚卸資産−仕入債務」がこれにあたります。
- 増加運転資金:売上の拡大にともない、売上債権や在庫が増えて追加で必要になる資金。
- 減少運転資金:売上の減少局面で、固定費の支払いが先行することで一時的に必要になる資金。
- 季節性運転資金:賞与や繁忙期の仕入れなど、特定の時期に集中して必要になる資金。
運転資金と設備資金の違い
運転資金と混同されやすいのが設備資金です。運転資金が日々の仕入れ・人件費など事業を回すための資金で短期に回収・返済するのに対し、設備資金は機械や店舗など長期に使う資産の取得に充てる資金で、返済も中長期にわたります。融資でも使途として明確に区別されるため、申し込み時には分けて説明します。
成長期に必要な「増加運転資金」の差分計算
売上が伸びると、経常運転資金も比例して増えます。増えた分(増加運転資金)は、回転期間方式の式で前後の必要運転資金を計算し、その差として求められます。
先ほどの回転期間方式の例(運転資金回転期間0.6か月)で、平均月商が1,000万円から1,500万円へ1.5倍に増えた場合を見ます。
| 拡大前 | 拡大後 | 増加運転資金 | |
|---|---|---|---|
| 平均月商 | 1,000万円 | 1,500万円 | − |
| 必要運転資金(月商×0.6か月) | 600万円 | 900万円 | 300万円 |
売上が増えること自体は好ましくても、回収より先に仕入れや人件費の支払いが発生するため、追加で300万円の資金が必要になります。増収局面でかえって資金繰りが苦しくなるのは、この増加運転資金への備えが不足するためです。
計算結果がマイナス・想定より小さいときの読み方
計算してみて運転資金がマイナス、あるいは思ったより小さい金額になることがあります。これは必ずしも悪い状態ではありません。
運転資金は「売上債権+棚卸資産−仕入債務」で求めるため、仕入債務(買掛金・支払手形)が売上債権と在庫の合計を上回ると、計算上はマイナスになります。これは、仕入代金を支払う前に売上の回収が済んでいる状態です。自己資金を立て替えずに事業を回せている状態を意味します。
仕入債務の支払いを、売上債権や在庫の回収より後ろ倒しにできるほど、立て替える運転資金は小さくなります。現金商売に近い業種や、仕入先への支払いサイトが長い業種では、運転資金が小さく、あるいはマイナスになりやすい傾向があります。買入債務回転期間(仕入から支払いまでの期間)が長いほど支払いを遅らせられる、という財務指標の考え方とも一致します。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:法人企業統計調査からみる日本企業の特徴(買入債務回転期間)|財務省 財務総合政策研究所(PDF)
計算して不足と分かったときの対応(改善と調達)
計算の結果、必要運転資金に対して手元資金が足りないと分かったら、対応は大きく2通りあります。資金繰りそのものを改善して必要額を減らす方法と、外部から不足分を調達する方法です。調達でいくら必要かは、おおまかには「必要運転資金 − 手元の自己資金 = 調達が必要な額」で見積もれます。
資金繰りを改善して必要額を減らす
運転資金は「売上債権+棚卸資産−仕入債務」で決まるため、この3つを動かせば必要額を圧縮できます。
- 在庫(棚卸資産)を圧縮する:過剰在庫を見直し、売れ筋に絞って仕入れることで資金の寝かせを減らします。
- 売上債権の回収を早める:請求サイトの短縮や前受金の活用で、代金回収までの期間を縮めます。
- 仕入債務の支払いサイトを延ばす:仕入先と交渉し、支払い時期を後ろ倒しにできれば立て替え期間が短くなります。
こうした改善を一度きりで終わらせず、資金繰り表で毎月の入出金を見える化すれば、必要運転資金の変化や資金ショートの兆候を早い段階で捉えられます。資金繰り表の作り方と、資金ショートを防ぐ具体的な進め方は次の記事で解説しています。
不足分を外部から調達する
改善だけでは間に合わない不足額は、融資などで調達します。主な手段は次のとおりで、金額・スピード・コストに応じて使い分けます。
- 日本政策金融公庫の融資:政府系金融機関による融資で、創業期にも利用しやすい制度があります。
- 銀行・信用金庫の融資:信用保証協会の保証付き融資を含め、運転資金の中心的な調達先です。
- ビジネスローン:審査が比較的早く、短期のつなぎ資金に向きますが金利は高めです。
- 手形割引・ファクタリング:受取手形や売掛金を期日前に資金化する方法で、回収までのつなぎに使えます。
ここに挙げた融資やファクタリング以外にも、出資・補助金・資産売却など資金の集め方は幅広くあります。それぞれの向き・不向きや申込先を一覧で比べて、自社に合う手段を選びたい方は次の記事が参考になります。
たとえば日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方や事業開始からおおむね7年以内の方が対象で、設備資金・運転資金に利用できます。融資限度額は7,200万円、返済期間は運転資金で10年以内(うち据置期間5年以内)とされています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫(制度ページ)
このうちファクタリングは、計算の対象にした売上債権(売掛金・受取手形)そのものを期日前に資金化し、回収を待たずに運転資金へ充てる手段です。手数料や入金スピード、対応できる業者は会社ごとに差が大きいため、比較して選びたい方は次の記事が参考になります。
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運転資金の計算・資金繰り管理を効率化するサービス
必要運転資金の計算は一度きりではなく、売上や取引条件の変化に合わせて毎月見直すことで、資金ショートを事前に察知できます。決算書の数字から運転資金や資金繰りを継続的に把握するには、クラウドの財務管理サービスが役立ちます。ここでは、資金繰りや将来の資金の動きを見通す機能を備えたサービスを紹介します。
| サービス名 | Tenbook(テンブック) | Scale Cloud(スケールクラウド) |
|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド会計ソフト+記帳・決算・申告の代行 | クラウド(SaaS)型の経営管理 |
| 資金繰り・キャッシュフロー関連機能 | 月次レポート・キャッシュフロー・債権債務をリアルタイムに把握 資金繰り表の作成に対応 | PL・BS・CFをKPIと連動してシミュレーション 複数パターンの予算作成・着地見込みの更新 |
| 初期費用 | 0円 | 要問い合わせ(インタビューで50万円との言及あり) |
| 月額費用 | 29,500円〜(免税事業者) 43,500円〜(課税事業者) | 15万円〜 |
| 対象企業規模 | 創業期〜中小企業(売上5億円以下が主な対象) | 経営企画・管理部門を持つ企業(導入事例は従業員100〜3,000人規模) |
| 導入時の支援 | 専門チーム(原則3名体制)が記帳〜決算・申告を代行 | KPI設計のコンサルティング・導入後の定期ミーティングで伴走 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
1. Tenbook(テンブック)(シンアカウンティングサービス株式会社)

Tenbookは、公認会計士が代表を務めるシンアカウンティングサービスが、自社開発のクラウド会計ソフト「10book」を基盤に、記帳代行から決算・法人税申告までをオンラインで一貫サポートする会計サービスです。創業期から売上5億円程度までの中小企業を主な対象としています。
運転資金の管理という観点では、10bookが月次レポートやキャッシュフロー、債権債務の状況をリアルタイムに把握できる点が特徴です。資金繰り表の作成機能も備えており、売掛金・在庫・買掛金の動きを数字で追いながら、専門チームのサポートを受けて月次で資金の状態を確認できます。料金は初期費用0円、月額29,500円から(免税事業者の場合)で、決算料は不要とされています。
同サービスを提供するシンアカウンティングサービスは、2012年の設立以来、創業期の企業を中心に多くの会社の経理に携わってきました。インタビューでは、管理業務を後回しにした企業で起こりやすい事態を次のように挙げています。
また、経営者の方が事業に専念するあまり管理業務が後回しになると、会社の規模が大きくなったタイミングで資金繰りが急に苦しくなったり業績が悪化したり、管理体制が追いつかずに立ち行かなくなることもあり得ます。だからこそ、早い段階で経理の土台を整える価値は大きいと思っています。
2. Scale Cloud(スケールクラウド)(株式会社Scale Cloud)

公認会計士である代表のコンサルティング経験を背景に生まれたScale Cloudは、財務数値(損益計算書=PL、貸借対照表=BS、キャッシュフロー計算書=CF)と事業のKPIを関連づけて一元管理する経営管理クラウドです。予算の達成度と再現性を高めることを狙いとしています。
運転資金の見通しという点では、各KPIの数値をもとにPL・BS・CFをシミュレーションでき、複数パターンでの予算作成や着地見込み(フォーキャスト)の更新がしやすい点が強みです。売上の増減に応じて必要運転資金や資金繰りがどう動くかを試算したい場面で活用できます。
料金は月額15万円からで、導入時にはKPI設計の支援も受けられます。事業が拡大し、経営企画や管理部門で予算・KPIを本格的に管理する段階に入った企業に向くサービスです。
ここで紹介した2サービスのほかにも、財務管理システムは資金繰りの見える化やキャッシュフロー予測など備える機能も価格帯もさまざまです。自社に合うものを機能・料金・タイプ別の選び方から比べたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
運転資金は、在高方式(売上債権+棚卸資産−仕入債務)で今の必要額を手早く求め、回転期間方式で売上規模に応じた効率や将来の必要額を見通すのが基本です。計算した金額は業種別の水準と比べて過不足を判断し、不足していれば資金繰りの改善と調達で備えます。
とりわけ売上が伸びる局面では増加運転資金への備えが欠かせません。必要運転資金の計算を毎月の資金繰り把握と結びつければ、資金ショートを未然に防ぎやすくなります。自社の決算書を手元に、まずは在高方式で必要運転資金を計算してみてください。
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運転資金の計算に関するよくある質問(FAQ)
Q. 運転資金回転期間とは何ですか?
A. 運転資金回転期間とは、必要運転資金(売上債権+棚卸資産−仕入債務)が平均月商の何か月分にあたるかを示す指標です。
「運転資金 ÷ 平均月商」で求め、この数値が大きいほど売上規模に対して多くの資金を立て替えていることを意味します。業種の水準や自社の過去の数値と比べることで、資金効率や必要額の過不足を判断する目安になります。
Q. 運転資金の計算式には、決算書のどの数字を入れればよいですか?
A. 在高方式では、貸借対照表(B/S)から売掛金・受取手形(売上債権)、商品や仕掛品などの棚卸資産、買掛金・支払手形(仕入債務)を拾い、「売上債権+棚卸資産−仕入債務」に当てはめます。
売上債権と棚卸資産は資産の部(流動資産)、仕入債務は負債の部(流動負債)にあります。手形取引がある場合は、受取手形・支払手形も忘れずに合算してください。
Q. 運転資金の計算で棚卸資産に含めるものは何ですか?
A. 運転資金の計算では、棚卸資産に販売前の商品・製品だけでなく、製造途中の仕掛品や原材料などの在庫全般を含めます。
在庫として資金が寝ている状態をもれなく反映するためです。製造業のように仕掛品・原材料を多く抱える業種では棚卸資産が大きくなり、必要運転資金も膨らみやすくなります。
Q. 在高方式と回転期間方式は、どちらを使って計算すればよいですか?
A. まず在高方式で今の必要額を手早くつかみ、売上の増減を見込んだ試算や資金効率の確認をしたいときに回転期間方式を使うのが実務的な順序です。
在高方式は決算書の残高をそのまま使うため現状把握に向き、回転期間方式は平均月商に回転期間を掛けるため、売上が伸びたときの必要額の試算や同業との効率比較に向きます。どちらも同じ運転資金を求めるものなので、目的に応じて使い分けます。
Q. 運転資金の計算結果がマイナスになるのは問題ですか?
A. 運転資金の計算結果がマイナスでも必ずしも問題ではなく、むしろ自己資金を立て替えずに事業を回せている効率的な状態を示すことがあります。
「売上債権+棚卸資産−仕入債務」で仕入債務が売上債権と在庫の合計を上回ると、計算上はマイナスになります。これは仕入代金を支払う前に売上の回収が済んでいることを意味し、現金商売に近い業種や仕入先への支払いサイトが長い業種で起こりやすい傾向です。
Q. 運転資金は月商の何か月分あればよいですか?
A. 運転資金に一律の基準はなく、必要額は業種によって月商の0.3か月分程度から2か月分超まで幅があります。
「月商の3か月分」といった目安も語られますが、これは経験則で公的統計が示す数値ではありません。本記事の試算では、在庫と売上債権の大きい製造業が約2.2か月分と大きく、現金回収中心の宿泊・飲食サービス業は約0.3か月分と小さいなど差が大きいため、自社の業種・取引条件に即して判断するのが実態に合います。
Q. 増加運転資金はどのように計算しますか?
A. 増加運転資金は、売上が拡大する前後それぞれの必要運転資金を計算し、その差額として求めます。
たとえば運転資金回転期間が0.6か月の会社で平均月商が1,000万円から1,500万円へ増えると、必要運転資金は600万円から900万円になり、差額の300万円が増加運転資金です。売上増の局面では回収より仕入れ・人件費の支払いが先行するため、この分をあらかじめ備えておく必要があります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















