会社の売却や事業承継を考え始めたとき、相談先の候補として挙がるM&A仲介会社は数多く、「上場している会社なら安心して任せられるのではないか」を一つの目安にしたい経営者は少なくありません。上場企業は取引所の基準を満たし、業績や経営体制を継続的に開示しているため、初めての相手でも状況を確かめやすいからです。
ただ、実際にどのM&A仲介会社が上場しているのか、上場している各社は事業モデルや報酬体系がどう違うのかを、一覧で把握するのは簡単ではありません。上場している会社にはどのような選択肢があり、「上場している」という属性は相談先選びでどこまで信頼の目安になるのでしょうか。
本記事では、上場しているM&A仲介会社の主要各社を、上場市場・設立/上場年・売上規模・成約実績・報酬体系で比較します。上場企業に依頼するメリットと留意点、M&A仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いや利益相反の構造、自社に合う相談先の選び方まで整理しました。上場の有無だけで判断せず、自社に合う相談先を見極めるための材料としてご活用ください。
また、自社の規模や業種、希望する報酬体系に合う相談先を最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」もご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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上場しているM&A仲介会社とは|上場が信頼・実績の目安になる理由
M&A仲介会社が「上場している」とは、その会社の株式が証券取引所の市場で売買されている状態を指します。上場するには取引所が定める時価総額・流動性・ガバナンスなどの基準を満たす必要があり、上場後も決算や重要事項を継続的に開示する義務を負います。相談先を探す経営者にとって、この継続的な情報開示は、業績や経営体制を外部から確認できる材料になります。
ただし、「上場している」と一口に言っても、どの市場に上場しているかによって基準や位置づけは異なります。東京証券取引所は2022年4月にそれまでの市場区分を再編し、現在はプライム・スタンダード・グロースの3市場を設けています。各市場のコンセプトは次のように整理されています。
出典:市場区分見直しの概要|日本取引所グループ
- プライム市場:多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場
- スタンダード市場:公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場
- グロース市場:高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場
M&A仲介会社の上場先はこの3市場にとどまりません。プロ投資家向けの市場である東京証券取引所のTOKYO PRO Marketは、「株主数・流通株式・利益の額などの形式基準(数値基準)がなく、柔軟なガバナンス設計による上場も可能」とされ、一般の市場とは審査の性質が異なります。
また名古屋証券取引所にもプレミア・メインなどの独自の市場区分があり、名証に上場している仲介会社もあります。したがって「上場している=どの会社も一律に同じ厳しい基準をクリアしている」わけではなく、どの市場に上場しているかまで含めて見ることが、上場を信頼の目安にする際のポイントになります。
上場している主要各社の顔ぶれをすぐ一覧で確認したい場合は、上場M&A仲介会社の一覧比較表へお進みください。市場区分だけでは自社に合う相談先を絞り込みにくいため、次の診断ツールでは、自社の規模・業種・希望する報酬体系から条件に合う相談先の候補を確認できます。
【比較表】上場しているM&A仲介会社の一覧比較
ここからは、上場しているM&A仲介会社の主要各社に、非上場の相談先も加えて、上場市場・設立/上場年・直近の売上高・成約実績・事業モデル・報酬体系を横並びで比較します。
| サービス名 | 日本M&Aセンター | M&Aキャピタルパートナーズ | ストライク | M&A総合研究所 | ブティックス | オンデック | 名南M&A | ジャパンM&Aソリューション | インテグループ | セレンディップ・ホールディングス | M&A Lead | Web3特化M&A(Consensus Base) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 上場市場(証券コード) | 東証プライム (2127) | 東証プライム (6080) | 東証プライム (6196) | 東証プライム (親会社:クオンツ総研HD 9552) | 東証グロース (9272) | 東証グロース (7360) | 名証メイン市場 (7076) | 東証グロース (9236) | 東証グロース (192A) | 東証グロース (7318) | 非上場 | 非上場 |
| 上場年/設立年 | 2006年上場 1991年設立 | 2005年設立 (2014年 東証一部へ) | 2016年上場 1997年創業 | 2022年上場 2018年設立 | 2018年上場 2006年設立 | 2020年上場 2007年設立 | 2019年上場 2014年設立 | 2023年上場 2019年設立 | 2024年上場 2007年設立 | 2021年上場 2006年設立 | 非上場 2022年設立 | 非上場 2015年設立 |
| 直近売上高 | 502.57億円 (2026年3月期・連結) | 224.48億円 (2025年9月期・連結) | 203.14億円 (2025年9月期・単体) | 166.0億円 (親会社9552・2025年9月期連結) | 22.59億円 (2026年3月期・M&A仲介事業) | 8.64億円 (2025年11月期) | 14.87億円 (2025年9月期・連結) | 6.54億円 (2025年10月期) | 15.58億円 (2026年5月期) | 非公表 (連結はグループ製造業が中心) | 非公表 | 非公表 |
| 成約実績 | 累計11,000件以上 | 累計1,000組以上 | 累計3,700件以上 | 234件 (2025年9月期・仲介事業) | 累計2,198件 (2026年6月末時点) | 非公表 | 非公表 | 69組 (2025年10月期) | 累計300組以上 (2026年5月期49組) | 4社をグループ化 (2025年3月期) | 非公表 | 非公表 |
| 事業モデル | 仲介(譲渡・譲受の双方を仲介) | 仲介(専任担当が一貫対応) | 仲介(自社M&Aプラットフォーム「SMART」運営) | 仲介(AIマッチング活用) | 仲介(介護・医療など7分野に特化) | 仲介・FA双方に対応(一気通貫型) | 仲介(中部圏地盤・業種特化) | 仲介(案件を選別せず幅広く対応) | 仲介(小型案件特化・直接提案型) | 自ら買収する持株会社型 (ハンズオン事業承継。純粋な仲介ではない) | 売主専門アドバイザリー(片手取引) | Web3特化アドバイザリー(技術DD対応) |
| 報酬体系 | 着手金あり+成功報酬(レーマン方式) 売り手は最低2,000万円 | 着手金・月額無料+成功報酬(レーマン方式) 中間報酬あり | 着手金無料+成功報酬(オーナー受取額レーマン) 最低2,000万円 | 完全成功報酬制(売り手は着手金・中間金なし) | 着手金・中間金無料の完全成功報酬制 成約基本料100万円+レーマン方式 | 着手時費用あり+成功報酬(レーマン方式) 基本合意報酬は最低100万円 | 着手金あり+成功報酬(レーマン方式) 最低1,100万円 | 着手金無料・売り手は月額10万円 成功報酬(レーマン方式、最低500万円) | 着手金・中間金なしの完全成功報酬制 最低1,500万円 | 要問い合わせ(料率非公開) | 着手金・中間金なしの完全成功報酬制 レーマン方式(譲渡対価の1〜5%) | 要問い合わせ(料金非公開) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※各社の公式情報・IR資料をもとに作成(2026年8月時点)。業績・成約実績は各社の直近の開示に基づき、年度・集計基準(累計/単年度、件数/組数など)は各社で異なります。
※売上高は、M&A仲介事業を単独区分として開示していない社は会社全体(連結/単体)の直近通期の値を記載しています。各項目の「非公表」は各社が個別に開示していないことを示し、各社の業績は各社IR(決算短信・有価証券報告書)で確認できます。報酬体系・料率は変更される場合があるため、最新の条件は各社にご確認ください。
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上場M&A仲介会社の主要各社と有力な相談先
ここからは、比較表で取り上げた各社を、事業モデルと対応範囲の近いものごとに3つのグループに分けて紹介します。自社が「どのタイプの相談先を求めているか」を意識しながら読むと、候補を絞り込みやすくなります。
全業種対応の総合大手(一気通貫型)
売り手と買い手の双方を1社で仲介し、全国・幅広い業種を対象とするタイプです。成約実績や提携金融機関・会計事務所のネットワークが大きく、相手先の候補が豊富で、初めてのM&Aでも標準化された進め方で任せやすいのが特徴です。
多くが東証プライム市場に上場しており、業績や成約件数を継続的に開示しています。一方で対応件数が多いぶん、担当者の経験や案件への関与度に幅が出ることもあり、自社の規模・業種を得意とする担当かどうかは個別に確認したい点です。
1. 日本M&Aセンター(株式会社日本M&Aセンターホールディングス)

日本M&Aセンターは、1991年の創業以来、中堅・中小企業の事業承継M&Aを手がけてきた東証プライム上場企業です(証券コード2127)。2006年に中堅・中小企業のM&A仲介専門会社として業界で初めて東証マザーズに上場し、2022年4月の市場再編でプライム市場へ移行しました。2026年3月期の連結売上高は502億円です。
全国の地方銀行94行・信用金庫223庫や会計事務所との提携ネットワークを情報源に、23業種・全国を対象として案件を扱います。累計成約件数は公式サイトで11,000件超とされています。料金は譲渡側で着手金100万〜500万円に加えレーマン方式の成功報酬(最低2,000万円)で、売り手・買い手の双方から手数料を受け取る仲介モデルを採っています。
2. M&Aキャピタルパートナーズ(M&Aキャピタルパートナーズ株式会社)

着手金・月額報酬をいずれも無料とし、基本合意までは費用がかからない料金体系を打ち出しているのが、M&Aキャピタルパートナーズです。2005年設立の東証プライム上場企業で(証券コード6080)、中小企業オーナーの事業承継・会社売却を主戦場としています。
報酬は中間報酬(手数料総額の約10%)と成功報酬(残り約90%)で構成し、株式譲渡対価を基準とする株価レーマン方式で、売り手・買い手で同一の体系としています。最低手数料は公式の料金ページに記載がないため、資料請求や問い合わせで確認が必要です。マッチングからクロージングまでを専任アドバイザー1人が一貫して担当する体制をとり、累計成約は1,000組以上と公式に記載しています(集計時点の明記はなし)。
3. ストライク(株式会社ストライクグループ)

公認会計士の荒井邦彦氏が1997年に創業したのがストライクです。東証プライム上場(証券コード6196)で、2026年4月に持株会社体制へ移行し、事業会社の株式会社ストライクが仲介事業を担っています。社内に公認会計士・税理士などの有資格者が在籍することを公式に掲げています。
1998年に開設した国内初のM&A仲介プラットフォーム「SMART」を自社で運営しています。料金は着手金無料で、基本合意報酬(資産総額に応じ100万〜300万円)と成功報酬(最低2,000万円)を設定。成功報酬は、負債を含む移動総資産ではなくオーナーの受取額を基準に算定する「オーナー受取額レーマン方式」を採用していると説明しています。創業以来3,700件以上の成約を公式サイトに記載しています。
4. M&A総合研究所(株式会社M&A総合研究所)

M&A総合研究所は上場のかたちが他社と異なります。2018年設立で、2022年6月に東証グロース市場へ上場しましたが、現在は持株会社体制のもと事業会社の株式会社M&A総合研究所自体は非上場で、親会社の株式会社クオンツ総研ホールディングス(証券コード9552)が東証プライムに上場しています。対象は売上規模およそ1億〜100億円の中堅・中小企業です。
独自のAIマッチングシステムを活用し、平均成約期間7.2ヶ月・最短43日を公式サイトで掲げています。譲渡企業は着手金・中間金・月額報酬すべて無料の完全成功報酬制、譲受企業は着手金無料で中間金が発生します。成功報酬は譲渡代金を基準とするレーマン方式ですが、具体的な料率区分や最低手数料は公式サイトで公開されておらず、無料相談を通じた個別提示となります。
特定領域・独自の強みを持つ上場各社
特定の業種や地域に特化していたり、完全成功報酬制などの報酬面で独自色を打ち出していたりする上場各社です。事業承継の実行支援まで踏み込む会社や、譲渡側の負担を抑えた料金体系を掲げる会社もあります。
自社の業種・地域・重視する条件がはっきりしている場合は、総合大手より適した相談先が見つかることがあります。会社によって事業モデル(仲介中心か、アドバイザリーやハンズオン支援か)が異なるため、後述の「仲介とFAの違い」も踏まえて確認してください。
5. ブティックス(M&A支援センター)(ブティックス株式会社)

介護分野の商談型展示会「CareTEX」などを主催するブティックス株式会社が、業界内で培ったネットワークを土台に運営するM&A仲介サービスです。2015年の介護分野を皮切りに、医療・障害福祉・保育・建設・IT・調剤の7分野へ業種特化の専門サイトを広げてきました。運営会社は東京証券取引所グロース市場に上場しています(証券コード9272)。
譲渡企業向けは着手金・中間金が無料の完全成功報酬制で、成約時に成約基本料100万円とレーマン方式の成功報酬(取引対価2,000万円以下の部分は10%、以降は段階的に低下)がかかります。譲受企業向けの手数料は個別見積りとされており、詳細は要問い合わせです。
M&A仲介事業セグメントの成約組数は2026年3月期で219組でした。介護・福祉領域を起点とした業種特化が事業モデルの中心にあり、対象とする業種がこの7分野に重なる企業にとっては候補になりやすいでしょう。
6. オンデック(株式会社オンデック)

大阪に本社を置く独立系のM&A仲介会社が株式会社オンデックです。2020年12月に東証マザーズ(市場区分再編を経て現在は東証グロース市場、証券コード7360)へ上場しました。案件の組成からクロージングまでを一貫して担うプロジェクトマネジメント型の支援を掲げ、譲渡側・譲受側の双方に対応する仲介に加え、FA形式のメニューも用意しています。
料金は、譲渡企業が資料作成料30万円と、成功報酬の10%(最低100万円)にあたる基本合意報酬、レーマン方式の成功報酬という構成です。譲受企業には申し込み手数料10万円・意向表明報酬10万円などが別途かかります。成功報酬の最低額は公式サイトに明示がなく、要問い合わせです。
7. 名南M&A(名南M&A株式会社)

名古屋のJPタワー名古屋に本社を構え、名古屋・東京・大阪・静岡・高松の5拠点で中部圏を中心に事業承継・M&Aを支援する仲介会社です。2014年設立で、名古屋証券取引所メイン市場に上場しています(証券コード7076)。税理士法人などが集まる名南コンサルティングネットワークに加盟し、専門家との連携を強みに掲げています。
事業はM&A支援に加え、TOKYO PRO Marketへの上場をJ-Adviserとして支援するIPO支援、ベンチャーファンド運営の3本柱で構成されます(TOKYO PRO Marketは自社の上場先ではなく、他社の上場を支援する対象市場です)。医療・製造業・クロスボーダーの各領域で業種別の専門ページを設けている点も特徴です。
譲渡企業向けの料金は、簿価総資産に応じた着手金66万〜220万円と、レーマン方式の成功報酬(5億円以下の部分5.5%〜、いずれも税込)です。成功報酬の最低額は1,100万円で、譲受企業向けにも情報提供料66万〜220万円と同一のレーマン方式が適用されます。
8. ジャパンM&Aソリューション(ジャパンM&Aソリューション株式会社)

「相談されたら断らない」を掲げ、純資産や利益の規模を理由に案件を選別しない方針を公式に示すM&A仲介会社です。小規模企業・赤字企業から、会社分割を伴うスキーム案件まで幅広く対応するとしています。2019年設立、2023年10月に東証グロース市場へ上場しました(証券コード9236)。
着手金は無料ですが、売り手には仲介契約の締結後に月額報酬10万円(税込)が発生します。成功報酬はレーマン方式で、売り手の最低成約報酬は500万円(税別)、買い手は最低1,000万円です。中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録し、中小M&Aガイドライン(第3版)の遵守を公式に宣言しています。
9. インテグループ(インテグループ株式会社)

2007年設立、2024年6月に東証グロース市場へ上場したM&A仲介会社です(証券コード192A)。売上規模3億円未満の企業を含む小規模案件を主な対象とし、提携先からの紹介に頼らず自社で売り手・買い手を開拓する直接提案型の営業スタイルを採ります。
売り手・買い手とも着手金・中間金が不要で、成功報酬のみを受け取る完全成功報酬制です。最低成功報酬は1,500万円(税別)で、負債を含まない売買金額を基準とする株価レーマン方式(5億円以下の部分5%〜100億円超1%)で算定します。会社設立以来の累計成約組数は300組以上で、2026年5月期は売上高15.58億円・成約組数49組でした(前期の2025年5月期は18.92億円)。
10. セレンディップ・ホールディングス(セレンディップ・ホールディングス株式会社)

中堅・中小の製造業を主な対象に、後継者不在の企業を自らのグループ傘下へ迎え入れる事業承継モデルを取る持株会社です。2006年設立、2021年に東証マザーズ(現・東証グロース市場、証券コード7318)へ上場しました。本社は名古屋に置いています。
売り手と買い手をマッチングして成約時に手数料を得る仲介専業ではなく、買収後もプロ経営者の派遣やPMI(買収後の統合)の実行支援を通じて経営に継続的に関与する点が事業モデルの特徴です。第三者へのM&A(株式譲渡)のほか、従業員承継や段階的承継、グループによる承継なども選択肢として提示しています。
報酬体系・料率は公式サイトに明示がなく、要問い合わせです。M&A・経営支援は同社グループの一事業であり、開示される連結業績には製造子会社の収益が含まれます。実績を読む際は切り分けて捉えるとよいでしょう。
上場に依存しない特化・専任の相談先(FA/アドバイザリー)
上場の有無は信頼の一つの目安ですが、それだけで相談先の実力が決まるわけではありません。売り手側のみを専任で支援するFA(アドバイザリー)や、特定領域に特化した非上場の会社の中にも、利益相反が生じにくい立ち位置や専門性を備えた相談先があります。上場各社と同じ土俵で比較できるよう、代表的なサービスを紹介します。
11. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Lead株式会社が運営する、譲渡企業(売り手)だけを専任で支援するM&Aアドバイザリーです。売り手・買い手の双方から手数料を受け取る一般的な仲介とは異なり、報酬は売り手からのみ受領し、買い手からは受け取りません。譲渡価格や雇用・契約条件など売り手に有利な条件の追求に専念しやすく、利益相反が生じにくい立場を掲げています。
報酬は完全成功報酬制で、着手金・中間金・月額報酬はいずれも0円、譲渡が成立した場合にのみレーマン方式(譲渡対価の1〜5%)の成功報酬が発生します。相談は無料で全国対応・オンライン相談にも応じ、自社に加え他社の仲介会社や独立系アドバイザーとも連携する買い手ネットワークを通じて候補を探索します。事業承継から上場企業の子会社譲渡まで、幅広い規模・背景の成約事例が公開されています。
12. Web3業界特化M&Aアドバイザリー(コンセンサス・ベイス株式会社)

Web3・ブロックチェーン業界に特化したM&Aアドバイザリーで、コンセンサス・ベイス株式会社が2023年に開始したサービスです。
GameFiやNFT、DeFi、ウォレット開発、Layer1/Layer2プロジェクトなど、専門知識を要する領域の案件を対象としています。同社が主力とするブロックチェーン受託開発で培った技術理解を、M&Aの技術デューデリジェンス(技術DD)や事業評価に活かせる点を特徴としています。
支援範囲は、買収・売却・提携候補の探索からLOI/MOUの締結支援、DDのマネジメント、契約交渉、PMI(統合後の実務)までを一気通貫でカバーします。M&A局面では、スマートコントラクトを技術的な観点で評価するアセスメントや、トークンの取扱いに関する法務面の整理といったWeb3特有の論点にも対応するとしています。料金は着手金・成功報酬とも公開されておらず、構想段階から無料で相談できます。
上場企業に依頼するメリットと留意点
上場しているM&A仲介会社に依頼することには、明確なメリットがある一方で、上場しているからこそ見落としがちな留意点もあります。両面を同じ土俵で押さえておくと、「上場=安心」を鵜呑みにせずに判断できます。
上場企業に依頼するメリット(信頼性・情報開示・ネットワーク)
第一に、経営の透明性です。上場企業は取引所の基準を満たしたうえで、決算や重要事項を継続的に開示する義務を負います。相談先の業績や財務状況、成約実績を外部から確認でき、相手先として信頼できるかを判断しやすくなります。
第二に、規模から来る安定性とネットワークです。上場して調達した資金をもとに人員や拠点、提携先を広げている会社が多く、買い手候補の母集団が大きくなりやすい傾向があります。事業承継のように相手探しに時間がかかる案件では、この母集団の広さが選択肢の多さにつながります。
第三に、進め方の標準化です。多数の案件を扱う中で手続きやサポート体制が整えられており、初めてM&Aに臨む経営者でも、企業価値評価から相手探し、条件交渉、契約までの流れを任せやすくなります。
依頼前に押さえたい留意点(報酬水準・利益相反・上場=最適とは限らない)
留意点の一つ目は報酬水準です。上場している大手であっても報酬体系は各社で異なり、着手金や中間金がかかる場合もあれば、完全成功報酬制を採る会社もあります。規模や知名度と手数料の割安さは必ずしも一致しないため、後述の報酬体系の観点で複数社を比べることが大切です。
二つ目は、M&A仲介という業態に構造的に伴う利益相反です。仲介は売り手・買い手の双方と契約し、双方から報酬を受け取るのが通常で、この点について中小企業庁のガイドラインは次のように指摘しています。
仲介者が一方当事者(特に、リピーターになり得る譲り受け側)の利益を優先して取引をまとめるように動く動機があるという構造的な利益相反のリスクが指摘されている
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
ただし、同じガイドラインは、こうしたリスクがあっても「仲介者という業態を中小M&Aにおいて不適切であると断ずることは現実的ではない」とし、仲介契約書で禁止行為を定めるなどの対応策でリスクを最小化すべきものと位置づけています。
利益相反は仲介という形態に内在する構造であって、上場の有無や会社の善し悪しの問題ではありません。依頼する側としては、担当者が双方の利益をどう扱うか、利益相反への配慮がどう仕組み化されているかを確認することが現実的な対応になります。
三つ目は、上場が万能の保証ではない点です。前述のとおりTOKYO PRO Marketのように形式的な数値基準を設けない市場もあり、上場していれば一律に同じ財務基準を満たしているわけではありません。自社の業種・規模への理解や担当者の力量は、上場の有無だけでは測れません。上場を出発点の目安としつつ、次章以降の観点で中身を確かめることが、後悔しない相談先選びにつながります。
M&A仲介とFA(アドバイザリー)の違いと利益相反
相談先を比べるうえで、その会社が「仲介」なのか「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」なのかは、利益相反の観点で大きな違いになります。両者は中小企業庁のガイドラインで次のように定義されています。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
- 仲介者とは、譲り渡し側・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する
- FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する
仲介は売り手・買い手の双方と契約し、双方から報酬を受け取るのが通常です(いわゆる「両手」)。売り手と買い手の間に立って中立的に成約を目指すため、相手探しから条件のすり合わせまでを一括で進めやすい反面、前章で触れた構造的な利益相反のリスクが伴います。
一方FAは、売り手か買い手のどちらか一方とだけ契約し、その依頼者の利益を専任で追求します(いわゆる「片手」)。売り手側だけを支援するFA(セルサイドFA)であれば、買い手から報酬を受け取らないため、譲渡価額をできるだけ高くするという依頼者の利益と、FAの利益の方向が一致しやすく、利益相反が生じにくいのが特徴です。その代わり、相手方は自分で、あるいは別の相手方支援者を通じて探す必要があります。

上場している大手M&A会社の多くは仲介を中心にしています。仲介とFAのどちらが優れているという話ではなく、双方から報酬を受け取る立場か、自社側だけに立つ立場かという構造の違いを理解したうえで、自社が重視するもの(相手探しの一括支援か、利益相反の生じにくさか)に照らして選ぶことが大切です。
上場だけで選ばない:M&A相談先の選び方
上場は信頼を測る出発点にはなりますが、それだけで自社に最適な相談先が決まるわけではありません。ここでは、報酬体系・得意な業種や規模・利益相反への配慮という3つの観点から、自社の条件に当てはめて選ぶ方法を整理します。
報酬体系で選ぶ(着手金の有無・完全成功報酬・レーマン方式)
M&Aの報酬は、支払うタイミングによって着手金・月額報酬・中間金・成功報酬に分かれます。中小企業庁のガイドラインは、これらを全て請求する会社がある一方で、「着手金・月額報酬・中間金を請求せずに成功報酬のみ請求する(いわゆる完全成功報酬型の)仲介者・FA」もいると整理しています。
成約するまで費用がかからない完全成功報酬型は、途中で破談になった場合の負担を抑えられる一方、成功報酬の料率や最低手数料が高めに設定されていることもあるため、総額で比べる必要があります。

成功報酬の算定には、譲渡価額などに応じて料率が変わる「レーマン方式」が広く使われています。ガイドラインは一般的な一例として次の料率を示しています。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
- 5億円以下の部分=5%
- 5億円超10億円以下の部分=4%
- 10億円超50億円以下の部分=3%
- 50億円超100億円以下の部分=2%
- 100億円超の部分=1%
ただしガイドラインは、この料率は「あくまで一例であり、各階層における価額・割合は各仲介者・FAにより異なる」と明記しています。さらに、料率を掛ける「基準となる価額」を譲渡額とするか、移動総資産額(負債を含む)とするか、純資産額とするかで、報酬額は変わります。別途最低手数料が設定されている場合もあります。料率の数字だけでなく、何を基準に計算するか・最低手数料はいくらかまで含めて確認しましょう。
得意な業種・企業規模で選ぶ
M&A会社には、全業種・全国を幅広く扱う総合型と、特定の業種や地域、一定の企業規模に強みを持つ特化型があります。自社が属する業種の成約実績が豊富な会社であれば、買い手候補の心当たりや業界特有の論点への理解が期待でき、交渉が進みやすくなります。
反対に、自社の譲渡規模が各社の主な対応レンジから外れていると、優先度が下がったり、報酬の最低手数料が相対的に重くなったりすることがあります。相談時に、自社と同業種・同規模の成約事例があるかを具体的に尋ねると、得意領域を見極めやすくなります。
利益相反への配慮で選ぶ
前章の仲介とFAの違いを、自社の相談先選びに当てはめて考えます。仲介に依頼する場合は、双方から報酬を受け取る構造を踏まえ、担当者が売り手の利益にどう向き合うか、利益相反への配慮が仕組みとして示されているかを確認しましょう。売り手として譲渡価額を最大化したい意向が強いなら、売り手専任のFAを候補に入れる選択もあります。
相談先が信頼できるかを客観的に確かめる手がかりとして、国のM&A支援機関登録制度も活用できます。これは中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤づくりのために創設された制度で、ガイドラインの遵守を宣言した仲介者・FAが登録を受けられます。登録された支援機関はデータベースで検索でき、手数料体系も開示されるため、相談先選びの公的な物差しになります。
出典・参考資料(1件)
上場の有無にとらわれず、M&Aや財務の相談先をより広く見比べたい場合は、次の記事が参考になります。事業承継・M&Aから資金調達・事業再生まで、金融コンサル会社を専門領域別に整理し、費用相場や失敗しない選び方まで比較しているため、本記事の上場各社と合わせて候補を広げる材料になります。
金融コンサル会社徹底比較|専門領域別おすすめ19選と選び方【費用相場も解説】
資金繰りや財務戦略、事業承継やM&Aといった経営の重要局面では、社内の知見だけで最適解にたどり着くのが難しい場面が少なくありません。「専門家に相談したいが、どの金融コンサルに頼めばよいのか分からない」と迷う方も多いでしょう。 金融コ…
まとめ
上場しているM&A仲介会社は、継続的な情報開示や規模から来るネットワークといった強みを持ち、相談先の信頼性を測る出発点になります。一方で、報酬体系は各社で異なり、仲介という業態には構造的な利益相反があり、上場していれば一律に同じ基準を満たしているわけでもありません。
上場という属性を入口にしつつ、上場市場・成約実績・報酬体系・得意な業種や規模、そして仲介かFAかという立ち位置まで比べることで、自社に本当に合う相談先が見えてきます。
本記事の比較表と選定診断ツールを使えば、上場各社と非上場の相談先を同じ条件で見比べ、自社の規模・業種・希望する報酬体系に合う候補を絞り込めます。気になった相談先は、公式サイトやIR資料、資料請求できるサービスならその資料で具体的な条件を確認し、必要に応じて無料相談を申し込むことから始めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 上場しているM&A仲介会社とは何ですか?
A. 上場しているM&A仲介会社とは、その会社(またはグループの持株会社)の株式が証券取引所の市場で売買されており、業績や経営体制を継続的に開示しているM&A仲介会社です。
上場するには取引所が定める時価総額・流動性・ガバナンスなどの基準を満たす必要があり、上場後も決算などの開示義務を負うため、相談先を探す経営者は各社の業績や成約実績を外部から確認しやすくなります。ただし東証プライム・グロース、名古屋証券取引所、TOKYO PRO Market など、どの市場に上場しているかによって基準や位置づけは異なります。
Q. どのM&A仲介会社が上場していますか?
A. 東証プライムには日本M&Aセンター・M&Aキャピタルパートナーズ・ストライク・M&A総合研究所(親会社のクオンツ総研ホールディングス)が、東証グロースにはオンデック・ブティックス・ジャパンM&Aソリューション・インテグループ・セレンディップ・ホールディングスが、名古屋証券取引所メイン市場には名南M&Aが上場しています。
本記事の比較表で、各社の上場市場・設立/上場年・売上規模・成約実績・報酬体系を横並びで確認できます。
Q. M&A仲介会社のランキングや実績は、どう見て比較すればよいですか?
A. M&A仲介会社は、売上高や成約件数の多さでランキングを鵜呑みにするのではなく、自社の業種・規模に合った実績があるかどうかで見るのが適切です。成約件数の多い大手は買い手候補の母集団が大きくなりやすい強みがありますが、集計する年度や基準(組数か件数か、譲渡側基準か)は各社で異なり、単純な大小比較は実態を映しません。
相談時に、自社と同業種・同規模の成約事例があるか、得意領域が自社と重なるかを具体的に尋ねると、数字の裏にある実力を見極めやすくなります。
Q. 上場しているM&A仲介会社に依頼すれば安心ですか?
A. 上場は信頼性を測る出発点になりますが、上場していれば必ず自社に最適な相談先とは限りません。上場企業は継続的な情報開示や規模から来る買い手ネットワークという強みを持つ一方、報酬体系は各社で異なり、仲介という業態には後述の構造的な利益相反があり、TOKYO PRO Market のように形式的な数値基準を設けない上場市場もあります。
「上場=安心」と鵜呑みにせず、上場を入口にしつつ、成約実績・得意な業種や規模・報酬体系・仲介かFAかという立ち位置まで確認することが後悔しない相談先選びにつながります。
Q. 上場企業と非上場のM&A仲介会社では、どちらがよいですか?
A. 上場・非上場のどちらが優れているとは一概に言えず、自社の業種・規模や重視する条件に照らして選ぶのが適切です。上場企業は情報開示の透明性と買い手候補の母集団の広さが強みですが、非上場にも、売り手だけを専任で支援するFA(アドバイザリー)や特定業種に特化した会社など、利益相反が生じにくい立場や専門性を備えた相談先があります。
上場の有無という属性だけでなく、自社の条件に合うかどうかで中身を比べることが大切です。
Q. M&A仲介とFA(アドバイザリー)は何が違いますか?
A. M&A仲介とFAは、仲介が売り手・買い手の双方と契約して双方から報酬を受け取る「両手」であるのに対し、FA(フィナンシャル・アドバイザー)は売り手か買い手の一方とだけ契約する「片手」である点が最大の違いです。仲介は相手探しから条件のすり合わせまでを一括で進めやすい反面、双方の間に立つ構造ゆえに利益相反のリスクが伴います。
一方、売り手専任のFAは買い手から報酬を受け取らないため依頼者の利益を追求しやすい代わりに、相手方は自分で、あるいは別の支援者を通じて探す必要があります。上場している大手の多くは仲介を中心にしています。
出典・参考資料(1件)
Q. M&Aの手数料(レーマン方式・完全成功報酬)はどのくらいかかりますか?
A. M&A仲介の手数料は、成約時の成功報酬を、譲渡価額などに応じて料率が変わる「レーマン方式」で計算するのが一般的です。中小企業庁のガイドラインは、5億円以下の部分5%〜100億円超の部分1%という料率を一例として示しています。ただしこれはあくまで一例で各社により異なり、料率を掛ける基準額を譲渡額とするか移動総資産額(負債を含む)とするかで金額が変わります。
最低手数料(2,000万円前後の設定も見られます)や、着手金・中間金の有無まで含めて総額で比べる必要があります。着手金・月額報酬・中間金を取らず成功報酬のみを請求する「完全成功報酬型」の会社もあります。
出典・参考資料(1件)
Q. 上場していないM&A仲介会社でも、信頼できる相談先を見分けるにはどうすればよいですか?
A. 国のM&A支援機関登録制度に登録されているかを確認するのが、上場の有無によらない客観的な手がかりになります。この制度は、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤づくりのために創設されたもので、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した仲介者・FAが登録を受けられます。
登録された支援機関はデータベースで検索でき、手数料体系も開示されるため、相談先選びの公的な物差しになります。あわせて、自社と同業種・同規模の成約実績があるか、利益相反への配慮が仕組みとして示されているかを相談時に確認するとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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