会社を売ろうと考え始めたものの、そもそも「こういう話は誰に切り出せばいいのか」が分からない。付き合いのある銀行でいいのか、顧問税理士に言えばいいのか、それとも専門の会社や公的な窓口があるのか。相談相手の見当がつかないまま、最初の一歩で止まっている経営者は少なくありません。
会社売却の相談先は、大きく分けて7種類あります。それぞれ何をしてくれて、費用はいくらかかり、どんな弱点があるのかが分かれば、自社に合う相手を絞り込めます。特に「M&A仲介の利益相反」や「仲介とFAの違い」は、相談先を1社に決める前に知っておきたい論点です。
この記事では、相談先7種類を役割・費用・注意点で横に並べて比較し、状況別にどこへ相談すればよいか、費用はどのくらいか、いつ相談を始めるべきかまでを整理します。相談先を1〜2つに絞り、無料相談という次の一歩に進むところまでを見ていきます。
目次
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会社売却の相談先は主に7種類|役割・費用・注意点の一覧比較
会社売却を相談できる相手は、M&A仲介会社・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)・銀行などの金融機関・税理士や公認会計士・弁護士といった士業・事業承継・引継ぎ支援センター・商工会議所・M&Aマッチングサイトの7種類に整理できます。まずは、それぞれの役割・向いている人・費用の目安・注意点を一覧で見比べられます。
| 比較項目 | M&A仲介会社 | FA(ファイナンシャル・アドバイザー) | 銀行・金融機関 | 税理士・公認会計士・弁護士 | 事業承継・引継ぎ支援センター | 商工会議所・商工会 | M&Aマッチングサイト |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 主な役割(何をしてくれる) | 売り手・買い手の双方と契約し、 相手探しから成約までを支援 | 売り手か買い手の一方と契約し、 依頼者の利益のために支援 | 取引ネットワークでの相手紹介・ 資金面の助言 | 税務・会計・法務の専門的な 助言(顧問なら自社の実態も把握) | 国が設置する公的相談窓口。 幅広い相談に対応・専門家へ橋渡し | 地域の経営相談。専門家や 公的窓口への取次ぎ | 売り手と買い手をオンラインで 直接マッチング |
| 向いている人 | 幅広い中小企業。相手探しから 成約まで任せたい | 自社(売り手)の利益を 優先して交渉したい | 取引銀行との関係が深い | 顧問がいて、まず身近に 相談したい | まず無料で情報収集したい | 地域で身近に相談したい | 自分のペースで相手を探したい |
| 費用の目安 | 成功報酬(レーマン方式)。 完全成功報酬型もある | 着手金+成功報酬、または 完全成功報酬 | 紹介手数料など | 顧問料+個別報酬 (初回無料の事務所もある) | 相談は無料 (依頼先の登録機関は有料) | 相談は無料が中心 | 売り手は無料〜低コストが多い |
| 主な注意点 | 双方と契約する構造上の 利益相反に留意 | 扱う案件規模・買い手候補数は 会社により幅がある | 融資取引と絡む立場になる ことがある | M&A実務や相手探しの 対応可否は事務所差が大きい | 実際の仲介・FA業務は 別途紹介・依頼になる | M&A専門機関への取次ぎが 中心で、実務は別の相手が担う | 交渉・手続きを自分で進める 部分が大きい |
※各相談先の役割・費用は中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」および各窓口の公式情報に基づく一般的な整理です。費用は目安で、実際の料金は相談先ごとに異なります。
この一覧のうち、事業承継・引継ぎ支援センターは相談が無料の公的窓口で、まず情報収集から始めたい場合の入り口になります。実際に成約まで任せる相手としては、双方と契約するM&A仲介会社と、売り手か買い手の一方につくFAが中心です。両者の違いと、多くの経営者が気にする利益相反については、後の章で詳しく見ていきます。
出典・参考資料(2件)
そもそも会社売却は誰かに相談すべき?相談できること
相談先を選ぶ前に、「そもそも専門家に相談する必要があるのか」「自分で買い手を探せないのか」と迷う方もいます。会社売却は、適正な価格の見極め・買い手探し・交渉・契約や税務の手続きが絡み、一人で完結させるのは簡単ではありません。相談先には、こうした工程のどこを・誰に頼むかを整理する役割があります。
相談で持ちかけられる内容は幅広く、たとえば「自社はいくらで売れそうか」という価格の目線、株式譲渡か事業譲渡かといった進め方、従業員や取引先に知られないための情報管理、成約までの流れなどが含まれます。「まだ売ると決めたわけではない」段階でも相談は可能です。公的窓口である事業承継・引継ぎ支援センターについて、中小企業庁の資料は次のように説明しています。
中小 M&A のみならず、親族内承継や従業員承継、廃業等に対する相談を幅広く受け付けており、相談時点において意思決定ができていないものについても対応している。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
相談したからといって、必ず売却しなければならないわけではありません。多くの相談先は初回相談を無料で受け付けており、その場で契約を求められることは通常ありません。まずは複数の相手に話を聞き、費用や対応、相性を比べたうえで、依頼する相手を選ぶのが基本の進め方です。
会社売却の相談先ごとの役割・メリット・注意点
ここからは、比較表で挙げた7種類の相談先を1つずつ、役割・得意なこと・弱点・向いている人の順に見ていきます。それぞれの立ち位置が分かると、自社の状況でどこに相談すべきかを判断しやすくなります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、売り手と買い手の双方と契約し、相手探しから成約までを一貫して支援する相手です。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、仲介者を次のように定義しています。
仲介者とは、譲り渡し側・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部の M&A 専門業者がこれに該当する(業務範囲は個別の支援機関ごとに異なる。)。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
買い手候補との接点が多く、成約までのスピードが出やすいのが強みです。中小企業のM&Aでは、この仲介という形態が多く使われています。一方で、売り手・買い手の双方から依頼を受ける立場ゆえの利益相反には注意が必要で、この点は仲介とFAの違いの章で詳しく扱います。相手探しから成約まで幅広く任せたい中小企業に向いています。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、売り手か買い手の一方だけと契約し、その依頼者の利益のために支援する相手です。同ガイドラインは、FAを次のように定義しています。
FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部の M&A 専門業者がこれに該当する(業務範囲は個別の支援機関ごとに異なる。)。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
売り手側のFAであれば、売り手の利益(譲渡価格・雇用条件・契約条件など)を優先して交渉に臨めるのが特徴です。双方から手数料を受け取る仲介と違い、依頼者一方の味方になる立場のため、利益相反が生じにくいという整理になります。売却価格や条件を最大限に引き出したい売り手に向いています。
出典・参考資料(1件)
銀行・金融機関
取引のある銀行や信用金庫などの金融機関も、相談先の1つです。日頃から自社の財務状況を把握しており、取引ネットワークを通じて買い手候補を紹介してもらえることがあります。資金調達を含めて相談したい場合や、取引銀行との関係が深い場合に選択肢になります。
銀行に相談すると、融資と絡んで不利になりませんか?
金融機関は融資を通じた継続的な取引関係があるため、その立場が売却の交渉にどう影響するかは、あらかじめ意識しておきたい点です。売り手の利益よりも、自行の貸出金の回収や取引先としての関係維持を優先する動機が働く場面も考えられます。これは双方から手数料を受け取る仲介の利益相反とは別筋の、金融機関ならではの偏りといえます。
相談自体を避ける必要はありませんが、金融機関はどの立場で関与するのか(相手紹介にとどまるのか、助言まで行うのか)を確認し、条件の妥当性は別の相談先の意見と照らし合わせて判断すると安全です。
税理士・公認会計士・弁護士
税理士・公認会計士・弁護士といった士業は、同じ専門家でも守備範囲が異なります。税理士は税務や税務上の株価評価、公認会計士は会計・財務の実態把握や企業価値評価(買い手が行う財務デューデリジェンスへの対応も含む)、弁護士は契約書のチェックや法務リスクの整理を主に担います。
なかでも顧問税理士は、決算書の中身や株価、社長個人の資産状況まで把握しているため、税負担の試算や企業価値の見立てを早く出せる立場にあり、まず身近な相手に相談したい場合の入り口になります。
顧問税理士にM&Aの相談をしてもいいのでしょうか?
顧問税理士は、最初に相談する相手として適した候補の1つです。自社の内情を把握しているため、まず一報を入れて企業価値や税負担の見立てを聞き、そのうえで専門機関につないでもらう、という最初の一歩に向いています。
ただし、買い手を探して交渉をまとめるといったM&A実務まで対応できるかは事務所によって差があるため、支援実績や対応範囲を事前に確認し、相手探しや交渉が必要なら仲介会社・FAと役割を分けて進めるのが現実的です。
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置する公的な相談窓口です。中小企業庁の資料は、その位置づけと設置状況を次のように説明しています。
事業承継・引継ぎ支援センターとは、中小 M&A 及び従業員承継(…)や親族内承継を含む中小企業の事業承継に関する相談に幅広く対応する国が設置する公的相談窓口であり…事業承継・引継ぎ支援センターは、令和6年8月現在、全国47都道府県48か所(東京都のみ、千代田区と立川市の2か所)に設置されている。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
相談は無料で、公的な立場から中立的に対応してもらえます。まず費用をかけずに情報収集したい経営者にとって、最初の入り口として適しています。ただし、実際に買い手を探して成約まで進める段階では、センターから登録機関である仲介会社・FAを紹介され、そちらへの依頼は有料になります(費用の切れ目は費用の章で整理します)。
出典・参考資料(2件)
商工会議所・商工会
商工会議所・商工会は、地域の中小企業の経営相談を幅広く受け付けており、その一環として事業承継やM&Aの相談にも対応します。地域に密着しているため身近に相談しやすい一方、専門的な支援は事業承継・引継ぎ支援センターやM&A専門機関へ橋渡しする形が中心です。地元でまず相談先の当たりをつけたい場合の窓口になります。
M&Aマッチングサイト
M&Aマッチングサイトは、売り手と買い手をオンライン上で直接引き合わせるプラットフォームです。売り手は登録・利用を無料または低コストにしているものが多く(成約時に手数料がかかるサイトもあります)、自分のペースで買い手候補を探せるのが特徴です。
小規模な会社売却や、まず登録して相手が現れるか見てみたい場合に向いています。ただし、交渉や手続きを自分で進める部分が大きいため、必要に応じて専門家の助言を組み合わせると安心です。
M&A仲介とFAの違いと、両手仲介の利益相反
相談先を選ぶうえで多くの経営者がつまずくのが、「仲介とFAはどちらに頼むべきか」「双方から手数料を取る仲介は、自分に不利にならないか」という2つの問いです。この2つは地続きの論点なので、まず立場と報酬の違いを整理し、そこから生じる利益相反を見ていきます。両者の違いは「誰と契約するか」に集約されます。

M&A仲介とFAの違い(立場・報酬の取り方)
両者の一番の違いは「誰の味方か」です。前章で見たとおり、仲介者は売り手・買い手の双方と契約し、FAは一方とだけ契約します。実務では、双方から手数料を受け取る仲介を「両手」、一方からだけ受け取るFAを「片手」と呼ぶこともあります。この呼び方は、中小企業庁の資料でいう仲介者(双方との契約)とFA(一方との契約)に対応します。
報酬の取り方にも違いが表れます。仲介は双方から手数料を受け取り、成約を早くまとめることに向きやすい一方、FAは依頼者一方のためだけに動くため、価格や条件の交渉で妥協しにくくなります。買い手候補との接点の多さでは仲介が、依頼者の利益を優先する交渉ではFAが、それぞれ強みを持ちます。「早く・確実にまとめたい」なら仲介、「売り手として条件を最大限引き出したい」ならFAが選択肢になります。
両手仲介の利益相反|売り手が知っておくべき構造
双方と契約する仲介では、構造的な利益相反のリスクが指摘されています。買い手は今後もM&Aを繰り返す可能性がある一方、売り手は多くの場合1回限りです。中小M&Aガイドラインは、この非対称な関係から生じる動機を、次のように説明しています。
そのような状況において、仲介者が一方当事者(特に、リピーターになり得る譲り受け側)の利益を優先して取引をまとめるように動く動機があるという構造的な利益相反のリスクが指摘されている
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
ここで大切なのは、利益相反があるからといって仲介が悪いわけではない、という点です。同じガイドラインは、続けて次のようにバランスを取っています。
なお、利益相反が直ちに違法となるものではない。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
実際、中小企業のM&AではFAよりも仲介という形態のほうが多く使われており、ガイドラインも仲介という業態を不適切と断じてはいません。ポイントは、利益相反という構造を理解したうえで、対応がとられているかを確認して使うことです。ガイドラインは、仲介者が最低限講じるべき措置として、次の説明・開示を求めています。
譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と仲介契約を締結する仲介者であるということ(特に、仲介契約において、両当事者から手数料を受領することが定められている場合には、その旨)を、両当事者に伝える。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
仲介に相談する際は「双方から手数料を受け取る立場であること」の説明があるか、利益が対立しうる事項について開示があるかを確認するとよい、ということです。どうしても利益相反の構造そのものを避けたい場合は、売り手だけの味方につく売り手側のFAに依頼するという選択肢もあります。
出典・参考資料(1件)
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会社売却の相談にかかる費用(無料・着手金・成功報酬)
「相談にいくらかかるのか」も、相手を選ぶ前に押さえておきたい点です。費用は「相談の段階」と「依頼して業務を進める段階」で分けて考えると分かりやすくなります。
無料で相談できる範囲
公的窓口である事業承継・引継ぎ支援センターへの相談は無料です。中小企業庁の資料も、次のように費用の切れ目を明示しています。
事業承継・引継ぎ支援センターへの相談は無料であるが、登録機関等に依頼する場合は有料である。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
民間のM&A仲介会社・FAでも、初回の相談や企業価値の簡易査定を無料で受け付けているところが多くあります。まず情報収集する段階であれば、費用をかけずに複数の相手に話を聞けます。
依頼した場合の手数料(着手金・成功報酬)
実際に仲介会社・FAへ依頼して業務を進めると、手数料が発生します。中小M&Aガイドラインは、料金体系について次のように整理しています。
料金体系として、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の形式が多く見られる…ただし、仲介者・FA の手数料には一般的な法規制がなく、どのような料金体系を採用するかは、あくまで各仲介者・FA による点については留意が必要である(着手金・月額報酬・中間金を設けず、成功報酬のみを設ける仲介者・FA も相当数あるとされる。)。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
着手金・月額報酬・中間金を設けず、成約したときの成功報酬だけを受け取る「完全成功報酬型」の会社も相当数あります。相談初期の費用負担を抑えたい場合は、この料金体系かどうかが1つの目安になります。
成功報酬の目安|レーマン方式とは
成約時の成功報酬は、レーマン方式と呼ばれる計算方法で算定されることが多くあります。譲渡金額などの基準額を階層に分け、階層ごとに定めた割合を掛けて合算する方式です。中小M&Aガイドラインは、一例として次の料率を示しています。
| 比較項目 | 5億円以下の部分 | 5億円超 10億円以下の部分 | 10億円超 50億円以下の部分 | 50億円超 100億円以下の部分 | 100億円超の部分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 乗じる割合(一例) | 5% | 4% | 3% | 2% | 1% |
※中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」が示すレーマン方式の一例。原文は「あくまで一例であり、各階層における価額・割合は各仲介者・FA により異なる」と明記しています。
この表はあくまで目安で、実際の割合や最低報酬額は相談先ごとに異なります。ガイドライン自身も「あくまで一例であり、各階層における価額・割合は各仲介者・FA により異なる」と注記しています。相談先を選ぶ際は、成功報酬の料率だけでなく、着手金の有無や最低報酬額まで含めて確認すると、総額の見当がつけやすくなります。
試しに上の一例を当てはめると、成功報酬は譲渡額5,000万円で約250万円、1億円で約500万円(いずれも5億円以下の部分に5%を掛けた金額)が目安になります。ただし、最低報酬額を設けている会社では、小規模な譲渡ほど試算額より最低報酬額のほうが高くなることもあります。
相談先ごとの手数料を比べたいときは、国の「M&A支援機関登録制度」の登録データベースが役立ちます。登録した仲介会社・FAの報酬率や報酬の発生タイミングを、依頼する前に確認できます。
出典・参考資料(2件)
【状況別】あなたに合う相談先の選び方
相談先の役割と費用が分かったら、自社の状況に当てはめて絞り込めます。ここでは、よくある5つの状況ごとに、どの相談先から検討するとよいかを整理します。いずれの場合も、最初から1社に決めず、複数の無料相談で比べるのが前提です。
後継者がいない中小企業の場合
後継者不在による事業承継が目的なら、まずは無料の事業承継・引継ぎ支援センター1か所に相談するところから始めるのが動きやすい進め方です。特に従業員が数名規模の小さな会社なら、公的窓口で状況を整理してから、事業承継に強い仲介会社やマッチングサイトへ広げると、費用を抑えつつ選択肢を絞れます。
できるだけ高く売りたい場合
譲渡価格や条件を最大限に引き出したい場合は、売り手側につくFAが有力です。依頼者一方の利益のために交渉するため、価格面で妥協しにくいのが理由です。仲介を選ぶ場合も、双方から手数料を取る立場であることを理解したうえで、条件の妥当性を別の相手にも確認しておくと安心です。
同業者や大手企業への譲渡を検討している場合
売却したい相手の業界や規模がある程度見えている場合は、その業種・規模の成約実績が豊富な仲介会社やFAが向いています。相談時に、同業種・同規模の案件を扱った経験があるかを確認すると、買い手候補へのアプローチ力を見極めやすくなります。取引先や同業の紹介を期待するなら、取引金融機関も選択肢に入ります。
赤字・債務超過など譲渡の難易度が高い場合
赤字や債務超過を抱えるなど、譲渡の難易度が高い場合は、難しい案件の実績がある専門機関に相談するのが近道です。まずは無料の公的窓口で状況を整理し、そのうえで対応可能な仲介会社・FAを紹介してもらう流れが取りやすくなります。財務や事業再生の観点が必要になることもあるため、士業やコンサルティング会社の関与も検討します。
急いで相談したい場合
体調や事業環境の事情で急ぐ場合は、買い手候補との接点が多くスピードが出やすい仲介会社や、案件がすぐ見られるマッチングサイトから動くのが現実的です。ただし、急ぐあまり1社だけの提案で決めると条件を比べられません。短期間でも、複数社に無料相談・簡易査定を出して見比べる時間は確保しておきたいところです。
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相談を始める前に押さえておくこと(タイミング・準備・秘密保持)
相談先の当たりがついたら、無料相談に踏み出す前に、いつ動き始めるか・何を準備するか・どう情報を守るかを確認しておくと、話がスムーズに進みます。
相談のタイミングと準備しておくもの
会社売却の相談は、「まだ早い」と感じるくらいの段階から始めるのが理想です。買い手探しから成約までには半年から1年以上かかることも珍しくなく、許認可の引き継ぎや従業員の同意取得にも時間を要します。中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」も、早期の取り組みを次のように促しています。
平均引退年齢が 70 歳前後であることを踏まえると…概ね 60 歳頃には事業承継に向けた準備に着手することが望ましい。既に 60 歳を超えている場合には速やかに身近な支援機関に相談すべきであり、特に 70 歳を超えている場合にはすぐにでも事業承継に向けた準備に着手すべきである。
出典:事業承継ガイドライン(第3版)|中小企業庁
相談前に手元を整理しておくと、初回から具体的な話ができます。決算書(直近3期分程度)や事業の概要、そして「従業員の雇用を守りたい」「いくら以上で売りたい」といった譲れない条件をまとめておくと、相談先も適切な提案をしやすくなります。完璧に準備する必要はなく、まずは相談してみることが大切です。
出典・参考資料(1件)
相談時の注意点と秘密保持(守秘義務・NDA・テール条項)
会社を売る検討をしていること自体が従業員や取引先に漏れると、事業に影響します。相談段階でも情報管理は重要で、中小M&Aガイドラインは、相談先の選び方について次のように述べています。
相談先を法令上又は契約上の秘密保持義務がある者や事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関に限定したりする等、情報管理に配慮する必要がある。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
守秘義務を負う士業や登録機関、公的窓口に相談先を絞り、必要に応じて秘密保持契約(NDA)を結ぶことで、情報漏れのリスクを下げられます。社内でも、話す相手は最小限にとどめるのが基本です。
依頼を検討する段階では、契約条項の確認も欠かせません。特に注意したいのが「テール条項」です。ガイドラインは、次のように説明しています。
マッチング支援等において、M&A が成立しないまま、仲介契約・FA 契約が終了した後、一定期間(いわゆる「テール期間」)内に、譲り渡し側が M&A を行った場合に、その契約は終了しているにもかかわらず、その仲介者・FA が手数料を請求できることとする条項(いわゆる「テール条項」)が定められる場合がある。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
ガイドラインは、テール期間の目安を最長でも2年から3年以内とし、対象となるM&Aはその仲介者・FAが関与・接触した相手に限定されるべきだとしています。契約前には、テール期間の長さと対象範囲、そして他社に重ねて依頼できるかを縛る「専任条項」の有無を確認しておくと、複数の相談先を比べる自由を保てます。
ガイドラインは、専任条項を設ける場合の契約期間についても、最長で6か月から1年以内を目安とすべきだとしています。
出典・参考資料(1件)
売り手側に立つFA・M&Aアドバイザリーに無料で相談する
双方と契約する仲介の利益相反を避けたい売り手にとって、売り手だけの味方につくFAは有力な選択肢で、相手探しの段階から売り手の利益を優先して伴走してもらえます。ここでは、その具体例として、売主専門でM&Aを支援するサービスを1つ紹介します。特定の1社を勧めるものではなく、複数の相談先を無料相談で比べて選ぶのが前提です。
M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadは、M&A Lead株式会社が運営する、売り手(売主)専門のM&Aアドバイザリーです。売り手と買い手の双方から手数料を受け取る仲介と異なり、売り手だけの利益のために支援する立場を明確にしている点が特徴です。事業承継や子会社の譲渡を考えるオーナー経営者が、売り手の側に立って相談から成約まで伴走してもらえる相手として位置づけられます。
料金体系は、着手金・中間金が0円の完全成功報酬制で、成功報酬はレーマン方式(料率1〜5%)を採用しています。相談は無料で、オンラインや電話にも対応し、自社ネットワークを通じて全国の案件に対応するとしています。検討の初期段階から費用をかけずに相談したい売り手にとって、動き出しやすい選択肢の1つです。
売り手側のFAに限らず、M&Aアドバイザリー・FAは、得意な業種や対応できる企業規模、費用の考え方が会社ごとに異なります。相談先を具体的な会社レベルで比較検討したい場合は、専門領域や料金体系を並べて確認できる次の記事も参考になります。
金融コンサル会社徹底比較|専門領域別おすすめ19選と選び方【費用相場も解説】
資金繰りや財務戦略、事業承継やM&Aといった経営の重要局面では、社内の知見だけで最適解にたどり着くのが難しい場面が少なくありません。「専門家に相談したいが、どの金融コンサルに頼めばよいのか分からない」と迷う方も多いでしょう。 金融コ…
まとめ|相談先を絞り込み、無料相談から始める
会社売却の相談先は7種類あり、それぞれ役割・費用・注意点が異なります。要点を振り返ります。
- 相談先の全体像: M&A仲介・FA・銀行・士業・事業承継・引継ぎ支援センター・商工会議所・マッチングサイトの7種類。まず無料で情報収集するなら、公的窓口やマッチングサイトが入り口になります
- 仲介とFA・利益相反: 仲介は双方と、FAは一方と契約します。仲介には構造的な利益相反のリスクがありますが、直ちに違法ではなく、開示・説明があるかを確認して使うのが基本です。利益相反を避けたいなら売り手側のFAという選択肢があります
- 費用: 公的窓口の相談は無料、依頼すると有料です。成功報酬はレーマン方式が一般的ですが料率は各社で異なるため、着手金の有無や最低報酬額まで確認します
- 進め方: 相談は「まだ早い」と思うくらい早めに。決算書や譲れない条件を整理し、テール条項・専任条項を確認したうえで、複数社に無料相談して比べます
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よくある質問(FAQ)
Q. 会社売却の相談をしたら、必ず売却・契約しなければなりませんか?
A. 会社売却の相談は、その後の売却や契約を義務づけるものではありません。多くの相談先は初回相談を無料で受け付けており、その場で契約を求められることは通常ありません。公的窓口である事業承継・引継ぎ支援センターも、まだ売ると決めていない段階の相談に対応しています。まずは複数の相手に話を聞き、費用や提案、相性を比べたうえで、依頼するかどうかを判断すれば問題ありません。
Q. 会社売却の相談は無料でできますか?どこから費用がかかりますか?
A. 相談だけなら無料でできる相手が多く、費用がかかるのは実際に依頼して業務を進める段階からです。公的窓口の事業承継・引継ぎ支援センターは相談が無料で、民間のM&A仲介会社・FAも初回相談や簡易査定を無料としているところが多くあります。一方、成約に向けた支援を依頼すると手数料が発生します。着手金・中間金を設けず成約時の成功報酬だけを受け取る「完全成功報酬型」を選べば、初期の費用負担を抑えられます。
出典・参考資料(1件)
Q. 会社売却の相談先は1社に絞るべきですか?複数に相談してもよいですか?
A. 初期段階では、1社に絞らず複数の相談先に話を聞いて比べるのがおすすめです。相談先ごとに得意な業種・費用・提案内容が異なるため、複数を比較して初めて自社に合う相手が見えてきます。
ただし、依頼契約を結ぶ際は、他社に重ねて頼めなくする「専任条項」の有無に注意が必要です。中小M&Aガイドラインは、専任条項を設ける場合の契約期間を最長でも6か月〜1年以内を目安とすべきだとしています。無料相談の段階で複数を比べ、依頼は納得できる1社に絞る、という順序が現実的です。
Q. 信頼できる相談先(M&Aアドバイザー)を見分けるポイントは何ですか?
A. 同業種・同規模の支援実績、手数料体系の明確さ、契約条項を透明に説明してくれるか、の3点が見極めの軸になります。あわせて、国の「M&A支援機関登録制度」に登録しているかも判断材料になります。
この制度はガイドラインの遵守を宣言した仲介者・FAが登録するもので、登録データベースでは各社の手数料の算定基準(報酬率・最低手数料・報酬の発生タイミング)を事前に確認できます。相談前にこうした情報を照らし合わせると、相手選びの失敗を避けやすくなります。
出典・参考資料(2件)
Q. 株式譲渡と事業譲渡のどちらで進めるべきかも、相談先で教えてもらえますか?
A. M&A仲介会社やFAに相談すれば、自社の状況に応じて株式譲渡・事業譲渡などの進め方(スキーム)を提案してもらえます。どちらの方法を選ぶかは、税負担や引き継げる資産・契約の範囲、許認可の扱いに大きく影響します。税務・法務の両面から検討が必要になるため、仲介会社・FAの提案に加えて、税理士や弁護士など複数の専門家の意見を聞いて決めると安心です。
Q. 会社を売ることを従業員や取引先に知られずに相談できますか?
A. 相談先を守秘義務のある相手や公的機関に限定すれば、周囲に知られずに相談を進められます。中小M&Aガイドラインも、情報管理のために相談先を法令上・契約上の秘密保持義務がある者や事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関に限定するよう促しています。必要に応じて秘密保持契約(NDA)を結び、社内で情報を共有する相手を最小限にとどめることで、情報漏れのリスクを下げられます。
出典・参考資料(1件)
Q. すでに1社に相談していますが、別の相談先にセカンドオピニオンを聞いてもいいですか?
A. 依頼契約を結ぶ前であれば、別の相談先にセカンドオピニオンを求めても問題ありません。提案内容や査定額、手数料が妥当かを他の相手にも確認することで、条件を比べて納得したうえで依頼先を選べます。
ただし、セカンドオピニオンを求める際も情報管理には配慮し、守秘義務を負う相手に相談内容を伝えるようにします。専任条項付きの契約を結んだ後は他社への相談が制限される場合があるため、比較は契約前の段階で済ませておくのがポイントです。
Q. 会社売却の相談から成約までは、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 買い手探しから成約までには、半年から1年以上かかることも珍しくありません。買い手候補の探索・交渉に加え、許認可の引き継ぎや従業員の同意取得にも時間を要するためです。準備期間が短いと交渉で不利になりやすいため、「まだ早い」と感じる段階から相談を始めておくと、余裕をもって相手や条件を比較できます。相談自体は無料で始められるので、早めに動き出すことが結果的に有利に働きます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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