経費の立替精算で受け取ったのがレシートだけだったとき、「領収書をもらい直さないと経費で落とせないのでは」と手が止まる場面は少なくありません。取引先との会食や備品の購入で、わざわざレジに戻って領収書を発行してもらった経験がある方も多いはずです。
結論からいえば、税法上はレシートも領収書も同じ「金銭の受取書」として扱われ、レシートでも経費精算は問題なくできます。両者の実質的な違いは「宛名(会社名・氏名)が記載されるかどうか」で、宛名のないレシートでも経費として認められる場面がほとんどです。
本記事では、領収書・レシート・領収証の違いを比較表で整理します。あわせて、宛名がなくても経費にできる根拠、会社があえて領収書を求める理由、インボイス制度での扱い、収入印紙や感熱紙の保存といった実務の注意点まで解説します。読み終えるころには、手元のレシートで精算してよいのか、どんなときに領収書をもらい直すべきかを、自分で判断できるようになります。
目次
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【結論】レシートでも経費精算できる|領収書との違いは「宛名」
まず結論から示します。税法上、レシートと領収書は同じ「金銭の受取書」として扱われ、レシートでも経費精算はできます。国税庁も、印紙税の課税対象を説明するなかで「領収証」や「レシート」を「領収書」と並べて受取書に含めています。
受取書とはその受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書をいいます。したがって、「受取書」、「領収証」、「レシート」、「預り書」はもちろんのこと、受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」、「了」などと記入したものや、お買上票などでその作成の目的が金銭または有価証券の受取事実を証明するものであるときは、金銭または有価証券の受取書に該当します。
出典:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁タックスアンサー
このように、書類の名前が「領収書」でも「レシート」でも、金銭を受け取った事実を証明するものであれば税法上の位置づけは同じです。経費として認められるかどうかは書類の呼び名で決まるわけではなく、「いつ・どこで・何に・いくら使ったか」が確認できるかどうかで決まります。
税法にも「領収書でなければ経費にできない」という決まりはありません。消費税のインボイス制度でも、証憑となる書類を「請求書、納品書その他これらに類する書類」と定め(消費税法第57条の4)、「領収書」という言葉を特別に区別してはいません。発行者・日付・取引内容・金額といった必要な事項が記載されていれば、レシートでも経費の証憑として問題なく使えます。
出典・参考資料(2件)
- 出典:消費税法 第57条の4(適格請求書発行事業者の義務)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108)
- 出典:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁タックスアンサー(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm)
むしろレシートは、購入した品目が一つずつ印字されるため、「何を買ったか」が領収書よりも明確に残ります。両者の実質的な違いは、会社名や氏名といった宛名が記載されるかどうかという一点にほぼ集約されます。次の章から、その違いと使い分けを具体的に見ていきます。
領収書・領収証・レシートの違いを比較表で解説
ここからは、領収書・領収証・レシートの違いを整理します。3つの言葉は日常的に混同されがちですが、「領収書」と「領収証」は同じもので、実際に性質が異なるのは「領収書(領収証)」と「レシート」の2つです。まずは主な違いを表で確認します。
| 比較項目 | 領収書(領収証) | レシート |
|---|---|---|
| 宛名(会社名・氏名) | 記載されるのが一般的(依頼して記入してもらう) | 記載されない(レジで自動発行) |
| 但し書き・記載内容 | 「お品代」など包括的になりやすく、手書きは書き方に幅が出る | 日時・店舗・品目・金額が一点ずつ自動印字される |
| 発行のされ方 | 会計後に依頼し、手書きや専用用紙で発行 | 会計時にレジから自動で発行 |
| 改ざんのしにくさ | 手書きは記載に幅があり書き換えの余地が残る | 機械印字のため内容を書き換えにくい |
| 長期保存への向き | 感熱紙でない用紙が多く、比較的退色しにくい | 感熱紙は時間の経過で退色するため電子保存が向く |
表のとおり、レシートは宛名と但し書きがない代わりに、購入品目や店舗・日時が自動で細かく残ります。領収書は宛名と但し書きを付けられる一方、記載内容は発行者の書き方に左右されます。どちらが優れているというより、性質が違うと捉えるのが実態に近い理解です。
領収書とは
領収書は、代金を受け取った側が「確かに金銭を受領した」ことを証明するために発行する書類です。宛名(支払った側の会社名・氏名)や但し書き(何の代金か)を記載できるのが特徴で、支払った側の求めに応じて発行されます。取引の当事者を書面に明示できるため、経費の証憑として社内で扱いやすい形式です。
レシートとは
レシートは、レジで会計をした際に自動で発行される受取書です。店舗名・日時・購入した品目・金額・消費税額などが機械的に印字されるため、「何をいくらで買ったか」が具体的に残ります。宛名は入りませんが、取引の中身を細かく記録できる点では領収書に劣りません。多くの店舗ではレジ登録された正確な内容がそのまま印字されるため、内容の裏づけとしてはむしろ確認しやすい書類です。
領収書と領収証は同じもの
「領収書」と「領収証」は、呼び名が違うだけで同じ書類を指します。市販の用紙やテンプレートによって「領収書」と印刷されているものと「領収証」と印刷されているものがありますが、金銭を受け取った事実を証明するという役割に違いはありません。どちらの表記でも、経費精算や税務上の扱いは変わらないため、名称の違いを気にする必要はありません。
宛名がないレシートでも経費精算が認められる理由
ここからは、宛名のないレシートでも問題なく使える根拠を確認します。前提として、支出を経費(損金)に計上できるかどうかは業種を問わず、宛名の有無で変わりません。宛名が特に問われるのは消費税の仕入税額控除で、その要件を定めるのがインボイス制度(適格請求書等保存方式。詳細は後の章で解説します)です。宛名のないレシートが認められる理由も、この制度から説明できます。
インボイス制度では、仕入税額控除の要件となる「適格請求書(インボイス)」に、原則として「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」(宛名)の記載が必要です。ところが、不特定多数の相手に販売する一部の業種については、宛名の記載を省いた「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の交付が認められています。スーパーや飲食店で受け取るレシートは、この簡易インボイスに当たります。
簡易インボイスを交付できる事業は、消費税法施行令で次のように定められています。
第七十条の十一 法第五十七条の四第二項に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業とする。
出典:消費税法施行令 第70条の11|e-Gov法令検索
一 小売業、飲食店業、写真業及び旅行業
二 (略)一般乗用旅客自動車運送事業
三 駐車場業(不特定かつ多数の者に自動車その他の車両の駐車のための場所を提供するものに限る。)
小売業・飲食店業・写真業・旅行業、タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業)、不特定多数向けの駐車場業がこれに当たります。これらの業種では、そもそも一人ひとりの宛名を書くことが現実的でないため、宛名のないレシートでも正式な証憑として扱えます。
日常的な買い物や飲食で受け取るレシートの多くは、これらの業種に含まれます。国税庁も、簡易インボイスでは宛名(交付を受ける事業者の氏名または名称)の記載が不要だと明記しています。
(注1)小売業、飲食店業、タクシー等を営む事業者が交付する書類については、④の適用税率又は⑤の消費税額等は、いずれかの記載で差し支えありません。また、この場合⑥の記載は不要となります。
出典:No.6625 適格請求書等の記載事項|国税庁タックスアンサー
ここでいう「⑥」が宛名(書類の交付を受ける事業者の氏名または名称)です。小売・飲食・タクシーなどのレシートは、宛名がなくても記載要件を満たした正式な証憑として、経費精算にも仕入税額控除にも使えます。宛名のないレシートに不安を感じる必要はありません。
出典・参考資料(3件)
- 出典:消費税法 第57条の4(適格請求書発行事業者の義務)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108)
- 出典:消費税法施行令 第70条の11(適格簡易請求書の交付が認められる事業の範囲)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000360)
- 出典:No.6625 適格請求書等の記載事項|国税庁タックスアンサー(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm)
なぜ会社はレシートより領収書を求めるのか
税法上はレシートでも問題ないのに、社内規程で「領収書をもらってくること」と決めている会社は少なくありません。ここでは、その背景にある会社側の事情を整理します。理由が分かれば、どんな場面で領収書をもらい直すべきかも判断しやすくなります。
会社が領収書を好む主な理由は、経費の管理と不正防止のしやすさにあります。宛名に自社名が入っていれば、その支出が確かに自社の経費であることを書面で示せます。私的な買い物との切り分けや、同じレシートを別の人が二重に精算する不正の抑止という観点で、宛名のある領収書のほうが管理しやすいと考える会社があります。
加えて、但し書きに「会議費として」「消耗品として」と目的を明記できる点も、経理処理のうえで扱いやすい要素です。高額な物品を資産として計上する場合など、支出の内容を明確に残しておきたい取引では、包括的な但し書きを付けられる領収書が選ばれやすくなります。感熱紙のレシートが時間の経過で退色し、保存期間中に読めなくなるリスクを避けたいという実務上の理由もあります。
ただし、これらはいずれも会社の管理方針にもとづくもので、税法が領収書を義務づけているわけではありません。自社の経費規程がレシートを認めているかどうかを確認したうえで、規程に沿って精算するのが基本です。
レシートで足りる場面・領収書をもらい直すべき場面
ここからは、実際の場面ごとに「レシートで足りるか、領収書をもらい直すべきか」を判断できるように整理します。基本はレシートで問題ありませんが、社内規程や取引の性質によって領収書が求められるケースがあります。

レシートで十分な場面(日常の少額経費)
文房具や書籍の購入、打ち合わせ時の飲み物代など、日常的な少額の経費であれば、レシートで十分です。品目や金額が明確に印字されているレシートは、むしろ内容の裏づけがとりやすい証憑です。会社の経費規程でレシート精算が認められているなら、わざわざ領収書に書き換えてもらう必要はありません。
領収書をもらい直すべき場面(社内規程・会食・高額備品)
一方で、次のような場面では領収書をもらっておくと安心です。判断に迷ったら、金額の大きさと社内規程の有無を目安にするとよいでしょう。
- 社内規程で領収書が指定されている:一定金額以上は領収書必須、と定めている会社では規程に従う
- 取引先との会食・接待:会議費・交際費として処理するため、目的や相手を残せる但し書き付きの領収書が望ましい
- 高額な備品・資産計上する物品:支出の内容を明確に記録するため、品名を但し書きに記した領収書が扱いやすい
- レシートが感熱紙で長期保存に不安がある:退色して読めなくなる前に、別紙の領収書を用意しておく(電子保存で対応する方法は後述します)
領収書をもらい直すときは、会計時にレシートを渡して領収書に替えてもらうのが基本です。後日の発行に応じてもらえる場合もありますが、その場でお願いするほうが確実です。このとき、同じ支払いでレシートと領収書の両方を経費にすると二重計上になるため、領収書を受け取ったらレシートは手元に残さないようにしましょう。
「上様」「お品代」でも経費にできるか
領収書をもらう際に「上様」「お品代として」と書かれることがあります。これらでも経費計上は可能ですが、税務調査の場面では支出の内容が説明しにくくなります。宛名は正式な会社名で、但し書きは「会議費」「消耗品費」など具体的な内容で書いてもらうのが安全です。
特にインボイス制度のもとで仕入税額控除を受ける場合、適格請求書には「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」(取引の中身)の記載が求められます。「お品代」のように内容が特定できない記載は、この要件を満たさないおそれがあります。品目が具体的に印字されるレシートのほうが、この点ではむしろ確実です。
領収書もレシートも受け取れない場合(出金伝票)
自動販売機での購入や、慶弔費など、領収書もレシートも受け取れない支出もあります。この場合は「出金伝票」に日付・支払先・金額・内容を自分で記録して証憑の代わりにできます。結婚式のご祝儀であれば招待状、香典であれば会葬礼状などを一緒に保管しておくと、支出の裏づけとして補強できます。ただし出金伝票はあくまで補助的な手段のため、レシートや領収書を受け取れる場面では、そちらを優先します。
ここまでで、レシートと領収書の使い分けの基本を押さえられました。日々の精算をより効率化したい場合は、経費精算システムの資料もあわせて確認できます。
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インボイス制度での領収書・レシートの扱い
ここでは、インボイス制度のもとで領収書・レシートがどう扱われるかを整理します。仕入税額控除を受けられるかどうかに関わるため、記載項目を押さえておくと精算時の判断に迷いません。
領収書=適格請求書/レシート=適格簡易請求書(簡易は宛名不要)
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、原則として「適格請求書(インボイス)」の保存が必要です。宛名を記載した領収書は適格請求書に、宛名を省略できる小売・飲食・タクシーなどのレシートは「適格簡易請求書(簡易インボイス)」に当たります。簡易インボイスは宛名がなくても要件を満たすため、レシートでも仕入税額控除に使えます。
いずれの場合も、書類を発行する事業者が「適格請求書発行事業者」として登録番号を持っていることが前提です。登録番号のない事業者からの領収書・レシートは、原則として仕入税額控除の対象になりません(経過措置は別途あります)。

必須記載項目(登録番号・税率別対価・消費税額 等)
適格請求書(領収書)に必要な記載項目は、国税庁が次の6つと示しています。
- 書類作成者の氏名または名称および登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した税込対価(または税抜対価)の額および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称(宛名)
適格簡易請求書(レシート)では、このうち⑥の宛名が不要になり、④と⑤も「適用税率」か「消費税額等」のいずれかの記載で足ります。登録番号や税率ごとの区分といった中心的な項目は、簡易インボイスでも必要な点は変わりません。
仕入税額控除を受けるための注意点
仕入税額控除を受けるには、受け取った領収書・レシートに登録番号が記載されているかを確認し、原則として保存しておく必要があります。手書きの領収書で登録番号が抜けている、レシートが感熱紙で退色して読めなくなった、といった場合は要件を満たせなくなるおそれがあります。受け取った時点で登録番号の有無を確認し、退色しやすいレシートは早めに電子化しておくと安心です。
登録番号の確認や仕入税額控除の判断そのものは、多くの場合は経理部門が行います。立替精算をする社員は、受け取ったレシートや領収書をなくさず保管して提出すれば十分です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:No.6625 適格請求書等の記載事項|国税庁タックスアンサー(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm)
- 出典:消費税法 第57条の4(適格請求書発行事業者の義務)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108)
経費精算でのレシート・領収書の実務注意点
ここでは、精算を正しく完了させるために押さえておきたい実務上の注意点を3つ取り上げます。二重発行の扱い、収入印紙、感熱紙の保存です。いずれも見落とすと後々のトラブルにつながりやすいポイントです。
二重発行・両取りはNG(二重計上リスク)
1回の支払いに対して、レシートと領収書の両方を受け取って別々に経費計上することはできません。同じ支出を二重に計上すると、経費の水増しとみなされ、税務調査で否認・追徴の対象になるおそれがあります。領収書を発行してもらうときにレシートを返却するよう求められるのは、この二重計上を防ぐためです。
「両取りはNG」を直接禁じた法律の条文があるわけではありませんが、同じ経費を重複して計上すること自体が不正な処理に当たります。1つの支払いにつき証憑は1枚に統一し、レシートと領収書のどちらか一方で精算するのが原則です。
5万円以上の現金領収書は収入印紙が必要(クレジットカード払いは不要)
記載金額が5万円以上の領収書・レシートは、印紙税の課税対象となり、収入印紙の貼付が必要です。国税庁のタックスアンサーでは、売上代金の受取書について次のように定められています。
記載金額 税額
出典:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁タックスアンサー
5万円未満のもの 非課税
5万円以上 100万円以下のもの 200円
収入印紙が必要なのは現金や小切手で受け取った場合で、支払う側ではなく発行する側(お店など)が負担します。経費精算をする立場では、受け取った領収書に印紙が貼られているかを気にする必要は基本的にありませんが、自社が代金を受け取って領収書を発行する側になるときは注意が必要です。
一方、クレジットカードで支払った場合の領収書は、その旨(クレジットカード利用)が記載されていれば、金額が5万円以上でも印紙税はかかりません。信用取引であり、その場で金銭を受け取っていないためです。ただし国税庁は、カード利用の旨を書かないと課税文書に該当すると注意しています。
なお、クレジットカード利用の場合であっても、その旨を「領収書」に記載しないと、第17号の1文書に該当することになります。
出典:クレジット販売の場合の領収書|国税庁 質疑応答事例
印紙を貼るべき領収書に貼らなかった場合、税務調査で指摘されると、本来の印紙税額の3倍の過怠税が課されます(自主的に申し出た場合は1.1倍に軽減されます)。発行側になる場合は、収入印紙の貼り忘れに注意しましょう。
出典・参考資料(3件)
- 出典:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁タックスアンサー(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm)
- 出典:クレジット販売の場合の領収書|国税庁 質疑応答事例(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/37.htm)
- 出典:No.7131 印紙税を納めなかったとき|国税庁タックスアンサー(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7131.htm)
感熱紙のレシートは電子保存で7年保管
レシートの多くは感熱紙に印字されており、時間の経過や熱・光で退色し、数年後には読めなくなることがあります。経費の証憑は、法人は原則7年間、個人事業主も白色申告なら5年間、青色申告や消費税の課税事業者は原則7年間の保存が求められるため、退色は実務上の悩みどころです。
この問題は、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」で解決できます。要件を満たしてスキャナやスマホで読み取り、記録内容が原本と同等であることを確認すれば、紙の原本を廃棄してかまいません。国税庁の一問一答でも、次のように示されています。
令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、以下(※)の場合を除いて、スキャナで読み取り、最低限の同等確認(電磁的記録の記録事項と書面の記載事項とを比較し、同等であることを確認(折れ曲がり等がないかも含みます。)することをいいます。以下同じです。)を行った後であれば、即時に廃棄して差し支えありません。
出典:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】問3|国税庁(令和8年7月)
ここでいう「スキャナ」には、スマートフォンやデジタルカメラも含まれます。受け取ったレシートをその場でスマホ撮影して電子化しておけば、退色を心配せず、原本の紙も処分できます。感熱紙のレシートこそ、早めの電子保存が向いています。
実際にどの経費精算システムが電子帳簿保存法に対応しているかは、JIIMA認証の有無や対応する保存区分で見分けられます。対応状況を比較して選びたい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(令和8年7月)問3・問5|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_03.pdf)
領収書・レシートの管理を効率化する経費精算システム
ここまで見てきたように、レシート・領収書の精算では、宛名や記載項目の確認、感熱紙の電子保存、二重計上のチェック、インボイスの登録番号の確認など、細かな判断が積み重なります。これらを人手で一つずつ確認していくと、経理担当者にも精算する社員にも負担がかかります。こうした確認作業を自動化できるのが経費精算システムです。
自社の経費精算ルール(レシート可/領収書必須の線引き)の決め方
システムの導入を検討する前に、まず「どんな場合にレシートを認め、どんな場合に領収書を求めるか」という社内の線引きを決めておくと、運用がぶれません。本記事で見てきた税法上の扱いをふまえると、判断の軸は次のように整理できます。
- 少額の経費は原則レシートで可:品目が印字されるレシートは内容の裏づけがとりやすく、税法上も問題ない
- 一定金額以上や交際費は領収書を求める:内容や相手を但し書きで残したい取引は領収書を指定する
- 仕入税額控除を受ける支出は登録番号の有無を確認:レシート・領収書のどちらでも、適格請求書発行事業者の登録番号があるかを精算の条件にする
こうした線引きを規程として明文化し、経費精算システムのチェック設定に落とし込むと、社員ごとの判断のばらつきを抑えられます。
下表は、レシート・領収書のデータ化や電子帳簿保存法・インボイス制度への対応という観点で、主要な経費精算システム3サービスを比較したものです。
| サービス名 | Bill One経費 | 弥生経費 Next | マネーフォワード クラウド経費 |
|---|---|---|---|
| レシート・領収書のデータ化(OCR・自動読取) | ●AI-OCR+入力オペレーターでデータ化しカード明細と自動突合 | ●領収書をスマホ撮影しAIが取引先名・勘定科目を提案 | ●領収書のAI-OCR・交通系IC読み取り・カード連携で入力を自動化 |
| 電子帳簿保存法対応(感熱紙レシートの電子保存) | ●電子帳簿保存法に対応 | ●アップロード時に電帳法の保存形式を自動チェック | ●スキャナ保存・電子取引に対応(JIIMA認証取得) |
| インボイス制度対応 | ●適格請求書・適格簡易請求書の要件を自動判定 | △公式サイトに単体対応の明記なし(要問い合わせ) | ●登録番号の読み取り・特例区分の設定に対応 |
| 提供形態・こんな企業向け | クラウド型 専用ビジネスカードで立替払いをなくしたい企業・月次決算を早めたい企業向け | クラウド型 会計ソフトとあわせ小規模から使いたい企業向け(会計セット版/単体のエキスパートプラン) | クラウド型 利用人数が月ごとに変動する企業向け(アクティブユーザー課金) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | ミーティングを予約する |
※2026年9月時点の各社公式情報にもとづきます。弥生経費 Nextのインボイス制度対応は公式サイトに単体対応の明記がなく、詳細は要問い合わせです。
上表の3サービスは一例で、経費精算システムはほかにも数多くあります。料金や機能、使いやすさ、導入方法まで含めて幅広く比較したうえで自社に合うものを選びたい方は、以下の記事で主要なサービスを詳しく解説しています。
Bill One経費(Sansan株式会社)

Bill One経費は、名刺管理や請求書受領サービスを手がけるSansan株式会社が提供するクラウド経費精算サービスです。専用の「Bill Oneビジネスカード」を社員に配り、経費をカードで支払わせることで立替払いそのものをなくす設計に特徴があります。「立替経費をなくし、月次決算を加速する」ことをコンセプトに掲げています。
レシート・領収書の扱いでは、Sansanのデータ化技術(OCR・AI・入力オペレーターの組み合わせ)で証憑をデータ化し、カードの利用明細と自動で突き合わせます。受け取った書類が適格請求書・適格簡易請求書の要件を満たしているかを自動で判定するインボイス対応機能や、電子帳簿保存法への対応も備えており、宛名やインボイス要件の確認を人手で行う手間を減らせます。
料金は初期費用と年額費用で構成され、経費精算の件数に応じた個別見積もりとなるため、詳細は問い合わせが必要です。立替払いの発生自体を抑えたい企業や、月次決算を早めたい企業に向いたサービスです。
弥生経費 Next(弥生株式会社)

会計ソフトを手がける弥生株式会社の「弥生経費 Next」は、経費の申請・承認・精算をスマートフォン1台で完結できるクラウド経費精算ソフトです。領収書・レシートをスマホで撮影すると、AIが取引先名や勘定科目の候補を提案し、入力の手間を減らします。
感熱紙のレシート対策として役立つのが電子帳簿保存法への対応です。領収書をアップロードする際に、電帳法の保存形式に合っているかを自動でチェックする機能を備えています。承認済みの経費データは弥生会計 Nextへ自動で仕訳連携できるほか、他社の会計ソフトを使う企業向けにはCSV連携に対応するエキスパートプランも用意されています。
料金は、弥生会計 Nextに含まれるセット版なら経費精算の追加ユーザーが1名あたり月400円(税抜)から、経費精算を単体で使うエキスパートプランは年252,000円(税抜、30名分)からです(2026年9月時点)。会計ソフトとあわせて小規模から使い始めたい企業に向いています。
マネーフォワード クラウド経費(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド経費は、「経費精算は、自走する。」をコンセプトに掲げる、株式会社マネーフォワードのクラウド型経費精算システムです。領収書・レシートのスマホ撮影によるOCR入力に加え、交通系ICカードの読み取りやコーポレートカードとの連携で、経費データの入力を自動化します。
レシート・領収書の管理では、電子帳簿保存法のスキャナ保存・電子取引に対応し、経費精算ソフトとして早くからJIIMA認証を取得しています。インボイス制度についても、適格請求書発行事業者の登録番号の読み取りや特例区分の設定に対応しており、証憑の確認業務を効率化できます。承認済みの経費データは、同社のクラウド会計や他社会計ソフトへ連携できます。
料金は初期費用0円で、月額はひとり法人向けの2,480円(年払い時・月あたり)から、ビジネスプランは6,480円(同)からです(2026年9月時点)。その月に経費精算を行ったユーザーだけを課金対象とするアクティブユーザー課金を採用しており、利用人数が月ごとに変動する企業でも無駄が出にくい料金設計です。
紙のレシート・領収書を扱い続ける負担や、電子帳簿保存法への対応が導入の動機になりやすい点について、同社の栗本氏は導入現場での実態を次のように語っています。

紙ベースの煩雑な経費精算フローが店舗と本社双方の業務時間を圧迫していて、毎月60店舗中50店舗で申請の差し戻しが発生している企業がいらっしゃいました。しかし、クラウドの導入後は、月初の作業時間が最大60時間から約6時間へ削減されたとのお声をいただいています。電子帳簿保存法への対応とセットで導入していただくことで、紙でのレシート・領収書管理自体が店舗で不要になり、現場と経理担当者の双方で迅速な効果を感じていただいています。
まとめ
領収書とレシートは、税法上はどちらも同じ「金銭の受取書」で、レシートでも経費精算はできます。実質的な違いは宛名の有無で、小売・飲食・タクシーなどのレシートは簡易インボイスとして宛名がなくても仕入税額控除に使えます。会社が領収書を求めるのは、宛名や但し書きで経費を管理・確認しやすくするためで、社内規程や取引の内容に応じて使い分けるのが基本です。
実務では、二重計上を避けて証憑は1枚に統一すること、5万円以上の現金領収書には収入印紙が必要なこと、感熱紙のレシートは電子帳簿保存法のスキャナ保存で電子化できることを押さえておくと安心です。宛名やインボイス要件の確認、感熱紙の電子保存といった作業が負担になってきたら、経費精算システムでの自動化を検討してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 領収書とレシートの違いは何ですか?
A. 領収書とレシートの主な違いは、宛名(会社名・氏名)が記載されるかどうかです。税法上はどちらも金銭の受取書として同等に扱われ、経費精算の証憑としての効力に差はありません。レシートは宛名が入らない代わりに購入した品目や日時が自動で印字され、領収書は宛名や但し書きを記載できる点が異なります。
Q. レシートで経費精算はできますか?
A. レシートでも経費精算はできます。税法上、レシートは領収書と同じ「金銭の受取書」として扱われ、正式な証憑として認められます。むしろ購入品目が具体的に印字される分、支出内容の裏づけがとりやすい場合もあります。ただし、社内規程で「宛名付きの領収書が必須」と定められている場合は、その規程に従う必要があります。
Q. 領収書と領収証は何が違いますか?
A. 領収書と領収証は、呼び名が違うだけで同じ書類です。市販の用紙やテンプレートによって印刷される表記が異なるだけで、金銭を受け取った事実を証明するという役割は同じであり、経費精算や税務上の扱いも変わりません。どちらの表記でも問題なく使えます。
Q. 宛名のないレシートでも経費として認められますか?
A. 宛名のないレシートでも経費として認められます。小売業・飲食店業・タクシーなど不特定多数を相手にする業種は、消費税法施行令で宛名を省略した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の交付が認められているためです。これらのレシートは、宛名がなくても仕入税額控除の要件を満たす正式な証憑として扱えます。
Q. なぜ会社はレシートより領収書を求めるのですか?
A. 会社が領収書を求める主な理由は、宛名や但し書きによって経費を管理・確認しやすく、不正を防ぎやすいからです。宛名に自社名が入っていれば自社の経費であることを書面で示せ、但し書きで支出の目的も明記できます。感熱紙のレシートが退色して読めなくなるリスクを避けたいという事情もあります。いずれも会社の管理方針によるもので、税法が領収書を義務づけているわけではありません。
Q. レシートと領収書を両方もらって経費にできますか?
A. 同じ支払いについてレシートと領収書の両方を経費計上することはできません。1回の支出を二重に計上すると経費の水増しとみなされ、税務調査で否認・追徴の対象になるおそれがあります。両取りを直接禁じた条文があるわけではありませんが、実務上は証憑を1枚に統一し、どちらか一方で精算するのが原則です。
Q. 押印のないレシートや領収書は無効になりますか?
A. 押印がなくても、レシートや領収書が無効になることはありません。領収書への押印は商慣習として行われているもので、法律で義務づけられた要件ではありません。発行者・日付・金額・取引内容といった必要な情報が記載されていれば、押印の有無にかかわらず経費の証憑として使えます。
Q. クレジットカードの利用明細は領収書の代わりになりますか?
A. クレジットカードの利用明細は、仕入税額控除を目的とする場合は領収書(適格請求書)の代わりにはなりません。カード会社が発行する利用明細には、登録番号や適用税率など適格請求書に必要な記載事項が含まれないためです。仕入税額控除を受けるには、店舗が発行する領収書やレシートを別途保存しておく必要があります。
Q. 感熱紙のレシートが消えてしまったらどうすればよいですか?
A. 感熱紙のレシートは退色して読めなくなることがあるため、受け取ったら早めにスマホ撮影などで電子化しておくのが確実です。電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たして電子化すれば、退色を気にせず紙の原本も処分できます。すでに退色して読めなくなってしまった場合は、発行元に再発行を相談するか、購入内容が分かる別の記録(カード利用明細や注文履歴など)で支出を補強します。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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