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取適法とは?正式名称・読み方と2026年1月施行の改正点|自社が対象かを条文とあわせて解説

取適法とは?正式名称・読み方と2026年1月施行の改正点のサムネイル画像

取適法(とりてきほう)とは、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(昭和三十一年法律第百二十号)の通称です。略称は「中小受託取引適正化法」、改正前の題名は「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)です。この改正法は2026年(令和8年)1月1日に施行され、同日以降に発注する取引から適用されています。

新しく作られた法律ではなく、下請法そのものが題名から中身まで改められたものです。用語が「親事業者」から「委託事業者」へ、「下請事業者」から「中小受託事業者」へ置き換わり、適用の判定に従業員数の基準が加わり、禁止行為も追加されました。自社が発注する側でも受注する側でも、どこまでが対象になるかは以前と変わっています。

本記事では、取適法の正式名称と施行日、下請法から変わった点、自社が対象になるかの判定、委託事業者に課される4つの義務と禁止される11の行為、違反したときに何が起きるかを整理します。義務と禁止行為は、対応する条番号とあわせて示します。

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取適法とは?正式名称・読み方・施行日

取適法は、公正取引委員会と中小企業庁が共管する法律です。ここでは、社内で検索したり条文にあたったりするときに使う名称の関係と、いつから適用が始まったのかを整理します。

正式名称・略称・通称・旧称の関係

この法律には、場面によって使い分けられる4つの呼び名があります。公正取引委員会は、改正の告知でその関係を次のように示しています。

「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が令和7年5月16日に成立し、同月23日に公布されました。本改正により、法律名の「下請代金支払遅延等防止法」は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法)となります。(施行期日:令和8年1月1日)

出典:取適法|公正取引委員会

整理すると、次の4段になります。「中小受託取引適正化法」を正式名称として紹介している資料も見かけますが、これは法令上の略称であり、法律の題名ではありません。

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呼び名題名(正式名称)略称通称旧題名
表記製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律中小受託取引適正化法取適法(とりてきほう)下請代金支払遅延等防止法(下請法)
どこで使うか条文を引くとき
契約書・社内規程に法令名を書くとき
e-Gov 法令検索に登録された略称
官公庁の資料・パンフレットの表題
社内・取引先との会話
公正取引委員会の特設ページ・動画
2025年12月31日以前に発注した取引を調べるとき

法令番号は昭和三十一年法律第百二十号で、これは改正前から変わっていません。条文を確認したい場合は、この法令番号か題名で e-Gov 法令検索を引くと、2026年1月1日施行版にたどり着けます。

出典・参考資料(2件)

取適法はいつから施行されたのか

改正法である「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」(令和七年法律第四十一号)は、2025年(令和7年)5月16日に成立し、5月23日に公布されました。施行日は2026年(令和8年)1月1日です。

実務で迷いやすいのは、施行日をまたぐ取引の扱いです。公正取引委員会は、適用の起点を発注の時点で判断すると説明しています。

取適法は、令和8年1月1日から施行され、令和8年1月1日以降に発注する取引について、取適法の規定(禁止行為等)が適用されます。例えば、取適法の施行に伴い、手形による支払が禁止されましたが、令和8年1月1日以降に発注する取引について適用されます。

出典:取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項|公正取引委員会

2025年12月31日以前に発注した取引には、改正前の下請法が引き続き適用されます(改正法附則第二条第2項)。罰則についても同じ考え方がとられています(同附則第四条)。施行日をまたぐ継続的な取引では、発注の時点でどちらのルールが効くかが分かれる点に注意が必要です。

出典・参考資料(1件)

取適法は何を目的とする法律か(第1条)

法律が何を守ろうとしているかは、第1条に書かれています。

第一条 この法律は、製造委託等に関し、中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等を防止することによつて、委託事業者の中小受託事業者に対する取引を公正にするとともに、中小受託事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。

出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第一条|e-Gov 法令検索

守られる側は「中小受託事業者」、義務を負う側は「委託事業者」と書かれています。この2つの語がそれぞれ誰を指すかは資本金と従業員数で決まり、その線引きが自社が対象になるかを左右します。

なぜ下請法が改正されたのか

改正の趣旨は、公正取引委員会と中小企業庁が連名で公表した改正法の説明資料に示されています。価格転嫁を定着させることが出発点にあります。

近年の急激な労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を受け、「物価上昇を上回る賃上げ」を実現するためには、事業者において賃上げの原資の確保が必要。中小企業をはじめとする事業者が各々賃上げの原資を確保するためには、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図っていくことが重要。例えば、協議に応じない一方的な価格決定行為など、価格転嫁を阻害し、受注者に負担を押しつける商慣習を一掃していくことで、取引を適正化し、価格転嫁をさらに進めていくため、下請法の改正を検討してきた。

出典:下請法・下請振興法改正法の概要|公正取引委員会・中小企業庁

制度の検討は、令和6年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2024」などを受けて始まりました。公正取引委員会と中小企業庁の共催による「企業取引研究会」が令和6年7月から12月まで計6回開かれ、同年12月25日に報告書が取りまとめられています。今回の改正は、この報告書を土台にしたものです。

下請法から取適法へ、何がどう変わったのか

改正は名称の変更にとどまりません。公正取引委員会・中小企業庁の説明資料は改正事項を6点に整理しています。以下の表は、そのうち禁止行為の追加2点(協議に応じない一方的な代金決定・手形払等)を1行にまとめ、5つの観点で旧法と並べたものです。

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観点法律の題名・用語適用の判定基準対象となる取引禁止行為執行体制
改正前(下請法)下請代金支払遅延等防止法
親事業者/下請事業者/下請代金
資本金の額のみ製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4類型手形払は指導基準で運用
一方的な代金決定は買いたたきで捕捉
公正取引委員会・中小企業庁長官
改正後(取適法)製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
委託事業者/中小受託事業者/製造委託等代金
資本金の額に加え、常時使用する従業員数(製造委託等300人/役務提供委託等100人)でも判定上記4類型に特定運送委託を加えた5類型手形払等を禁止
協議に応じない一方的な代金決定を新たに禁止
事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言権限を付与し、報復措置の申告先にも追加
根拠題名、第2条第8項・第9項第2条第8項・第9項第2条第5項・第6項第5条第1項第2号、第5条第2項第4号第5条第1項第7号、第8条、第13条

※公正取引委員会・中小企業庁「下請法・下請振興法改正法の概要」および条文にもとづく整理です。

同じ改正法によって、下請中小企業振興法も「受託中小企業振興法」に改題されています。取適法だけが変わったわけではありません。

呼び方が変わった(親事業者→委託事業者、下請事業者→中小受託事業者)

説明資料は、用語の見直しを次のように記しています。

⑥「下請」等の用語の見直し【題名、新第2条第8項、第9項関係】/用語について、「親事業者」を「委託事業者」、「下請事業者」を「中小受託事業者」、「下請代金」を「製造委託等代金」等に改正する。法律の題名も、「下請代金支払遅延等防止法」を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に改正する。

出典:下請法・下請振興法改正法の概要|公正取引委員会・中小企業庁

社内規程・契約書のひな型・注文書の文言に「下請」を含む語を使っている場合は、置き換えの検討対象になります。旧下請法で「3条書面」と呼ばれていた書面も、条番号が変わって「4条明示」となりました。

適用基準が広がった(従業員数基準の追加)

改正前は資本金の額だけで適用の有無が決まっていました。取適法では、これに常時使用する従業員数の基準が加わります

④ 従業員基準の追加【新第2条第8項、第9項関係】/適用基準として従業員数の基準を新たに追加する。具体的な基準については、本法の趣旨や運用実績、取引の実態、事業者にとっての分かりやすさ、既存法令との関連性等の観点から、従業員数300人(製造委託等)又は100人(役務提供委託等)を基準とする。

出典:下請法・下請振興法改正法の概要|公正取引委員会・中小企業庁

資本金が小さいために下請法の対象外だった事業者でも、従業員数によっては取適法の委託事業者に当たることがあります。両方の基準の関係について、公正取引委員会は「従業員基準は資本金基準が適用されない場合に適用されます」と説明しています。

対象取引が広がった(特定運送委託の追加)

対象となる取引の類型に、新たに特定運送委託が加わりました

③ 運送委託の対象取引への追加【新第2条第5項、第6項関係】/発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引を、本法の対象となる新たな類型として追加し、機動的に対応できるようにする。

出典:下請法・下請振興法改正法の概要|公正取引委員会・中小企業庁

運送事業者が請け負った運送を他の事業者へ再委託する取引は、改正前から役務提供委託として対象でした。今回加わったのは、発荷主が運送事業者に運送を委託する取引です。どのような取引が特定運送委託に当たるかは、対象となる5つの取引類型で条文の定義とともに整理します。

禁止行為が追加された(協議に応じない一方的な代金決定・手形払等)

禁止行為には2つが追加されました。1つは価格協議に関するもので、もう1つは支払手段に関するものです。

協議に応じない一方的な代金決定(第5条第2項第4号)は、価格を決める過程そのものを問題にします。買いたたき(同条第1項第5号)は「類似品等の価格または市価に比べて著しく低い」という市価の認定を必要とします。これに対しこちらは、協議の求めを無視した、必要な説明をしなかったという事実だけで違反になり得ます。

手形払等の禁止(同条第1項第2号)は、約束手形に限りません。電子記録債権やファクタリングであっても、支払期日までに代金に相当する満額の金銭と引き換えることが困難なものは使えなくなります。手数料を差し引かれて満額に届かない形も、この「困難なもの」に当たり得ます。

① 協議を適切に行わない代金額の決定の禁止【新第5条第2項第4号関係】/「市価」の認定が必要となる買いたたきとは別途、対等な価格交渉を確保する観点から、中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、委託事業者が必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定して、中小受託事業者の利益を不当に害する行為を禁止する規定を新設する。

② 手形払等の禁止【新第5条第1項第2号関係】/中小受託事業者の保護のためには、今般の指導基準の変更を一段進め、本法上の支払手段として、手形払を認めないこととする。電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金に相当する金銭(手数料等を含む満額)を得ることが困難であるものについては認めないこととする。

出典:下請法・下請振興法改正法の概要|公正取引委員会・中小企業庁

禁止されるのは約束手形だけではありません。電子記録債権や一括決済方式であっても、支払期日までに満額の現金と引き換えることが難しいものは使えなくなります。手形払の禁止に伴い、割引が困難な手形に関する従来の規制は廃止されました。

執行体制が強化された(公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁の連携)

これまで指導・助言を行ってきたのは公正取引委員会と中小企業庁長官でした。取適法では、取引に係る事業を所管する省庁の主務大臣にも同じ権限が与えられます(第8条)。あわせて、報復措置の禁止に関する申告先にも主務大臣が加わりました(第5条第1項第7号)。

3者が情報を共有する根拠も条文に置かれています。

第十三条第1項 公正取引委員会、中小企業庁長官及び製造委託等に関する取引に係る事業を所管する大臣は、この法律の施行に必要な限度で、委託事業者又は中小受託事業者に関する情報であつて、委託事業者の中小受託事業者に対する製造委託等に関する取引を公正にし、又は中小受託事業者の利益を保護するため特に必要であると認められるものを相互に提供することができる。

出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第十三条|e-Gov 法令検索
出典・参考資料(2件)

自社は取適法の対象になるのか(取引の種類 × 資本金・従業員数)

取適法が適用されるかどうかは、取引の内容当事者双方の規模の2つで決まります。どちらか一方だけでは判定できません。ここでは、自社の取引と数字を当てはめられる形で整理します。

対象となる5つの取引類型

まず見るのは、その取引が次の5つのいずれかに当たるかです。定義は第2条第1項から第5項に置かれています。

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取引の類型製造委託修理委託情報成果物作成委託役務提供委託特定運送委託
条文第2条第1項第2条第2項第2条第3項第2条第4項第2条第5項
どんな取引か販売する物品や、製造を請け負った物品・その部品や原材料などの製造・加工を、他の事業者に委託する取引請け負った物品の修理の行為の全部または一部を、他の事業者に委託する取引。自社で使用する物品の修理を業として行う場合の一部委託も含む提供または作成を請け負った情報成果物の作成の行為の全部または一部を、他の事業者に委託する取引提供を請け負った役務の提供の行為の全部または一部を、他の事業者に委託する取引。建設業を営む者が請け負う建設工事の再委託は除かれる販売する物品や、製造・修理を請け負った物品などを取引の相手方へ運送する行為を、他の事業者に委託する取引(今回の改正で追加)
自社で販売する製品の部品製造を委託する請け負った機器修理の一部を外部に出すプログラム・映像・設計図・デザインの作成を委託する請け負ったビルメンテナンス業務の一部を委託する自社が販売した商品の配送を運送事業者に委託する

判断の分かれ目は業種ではなく委託の内容です。公正取引委員会のテキストも、類型を示す図に「業種でなく委託の内容で判断する」と注記しています。同じ会社の取引でも、当たるものと当たらないものが混在します。

特定運送委託は「特定」と付くとおり、運送の委託すべてが当たるわけではありません。条文は、販売する物品や製造・修理を請け負った物品などを「取引の相手方(当該相手方が指定する者を含む。)に対して運送する場合」と限っています。

自社の倉庫間で在庫を動かす横持ちは、通常はこの類型に当たりません(特定の取引先向けに仕分けした物品を自社拠点を経由して届ける場合など、当たり得るケースはあります)。自社が買い手として仕入れる際の引き取り便も、発荷主として取引の相手方へ運送するものではないため、この類型の想定から外れます。

労働者派遣を受けることは対象になりません。自社の業務のために派遣を受けるものであり、役務の委託には当たらないためです。

出典・参考資料(2件)

委託事業者・中小受託事業者の判定基準

取引が5類型のいずれかに当たるなら、次に見るのは当事者双方の規模です。第2条第8項が委託事業者を6つの類型で、第9項が中小受託事業者をそれに対応する6つの類型で定義しています。同じ行の発注側・受注側の条件を両方とも満たすときに、その取引が取適法の対象になります。片側だけで判定はできません。

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判定の区分資本金① 製造委託等資本金② 製造委託等資本金③ 情報成果物作成委託等資本金④ 情報成果物作成委託等従業員⑤ 製造委託等従業員⑥ 情報成果物作成委託等
対象となる取引製造委託・修理委託・特定運送委託
情報成果物作成委託(プログラム)
役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)
同上情報成果物作成委託・役務提供委託
(上記のプログラム・運送・倉庫保管・情報処理を除く)
同上製造委託・修理委託・特定運送委託
情報成果物作成委託(プログラム)
役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)
情報成果物作成委託・役務提供委託
(上記のプログラム・運送・倉庫保管・情報処理を除く)
発注側(委託事業者)資本金・出資の総額が3億円超の法人資本金・出資の総額が1,000万円超3億円以下の法人資本金・出資の総額が5,000万円超の法人資本金・出資の総額が1,000万円超5,000万円以下の法人常時使用する従業員の数が300人超の法人常時使用する従業員の数が100人超の法人
受注側(中小受託事業者)個人、または資本金・出資の総額が3億円以下の法人個人、または資本金・出資の総額が1,000万円以下の法人個人、または資本金・出資の総額が5,000万円以下の法人個人、または資本金・出資の総額が1,000万円以下の法人常時使用する従業員の数が300人以下の個人または法人常時使用する従業員の数が100人以下の個人または法人
条文第2条第8項第1号/第9項第1号第2条第8項第2号/第9項第2号第2条第8項第3号/第9項第3号第2条第8項第4号/第9項第4号第2条第8項第5号/第9項第5号第2条第8項第6号/第9項第6号

※プログラム・運送・倉庫保管・情報処理の区分は、第2条第8項第1号の政令(平成十三年政令第五号)で定められています。

2つの基準は並列ではありません。公正取引委員会は「従業員基準は資本金基準が適用されない場合に適用されます」と説明しています。まず資本金で当てはめ、そこで対象にならなかったときに従業員数で見直す、という順序です。

具体的な数字で当てはめると、次のようになります(いずれも製造委託の場合)。

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ケースケース1ケース2ケース3
自社(発注側)資本金5億円
従業員400人
資本金2億円
従業員250人
資本金3,000万円
従業員120人
相手方(受注側)資本金4億円
従業員200人
資本金800万円資本金2,000万円
従業員80人
判定対象になる対象になる対象にならない
理由相手方が資本金3億円超のため区分①に当たらず、自社が3億円超なので区分②にも当たらない。従業員基準で見ると自社300人超・相手方300人以下で、区分⑤に当たる資本金で当てはまる。自社が1,000万円超3億円以下、相手方が1,000万円以下で区分②に当たる資本金はどの区分の組み合わせにも当たらず、従業員数も自社が300人以下のため区分⑤に当たらない

※第2条第8項・第9項の区分に当てはめた場合の考え方です。実際の判定は取引の内容もあわせて確認してください。

表で判断がつかない場合は、公正取引委員会が「取適法簡易診断ツール」を公開しています。取引の内容と双方の規模を入力すると、対象になるかどうかを確認できます。

出典・参考資料(1件)
出典・参考資料(2件)

「常時使用する従業員」に含まれる人・含まれない人

従業員数で判定する以上、誰を数えるかが実務の焦点になります。公正取引委員会のテキストは、数え方の根拠を労働基準法と賃金台帳に置いています。

「常時使用する従業員」とは、その事業者が使用する労働者(労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条に規定する労働者をいう。)のうち、日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される者を除く。)以外のもの(以下「対象労働者」という。)をいい、「常時使用する従業員の数」は、その事業者の賃金台帳の調製対象となる対象労働者(労働基準法第108条及び第109条、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第55条及び様式第20号等)の数によって算定するものとする。

出典:中小受託取引適正化法テキスト|公正取引委員会

公正取引委員会が具体例として挙げているのは、含める側が正社員・契約社員・委嘱社員・パートタイマー・アルバイト・1か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者です。船員も含まれます。含めない側として明示されているのは次の2つです。

  • 派遣社員:派遣元が使用者となるため、派遣先の「常時使用する従業員」には含まれません
  • グループ会社の従業員:事業者単位で判断するため、別の事業者である以上は含まれません

判定の時点は、製造委託等をした時点の人数です。発注する側が取引の相手方の従業員数を確認する義務はなく、賃金台帳の閲覧や写しの取得も必須とはされていません。

出典・参考資料(2件)

取適法の対象にならないケース

取引の内容と規模のどちらかが外れれば、その取引に取適法は適用されません。代表的なのが建設工事の再委託です。建設業を営む者が請け負った建設工事を他の建設業者に請け負わせる場合は、第2条第4項の括弧書きで役務提供委託から除かれ、建設業法の領域になります。

建設業だからすべて対象外になるわけではありません。公正取引委員会は、同じ建設業者の取引でも類型に当たるものがあると具体例を挙げています。

建設工事に係る下請負(建設工事の再委託)には本法は適用されない。しかし、例えば、建設業者が建設資材を業として販売しており、当該建設資材の製造を他の事業者に委託する場合には、製造委託(類型1)に該当する。また、建設業者が請け負った建設工事に使用する建設資材の製造を他の事業者に委託する場合には、製造委託(類型1)に該当する。このほかにも、建設業者が請け負った建築物の設計や内装設計、又は工事図面の作成を他の事業者に委託する場合には、情報成果物作成委託(類型2)に該当する。

出典:中小受託取引適正化法テキスト Q5|公正取引委員会

規模の面では、双方が同じ区分に収まっている取引が外れます。資本金1,000万円以下の会社どうしの取引や、従業員数がいずれも基準以下の事業者どうしの取引には、取適法は及びません。総株主の議決権の50%超を保有する親子会社間など、実質的に同一会社内での取引とみられる場合も、公正取引委員会のテキストは従前から運用上問題としていないとしています。

取引の相手方がフリーランス(特定受託事業者)にも当たる場合は、法律どうしの優先関係が定められています。

フリーランス・事業者間取引適正化等法と独占禁止法のいずれにも違反する行為については、原則として、フリーランス・事業者間取引適正化等法を優先して適用する。また、フリーランス・事業者間取引適正化等法と取適法のいずれにも違反する行為については、原則として、フリーランス・事業者間取引適正化等法を優先して適用する(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び取適法との適用関係等の考え方」(令和6年5月31日公正取引委員会))。なお、取適法と独占禁止法のいずれにも違反する行為については、原則として、取適法を優先して適用する。

出典:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン|公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省

取適法の対象から外れることは、何の規律も及ばないことを意味しません。取適法の保護が及ばない取引に残る未回収リスクで触れるとおり、独占禁止法や受託中小企業振興法の枠組みは残ります。

委託事業者に課される4つの義務と禁止される11の行為

自社が委託事業者に当たると分かったら、次に確認するのは守るべきルールです。義務が4つ、禁止行為が11あり、それぞれ条文の裏づけがあります。

委託事業者の4つの義務(明示・記録の作成保存・支払期日・遅延利息)

発注内容等の明示義務(第4条)

製造委託等をしたら、直ちに、給付の内容・製造委託等代金の額・支払期日・支払方法などを書面または電磁的方法で明示しなければなりません。旧下請法で「3条書面」と呼ばれていたものにあたります。公正取引委員会は施行にあたっての留意事項で「3条書面・5条書類の記載事項が変わりました!!⇒4条明示・7条記録へ」と案内しており、取適法では「4条明示」が対応する呼び方になります。

明示すべき事項は、公正取引委員会規則(令和七年公正取引委員会規則第八号。以下「明示規則」)第一条第1項に8号立てで定められています。注文書のひな型と突き合わせられるよう、全8項目を挙げます。

  1. 委託事業者と中小受託事業者の商号・名称、または双方を識別できる番号・記号その他の符号
  2. 製造委託等をした日、給付の内容、給付を受領する期日と場所
  3. 給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
  4. 製造委託等代金の額および支払期日
  5. 債権譲渡担保方式・ファクタリング方式・併存的債務引受方式で支払う場合は、金融機関の名称、貸付けまたは支払を受けられる額とその期間の始期、代金債権・代金債務に相当する額を金融機関に支払う期日
  6. 電子記録債権の発生記録または譲渡記録をする場合は、その電子記録債権の額、支払を受けられる期間の始期、電子記録債権法上の支払期日
  7. 原材料等を委託事業者から購入させる場合は、その品名・数量・対価・引渡しの期日と、決済の期日および方法
  8. 内容が定められないことに正当な理由があって明示しない事項がある場合は、定められない理由と、内容を定めることとなる予定期日

5号・6号にあたる項目は改正前の規則にもありましたが、今回の改正で明示すべき事項が追加されました(支払を受けられる期間の始期など)。あわせて、旧規則にあった「手形を交付する場合」の号は、手形払の禁止に伴い削除されています。掛け払いや請求代行、電子記録債権を使って支払っている場合は、自社の注文書にこれらの記載があるかを確認してください。

内容が定まらないことに正当な理由がある事項は後から明示できますが、その場合は理由と、内容を定める予定期日を示す必要があります。

電磁的方法による明示は、中小受託事業者の承諾がなくても可能になりました。電子メールなど受信者を特定して情報を伝達する方法や、電磁的記録を記録した媒体の交付が認められます。ただし、中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、遅滞なく交付しなければなりません(第4条第2項)。

書類等の作成・保存義務(第7条)

給付、給付の受領、製造委託等代金の支払などについて記載した書類または電磁的記録を作成し、保存する義務です。旧下請法の「5条書類」にあたり、上記の留意事項では「7条記録」と呼ばれています。

保存期間は公正取引委員会規則(令和七年公正取引委員会規則第十号)第三条に定められています。

第三条 書類等は、その記載又は記録をすべき事項の全部の記載又は記録をした日から二年間、保存しなければならない。

出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則|e-Gov 法令検索

記録すべき事項は同規則(以下「保存規則」)第一条第1項に13号立てで置かれています。明示した内容だけでなく、その後に実際どうなったかまで残すのが特徴です。

  1. 中小受託事業者の商号・名称、または識別できる番号・記号その他の符号
  2. 製造委託等をした日、給付の内容と受領する期日、そして実際に受領した給付の内容と受領した日
  3. 検査をした場合は、検査を完了した日、検査の結果、検査に合格しなかった給付の取扱い
  4. 給付の内容を変更させた、または受領後にやり直させた場合は、その内容と理由
  5. 製造委託等代金の額と支払期日、額に変更があった場合は増減額とその理由
  6. 金銭で支払った場合は、その支払額・支払日・支払方法
  7. 金銭以外の支払手段を使った場合は、その種類・名称・価額、使用した日、中小受託事業者が引換えで得る金銭の額など
  8. 債権譲渡担保方式・ファクタリング方式・併存的債務引受方式による場合は、貸付けまたは支払を受けられることとした額と期間の始期、金融機関に支払った日など
  9. 電子記録債権の発生記録・譲渡記録をした場合は、その額、支払を受けられる期間の始期、支払期日など
  10. 原材料等を購入させた場合は、品名・数量・対価・引渡しの日と、代金を決済した日およびその方法
  11. 代金の一部を支払った、または代金から原材料等の対価を控除した場合は、その後の代金の残額
  12. 遅延利息を支払った場合は、その額と支払った日
  13. 正当な理由があって明示しなかった事項がある場合は、定められなかった理由、内容を明示した日、その内容

記載は、それぞれの事実が生じたとき、または明らかになったときに速やかに行うこととされています(保存規則第二条第1項)。電磁的記録で保存する場合の要件は実務の確認ポイントで扱います。

代金の支払期日を定める義務(第3条)

支払期日は、給付を受領した日から起算して60日以内、かつできる限り短い期間内に定めなければなりません。検査をするかどうかは関係しません。

第三条第1項 製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日。以下同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第三条|e-Gov 法令検索

支払期日を定めなかった場合は受領した日が支払期日とみなされ、60日を超える期日を定めた場合は受領日から60日を経過した日の前日がみなしの支払期日になります(第3条第2項)。定めていない状態は、実質的に「受領日払い」を約束したのと同じ扱いになります。

遅延利息の支払義務(第6条)

支払期日までに代金を支払わなかったときは、受領日から60日を経過した日から実際に支払う日までの日数に応じ、遅延利息を支払わなければなりません。率は公正取引委員会規則に委任されており、規則(令和七年公正取引委員会規則第九号)は年14.6%と定めています。

今回の改正で、代金を不当に減額した場合も遅延利息の対象に加わりました(第6条第2項)。減額した日と受領日から60日を経過した日のいずれか遅い日から、減額分を支払う日までが計算の対象になります。

出典・参考資料(4件)

委託事業者の11の禁止行為(第5条)

禁止行為は第5条第1項に7つ、第2項に4つ置かれ、あわせて11になります。公正取引委員会のテキストも、この11号をそのまま11項目として並べています。中小受託事業者の了解を得ていても、また委託事業者に違反の意図がなくても、これらに当たれば違反となります

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禁止行為1. 受領拒否2. 代金の支払遅延3. 代金の減額4. 返品5. 買いたたき6. 物の購入強制・役務の利用強制7. 報復措置8. 有償支給原材料等の対価の早期決済9. 不当な経済上の利益の提供要請10. 不当な給付内容の変更・やり直し11. 協議に応じない一方的な代金決定
条文第5条第1項第1号第5条第1項第2号第5条第1項第3号第5条第1項第4号第5条第1項第5号第5条第1項第6号第5条第1項第7号第5条第2項第1号第5条第2項第2号第5条第2項第3号第5条第2項第4号
内容注文した物品等または情報成果物の受領を拒むこと受領日から60日以内に定めた支払期日までに代金を支払わないこと。手形の交付や、支払期日までに満額の現金と引き換えることが困難な支払手段の使用も含むあらかじめ定めた代金を減額すること受け取った物を返品すること類似品等の価格または市価に比べて著しく低い代金を不当に定めること委託事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁に違反を知らせたことを理由に、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること有償で支給した原材料等の対価を、それを用いた給付の代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること中小受託事業者から金銭、労務の提供等をさせること費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせることコスト上昇等が生じた場合に、価格協議の求めがあったにもかかわらず協議に応じない、必要な説明を行わないなどして、一方的に代金を決定すること

受注する側から読むときは、この表がそのまま「取引先から受けたら本法違反になり得る扱い」の一覧になります。値下げの一方的な通告、発注済みの受領拒否、振込手数料の差し引き、協議に応じない単価の据え置きは、いずれも表のどれかに当たります。

11すべてがどの取引にも一律に効くわけではありません。役務提供委託と特定運送委託については、性質上あり得ない項目が条文の括弧書きで除かれています。1(受領拒否)・4(返品)・8(有償支給原材料等の対価の早期決済)が該当します。

このうち、実務で判断に迷いやすい3つ(3・4・11)を補足します。

3. 代金の減額——振込手数料の負担も含まれる

減額の禁止は、名目や方法を問いません。政府広報オンラインは、合意の有無にかかわらず振込手数料を中小受託事業者に負担させて代金から差し引くことも減額に当たると説明しています。協賛金の徴収や原材料価格の下落を理由とする値引きも同様です。

4. 返品——認められる期限は「不適合に気づけるか」で分かれる

返品の例外は「不良品なら6か月以内」と短く紹介されることがありますが、公正取引委員会のテキストは期限をもう少し細かく分けています。

中小受託事業者の給付に直ちに発見することができない不適合がある場合は、給付の受領後6か月以内に返品することは、中小受託事業者の責めに帰すべき理由があるとして認められるが、6か月を超えた後に返品すると本法違反となる。ただし、中小受託事業者の給付を使用した委託事業者の製品について一般消費者に対して6か月を超えて保証期間を定めている場合には、その保証期間に応じて最長1年以内であれば返品することが認められる。

出典:中小受託取引適正化法テキスト|公正取引委員会

6か月が使えるのは、直ちに発見できない不適合の場合です。検査をすれば分かる不適合を理由とする返品は、受領に係る最初の代金の支払時を超えると違反になります。検査を省略した場合や、検査基準が明確でないために不適合が明らかでない場合も、返品は認められません。

11. 協議に応じない一方的な代金決定——応じることと説明できること

11番目の協議に応じない一方的な代金決定は、今回の改正で新設されました。値上げに応じること自体が義務づけられているわけではありませんが、協議の求めを無視する、必要な説明や情報提供をしないまま単価を据え置く、といった対応が禁止の対象になります。買いたたきと違って「市価」の認定を要しない点が、この規定を置いた理由として説明資料に記されています。

出典・参考資料(4件)

違反した場合の指導・勧告・公表と罰則

違反したときに何が起きるかは、行政による指導・勧告のルートと、罰則のルートに分かれます。この2つは対象になる条文が違うため、区別して押さえる必要があります。

指導・助言と勧告(第8条・第10条)

公正取引委員会、中小企業庁長官、取引に係る事業を所管する大臣は、法の施行に必要と認めるときに委託事業者へ指導・助言ができます(第8条)。

第5条の禁止行為に違反する行為があると認めるときは、公正取引委員会が勧告を行います(第10条)。勧告の内容は、給付の受領、代金や遅延利息の支払、返品した物を再び引き取ること、購入させた物を引き取ること、代金額の引上げ、不利益な取扱いの中止など、中小受託事業者の利益を保護するために必要な措置です。

すでに違反行為がなくなっている場合でも、特に必要と認めるときは周知措置などを勧告できる規定が置かれています(第10条第2項)。

実際に勧告が行われた事案は、公正取引委員会が一覧で公表しています。自社の取引に近い事案を確認したい場合は、公式の一覧を参照してください。

出典・参考資料(1件)

罰則(第14条〜第16条)とその対象になる違反

罰則の対象は限られています。第14条は次の3つの場合に50万円以下の罰金を定めています。

第十四条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした委託事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第四条第一項の規定に違反して明示すべき事項を明示しなかつたとき。
二 第四条第二項の規定に違反して書面を交付しなかつたとき。
三 第七条の規定に違反して、書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。

出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第十四条|e-Gov 法令検索

ここで罰せられるのは「代表者、代理人、使用人その他の従業者」=違反行為をした個人です。法人に罰金が科されるのは、第16条の両罰規定によります。「行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する」と定められており、個人と法人の双方が対象になり得ます。

報告をせず、または虚偽の報告をした場合や、立入検査を拒み・妨げ・忌避した場合も、50万円以下の罰金の対象です(第15条)。書類を整えることだけでなく、調査に応じることも罰則の射程に入っています。

注意したいのは、第5条の11の禁止行為そのものには罰則が定められていないことです。買いたたきや支払遅延があった場合に働くのは、勧告と公表、そして独占禁止法の枠組みであって、罰金ではありません。罰金がかかるのは明示・書面交付・記録の作成保存と、調査への対応に関する違反です。

違反ではないかと思ったときの相談窓口

ここからは、委託を受ける側の立場で読んでいる方に向けた内容です。取引先の対応が取適法に触れるのではないかと感じたとき、相談できる公的な窓口が用意されています。

公正取引委員会は2種類の窓口を持っています。1つは不当なしわ寄せを受けるおそれのある事業者からの相談を受ける窓口で、フリーダイヤル0120-060-110(受付10:00〜17:00、土日祝日・年末年始を除く)です。もう1つは取適法の考え方そのものについての相談窓口で、委託事業者・中小受託事業者のどちらでも利用できます。

中小企業庁は「取引かけこみ寺」を設けています。全国48か所に置かれ、専門の相談員や弁護士が対応します。フリーダイヤルは0120-418-618(受付は平日9:00〜12:00、13:00〜17:00)です。

取引先に知られることへの懸念について、政府広報オンラインは次のように示しています。

相談した内容が委託事業者に知られることはありません。また、委託事業者も取引に当たって、疑問点等があれば相談することができます。

出典:2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります|政府広報オンライン

これらの窓口は取引の適正化を図るためのもので、支払われないままの代金そのものを回収してくれるわけではありません。入金が遅れたときの初動、内容証明郵便や支払督促といった法的手段、回収できなかった場合の会計処理までの手順は、以下の記事で整理しています。

出典・参考資料(3件)

施行後の実務で今すぐ確認したいポイント

ここからは、自社が委託事業者に当たると分かったときに、どの書類やどの運用を開いて確認すればよいかを整理します。

契約書・注文書のひな型に明示事項が足りているか

最初に見るのは注文書・発注書のひな型です。明示規則第一条第1項の8号が、そのまま点検の項目になります。取引先と自社を識別できる情報、発注日と給付の内容、受領期日と場所、検査完了期日、代金の額と支払期日が漏れなく入っているかが点検の対象になります。

今回新たに加わった項目として、一括決済方式(債権譲渡担保方式・ファクタリング方式・併存的債務引受方式)や電子記録債権を使って支払う場合の明示事項があります。金融機関の名称、貸付けや支払を受けられる額と期間の始期、金銭を支払う期日などを示す必要があります。掛け払いや請求代行の仕組みを使って支払っている場合は、この項目が自社の運用に該当しないかを確かめてください。

社内規程・契約書に「親事業者」「下請事業者」「下請代金」といった旧用語が残っている場合も、あわせて置き換えの対象になります。

支払サイトの設定が受領日から60日以内に収まっているか

次に確認するのは支払サイトです。締め日ではなく給付を受領した日が起算点で、公正取引委員会のテキストは「受領日を算入する」と明記しています。受領日を1日目として数えるということです。

この数え方だと、月初に受領した分は日数が延びます。4月1日に受領した場合、60日目は5月30日で、「月末締め翌月末払い」の支払日5月31日は61日目にあたります。

ただし、月単位の締切制度についてはこの1〜2日のずれを織り込んだ運用がとられています。

「毎月末日納品締切、翌月末日支払」といった締切制度が考えられるが、月によっては31日の月(大の月)もあるため、当該締切制度によれば、月の初日に給付を受領したものの支払が、受領から61日目又は62日目の支払となる場合がある。このような場合、結果として給付の受領後60日以内に代金が支払われないこととなるが、本法の運用に当たっては、「受領後60日以内」の規定を「受領後2か月以内」として運用しており、大の月(31日)も小の月(30日)も同じく1か月として運用しているため、支払遅延として問題とはしていない。

出典:中小受託取引適正化法テキスト|公正取引委員会

つまり「月末締め翌月末払い」は支払遅延として問題とされません。一方で「月末締め翌々月末払い」は2か月に収まらず、超過します。自社の支払サイトを点検するときは、締め日と支払日の間隔が2か月以内に収まっているかを見てください。

支払期日は具体的な日が特定できる形で定める必要があり、「納品後○日以内」のような幅を持たせた定め方は認められていません。

支払期日を定めていない取引が残っていないかも確認しておきたいところです。定めがない場合は受領日が支払期日とみなされるため、事実上ただちに支払期日が到来している状態になります。

取引記録の作成・保存を2年間の要件で運用できているか

記録は電磁的記録でも構いませんが、保存規則第二条第3項が3つの要件を課しています。訂正や削除を行った場合にその事実と内容を確認できること、記録した事項を画面に表示し書面に出力できること、そして検索機能を備えていることです。検索は取引先を識別する情報を条件に設定でき、発注日については範囲を指定できる必要があります。

表計算ソフトのファイルを共有フォルダに置いているだけの運用では、訂正履歴の確認や範囲検索の要件を満たせないことがあります。記録の作成は事実が生じたときに速やかに行うこととされている点も、月次でまとめて入力している場合は見直しの対象になります。

手形払いに代わる決済方法を用意できているか

手形で支払っていた取引は、現金払いなどへの切り替えが必要になります。ここで見落とされやすいのが、切り替えのやり方によっては別の違反になるという点です。公正取引委員会は留意事項のQ&Aで具体的に注意を促しています。

Q1 製造委託等代金の支払について手形を交付していたが、現金払に変更することに伴い、留意すべき点はあるか。
A 取適法の施行に伴い、委託事業者が、支払手段を手形払から現金払に変更した上で、現金を調達するために必要であるとして、製造委託等代金から一定額を割引料として減じて支払うことは、減額として本法違反となる。また、現金払に変更する際に、一方的に従前の給付に係る単価から一定率を割引料として引き下げて製造委託等代金の額を定めることは、買いたたき又は協議に応じない一方的な代金決定の禁止に該当するおそれがある。

出典:取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項|公正取引委員会

同じQ&Aでは、振込手数料を委託事業者の負担に変更する際に、その分だけ単価を引き下げることも買いたたきや一方的な代金決定に当たるおそれがあるとされています。支払手段を変えるときは、代金の額を据え置くことが前提になります

切り替え先の選定にあたっては、禁止されるのが手形だけではない点にも注意が必要です。電子記録債権や一括決済方式であっても、支払期日までに満額の現金と引き換えることが困難なものは使えません。

紙の約束手形・小切手そのものについても、2026年度末を目途に利用を廃止する方針が政府・産業界・金融界で共有されています。取適法とは別の流れですが、手形をやめる時期と、振込・電子記録債権・ファクタリングのどれに切り替えるかは重なる論点です。以下の記事で、廃止のスケジュールと代替手段を整理しています。

出典・参考資料(2件)

取適法の保護が及ばない取引に残る未回収リスク

ここまで、取適法が及ぶ範囲と、その中で守るべきルールを見てきました。受注する側から読み直すと、支払期日や遅延利息の保護は取適法の対象になる取引に限って働くことが分かります。

法の射程の外に残るもの

建設工事の再委託、双方が同じ規模区分に収まる取引、5類型のいずれにも当たらない取引には、受領日から60日以内の支払期日や年14.6%の遅延利息といった具体的なルールは適用されません。

ここで押さえておきたいのは、対象外だからといって規律が何もないわけではないという点です。優越的な地位を利用した不当な取扱いには独占禁止法が及びますし、改正法によって受託中小企業振興法の指導・助言・勧奨の対象も、取適法の対象外の取引を含む形に広がっています。

一方で、法律が扱えない領域もあります。取引先の支払能力そのものです。行政の規律は不当な支払遅延や減額を是正しますが、取引先が経営難に陥って支払えなくなったときに代金を肩代わりしてくれる法律はありません。売掛金が回収できないリスクは、取適法の対象であるかどうかにかかわらず、自社に残り続けます。

請求・回収と、支払期日や記録の管理を人の運用だけで続ける負荷

受注する側では、請求書の発行と送付、入金の消込、期日を過ぎた取引先への督促が、担当者の時間を継続的に使います。取引先の与信を自社で判断している場合はなおさらで、取引先が増えるほど負荷は積み上がります。ここは請求から回収までを外部に委ねることで軽くできる部分です。

発注する側の義務(受領日ごとの支払期日の設定、明示事項の伝達、記録の2年保存)も同じく継続的な運用ですが、こちらは掛け払い・請求代行の守備範囲ではありません。受発注や購買の仕組み、契約書・注文書のひな型と支払管理の運用で受けることになります。

ここからは、受注側の与信審査から請求書の発行・回収・督促、未回収の保証までを代行するサービスと、発注側が支払を平準化する仕組みを整理します。

出典・参考資料(2件)

未回収リスク・請求業務・支払の平準化を外部に委ねるサービス

ここからは、売掛金の未回収リスクを移したり、請求から回収までの業務を代行したりできるサービスを紹介します。取適法の対象にならない小規模な取引先まで与信・保証の対象にできるかどうかで、各社の対応範囲が分かれます。

各社の機能・料金は2026年6月時点、本記事で引用している条文・規則・公的機関の資料は2026年8月時点のものです。

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サービス名請求まるなげロボNP掛け払いサクっと分割マネーフォワード 掛け払い掛払い.comSAGAWA B2B決済サービス
仕組み売り手の与信〜回収を代行し
与信通過分を保証
売り手の与信〜回収を代行し
未回収を保証
買い手の支払を分割し
売り手へは期日に一括入金
売り手の与信〜回収を代行し
所定条件下で入金保証
売り手の与信〜回収を代行し
審査通過分を保証
売り手の与信〜回収を代行し
販売代金を保証
取引先の与信審査契約前に3営業日以内最短即時分割払い利用時に
カンム所定の審査
結果は平均1営業日以内新規取引先は最短当日
個人事業主・小規模事業者への与信公式の対象は法人個人事業主から大手まで対象公式に記載なし個人事業主・スタートアップも
審査対象
個人事業主・小口取引も対象個人事業主・信用調査会社に
情報のない先も対応
未回収(売掛金)の保証適格・与信通過債権が対象規約所定の除外事由を除く分割払いを選んだ請求書を
カンムが立替
所定の条件を満たす取引が対象審査通過取引が対象信用調査のうえ
1社ごとに限度額を決定
請求書の発行・送付郵送・メール郵送・メール×売り手が発行した
請求書に付帯
郵送・メール郵送・メール郵送・メール
代金回収・入金消込×
未入金時の督促メール・電話・弁護士法人×
初期費用要問い合わせ0円0円0円
(入金保証つきプラン)
要問い合わせ要問い合わせ
手数料1.0%〜要問い合わせ
(個別見積もり)
要問い合わせ
(原則 買い手負担)
0.5〜3.5%1.2%〜要問い合わせ
(従量制)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約サービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

※サクっと分割のみ、売り手の請求代行ではなく買い手の支払を平準化する仕組みで、他の5社とは比較の軸が異なります。並びは順位づけではありません。

掛け払いのサービスは、未回収保証の範囲・手数料・入金サイクルが提供会社ごとに異なります。もう少し多くの選択肢を横並びで見比べたい場合は、以下の記事が参考になります。

1. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求まるなげロボ

与信審査から請求書の発行・送付、代金回収、入金消込、督促までを一括して代行し、審査を通過した取引の売掛金を100%保証するサービスです。株式会社ROBOT PAYMENTが提供しています。

取適法との関係で注目したいのは、与信を通過しなかった請求先の扱いです。公式サイトの機能ページでは、与信が通らなかった請求先についても同一のシステム上で自社管理できるとしています。法の保護も与信も届かない取引先が手元に残るという現実に対して、通過分と不通過分を1つの基盤で扱える形になっています。

督促まで踏み込むのも特徴で、未入金時の対応には弁護士法人によるものが含まれます。与信審査は契約前に3営業日以内で回答が得られるため、導入を決める前に自社の請求先が通るかを確かめられます。手数料率は取り扱う商材・金額・販売方法により個別に算出されるため、実際の水準は見積もりで確認してください。

2. NP掛け払い(株式会社ネットプロテクションズ)

NP掛け払い

企業間取引に特化した請求代行サービスで、与信、請求書の発行と郵送、代金回収、入金管理、督促に加え、買い手からの問い合わせ対応まで引き受けます。規約に定める除外事由を除き、未回収は保証されます。

公式サイトは対象を「個人事業主から中小企業、請求先数の多い大手企業まで、業種・業界を問わず」と説明しています。取適法の規模基準を満たさない小さな取引先も、そのまま与信と保証の射程に入ります。

特徴は2点あります。1つは、買い手からの請求に関する問い合わせまで同社が引き受ける点です。請求書を出した後の電話やメールの対応が自社に戻ってこない形になります。もう1つは与信のスピードで、審査は最短で即時に完了し、通過率は99%とされています(2025年3月31日時点)。

料率は公式では非開示で、取り扱う商材や販売方法を踏まえた個別提案となります。比較する際は見積もりを取る前提で考えてください。

3. サクっと分割(株式会社カンム)

サクっと分割

他の5社とは向きが異なり、支払う側の資金繰りを整えるための仕組みです。買い手は受け取った請求書を最大1,000万円・4回まで分割して支払うことができ、株式会社カンムが代金を立て替えます。

売り手には、当初の請求書の期日どおりに一括で入金されます。手形払等が禁止されたことで長い支払サイトを使えなくなった委託事業者にとって、受注側の入金期日を動かさずに自社の支払を平準化する選択肢になります。導入費用は0円で、手数料は原則として買い手の負担です。

これは支払時期を調整する仕組みであって、取適法の遵守そのものを代替するものではありません。支払期日の設定・明示・記録の義務は委託事業者に残ります。買い手起点で分割に切り替えられる機能は2026年夏の提供が予定されています。

4. マネーフォワード 掛け払い(マネーフォワードケッサイ株式会社)

マネーフォワード 掛け払い

与信、請求書の発行と送付、回収、消込、督促を代行し、所定の条件のもとで100%の入金保証を付けられます。マネーフォワードケッサイ株式会社が企画・開発を担っています。

審査の対象について、公式の機能ページは「個人事業主・スタートアップ・中小企業など、法人格付けサービスでカバーされにくい先にも審査対応」と記しています。信用調査会社の格付けに情報が載らない取引先をどう扱うかは、取適法の規模基準を下回る相手と取引している企業には、直接の判断材料になります。

紹介する6社のなかで、料率の上限まで公式に示しているのはこのサービスです。手数料は委託金額の0.5〜3.5%で、プランは入金保証つきと請求代行のみの2つがあります。入金保証つきは初期費用・月額費用とも0円から、請求代行プランは初期費用0〜5万円・月額0〜3万円に加えて1件あたり300〜500円がかかります。

入金保証つきプランには、支払期日より前に振り込む早期入金のオプションもあります(申請から最短3営業日)。保証まで必要かどうか、資金化を早めたいかどうかで選び分けられる構成です。

5. 掛払い.com(株式会社キャッチボール)

掛払い.comのウェブサイト。企業間決済の与信管理・請求業務の代行と売掛金100%保証、インボイス制度対応を掲げるトップページ。

信用調査と与信管理から、請求書の発行、入金管理、回収、督促、取引先からの問い合わせ対応までを引き受けるサービスです。審査を通過した取引の売掛金は100%保証されます。

公式サイトは「個人事業主・小口取引を含め、規模・業種・業態を問わず対応」としています。取適法の規模基準を下回る相手と取引している企業にとって、この幅は選定の決め手になります。

回答の速さも特徴で、新規の取引先について利用の可否と利用可能枠を最短で当日に返します。商談中に与信の工程を挟んでも取引を止めずに済む速度です。取引先からの問い合わせ対応まで代行範囲に含まれます。

6. SAGAWA B2B決済サービス(SGシステム株式会社)

SAGAWA B2B決済サービスのウェブサイト。SGシステムのソリューションページで、与信から入金管理までBtoBのデジタル請求を担うB2B決済サービス(電子請求)を紹介している。

SGホールディングスグループのSGシステム株式会社が提供しており、信用調査、与信、販売代金の保証、請求書の発行と送付、督促までを代行します。

法人の審査通過率は約98%とされ、個人事業主や信用調査会社に情報のない事業者への与信にも対応します。

他社と分かれるのは信用調査のやり方です。販売先に知らせずに調査を行うサイレント方式を採るため、取引先に「与信に出された」と伝わらないまま未回収リスクだけを外に移せます。長い付き合いの相手に保証を掛けたいときに選びやすい形です。1社あたりの限度額と保証料率は、信用調査のうえ個別に決まります。

請求書の発行や入金の管理は自社で続けたまま、取引先の倒産や支払不能による未回収だけを外に出す方法もあります。保証会社が保証限度額の範囲で肩代わりする売掛保証サービスがそれにあたり、請求業務は今までどおりに保てます。料金体系や保証範囲の違いは以下の記事で比較しています。

まとめ

取適法は、下請法が題名から中身まで改められた法律です。押さえておきたい点を整理します。

  • 名称:題名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略称は「中小受託取引適正化法」、通称が「取適法」です
  • 施行日:2026年(令和8年)1月1日。同日以降に発注する取引から適用されます
  • 適用範囲:5つの取引類型に当たり、かつ当事者双方の資本金または従業員数が基準に該当する場合に適用されます。従業員数の基準(300人/100人)は今回の改正で加わりました
  • 義務と禁止行為:委託事業者には4つの義務(明示・記録の作成保存・支払期日の設定・遅延利息)と11の禁止行為があります
  • 罰則の範囲:50万円以下の罰金の対象は、明示・書面交付・記録の作成保存と、調査への対応に関する違反です。11の禁止行為そのものには罰則がなく、勧告と公表が働きます

自社の取引が対象かどうかは、契約書のひな型・支払サイト・記録の保存運用を開いて突き合わせるところから確かめられます。対象外の取引に残る未回収リスクについては、与信と回収を外部に委ねる仕組みで軽くできる部分があります。

各社の保証範囲・手数料・入金サイクルは資料で比較できます。自社の取引先の規模や請求件数に合うかどうか、あわせて検討してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 取適法は下請法と何が違うのですか?

A. 取適法は下請法を改正した法律で、題名と用語が変わっただけでなく、適用の判定基準・対象となる取引・禁止行為・執行体制の4点が実質的に広がっています

公正取引委員会・中小企業庁の説明資料は改正事項を6点に整理しています。用語は「親事業者」が「委託事業者」、「下請事業者」が「中小受託事業者」、「下請代金」が「製造委託等代金」に変わりました。適用の判定は資本金の額だけでなく常時使用する従業員数(製造委託等は300人、情報成果物作成委託・役務提供委託等は100人)でも行われます。

対象取引には特定運送委託が加わり、禁止行為には手形払等の禁止(第5条第1項第2号)と協議に応じない一方的な代金決定の禁止(第5条第2項第4号)が新設されました。執行面では、事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言の権限が付与されています(第8条)。

Q. 取適法はいつから適用され、施行前に発注した取引はどう扱われますか?

A. 取適法は2026年(令和8年)1月1日に施行され、同日以降に発注する取引に適用されます。2025年12月31日以前に発注した取引には、改正前の下請法が引き続き適用されます(改正法附則第二条第2項。罰則についても同附則第四条で同じ扱いです)。

判断の起点は納品日や支払日ではなく発注の時点です。公正取引委員会も、手形による支払の禁止を例に挙げて「令和8年1月1日以降に発注する取引について適用されます」と説明しています。施行日をまたぐ継続的な取引では、同じ取引先でも発注の時期によってどちらのルールが効くかが分かれます。

Q. 資本金が小さく下請法の対象外だった会社も、取適法の対象になりますか?

A. 対象になることがあります。取適法では資本金基準に加えて、常時使用する従業員数の基準が新たに設けられたためです。製造委託等では300人超、情報成果物作成委託・役務提供委託等では100人超の事業者が、委託事業者に当たり得ます(第2条第8項第5号・第6号)。

2つの基準は並列ではなく順序があります。公正取引委員会は「従業員基準は資本金基準が適用されない場合に適用されます」と説明しており、資本金で対象にならない取引を従業員数で拾う構造です。自社と取引先の組み合わせで判定に迷う場合は、公正取引委員会が公開している取適法簡易診断ツールで、資本金の額・従業員数・委託内容を選んで適用の範囲を確認できます。

Q. 取適法の「常時使用する従業員」には誰が含まれますか?

A. 取適法の「常時使用する従業員」とは、労働基準法第9条に規定する労働者のうち、日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される者を除く)以外の者を指します。人数は賃金台帳の調製対象となる人数で算定します。

公正取引委員会が含まれる例として挙げているのは、正社員・契約社員・委嘱社員・パートタイマー・アルバイト・1か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者です。船員も含まれます。

逆に含まれないと明示されているのは、派遣社員(派遣元が使用者となるため派遣先では数えない)と、グループ会社の従業員(従業員数は事業者単位で判断するため)の2つです。これら以外の立場の人については、労働基準法第9条の労働者に当たるかどうかと、賃金台帳の対象になっているかどうかで判断することになります。

数える時点は、製造委託等をした時点の人数です。発注する側が取引の相手方の従業員数を確認する義務はなく、賃金台帳の閲覧や写しの取得も必須とはされていません。

Q. 建設業は取適法の対象になりますか?

A. 建設業を営む会社であっても、建設工事の再委託(下請負)には取適法は適用されませんが、建設工事以外の委託取引には適用されます。建設工事の再委託は第2条第4項の括弧書きで役務提供委託から除かれており、建設業法が扱う領域です。

公正取引委員会は、同じ建設業者の取引でも取適法の類型に当たる例を具体的に挙げています。建設資材の製造を他の事業者に委託する場合は製造委託、請け負った建築物の設計・内装設計や工事図面の作成を委託する場合は情報成果物作成委託、販売する建設資材の運送を委託する場合は特定運送委託に該当します。

公正取引委員会のテキストが「業種でなく委託の内容で判断する」と注記しているとおり、業種で一律に外れるわけではなく、同じ会社の取引でも対象になるものとならないものが混在します。

Q. 取適法で作成した書類の保存期間は何年ですか?

A. 取適法にもとづいて作成する書類等の保存期間は、記載または記録をすべき事項の全部を記載・記録した日から2年間です。根拠は第7条の書類等の作成及び保存に関する規則(令和七年公正取引委員会規則第十号)第三条です。

対象は、給付、給付の受領、製造委託等代金の支払などについて記載・記録した書類または電磁的記録です。電磁的記録で保存する場合は、同規則第二条第3項が3つの要件を課しています。

訂正・削除を行ったときにその事実と内容を確認できること、記録した事項を画面に表示し書面に出力できること、取引先を識別する情報を条件に検索でき、発注日は範囲を指定して検索できることです。作成・保存を怠った場合や虚偽の記録を作成した場合は、第14条の罰則(50万円以下の罰金)の対象になります。

Q. 取適法の11の禁止行為に違反すると、50万円以下の罰金が科されますか?

A. いいえ。第5条の11の禁止行為そのものには罰則が定められていません。50万円以下の罰金の対象は、発注内容等の明示と書面の交付(第4条第1項・第2項)、書類等の作成・保存(第7条)の違反、および報告の拒否・虚偽報告・検査の拒否や妨害(第15条)です。

禁止行為に対して働くのは別のルートです。公正取引委員会は違反行為があると認めるときに勧告を行い(第10条)、勧告した場合は運用上、原則として事業者名・違反事実の概要・勧告の概要等を公表することとしています。勧告に従わない場合には、独占禁止法にもとづく排除措置命令や課徴金納付命令が行われることがあります。罰金がないから軽い、という話ではありません。

罰金の名宛人にも注意が必要です。第14条・第15条が罰するのは「代表者、代理人、使用人その他の従業者」=違反行為をした個人です。法人にも同額の罰金が科されるのは、第16条の両罰規定(「行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する」)によります。

Q. 取適法では、取引先からの値上げ要請に必ず応じなければならないのですか?

A. 値上げそのものに応じることは義務づけられていません。取適法が禁止しているのは、中小受託事業者から代金の額について協議を求められたにもかかわらず、協議に応じないまま一方的に代金を決めることです。求められた事項について必要な説明や情報提供をしない場合も同じです(第5条第2項第4号)。

この規定は今回の改正で新設されました。買いたたき(第5条第1項第5号)が「類似品等の価格または市価に比べて著しく低い」という市価の認定を必要とするのに対し、こちらは価格を決める過程そのものを問題にします。

協議の求めを放置する、先延ばしにして実質的に応じない、といった対応が該当します。結論として据え置くこと自体は禁じられていませんが、協議の場を持ち、判断の理由を説明できる状態にしておくこと、そのやりとりを記録に残しておくことが求められます。

Q. 取適法で手形払いをやめる際、割引料の分だけ代金を下げてもよいですか?

A. 下げてはいけません。公正取引委員会は、手形払から現金払に変更したうえで、現金を調達するために必要だとして製造委託等代金から一定額を割引料として減じて支払うことは減額として法違反になると明示しています。また、現金払への変更に際して一方的に従前の単価から一定率を引き下げることは、買いたたきまたは協議に応じない一方的な代金決定に該当するおそれがあるとされています。

振込手数料を委託事業者の負担に変更する場合も同じで、その分だけ単価を引き下げれば同様の問題が生じます。支払手段を変えるときは、代金の額を据え置くことが前提になります。あわせて、禁止されるのが約束手形だけではない点にも注意が必要です。電子記録債権や一括決済方式であっても、支払期日までに代金に相当する額の金銭と引き換えることが困難なものは使えません(第5条第1項第2号)。

Q. 取適法で支払期日を定めないまま発注した場合はどうなりますか?

A. 取適法では、支払期日を定めなかった取引について給付を受領した日が支払期日と定められたものとみなされます(第3条第2項)。受領日から60日を超える期日を定めた場合は、受領日から60日を経過した日の前日がみなしの支払期日になります。

支払期日を定めていない状態は、実質的に受領日払いを約束したのと同じ扱いになるということです。支払期日は発注時に明示すべき事項でもあるため(第4条第1項)、定めのない発注は明示義務の面でも問題になります。支払が遅れた場合の遅延利息は、受領日から60日を経過した日から支払日までの日数に応じて年14.6%で計算されます(第6条第1項、率は令和七年公正取引委員会規則第九号)。

Q. 取引先がフリーランスの場合、取適法とフリーランス法のどちらが適用されますか?

A. 取適法とフリーランス・事業者間取引適正化等法のいずれにも違反する行為については、原則としてフリーランス・事業者間取引適正化等法が優先して適用されます。取適法と独占禁止法のいずれにも違反する行為については、原則として取適法が優先します。

これは公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が連名で公表しているフリーランスガイドラインに示された考え方です。優先関係があるからといって、取適法が無関係になるわけではありません。フリーランスとの取引が委託事業者と中小受託事業者の取引に当たる場合を考えます。5つの類型(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託)のいずれかに該当すれば、取適法の規制の対象になります。

Q. 取適法の対象にならない取引には、何の規律も及ばないのですか?

A. いいえ。取適法の対象外の取引にも、独占禁止法の優越的地位の濫用の規制や、受託中小企業振興法にもとづく指導・助言・勧奨の枠組みは及びます。ただし、受領日から60日以内の支払期日、年14.6%の遅延利息、発注内容の明示や記録の保存といった取適法の具体的なルールは適用されません

もう1点、法律の側でどうにもならない領域があります。取引先の支払能力そのものです。行政の規律は不当な支払遅延や減額を是正しますが、取引先が経営難に陥って支払えなくなったときに代金を肩代わりする法律はありません。

売掛金が回収できないリスクは、その取引が取適法の対象かどうかにかかわらず自社に残ります。与信審査と請求・回収の代行、未回収の保証を組み合わせたサービスは、この部分を外部に移す選択肢になります。

出典・参考資料(8件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
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