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少額債権の回収代行はどこに頼む?弁護士・司法書士・サービサー・自力4類型の費用と手取りを実額比較

少額債権の回収代行はどこに頼む?弁護士・司法書士・サービサー・自力4類型の費用と手取りを実額比較のサムネイル画像

取引先から10万〜30万円の売掛金が2〜3か月入ってこない。社内で電話・督促状は繰り返したがスルーが続き、これ以上の工数は割けない——けれど諦めるには惜しい額。そんな未回収債権を「代わりに回収してもらう」ときに、どこに頼めばいくらかかるのか。費用倒れせずに判断したい人向けの記事です。

結論から言うと、少額債権の回収代行を頼める先は原則4系統(弁護士/認定司法書士/サービサー/自分で少額訴訟・支払督促)。ただしサービサー(法務省許可)は「特定金銭債権」22類型限定で、一般的なBtoB売掛金では実質的に弁護士/認定司法書士/自分で申立ての3択に絞られます。誤った先を選ぶと着手金だけで手取りがマイナスになる費用倒れを起こします。

本記事では、依頼先4類型の費用構造・合法性の線引き(弁護士法72条・サービサー法2条1項22類型・司法書士140万円上限)・10万/30万/100万円の手取り試算・自分で行う場合の実務フロー(時効の完成を6か月間止める催告=完成猶予、民法150条1項の使い方を含む)・予防選択肢(BtoB後払い決済・SMS/オートコール督促・督促自動化SaaS)・依頼先を選ぶ7つのチェック項目まで通しで整理します。

この記事を読むとわかること
  • 少額債権の回収代行を頼める4類型(弁護士/認定司法書士/サービサー/自分で少額訴訟・支払督促)と、それぞれが扱える債権の範囲
  • 各類型の着手金・成功報酬・実費の実額(公開料金ページで開示されている数字)
  • 10万・30万・100万円の債権額で、依頼先ごとに手取りいくら残るかの試算
  • 弁護士法72条・サービサー法2条1項22類型・司法書士法3条2項140万円上限の合法性の線引き
  • 内容証明→支払督促→少額訴訟を自分で行う場合の実務フローと、時効の完成を6か月間止める(完成猶予、民法150条1項)催告の使い方
  • 代行を頼む前に検討できる予防の選択肢(BtoB後払い決済・SMS/オートコール督促・督促自動化SaaS)

【結論】少額債権の代行先は4類型、あなたのケースに合うのはこれ

「少額債権 回収 代行」で検索して最初に知りたいのは、そもそも代わりに動いてくれる先にはどんな種類があるのか、という全体像です。

日本の法律の建て付けでは、業として(=報酬を得て反復継続的に)他人の債権を回収代理できるのは弁護士だけが原則で、そこに認定司法書士(140万円以下の代理権)とサービサーが例外として並びます。

もう1つ、代理を頼まず自分で少額訴訟や支払督促を使う道もあります。少額債権の代行先は、この4類型に集約されます。

そもそも「代行」とは:ここで扱う4類型の定義

本記事で扱う「代行」の4類型は次のとおりです。

  • 弁護士:金額の上限なく、あらゆる債権について交渉・訴訟代理・強制執行まで一括で受任できる。根拠は弁護士法3条・72条。
  • 認定司法書士:法務大臣の認定を受けた司法書士のみ、1件140万円以下の請求について簡易裁判所での訴訟代理関係業務を行える。根拠は司法書士法3条1項6号・2項+裁判所法33条1項1号。
  • サービサー:法務大臣の許可を受けた株式会社のみが、サービサー法2条1項に列挙された「特定金銭債権」22類型に該当する債権を、委託回収または債権譲受回収できる。一般的なBtoBの売掛金は原則として22類型に該当しない。
  • 自分で少額訴訟・支払督促:外部に代理を委任せず、簡易裁判所への申立て(民事訴訟法368条の少額訴訟・同法382条の支払督促)を自社で行う。外注費はゼロで、実費(申立手数料と郵便費用)のみで済む。

ときどき「債権回収代行業者」を名乗る民間業者を見かけますが、この5つ目の類型は上記4類型のいずれにも該当せず、弁護士法72条違反となる可能性があります(後述「合法性の線引き」の節で詳述)。

4類型の適合早見表:〜10万/10〜50万/50〜140万/140万超

4類型のどれが自分の債権額に適合するかを、金額帯で先に整理します。実額の詳細は次の H2「依頼先4類型の横並び比較」以降で掘り下げます。

← 横にスクロールできます →
〜10万円10〜50万円50〜140万円140万円超
第一候補自分で支払督促認定司法書士認定司法書士 or 弁護士弁護士
第二候補弁護士名の内容証明のみ単発依頼成功報酬型の弁護士/自分で支払督促・少額訴訟自分で通常訴訟(60万円超は少額訴訟不可)
解説弁護士や認定司法書士に一式を委任すると着手金だけで費用倒れになりやすい。支払督促は実費数千円〜1万円台で申立て可能で、相手が異議を出さなければ確定判決と同じ効力(民事訴訟法396条)が得られる認定司法書士は弁護士より着手金・報酬が抑えられるケースが多い(1件140万円以下・簡易裁判所の代理範囲内)。金額次第で自分での申立ても引き続き選択肢に入る認定司法書士の代理範囲上限(140万円)まで対応可能。事案の複雑さ(相手方の主張が予想される、証拠関係が争点になる)で弁護士に切り替える判断が入る認定司法書士は代理不可(司法書士法3条2項+裁判所法33条1項1号)。金額規模が大きくなるため着手金・成功報酬が乗っても費用倒れになりにくい

※上表は「相手方の所在・支払能力が判明しており、争点が単純な金銭債権」を前提とした一般的な適合の目安です。相手が破産手続開始決定を受けている場合はサービサー法2条1項16号・17号でサービサー対象になる例外があります。

迷ったときの判断フロー

金額帯と依頼先の対応がまだ確信が持てない場合は、次の3ステップで絞り込みます。

  1. まず内容証明を送って時効の完成を6か月止める:民法150条1項の催告により、送付日から6か月間は時効が完成しません(本文だけ準備すれば1通1,400〜1,700円程度で送れます。詳細は後述「Step 1」)。この6か月で依頼先を選ぶ余裕をつくります。
  2. 金額帯で第一候補・第二候補を確定する:上の早見表で「〜10万」なら支払督促、「10〜140万」なら認定司法書士か成功報酬型の弁護士、「140万超」なら弁護士、と順に絞ります。
  3. 候補の中から2〜3社に無料相談で見積もりを取る:弁護士報酬は2004年に日弁連の統一基準が廃止され、事務所ごとに自由に設定されているため(出典:日弁連「市民のための弁護士報酬ガイド」)、同じ金額帯でも見積もり金額の差が出ます。少額対応実績を公開しているか、料金の内訳が明確か、を軸に比較します。

依頼先4類型の横並び比較(弁護士/認定司法書士/サービサー/自力で少額訴訟・支払督促)

ここからは、各類型を「扱える債権範囲」「着手金」「成功報酬」「実費」「少額適合度」「代理可能な手続き」「依頼〜回収完了までの標準日数」の7列で並べます。まず全体の横並び表で俯瞰し、その下の各類型 H3 で、公開料金ページのある代表事務所・サービサーの実額と、どんな債権のときにその類型が向くか(向き不向き)を掘り下げます。

【スポット比較表】依頼先4類型 × 費用/範囲の横並び

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類型 / 項目弁護士認定司法書士サービサー(債権回収会社)自力で少額訴訟・支払督促
扱える債権範囲上限なし(金額・種類を問わない)1件140万円以下(司法書士法3条2項+裁判所法33条1項1号)特定金銭債権22類型のみ(サービサー法2条1項)/一般売掛金は原則対象外少額訴訟は60万円以下(民事訴訟法368条1項)/支払督促は上限なし
代表例各法律事務所(新麻布・グロース法律事務所ほか)認定司法書士事務所LENDY債権回収株式会社(LENDY債権回収)/法務省許可の72社(2026年8月3日時点)簡易裁判所への申立て(本人訴訟)
着手金の目安11万円〜(事務所により無料相談あり)3〜5万円(事務所により差)非公開(債権譲渡・回収委託の契約による)0円
成功報酬の目安回収額の10〜20%回収額の10〜20%非公開(回収額の一定割合)0円
実費内容証明1,320円〜/収入印紙・郵券は手続きごとに数千円〜数万円同上(内容証明・収入印紙・郵券)非公開支払督促=通常訴訟の半額+固定加算(電子2,500円/書面2,700円)/少額訴訟=請求額に応じた印紙代+郵券
少額適合度10万円未満は費用倒れになりやすい/30万円以上なら候補140万円以下なら弁護士より費用を抑えられる特定金銭債権22類型に該当するかで可否が決まる外注費用ゼロで手取り最大化/ただし相手の所在・支払能力が明確で時間工数を割ける前提
代理可能な手続き内容証明・支払督促・少額訴訟・通常訴訟・強制執行の全て簡易裁判所での訴訟代理・支払督促・少額訴訟(140万円以下)自己の名で法的手続き・強制執行(サービサー法3条)本人が自ら申立て(強制執行は別途申立て要)
依頼〜回収完了までの標準日数内容証明のみ2週間〜/訴訟に移行すると3〜6か月弁護士とほぼ同じ(2週間〜6か月)契約により幅広い(債権譲渡なら即時/回収委託なら3〜6か月)支払督促は申立から4〜6週間/少額訴訟は原則1回結審

弁護士に依頼する場合:着手金・成功報酬の相場と実例

弁護士は金額に上限がなく、交渉から訴訟代理・強制執行までを一括で受任できます。日弁連は2004年4月に統一の報酬基準を廃止しており、料金は事務所ごとに自由に設定されています。少額債権に特化して公開料金を出している代表例は次のとおりです。

  • 新麻布法律事務所(saikenkaisyu-shingu.com):交渉着手金11万円+回収額の10%を成功報酬。訴訟に移行する場合は着手金22万円+成功報酬15%。少額債権について交渉のみで受任可能な範囲を明示している数少ない事務所。対応地域は東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の4都県中心(全国相談も対応)。
  • グロース法律事務所(growth-law.com):手続きごとに料金を明示。内容証明3.3万円〜、支払督促11万円、少額訴訟・通常訴訟11万円〜、財産開示11万円〜、仮差押22万円〜。段階的に低コスト手法から始められる料金体系。
  • 子浩法律事務所(shikou-lpc.com)/ラグーン法律事務所(wakamatsu-law.com):本文中には具体料金は非公開。個別問い合わせで見積もり。

向き不向き:金額が140万円超、または140万円以下でも「相手方が反論してきそう」「証拠関係が争点になる」「強制執行まで進む可能性がある」ケースで弁護士が適します。逆に、10万円クラスで争点が単純な債権を全面委任すると、着手金だけで手取りが大きく削られます(試算は後述「費用シミュレーション」で提示)。

上記は関東圏中心の事務所例のため、大阪・名古屋・地方在住で対応地域が合わない場合は、日弁連「ひまわり相談ネット」で地域・分野別に少額債権対応の弁護士を検索できます。

認定司法書士に依頼する場合:1件140万円以下・簡裁訴訟代理関係業務の範囲

認定司法書士は、法務大臣による認定考査に合格した司法書士のみが担える資格で(司法書士法3条2項)、1件140万円以下の請求について簡易裁判所での訴訟代理関係業務(同法3条1項6号+裁判所法33条1項1号)を扱えます。すべての司法書士がこの代理権を持つわけではないため、依頼前に「認定司法書士」であることを事務所のウェブサイトや司法書士会名簿で確認します。

料金は事務所により異なりますが、公開情報の代表例として次の3事務所の料金体系を挙げます(いずれも140万円以下の債権回収に対応、実額は各事務所公式ページに基づきます)。

  • 星野合同事務所(司法書士法人/東京・水戸・福岡):訴訟報酬10万円+成功報酬5〜20%(判決・和解で認められた額の5〜10%、または回収した額の5〜20%、事案による)+実費。強制執行の着手金5万円〜。内容証明・支払督促・少額訴訟・通常訴訟まで140万円以下の債権回収全般に対応。
  • 飯田綜合法律事務所(東京・簡易案件は認定司法書士が担当・弁護士がサポート):140万円以下・簡易事案の着手金は請求額100万円以下で8万円(税別)、100万円超〜140万円以下で10万円(税別)。成功報酬は請求額100万円以下で得た利益の10%(税別)、100万円超〜140万円以下で2.5万円+得た利益の7.5%(税別)+実費。
  • 舞鶴中央司法書士法人(福岡):少額訴訟(60万円以下)は司法書士報酬1案件45,000円+郵便切手代約6,000円+印紙代1,000〜6,000円(請求金額による)の固定額料金体系。強制執行は司法書士報酬50,000円+印紙・郵便切手代約8,000円。

相場としては着手金3〜10万円+成功報酬5〜20%(または固定額)となっています(各事務所公開情報より)。事務所ごとに料金構造が異なるため、依頼前に必ず公式ページの料金表で最新実額を確認してください。

向き不向き:金額が140万円以下で、弁護士より費用を抑えたい・簡易裁判所での完結が見込めるケースが典型です。相手方が本人訴訟で対抗してくる程度の争点なら十分対応可能です。逆に、地方裁判所(訴訟の目的の価額が140万円超)や、複数の別訴・強制執行の見込みがある事案は弁護士に委ねる判断になります。

サービサー(債権回収会社)に依頼する場合:特定金銭債権22類型限定という前提

サービサーは、法務大臣の許可を受けた株式会社のみが営業できる債権管理回収業(サービサー法3条)で、2026年8月3日時点で全国72社が許可を受けています。許可業者リストは末尾の参考・出典セクションに掲載しています。

ただし取り扱える債権はサービサー法2条1項に列挙された「特定金銭債権」22類型のみで、金融機関の貸付債権・リース料債権・クレジットカード・割賦販売代金・保証履行後の求償権などが列挙されています。詳細は次の H2「合法性の線引き」で条文レベルで掘り下げます。

料金は公開している事業者が少なく、LENDY債権回収など少額対応を明示するサービサーでも本文中には非公開です。個別見積もりが基本。

向き不向き:自社の債権が22類型に該当する場合(例:金融事業者、リース会社、割賦販売事業者、保証会社)に選択肢に入ります。BtoBの売掛金・請負代金は前述のとおり対象外である点を、問い合わせ前に確認してください(相手方が破産手続開始決定を受けている場合は16号・17号で例外的に対象となる場合があります)。

自分で少額訴訟・支払督促を行う場合:外注費用ゼロ・実費のみ

代理を委任せず、自分で簡易裁判所に申立てを行う道です。60万円以下の金銭請求なら少額訴訟(民事訴訟法368条1項)、争点が少なく相手方が異議を出さないと見込めるなら支払督促(同法382条)が使えます。外注費はゼロで、申立手数料と郵便費用の実費のみで済みます。

向き不向き:相手方の所在と支払能力がある程度判明しており、争点が単純(契約書・請求書・入金予定表など基本的な証拠が揃っている)で、自社で申立書類作成・裁判所出頭(少額訴訟は原則1回)の工数を割ける場合に適します。

逆に、相手方が住所不定で公示送達しかできないケースは支払督促の対象外(同法382条ただし書き)ですし、争点が複雑で本人尋問・専門的な主張立証が必要な事案は代理人を立てるべきです。実務フローは後述「自分で行う選択肢」の節で Step 0〜4 として詳述します。

各類型の「依頼〜回収完了」までの標準日数と、自分がやること

「いつまでにお金が戻るのか」の目安を、各類型でクロスに並べます。相手方が任意に支払わず判決確定まで進んだ場合の想定です。

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弁護士(交渉のみ)弁護士(支払督促・訴訟)認定司法書士(140万円以下)サービサー(該当債権のみ)自分で支払督促自分で少額訴訟
標準日数1〜3か月3〜6か月2〜5か月個別見積もり申立てから確定まで1〜2か月(異議なしの場合)申立てから判決まで1〜3か月(原則1回結審)
自分がやること契約書・請求書・督促履歴の資料提供、着手金の入金、経過報告への対応上に加えて陳述書作成の協力、(少額訴訟の場合)1回の期日出頭に同席する場合あり弁護士と同様。簡易裁判所での期日は代理人が出頭債権譲渡または管理委託の契約書締結、原債権に関する資料提供申立書・添付書類の作成、収入印紙・郵券の準備、書記官からの補正指示への対応訴状・証拠書類の作成、期日への出頭(原則1回)、証拠説明

※支払督促は相手方が2週間以内に異議を申し立てると通常訴訟に移行し、その時点で追加の申立手数料が必要になります。移行後の日数は上の「訴訟」欄と同水準になります。

各類型の合法性の線引き(弁護士法72条・サービサー法特定金銭債権22類型・司法書士140万円上限)

依頼先を選ぶときに最初に確認するのが合法性のゲートです。自社の債権がそもそもその類型で扱える対象なのか、そして頼もうとしている業者が本当に代理権限を持っているのか——ここを外すと、対象外と分かって数日を無駄にしたり、最悪の場合は自社が違法業者への依頼者となって民法上の委任契約自体が公序良俗違反で無効となるリスクもあります。

弁護士のみが業として代理できる原則:弁護士法72条・非弁行為の禁止

他人の債権回収を業として(=報酬を得て反復継続的に)代理できるのは、原則として弁護士・弁護士法人だけです。この原則は弁護士法72条に定められています。

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

弁護士法第72条|e-Gov 法令検索

この72条を受けて、認定司法書士(司法書士法)とサービサー(サービサー法)が「他の法律に別段の定めがある場合」の例外として認められている、というのが日本の法律事務代理の全体構造です。

この3類型以外に「業として」債権回収代理を行うのは違法で、弁護士法77条3号により2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金という刑事罰の対象となります(令和4年改正で「懲役」から「拘禁刑」に一元化、2025年6月1日施行済み)。

認定司法書士の代理範囲:1件140万円以下、簡易裁判所訴訟代理関係業務

認定司法書士の代理範囲は、司法書士法3条1項6号イと裁判所法33条1項1号の2条文を合わせて読むことで確定します。「訴訟の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額を超えないもの」(司法書士法3条1項6号イ)=「訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求」(裁判所法33条1項1号)で、簡易裁判所の裁判権に属する範囲、が対応します。

簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)

裁判所法第33条第1項第1号|e-Gov 法令検索

さらに、この代理権を行使できるのは司法書士なら誰でも良いわけではなく、法務大臣が指定する研修を修了し、認定考査に合格し、司法書士会員である者に限られます(司法書士法3条2項1〜3号)。この三条件を満たした司法書士を「認定司法書士」と呼び、事務所のウェブサイトや日本司法書士会連合会の名簿で確認できます。

サービサーが扱えるのは特定金銭債権22類型のみ:一般売掛金は原則対象外

サービサーが扱える債権は、サービサー法2条1項に「特定金銭債権」として1号〜22号で限定列挙されており、この22類型に該当しない債権は営業として管理・回収できません。「サービサーに頼めば安く済む」と誤解して問い合わせて、対象外と告げられて時間を無駄にする——という失敗が起きやすい論点です。

22号のうち主要なものを抜粋すると、以下のとおりです(正確な全22号は e-Gov 出典で確認)。

  • 1号:金融機関等(銀行・信用金庫・農林中央金庫・貸金業者等)が有する貸付債権
  • 4号:リース契約に基づいて物品を使用させる対価としての金銭債権(リース料債権)
  • 5号〜7号の2:クレジットカード・割賦販売等に係る金銭債権
  • 8号・10号・11号:資産流動化法に規定する特定資産である金銭債権
  • 15号:金融機関等であって、事業を行う者から金銭債権を買い取ることを業として行うものが有する金銭債権(買い取ったものに限る)
  • 16号・17号:破産手続開始決定等を受けた者が有する(または譲渡した)金銭債権
  • 20号:前各号の金銭債権を担保する保証契約に基づく債権
  • 21号:信用保証協会その他政令で定める者が前号に掲げる債権に係る債務を履行した場合に取得する求償権

ここから読み取れる線引きは明快で、中小事業者の一般的なBtoB売掛金・請負代金・報酬債権は、原則として22類型のいずれにも該当しません。例外は、相手方(債務者)が破産手続開始決定・再生手続開始決定・更生手続開始決定を受けた場合(16号・17号)と、金融事業者・リース事業者・割賦販売事業者・保証事業者などが有する債権(1号・4号・5号・15号・20号・21号)です。

自社の債権がどこに該当するか判然としないときは、サービサーへの問い合わせ時に「弊社の売掛金は御社の取扱対象になりますか」と最初に確認すれば、対象外の場合は初回のやり取りで判明します。

サービサー許可の要件:資本金5億円以上、取締役に弁護士

サービサー法5条は、法務大臣が営業許可を出す際の欠格事由を列挙しています。1号で「資本金の額が五億円以上の株式会社でない者」、4号で「常務に従事する取締役のうちにその職務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有する弁護士のない株式会社」と定められています。

この2点は法務省の公式解説でも「(1) 5億円の最低資本金、(2) 暴力団員等の関与がないこと、(3) 常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれていること」と平易に整理されています。

この高いハードルをクリアして許可を受けているサービサーは全国で72社(2026年8月3日時点)に絞られています。ここに載っていない事業者が「債権回収を代行します」と営業していれば、それは弁護士法72条違反の可能性が高い違法業者と判断できます。

法務省「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」(発行機関の公式ページ)で最新の許可業者リストを確認できます。

非弁行為の見分け方:違法業者を掴まないための3点チェック

「債権回収代行」を名乗る民間業者に頼むリスクを回避するチェック項目は3つです。

  1. 法務省の許可業者一覧に載っているか:載っていなければ、サービサーとして委託回収も債権譲受回収もできません(サービサー法3条違反となります)。
  2. 弁護士法人または認定司法書士事務所として登録されているか:日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会の会員名簿で確認できます。
  3. 料金体系が公開されているか:着手金・成功報酬率・実費の内訳が事務所ウェブサイトに公開されているかを見ます。合法な事業者は基本的に料金の透明性を確保しており、逆に「詳しくは問い合わせ」以外の情報が何もない業者は要注意です(弁護士事務所でも料金非公開は珍しくないため、これ単独ではなく1・2との組み合わせで判断します)。

この3点で1つでも該当項目があれば、依頼先候補から外します。「業として」の代行を無資格で行った者への刑事罰は前述のとおり2年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金(弁護士法77条3号)で、依頼者側に直接の刑事責任は及ばないものの、委任契約が公序良俗違反で無効となる場合は着手金の返還請求も難航します。

10万・30万・100万円ケース別 費用シミュレーション

費用倒れが起きるかは、自分の債権額と依頼先の料金構造の掛け合わせで決まります。ここでは10万・30万・100万円の3ケースについて、依頼先ごとに「着手金+成功報酬+実費」を差し引いた手取り試算を並べます。金額は各法律事務所の公開料金ページに基づく代表例で、成功報酬は「回収額に対する率」で計算しています(試算前提の詳細は末尾で開示)。

ケース1:10万円の未払い売掛金

← 横にスクロールできます →
弁護士(新麻布法律事務所・交渉のみ)弁護士(グロース法律事務所・内容証明のみ単発)認定司法書士(相場:着手金3万+成功報酬15%)自分で少額訴訟(60万円以下)自分で支払督促
着手金11万円3.3万円(内容証明作成)3万円0円0円
成功報酬1万円(10%)なし1.5万円0円0円
実費内容証明約0.17万円内容証明約0.17万円内容証明約0.17万円約1,000円(訴額10万円の印紙代)+郵券約3,200円(訴額10万円分500円+書面加算2,700円、電子申立ては加算2,500円)
手取り▲約2.2万円(費用倒れ)約6.5万円約5.3万円約9.8万円約9.7万円
備考少額債権を全面委任すると着手金だけで元本を上回り、手取りがマイナスに「代行」を絞って単発依頼にすれば費用対効果が保てる事務所により料金差あり、要見積もり事案単純・相手方所在明確なら1回結審。証拠準備の工数は自社負担相手方が異議を出さない前提。異議が出れば通常訴訟に移行し追加費用

10万円クラスは、弁護士に一式を委任すると着手金だけで元本を上回るケースが典型で、手取りは大きくマイナスになります。合理的な選択肢は「内容証明のみ単発依頼」または「自分で支払督促」の2択です。

ケース2:30万円の未払い売掛金

← 横にスクロールできます →
弁護士(新麻布法律事務所・交渉のみ)弁護士(グロース法律事務所・支払督促)認定司法書士(相場:着手金5万+成功報酬15%)自分で少額訴訟(60万円以下)自分で支払督促
着手金11万円11万円5万円0円0円
成功報酬3万円(10%)4.5万円(15%)4.5万円0円0円
実費内容証明約0.17万円約4,200円(訴額30万円分1,500円+書面加算2,700円)約4,200円(訴額30万円分1,500円+書面加算2,700円)約3,000円(訴額30万円の印紙代)+郵券約4,200円(訴額30万円分1,500円+書面加算2,700円、電子申立ては加算2,500円)
手取り約15.8万円約14.1万円約20.1万円約29.7万円約29.6万円
備考回収成功前提。任意交渉で解決すれば実用的な水準支払督促の申立てまで代行。成功報酬なしの単発なら約18.6万円140万円以下の範囲で最も費用対効果が高いケースが多い60万円以下の金銭請求で原則1回結審。相手方の所在明確・争点単純が前提時間工数が確保できれば最大の手取り。異議申立ての可能性を要検討

30万円クラスでは、認定司法書士または成功報酬型の弁護士が費用対効果の候補に上がります。自分で支払督促を出す選択肢も引き続き有効で、事案が単純なら手取り最大化になります。

ケース3:100万円の未払い売掛金

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弁護士(新麻布法律事務所・交渉のみ)弁護士(訴訟移行時)認定司法書士(相場:着手金5万+成功報酬15%)自分で少額訴訟(60万円以下)自分で支払督促
着手金11万円22万円5万円0円
成功報酬10万円(10%)15万円(15%)15万円0円
実費内容証明約0.17万円約1万円(訴額100万円の印紙代)+郵券約7,700円(訴額100万円分5,000円+書面加算2,700円)約7,700円(訴額100万円分5,000円+書面加算2,700円、電子申立ては加算2,500円)
手取り約78.8万円約62万円約79.2万円約99.2万円
備考任意交渉で解決した場合。訴訟に移行すれば着手金22万+成功報酬15%へ通常訴訟。判決確定・強制執行までは別途費用140万円以下なので認定司法書士の代理範囲内少額訴訟は60万円以下のため不可(民事訴訟法368条1項)。通常訴訟または支払督促を選択異議なし前提。事案が単純ならこの選択肢が費用対効果最大

100万円クラスでは、弁護士・認定司法書士どちらも実用的な選択肢で、費用に対する手取りの目減り率が金額に対して抑えられます。事案の複雑さ・相手方の反論可能性で、代理人を立てるかを判断します。

試算の前提条件

  • 計算式:手取り=元本 −(着手金+成功報酬+実費)/満額回収を前提としているため、減額和解や一部回収の場合は手取りが目安より少なくなります。成功報酬は「回収額に対する率」で計算。
  • 着手金・成功報酬は各法律事務所の公開料金ページ(新麻布法律事務所・グロース法律事務所)と、認定司法書士事務所の公開情報から代表値を採用。実際の見積もりは事務所により変動します。
  • 裁判所実費(申立手数料)は民事訴訟費用等に関する法律の別表第一(訴え提起)・別表第二11の項(支払督促)に基づく概算。支払督促の申立手数料は訴え提起手数料の半額に固定加算(電子申立てで2,500円、書面で2,700円)という構造で、2026年5月21日以降の裁判所改正により、従来別建てだった郵便費用は申立手数料に一本化されました(出典:裁判所「支払督促」公式ページ)。
  • 内容証明の実費は日本郵便公式に基づき、加算料金480円+書留480円+一般書留郵便料金(定形50g以内110円、2024年10月改定)+配達証明加算350円を合わせて約1,400〜1,700円を採用(1枚・配達証明あり・定形郵便物の場合。2枚目以降は加算料金290円が上乗せ。出典:日本郵便「内容証明」)。
  • サービサーは特定金銭債権22類型限定のため一般売掛金は原則対象外。相手方が破産手続開始決定を受けた場合は例外(サービサー法2条1項16号・17号)。上記3ケースの費用シミュレーション表ではサービサー行を割愛。
  • 回収成功率(回収に至る割合)は各事務所とも公開しておらず、本試算では扱っていません。

費用倒れを避けるための3つの原則

  1. まず内容証明で相手の反応を見る:1,400〜1,700円で「本気度」を伝えられ、相手が任意支払いに応じる場合もあります。同時に民法150条1項による時効の完成猶予(6か月)も獲得できます。
  2. 金額×勝算×スピードで類型を選ぶ:10万円クラスは自分で支払督促か内容証明単発依頼、10〜140万は認定司法書士または成功報酬型弁護士、140万超は弁護士、を出発点とし、そこから事案の複雑さで調整します。
  3. 無料相談を2〜3社使う:弁護士報酬は2004年に自由化されているため、同じ金額帯でも見積もり差が出ます。初回無料相談を活用して比較します。

自分で行う選択肢:内容証明→支払督促→少額訴訟の実務フロー

代行を頼まず自分で回収を進める場合、内容証明の送付から強制執行までは Step 0〜4 の順で進みます。特に少額債権では、この道が費用対効果の面で第一候補になるケースが少なくありません。

Step 0:時効まで残り時間チェック(民法150条+民法166条)

手続きに入る前に、その債権の時効まで残り時間を確認します。改正民法(令和2年4月1日施行)の民法166条1項は、次の二段の起算構造を定めています。

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

民法第166条第1項|e-Gov 法令検索

BtoBの売掛金では、請求できる時=知った時が一致するケースが多く、実務的には支払期日から5年で消滅時効にかかるとみて動きます(旧法の商事時効5年と実質的に大差ありません)。

時効まで残り時間が短い場合、内容証明の送付による「催告」で6か月間だけ時効の完成を止められます。根拠は民法150条1項です。

催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

民法第150条第1項|e-Gov 法令検索

この6か月の間に、後述の Step 2「支払督促の申立て」または Step 3「少額訴訟」(=民法147条1項1号・2号の「裁判上の請求」「支払督促」に該当)へ進めば、そこから確定判決または支払督促確定までの間は継続して時効が完成せず、確定すれば新たに時効の進行が始まります(民法147条2項)。催告を繰り返しても、この6か月間の完成猶予は積み重ねられないため、6か月以内の裁判手続移行が必要です。

Step 1:内容証明郵便を送る(実費約1,400円/弁護士名で送る場合3.3万円〜)

内容証明郵便は、郵便法48条1項に基づき「郵便物の内容である文書の内容を証明する」制度で、いつ・どんな文面を・誰宛てに送ったかを日本郵便が証明します。少額債権の督促で最初に打つ手として広く使われます。

実費は、日本郵便公式によれば、加算料金480円+書留480円+一般書留の郵便料金(定形50g以内110円、2024年10月改定)+配達証明加算350円で、1通あたり約1,400〜1,700円(1枚・配達証明あり・定形郵便物の場合。2枚目以降は加算料金290円が上乗せ)です。

自社の代表者名で送るのと、弁護士名(=弁護士事務所の便箋・弁護士職印)で送るのとでは、相手方に与える心理的圧力に差が出ます。弁護士名で送る場合の作成料金の代表例は、グロース法律事務所の3.3万円〜。この単発依頼だけで相手が任意支払いに応じるケースもあり、10万円クラスの少額債権では費用対効果の高い選択肢です。

本文に含める記載必須項目チェックリスト(自社で作成する場合、この項目を漏らさず入れれば「催告」=民法150条1項の完成猶予事由として機能します):

  • 宛名(相手方の法人名・代表者名・本店所在地。個人事業主なら屋号と本名)
  • 差出人(自社の法人名・代表者名・本店所在地・連絡先)
  • 請求金額の内訳(対象取引の請求書番号・発行日・請求額・遅延損害金を計算する場合はその起算日)
  • 振込先(銀行名・支店名・預金種別・口座番号・口座名義)
  • 支払期限(催告文書の到達日から起算した具体的な日付を明記)
  • 期限までに支払わない場合の対応(支払督促・少額訴訟等の法的措置に進む旨を明示)
  • 作成日

効果と限界としては、内容証明は「送った・届いた」の事実は証明されるものの、それ自体には強制力がありません。相手が無視すれば、次の Step 2 以降に進むことになります。

Step 2:支払督促の申立て(民事訴訟法382条・簡易裁判所書記官への申立て)

支払督促は、簡易裁判所の書記官が書類審査のみで発する督促手続で、原則として審尋(相手方の言い分を聞くこと)も出頭も不要です。民事訴訟法382条が根拠です。

金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。

民事訴訟法第382条|e-Gov 法令検索

申立先は、原則として債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所(同法383条)。申立手数料は、民事訴訟費用等に関する法律の別表第二11の項により、訴え提起手数料(同法別表第一)の半額に、電子申立てで2,500円・書面で2,700円が固定加算される構造です。

2026年5月21日以降は、書面および督促手続オンラインシステムに加えて、mints(民事裁判書類電子提出システム)による電子申立てが可能になり、従来別建てだった郵便費用は申立手数料に一本化されました(裁判所公式ページ、末尾の参考・出典を参照)。

支払督促が発せられた後、債務者が2週間以内に異議を申し立てなければ、仮執行宣言付支払督促として確定判決と同一の効力を得ます(民事訴訟法396条)。異議を申し立てた場合は、請求額に応じて簡易裁判所または地方裁判所の民事訴訟手続に移行します。

Step 3:少額訴訟(民事訴訟法368条・60万円以下・原則1回結審)or 通常訴訟

60万円以下の金銭請求で、争点が単純な場合に使えるのが少額訴訟です。民事訴訟法368条1項が要件を定めています。

簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。

民事訴訟法第368条第1項|e-Gov 法令検索

ただし書きの「年に最高裁判所規則で定める回数」は、民事訴訟規則223条により同一原告あたり同一簡裁で年10回までと定められています。これは、貸金業者などが定型的な少額訴訟を大量に持ち込むのを防ぐための制限です。

少額訴訟は原則として1回の期日で審理・判決まで到達する運用で(同法370条)、証拠は即時に取り調べ可能なもの(書証・在廷証人)に限られます。相手方が通常手続への移行を求めた場合は少額訴訟から通常訴訟に切り替わります(同法373条)。60万円を超える請求や、争点が複雑な事案では通常訴訟を選択します。

裁判所公式ページでも少額訴訟の手続き概要が図入りで解説されています(末尾の参考・出典を参照)。

Step 4:判決確定後の強制執行と、2020年改正で強化された財産開示手続

支払督促確定または判決確定を得ても、相手方が任意に支払わない場合、強制執行に進みます。強制執行の対象は不動産執行・動産執行・債権執行の3類型で、それぞれ民事執行法が手続きを定めています。少額債権の実務で使われるのは、預貯金債権・給与債権を差し押さえる債権執行が中心です。

ただし、強制執行を申し立てるには「相手方のどの財産を差し押さえるか」を債権者側で特定する必要があります。ここで長年課題だったのが、債務者の財産情報を債権者が把握できないケースで、令和2年(2020年)4月1日施行の民事執行法改正で大きく強化されたのが以下の2制度です。

  • 財産開示手続(民事執行法196条・197条):執行力のある債務名義の正本を有する債権者の申立てにより、執行裁判所が債務者に財産開示期日への出頭を命じ、宣誓のうえで財産状況を陳述させる手続き。2020年改正で、不出頭・虚偽陳述に対して従来の過料(30万円以下、行政罰)から6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(同法213条1項5号・6号)という刑事罰に格上げされ、実効性が大幅に向上しました。
  • 第三者からの情報取得手続(民事執行法204条〜207条):2020年改正で新設された制度で、執行裁判所が金融機関・登記所・市町村・日本年金機構等の第三者に照会し、債務者の預貯金債権・不動産・給与債権に関する情報を取得できます。財産開示手続を実施しても相手方が実行しない場合の実効的な選択肢です。

この2制度により、「相手方の口座も勤務先も分からない」状態でも判決確定後に財産情報を裁判所経由で取得する道筋が用意されており、強制執行の実効性は改正前より格段に高まっています。

「自分でやる」を選ぶときの現実的な工数と勝算の目安

自分でやる選択肢の費用対効果は最大ですが、工数の見積もりは冷静に行います。目安として、支払督促申立書の作成に3〜5時間、簡易裁判所書記官からの補正指示への対応に1〜2時間、少額訴訟の期日出頭に半日、が発生します。相手方の異議申立てや強制執行への移行があれば、さらに数時間から数日単位の工数が上乗せされます。

勝算の観点では、契約書・請求書・督促履歴・入金予定表など基本的な証拠が整っており、相手方の所在(送達可能な住所または法人本店所在地)が判明しているケースは、支払督促で異議なしのまま確定するケースが多く見られます。逆に、相手方が住所不定で送達できない場合は支払督促の対象外(民事訴訟法382条ただし書き)で、公示送達可能な通常訴訟の道を検討します。

依頼先を選ぶチェックリスト

ここまでで依頼先候補を絞り込めたら、実際に問い合わせ・資料請求に進む直前に、次のチェック項目で最終確認します。少額債権では、選択を誤ると費用倒れや対象外判定で時間を無駄にしやすいため、事前チェックの費用対効果が高い工程です。

依頼先を選ぶ7つのチェック項目

  1. 法務大臣許可の有無を確認したか(サービサーの場合)法務省の許可業者一覧に載っているかを確認。載っていない業者は営業自体が違法です。
  2. 認定司法書士か弁護士かを明示しているか:司法書士事務所の場合、法務大臣認定を受けた「認定司法書士」でなければ140万円以下でも代理不可です(司法書士法3条2項)。事務所ウェブサイトで認定の有無を確認します。
  3. 料金の内訳が公開されているか:着手金・成功報酬率・実費の内訳が明示されているか。「相場」「数十万円」などの曖昧表現でしか記載がない場合、見積もり時に想定外の費用が発生するリスクがあります。
  4. 少額対応実績が開示されているか:少額債権の受任実績を数値または事例で示しているか。少額特化を謳っていても、実際の受任金額帯が公開されていない場合は問い合わせで確認します。
  5. 成功報酬型か固定料金かを確認したか:回収成功時のみ報酬が発生する成功報酬型か、着手金+成功報酬の伝統型か、着手金なしで完全成功報酬型か。少額債権では成功報酬型のほうが費用倒れリスクを抑えられます。
  6. 無料相談の有無を確認したか:初回無料相談を用意している事務所か。日弁連が2004年に統一報酬基準を廃止して以降、事務所ごとに料金差が出ているため、複数社の相見積もりが有効です(出典:日弁連「市民のための弁護士報酬ガイド」)。
  7. 対応地域とスピードを確認したか:対応地域が全国か特定地域か、依頼から着手までの標準日数はどのくらいか。特に時効まで残り時間が短いケースでは、スピード確保が優先軸になります。

失敗する依頼の共通パターン

  • 「相場です」で実額を伏せて見積もりを出す事務所。契約後に想定外の費用(実費・遠方出張費)が発生するケースがあります。
  • 「少額特化」を大きく打ち出しているのに、料金体系が高く、10万円クラスでは費用倒れになる事務所。少額特化=低料金とは限りません。
  • 法務省の許可番号・弁護士登録番号・司法書士登録番号を出さない事業者。合法な事業者はこれらの登録情報を明示します。

問い合わせ前に自社で準備しておく資料

  • 契約書(基本契約書・個別発注書・見積書)
  • 請求書(未回収分すべて)
  • 督促履歴(電話メモ・メール・督促状のコピー、日付が特定できる形式)
  • 入金予定表(相手方が任意に約束した支払予定日と、実際の入金の有無)
  • 相手方の商業登記事項証明書(法人の場合、本店所在地・代表者の確認用)

これらが揃っていると、初回相談・見積もりの精度が上がり、着手までのスピードも早まります。逆に、督促履歴が「電話した」しか残っていない場合、初回相談で「まず内容証明から」の判断に落ち着くケースが多くなります。

代行を頼む前に検討すべき「予防」の選択肢

今回の少額債権を回収する道筋が見えてきたら、同時に検討したいのが「次回以降の未回収を発生させない」予防の選択肢です。

回収代行はすでに発生した未回収への対応ですが、根本的にはBtoB取引の与信・請求・督促のプロセス自体をアウトソースするか自動化することで、未回収を発生させないほうが手取りが大きく残ります。予防の系統はBtoB後払い決済(保証型)/SMS・オートコール督促/督促自動化SaaSの3系統に整理できます。

予防1:BtoB後払い決済で与信・請求・回収を委託し、未回収そのものを無くす

BtoB後払い決済(掛け払い)サービスは、取引先の与信審査・請求書発行・代金回収を代行するサービスで、多くが未回収リスク100%保証型を採っています。取引先が支払わなかった場合でも、決済事業者が売上額を保証してくれるため、自社は取引時点で売上金が保証される状態になります。少額の請求(1件から)にも対応するサービスがあり、少額債権の未回収リスクそのものを取引前に消せます。

なお、BtoB後払い決済は複数の事業者が提供しており、未回収保証の範囲・手数料の負担者(売り手/買い手)・入金サイクルはサービスごとに異なります。掛け払い(企業間後払い決済)12サービスを横並びで比較検討したい場合は、以下の記事もあわせて参照してください。

予防2:SMS督促・オートコール督促で初期督促を自動化し、電話工数を削減

すでに督促工数が発生しているフェーズを削減するのが、SMS督促・オートコール督促の系統です。SMSは開封率が高く、支払リマインドの初期段階で入金を促す効果があります。オートコール(自動架電IVR)は、大量の督促架電を人手をかけずに実行できます。少額債権の初期督促でこれらを使うことで、電話工数を大きく削減できます。

SMS・オートコール・RCSといった督促チャネルを、料金体系や段階督促の組み立て方まで含めて比較検討したい場合は、以下の記事でBtoC消費者債権向けの9サービスをチャネル別に整理しています。BtoBの少額債権督促でも段階督促の設計思想は共通するため、チャネル選択の参考になります。

予防3:督促自動化SaaSで滞納状況の可視化・入金消込を自動化

督促のシナリオ(初回リマインド→督促状→架電→内容証明送付、といった段階的な対応)を SaaS 上で設計し、滞納状況を一元管理して自動実行する系統です。メール・SMS・IVR・書面など複数チャネルを組み合わせられるサービスもあり、金融事業者やBtoB SaaS事業者が採用しています。

【スポット比較表】少額債権対策として使えるカタログ内サービス比較

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サービス名請求まるなげロボ絶対リーチ!RCSSMSマルチPayDHKクラウド オートコール債権回収ロボLectoPaid
予防タイプBtoB後払い決済SMS/RCS督促SMS決済+督促BPOオートコール督促督促自動化SaaS督促自動化SaaSBtoB後払い決済
主な機能与信〜請求〜回収〜督促を一括代行RCS配信+SMSフォールバック+チャットボットSMS通知+本人認証+25種決済+督促BPO自動架電(IVR)+SMS/メール送信メール/SMS/オートコールの多チャネル督促シナリオ自動実行メール/SMS/IVR/書面の多チャネル督促+債権管理与信〜請求〜回収〜消込〜督促を一括代行
少額対応1件から利用可(下限なし)1通単位(月額1,000円〜)初期20,000円〜、少量利用は割高月額5万円〜、大量発信向け要問い合わせ(料金非公開)従量課金(下限は要問い合わせ)1件から利用可(事務手数料125円/件)
料金体系初期0円
手数料1.0%〜
初期0円/月額1,000円〜
SMSフォールバック3.3円〜/通
初期20,000円〜/月額0円
送信20円〜(決済手数料は要問い合わせ)
初期50,000円〜/月額50,000円〜(月1,000件込)
1,001件目〜 固定21円・携帯32円/件(応答課金)
要問い合わせ要問い合わせ
(月額基本料+督促数の従量)
初期0円/月額0円〜
保証料0.5〜3.5%+事務手数料125円/件
未回収保証100%保証(適格・与信通過債権)×××××100%保証
導入実績非公開
事例: ネオス/日鉄興和不動産/ファストドクター
シリーズ8,000社以上
(RCSは2024年9月提供開始)
非公開
(提供元ネクスウェイ全社で約17,000社)
1,500社
(DHKクラウド全体、2024年4月時点)
非公開
事例: クルカ/クロスリンク/アルカナエナジー(2026年3月提供開始)
非公開
事例: ブリヂストンTS/freee finance lab/GMOペイメントゲートウェイ
累計5,500社以上
(2025年4月時点)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約サービス詳細を見るサービス詳細を見る

サービス個別紹介

1. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求まるなげロボ 公式サイトのスクリーンショット

与信審査・請求書発行・代金回収・入金消込・督促までを一括代行するBtoB請求代行サービスで、株式会社ROBOT PAYMENT(東証グロース)が提供します。与信通過分は売掛金100%保証で、未回収時の督促は弁護士法人対応まで同社が担います。料金は初期0円・手数料1.0%〜(月額具体額は要問い合わせ)。1件から利用可で下限なし。

少額債権回収代行の文脈では、費用倒れになりやすい10万〜30万円クラスの未回収を、取引前の与信で切って発生自体を無くす予防型として機能します。

2. 絶対リーチ!RCS(AI CROSS株式会社)

絶対リーチ!RCS 公式サイトのスクリーンショット

電話番号だけを宛先にRCS(画像・動画・ボタン付きリンク)を送信し、RCS未対応端末には自動でSMSにフォールバックする督促・リマインド配信サービス。AI CROSS株式会社(東証グロース)が提供し、姉妹「絶対リーチ!SMS」を含むシリーズで導入8,000社以上(2026年8月時点、公式表記)。料金は初期0円・月額1,000円/アカウント〜、SMSフォールバック3.3円〜/通。

いえらぶパートナーズが月間約2億円分の家賃保証督促をRCSで自動化して月間約640時間の業務負荷を削減した事例があり、電話・郵送での督促工数がかさむ10万〜30万円クラスの一次接触コストを電話番号のみで下げる用途を主用途とします。

3. SMSマルチPay(株式会社ネクスウェイ)

SMSマルチPay 公式サイトのスクリーンショット

SMS送信・本人認証・25種類のマルチ決済・督促BPOをパッケージ化した請求/未収金回収サービス(2025年1月提供開始)。株式会社ネクスウェイ(TISインテックグループ)が提供。決済URLをSMSで送りパスワード認証後にクレジット・コンビニ・銀行振込・ID決済・キャリア決済等から支払方法を選ばせる設計。未収検知後はコールセンター架電・督促状発送のBPOと組み合わせ可能。

料金は初期20,000円〜・月額0円・送信単価20円〜(決済手数料は要問い合わせ)。少額債権の初期督促から回収までを1本の導線でまかないたいケースに合いますが、初期費用があるため少量利用では単価が割高になります。

4. DHKクラウド オートコールIVR(株式会社電話放送局)

DHKクラウド オートコールIVR 公式サイトのスクリーンショット

発信リストへの一斉自動架電+IVRで督促電話を無人化するクラウド型サービス。株式会社電話放送局(1978年創業)が提供、DHKクラウド全体で導入1,500社・処理能力1時間5,000件以上/同時300回線以上(2024年4月時点)。料金は初期50,000円〜/月額50,000円〜(月1,000件込)、1,001件目〜は固定21円・携帯32円/件の応答課金。

不応答分には課金されない応答課金型のため、督促状郵送(全件コスト発生)に比べて少額債権1件あたりの督促コストを下げやすく、10万〜30万円クラスを大量に持つ事業者の初期・中期督促の自動化に適合します(月額があるため少量利用では割高)。

5. 債権回収ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

債権回収ロボ 公式サイトのスクリーンショット

2026年3月10日提供開始の督促・回収SaaSで、メール・SMS・オートコール(IVR)を組み合わせた督促シナリオを債務者属性・債権額に応じて設計・自動実行します。株式会社ROBOT PAYMENT(東証グロース)が提供、催促スケジュール自動最適化技術で特許出願済み。料金は要見積。

導入事例は新車サブスクの株式会社クルカ、予防医学のクロスリンク等。1件あたりの金額は小さいが件数が多い定期債権の督促を、メール→SMS→自動架電の順で無人シナリオ化する状況で選択肢に入ります。

6. Lecto(Lecto株式会社)

Lecto 公式サイトのスクリーンショット

債権管理・督促・回収に特化したデジタルプラットフォーム。Lecto株式会社(2020年11月設立)が提供。中核機能はメール/SMS/IVR/書面の4チャネル督促自動送信で、督促履歴・受電履歴・交渉履歴を自動記録し、債務者プロフィール・関連債務・入金消込までを一元管理します。料金は月額基本料+従量課金(具体額は要問い合わせ)。

導入事例はブリヂストンタイヤソリューションジャパン、freee finance lab、GMOペイメントゲートウェイほか。書面督促を含む4チャネルをSaaS上で組み合わせられる点が独自価値で、少額の消費者債権を大量に扱う金融事業者が督促〜受電〜交渉の記録まで含めて運用一元化したいケースに合います。

Paid(ペイド)のウェブサイト

BtoB専門の企業間決済・請求代行サービス。株式会社ラクーンフィナンシャル(東証プライム・ラクーンHD 100%子会社)が運営、累計契約社数5,500社以上・購入会員数50万社突破(2025年4月時点)。売り手の与信管理・請求書発行・代金回収・入金消込・督促までを代行し未入金は100%保証。企業単位の与信で、初回審査通過後は与信限度額(最大5,000万円)の範囲内で以降は都度審査なし。

料金は初期・月額0円〜、請求金額の0.5〜3.5%の保証料+請求1件125円の事務手数料。1件125円+保証料という単価構造で少額の請求から使えるため、10万〜30万円クラスのBtoB取引の未回収を取引前に消せる予防手段として機能します。

本記事は10万〜30万円クラスの少額債権に絞って依頼先と予防策を整理しましたが、金額帯を絞らず売掛金回収代行の依頼先タイプ別の選び方・費用相場・督促自動化までを一覧で比較したい場合は、以下の記事もあわせて参照してください。

よくある質問

Q. 少額債権の回収代行とは何ですか?

A. 少額債権の回収代行とは、10万〜数十万円クラスの未回収債権について、弁護士・認定司法書士・サービサーなどが債権者に代わって督促・交渉・訴訟を進めるサービスのことです。

日本の法律では、業として(=報酬を得て反復継続的に)他人の債権回収を代理できるのは弁護士のみが原則で(弁護士法72条)、認定司法書士(1件140万円以下)とサービサー(サービサー法2条1項の特定金銭債権22類型)が例外として認められています。

加えて代理を委任せず自分で少額訴訟・支払督促を行う道もあり、少額債権の代行先は原則4類型に集約されます。詳しくは冒頭の「【結論】少額債権の代行先は4類型」の項で解説しています。

Q. 10万円クラスの少額債権でも受けてくれる依頼先はありますか?

A. 受けてくれる依頼先はありますが、弁護士に一式を委任すると着手金だけで元本を上回り費用倒れになりやすいため、選び方に注意が必要です。

実用的な選択肢は、①内容証明の作成のみを弁護士に単発依頼する(例:グロース法律事務所で3.3万円〜)、②認定司法書士に成功報酬型で依頼する、③自分で簡易裁判所に支払督促を申し立てる(実費数千円)の3択です。

依頼先別の手取り試算は「ケース1:10万円の未払い売掛金」の費用シミュレーション表に掲載しています。

Q. サービサー(債権回収会社)に頼めば安く済むと聞きましたが、自社のBtoB売掛金は対象になりますか?

A. 一般的なBtoBの売掛金・請負代金は、原則としてサービサーの取扱対象になりません。サービサーが扱える債権はサービサー法2条1項に列挙された「特定金銭債権」22類型に限定されており、金融機関の貸付債権・リース料・クレジット債権・保証履行後の求償権などに絞られているためです。

例外は相手方が破産手続開始決定・再生手続開始決定・更生手続開始決定を受けた場合(同項16号・17号)で、この場合はサービサーへの委託回収が可能になります。詳しい線引きは「サービサーが扱えるのは特定金銭債権22類型のみ」の項にまとめています。

Q. 時効まで残り数か月しかない少額債権でも、間に合う手続きはありますか?

A. 内容証明郵便による「催告」を送れば、送付日から6か月間は時効の完成を止められます(民法150条1項)。

この6か月以内に支払督促の申立てまたは訴訟提起(民法147条1項1号・2号の「裁判上の請求」「支払督促」に該当)まで進めれば、以降は確定まで時効が完成せず、確定後は新たに時効期間がゼロから進行します(同法147条2項)。

催告を繰り返しても、この6か月間の完成猶予は積み重ねられないため、6か月以内の裁判手続移行が必須です。実務フローは「Step 0:時効まで残り時間チェック」以降で段階的に解説しています。

Q. 「債権回収代行」を名乗る民間業者に頼んでも大丈夫ですか?(弁護士法72条違反にならない見分け方)

A. 法務大臣許可のサービサー・弁護士事務所・認定司法書士事務所のいずれにも該当しない民間業者は、業として債権回収を代理すれば弁護士法72条違反となる可能性が高く、依頼先候補から外すべきです

無資格者が「業として」代行を行った場合、弁護士法77条3号により2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となり、依頼者側も委任契約が公序良俗違反で無効となれば着手金の返還請求が難航します。

判断のチェック項目は、①法務省の許可業者一覧に載っているか、②日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会の会員名簿に登録があるか、③料金体系が公開されているか、の3点です。詳しくは「非弁行為の見分け方:違法業者を掴まないための3点チェック」の項で扱っています。

Q. 認定司法書士は本当に1件140万円以下しか代理できないのですか?

A. はい、認定司法書士が代理できるのは1件140万円以下の請求で、かつ簡易裁判所での訴訟代理関係業務に限定されます。根拠は司法書士法3条1項6号イと裁判所法33条1項1号(簡易裁判所の裁判権=訴訟の目的の価額140万円を超えない請求)を合わせて読むことで確定します。

さらにこの代理権を行使できるのは、法務大臣指定の研修を修了し認定考査に合格した「認定司法書士」に限られ(司法書士法3条2項)、一般の司法書士は代理できません。依頼前に事務所ウェブサイトや日本司法書士会連合会の名簿で「認定」の有無を確認してください。

Q. 個人事業主・フリーランスの未払い報酬でも、同じ依頼先で頼めますか?

A. はい、個人事業主・フリーランスの未払い報酬(業務委託料)でも、依頼先4類型の枠組みはBtoBの売掛金と同じです。ただし業務委託料はサービサー法2条1項の特定金銭債権22類型に該当しないため、実務的には弁護士・認定司法書士・自分で支払督促/少額訴訟の3択となります。

60万円以下で相手方の所在が判明しており争点が単純なケースは、自分で少額訴訟を申し立てる(民事訴訟法368条1項・原則1回結審)のが費用対効果の面で第一候補になることが多いです。

なおフリーランスの取引適正化については、2024年11月施行のフリーランス保護新法が支払期日規制などを定めており、取引条件の証拠として活用できます。

Q. 内容証明を送ったのに相手から反応がありません。次は何をすべきですか?

A. 内容証明の催告には強制力がないため、送付から6か月以内に支払督促または少額訴訟へ移行する必要があります(民法150条1項の完成猶予は6か月間で切れ、繰り返しても積み重ねられません)。

手続きが単純で相手方が異議を出さないと見込めるなら支払督促(民事訴訟法382条・書類審査のみで出頭不要)、60万円以下で証拠が揃い争点が単純なら少額訴訟(同法368条1項・原則1回結審)が向きます。

相手方の所在が住所不定で公示送達しかできない場合は支払督促の対象外(同法382条ただし書き)のため、通常訴訟を選択します。詳しい実務フローは「Step 2:支払督促の申立て」および「Step 3:少額訴訟」の項で解説しています。

Q. 相手企業が破産しそうな場合、少額債権の回収で何を優先すべきですか?

A. 破産手続開始決定の前に、支払督促または少額訴訟で「債務名義」(確定判決と同一の効力を持つもの)を早期に取得し、可能なら仮差押えで責任財産を保全することを最優先すべきです

破産手続開始決定が出た後は、原則として個別の強制執行が禁止・失効し(破産法42条)、破産管財人による配当手続の中で他の一般債権者と按分になるため、少額債権は配当率が低くなりがちです。

逆に、相手方が破産手続開始決定・再生手続開始決定・更生手続開始決定を受けた債権はサービサー法2条1項16号・17号の特定金銭債権に該当し、サービサーへの委託回収・債権譲渡が可能になる例外もあります。時効との兼ね合いは「Step 0:時効まで残り時間チェック」の項も併せて確認してください。

Q. 少額債権について、弁護士に依頼するか、自分で支払督促を申し立てるか、どう判断すればよいですか?

A. 金額×勝算×スピードの3軸で判断します。60万円以下で争点が単純・相手方の所在が判明しているケースは自力の支払督促・少額訴訟が費用対効果で優位、争点が複雑・相手方の反論が予想されるケースは弁護士や認定司法書士に委ねるのが実務の目安です。

自分でやる場合の工数は、支払督促申立書の作成に3〜5時間、書記官からの補正指示への対応に1〜2時間、少額訴訟の期日出頭に半日程度が目安で、相手方の異議申立てや強制執行への移行があればさらに上乗せされます。

逆に、証拠関係が争点になる・相手方の反論が予想される・強制執行まで進む見込みが高いケースでは、代理人を立てるほうが結果的に手取りを守れる場合が多いです。詳細は「『自分でやる』を選ぶときの現実的な工数と勝算の目安」の項に手順を掲載しています。

まとめ

少額債権の回収代行を頼める先は原則4類型で、金額帯によって適合する先が変わります。〜10万円は自分で支払督促または内容証明のみの単発依頼、10〜140万円は認定司法書士か成功報酬型弁護士、140万円超は弁護士、が費用対効果の起点です。サービサーは(前述のとおり)一般売掛金が対象外である点を最初に確認します。

実額の試算では、10万円クラスを弁護士に全面委任すると着手金だけで費用倒れになる一方、内容証明のみ単発依頼や自分で支払督促を選べば手取りを最大化できます。時効が近い場合は、まず内容証明の催告で6か月の完成猶予(民法150条1項)を確保し、その間に支払督促または少額訴訟へ移行する順序が実務の定石です。

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今の債権を回収するための次のアクション

本記事で整理した4類型のうち、今抱えている未回収債権を実際に動かすための一次窓口は次のとおりです。

時効まで残り時間が短い場合は、上記のいずれかに動く前にまず内容証明の催告で6か月間の完成猶予(民法150条1項)を確保してから、6か月以内に支払督促または少額訴訟へ移行してください。

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参考・出典

出典・参考資料(15件)
監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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