ISMS認証の運用が、ExcelとWordと共有フォルダの往復になっていませんか。規程の最新版がどれか分からない、情報資産の洗い出しに毎年何十時間もかかる、審査の直前になって記録の抜けが見つかる。こうした負荷は、担当者の力量ではなく管理の仕組みの問題として現れます。
ISMS管理ツールは、規格が求める文書管理・リスクアセスメント・従業員教育・内部監査といった活動を、クラウド上でまとめて回せるようにするものです。では、自分がいま手作業でやっている業務のうち、どこまでが実際にツールで置き換わるのでしょうか。
本記事では、ISMS管理ツール11サービスを比較します。ツールで自動化できる7つの業務を業務単位で整理したうえで、料金・対応規格・カバーする範囲を横並びにしました。これから認証を取る場合と、すでに取得済みで更新運用を回している場合の両方について、見るべき軸を分けて解説します。
候補をすぐ絞りたい場合は、30秒で終わる選定診断ツールもご用意しています。取得の段階・併用したい規格・いま最も重い作業・日本語対応の要否の4問で候補が絞れます。
目次
一括ダウンロードする
ISMS管理ツールとは
ISMS管理ツールとは、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の構築・運用・維持に必要な管理業務を、クラウド上で一元的に扱えるようにしたソフトウェアです。ここからは、ツールが認証運用のどこを引き受けるものなのかを整理します。
ISO/IEC 27001(ISMS認証)とツールが担う範囲
ISMS認証は、組織が自ら「セキュリティ対策をしています」と宣言する仕組みではありません。制度を所管する情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)は、次のように説明しています。
「ISMS認証」とは、第三者であるISMS認証機関が、組織の構築したISMSがISO/IEC 27001(JIS Q 27001)に基づいて適切に運用管理されているかを、利害関係のない公平な立場から審査し証明することです。
出典:ISMS適合性評価制度の概要(JIP-ISMS120-7.2)|一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター
審査で見られるのは、対策の有無そのものよりも、決めたとおりに運用され、その証拠が記録として残っているかどうかです。国内の認証取得組織は、ISMS-AC の公表で2026年8月21日時点の登録が8,652件です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:認証取得組織数推移、都道府県・地方別認証取得組織数|一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター
ここでツールの立ち位置がはっきりします。ISO/IEC 27001 は何を行うべきかを定めていますが、それをどう実現するかまでは規定していません。ISMS-AC も、規格について次のように述べています。
ISMSを構築するにあたって、必要となるのがISO/IEC 27001(JIS Q 27001)というISMSの国際規格です。この規格には、ISMSをどのように構築、実施、維持、改善すべきなのかが記載されています。
出典:ISMS適合性評価制度の概要(JIP-ISMS120-7.2)|一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター
手段の選び方は組織に委ねられているわけです。ISMS管理ツールは、この手段の部分を引き受けて、規程の版管理や記録の保管、リスクアセスメントの計算、教育の受講管理といった作業を仕組みに載せ替えるものだと捉えると分かりやすくなります。
ISMS認証とPマークは何が違い、どこまで同じ運用に載せられるか
2つの認証は、守る対象と付与の単位が異なります。ISMS認証が準拠するのは ISO/IEC 27001(JIS Q 27001)で、保護の対象は組織が扱う情報資産全般です。認証範囲は組織の必要に応じて定められ、必ずしも全社を範囲とする必要はありません。
一方のプライバシーマーク制度は、日本産業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に準拠し、個人情報の保護措置を評価する制度です。付与の単位は法人単位で、有効期間は2年とされています。ISMS認証の有効期限が3年であることと合わせて、更新のサイクルもずれます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:制度の概要|プライバシーマーク制度|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
2つの制度の違いを整理すると次のとおりです。

この2つを別々に管理している企業は少なくありません。ISMS-AC の調査では、ISMS認証取得組織が併せて取得しているマネジメントシステム認証のうち、最も多いのがプライバシーマークでした。
ISMS 認証取得以外にどのようなマネジメントシステム認証取得をしているかを尋ねた結果、「プライバシーマーク」(56.4%)、「ISO 9001(品質)」(48.2%)、「ISO 14001(環境)」(25.2%)、「ISMS クラウドセキュリティ認証(クラウドサービスプロバイダ及びクラウドサービスカスタマ)」(8.5%)、「ISO/IEC 20000(IT サービス)」(5.0%)の順となった(図8)。
出典:ISMS適合性評価制度に関する調査報告書(2024年7月)|一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター(調査期間2024年3月・有効回答1,704件)
この割合には、同一法人の複数部門が個別に認証を取得している場合に重複して集計されている旨の注記が添えられています。それを踏まえても、規程・教育・内部監査といった重なる作業を二重に回している企業が相当数あることは読み取れます。ツールを選ぶ際に「Pマークも同じ仕組みで管理できるか」が軸になるのは、この重なりがあるためです。
Excel・Word・共有フォルダ運用が続かなくなるポイント
手作業の運用が続かなくなるのは、規格が記録の「状態」まで求めているからです。JIPDEC の ISMSユーザーズガイドは、文書の管理について次のように記しています。
ISMS 文書は、版管理され適切な文書を必要とする人が必要なときに使用可能な状態で管理されている必要があります。
出典:ISMSユーザーズガイド-JIS Q 27001:2023(ISO/IEC 27001:2022対応)JIP-ISMS111-4.0|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
共有フォルダに「規程_最終版_20250401_修正2.docx」が並ぶ状態は、この要求を満たしていると説明しにくくなります。誰がいつ承認したのかも、ファイルの更新日時からは追えません。
もう一つの弱点は、担当者に依存する点です。ISMS-AC の調査では、認証の取得・維持に関する今後の課題として挙がった上位が、この構造をそのまま示しています。
自組織 の ISMS 認証取得、維持 に関する今後 の主な課題について 尋ねたところ、「 人材 の確保、育成 」(54.2%)、「マンネリ化・形骸化」(50.8%)、「組織内の情報セキュリティ教育・意識向上」(46.7%)の順となった(図 15)。
出典:ISMS適合性評価制度に関する調査報告書(2024年7月)|一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター(調査期間2024年3月・有効回答1,704件)
同報告書は、マンネリ化・形骸化の具体的な内容として「事務局要員の固定化・業務の属人化」「業務の定型化」「事務局の高齢化」が多く見られたとしています。手順が個人のExcelの中にしかない状態では、担当が変わるたびに運用が振り出しに戻ります。
ISMS管理ツールで自動化・効率化できる7つの業務
ここからは、ツールが引き受ける業務を7つに分けて見ていきます。それぞれ規格のどの要求に対応するのか、どこから先は人の判断が残るのかを合わせて示します。対応する箇条は、JIPDEC がまとめた ISO/IEC 27001:2022(JIS Q 27001:2023)の構成に基づきます。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:ISMSユーザーズガイド-JIS Q 27001:2023(ISO/IEC 27001:2022対応)JIP-ISMS111-4.0|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
7つの業務について、ツールが引き受ける範囲と、人の判断として残る範囲を並べると次のとおりです。

規程・記録の文書作成とバージョン管理
規格の箇条7.5「文書化した情報」に対応します。ツールは規格の要求事項に紐づいたテンプレートを持ち、質問に答える形で入力すると基本方針や各種規程が生成される設計が一般的です。改訂履歴・承認者・有効な版が自動で記録され、共有フォルダで起きがちな版の取り違えが構造的に起きなくなります。
自動化されるのは、生成と履歴管理と配布までです。自社の業務実態に合わない条文を直す判断、適用範囲をどこまでにするかの決定は人が行います。テンプレートのまま運用して実態と乖離すると、審査で不適合の指摘を受ける要因になります。
情報資産管理台帳の整備とリスクアセスメント
箇条6.1.2 と 8.2 の情報セキュリティリスクアセスメントに対応する領域です。ユーザーズガイドは、この作業の出発点を次のように説明しています。
情報セキュリティリスクアセスメントとは、識別された情報及び情報に関連する資産に関するリスクを識別し、それらの大きさをプロセスに従い決定することです。また、この段階で特定されなかったリスクは、その後の分析の対象からは外されてしまうので、包括的にリスクの特定を行うことが極めて重要です。
出典:ISMSユーザーズガイド(JIP-ISMS111-4.0)|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
ツールは資産を登録すると、機密性・完全性・可用性の評価値からリスク値を自動計算し、あらかじめ用意されたリスクの候補を提示します。Excelで数百行の台帳を毎年見直していた作業が、前年度データの複製と差分更新に変わります。
資産をどの粒度で洗い出すかは人の作業のままです。引用にあるとおり、ここで拾えなかったリスクは以降の分析から外れるため、現場へのヒアリングを省略してツールの候補リストだけで済ませると、実態と合わない台帳ができあがります。
従業員向けセキュリティ教育(eラーニング)の配信と受講管理
箇条7.2「力量」と7.3「認識」に対応します。教材の配信、受講状況の集計、未受講者への督促、理解度テストの採点までを扱えるツールが多く、標的型攻撃メール訓練を併せて提供する製品もあります。
受講率の管理は自動化できても、自社の業務に即した教育内容にするかどうかは選択の余地が残ります。汎用教材をそのまま配信し続けると、先ほどの調査で挙がっていた形骸化に直結します。教材の選定や社内ルールの決め方から教育を組み立て直したい場合は、情報セキュリティ社内教育・ルールの作り方で設計の手順を解説しています。
セキュリティチェックシートの配布・集計
取引先から送られてくるセキュリティチェックシートへの回答と、自社が委託先へ配布するチェックシートの集計を扱う機能です。過去の回答を蓄積して再利用したり、委託先の回答状況を一覧で追ったりできます。
この業務は ISO/IEC 27001 の本文に対応する箇条があるわけではなく、委託先管理の実務として発生するものです。ツールによって搭載の有無が分かれるため、取引先対応の負荷が大きい企業は選定時に個別に確認する必要があります。
チェックシートで何を尋ね、回収した回答をどう評価するかはツールの外で決める話です。委託開始から契約終了までの確認項目と、委託先が増えても回る管理体制の作り方は、次の記事で整理しています。
内部監査の計画・実施・報告書作成
箇条9.2「内部監査」に対応します。監査計画の作成、チェックリストの生成、指摘事項の記録、報告書の出力までをツール上で完結できます。年1回の監査のたびに様式を作り直していた手間がなくなります。
ここで人が担うのは、誰を監査員に充てるかの判断です。ユーザーズガイドは「監査員の選定については、監査プロセスの客観性及び公平性を確保することを要求しています」と述べており、自分の担当業務を自分で監査する状態はツールでは解消できません。
インシデント対応と是正処置の記録
箇条10.2「不適合及び是正処置」に対応します。発生した事象の受付、対応状況の追跡、再発防止策の記録と有効性レビューまでを一連の流れとして残せます。
記録することと是正処置を行うことは別です。ユーザーズガイドは、是正処置には「まず、何故、その不適合が起きたのかを根本原因にまで遡って突き止める必要があります」としたうえで、「修正」と「是正処置」は異なると明記しています。原因分析そのものは人の作業として残ります。
改善(PDCA)とマネジメントレビューの記録管理
箇条9.3「マネジメントレビュー」と10.1「継続的改善」に対応します。レビューに必要なインプット(監査結果、インシデント状況、目標の達成度)をツール上のデータから集めて、議事録の様式に落とすところまでを支援します。
レビューの中身は経営の仕事です。ユーザーズガイドは、マネジメントレビューを「トップマネジメントが俯瞰的視点から、ISMS 全体の取組みを定期的に確認し、構築・維持されたISMS について改善する必要があるのか、変更する必要があるのかについて判断するプロセスです」と定義しています。判断は人が下し、その結果を記録として維持する部分をツールが受け持つ、という切り分けになります。
ISMS管理ツールで何が変わり、何は変わらないか
導入で得られる効果と、ツールを入れても残る作業を続けて確認します。期待値を正しい位置に置いておくと、導入の判断も導入後の運用設計もぶれません。
導入で得られるメリット
効果は大きく3つに整理できます。1つめは工数の削減です。規程の作成、台帳の更新、教育の集計、監査様式の準備といった定型作業が仕組みに載るため、年次で繰り返していた作業の多くが差分更新に変わります。
2つめは属人化の解消です。手順とデータがツール上に残るため、担当が交代しても前任者のExcelを解読する作業が発生しません。先の ISMS-AC 調査で課題の上位に挙がっていた事務局要員の固定化に対して、直接効く部分です。
3つめは審査準備の平準化になります。日々の記録がそのまま証拠として蓄積されるため、審査前にまとめて記録を作り直す必要がなくなります。
注意点と、ツールでは解決しないこと
1つめは、前の節で業務ごとに見たとおり、判断そのものはツールの外に残るという点です。
2つめは移行の負荷です。既存の規程・台帳・過去の記録をツールへ移す作業は、導入初年度に必ず発生します。既存資産をインポートできるか、初期設定を提供元が支援するかは製品によって差があるため、見積もりの段階で確認しておく項目になります。
3つめは定着です。事務局だけが使う状態では、現場の記録がツールに集まらず、結局は事務局が代理入力する形に戻ります。教育や委託先評価のように現場が触る機能は、誰がいつ入力するのかを運用ルールとして決めておく必要があります。
ISMS管理ツールにいくらかかるか
費用の話は「ツール自体の値段」と「他の手段と比べて得か」の2つに分かれます。順に確認します。
料金相場と課金条件の見方
この分野は料金を公開している製品が限られます。本記事で扱う11サービスのうち、公式サイトで金額を確認できたのは3つでした。
3つはいずれも人数やアカウント数の上限つきの定額制で、年額は12万円台から36万円台まで開きがあります。初期費用は11万円台から12万円台のものが2つ、公式に記載がないものが1つで、うち1つには初回のみ規格の著作権料が別途かかります。無料の試用期間は14日間から3か月まで用意されています。
製品ごとの金額と条件は比較表に整理しました。税区分の表記も製品によって異なるため、見積もりを取るときは税込か税別かを揃えて確認してください。
残る8サービスは金額を公開していません。この分野には規模別の価格帯を公表した資料がないため、相場を金額で示すことはできません。
金額が公開されている3つも、上限を超えると上位プランか個別見積もりになります。自社の従業員数と適用範囲を先に確定させ、その条件で各社に見積もりを依頼すると、金額を公開していない製品も同じ土俵に並びます。
問い合わせの際に揃えて聞くべきは、料金がユーザー数に連動するのか定額なのか、初期費用と既存データの移行支援が別建てか、最低契約期間があるか、の3点です。
課金単位の考え方は製品によって大きく異なります。アカウント数の上限つきで定額のものもあれば、海外製のコンプライアンス自動化プラットフォームのように、利用人数や連携するシステムの数で見積もりが変わるものもあります。従業員数が増える見込みがあるなら、この違いが数年後の総額に響きます。
また、ツール費用とは別に、認証機関へ支払う審査費用がかかります。この費用は公表された価格表が存在せず、見積もりで決まります。決まり方と見積もりの取り方は、後の審査の節でまとめて扱います。
審査費用は比較する価値があります。ISMS-AC の調査で、認証機関の変更を検討または実行した512組織にその理由を尋ねたところ、「審査料金の比較」を挙げた組織が61.3%を占めました。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:ISMS適合性評価制度に関する調査報告書(2024年7月)|一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター
Excel継続・コンサル委託・ツール導入を費用と工数で比べる
ISMSの運用を回す手段は3つあり、費用の出方と担当者に残る工数が異なります。それぞれの性質を並べます。
| 手段 | Excel・Wordで継続 | コンサルタントへ委託 | ISMS管理ツールを導入 |
|---|---|---|---|
| 年間の費用 | 追加の支出なし(既存のソフト費用のみ) | 委託費が継続的に発生(各社見積もり。公表された相場資料は確認できず) | 金額を公開している3製品の下位プランで年額120,000円〜360,000円(税区分は製品により異なる)。初期費用は110,000円台〜120,000円台が2製品、公式に記載なしが1製品。11製品中8製品は金額を公開していない。審査費用は別途 |
| 担当者に残る作業 | 規程の版管理、台帳の更新、教育の集計、監査様式の作成をすべて手作業。作業時間に自社の人件費単価を掛けた額が実質の負担になる | 方針決定と社内調整。実務の多くを外部が担う | 判断と入力。定型作業は仕組みに載る |
| 担当交代への強さ | 手順が個人に紐づき、引き継ぎのたびに再構築が起きやすい | 外部に手順が蓄積し、自社にノウハウが残りにくい | 手順とデータがツールに残り、引き継ぎの負荷が下がる |
ツールの年額は、いずれも人数やアカウント数の上限つきの下位プランの価格です。自社の規模では上位プランになる場合があり、コンサル委託費については公表された相場の資料が確認できなかったため、金額を示していません。
判断の分かれ目は、認証範囲の規模と担当者の体制です。適用範囲が小さく、専任者が確保できていて、記録の量も管理できる範囲に収まっているなら、Excelでの運用が続けられないわけではありません。
一方、兼任の担当者が1人で回している、拠点が複数ある、Pマークも並行して維持している、といった条件が重なるほど、手作業の負荷は積み上がります。ツールとコンサルは排他的な選択肢でもなく、ツールを入れたうえで構築の初年度だけ伴走支援を受ける形を選べる製品もあります。
失敗しないISMS管理ツールの選び方
ここからは、候補を絞り込むための軸を6つ挙げます。すべてを同じ重さで見る必要はなく、最初の分かれ道で自社がどちら側かを決めると、以降の軸の優先順位が定まります。
まず分かれ道は、新規取得か、取得後の更新運用か
これから認証を取る場合、重視すべきは構築の支援です。規程が一式そろっていない状態から始めるため、テンプレートの網羅性、入力手順のガイド、初回のリスクアセスメントの進め方、審査までの伴走の有無が効いてきます。コンサルタントに頼らず自力で取得したい場合は、この支援の厚さがそのまま実現可能性を左右します。
すでに取得済みで更新運用を回している場合、必要なのは年次サイクルの省力化です。前年度データを引き継いだリスクアセスメントの差分更新、教育の受講管理、内部監査の記録、サーベイランス審査に向けた証拠の整理が中心になります。構築支援が手厚くても、年次の回しやすさが弱ければ負荷は減りません。
どちらの段階でツールを使うかによって、次に見る軸の優先順位が変わります。取得の工程ごとにツールがどう効くかは、後の新規取得と更新運用で、ツールをどう使うかで詳しく扱います。
自社の適用範囲・規模と、専任担当者がいるか
認証範囲は全社である必要がありません。ISMS-AC は「組織の必要に応じて定めることができます。必ずしも全社を範囲とする必要はありません」としており、実際の分布もそれを裏づけています。ISMS-AC の調査(有効回答1,704件)では、認証範囲を全社としている組織は52.2%で、残る約半数は一部の事業部・拠点に絞って取得していました。
適用範囲が広がるほど、登録する情報資産も教育対象者も増えます。ユーザー数課金の製品では総額に直結し、拠点が分かれていれば内部監査を拠点ごとに実施する必要が出ます。見積もりを取る前に、適用範囲と対象人数を確定させておくと比較が揃います。
専任担当者がいない場合は、設定作業そのものを外部に任せられるかも判断材料です。ツール単体の契約に加えて、初期構築や内部監査の代行をオプションで用意している製品があります。
自動化できる業務範囲がどこまでか
先に挙げた7つの業務のうち、どこまでを1つのツールで扱えるかは製品ごとに差があります。文書管理に軸足を置く製品、リスクアセスメントの効率化に強い製品、教育・訓練から入って運用管理まで広げた製品と、成り立ちがそれぞれ異なるためです。
判断の仕方は単純で、自社でいま最も時間を取られている業務を1つ特定し、その業務がその製品の中核機能かどうかを見ることが重要です。台帳の更新に毎年数十時間かけているなら、教育機能が充実していてもリスクアセスメントが弱い製品では負荷は減りません。カバー範囲の広さそのものより、自社の重い作業と製品の得意分野が噛み合っているかが効きます。
逆に、認証運用だけでなく全社のリスク管理・内部統制・委託先評価までを1つの基盤で扱いたい場合は、対象範囲の広いGRCツールが候補に入ります。どのタイプがどこまでをカバーするかは以下の記事で比較しています。
Pマーク・ISO 9001/14001 を同じ仕組みで管理できるか
ISMS認証取得組織の56.4%がプライバシーマークも取得していることは先に触れたとおりです。両方を維持している場合、規程・教育・内部監査・是正処置は内容が重なる部分が多く、別々の仕組みで管理すると同じ作業を2回行うことになります。
製品は3通りに分かれます。ISMSとPマークの両方を同じ仕組みで扱えるもの、Pマークは同じシリーズの別製品で受けるもの、ISO 9001・14001 側の複数規格に対応するものです。どの製品がどれに当たるかは比較表の「対応規格」列で確認できます。
シリーズの別製品で受ける形の場合、ライセンスが2本になるのか、データが連携するのかが公式サイトに明記されていないことがあります。Pマークも同じ仕組みに載せたいなら、見積もりの段階でこの点を確認しておく必要があります。
一方、海外製のコンプライアンス自動化プラットフォームは ISO/IEC 27001 や SOC 2 など国際的なフレームワークを対象としており、日本独自制度であるPマークは対象外です。将来的にPマークも取る可能性があるなら、この違いは早い段階で確認しておく価値があります。
国産か海外製か(日本語対応・国内窓口・日本の審査での通用性)
海外製のコンプライアンス自動化プラットフォームは、クラウド環境やIDリソースと連携して統制の証跡を自動収集する仕組みを備え、対応フレームワークの数でも国産製品を上回ります。一方で、日本での使い勝手には確認が要ります。
見るべきは3点です。管理画面とドキュメントが日本語で使えるか、日本国内に代理店や導入支援の窓口があるか、国内での導入実績が公開されているか。本記事で扱う海外製品でも、国内の正規代理店を通じて日本語での導入支援が提供されているものと、日本法人・代理店・日本語対応のいずれも公開情報からは確認できないものに分かれます。
審査は日本の認証機関の審査員が日本語で行います。ツールに蓄積した記録を審査の場で提示する以上、記録の出力が日本語で読める形になるか、審査員が確認しやすい単位で整理できるかは、実務上の確認事項になります。
サポート範囲と料金の見合い(ツール単体か、コンサル併用か)
同じ製品でも、ツールを使えるようにするだけのプランと、コンサルタントが伴走するプランで料金が変わります。自走プランの金額だけを比べて安いと判断すると、実際には初期構築を外部に頼ることになって総額が変わる、という食い違いが起きます。
問い合わせの段階で確認したいのは、初期構築の支援が料金に含まれるか、審査への同席や立ち会いが可能か、質問への回答手段(チャット・電話・担当者の割り当て)と対応時間はどうなっているか、の3点です。
無料トライアルやデモがある製品は、契約前に運用感を確かめられます。試す際に見るべきは機能の有無ではなく、自社の規程を1本登録してみて改訂と承認の流れが想定どおりに回るか、情報資産を数十件入れてリスク値の出方が納得できるか、という実際の入力体験です。
新規取得と更新運用で、ツールをどう使うか
ここからは、認証の工程に沿ってツールが効く場面を確認します。取得までの流れ、審査で記録がどう見られるか、費用と期間の考え方、取得後の維持と更新の順に見ていきます。
取得から維持・更新までの全体像は次のとおりです。

新規取得の流れ
取得の工程は、適用範囲の決定から始まります。どの組織単位・どの事業を対象にするかを決め、その範囲にある情報および情報に関連する資産を特定します。ここで洗い出した資産がリスクアセスメントの対象になるため、範囲の決め方がその後の作業量を決めます。
続いて、基本方針と各種規程を整備し、リスクアセスメントを実施して対応方針を決めます。規程が固まったら実際に運用を始め、記録を蓄積します。運用の実績が一定期間たまった段階で内部監査とマネジメントレビューを行い、その後に審査を受ける流れです。
ツールが効くのは、規程の整備、リスクアセスメント、記録の蓄積、内部監査の実施記録という工程です。適用範囲の決定と、リスクにどう対応するかの方針決めは、この段階でも人の判断として残ります。
審査で、ツールの記録はどう見られるか
審査は2段階に分かれます。第一段階では主に文書が審査され、第二段階では実際の運用状況が確認されます。認証機関のひとつである株式会社マネジメントシステム評価センターは、第二段階審査までに内部監査とマネジメントレビューを終えておく必要があるとしています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:ISO27001(ISMS)|株式会社マネジメントシステム評価センター
審査で提示を求められる記録の範囲は、規格が明示しています。JIPDEC のユーザーズガイドは、要求事項に示された文書化した情報として14の項目を挙げており、そこには次の記述が含まれます。
8.2 情報セキュリティリスクアセスメント/組織は,情報セキュリティリスクアセスメント結果の文書化した情報を保持しなければならない。
出典:ISMSユーザーズガイド(JIP-ISMS111-4.0)表7-3|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
9.2.2 内部監査プログラム/組織は,監査プログラムの実施及び監査結果の証拠として,文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。
9.3.3 マネジメントレビューの結果/組織は,マネジメントレビューの結果の証拠として,文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。
「利用可能な状態にしなければならない」という要求は、ツールの使いどころを示しています。日々の運用でツールに記録を残していれば、審査の直前に証拠を作り直す作業が発生しません。審査の場で該当する記録をすぐ呼び出せるかどうかは、記録がどの単位で整理され、どう出力できるかに左右されます。
審査費用はどう決まるか、期間はどれくらいか
審査費用について、国内の認証機関で価格表を公表しているところは確認できませんでした。金額は見積もりで決まり、その根拠となるのは審査工数です。JIPDEC は工数の決まり方を次のように説明しています。
認証審査工数は、審査の種類(初回認証審査、サーベイランス審査、再認証審査、臨時の審査、フォローアップ審査等)や審査対象となるISMS/ITSMS/BCMS/AIMSの状況(組織の人数、関連部門の数、組織の業務特性、サイト・事務所の数、情報処理設備の量、技術の複雑さ、法的要件の程度等)によって異なり、認証機関の見積りによります。詳細は、認証機関に問い合わせて下さい。
出典:FAQ2:認証取得条件 Q2302|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
費用の内訳は認証機関が公表しています。ベターリビングは、料金が審査登録申請の基本料金、審査工数に応じた審査料金、登録判定料金、交通費などの諸経費、登録維持料金等から算出されるとしたうえで、サーベイランスは新規審査の約3分の1、更新審査は約4分の3になると示しています(同機関の公表値)。初回だけでなく3年間の総額で見積もると、実際の負担が把握しやすくなります。
期間についても、公表されているのは工程ごとの目安です。株式会社マネジメントシステム評価センターは文書の提出から登録まで約4か月程度とし、国際システム審査株式会社は第一段階審査と第二段階審査の間隔を通常2か月としています。いずれも各1機関の公表値です。
これらは審査工程の期間であり、規程の整備や運用実績を積む構築期間は含まれません。自社の構築にどれだけかかるかは、適用範囲と体制によって変わります。
出典・参考資料(3件)
- 出典:ISOマネジメントシステム認証取得をめざす方へ|一般財団法人ベターリビング システム審査登録センター
- 出典:ISO27001(ISMS)|株式会社マネジメントシステム評価センター
- 出典:ISO27001(ISMS)認証|国際システム審査株式会社
取得後の維持・更新(サーベイランス審査と更新審査)
認証を取ったら終わりではありません。認証の有効期限は3年で、その間は年1回以上のサーベイランス審査(維持審査)を受け、3年ごとに再認証審査を受けます。この周期があるため、記録は毎年途切れずに積み上げる必要があります。
更新運用でツールが効くのは、まさにこの継続性の部分です。リスクアセスメントは前年度のデータを引き継いで差分を更新でき、教育の受講記録や内部監査の結果は実施のたびに蓄積されます。サーベイランス審査の前にまとめて記録を整える作業が要らなくなることが、年次の負荷を最も下げます。
前任者から引き継いだ直後で記録の所在が分からない場合は、移行のタイミングに注意が要ります。既存の規程と台帳をツールへ移す作業は導入初年度に発生するため、審査の直前に着手すると移行と審査準備が重なります。審査が済んだ直後から次の年次サイクルの起点として使い始めると、1年分の記録が揃った状態で次の審査を迎えられます。
移行にかかる期間は、資産の件数と既存記録の整理状況によって変わります。公表された資料に標準的な所要期間の記載は無いため、無料トライアルの期間内に自社の台帳の一部を実際に登録し、全件に引き直したときの見込みを掴んでおくと判断しやすくなります。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:ISMS適合性評価制度の概要(JIP-ISMS120-7.2)|一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター
30秒で終わるISMS管理ツール選定診断
ここまでの軸を踏まえても、自社がどの製品に向いているかの判断は難しいものです。取得の段階、同じ仕組みで管理したい規格、いま最も時間を取られている作業、日本語の管理画面と国内窓口の要否の4問に答えると、条件に合う候補が絞り込まれます。
一括ダウンロードする
【比較表】ISMS管理ツール11選を比較
ここからは、主要なISMS管理ツール11サービスを横並びで比較します。対応規格・料金・無料トライアルの有無に加え、前半で挙げた7つの業務をどこまでカバーするか、日本語対応と国内サポートはどうかを同じ粒度で並べました。並び順は評価の順位ではありません。
| サービス名 | SecureNavi | Enterprise Risk MT | ISMSアシスト | セキュリオ | AMRI.ASP | M@gicPolicyCoSMO | イソナビ | ISMS.online | Vanta | Drata | Secureframe |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 対応規格 | ISMS・Pマーク (ISO/IEC 27017にも対応) | ISMS専用ツールではない (ISO 31000準拠のERMツール) | ISMS (Pマーク・ISO 9001・14001は シリーズの別製品) | ISMS・Pマーク | ISO 9001・14001・27001など (Pマークは確認できず) | ISMS(JIS Q 27001:2023)・ Pマーク(JIS Q 15001) | ISO 9001・14001・27001と 統合MS (Pマークは確認できず) | ISO 27001・9001など100以上 (Pマークは対象外) | ISO 27001・SOC 2など35以上 (Pマークは対象外) | ISO 27001・SOC 2・ISO 42001など (Pマークは対象外) | ISO 27001・SOC 2・CMMCなど (Pマークは対象外) |
| 初期費用 | 非公開 | 非公開 | 非公開 | 非公開 | 110,000円(税別) | 非公開 | 120,000円(税別) | 非公開 | 非公開 | 非公開 | 非公開 |
| 月額費用 | 非公開 | 非公開 | 30,000円 (アシスト自走プラン) | 非公開 | 28,600円(税別) | 非公開 | 年額120,000円〜 (ライトプラン) | 非公開 | 非公開 | 非公開 | 非公開 |
| 課金単位 | 非公開 | 非公開 | プラン定額 (ユーザー数課金なしとされる) | 非公開 (3プラン・年間一括払い) | 定額 (10クライアントまで・ 最低利用期間1年) | 非公開 | プラン定額 (容量・利用人数の上限別・ 年額一括) | 非公開 (機能と利用人数に応じた 個別見積もり) | 非公開 (4プラン・個別見積もり) | 非公開 (年間サブスクリプション) | 非公開 (3パッケージ・個別見積もり) |
| 無料トライアル | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | ●14日間 | ●7日間(ARスタンダード) | - 公式に記載なし | △評価版リクエストあり | ●3か月間 | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし |
| 新規取得の構築支援 | ●審査までの導入支援・チャット相談 | - 公式に記載なし | ●ステップ形式のガイド・伴走プラン | △文書・監査項目のテンプレート | - 公式に記載なし | ●ポリシー策定から構築を支援 | - 公式に記載なし | ●HeadStartテンプレート・伴走ガイド | ●適用宣言書の自動生成 | ●ポリシーテンプレート・承認フロー | ●事前構築済みポリシー |
| 文書・記録管理 | ● | - 公式に記載なし | ● | ● | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | ● | ● | ● | ● | ● |
| 情報資産台帳・リスクアセスメント | ● | △リスクアセスメントのみ | ● | ● | - 公式に記載なし | ● | - 公式に記載なし | ● | ● | ● | △資産管理の範囲は確認できず |
| 従業員教育 | ● | - 公式に記載なし | ● | ● | - 公式に記載なし | ● | △記録の保存のみ | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | ● |
| 内部監査 | ● | - 公式に記載なし | ● | ● | - 公式に記載なし | ● | △記録の保存のみ | ● | ● | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし |
| 委託先評価・チェックシート | ●チェックシート配信・回答管理 | - 公式に記載なし | △委託先管理(チェックシートは記載なし) | ●アンケート配信(テンプレート15種類以上) | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | △サプライヤーリスク管理 | - 公式に記載なし | ●第三者リスク管理・質問票の自動回答 | - 公式に記載なし |
| インシデント・是正処置 | ●インシデント記録 | ●ヒヤリハット・インシデント報告 | - 公式に記載なし | ●是正処置の対応期限・進捗管理 | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし | △是正管理は内部監査ワークフロー内 | - 公式に記載なし | - 公式に記載なし |
| 日本語対応・国内サポート | 国内提供 | 国内提供 | 国内提供 | 国内提供 | 国内提供 | 国内提供 | 国内提供 | 日本語対応・国内代理店とも 確認できず | 国内代理店経由で日本語対応 (管理画面は英語が中心) | 国内代理店経由で日本語対応 (管理画面の日本語化は 確認できず) | 日本語対応・国内代理店とも 確認できず |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※2026年8月時点の各社公式サイト(AMRI.ASPは開発元 株式会社ISOソフトの製品ページ)の記載による。料金は公式サイトで金額を確認できた製品のみ実額を記載し、公開されていない製品は「非公開」としています。機能欄の「-」は公開情報で確認できなかった項目で、非対応(×)を意味するものではありません。マネジメントレビューの記録管理は「文書・記録管理」に含めて評価しています。
一括ダウンロードする
ISMS管理ツール11選の個別紹介
ここからは、各サービスの提供元・機能・料金を個別に確認します。並び順は評価の順位ではなく、カバーする範囲もそれぞれ異なります。
1. SecureNavi(SecureNavi株式会社)

ISMS認証とプライバシーマークの取得・運用を、同じプラットフォーム上でまとめて管理するクラウドツールです。提供元のSecureNavi株式会社は2020年設立で、情報セキュリティ関連の認証運用に特化した製品を展開しています。
設計の軸は、外部のコンサルタントに委託せず社内で認証運用を進められるようにする点にあります。ガイドに沿って入力していくと規程類と記録類が整い、情報資産の登録内容からリスクの候補が自動で提示されます。情報資産・規程・リスクアセスメントのデータをISMSとPマークで共通管理できるため、両方を維持している組織では重複作業が減ります。
取得後の内部監査、更新審査、規格改訂への対応も同じ画面で続けられます。2024年8月にはISO/IEC 27017(クラウドセキュリティ)に対応する機能が追加されました。公式サイトには導入1,400社以上と表示されています(2026年8月時点)。
料金と課金単位は公式サイトで公開されておらず、規模別の総額を事前に見積もることはできません。プラン構成は複数段階あるとされますが、各プランの内容と価格差も公式サイトでは確認できません。対応範囲はISMSとPマークで、ISO 9001・14001 は対象外のため、品質や環境まで1つの仕組みに載せたい組織には向きません。
2. Enterprise Risk MT(株式会社GRCS)

この製品が扱う範囲を先に整理しておきます。Enterprise Risk MTは、ISO 31000に準拠した全社的リスクマネジメント(ERM)のクラウドアプリケーションで、ISMS専用のツールではありません。
ISMSの運用実務でこの製品が受け持つのは、リスクの特定・分析・評価、対応策の実施状況のモニタリング、ヒヤリハットを含むインシデントの報告と分析です。一方で、規程の版管理、情報資産管理台帳、従業員教育、内部監査、審査対応にあたる機能は製品ページ上で確認できません。リスクアセスメントとインシデント管理の工程を切り出して強化したい場合の選択肢になります。
提供元の株式会社GRCSは2005年設立で、ガバナンス・リスク・コンプライアンス領域のソリューションを手がける東京証券取引所グロース市場の上場企業です。製品はSalesforceのプラットフォーム上に構築され、リスクマトリックスによる集計や権限別のダッシュボード表示、JX通信社のFASTALERTと連携してリスク情報を取り込むオプションを備えます。
導入企業として戸田建設、セガサミーホールディングス、青山商事が公表されており、2025年9月からは東京海上日動火災保険が取扱いを開始しています。料金は公開されておらず、スモールスタートが可能なライセンスモデルという説明にとどまります。
3. ISMSアシスト(株式会社スリーエーコンサルティング)

1999年設立の株式会社スリーエーコンサルティングが、自社のISO・Pマークコンサルティングで蓄積した手順をクラウドツールに落とし込んだ製品です。ステップ形式のガイドとテンプレートに沿って、認証取得と維持審査・更新審査に必要な文書作成やタスク管理を進められます。
料金を公式サイトに明示している数少ない製品でもあります。ツールを使って自社で運用するアシスト自走プランが月額30,000円、コンサルタントが定期打合せや内部監査支援まで伴走するプランは要問い合わせという構成です。14日間の無料体験が用意されています。
機能面では、フォーマットへの入力とワンクリックのPDF出力で情報資産台帳・リスクアセスメント・適用宣言書などを作成でき、CSVでの一括登録や複数拠点の記録の一元管理にも対応します。規格が改訂された際は、システム側でテンプレートが更新されます。
プライバシーマークは同じシリーズの別製品「Pマークアシスト」で扱う設計で、ISMSアシスト単体での対応可否は公式サイトに明記がありません。公表されている導入社数2,500社(2025年10月発表)は、ISO 9001版・ISO 14001版を含むシリーズ4製品の合計です。
4. セキュリオ(LRM株式会社)

教育から入って運用管理まで広げた製品です。主軸はeラーニングと標的型攻撃メール訓練による従業員教育で、そこに情報資産管理台帳、リスクマネジメント、規程管理(ルールブック)、内部監査、委託先評価、インシデント管理といったISMS運用の機能群が加わる構成になっています。
提供元のLRM株式会社は2006年設立で、ISMSとプライバシーマークの取得コンサルティングを本業とする会社です。内部監査では「適合/不適合/改善の機会/該当なし」を画面上で判定して記録でき、委託先へ配信するセキュリティアンケートには15種類以上のテンプレートが用意されています。公式サイトには導入実績2,500社突破と表示されています。
料金プランはARライト・ARスタンダード・ARアドバンストの3種類で、金額は非公開です。契約は年間一括払いが基本で最低契約期間は1年、ARスタンダードには7日間の無料トライアルがあります。プランごとにISMS運用系の機能がどこまで含まれるかは料金ページに示されていないため、問い合わせ時の確認事項になります。
5. AMRI.ASP(ブレーン・アシスト株式会社)

ISO運用ツール「マネジメントPRO.net」シリーズをASP形式で利用できるサービスです。開発は株式会社ISOソフト、提供・運用はブレーン・アシスト株式会社が担い、クラウド環境は株式会社アイセルが提供しています。ISO 9001・14001・27001など複数のマネジメントシステム規格に対応します。
料金は開発元の公式ページに明示されており、初期費用110,000円、月額28,600円(いずれも税別)です。10クライアントまでの価格で、最低利用期間は1年、保守費用は不要と記載されています。ユーザー数に応じて課金する製品が多いなかで、上限つきの定額である点は費用の見通しに関わります。
機能として公式に確認できるのは、閲覧・登録から承認処理までをブラウザ上で行うISO運用管理と、PDCAに沿った管理項目・対応措置の一元管理までです。従業員教育(eラーニング)の有無をはじめ、個別機能の詳細は公開情報からは確認できないため、要件が固まっている場合は事前の確認が要ります。
提供元のブレーン・アシスト株式会社については、株式会社アイセルに吸収合併される予定であることがアイセルの公表資料で示されています(2026年4月1日予定)。AMRI.ASPの提供体制がどうなるかについての発表は確認できないため、検討時は運営主体を直接確認しておくと安全です。
6. M@gicPolicyCoSMO(株式会社アズジェント)

セキュリティポリシー策定ツールとして始まり、ISMSの構築・運用・維持までを扱うようになった製品です。提供元の株式会社アズジェントは1997年設立で、情報セキュリティ製品を専業とするベンダーです。
対応規格はJIS Q 27001:2023(ISO/IEC 27001:2022)と、個人情報保護マネジメントシステム向けのJIS Q 15001です。情報資産をリスク評価付きで一覧管理し、識別されたリスクに対して脅威と脆弱性の対応表を自動で提示します。教育計画の自動配布と実施状況の追跡、規格に紐づいた監査項目の提示にも対応します。
2012年の機能強化では、複数階層の組織構造の設定と階層に応じたアクセス権設定、関連資料の一元管理による外部審査のペーパーレス対応が加わりました。規程・文書の版数管理、マネジメントレビュー、是正処置の管理については、公式ページ上で機能としての明記が確認できません。
提供形態はサーバにインストールして社内ネットワーク経由で利用する構成で、複数の担当者が同時に作業でき、更新内容はリアルタイムにデータベースへ反映されます。料金はオープン価格で公開されておらず、評価版のリクエスト窓口が公式サイトに用意されています。
7. イソナビ(株式会社フォーイーチ)

機能を文書・記録の管理に絞り込んだクラウドサービスです。株式会社フォーイーチが2022年4月から提供しており、ISO 9001・14001・27001など複数規格と、それらを束ねた統合マネジメントシステムに対応します。
文書はブラウザ上で直接編集でき、版数は自動で管理されて最新版が共有されます。文書体系はツリー構造で表示され、章・節・項の入れ替えはドラッグ操作で行えます。確認・承認のフローと閲覧・編集権限の設定に加え、審査員に閲覧権限を付与して外部審査にオンラインで対応する機能もあります。
一方で、リスク値の算出、内部監査の実施管理、教育の配信管理といった実務そのものを進める機能は公式サイト上で確認できず、これらは実施した結果を文書として保存する使い方になります。プライバシーマークへの対応についても記載は確認できません。
料金は公開されています。初期費用は全プラン共通で120,000円(税別)、年額はライトが120,000円(5GB・5名まで)、スタンダードが240,000円(10GB・100名まで)、それ以上の規模はエンタープライズとして要相談です。ほかに規格著作権料20,000円が初回にかかり、3か月間の無料試用が用意されています。
8. ISMS.online(Alliantist Ltd)

対応する規格・フレームワークは100以上にのぼります。英国のAlliantist Ltdが2005年から展開しているクラウド型のコンプライアンス運用プラットフォームで、ISO 27001のほかISO 9001、ISO 45001、ISO 42001(AIマネジメントシステム)などを1つの基盤で扱います。
中心にあるのは、事前構築済みのポリシー・統制テンプレート群「HeadStart」です。加えて、リスクの識別・評価・対応、情報資産のインベントリ管理、Annex Aの統制をリスク・資産・ポリシーへ紐付ける統制マッピング、サプライヤーのリスク管理を備えます。公式サイトには65,000人以上の利用者、1,000社以上の導入と表示されています(2026年8月時点)。
日本で使う場合は、その前提を確認しておく必要があります。公式サイトは英語のみで言語の切り替えがなく、HeadStartの多言語版もフランス語・ドイツ語・スペイン語までで、日本語版の提供は公開情報からは確認できません。日本法人・国内代理店・国内の導入実績も同様に確認できませんでした。
対応する規格の一覧に、日本独自の制度であるプライバシーマークは含まれていません。料金は非公開で、必要な機能と利用人数に応じた個別見積もりの形をとっています。
9. Vanta(Vanta Inc.)

証跡の自動収集を軸に据えたプラットフォームです。クラウドサービスや社内システムと連携して統制の状態を継続的に監視する仕組みで、公式サイトでは400以上のサービスとの連携と1,200以上の自動テスト、SOC 2・ISO 27001・GDPR・HIPAAなど35以上のフレームワークへの対応を掲げています。
ISO 27001向けには、適用宣言書(SoA)の自動生成と更新、ISO 27005に準拠したリスクレジスタ、内部監査のワークフロー、アクセス権のレビュー追跡を備えます。SOC 2で集めた証跡の80%がISO 27001に再利用できると公式が示しており、複数の認証を並行して取得する場合に作業が重なりにくくなります。
日本では、Vanta Inc.の日本法人は確認できず、TrustNow株式会社などの国内パートナーが販売と導入支援を担う体制です。プラットフォーム上に日本語のポリシーテンプレートは用意されているものの、英語版に入力した内容が日本語版へ自動で反映されるわけではなく、言語ごとに別の文書として編集する必要があると、国内パートナーであるTrustNow株式会社の解説記事は説明しています。
公式サイトとヘルプセンターは英語で、日本国内の導入事例は公開されていません。プライバシーマークも対応フレームワークに含まれていません。料金は非公開で、Essentials・Plus・Professional・Enterpriseの4プランについて個別に見積もる形です。導入は16,000社以上と公式サイトに表示されています(2026年8月時点)。
10. Drata(Drata Inc.)

2020年設立の米国Drata Inc.が開発する、コンプライアンス業務の自動化プラットフォームです。SOC 2、ISO 27001、ISO 42001、GDPR、PCI DSS、FedRAMP、CMMCなどのフレームワークと、組織が独自に定義したフレームワークに対応します。
機能の中心は、ポリシーのテンプレート提供と承認・配布・年次レビューのワークフロー、資産の可視化と統制への紐付け、内部・外部・第三者のリスクを1つのダッシュボードで扱うリスク管理です。クラウド基盤、ID管理、人事システム、端末管理、バージョン管理システムと連携して証跡を自動で集め、統制の状態を継続的に監視します。
同社自身がISO/IEC 27001:2022やSOC 2 Type 2などを保有していることを、公式のトラストセンターで公開しています。顧客数は公式サイトで8,500社以上と表示されています(2026年8月時点)。料金は非公開で、日本向けの契約は年間サブスクリプションと記載されています。
日本市場は、Digital Accels(デジタルアクセルズ)株式会社が2025年8月に再販契約を結び、認定ディストリビューターとなり、2025年10月31日に国内販売の開始を発表した体制です。同社の日本語ページには日本語対応の記載がある一方、製品本体の管理画面の日本語化状況と国内の導入事例は公開情報からは確認できません。プライバシーマークも対応フレームワークに含まれていません。
11. Secureframe(Secureframe Inc.)

米国政府調達向けのフレームワークまで対応範囲に含む点が、この製品の特徴です。CMMC Level 2、FedRAMP、NIST 800-171、DFARsに対応し、SOC 2やISO 27001、HIPAA、PCI DSS、GDPRも扱います。提供元は2020年設立のSecureframe Inc.です。
機能は、主要フレームワークに準拠した事前構築済みポリシーの配布と管理、脆弱性スキャンやペネトレーションテストと連携したリスクの継続チェック、主要な統制と証跡の毎日の自動検証、従業員向けのセキュリティ意識向上トレーニングが中心です。AWSやAzure、GitHub、Oktaなど300以上の外部連携を備えます。
同社自身もSOC 2 Type II、ISO/IEC 27001:2022、CMMC Level 2を保有していることを公式のトラストセンターで公開しています。FedRAMP 20x Low の認可書は2026年8月20日までの有効期限が示されており、以降の更新状況は公開情報からは確認できません。一方で、内部監査や是正処置にあたる明示的なワークフロー機能は、公開情報からは確認できませんでした。
日本での提供体制については、公式サイトもサポートポータルも英語のみで、日本法人・国内代理店・国内の導入事例はいずれも確認できません。プライバシーマークも対応フレームワークに含まれていないため、日本語での運用と国内での支援を前提とする場合は、この点が制約になります。料金は非公開で、Fundamentals・Complete・Defenseの3パッケージ構成です。
導入後の運用体制と定着(担当者が変わっても回るか)
製品を決めたあとに効いてくるのが、社内で誰がどう使うかの設計です。ここを詰めておかないと、ツールを入れても事務局の負荷が変わらない状態になります。
誰が、どれだけ運用するのか(社内体制・引き継ぎ・現場の巻き込み)
ISMSの運用は事務局が担うことが多く、その事務局が抱える課題は制度所管の調査でも繰り返し指摘されています。ISMS-AC の調査は、マンネリ化・形骸化の内訳として「事務局要員の固定化・業務の属人化」「業務の定型化」「事務局の高齢化」が多く見られたと報告しています。
ツールを入れる意味は、この固定化を仕組みで緩めることにあります。手順がツール上の画面と入力項目として定義されていれば、担当が交代しても引き継ぐのは前任者の暗黙知ではなくアカウントと運用ルールになります。
現場を巻き込む設計も要ります。教育の受講、委託先チェックシートの回答、インシデントの報告は現場が直接入力できる機能です。誰がいつ入力するかを運用ルールとして決め、権限設計をそれに合わせておくと、事務局が代理入力に追われる状態を避けられます。
導入事例に見る効果
各社が公表している導入事例には、具体的な変化が示されているものがあります。運用を作り直した結果として管理する文書数が3分の1以下になった例や、ISMSにかける作業時間が従来の約半分に減ったという利用企業の声が、それぞれの公式サイトで公開されています。
出典・参考資料(2件)
- 参考資料:導入事例|SecureNavi
- 参考資料:昭和コンピュータ株式会社 導入インタビュー|株式会社スリーエーコンサルティング
いずれも提供元が公表している事例であり、効果の程度は自社の運用状況によって変わります。事例を見る際は、公表された企業の規模と適用範囲が自社と近いかを合わせて確認すると、参考にできる度合いが判断しやすくなります。
まとめ
ISMS管理ツールは、規格が求める活動のうち、文書の版管理・情報資産台帳とリスクアセスメント・教育の受講管理・内部監査の記録・是正処置の追跡・マネジメントレビューの記録を仕組みに載せ替えるものです。適用範囲をどこにするか、リスクにどう対応するか、誰を監査員に充てるかといった判断は、ツールを入れても人の仕事として残ります。
選び分けの起点は、これから認証を取るのか、すでに取得済みで年次サイクルを回しているのかという段階の違いです。新規取得ならテンプレートの網羅性と構築の伴走支援が、更新運用なら前年度データの引き継ぎと記録の蓄積のしやすさが効いてきます。
そのうえで、自社でいちばん時間を取られている業務が製品の中核機能と噛み合っているか、Pマークなど他の認証を同じ仕組みに載せる必要があるか、日本語での運用と国内サポートが要るかを確認していくと、候補は数本に絞れます。料金を公開している製品が限られるため、課金単位と初期費用の扱いを揃えて見積もりを取ることが、比較を成立させる前提になります。
MCB FinTechカタログでは、ISMS・Pマークの認証運用を支援するサービスの資料を無料で請求できます。ぜひ各社の資料をご覧になって、自社に合うツールの比較検討を進めてください。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. ISMS管理ツールとは何ですか?
A. ISMS管理ツールとは、ISO/IEC 27001(JIS Q 27001)が求める文書管理・リスクアセスメント・従業員教育・内部監査・是正処置といった運用業務を、クラウド上で一元的に扱えるようにしたソフトウェアです。
認証そのものを与えるものではなく、認証を取り、維持するための運用基盤にあたります。どの作業がどこまで置き換わり、どこから人の判断が残るかは自動化・効率化できる7つの業務で業務ごとに整理しています。
Q. ISMS認証を取得するメリットは何ですか?
A. ISMS認証を取得するメリットは、取引先に対して情報セキュリティ体制を第三者の証明付きで示せることと、社内のセキュリティ意識・管理体制が実際に底上げされることの2つに大別されます。
ISMS-AC が認証取得組織1,704件に行った調査では、取得の動機として最も多かったのが「顧客からの信頼を確保するため」(84.7%)で、「組織の情報セキュリティ対策の強化のため」「組織の情報セキュリティ管理体制の強化のため」が続きました。
取得後に実感した効果としては「社員の情報セキュリティに関する意識向上、教育啓発に寄与した」(71.6%)が最多で、「組織の情報セキュリティ管理体制が強化できた」(70.5%)がほぼ同率で並んでいます。対外的な信用のために取得した組織が、結果として社内の底上げも得ている構図です。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:ISMS適合性評価制度に関する調査報告書(2024年7月)|一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター(調査期間2024年3月・有効回答1,704件)
Q. ISMS管理ツールを入れれば、コンサルタントなしで認証を取得・運用できますか?
A. 自社だけでの取得を想定した製品はありますが、適用範囲の決定、リスクへの対応方針、監査員の選定、マネジメントレビューでの経営判断はツールの外に残ります。
実現できるかどうかは、規程テンプレートと入力ガイドの厚さ、そして社内で確保できる工数で決まります。ツールとコンサル委託は排他的な選択肢ではなく、初年度だけ伴走支援を受けて2年目から自走に切り替える形もとれます。
どの作業が仕組みに載り、どこから人の判断になるかは自動化・効率化できる7つの業務で業務ごとに示しています。
Q. ISMS管理ツールは維持審査・更新審査でも役に立ちますか?
A. ISMS管理ツールは認証を取った後こそ効果が出やすく、有効期限3年・年1回以上のサーベイランス審査という周期を回し続けるための道具です。
規格はリスクアセスメント結果や内部監査・マネジメントレビューの結果を「利用可能な状態にしなければならない」と求めます。日々の記録がツールに残っていれば、審査のたびに証拠を作り直す作業が発生しません。
年次サイクルのどこが軽くなるかは新規取得と更新運用で、ツールをどう使うかで扱っています。
Q. ISMS管理ツールの料金体系はどうなっていますか?
A. ISMS管理ツールの料金は、初期費用+月額または年額の組み合わせが基本で、金額を公開している製品は少なく多くは見積もりです。本記事で扱う11サービスのうち、公式サイトで金額を確認できたのは3つでした(2026年8月時点)。
同じ製品でも、自社で使う自走プランとコンサルタントが伴走するプランで金額が変わります。安い側の価格だけで比べると総額がずれるため、課金の条件を揃えて聞く必要があります。
聞くべき項目、公開されている3社の条件、Excel継続やコンサル委託と比べたときの費用と工数はISMS管理ツールにいくらかかるかにまとめました。
Q. ISMS管理ツールに無料トライアルはありますか?
A. ISMS管理ツールには無料トライアルや無料体験を用意している製品があり、期間は7日間から3か月程度まで幅があります。製品ごとの有無と期間は比較表の「無料トライアル」列にまとめました(2026年8月時点)。
トライアルの提供がない製品でも、デモや説明会で画面を見せてもらえる場合があります。契約前に何を試すべきかは失敗しないISMS管理ツールの選び方で解説しています。
Q. ISMS認証の審査費用と、取得までの期間はどれくらいですか?
A. 審査費用は公表された価格表が存在せず認証機関の見積もりで決まり、期間について公表されているのも審査工程の目安だけです。
費用は審査工数(組織の人数、関連部門の数、サイトの数、技術の複雑さなど)で変わり、ツールの費用とは別枠で発生します。期間の目安には、規程を整備して運用実績を積む構築期間が含まれません。
費用の内訳、複数の認証機関から見積もりを取る意味、3年間の総額で見る考え方、公表されている工程の目安は審査費用はどう決まるか、期間はどれくらいかで扱っています。
Q. ISMS管理ツールは、契約してから運用に乗るまでどれくらいかかりますか?
A. ISMS管理ツールの立ち上げ期間について公表された資料に標準的な目安はなく、実際の期間を左右するのは既存の規程・台帳・記録をツールへ移す初年度の作業量です。
見込みを掴む方法はあります。無料トライアルの期間内に自社の台帳の一部を実際に登録し、全件に引き直したときの工数を測ると、資産の件数と既存記録の整理状況に見合った期間が読めます。
着手する時期も効きます。審査の直前に始めると移行作業と審査準備が重なるため、審査が済んだ直後を起点にする考え方を取得後の維持・更新で説明しています。
Q. 既存のExcel台帳をそのまま取り込めるかは、どう確かめればよいですか?
A. インポートの可否と範囲は製品によって差があるため、見積もりの段階で、取り込める形式と、初期設定の支援が料金に含まれるかを具体的に確認します。
「CSVで取り込めます」という回答だけでは判断できません。自社の台帳の列構成をそのまま渡し、どこまで自動で入り、どこから手入力になるかを見てもらうと、初年度の作業量が読めます。
確実なのは、トライアルやデモで自社の実データを一部入れてみることです。説明を聞くより、取り込みでつまずく箇所がはっきりします。
Q. ISMS管理ツールでPマークやISO 9001も同じ仕組みで管理できますか?
A. 複数規格の運用に対応した製品なら同じ仕組みで管理できますが、日本独自制度であるプライバシーマークは海外製ツールの対象外です。
ISMS認証取得組織の56.4%はプライバシーマークも取得しており、規程・教育・内部監査・是正処置は内容が重なります。一方で両制度は準拠規格も付与単位も異なり、有効期間もISMSが3年、Pマークが2年と更新サイクルがずれます。
どの製品がどの規格に対応しているかは比較表の「対応規格」の列で確認できます。将来的にPマークも取る可能性があるなら、候補を絞る前に見ておく価値があります。
Q. 拠点が複数ある場合、内部監査やツールの選び方はどう変わりますか?
A. 適用範囲に含めた拠点はすべて内部監査の対象になり、審査工数も拠点の数で変わるため、拠点ごとの記録を分けて管理できるかが選定の軸になります。
JIPDEC は、審査工数が組織の人数、関連部門の数、サイト・事務所の数、技術の複雑さなどによって異なり、認証機関の見積もりによると説明しています。拠点が増えるほど審査費用にも影響します。
監査員の選定では客観性と公平性の確保が求められます。自分の担当拠点を自分で監査する形は避ける必要があるため、拠点間で相互に監査するなら、監査計画と記録を1か所で管理できるツールだと運用しやすくなります。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:FAQ2:認証取得条件|一般財団法人日本情報経済社会推進協会/ISMSユーザーズガイド(JIP-ISMS111-4.0)|同
Q. 中小企業や専任担当者がいない組織でもISMS管理ツールを導入できますか?
A. 導入できますし、兼任の担当者が1人で回している組織ほど効果が出やすい領域です。ISMS-AC の調査では、認証の取得・維持に関する今後の課題として「人材の確保、育成」(54.2%)と「マンネリ化・形骸化」(50.8%)が上位に挙がっており、手作業の運用が担当者個人に依存しやすいことが示されています。
費用を抑えたい場合、認証範囲は必ずしも全社である必要がありません。同調査でも認証範囲を全社としている組織は52.2%で、残る約半数は一部の事業部・拠点に絞って取得していました。
専任者を置けない場合は、初期構築や内部監査の代行をオプションで提供している製品が候補になります。条件に合う製品は30秒で終わる選定診断で絞り込めます。
Q. 審査員がツールに不慣れな場合、記録はどう提示すればよいですか?
A. 審査で問われるのは記録の内容と、必要なときに取り出せる状態にあることであって、どのツールを使っているかではありません。
そのため、該当する記録をその場で呼び出せるか、PDFやCSVに書き出して渡せるかを事前に確かめておくと、当日の進行に左右されません。提示の方法は、審査の前に認証機関へ相談しておくと確実です。
海外製のツールを使う場合は、審査が日本語で行われる前提で、記録を日本語で読める形に出力できるかも確認します。国産か海外製かの見極めは失敗しないISMS管理ツールの選び方で扱っています。
Q. ISMS管理ツールを乗り換えると、それまでの記録はどうなりますか?
A. 規格は記録を利用可能な状態に保つことを求めるため、乗り換える場合も、前のツールに入れた記録を取り出せる形にしておく必要があります。
更新審査は3年間の運用が継続していることを評価するため、過去の記録が読めなくなると、その期間の証拠を示せなくなります。乗り換えの検討は、審査の周期と重ならない時期に始めるのが安全です。
契約前に確認したいのは、規程・台帳・監査記録をどの形式で書き出せるか、解約後にいつまでデータを取り出せるか、書き出しが有償かの3点です。
ISMS管理ツールの料金・初期費用を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、ISMS・Pマークの認証取得支援に関する掲載サービスの情報をまとめてご確認いただけます。料金が非公開の製品も多いため、自社の適用範囲と従業員数を決めたうえで問い合わせると、条件を揃えた比較がしやすくなります。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。













