市場の変化が読みにくくなり、経営会議で「この判断の根拠は何か」と問われる場面が増えています。これまでは経験豊富な役員の勘や過去の成功体験で決めてきたものの、事業や顧客の動きが複雑になるほど、その決め方で本当に良いのかという迷いが生まれます。そうしたなかで社内から出てくるのが「データドリブン経営」という言葉です。
この記事では、まず「データドリブン経営とは何か」を一文で示し、これまでの勘・経験に頼る経営との違いを整理します。そのうえで、注目される背景、得られるメリット、実際の進め方、つまずきやすいポイント、成果の出し方、そして経営・財務データの可視化から始める現実的な第一歩までを、公的な調査や一次情報とあわせて解説します。
読み終えたときに、データドリブン経営を自分の言葉で説明でき、自社なら何からどう始めればよいかの見取り図を持ち帰れる状態を目指します。
目次
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データドリブン経営とは
結論から述べます。データドリブン経営とは、勘や経験だけに頼らず、社内外に蓄積したデータに基づいて経営や現場の意思決定を行う経営手法のことです。売上や利益といった財務データに加え、顧客の行動、現場の活動指標(KPI)、市場の動きなどを収集・分析し、その事実をもとに判断を下していく考え方を指します。
この考え方は、公的機関の文書でも重要性が指摘されています。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2021」では、次のように述べられています。
予測困難な外部環境変化に俊敏に対応するために、データに基づき経営や現場の意思決定を行うデータドリブン経営の重要性が高まっている。
出典:DX白書2021|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)
ここで大切なのは、データドリブン経営が「データを見ること」そのものを目的にしていない点です。あくまで、より速く・より確からしい意思決定を行うための手段としてデータを使います。集めた事実をもとに仮説を立て、施策を実行し、その結果をまたデータで確かめて改善する。この一連のサイクルを回し続けることが、データドリブン経営の中身です。
データドリブン経営とDXの関係
データドリブン経営は、DX(デジタルトランスフォーメーション)と混同されがちですが、同じものではありません。DXはデジタル技術を使って業務やビジネスモデル、組織のあり方そのものを変革する取り組み全体を指す広い概念です。
一方のデータドリブン経営は、その変革のなかで「意思決定の質を、データによって高める」という部分に焦点を当てた考え方です。DXという大きな箱のなかに、データドリブン経営という中身の一つが含まれる、と捉えると整理しやすくなります。デジタル化でデータが集まる環境が整うほど、そのデータを経営判断に活かすデータドリブン経営の実現しやすさも高まります。
勘・経験・度胸(KKD)に頼る経営との違い
データドリブン経営を理解するうえで、対になる考え方が「KKD」です。KKDとは、勘(K)・経験(K)・度胸(D)の頭文字を取った言葉で、担当者や経営者の主観的な判断に頼る従来型の意思決定を指します。両者の違いを、判断のよりどころや再現性などの観点で並べると次のようになります。
| 観点 | KKD(勘・経験・度胸)に頼る経営 | データドリブン経営 |
|---|---|---|
| 判断のよりどころ | 個人の勘・過去の経験・主観 | 収集・分析したデータ(事実) |
| 再現性 | 判断した本人に依存し、他者が同じ結論に至りにくい | 同じデータと基準があれば誰でも検証・再現しやすい |
| スピードと精度 | 経験が豊富な領域では速いが、未知の状況では精度が落ちやすい | データが揃えば、未知の状況でも根拠を持って素早く判断できる |
| 属人性 | キーパーソンの退職などで判断の質が失われやすい | 判断の根拠が組織に残り、担当者が変わっても引き継ぎやすい |
| 振り返り | 結果の良し悪しの原因を特定しにくい | どのデータに基づく判断だったかを追え、改善につなげやすい |
誤解を避けたいのは、データドリブン経営はKKDを全否定するものではない、という点です。データが示す事実を土台にしつつ、最後の一押しでは経営者の経験や構想力が生きる場面もあります。違いは「何を判断の出発点に置くか」にあります。勘から入ってデータで確かめるのか、データから入って解釈するのか。この順序が、判断の再現性と説明のしやすさを大きく左右します。
なぜ今データドリブン経営が注目されるのか
ここからは、データドリブン経営が注目を集める背景を整理します。理由は大きく分けて、外部環境の変化と、日本企業が抱えるデータ活用の遅れの2つにあります。
1つ目は、市場と顧客の変化が速く、読みにくくなったことです。消費者の行動やニーズは多様化し、これまでの経験則だけでは先を見通しにくくなりました。こうした予測が難しい環境では、実際に起きている事実をデータで捉え、素早く手を打つ経営が有利に働きます。近年は生成AIをはじめとするデジタル技術が普及し、データを分析して活用する環境が整ってきたことも後押しになっています。
2つ目は、日本企業のデータ活用が国際的に見て遅れている、という現状です。総務省の「令和2年版 情報通信白書」は、データの収集・蓄積・処理の導入状況について、次のように指摘しています。
日本においては、「導入済み」と回答した割合はいずれも2割程度である一方で、米国及びドイツにおいてはデータ収集については5割、データ蓄積については4割、データ処理については3割を超える企業が「導入済み」と回答しており、海外企業の方がデータの活用に積極的であることが明らかとなった。
出典:令和2年版 情報通信白書|総務省
同じ遅れは、IPAの「DX白書2021」でも確認できます。データ活用の目的を把握したうえでデータを収集できているかを尋ねた日米企業調査では、「十分にできている」「まあまあできている」を合わせた割合が、日本企業33.3%に対して米国企業85.4%と、大きな開きが示されました。裏を返せば、日本企業にはデータを経営に活かす余地がまだ大きく残っているということです。
制度面でも、経済産業省は2018年に「2025年の崖」を提唱し、老朽化・複雑化した既存システムを放置するとデジタル競争で不利になると警鐘を鳴らしました。
海外に目を向ければ、マッキンゼーは2022年のレポートで、2025年にはデータに基づく働き方が貸借対照表のように当たり前になり、ほとんどの従業員が業務のあらゆる場面でデータを使うようになると予想しています。
これは大企業に限った話ではありません。データを判断に使えるかどうかが、企業規模を問わず競争力を左右するようになりつつあります。こうした国内外の潮流が重なって、中堅・中小企業でもデータドリブン経営への関心が高まっています。
出典・参考資料(4件)
- 出典:DX白書2021(図表24-14「目的を把握したうえでのデータ収集」)|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)。日本33.3%・米国85.4%は「十分にできている」「まあまあできている」の合算値
- 出典:令和2年版 情報通信白書(第2部第3章第2節)|総務省
- 出典:The data-driven enterprise of 2025|McKinsey & Company(2022年1月)
- 出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省(2018年)
データドリブン経営のメリット
データドリブン経営に取り組むと、経営から現場までの意思決定にどのような変化が生まれるのか。代表的なメリットを4つに整理します。
- 意思決定のスピードと精度が上がる。判断のよりどころが事実になるため、会議で根拠を確かめ合う時間が減り、素早く合意できます。未知の状況でもデータという足場があるぶん、精度も高まりやすくなります。
- 業務の無駄と属人化が減る。どの数字を見て何を判断するかが共有されると、担当者ごとに集計方法が違う、キーパーソンしか実態を把握していない、といった状態が解消に向かいます。
- 顧客理解が深まる。購買履歴や利用状況を分析することで、顧客が何を求めているかを推測ではなく事実で捉えられ、商品やサービスの改善につながります。
- 自社の強みと課題が見える。感覚では気づきにくい不振の要因や、伸びている領域をデータが浮かび上がらせます。打ち手の優先順位をつけやすくなります。
導入後、効果が表れるまでの時間軸とコストの見方
押さえておきたいのが、成果は導入してすぐには表れないという点です。ツールを入れた翌月から数字が急に変わることはなく、データを集める基盤を整え、現場が数字を見て動く習慣が根づいて初めて効果が出ます。少なくとも数か月から一年単位で、段階的に立ち上がっていくものと見ておくのが現実的です。
コストは一度きりの投資ではなく、大きく3つに分けて見込みます。データ連携や初期設定にかかる基盤整備の費用、ツールの月額利用料、そして運用にあたる人の工数です。ツールの月額は目的や規模で幅がありますが、予実・KPIの可視化に使う管理会計システムであれば、月額数万円台から十数万円程度が一つの目安になります(後半で紹介するサービスも月額10万円からや見積もり制です)。
データドリブン経営の進め方
ここからは、データドリブン経営を実際に進める手順を、大きな流れとして示します。順序が見えるように、5つのステップに分けて解説します。

- 解決したい経営課題を決める。「利益率を改善したい」「予算と実績のズレを早く把握したい」など、データで解きたい問いを具体化します。ここが曖昧だと、集めたデータが使われないまま終わります。
- 必要なデータを洗い出す。その課題を解くために、どの数字が要るのかを定義します。たとえば利益率の改善が目的なら、部門別・商品別の粗利や販管費のデータが要ります。財務データだけでなく、現場の活動を表すKPIまで含めて考えます。
- データを収集・蓄積し、可視化する。社内に散らばるデータを集め、誰もが同じ数字を見られる状態にします。表計算ソフトでの手作業に頼ると更新が滞るため、仕組みで自動化できないかを見極めます。
- 分析し、意思決定につなげる。可視化したデータから、課題の原因や打ち手の当たりをつけます。たとえば粗利の落ち込みが特定の商品群に集中していると分かれば、価格や仕入れの見直しという具体的な判断に進めます。ここで初めて、データが経営判断の材料になります。
- 施策を実行し、結果を検証して改善する。打ち手の効果をまたデータで確かめ、次の判断に活かします。この検証と改善を回し続けることが、データドリブン経営を定着させる鍵です。
実現に必要な3つの要素
これらのステップを支えるのが、次の3つの要素です。どれか一つでも欠けると、データドリブン経営は回りにくくなります。
- データを集める基盤:会計システムや業務システムに分散したデータを、一か所に集めて扱える環境。
- 分析・可視化の手段:集めたデータを、意思決定に使える形に整理し、見える化するツール。
- データを使う組織文化:現場と経営が同じ数字を見て議論し、判断する習慣。ツール以上に、この文化の醸成が定着を左右します。
データドリブン経営で失敗しないためのポイント
先に、つまずきやすいポイントを知っておくと、遠回りを避けられます。よくある失敗は、次の3つに集約されます。
1つ目は、ツールの導入自体が目的になってしまうことです。高機能な分析ツールを入れても、解きたい課題が定まっていなければ、データは見られないまま放置されます。ステップ1で述べたとおり、最初に問いを決めることが欠かせません。
2つ目は、データを万能だと考えてしまうことです。データはあくまで過去と現在の事実であり、そこから未来をどう解釈し、何を決めるかは人の判断です。データが示さない要素まで数字だけで割り切ろうとすると、かえって判断を誤ります。
3つ目は、組織文化が変わらず定着しないことです。一部の担当者だけがデータを見ていても、経営会議が従来どおり勘と経験で進んでいては、判断は変わりません。経営層が率先して数字を根拠に議論する姿勢を示すことが、文化を根づかせる出発点になります。
データドリブン経営の成果はどう表れるか
データドリブン経営の成果は、派手な数字よりも、日々の意思決定の変化として表れます。代表的なのは、これまで集計や突合に追われていた時間が減り、その分を分析や打ち手の検討に回せるようになる、という変化です。
具体的には、次のような形で現れます。判断のよりどころが事実になることで会議での合意が速くなり、予算と実績のズレやKPIの異常を早い段階で捉えられるようになります。集計や突合を仕組みで自動化すれば、月次の締めにかかる工数が減り、担当者個人に依存しがちだった実態の把握も組織で共有できるようになります。
とりわけ予算・実績・KPIといった経営数字の領域は、扱う数字がはっきりしていて、集計を仕組み化した効果(工数の削減や更新の速さ)を測りやすいため、成果を実感しやすい入り口になります。実際に、予実管理やKPI管理をクラウドで一元化したサービスの公式導入事例では、表計算ソフトでの管理にかかっていた工数が減ったケースが公表されています。
ただし成果の大きさは、扱うデータの範囲や運用の定着度によって変わります。自社での効果を見積もる際は、各サービスの公式事例や試算を、自社の状況に照らして確認することが大切です。具体的なサービスは、後半の「サービスで実装する」の章で紹介します。
何から始めるか — 経営・財務データの可視化から
データドリブン経営と聞くと、全社の膨大なデータを統合する大がかりな取り組みを思い浮かべがちです。しかし、中堅・中小企業がいきなり全社基盤を目指すと、費用も期間もかさみ、成果が見える前に止まってしまいます。現実的なのは、成果が見えやすく着手しやすい領域から小さく始めることです。
どの領域から着手するかは、自社が抱える一番の課題によって変わります。営業を強化したいなら顧客・商談データ(顧客管理のCRM、営業支援のSFA)、集客ならマーケティングの行動データ、というように入口はさまざまです。
そのなかで多くの企業にとって取り組みやすいのが、経営・財務データ、なかでも予算・実績・KPIの可視化です。すでに会計システムに実績データがあり、予算や見込みを表計算ソフトで管理している企業が多いうえ、経営判断に直結して成果を数字で測りやすいからです。ただし手作業の集計・突合で更新が遅れ、意思決定に間に合わないことも少なくありません。
ここをデータで見える化すると、予算と実績のズレをすばやく捉え、着地見込みを早めに立て、部門を横断して同じ数字で議論できるようになります。全社の顧客データや行動データの活用に進むのは、この経営数字の可視化で手応えをつかんでからでも遅くありません。身近で効果が測りやすい領域から始めることが、投資対効果を見極めながら範囲を広げるコツです。
予算・実績の可視化を実際に進めるときは、予実の差異をどう読み解くか(差異分析)や、まず手元の表計算ソフトで予実管理表をどう作るかが出発点になります。具体的な手順は次の記事で解説しています。
データドリブン経営に必要なツール
データドリブン経営を支えるツールは、役割ごとに種類が分かれています。まずは、それぞれが「何をするものか」を整理しておきましょう。
| 種類 | 主な役割 |
|---|---|
| DWH(データウェアハウス)/データレイク | 社内外に散らばるデータを集約・蓄積する基盤 |
| BI(ビジネスインテリジェンス)ツール | 蓄積したデータを集計・可視化し、分析しやすくする |
| CRM/SFA | 顧客情報や営業活動のデータを管理する |
| MA(マーケティングオートメーション) | 見込み顧客の行動データを収集し、施策に活かす |
| ERP | 会計・販売・在庫などの基幹業務データを統合管理する |
| 管理会計システム(予実・経営管理) | 予算・実績・KPIを可視化し、経営判断に使える形にする |
これらは目的によって使い分けます。顧客との接点を強化したいならCRMやMA、全社の基幹データを統合したいならERP、というように、解きたい課題に合ったツールを選ぶことが大切です。
このうち、部門や事業をまたいで全社のデータを集計・可視化し、自由に分析すること自体を目的にするなら、汎用性の高いBIツールが有力な候補になります。主要なBIツールをタイプ別に料金・機能から比較したい場合は、次の記事が参考になります。
前の章で述べた「経営・財務データの可視化から始める」という第一歩に対応するのが、管理会計システムです。管理会計システムは、会計システムに蓄積された実績データを取り込み、予算や見込みと突き合わせ、部門別・事業別の損益やKPIを可視化することに特化しています。
汎用のBIツールを一から設定するよりも、予実管理やKPI管理という経営数字の領域に絞って早く立ち上げられるのが特徴です。次の章では、この管理会計システムの具体的なサービスを紹介します。
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サービスで実装する — 予実・KPIを可視化する管理会計システム
ここからは、経営・財務データの可視化を担う管理会計システムの代表的なサービスを紹介します。予実管理に強いタイプと、財務数値とKPIを結びつけて管理するタイプを取り上げます。まずは主な特徴を一覧で比較します。
| 比較項目 | DIGGLE(ディグル) | Scale Cloud(スケールクラウド) |
|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 月額費用 | 要問い合わせ (Standard/Enterpriseの2プラン) | 月額10万円〜 (プラン詳細は要問い合わせ) |
| 予実管理 | ◎予実管理特化(予算策定・予実突合・見込管理を一元化) | ●予算策定・予実管理・着地見込み更新に対応 |
| KPI・非財務指標連携 | ●非財務指標を組み合わせた分析に対応 | ◎PL/BS/CFと先行・結果指標KPIを関連づけてモデリング |
| 会計・API連携 | freee会計・マネーフォワード クラウド・勘定奉行クラウド・弥生会計・Salesforceなどと API/CSVで連携 | 勘定奉行クラウド・freee・Salesforce(API)・Googleスプレッドシート・CSV明細連携 |
| レポート・可視化 | 予算/見込/実績の対比・複数年トレンド分析、BIツールへのデータ出力、ドリルダウン分析 | 経営用/管理部用/事業部用の複数ダッシュボード・多軸分析・異常値の自動検知 |
| サポート・導入支援 | 問い合わせ・見積相談の導線あり (詳細な体制は要問い合わせ) | KPI設計コンサルティング・導入後の定期ミーティングによる伴走支援 |
| 無料トライアル | あり (期間・条件は要問い合わせ) | 公式に明記なし (要問い合わせ) |
| 導入実績 | 予実管理ソフトウェア(SaaS/PaaS区分)でシェア1位 (富士キメラ総研2024年度実績) | 工数40%〜6分の1削減の事例を公式で公表 (SaaS単独の導入社数は非公開) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | ミーティングを予約する |
DIGGLE(ディグル)

DIGGLEは、ディグル株式会社が提供する予実管理特化のクラウドサービスです。予算策定・予実突合・着地見込みの管理・レポーティングという一連の予実管理業務を、クラウド上で完結させることを目指しています。表計算ソフトに頼りがちな予実管理を、会計データと連携した仕組みに置き換える点が位置づけの中心です。
会計システムからのデータ取り込みと予実突合を自動化し、勘定科目より細かい粒度での損益管理や、非財務指標(KPI)を組み合わせた分析にも対応します。freee会計や勘定奉行クラウド、Salesforceなど(詳しい連携先は上の比較表を参照)とAPIやCSVで連携でき、表計算ソフト中心の予実管理で起こりがちな属人化や集計の手間を減らす用途に向いています。
富士キメラ総研の調査(2024年度実績)では、予実管理ソフトウェア(SaaS/PaaS区分、金額ベース)でシェア1位と発表されています。料金は要問い合わせで、Standard・Enterpriseの2プランが用意されています。
出典・参考資料(1件)
Scale Cloud(スケールクラウド)

Scale Cloudは、株式会社Scale Cloudが提供する経営管理クラウドです。財務数値(PL・BS・CFといった決算書の数値)と非財務数値(KPI)を関連づけて一元管理し、予算の達成度と再現性を高めることを狙いとしています。公認会計士である代表が、CFOやIPO支援などのコンサルティング経験をもとに設計した点が背景にあります。
特徴は、現場の活動指標であるKPIと財務成果を同じ基盤で結びつけ、KPIの変化がPLにどう影響するかをシミュレーションできる点です。経営層・管理部・事業部それぞれの視点に応じたダッシュボードを用意でき、多軸での分析や異常値の自動検知にも対応します。
勘定奉行クラウドやfreee、Salesforce、Googleスプレッドシートと連携し、月額10万円からの料金体系が公式サイトで示されています。KPI設計のコンサルティングや導入後の定期ミーティングなど、伴走型の支援を重視している点も特徴です。
公式の導入事例ページでは、他社システムからの乗り換えで工数が約40%削減された企業や、表計算ソフトからの移行で工数がおよそ6分の1になった企業が紹介されています。効率化そのものだけでなく、その先の分析や判断の質を高める狙いについて、同社の広瀬好伸氏は独自インタビューで次のように語っています。
私は、予算管理・予実管理という仕事の価値を上げたいと思っています。効率化だけでは、担当者が楽になっただけで、仕事の価値自体は上がりません。今まで得られなかった気づきを提供し、アウトプットの質を変えていくことで、経営管理という仕事そのものの価値を高めていきたいと考えています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:導入事例|Scale Cloud(株式会社Scale Cloud)
ここで取り上げたのは代表的な2サービスですが、管理会計システムには予実管理特化型から財務数値とKPIを結びつける経営管理型まで、目的や企業規模に応じた選択肢があります。予実・KPIの可視化に使えるサービスを幅広く見比べて自社に合う一本を選びたい方は、次の記事で選び方やタイプ別の違い、機能・料金をまとめて確認できます。
まとめ
データドリブン経営とは、勘や経験だけに頼らず、データに基づいて意思決定を行う経営手法です。市場の変化が読みにくくなり、日本企業のデータ活用の遅れが指摘されるなかで、その重要性が高まっています。メリットは意思決定の速さと精度、業務の効率化、顧客理解の深まりなど幅広く得られますが、成果は基盤づくりと文化の定着があって初めて表れます。
失敗を避けるには、ツール導入を目的化せず、まず解きたい課題を定めること、そしてデータを万能視しないことが欠かせません。最初の一歩としては、成果が見えやすい経営・財務データ、とりわけ予算・実績・KPIの可視化から小さく始めるのが現実的です。
その実装を担うのが、予実・KPIの可視化に特化した管理会計システムです。会計データと連携して経営数字をデータで扱えるようにし、データドリブン化を後押しします。まずは各サービスの資料で、自社に合うかどうかを確かめてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. データドリブンとは何ですか?
データドリブンとは、勘や経験ではなく、収集・分析したデータ(事実)に基づいて判断・行動する考え方です。これを経営の意思決定に適用したものがデータドリブン経営で、売上・利益などの財務データに加え、顧客の行動や現場のKPIといった数字も根拠に用います。「データを見ること」自体が目的ではなく、より速く確からしい判断を下すための手段としてデータを使う点が要点です。
Q. データドリブン経営とKKD(勘・経験・度胸)経営は何が違いますか?
データドリブン経営とKKD経営の違いは、判断の出発点を、データ(事実)に置くか個人の勘・経験に置くかにあります。KKD経営は熟練者の主観に依存するため属人的で再現性が低くなりがちですが、データドリブン経営は同じデータと基準があれば誰でも検証・再現でき、判断の根拠が組織に残ります。
ただしKKDを全否定するものではなく、データで土台を固めたうえで最後の判断に経営者の経験を生かす、という両立が現実的です。
Q. データドリブン経営は何から始めればいいですか?
データドリブン経営は、成果が見えやすい経営・財務データ、なかでも予算・実績・KPIの可視化から小さく始めるのが現実的です。多くの企業は会計システムに実績を、表計算ソフトに予算を持っており、この突合を見える化するだけでも予実のズレや着地見込みを早く捉えられます。いきなり全社のデータ基盤を目指すと費用も期間もかさむため、身近な領域で手応えをつかんでから範囲を広げるのが、つまずきにくい進め方です。
Q. データドリブン経営で失敗するのはなぜですか?デメリットはありますか?
データドリブン経営がうまくいかない主な原因は、ツール導入自体が目的化する・データを万能視する・組織文化が変わらず定着しない、の3つです。高機能なツールを入れても解きたい課題が曖昧ではデータが放置され、数字だけで割り切ろうとすると解釈を誤ります。
デメリットと言えるのは、データ基盤の構築と運用の定着に継続的なコストと時間がかかる点で、導入してすぐ成果が出るものではないという前提で取り組む必要があります。
Q. 中堅・中小企業でもデータドリブン経営はできますか?
データドリブン経営は、中堅・中小企業でも十分に取り組めます。大企業のような全社データ基盤を最初から構えるのではなく、すでに手元にある予実・KPIといった経営数字の可視化から始めれば、限られた人員・予算でも着手できます。むしろ意思決定に関わる人数が少ないぶん、経営層が率先して数字を根拠に議論する文化を根づかせやすい面もあります。
Q. データドリブン経営は費用や成果が出るまでの期間の目安はどれくらいですか?
データドリブン経営の費用と期間は、一度きりの投資ではなく、基盤づくりと運用の定着に継続的にかかるものと捉えるのが現実的です。ツールを導入した翌月から数字がすぐに変わるわけではなく、データが集まり、現場が数字を見て動く習慣が根づいて初めて効果が表れます。
目安は扱うデータの範囲や運用の定着度によって大きく変わるため、身近な領域から小さく始めて投資対効果を確かめながら広げることが、費用と成果を見極めやすい方法です。
Q. データドリブン経営に必要なツールは何ですか?
データドリブン経営を支えるツールは役割ごとに分かれており、データを集めるDWH/データレイク、可視化・分析するBI、顧客・営業データを扱うCRM/SFA/MA、基幹業務を統合するERP、予実・KPIを可視化する管理会計システムなどがあります。
すべてを一度に揃える必要はなく、解きたい課題に合ったものを選ぶのが基本です。経営・財務データの可視化から始めるなら、予実管理やKPI管理に特化した管理会計システムが立ち上げやすい選択肢になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















