定期券の更新月が来た社員を一覧から拾い、乗換案内で経路と定期代を調べ直し、非課税限度額を超えた分を給与計算の担当者に申し送る——通勤手当の支給管理は、月ごとに同じ手順を人手で繰り返す業務です。運賃改定が入れば対象者を洗い出して支給額を打ち直し、マイカー通勤者については免許証と任意保険の期限を別の台帳で追いかけることになります。
この一連の作業を引き受けるのが通勤費管理システムです。ただし、日々の立替交通費を精算する経費精算システムとは扱う対象が違い、製品によって自動化される範囲にも差があります。令和8年4月1日以後に支払われる通勤手当からは、非課税限度額の区分そのものも変わりました。
本記事では、通勤費管理システム12製品を3つのタイプに分けて比較します。内訳は、通勤手当の支給管理そのものを担う8製品と、マイカー通勤の許可と書類の期限管理を担う4製品です。定期代の計算・更新がどこまで自動化されるか、運賃改定にどう追随するか、非課税限度額の判定を任せられるかを製品ごとに整理し、料金は公開されているものと非公開のものを分けて示しています。
あわせて、改正後の区分別の非課税限度額も掲載しています。
また、貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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通勤費管理システムのタイプ
通勤費管理システムを探すとき、多くの担当者が最初に迷うのは「通勤費だけを扱う専用の製品を入れるべきか、すでに使っている(あるいはこれから入れる)経費精算システムの機能で足りるのか」という点です。
主要な経費精算システム10製品の公式サイト・ヘルプセンター・FAQでは、通勤手当の支給額そのものを算定し、改定や異動に合わせて更新する機能は説明されていません(2026年8月時点)。
各社が公式に説明しているのは、日々の立替交通費の精算から通勤定期でカバーされる区間を差し引く「定期区間の自動控除」までです。これは通勤定期券を持つ社員に交通費を二重に支給しないための機能で、通勤手当をいくら支給するかを決める処理とは別物になります。
そのため本記事では、通勤手当の支給管理を担う製品を軸にタイプを分けています。どちらを選ぶべきかの判断材料は、後半の「通勤費管理システムの選び方」で詳しく扱います。
| タイプ | 内容 | 該当する主なサービス |
|---|---|---|
| 運賃改定への追随に強い通勤費専用システム | 経路検索の仕組みを自社で持つか提供元と直結しており、運賃改定が入ったときに対象者の抽出から差額計算、支給データの更新までを一続きで処理できる製品がある。対象者の抽出まで公式に説明しているかは製品によって差がある。鉄道・バス通勤者が多く、改定のたびの洗い出しが負担になっている企業に向く | 通勤管理Arvo/通勤費.impact!/駅すぱあと 通勤費Web/通勤費管理システム(オービックオフィスオートメーション)/通勤費精算管理 |
| 自社の支給規定をそのまま設定できる通勤費専用システム | 申請できる経路の制限、多段階の承認ルート、実費と定期の併用といった独自ルールを設定で吸収できる。支給規定が細かい企業や、勤務形態の異なる社員が混在する企業に向く | らくらく通勤費/通勤費管理クラウド by NAVITIME/camille "0"(カミーユゼロ) |
| マイカー通勤の許可と車両・保険書類の期限を管理するシステム | 通勤手当の支給計算ではなく、マイカー通勤の許可申請・承認と、運転免許証・車検証・自賠責/任意保険の有効期限の管理に軸足がある。マイカー通勤者を多く抱える企業が、通勤費の支給管理とは別に検討する領域 | ビークルBiz/通勤車両管理LITE/マイカー通勤見守りサポート隊/マイカー通勤経路管理システム |
運賃改定への追随に強い通勤費専用システム
鉄道やバスの運賃が改定されると、影響を受ける社員を特定し、新しい運賃で支給額を計算し直し、給与計算に渡すデータを差し替える必要があります。対象者が数百人規模になると、この洗い出しだけで数日を要することもあります。
このタイプの製品は、経路検索の仕組みを自社で開発しているか、経路検索サービスの提供元と直接つながっており、改定後の運賃データが反映されると影響のある社員を自動で抽出します。抽出した対象者について改定前後の金額を比較し、支給データを一括で更新するところまでを画面上の操作で完結できる製品もあります。
既存の人事・給与システムや基幹システムと組み合わせて使う前提で作られている製品も、このタイプに含まれます。通勤費の計算結果を給与計算側へ渡す部分まで含めて設計されているため、システム間の連携を重視する企業の選択肢になります。
自社の支給規定をそのまま設定できる通勤費専用システム
通勤手当の支給規定は企業ごとに異なります。「最安経路のみ支給する」「所要時間が一定以内なら乗り換え回数の少ない経路も認める」「6か月定期を原則とするが、契約期間の短い社員は1か月定期とする」といったルールが積み重なっているケースは珍しくありません。
このタイプの製品は、申請できる経路の条件、承認ルートの階層と分岐、実費精算と定期支給の使い分けといった設定項目を細かく持ち、既存の規定を運用を変えずにシステムへ載せることを重視しています。支給方法を複数比較して最も安い組み合わせを提示する機能を備えた製品もあり、規定に沿ったまま支給額を抑える運用にもつながります。
ただし、この型に入る製品でも承認ルートや申請経路の制限について公開されている情報の厚みには差があります。自社の規定が細かい場合は、比較表の該当項目と各製品の解説で公開範囲を確認したうえで、埋まっていない項目を提供元に問い合わせてください。
マイカー通勤の許可と車両・保険書類の期限を管理するシステム
マイカー通勤を認めている企業では、通勤手当をいくら支給するかとは別に、その社員が安全に通勤できる状態にあるかを確認する必要があります。運転免許証の有効期限、車検の満了日、自賠責保険と任意保険の加入状況と満了日を、社員ごとに把握して更新を促す業務です。
このタイプの製品は、マイカー通勤の許可申請と承認、通勤許可証の発行、書類の有効期限の管理と更新の通知を主目的としています。通勤手当の支給額を距離区分から算定する機能は、いずれも公式に案内していません。提供形態も、クラウドサービスのものと、申込後にダウンロードして使う表計算ソフトのファイルとで幅があります。
通勤費側の製品との使い分けは、後半の「マイカー通勤の管理はどこまでシステムで担えるか」で整理します。
診断ツールで自社に合う通勤費管理システムを絞り込む
3つのタイプを読んでも自社がどれに当てはまるか決めきれない場合は、以下の選定診断ツールをお使いください。いま最も手間がかかっている業務とマイカー通勤者への対応から、候補を数製品に絞り込めます。
【比較表】通勤費管理システムおすすめ比較12選
12製品を、通勤手当の支給管理を担う8製品と、マイカー通勤の許可・書類期限管理を担う4製品に分けて比較します。前者は定期代の管理と運賃改定への追随が中心の軸になり、後者は書類の期限管理と通勤許可の運用が中心になるため、比べるべき項目が異なります。
まず自社の通勤手段の構成に直結する〈運賃改定時の対象者抽出・支給額更新〉〈マイカー通勤の距離区分による支給計算〉で候補を絞り、次に〈非課税限度額の判定〉〈給与システムとの連携〉で要件を満たすかを確認する順に見ると絞り込みやすくなります。各項目が自社にとって何を意味するかは、後半の「通勤費管理システムの選び方」で解説します。
通勤手当の支給管理を担う通勤費専用システムの比較(8製品)
| サービス名 | 通勤管理Arvo | 通勤費.impact! | 駅すぱあと 通勤費Web | 通勤費管理システム(オービックオフィスオートメーション) | 通勤費精算管理 | らくらく通勤費 | 通勤費管理クラウド by NAVITIME | camille "0"(カミーユゼロ) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド | 公式記載なし | クラウド | 公式記載なし | 公式記載なし | クラウド | クラウド | 公式記載なし |
| 定期代の計算・更新月の判定 | △定期代の計算に対応。更新月の判定は公式記載なし | △定期代の計算に対応。更新月の判定は公式記載なし | △定期代の計算に対応。更新月の判定は公式記載なし | 公式記載なし | 公式記載なし | ●期限が近い対象者を一括抽出し新しい通用期間へ更新 | △定期代の計算に対応。更新月の判定は公式記載なし | ●1・3・6か月の定期代を計算し、定期の終了年月を自動判別 |
| 異動・退職時の払戻計算 | 公式記載なし | 公式記載なし | ●定期区間の変更に伴う払戻を自動計算 | ●異動・退職に伴う定期券の払戻に対応 | △払戻日を指定するだけで払戻金を計算。異動・退職起点の処理は公式記載なし | ●交通機関ごとの手数料を含めて自動計算 | 公式記載なし | ●通常払戻(1か月単位)と旬割払戻(10日単位)に対応 |
| 運賃改定時の対象者抽出・支給額更新 | ●対象者と支給差額を自動判定 | △事務負担の軽減に言及。対象者の抽出は公式記載なし | ●改定対象者を自動抽出し支給データを更新 | ●交通機関ごとの差額計算からデータ更新まで一括処理 | ●交通機関ごとの差額計算とデータ更新を一括処理 | ●対象の従業員を一括抽出して支給額を変更 | ●改定対象者を自動リストアップし申請依頼を一括送信 | △差額支給の計算に対応。対象者の抽出は公式記載なし |
| 申請経路の適正チェック | △承認済み経路の適否を再判定 | ●経済経路判定機能で適正な経路を自動検索 | ●規定に沿った経路のみ申請。AIが審査の留意点を提示 | 公式記載なし | 公式記載なし | △複数の経路を比較表示。規定違反の自動判定は公式記載なし | ●条件を満たすうえで最も安い経路を自動採択 | 公式記載なし |
| 非課税限度額の判定 | 公式記載なし | 公式記載なし (課税・非課税データの計算処理には言及) | ●非課税限度額と社会保険用の月割データを自動計算 | 公式記載なし | 公式記載なし | ●課税・非課税限度額の処理と戻入課税に対応 | ●2025年11月施行の限度額引き上げに設定変更なしで対応 | 公式記載なし |
| マイカー通勤の距離区分による支給計算 | ●道なりルートの実走行距離で算定 | △オプションの地図連携で距離を判定 | ●ゼンリンの地図機能で距離を算出 | 公式記載なし | 公式記載なし | ●距離区分による支給計算と高速道路料金の計算に対応 | ●距離×単価式とテーブル式の2方式から選択 | △車などの交通手段に金額を設定可能。距離区分の計算は公式記載なし |
| 免許証・車検証・保険の期限管理 | ●免許証・車検証・車両保険の期限と証書画像を管理 | 公式記載なし | 公式記載なし | 公式記載なし | 公式記載なし | ●免許証・任意保険証・車検証の添付と有効期限を管理 | ●運転免許証などの期限を登録し期限前にメール通知(対象書類の範囲は公式記載が割れており要確認) | 公式記載なし |
| 給与システムとの連携 | ●CSV出力に対応。SmartHRとAPI連携 | ●既存の給与システムへ連携 | ●CSV連携。SuperStream-NXとのアライアンスあり | ●給与奉行クラウドと連携(オプション) | 公式記載なし | ●給与奉行クラウド・SmartHR・PROACTIVEとAPI連携 | ●CSV出力で既存の給与システムへ連携 | ●CSV出力で給与システムへ連携 |
| 初期費用 | 非公開(要問い合わせ) | 非公開(要問い合わせ) | 非公開(要問い合わせ) | 非公開(要問い合わせ) | 非公開(要問い合わせ) | 非公開(要問い合わせ) | ライトプランは無料 スタンダードプランは非公開 | 1,500,000円(税別) |
| 月額費用 | 1ライセンス月額300円(基準単価。利用人数・利用期間に応じた割引プランあり) | 非公開(要問い合わせ) | 非公開(要問い合わせ) | 非公開(要問い合わせ) | 非公開(要問い合わせ) | 6,000円〜 (対象人数により変動) | ライトプラン20,000円(税別、従業員300名まで) スタンダードプランは非公開 | 非公開(要問い合わせ) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
各社の公式サイト・公式資料の記載にもとづき作成(2026年8月時点)。「公式記載なし」は公式に確認できなかったことを示すもので、機能がないことを意味するものではありません。
マイカー通勤の許可・書類の期限管理を担うサービスの比較(4製品)
| サービス名 | ビークルBiz | 通勤車両管理LITE | マイカー通勤見守りサポート隊 | マイカー通勤経路管理システム |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド | 無料配布の表計算ソフトのファイル (クラウドサービスではない) | クラウド | クラウド |
| 通勤許可の申請・承認 | ●スマホ・PCから申請。承認フローは最大5段階 | △申請者の情報をファイル上で一括管理。承認フローは公式記載なし | △通勤の適正を判定。申請・承認フローの詳細は公式記載なし | ●入力ミスの確認機能と管理者の承認フローを搭載 |
| 通勤許可証の発行 | ●オンラインで自動発行し従業員へメール通知 | ●申請書・通勤/駐車許可証などの帳票を出力 | ●条件を満たす社員にのみ許可書を発行 | 公式記載なし |
| 運転免許証の期限管理 | ●画像を添付して管理し有効期限で検索 | ●エラーチェック機能で有効期限切れを把握 | ●免許証の状況と期限を管理 | ●有効期限を管理 |
| 車検証の期限管理 | ●画像を添付して管理し有効期限で検索 | △自動車検査証の情報を管理。有効期限のチェックは公式記載なし | ●車検証の状況と期限を管理 | ●有効期限を管理 |
| 自動車保険の期限管理 | ●自賠責・任意保険の証券画像と満期日を管理 | △保険情報を管理し付保漏れを把握。満期日の管理は公式記載なし | ●加入状況と満了期日を管理 | ●有効期限を管理。自賠責と任意の区別は公式記載なし |
| 期限接近時の通知 | ●通勤許可期間・保険期間の期日前にリマインドメールを自動送信 | 公式記載なし (ファイル上のエラーチェックのみ) | ●期限切れが近い書類の更新通知を自動送信 | ●期限30日前を基準に通知タイミングを2つまで設定 |
| 通勤手当の支給計算 | 公式記載なし | 公式記載なし | 公式記載なし | 公式記載なし |
| 初期費用 | 30,000円〜(税抜) | 無料 | 非公開(要問い合わせ) | 32,400円(税別。公式サイトに無料キャンペーン中の記載あり) |
| 月額費用 | 15,000円〜(税抜、300名まで) | 無料 | 非公開(要問い合わせ) | 1アカウント54円(税別) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
各社の公式サイト・公式資料の記載にもとづき作成(2026年8月時点)。4製品はいずれも通勤手当の支給額を算定する機能を公式に案内していません。「公式記載なし」は公式に確認できなかったことを示すもので、機能がないことを意味するものではありません。
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各通勤費管理システムの詳細解説
ここからは、12製品それぞれの機能と料金を個別に見ていきます。
運賃改定への追随に強い通勤費専用システム
1. 通勤管理Arvo(株式会社バイトルヒクマ)

運賃改定への追随を前面に掲げるのが、株式会社バイトルヒクマのクラウド型通勤費管理システムです。同社は次に紹介する通勤費.impact!と2製品を並行して提供しています。インストール不要でブラウザとスマートフォンアプリから利用でき、料金は1ライセンス月額300円が基準単価です。サーバ維持費と経路検索「駅すぱあと」の利用料は月額に含まれます。
運賃改定については、影響を受ける対象者と支給差額を自動で判定する仕組みで特許第7378078号を取得しています。承認済みの経路が路線の統廃合やダイヤ改正を経ても最適かを判定し直す「経路の適否再判定」(特許第7663189号)も備え、登録済み経路の棚卸しに使えます。
マイカー通勤は直線距離ではなく実際に走行する道なりの距離で算定し(特許第7291920号)、免許証・車検証・車両保険の有効期限と証書画像もあわせて管理できます。SmartHRとは2026年5月18日からAPI連携しています。一方、非課税限度額の判定や令和8年度税制改正への対応に触れた記述は、公式サイトでは確認できませんでした。
2. 通勤費.impact!(株式会社バイトルヒクマ)

通勤管理Arvoと同じ株式会社バイトルヒクマの製品で、両製品は現在も並行して提供されています。経路検索エンジンに「駅すぱあと」を組み込み、経済経路判定機能で適正な経路を自動検索します。初期費用・月額とも公開されておらず、問い合わせフォームからの相談になります。
運賃改定について公式サイトが挙げているのは「料金改定時の事務負担激減」という導入効果で、対象者を抽出する手順までは説明されていません。給与データ・課税非課税データ・社会保険の月額データを計算処理して既存の給与システムへ渡せるほか、ERPの人事モジュールとの連携も相談を受け付けています。
操作権限レベルの設定と、ログインIDや操作時間・操作内容のアクセス履歴を残す内部統制向けの機能も備えます。一方、従業員が使うWeb申請画面と、地理情報サービス「GeOAP」を利用するマイカー通勤の距離判定は、いずれもオプション扱いです。
提供形態がクラウドか導入型かは公式に明記されておらず、Arvoとの使い分け基準も公表されていません。基幹システムとの連携や内部統制の要件が中心なら本製品、インストール不要ですぐ使い始めたいならArvo、という方向性は公式の記述から読み取れますが、線引きは問い合わせで確認することになります。
3. 駅すぱあと 通勤費Web(株式会社ヴァル研究所)

1988年に誕生した経路探索エンジン「駅すぱあと」を自社で開発する株式会社ヴァル研究所が、通勤費の管理に特化して提供するクラウドサービスです。2026年2月19日のプレスリリースでは「現在500社以上に導入いただきユーザー数は100万人を突破しています」と公表されています。料金は初期費用・月額とも要問い合わせで、無料トライアルが用意されています。
運賃改定では、改定対象者のリストアップと支給データの更新をシステムが自動で行い、ボタン1つで定期代の差額を算出できると説明されています。定期区間の変更に伴う払戻計算、非課税限度額と社会保険用の月割データの自動計算にも対応します。
令和8年度税制改正について、公式ブログ(2026年5月28日)は改正内容を解説したうえで「最新の税制改正に自動対応」と記載しています。ただし片道65km以上の新区分や駐車場等の料金相当額の加算に個別に対応済みかどうかまでは示されていません。
マイカー通勤はゼンリンの地図機能で距離を算出し、ガソリン単価を複数登録して支給単価の見直しに反映できます。2026年6月16日には、最安経路から外れた申請の特徴を分析して承認者に審査上の留意点を提示する「AI経路アドバイザー」が加わりました。
4. 通勤費管理システム(株式会社オービックオフィスオートメーション)

株式会社オービックオフィスオートメーションが製品ページで案内している通勤費のソリューションです。同社は給与計算ソフト「奉行シリーズ」の導入・サポートを手がける会社で、開発元の株式会社オービックビジネスコンサルタントとは別法人にあたります。運賃改定機能は、交通機関ごとの差額計算からデータ更新までを一括で処理します。
異動・退職に伴う定期券の払戻処理も機能として案内されており、承認は2階層以上の設定・指名承認・条件による分岐に対応します。オプションで給与奉行クラウドと連携すると、社員情報の取り込みと通勤費データの受け渡しが自動化されます。
一方で、料金は初期費用・月額とも非公開で、提供形態がクラウドか導入型かも製品ページには示されていません。非課税限度額の判定とマイカー通勤の距離計算についても記述が見当たらないため、これらが要件に含まれる場合は事前に確認しておく必要があります。
5. 通勤費精算管理(株式会社ユニリタ)

東証スタンダード市場に上場する株式会社ユニリタが、通勤費の精算管理を扱うソリューションとして提供しています。標準仕様で経路探索エンジンと地図機能を利用でき、住所情報から指定した条件にもとづいた通勤経路の候補を一括検索します。
運賃改定機能では交通機関ごとの差額計算とデータ更新を一括処理でき、払い戻しは日付を指定するだけで金額を算出します。ガソリン単価の変更に伴う負担も、同じ運賃改定機能で扱う課題として公式ページに挙げられています。
公開されている製品情報はこの粒度にとどまり、料金・提供形態・非課税限度額の判定・マイカー通勤の計算方法についての記述は製品ページに見当たりません。要件が満たせるかどうかの確認は問い合わせが前提になります。
自社の支給規定をそのまま設定できる通勤費専用システム
ここから紹介する3製品は、申請できる経路の条件や承認ルート、実費と定期の使い分けといった自社のルールを、運用を変えずに設定へ落とすことを重視した製品です。
6. らくらく通勤費(株式会社無限)

株式会社無限が提供するクラウド型の通勤費管理システムです。規定に合わせた承認ルートの設定、部署や役職による承認者の指定、多段階承認、分岐条件の設定に対応しており、既存の支給規定を運用のままシステム側に載せられる設計になっています。同社の2026年3月のプレスリリースでは、85万人以上が利用していると記載されています。
定期代は期限が近い対象者を一括で抽出し、新しい通用期間へまとめて更新できます。転居・異動・退職時の払戻額は交通機関ごとの手数料を含めて自動計算し、鉄道・バスの運賃改定やガソリン単価の変動時も対象の従業員を一括抽出して支給額を変更できます。課税・非課税限度額の処理と戻入課税にも対応します。
マイカー通勤は距離区分による支給計算と高速道路料金の計算に対応し、免許証・任意保険証・車検証の添付と有効期限を証明書管理機能で扱えます。給与奉行クラウド・SmartHR・SCSK「PROACTIVE」とはAPI連携があり、勤怠システムからは出社日数のCSVデータを取り込めます。
料金は月額6,000円からで、通勤費管理の対象人数に応じた従量課金です(初期費用は法人数・ライセンス数・オプション・製品構成により変動し、金額は公開されていません)。令和8年4月1日以後に支払われる通勤手当に適用される片道65km以上の区分や駐車場等の料金相当額の加算については、システム側の対応が公式に案内されていないため、問い合わせでの確認が必要です。
7. 通勤費管理クラウド by NAVITIME(株式会社ナビタイムジャパン)

ナビタイムジャパンの経路探索エンジンを基盤に、2023年2月から提供されている通勤費管理システムです。乗換回数や徒歩距離などの条件を管理者が設定しておくと、システムが経路候補を採点し、条件を満たすうえで最も金額の安い経路を自動で採択・登録します(通勤経路スマート登録)。
実費精算と1か月・3か月・6か月定期、オフピーク定期の支給額を出社日数ベースで比較する機能を備え、全従業員の合算でも個人単位でも表示できます。運賃改定時は変更が必要な従業員を自動でリストアップし、申請用リンクの発行で改定後の申請依頼を一括送信できます。従業員側はID・パスワード不要のワンタイムURLから申請する方式も選べます。
マイカー・バイク・自転車通勤にも対応し、支給計算は距離×単価式とテーブル式の2方式から選択できます。運転免許証などの有効期限は登録して期限前にメールで通知でき、バイクは原付・小型二輪・普通二輪・大型二輪の区分ごとに交通規制を反映した経路探索を行います。
料金はライトプランが初期費用無料・月額20,000円(税別)の固定で、従業員300名までが対象です。ただしライトプランには複雑な承認フローが搭載されないため、多段階の承認が必要な場合は全機能を使えるスタンダードプランが前提になります。スタンダードプランは登録従業員数に応じた変動制で、金額は公開されていません。
2025年11月20日に施行された自動車・自転車・バイク通勤者向けの非課税限度額引き上げについては、利用企業側での設定変更やアップデートなしで対応し、2026年1月分から改正後の限度額を考慮して計上できると発表されています。一方、令和8年4月1日以後の支払分に適用される区分の改正への対応は公表されていないため、こちらは個別の確認が必要です。
8. camille “0”(カミーユゼロ)(ジョルダン株式会社)

ジョルダン株式会社の通勤費管理システムで、同社の法人向け経路検索エンジン「乗換案内Biz」と連携して運賃・定期代を算出します。鉄道に加えてバスは550社以上の路線に対応し、1か月・3か月・6か月の定期代計算を行えます。徒歩・バス・自転車・車など、鉄道以外の交通手段についても金額を設定できます。
社員ごとの定期区間を登録しておくと、登録した定期の終了年月をシステムが自動で判別します。払戻は1か月単位の通常払戻と10日単位の旬割払戻の計算に対応し、運賃改定時や増税に伴う差額支給の計算も行えます。通勤費情報はCSVファイルに出力して給与システムへ渡す形です。
初期費用は1,500,000円(税別)で、月額費用は公開されていません。テスト利用は申請日から最大90日間です。非課税限度額の判定、マイカー通勤の距離区分による計算、免許証などの期限管理、承認ルートの設定については公式サイトに記載がないため、これらが要件に含まれる場合は個別に確認してください。
マイカー通勤の許可と車両・保険書類の期限を管理するシステム
ここから紹介する4製品は、通勤手当の支給額を算定する機能を公式に案内していません。マイカー通勤者の許可申請・承認と、免許証・車検証・保険の期限管理を担う製品として掲載しています。
9. ビークルBiz(スパイラル株式会社)

マイカー・バイクに加え、プランによっては原付・自転車の通勤も対象にできるクラウドサービスです。提供はスパイラル株式会社で、株式会社ドコモ・インシュアランスが取次店として関わっています。通勤許可の申請から承認、許可証の発行、書類の期日管理までを1つのサービス内で扱い、通勤手当の支給額を算定する機能については公式サイトに記載がありません。
申請はスマートフォンとPCから行え、承認フローは最大5段階まで設定できます。運転免許証・車検証・自賠責保険/任意保険の証券は画像を添付して管理し、通勤許可期間や保険期間の期日が近づくと従業員へリマインドメールが自動送信されます。2025年9月の管理者画面の刷新では、免許証・車検証の有効期限や保険の満期日で通勤許可状況を検索する機能が加わりました。
料金は、自動車・バイクを対象とする標準プランが初期費用30,000円・月額15,000円〜、原付・自転車も対象に加える自転車・原付対応プランが初期費用50,000円・月額18,000円〜です(いずれも税抜、月額は300名までの場合)。ただしAI-OCR機能には対応していないと公式サイトに明記されており、証券や免許証の読み取りを自動化したい場合は確認が必要です。
10. 通勤車両管理LITE(東京海上日動火災保険株式会社)

東京海上日動火災保険株式会社が、中小企業向けプラットフォーム「BUDDY+」で配布しているマイカー通勤車両の管理ツールです。クラウドサービスではなく、申込後に届く自動返信メールの専用リンクからダウンロードして使う表計算ソフトのツールで、無料で利用できます。
ファイル上で、マイカー通勤を申請する従業員の免許証・自動車検査証・保険情報をまとめて管理します。エラーチェック機能により免許証の有効期限切れや保険の付保漏れを把握でき、申請書や通勤・駐車許可証などの帳票出力にも対応します。期限が近づいた時点でメール等を自動送信する通知機能については、公式ページに記載がありません。
公式ページで説明されている機能はこの3点にとどまり、通勤手当の支給額計算や人事・給与システムとの連携への言及はありません。同社が以前運営していた「WINクラブ」版の同名ツールからのデータ移行案内が用意されており、そちらを使っていた企業はデータを入力し直さずに移行できます。
11. マイカー通勤見守りサポート隊(株式会社ノイス)

社員の運転免許証・車検証・自動車保険の状況をもとに、マイカー通勤を認めてよい状態かを判定するクラウド型のシステムです。提供元は、基幹業務パッケージ「匠シリーズ」を手がける株式会社ノイス(新潟市)です。判定で条件を満たした社員にのみ、マイカー通勤許可書を発行できます。
保険の満了期日など、期限切れが近づいた書類については更新の通知が自動で送られます。安全運転診断の結果や社有車の車両情報も同じシステム内で管理できます。導入事例には、東証プライム上場の食品製造業が対象者1,400名・6拠点の管理を一元化したケースや、製造業で導入時の点検により通勤車両の条件を満たさない車両が30%近く見つかったケースが挙げられています。
料金は初期費用・月額費用とも非公開で、見積りと相談は無料と案内されています。通勤手当の支給額や距離区分に関する機能はサービス紹介ページに記載がなく、通勤費の支給計算は別の仕組みで行う前提になります。
12. マイカー通勤経路管理システム(株式会社イーエルネットワーク)

紙の申請書と台帳で行っていた通勤管理の置き換えを掲げる、株式会社イーエルネットワーク(新潟市)のクラウドシステムです。通勤経路は地図上のクリック入力か画像のアップロードで登録し、免許証・車検・自動車保険の有効期限とあわせて管理します。登録した経路や距離から通勤手当の支給額を算定する機能は、公式サイトに記載がありません。
期限切れの前後には更新を促すメールが自動で送信され、通知のタイミングは期限30日前を基準に2つまで設定できます。車両は4輪・2輪・自転車を組み合わせた複数台の登録に対応し、入力ミスを防ぐ確認機能と管理者の承認フローを備えます。CSVでの一括登録とエクセル出力のほか、オプションでOCRとAIによる入力補助も利用できます。
料金は初期費用32,400円(税別)に加え、1アカウントあたり月額54円(税別)、契約期間は6か月または12か月という体系です。初期費用については、公式サイトに「現在無料キャンペーン中」との記載があります(2026年8月時点)。公式サイトには、500名が6か月利用した場合に162,000円(税別)という試算が示されています。申し込み前に管理画面を試せるデモも用意されています。
通勤費管理システムとは?手作業の通勤費管理で起きていること
通勤費管理システムは、社員の通勤経路の申請から承認、通勤手当の計算、支給データの作成、更新までを一元的に扱う仕組みです。ここまで製品ごとの違いを見てきましたが、この仕組みが何を引き受け、いまの手作業のどこに負荷が集中しているのかを改めて整理します。
通勤費管理システムが扱う範囲

通勤費管理システムが扱うのは通勤手当です。社員の自宅から勤務地までの通勤経路を登録し、その経路にかかる定期代やガソリン代を算定して、毎月あるいは定期券の更新月ごとに支給する金額を管理します。支給対象者ごとに通勤経路と支給額、定期券の有効期間を保持し続けるのが、この仕組みの中心にある機能です。
これに対して交通費精算システムが扱うのは、営業先への訪問や出張で発生した都度の立替交通費です。社員が立て替えた運賃を申請し、承認を経て精算する流れを電子化します。通勤定期でカバーされる区間を精算対象から差し引く「定期区間の自動控除」は、この立替精算の側にある機能です。
両者は通勤経路のデータを共有する場面はあるものの、解決する課題が異なります。定期区間控除は「通勤定期を持つ社員に交通費を二重に払わない」ための機能であり、「通勤手当をいくら支給するか」を決める処理ではありません。この違いが、専用システムを検討するかどうかの分かれ目になります。
通勤手当ではなく、営業先への訪問や出張で発生する都度の立替交通費の処理に時間を取られている場合は、その精算を担う製品を見ることになります。以下の記事では、交通系ICカードの利用履歴の取り込み方式や定期区間の自動控除が働く条件、対応するICカードの範囲を製品ごとに整理しています。
交通費精算システムおすすめ22選を比較|Suica・PASMO対応と定期区間の自動控除で選ぶ
電車やバスの移動費は1件あたり数百円でも、月末にはまとまった件数になります。申請された経路と運賃が妥当か、通勤定期の区間が混ざっていないかを1件ずつ目視で確かめていると、確認だけで数日が消えてしまいます。 交通費精算システムは、交通系ICカ…
通勤費管理システムの主な機能(4系統)
製品によって備える機能の範囲は異なりますが、通勤費管理システムの機能はおおむね次の4つの領域に分かれます。それぞれの詳しい条件や制約は、この後のセクションで扱います。
| 機能の領域 | 自動化される内容 |
|---|---|
| 経路検索と経路の適正判定 | 社員が入力した自宅と勤務地から通勤経路の候補を検索し、運賃と定期代を算出します。申請された経路が社内規定に沿っているか(最安か、遠回りになっていないか)を機械的に判定する機能を持つ製品もあります |
| 支給計算と法令への対応 | 1か月・3か月・6か月の定期代の算定、定期券の有効期間の管理、異動や退職に伴う払戻額の計算、通勤手当の課税・非課税の区分の処理を行います |
| 申請と承認のワークフロー | 通勤経路の申請から承認までを画面上で完結させます。承認者を部署や役職で設定する、複数階層の承認を設ける、条件によって承認ルートを分岐させるといった設定に対応する製品もあります |
| 給与・会計システムとの連携 | 算定した通勤手当を給与計算システムへ渡します。CSVファイルでの受け渡しに対応する製品が多く、特定の給与システムとAPIで直接つなぐ製品もあります |
表計算ソフトと目視での管理に残る作業
通勤手当の管理を表計算ソフトと目視で回している場合、負荷は次の作業に集中します。
ひとつは定期券の更新月の管理です。社員ごとに定期券の購入日と有効期間が異なるため、今月どの社員に支給すべきかを毎月一覧から拾い出す必要があります。6か月定期と3か月定期が混在していれば、その組み合わせだけ確認する回数が増えます。
次に申請された経路の確認です。申請書に書かれた経路が最安か、不自然な遠回りになっていないかを、乗換案内で1件ずつ検索して照合します。件数が多いほど確認が形骸化しやすく、過剰に支給していても気づけない状態になります。
三つ目が非課税限度額との突き合わせです。支給額が限度額を超える社員を抽出し、超過分を課税対象として給与計算の担当者に申し送ります。限度額は通勤手段と片道距離で変わるため、対象者ごとに条件を確認する作業が発生します。
四つ目はマイカー通勤者の書類管理です。免許証や車検証、任意保険の証書の期限を通勤手当の台帳とは別に管理していると、更新漏れに気づくのが遅れます。
そして運賃改定への対応です。改定のたびに影響を受ける社員を洗い出し、新しい運賃で支給額を計算し直します。改定は複数の鉄道事業者で時期がずれることもあり、対象者の特定自体に手間がかかります。
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定期代の支給管理はどこまで自動化できるか
担当者が実際に手を動かしているのは、定期代の計算そのものよりも、対象者を特定して更新する作業です。作業の単位ごとに、システムに任せられる範囲と手作業が残りやすい範囲を分けて見ていきます。
継続月・更新月の判定と失効チェック
定期券は購入日を起点に有効期間が決まるため、社員ごとに更新月がばらつきます。通勤費管理システムでは、登録された定期券の有効期間から次に支給が必要な社員を機械的に抽出できます。抽出した対象者について、新しい有効期間で支給データを一括更新する機能を持つ製品もあります。
ただし、この機能の呼び方と踏み込む範囲は製品によって異なります。「継続更新」として期限切れが近い社員の抽出と更新をまとめて扱う製品がある一方で、登録した定期の終了年月を判別するところまでを機能として説明している製品もあります。
比較表の〈定期代の計算・更新月の判定〉を見ると、支給管理を担う8製品のうち更新月の判定まで公式に説明しているのは2製品です。残りの製品は定期代の計算そのものには触れていても、更新月の判定については公式に記載していません。
毎月の更新月の拾い出しが最大の負担になっているなら、この列で対応が明示されている製品から候補を絞り、残りは問い合わせで確認する形になります。有効期限が切れたまま支給が続いていないかを検知する仕組みを独立した機能として公式に案内している製品は、今回の確認では見当たりませんでした。この点も候補に問い合わせて確かめておきたい項目です。
運賃改定が起きたときの対象者の洗い出しと支給額の更新
手作業で最も負荷が大きく、システム化の効果が出やすいのがこの作業です。運賃が改定されると、その路線を使う社員の支給額をすべて計算し直す必要がありますが、対象者を特定する時点で全社員の経路を見直すことになります。
本記事で紹介している通勤費専用システム8製品は、いずれもこの領域に何らかの形で対応しています。ただし踏み込む範囲は分かれます。改定後の運賃データが反映されると影響を受ける社員を自動で抽出し、支給データを一括で更新するところまで公式に説明している製品がある一方で、差額の計算までを説明し、対象者の抽出については公式に触れていない製品もあります。
製品によっては、対象者への申請依頼をまとめて送る、鉄道事業者ごとに差額を計算して更新するといった形で処理を分けています。ガソリン単価の変動をマイカー通勤者の支給額へ反映する処理を同じ枠組みで扱う製品もあります。
この領域を担う旨を公式に説明しているのは、いずれも通勤費専用の製品でした。運賃改定への追随を重視するなら、この後の比較表で該当する製品を確認してください。
途中退職・異動・区間変更が発生したときの払戻計算
定期券の有効期間の途中で退職や異動、引っ越しが発生すると、使わなくなった期間分の払戻額を計算して精算します。払戻額は鉄道事業者ごとに計算方法と手数料が異なり、月単位で計算する事業者もあれば10日単位で計算する事業者もあるため、手作業では事業者ごとの規定を確認しながら計算することになります。
通勤費管理システムでは、払戻の対象となる日付を指定すると払戻額を自動で算出できます。交通機関ごとの手数料を計算に含める製品や、月単位の払戻と10日単位の払戻を切り替えられる製品があります。異動や退職といった人事イベントを起点に処理を始められるかどうかは製品によって差があり、対象者の特定まで自動化されるか、金額の計算だけを任せる形になるかが分かれます。
実費精算と定期支給が混在する場合の扱い
出社日数が週2〜3日の社員には定期券より実費精算の方が安くなるケースがあり、テレワークが定着した企業では実費支給と定期支給が併存しています。この場合、社員ごとにどちらが有利かを判断し、支給方法を切り替える運用が必要になります。
通勤費管理システムには、実費と1か月・3か月・6か月定期の支給額を並べて比較し、どの方法が安くなるかを提示する機能を持つ製品があります。勤務実績のデータを取り込んで出社日数から実費を算定する製品や、勤務日ごとに使う経路を選んで申請させる製品もあります。
どの方法で支給するかを最終的に決めるのは各社の支給規定です。システムは判断材料を揃えるところまでを担い、規定そのものは導入前に整理しておく必要があります。この点は後半の「導入前に決めておくことと運用上の注意点」で扱います。
通勤手当の非課税限度額と令和8年4月からの改正への対応
通勤手当は一定の金額までが所得税の非課税とされ、その金額を超えた分は給与所得として課税されます。この非課税限度額が、令和8年度税制改正で一部変わりました。製品が「非課税限度額の自動判定に対応」と説明していても、判定に使われる金額そのものを知らなければ、自社の支給額が影響を受けるかどうかは判断できません。ここでは国税庁が公表している金額を、そのままの数値で確認します。
交通機関を利用する場合の非課税限度額
電車やバスなどの交通機関、または有料道路を利用して通勤している社員に支給する通勤手当は、1か月当たりの合理的な運賃等の額が非課税となり、その最高限度は150,000円です。通勤用定期乗車券を現物で支給する場合も同じ扱いになります。この金額は令和8年度税制改正でも変わっていません。
交通機関と自動車などの交通用具を併用している場合は、交通機関の運賃等の額と、後述する距離区分ごとの金額との合計額が非課税となり、こちらも合計で150,000円が上限です。ただし交通用具を使う距離が片道2km未満の場合は、交通用具の分は加算されません。
マイカー・自転車通勤の距離区分ごとの非課税限度額
自動車や自転車などの交通用具を使って通勤している社員については、片道の通勤距離に応じて1か月当たりの非課税限度額が決まっています。改正後の金額は次のとおりです。
| 通勤距離の区分 | 1か月当たりの非課税限度額(令和8年4月1日以後適用) | 改正前(令和7年4月1日以後適用) |
|---|---|---|
| 片道2km未満 | (全額課税) | (全額課税) |
| 片道2km以上10km未満 | 4,200円 | 4,200円 |
| 片道10km以上15km未満 | 7,300円 | 7,300円 |
| 片道15km以上25km未満 | 13,500円 | 13,500円 |
| 片道25km以上35km未満 | 19,700円 | 19,700円 |
| 片道35km以上45km未満 | 25,900円 | 25,900円 |
| 片道45km以上55km未満 | 32,300円 | 32,300円 |
| 片道55km以上65km未満 | 38,700円 | 38,700円 |
| 片道65km以上75km未満 | 45,700円 | 38,700円 |
| 片道75km以上85km未満 | 52,700円 | 38,700円 |
| 片道85km以上95km未満 | 59,600円 | 38,700円 |
| 片道95km以上 | 66,400円 | 38,700円 |
片道2km未満の場合は通勤手当の全額が課税対象になります。この区分は改正の前後で変わっていません。改正前の列を見ると分かるとおり、令和8年4月の改正で金額が変わったのは片道65km以上の区分だけで、それより短い距離の区分は据え置かれています。
出典・参考資料(1件)
令和8年4月からの改正で変わった点

交通用具を使う社員の非課税限度額は、近年2回続けて見直されています。1回目は令和7年度の改正で、令和7年(2025年)11月19日に所得税法施行令の一部を改正する政令が公布され、11月20日に施行されました。
この改正は令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当まで遡って適用されます。たとえば片道55km以上は31,600円から38,700円へ、片道15km以上25km未満は12,900円から13,500円へと、片道10km以上の区分は比較的短いものも含めて引き上げられました。片道2km以上10km未満の4,200円と、片道2km未満の全額課税は据え置きです。
国税庁は、この遡及適用について「改正前に、改正前の非課税限度額を超えた通勤手当を支払っていた場合には、令和7年分の年末調整で対応が必要となることがあります」と案内しています。上の距離区分表に載っている金額は、この令和7年度改正を反映した後のものです。
出典・参考資料(1件)
2回目が令和8年度(2026年度)の改正です。加わったのは、交通用具を使って通勤する社員に関する次の2点です。
出典:通勤手当の非課税限度額の改正について|国税庁
- 通勤距離が片道65㎞以上の人の非課税限度額が引き上げられました。
- 一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担することを常例とする人の1か月当たりの非課税限度額については、その通勤距離の区分に応じた非課税限度額に1か月当たりのその駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額とすることとされました。
片道65km以上の区分の新設
令和8年度改正の前は、片道55km以上がすべて一律で38,700円という扱いでした(この38,700円は上記の令和7年度改正で31,600円から引き上げられた額です)。改正後は片道55km以上65km未満が38,700円で据え置かれ、65km以上が4つの区分に分かれて、45,700円・52,700円・59,600円・66,400円へ引き上げられています。
片道65km以上の距離を通勤している社員がいる企業では、非課税で支給できる上限が上がったことになります。
駐車場等の料金相当額の加算
もうひとつの駐車場等の加算は、改正前には存在しなかった扱いです。対象となる駐車場等の範囲は次のように定められています。
「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための施設のうち、その通勤手当の支払を受ける人の勤務する場所の周辺又はその人が通勤のために利用する交通機関の駅若しくは停留所その他の施設の周辺にあるものをいいます。
出典:通勤手当の非課税限度額の改正について|国税庁
勤務先や駅・停留所の周辺にある駐車場が対象で、自宅付近の駐車場は該当しません。国税庁が公表しているQ&Aでは、駐輪場もこの「駐車場等」に含まれること、複数の駐車場等を利用している場合は合計額で判定することが示されています。また片道2km未満の社員は、この加算の対象から除かれます。
適用の時期は支給する月ではなく、支給日の定め方によって決まります。
この改正は、令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものを除きます。)について適用されます。
出典:通勤手当の非課税限度額の改正について|国税庁
「令和8年4月分の給与から一律に切り替わる」とは限らない点に注意が必要です。自社の給与規程で通勤手当をいつ支払うべきものと定めているかによって、どの支給分から改正後の金額で判定するかが変わります。
出典・参考資料(3件)
限度額を超えた分の課税処理と、システムに任せられる範囲
通勤手当が非課税限度額を超えた場合、超えた部分だけが給与所得として課税されます。実務では、支給額と限度額を比較して超過分を算出し、給与計算側で課税対象の給与に含める流れになります。
この判定をどこまで通勤費管理システムに任せられるかは、製品によって差があります。本記事で紹介している製品のうち、課税・非課税の処理を機能として公式に説明しているのは一部で、多くの製品は公式サイトで非課税限度額に触れていません。令和8年度税制改正の個別の項目(片道65km以上の4区分と駐車場等の加算)に対応したことまで公式に明示している通勤費管理システムは、今回の確認では見つかりませんでした。
「最新の税制改正に自動対応」と記載している製品はありますが、それがどの改正のどこまでを指すかは公開情報からは読み取れません。
一方、給与計算システム側では改正への対応が公表されています。マネーフォワード クラウド給与は2026年4月7日のリリースで、2026年4月1日以降の支給日に支払われる通勤手当について「改正後の交通用具の非課税限度額表を用いた課税・非課税額の自動計算に対応しました」と告知しました。駐車場等の料金の登録と加算にも対応しています。
同社は国税庁のQ&Aが公表された後の2026年6月5日にも、計算仕様を見直した追加対応を告知しました。弥生も法令改正情報で、設定すると2026年4月以降の給与支給手続きから設定内容を基に非課税限度額が計算されると案内しています。
非課税限度額の判定を通勤費管理システムと給与計算システムのどちらで行うかは、既存のシステム構成によって変わります。選定の際は、通勤費管理システム側にどこまでの判定を求めるのかを先に決めたうえで、候補の提供元に改正への対応時期と対応範囲を確認することになります。確認すべき具体的な観点は、後半の「通勤費管理システムの選び方」で扱います。
出典・参考資料(3件)
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マイカー通勤の管理はどこまでシステムで担えるか
マイカー通勤を認めている企業では、管理すべきことが2つの領域に分かれます。ひとつは通勤手当をいくら支給するかという通勤費側の話、もうひとつは免許証や保険の有効期限を確認して安全に通勤できる状態を保つという車両側の話です。この2つは別の製品が担当していることが多く、どちらの課題を解こうとしているのかで選ぶ製品が変わります。

通勤手当としていくら支給するかを決める部分
マイカー通勤者の通勤手当は、自宅から勤務地までの片道距離をもとに算定します。通勤費管理システムでは、地図データを使って自宅と勤務地の間の走行距離を算出し、距離に応じた支給額を求めます。実際に車で走る経路に沿って距離を測る方式を採る製品や、距離に単価を掛ける方式と距離区分ごとの金額を当てはめる方式の両方に対応する製品があります。
1kmあたりいくらで支給するかという単価は、法令で定められているものではなく各社の支給規定で決めるものです。ガソリン価格の変動に合わせて単価を見直す運用をしている企業では、単価を変更したときに対象者の支給額へ一括で反映できるかが確認したい点になります。
算定した支給額が非課税の範囲に収まるかは、前述の距離区分ごとの限度額で判定します。片道2km未満であれば全額が課税対象になるため、近距離の社員がいる企業では距離の測り方そのものが課税の有無に影響します。
車両・免許・任意保険の期限管理として扱う部分
もうひとつの領域が、マイカー通勤を許可するかどうかの判断と、その前提となる書類の管理です。運転免許証の有効期限、車検の満了日、自賠責保険と任意保険の加入状況と満了日を社員ごとに把握し、期限が近づいたら更新を促します。
この領域を主目的とする製品では、通勤許可の申請と承認、通勤許可証の発行、書類の有効期限の管理と自動通知が中心の機能になります。保険の加入状況を基準に通勤を許可できる状態かどうかを判定し、条件を満たす社員にだけ許可証を発行する仕組みを持つ製品もあります。
企業がこの管理を行う理由には、事故が起きたときの責任の問題があります。民法第715条は使用者等の責任について次のように定めています。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
出典:民法 第七百十五条|e-Gov 法令検索
また自動車損害賠償保障法第3条は、自己のために自動車を運行の用に供する者が損害賠償の責任を負うことを定めています。通勤中の事故で企業がどこまで責任を問われるかは、条文の文言のとおり事業の執行との関係や運行供用者にあたるかで判断され、事案によって結論が分かれます。
書類の管理そのものが責任の有無を決めるわけではありませんが、加入状況を把握していない状態を放置しないための仕組みとして、この領域の製品が使われています。
出典・参考資料(1件)
2つの領域をどう分担させるか
本記事で紹介している12製品のうち、通勤費専用システムの8製品は通勤手当の支給管理を担い、そのうち複数はマイカー通勤の距離算定にも対応しています。書類の期限管理まで機能として持つ製品もあり、その場合は1つの製品で両方の領域をまかなえます。
一方、マイカー通勤の許可と書類管理を主目的とする4製品は、通勤手当の支給額を算定する機能を公式に案内していません。マイカー通勤者が多く、書類の管理を厚くしたい企業がこれらを選ぶ場合、通勤手当の計算は別の仕組みで行うことになります。この4製品を通勤費管理システムの代わりとして導入すると、支給額の算定と更新という中心の課題が手作業のまま残ります。
自社の状況に当てはめるなら、通勤手当の支給管理の負荷が大きいのか、書類の期限管理の抜け漏れが心配なのかで検討する製品群が変わります。両方に課題がある場合は、比較表の〈免許証・車検証・保険の期限管理〉を見てください。支給管理を担う8製品のうち、この領域まで公式に対応しているのは3製品です。
1製品でまかなうならこの列を起点に絞り込み、そうでなければ2つの領域で別々の製品を組み合わせる形になります。
通勤費管理システムを導入するメリット
手作業で発生していた負荷が、立場ごとにどう変わるかを整理します。
人事・総務の支給担当者にとってのメリット
最も変わるのは、対象者を探す作業がなくなることです。定期券の更新月が来た社員も、運賃改定の影響を受ける社員も、システムが登録データから抽出します。担当者は抽出結果を確認して更新を実行する側に回ります。
申請された経路の確認も、規定に沿っているかを機械的に判定する機能があれば、目視での照合が例外の確認だけに絞られます。過剰に支給していた経路を検知できるようになるため、確認の負荷を下げながら支給額そのものを見直すきっかけにもなります。
申請する従業員・承認する上長にとってのメリット
従業員は、最寄り駅と勤務地を入力すれば経路と定期代が自動で算出されるため、乗換案内で調べて申請書に転記する手間がなくなります。引っ越しや異動のときも、変更後の経路を申請するだけで払戻や差額の計算はシステム側で処理されます。
承認する上長は、申請内容が規定に沿っているかの判定結果を見て承認できます。承認ルートを部署や役職で設定しておけば、誰に回すべきかの判断も不要になります。
経理・給与計算担当にとってのメリット
通勤手当のデータを給与計算システムへ手作業で渡している場合、転記のたびに入力ミスの可能性が生じ、支給額を変更した月には二重に確認する作業が発生します。CSVでの受け渡しやAPIでの連携に対応していれば、この転記そのものがなくなります。
課税・非課税の区分まで通勤費管理システム側で処理できる場合は、超過分を抽出して申し送る作業も減ります。ただし判定をどちらのシステムで持つかは構成によって変わるため、二重管理にならない形を導入時に決めておく必要があります。
通勤費管理システムの料金相場と費用の内訳
通勤費管理システムは料金を公開していない製品が多く、相場を一律に示しにくい領域です。ここでは公式サイトで金額を確認できた製品の実額と、確認できなかった製品の状況を分けて整理します。
初期費用の相場
初期費用を公式に公開している製品は限られます。本記事で紹介している12製品のうち、公式サイトで金額を確認できたのは次のとおりです。
- 通勤手当の支給管理を担う製品: camille "0"(カミーユゼロ)が1,500,000円(税別)、通勤費管理クラウド by NAVITIME のライトプランが無料
- マイカー通勤の書類管理を担う製品: ビークルBizが30,000円から、マイカー通勤経路管理システムが32,400円(税別。公式サイトに無料キャンペーン中の記載あり)、通勤車両管理LITEは無料
残る製品はいずれも初期費用が非公開で、問い合わせでの見積もりになります。
金額の幅が大きいのは、製品の提供形態が分かれているためです。クラウドで提供され申込後すぐ使い始められる製品と、既存の基幹システムに組み込んで導入する製品とでは、初期の設定にかかる作業量が異なります。
後者は法人数やライセンス数、必要なオプションによって金額が変動するため、公式サイトに金額を掲載せず個別見積もりとしている製品が多くなります。
月額料金と課金単位の考え方
月額料金は、課金の単位によって総額の見え方が変わります。公式に確認できる範囲では、次の3つの形があります。
1つ目は利用人数に応じた従量課金で、1ライセンスあたり月額300円、1アカウントあたり月額54円(税別)といった単価が示されます。人数が増えれば月額も増える一方、少人数から始められます。
2つ目は通勤費の管理対象人数に応じた変動で、月額6,000円からとしたうえで、対象人数が多いほど1人あたりの単価が下がる仕組みを採る製品があります。
3つ目は人数の上限つきの定額です。通勤手当の支給管理を担う製品では、通勤費管理クラウド by NAVITIME のライトプランが従業員300名までで月額20,000円(税別)です。マイカー通勤の書類管理を担う製品では、ビークルBizが300名までで月額15,000円からとなっています。上限までは人数が増えても金額が変わらないため予算を立てやすく、上限を超えると上位のプランに移ることになります。
注意したいのは、定額プランで実額が公開されているのは従業員300名までの範囲に集中している点です。300名を超える規模については、通勤手当の支給管理を担う製品はいずれも従業員数や必要な機能に応じた個別見積もりで、公開情報から金額を推し量ることはできません。単価を公開している従量課金の製品は例外です。
たとえばマイカー通勤経路管理システムは1アカウント月額54円(税別)を示したうえで、500名が6か月利用した場合に162,000円(税別)という試算を公式サイトに掲載しています。個別見積もりになる製品については、比較表で機能面の候補を数製品に絞り、同じ前提条件(対象人数・必要な機能・契約期間)を伝えて見積もりを取ると、横並びで比べられます。
自社の支給対象者数が課金の境目に近い場合は、境目を超えたときの金額まで確認しておくと、導入後の増員で想定外の費用増になるのを避けられます。
費用対効果を見積もるときの考え方
導入の費用対効果を見積もるなら、削減できる工数を作業単位で数えるのが具体的です。毎月の定期券更新月の抽出と確認に何時間かけているか、運賃改定が年に何回あり1回あたり何時間かかっているか、払戻計算を年に何件処理しているか、といった形で現状の作業時間を洗い出します。
効果は工数の削減だけではありません。申請された経路の確認が形骸化している状態では、規定より高い経路での支給が続いている可能性があります。経路の適正判定によって支給額そのものが下がるなら、その差額も効果に含められます。導入前の支給額の分布を把握しておくと、導入後の比較がしやすくなります。
提供元が公表している削減率をそのまま自社の見込みに使うのは避けたほうが安全です。多くは自社での計測値であり、算定の前提となる人数や条件が公開されていないためです。
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通勤費管理システムの選び方
比較表の各項目が自社にとって何を意味するかを解きます。まず製品の守備範囲を決め、次に自社の支給規定と通勤手段の構成に乗るかを確かめ、最後に周辺のシステムとの接続と運用体制を確認する順に見ていきます。
専用システムと経費精算システムの通勤費機能、どちらが合うか
最初の分かれ目です。前述のとおり、主要な経費精算システム10製品の公開情報では、通勤手当の支給額の算定や更新を担う機能は説明されていません(2026年8月時点)。各社が公式に説明しているのは定期区間の自動控除までで、通勤定期でカバーされる区間を立替交通費の精算から差し引く機能にとどまります。
これは「経費精算システムでは通勤手当を扱えない」という意味ではなく、公開されている情報の範囲では確認できなかったということです。
契約者向けのヘルプや個別の設定で対応できる可能性は残るため、すでに経費精算システムを使っている企業であれば、まず提供元に次の3点を確認するのが早道です。定期代の算定と定期券の有効期間の管理ができるか、運賃改定時に対象者を抽出して支給額を更新できるか、通勤手当の非課税限度額の判定を持つか、の3点です。
そのうえで、次のように考えると判断しやすくなります。実費精算が中心で通勤定期を支給している社員が少ない企業なら、既存の経費精算システムに定期区間控除を設定して運用する形で足りることがあります。
逆に、定期支給の対象者が多く、更新月の管理と運賃改定への対応に毎月時間を取られているなら、支給対象者ごとに通勤手当を保持して更新できる専用システムが課題に直接効きます。マイカー通勤者が多い場合も、距離区分による算定と書類の期限管理を扱える製品群を見ることになります。
既存の経費精算システムで足りるかを確かめる過程では、その製品自体を見直す選択肢も出てきます。以下の記事では、主要な経費精算システムを料金体系・機能の範囲・使いやすさ・導入の進め方の観点で比較しています。
自社の支給規定をそのまま設定に落とせるか
導入が難航しやすいのは、既存の支給規定をシステムの設定で表現できないケースです。確認しておきたいのは3点あります。
1つ目は申請できる経路の条件です。最安経路のみを認めるのか、所要時間や乗り換え回数に一定の幅を持たせるのか、認めない経路をどう弾くのかを設定できるかが、まず確認したい点です。規定違反の申請を自動で検知する機能があるかどうかで、確認の負荷が変わります。
2つ目は承認ルートです。部署や役職に応じて承認者を変える、複数階層の承認を設ける、金額や条件によってルートを分岐させるといった設定に対応しているかが判断の分かれ目です。承認の階層が深い組織では、この設定の自由度が導入可否を左右します。
3つ目は実費と定期の併用です。出社日数によって支給方法を切り替える運用があるなら、両方の支給額を比較できるか、勤務実績を取り込んで実費を算定できるかが確認事項になります。
対応する通勤手段の範囲
鉄道だけでなく、バス・マイカー・自転車・有料道路をどこまで扱えるかは製品によって差があります。バス路線は鉄道に比べて経路データの整備状況が製品ごとに異なるため、バス通勤者が多い企業では対応する事業者の範囲を確認しておくと安心です。
マイカー通勤者がいる場合は、距離をどう測るか(直線距離か、実際に走行する経路に沿った距離か)と、ガソリン単価をどう設定するかが確認事項です。高速道路を使う通勤を認めているなら、料金を支給額に含められるかも確認しておきたい点になります。
非課税限度額の判定と法令改正への追随体制
非課税限度額の判定を通勤費管理システム側に求めるなら、機能の有無だけでなくいつ時点の仕様で対応しているかまで確認します。「法令改正に自動対応」という説明だけでは、令和8年4月から適用されている区分に追随しているかが分かりません。
候補の提供元に確認するなら、片道65km以上の4つの区分に対応しているか、駐車場等の料金相当額の加算に対応しているか、対応済みならいつのバージョンからか、という形で聞くと具体的な回答を得やすくなります。
国税庁は改正の内容を公表した後にQ&Aを公表しており、給与計算システムの側では公表後に計算の仕様を見直した例もあります。改正が公表されてから実装までの流れをどう扱っているかは、今後の改正への備えを見るうえでも参考になります。
判定を給与計算システム側で持つ構成にするなら、通勤費管理システムからは支給額と距離区分の情報を渡せれば足ります。どちらで判定するかを先に決めておくと、確認すべき項目が絞れます。
給与計算・会計システムとの連携方式
算定した通勤手当を給与計算へ渡す方法は、CSVファイルでの受け渡しと、APIによる直接連携に大きく分かれます。CSVは連携先を選ばない反面、ファイルの出力と取り込みという操作が毎月残ります。APIで直接つながる場合は操作自体がなくなりますが、対応している給与システムが限られます。
自社が使っている給与システムの名前を挙げて、標準で連携できるか、追加の開発が必要かを提供元に確認しておくと判断しやすくなります。既存の基幹システムに組み込む前提の製品では、連携の作り込みが導入作業に含まれることもあるため、費用と期間の見積もりに影響します。勤怠システムから出社日数を取り込めるかも、実費精算を併用する企業では確認したい点です。
導入実績・サポート体制とセキュリティ
通勤費管理システムは社員の自宅住所と通勤経路という個人情報を扱います。データをどこで保持するか、アクセス権限を部署や役職でどこまで制御できるか、誰がいつ操作したかの履歴が残るかが確認項目です。拠点をまたいで運用する場合は、拠点ごとに参照範囲を分けられるかも判断材料になります。
サポートについては、導入時の設定支援があるか、運用開始後の問い合わせ窓口と対応時間がどうなっているかが確認したい点です。運賃改定のような全社に影響する処理は年に数回しか実行しないため、そのタイミングで相談できる体制があるかは実務上の安心材料になります。
導入実績については、公表されている数値の前提を確認したうえで参考にします。導入社数と利用者数では意味が異なり、自社調べとされている数値は算定の条件が公開されていないこともあります。
導入前に決めておくことと運用上の注意点
製品を決めた後、導入がつまずきやすいのは設定より前の段階です。運用に乗せるために先に決めておきたいことを整理します。
支給規定の棚卸し
システムに載せるには、規定を設定として表現できる形にしておく必要があります。長く運用していると、規程に明文化されていない慣習や、担当者の判断で個別に認めてきた例外が積み重なっていることがあります。
定期券の期間は何か月を原則とするか、実費精算を認める条件は何か、認める経路の範囲はどこまでか、マイカー通勤の単価をいくらとするか、といった項目です。これらを洗い出し、残す例外と整理する例外を先に決めておくと、設定の段階で判断が止まらずに済みます。
既存データの移行と初回の一斉申請
現在の支給対象者と通勤経路、定期券の有効期間をシステムへ移す作業が必要です。表計算ソフトで管理していたデータは、経路の表記が担当者ごとにばらついていたり、定期券の購入日が記録されていなかったりすることがあります。
移行の精度を上げるには、既存データを取り込むより、社員に一斉に申請してもらって登録し直す方法が確実です。この機会に実態と合っていない経路も洗い替えられます。全社員に申請を求めることになるため、実施時期は業務の繁忙期を避けて設定します。
切り替え時期の決め方
通勤費の管理は月次の処理と結びついているため、切り替える時期によって作業量が変わります。定期券の更新が集中する月に切り替えると、移行と通常の支給処理が重なります。給与計算の締めの直前も、確認の時間が取れず避けたい時期です。
年度替わりに合わせる場合は、人事異動による経路変更が同時に発生する点も織り込んでおく必要があります。異動の申請と移行の申請が混ざらないよう、どちらを先に処理するかを決めておくのが一般的です。
導入後のサポート体制
提供元の問い合わせ窓口とは別に、社内で最初に質問を受ける担当を決めておくと運用が回りやすくなります。通勤費の申請は全社員が行うため、操作の質問が人事・総務に集中します。よくある質問と回答を社内で用意しておくと、問い合わせの量を抑えられます。
運賃改定や法令改正のような、年に数回しか実行しない処理については、手順を記録に残しておくと担当者が代わっても運用が続きます。
まとめ
通勤費管理システムを選ぶとき、最初に決めるのは守備範囲です。定期支給の対象者が多く更新月の管理と運賃改定への対応に時間を取られているなら、支給対象者ごとに通勤手当を保持して更新できる専用の製品が課題に直接効きます。マイカー通勤者の書類の期限管理が主な悩みなら、許可申請と書類管理を主目的とする製品群が候補になりますが、これらは通勤手当の支給額を算定する機能を公式に案内していない点に注意が必要です。
そのうえで、自社の支給規定を設定で表現できるか、対応する通勤手段の範囲が足りるか、給与計算システムへどう渡すかを確認していきます。非課税限度額の判定については、令和8年4月から適用されている区分に追随しているかを、機能の有無ではなく対応時期まで含めて提供元に確認してください。
料金は公開している製品が限られるため、候補を絞ったうえで各社に見積もりを依頼する流れになります。その際は対象人数・必要な機能・契約期間という前提条件を揃えて伝えると、横並びで比べられます。
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よくある質問(FAQ)
Q. 通勤費管理システムとは何ですか?
A. 通勤費管理システムとは、社員の通勤経路の申請・承認から、定期代やマイカー通勤の通勤手当の算定、支給データの作成と更新までを一元的に扱う仕組みです。
支給対象者ごとに通勤経路・支給額・定期券の有効期間を保持し続ける点が中心にあり、定期券の更新月が来た社員や運賃改定の影響を受ける社員を、登録データから機械的に抽出できます。製品によっては、マイカー通勤者の免許証・車検証・任意保険の有効期限まで同じシステム内で管理できます。
Q. 通勤費管理システムと経費精算システムは何が違いますか?
A. 通勤費管理システムと経費精算システムの違いは、前者が毎月支給する「通勤手当」を扱い、後者が営業訪問や出張で発生した「都度の立替交通費」を扱う点にあります。経費精算システムが備える「定期区間の自動控除」は、通勤定期でカバーされる区間を立替精算から差し引く機能であり、通勤手当をいくら支給するかを決める処理ではありません。
主要な経費精算システム10製品の公式サイト・ヘルプセンター・FAQでは、通勤手当の支給額の算定や更新を担う機能は説明されていません(2026年8月時点)。すでに経費精算システムを導入している場合は、定期代の算定と有効期間の管理、運賃改定時の一括更新、非課税限度額の判定を扱えるかを提供元に確認したうえで、専用システムを併用するかを判断してください。
Q. 通勤費管理システムは何人くらいの規模から導入する意味がありますか?
A. 通勤費管理システムの導入効果は、従業員数そのものよりも、定期券の更新月の抽出・運賃改定への対応・払戻計算といった作業が、どれだけの頻度と件数で発生しているかで決まります。同じ人数でも、全員が6か月定期で更新月が揃っている企業と、鉄道・バス・マイカーが混在して更新月がばらついている企業とでは、毎月の手作業の量が変わります。
判断の材料としては、更新月の抽出と確認に毎月かけている時間、運賃改定が年に何回あり1回あたり何時間かかっているか、払戻計算の年間件数を数え、料金体系(利用人数に応じた従量課金か、人数上限つきの定額か)と突き合わせる方法があります。1ライセンス単位の従量課金で始められる製品もあるため、人数の少なさだけを理由に検討対象から外す必要はありません。
Q. 通勤費管理システムでマイカー通勤のガソリン代も計算できますか?
A. マイカー通勤の支給額を計算できる製品はありますが、1kmあたりいくら支給するかという単価は法令で定められておらず、各社の支給規定で決めるものです。システムが担うのは、地図データから自宅と勤務地の間の距離を算出し、その距離に規定の単価を掛ける(あるいは距離区分ごとの金額を当てはめる)計算と、単価を見直したときに対象者の支給額へ一括で反映する処理です。
距離の測り方は、実際に走行する経路に沿って測る方式と直線距離による方式とで製品によって異なるため、支給額に直結する確認項目になります。国税庁が定めているのは片道距離の区分ごとの非課税限度額であり、支給単価そのものとは別の話です。
Q. 令和8年4月の改正で、片道55km以上を通勤する社員の非課税限度額はすべて引き上げられたのですか?
A. いいえ。引き上げられたのは片道65km以上の区分で、片道55km以上65km未満は改正前と同じ38,700円で据え置かれています。
改正前は片道55km以上が距離にかかわらず一律38,700円でした。改正後は65km以上が4つの区分に分かれ、65km以上75km未満が45,700円、75km以上85km未満が52,700円、85km以上95km未満が59,600円、95km以上が66,400円となりました。
この改正は令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものを除く)について適用されます。片道65km以上を通勤する社員がいない企業では、距離区分の面での扱いは改正前と変わりません。
出典・参考資料(1件)
Q. 通勤費管理システムが令和8年4月からの非課税限度額の改正に対応しているかは、どう確認すればよいですか?
A. 令和8年度税制改正の個別の項目(片道65km以上の4区分と駐車場等の加算)に対応したことまで公式に明示している通勤費管理システムは、今回の確認では見つかりませんでした。「法令改正に自動対応」という記載があっても、いつ時点の仕様で対応しているかは読み取れないため、候補の提供元に次の4点を具体的に確認してください。
確認したいのは次の4点です。片道65km以上の4つの区分(45,700円・52,700円・59,600円・66,400円)に対応しているか。駐車場等の料金相当額(上限5,000円)の加算に対応しているか。対応済みであればいつのバージョンからか。距離分の支給額と駐車場分を合計して非課税限度額と比較する計算になっているか。
給与計算システムの側では改正への対応を公表している製品があるため、非課税限度額の判定を通勤費管理システムと給与計算システムのどちらで持つかを先に決めておくと、確認すべき範囲を絞れます。
Q. 会社が駐車場を契約して駐車場代を負担している場合も、通勤費管理システムで非課税限度額を判定できますか?
A. 会社が従業員に代わって契約して負担している駐車場代も非課税限度額の計算に含める必要があるため、その金額がシステムに登録されていなければ正しい判定はできません。
国税庁のQ&Aには、従業員が選んだ勤務先付近の駐車場を会社が契約して毎月6,000円を負担し、片道50kmの距離に応じた通勤手当32,300円を支給している例が挙げられています。この場合、駐車場代も通勤手当を支給したものとして扱います。支給額38,300円に対して非課税限度額は37,300円となり、超過した1,000円が課税になると示されています。
1か月当たりの駐車場等の料金相当額は、月単位・年単位・その都度負担する場合といった契約の形ごとに算出方法が定められており、上限5,000円は月額に換算した後に効きます。会社が直接契約している駐車場代は従業員からの通勤費の申請として上がってこないため、こうした支出をどう拾ってシステムへ登録するかは、機能ではなく運用として決めておく必要があります。
出典・参考資料(1件)
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松嶋真倫
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