電車やバスの移動費は1件あたり数百円でも、月末にはまとまった件数になります。申請された経路と運賃が妥当か、通勤定期の区間が混ざっていないかを1件ずつ目視で確かめていると、確認だけで数日が消えてしまいます。
交通費精算システムは、交通系ICカードの利用履歴を取り込み、経路検索と運賃計算、定期区間の控除までを自動化するための仕組みです。ただし製品によって、対応するICカードの範囲も、履歴の取り込み方も、定期区間をどこまで自動で差し引けるかも異なります。自社の運用にそのまま乗る製品を選べるかどうかが、導入後に現場で使われるかを左右します。
本記事では、交通費精算に対応した22のサービスを比較します。ICカード履歴の取り込み方式で製品を3つの型に分けたうえで、対応する交通系ICカードの範囲、定期区間の自動控除の条件、経路検索の仕様、初期費用と月額料金を製品ごとに取り上げました。公表されている項目は実額・実名まで書き、公表がないものは「公表なし」と明示しています。自社の精算業務に合う製品を絞り込む材料としてご活用ください。
また、自社の状況に合うサービスを最短で見つけられるよう、30秒で終わる選定診断ツールもご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
交通費精算システムのタイプ
交通費精算システムを比べるとき、最初に効いてくるのは機能の多さではなく、交通系ICカードの利用履歴をどうやってシステムに取り込むかという点です。取り込み方式によって、専用の機器を買う必要があるのか、従業員が毎回操作するのか、そもそも操作自体が要らないのかが変わります。
ここでは取り込み方式を3つに分けて整理します。自社が業務用スマートフォンを支給しているか、社用のICカードを複数人で使い回しているか、モバイルSuicaやモバイルPASMOの利用が中心かを思い浮かべながら読み進めてください。
| 特徴 | 向いている企業 | 該当する主なサービス | |
|---|---|---|---|
| 従業員のスマホでかざす | 従業員が自分のスマートフォンで、手持ちのICカードを読み取ります。専用の読み取り機を買わずに始められます | 従業員が個人のICカードで移動し、私物スマートフォンの業務利用が認められている企業 | 弥生経費 Next、マネーフォワード クラウド経費、楽楽精算、TOKIUM経費精算、ハーモス経費、バクラク経費精算、ジョブカン経費精算、freee支出管理 経費精算Plus、Concur Expense、WiMS/SaaS経費精算システム、トランジット・マネージャー、駅すぱあと 旅費交通費精算Web、ネクストICカード、kincone、交通費精算システム SPEASIC |
| モバイル連携で自動取り込み | モバイルSuica・モバイルPASMOのアカウントを登録すると利用履歴が連携されます。カードをかざす操作自体が不要です | モバイルSuica・モバイルPASMOの利用が定着していて、申請操作そのものを減らしたい企業 | TOKIUM経費精算、Concur Expense、経費BANK、invox経費精算、Smart Go、トランジット・マネージャー |
| 専用リーダーで取り込む | オフィスに置いた読み取り機に物理カードをかざします。業務用スマートフォンを支給していない場合や、社用ICカードを共用する運用に向きます | 業務用スマートフォンを支給していない、または社用ICカードを部署で共用している企業 | 弥生経費 Next、Concur Expense、経費BANK、invox経費精算、トランジット・マネージャー、駅すぱあと 旅費交通費精算Web、ネクストICカード、kincone、交通費精算システム SPEASIC |
※複数の方式に対応する製品は、それぞれの型に挙げています。取り込み方式を公表していない製品は、いずれの型にも挙げていません。モバイル版の履歴を管理画面から手作業で取り込む方式は、アカウント連携型には含めていません。
表のとおり、スマートフォンでの読み取りは多くの製品が備えているため、この型だけでは候補は大きく減りません。型は「自社の運用に乗らない製品を外す」ために使い、残った候補は対応する交通系ICカードの範囲と定期区間の控除条件で絞り込みます。
従業員のスマホでICカードをかざして取り込むタイプ
従業員が自分のスマートフォンの近距離無線通信機能を使い、手持ちのSuicaやPASMOを直接読み取る方式です。オフィスに読み取り機を設置する必要がないため、拠点が分散していても同じ運用を展開できます。
注意したいのは、対応する端末に条件が付く点です。NFC(近距離無線通信)に対応した機種であることに加えて、製品によっては対応するOSのバージョンが指定されています。私物のスマートフォンを業務に使う運用が社内規程で認められているかも、導入前に確認しておく必要があります。
モバイルSuica・PASMOと連携して自動で取り込むタイプ
モバイルSuicaやモバイルPASMOのアカウント情報を一度登録しておくと、以降は利用履歴がシステム側へ連携される方式です。従業員がカードをかざす操作すら不要になるため、申請そのものを減らしたい場合に効果が大きくなります。
この方式は、モバイル版の交通系ICカードを使っている従業員にしか適用できません。物理カードを使う従業員が残る場合は、別の取り込み方式と併用できるかを確認します。また、再認証を求められると自動取得が止まる仕様の製品もあり、運用開始後に誰がその復旧を担うのかを決めておく必要があります。
オフィスの専用リーダーにかざして取り込むタイプ
オフィスに設置した専用の読み取り機に物理カードをかざして履歴を取り込む方式です。業務用スマートフォンを支給していない企業や、社用のICカードを部署で共用している運用でも導入できます。
読み取り機の費用と設置場所は事前に見積もっておきます。機器を別売とする製品もあれば、市販の読み取り機を利用できる製品もあり、費用の扱いが分かれます。出社しないと履歴を取り込めないため、直行直帰が多い組織では、スマートフォン読み取りとの併用が可能かを確かめておくと安全です。
診断ツールで自社に合う交通費精算システムを絞り込む
3つの型のどれに当てはまるか判断が難しい場合は、以下の診断をお使いください。ICカードの運用形態、利用人数、使っている会計ソフトを選ぶだけで、条件に合うサービスが表示されます。
※取り込み方式が公表されていない製品は、診断結果には表示されません。
【比較表】交通費精算システムおすすめ比較22選
ここからは、交通費精算に対応した22サービスを横並びで比較します。絞り込みやすいのは、守備範囲(交通費だけか経費精算全般か)でまず半分に減らし、次に自社の運用に直結する対応ICカードと履歴の取り込み方式を見ていく順です。候補が数件まで減ったところで、定期区間の自動控除と、会計ソフト連携・電子帳簿保存法への対応が要件を満たすかを確認してください。
掲載しているのは、対応する交通系ICカード・履歴の取り込み方式・定期区間の控除・経路検索のうち、提供元が公表している情報でその製品固有の事実を書けるサービスです。並び順はカタログの掲載区分による表示順で、優劣を示すものではありません。
月額費用の欄は、製品ごとに基準となる人数(5名・10ID・30ユーザー・50名など)が違います。自社の人数での比較は、この基準をそろえたうえで各社の見積もりを取ってください。
各列が自社にとって何を意味するかは、後半の交通費精算システムの選び方で項目ごとに解説します。
| サービス名 | 弥生経費 Next | マネーフォワード クラウド経費 | ビズバンスJTB経費精算 | Traveler’sWAN | 楽楽精算 | TOKIUM経費精算 | ハーモス経費 | バクラク経費精算 | ジョブカン経費精算 | freee支出管理 経費精算Plus | ジンジャー経費 | Concur Expense | 経費BANK | invox経費精算 | MOT経費精算 | WiMS/SaaS経費精算システム | Smart Go | トランジット・マネージャー | 駅すぱあと 旅費交通費精算Web | ネクストICカード | kincone | 交通費精算システム SPEASIC |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 守備範囲 | 経費精算全般 領収書・交際費なども対象 | 経費精算全般 会計・給与へ連携 | 経費精算全般 国内・海外出張の申請と予約も対象 | 経費精算全般 出張の事前申請・手配も対象 | 経費精算全般 請求書の支払処理・ワークフローも対象 | 経費精算全般 領収書の入力と原本回収を代行 | 経費精算全般 請求書の受取・発行も対象 | 経費精算全般 請求書の受取など同シリーズと連続 | 経費精算全般 社内稟議のワークフローと一体 | 経費精算全般 | 経費精算全般 勤怠・給与・人事労務と同じ従業員DB | 経費精算全般 出張管理も対象 | 経費精算全般 | 経費精算全般 | 経費精算全般 出張費・交際費も対象 | 経費精算全般 多段階承認・グループ会社対応 | 交通費に特化 | 交通費に特化 履歴データの受け渡しのみの利用も可 | 旅費・交通費に特化 | 経費精算全般 勤怠管理と同一ID(モジュール選択制) | 勤怠管理と交通費精算のみ | 交通費に特化 |
| 対応する交通系ICカード | Suica・PASMO・ICOCAなど9種類 モバイルSuicaにも対応 | Suica・PASMO・ICOCAなど11種類 モバイルSuica・モバイルPASMO | 公表なし | 公表なし (読み取りはオプション) | Suica・PASMOなどの交通系ICカード (個別の対応範囲は公表なし) | 各種交通系ICカード モバイルSuica(JRE ID)・モバイルICOCA(WESTER) | 全国の交通系ICカード モバイル版にも対応 | Suica・PASMOなど (個別の対応範囲は公表なし) | Kitaca・Suica・PASMO・ICOCAなど9種類 | Suica・PASMO・ICOCA・nimocaなど7種類 PiTaPaは事前チャージ分のみ | 公表なし | Suica・PASMO・nimoca モバイル版・Apple Pay登録分にも対応 | Kitaca・Suica・PASMO・ICOCAなど9種類 モバイルSuica・PASMOは別方式 | Suica・PASMO (他のカードは公表なし) | Suica・PASMO (他のカード・モバイル版は公表なし) | Suica・PASMO・ICOCA・PiTaPaなど モバイル版は公表なし | モバイルSuica・カードタイプのSuica・Suica定期券 他のカードは公表なし | 全国相互利用の10種類+icsca | Suica・PASMO モバイルSuicaはアプリで読み取り | 全国相互利用可能なICカード モバイルSuica・Apple PayのSuica | Suica・PASMO モバイルSuica・モバイルPASMO | Suica・PASMO・ICOCA |
| 履歴の取り込み方式 | スマホアプリでタッチ ICカードリーダー(ブラウザ利用時) | スマホアプリでタッチ モバイルはアカウント連携(自動取得は非対応) | 公表なし | 公表なし | スマホアプリでタッチ (専用リーダー不要) | スマホアプリでタッチ(Android) アカウント連携で自動取得/専用タブレットのレンタル | スマホアプリでタッチ (iOS16以上/Android11以上のNFC端末) | スマホアプリでタッチ モバイルSuica・PASMOの履歴PDFを一括取込 | スマホアプリでタッチ (アプリで読み取れる履歴は直近19件まで) | スマホアプリでタッチ 自分の端末のモバイルICは別端末が必要 | 公表なし | 利用履歴の自動連携 据置リーダー/スマホアプリでタッチ | 専用読み取り機(別売)でタッチ モバイルはMoneyLook連携 | ICカードリーダーアプリのCSVを取込 モバイルSuicaはログイン同期/PDF取込 | 公表なし | スマホアプリでタッチ (iPhone・AndroidのNFC対応端末) | JR東日本のサーバーからAPIで自動取得 | スマホでタッチ/オフィスの専用端末 PaSoRi接続PC/モバイルから直接取得(Androidのみ) | PC接続のカードリーダー(SFCard Viewer 2) スマホアプリ「トラマネ」でタッチ | スマホでタッチ(iPhone 8以降・Androidタブレット) Windows端末+カードリーダー | カードリーダーでタッチ/NFC対応Android モバイルは管理画面から取込 | ネットワークICカードリーダーでタッチ iPhoneアプリでタッチ(iOS 14.5以降) |
| 定期区間の自動控除 | ●電車区間のみ(通勤経路の事前申請が前提) | ●鉄道のみ(CSV一括登録は不可) | ●定期券区間の金額を自動控除 | ●SaaS型は標準(オンプレミス型はオプション) | ●登録した区間を常に自動控除 | ●対応は公式に記載、控除の条件は公表なし | ●事前に設定した区間を自動控除 | ●登録した区間を申請時に自動控除 | ●対応は公式に記載、控除の条件は公表なし | ●電車区間のみ(freee人事労務での登録が前提) | 公表なし | ●登録区間と重複する運賃を自動控除 | ●検索時に登録区間の運賃を自動除外 | ●従業員ごとに期間と発着駅を登録 | ●対応は公式に記載、控除の条件は公表なし | ●対応は公式に記載、控除の条件は公表なし | — 改札で引き落とされた実額を取り込む設計(控除機能の記載なし) | — 改札で運賃が発生した区間のみ記録(定期券情報は読み取らない) | ●鉄道が対象(探索経路と重なる分を差し引き) | △ICカードに定期区間が登録されている場合 | — 定期券は手動登録し、交通費とは分けて出力 | — 改札で定期区間分を差し引いた実額が履歴に記録される(公式は「定期券区間の自動控除」と案内) |
| 経路検索・運賃の自動計算 | ●NAVITIME連携 | ● | ●経路検索の結果を精算書に反映 | ●ジョルダン乗換案内と連携 | ●ジョルダン乗換案内を内蔵(早・安・楽) | ●駅すぱあと連携 | ●駅すぱあと搭載(早・安・楽) | ●出発地・到着地から候補を提示 | ● | ●駅すぱあと連携(IC運賃/通常運賃) | ●運賃の自動算出・最安値経路の確認 | ●駅すぱあと連携 | ●駅すぱあと連携(早・安・楽) | ●優先条件・IC運賃/きっぷ運賃を設定可 | ●駅すぱあとから自動入力 | ●ジョルダン乗換案内と連動(早・安・楽) | 公表なし | ×実際に決済された金額を記録 | ●駅すぱあと(乗車券運賃とIC運賃) | △有料のジョルダン経路検索オプション | 公表なし | ●駅すぱあと連携(ICカードを使わない移動) |
| 会計ソフト連携・電子帳簿保存法対応 | 弥生会計 Nextへ自動仕訳連携 電帳法チェック機能あり | 電帳法対応(JIIMA認証) クラウド会計とAPI連携 | 電帳法対応 SuperStream-NXなどと会計連携 | 電帳法対応 SuperStream-NXなどと会計連携 | 電帳法対応(JIIMA認証) 会計ソフト連携あり | 電帳法対応(JIIMA認証・タイムスタンプ標準) 会計・ERP連携36種類以上 | 電帳法対応(電子取引) 会計ソフト連携100種類以上 | 電帳法対応(タイムスタンプ) freee会計など会計ソフト連携 | 電帳法対応(タイムスタンプはオプション) ジョブカン会計とAPI連携 | 電帳法・インボイス対応 freee会計へワンクリック連携 | 電帳法対応 自動仕訳・各種データ出力 | 電帳法対応(JIIMAスキャナ保存認証) 会計システム連携あり | 電帳法対応(標準搭載) 勘定奉行・弥生会計など連携 | 電帳法対応(スキャナ保存・電子取引) 会計ソフト連携あり | 電帳法対応(MOT文書管理との組み合わせ) 勘定奉行など会計ソフト連携 | 電帳法対応(JIIMAスキャナ保存認証) ERP・会計システム連携 | CSV出力に対応 電帳法対応は公表なし | 公表なし | CSV出力に対応 電帳法対応は公表なし | 公表なし | freee会計・マネーフォワード クラウド会計と連携 電帳法対応は公表なし | 勘定奉行・弥生会計・JDLなどと自動連携 電帳法対応は公表なし |
| 初期費用 | 0円(セット版) 単体プランは要お問い合わせ | 0円 | 300,000円(税抜)〜 | 要お問い合わせ | 100,000円(税抜) | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 0円 | 0円 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 0円 | 0円 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 0円 | 要お問い合わせ | 0円 | 0円 (ICカードリーダーなどの機器費用は別途) | 0円 | 要お問い合わせ |
| 月額費用 | 月あたり4,200円(税抜)〜(年額50,400円・セット版/経費精算は3名まで、追加1名400円) 単体プランは月あたり21,000円(税抜)〜(年額252,000円・30ユーザー分、追加1名700円) | 6,480円〜(年払い・5名まで) 6名目以降は1名500円 | 35,000円(税抜)〜 | SaaS型 10,000円〜 (50ライセンス・1ライセンス200円) | 30,000円(税抜)〜 人数の刻みは公表なし | 基本利用料 10,000円(税抜)〜 領収書件数の従量課金・アカウント数無制限 | 50名 29,000円(税別) 100名 41,000円(税別) | 30,000円〜 人数の刻みは公表なし(料金表は請求制) | 1ユーザー400円(税抜) 最低利用料金 月5,500円(税込) | 基本料金 7,500円(税抜)〜 申請・承認1人あたり650円(税抜) | 1人あたり300円(税別)〜 | 要お問い合わせ | 10ID 3,000円(税抜)〜 IC連携は10ID 1,000円(税抜)のオプション | 基本料金 1,980円(税抜)〜 精算した1人あたり300円(税抜) | 20IDまで 3,980円(税抜) 1アカウント199円(税抜)〜 | 要お問い合わせ | 30ユーザーまで 24,000円(税抜) 以降10ユーザーごとに8,000円(税抜) | 要お問い合わせ | 1ID 200円(税別) 最低5名から・年間契約のみ | ユーザー利用料 200円〜 基本利用料は要お問い合わせ | 1ユーザーあたり200円(税抜) 最低5ユーザーから・全機能が追加料金なし | 要お問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | ミーティングを予約する | 詳細を見る | 詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※●=対応/△=条件付き・オプション/×=機能として持たない/—=仕組み上その処理が発生しない/公表なし=公式サイトに記載がない。定期区間の欄の「—」は控除されないという意味ではなく、改札で定期区間分が差し引かれた実額が履歴に記録されるため、システム側の控除処理が要らない製品を指します。
※金額の税抜・税別・税込の別は各社の公表表記に従い、表記のないものは公式サイトに税の記載がないものです。2026年8月1日時点の各社公式情報によります。実際の対応可否は各社にご確認ください。
各交通費精算システムの詳細解説
ここからは、22サービスそれぞれについて、対応する交通系ICカードの範囲、履歴の取り込み方式、定期区間の自動控除の条件、経路検索の仕様、料金を順に見ていきます。
1. 弥生経費 Next(弥生株式会社)

弥生シリーズの経費精算ソフトで、2025年1月に弥生会計 Nextの経費精算機能として提供が始まりました。領収書の撮影から交通系ICカードの読み取り、申請と承認までをスマートフォン1台で扱えます。
交通系ICカードはSuica・PASMO・ICOCAなど9種類に対応し、モバイルSuicaの読み取りについても案内があります。取り込みはアプリでカードにかざす方式と、ブラウザで利用する場合のICカードリーダーの2通りです。経路検索はNAVITIMEと連携し、表示された候補から選んだ経路が申請データになります。
定期区間の控除は、従業員が通勤経路を事前に申請して承認を受けることが前提で、自動控除の対象は電車の区間のみです。
料金は弥生会計 Nextに含める形なら年額50,400円(税抜、月あたり4,200円)からですが、この形で使える経費精算は3名までで、4名目以降は1名につき月400円(税抜)が加算されます。経費精算だけを使うエキスパートプランは30ユーザー分を含む年額252,000円(税抜、月あたり21,000円)からで、追加は1名につき月700円(税抜)となります。
2. マネーフォワード クラウド経費(株式会社マネーフォワード)

クラウド会計ソフトを手がける株式会社マネーフォワードが、同じシリーズの一つとして提供する経費精算システムです。承認済みのデータを会計や給与へそのままつなげられる点が、単体で完結する製品との違いになります。
スマートフォン用の読み取りアプリはSuica・PASMO・ICOCAなど11種類の交通系ICカードに対応します。モバイルSuica・モバイルPASMOはアカウントを登録して明細を取得できますが、再認証を求められる場合があるため自動取得には対応しておらず、手動での再取得操作が必要と案内されています。
定期区間は管理者と従業員本人のどちらからでも登録でき、経路検索の際に控除されます。控除の対象は原則として鉄道のみで、CSVでの一括登録には対応していません。料金は初期費用0円、年払いの場合で5名まで使えるビジネスプランが月6,480円、6名目以降は1名につき月500円が加算されます。
3. ビズバンスJTB経費精算(株式会社JTBビジネストラベルソリューションズ)

出張手配を本業とするJTBグループの株式会社JTBビジネストラベルソリューションズが提供しています。日常の近隣交通費や交際費の精算と、国内・海外出張の申請から予約、精算までを1つのシステムで扱う構成です。
交通費まわりで公式に示されているのは、交通系ICカードを読み取って利用データを精算書に反映すること、定期券区間の金額を自動で控除すること、経路検索サービスの結果を精算書に反映することの3点です。対応するカードの個別名や、読み取りにスマートフォンと専用機器のどちらを使うのかは公式サイトには記載がありません。
出張予約の実績データを自動連携する機能については、別途「ビズバンスJTB出張予約」の契約が必要と明記されています。料金は初期導入費300,000円から、月額利用料35,000円から(いずれも税抜)で、ID単価と最低利用ID数は公表されておらず、利用人数と機能に応じた個別見積もりとなります。
4. Traveler’sWAN(株式会社日立システムズ)

提供形態をSaaS型・オンプレミス型・プライベートクラウド型の3つから選べる総合経費管理システムです。出張の事前申請や手配から旅費精算、日々の経費精算までを1つのシステムで管理します。
日々の交通費については、日当のような定額支給のない実費だけの精算を「近隣交通費」という独立した機能に置いています。経路検索はジョルダン株式会社の「乗換案内」と連携し、定期区間の控除もこの乗換案内連携の一部として提供されます。SaaS型とプライベートクラウド型では標準機能、オンプレミス型ではオプションという扱いです。
交通系ICカードの読み取りはオプション機能として案内されていますが、対応するカードの個別名や読み取りの方式は公式サイトには記載がありません。料金はSaaS型で50ライセンス月額10,000円から(1ライセンスあたり200円)です。オンプレミス型のライセンス費用は参考料金として50ライセンス400,000円からで、公表されている料金表は50ライセンス単位から始まります。
5. 楽楽精算(株式会社ラクス)

累計導入社数は20,000社以上(2025年9月時点)で、経費精算に加えて請求書の支払処理や汎用のワークフローも1つに集約できます。交通費精算だけを切り出して使うこともできる構成です。
交通費精算は、専用のカードリーダーを用意せず、スマートフォンアプリで交通系ICカードを読み取る方式です。公式サイトの記載は「SuicaやPASMOなどの交通系ICカード」までで、ICOCAなど他のカードやモバイル版への対応可否は記載がありません。
ジョルダン株式会社の「乗換案内」を内蔵し、経路の候補には「早」「安」「楽」のアイコンが表示されます。社員ごとに定期区間を登録しておけば、その区間分は常に自動で控除されます。料金は初期費用100,000円、月額30,000円から(いずれも税抜)で、利用従業員数とオプションに応じて変わり、段階別の金額は公表されていません。
6. TOKIUM経費精算(株式会社TOKIUM)

領収書のデータ入力と原本の回収を提供元が代行する点で、他のクラウド型と構造が異なります。利用者はスマートフォンで撮影して申請するだけで、入力はAIによる読み取りとオペレーターの目視確認で仕上げられます。
交通費の取り込みは3系統あります。Android端末のアプリでカードを読み取る方法、モバイルSuica(JRE ID)やモバイルICOCA(WESTER)とアカウントを連携する方法、読み取り用の専用タブレットを借りる方法です。アカウント連携では、初回の認証以降は履歴が自動で取得されます。定期区間の自動控除にも対応します。
経路については株式会社ヴァル研究所の「駅すぱあと」と連携し、申請されたルートを確認できます。料金は基本利用料が月額10,000円から(税抜)で、アカウント数は無制限、領収書の件数に応じた従量課金という設計です。主要な交通系ICカードからの経費申請は件数にかかわらず無料と案内されています。
7. ハーモス経費(株式会社ビズリーチ)

「eKeihi」として20年以上提供されてきた経費精算システムが前身で、2022年に現在の名称へ切り替わりました。経費精算に加えて請求書の受取・発行まで扱うため、経理業務のうちまとめて載せられる範囲が広くなっています。
交通系ICカードは、Suica・PASMOをはじめとする全国の交通系ICカードとモバイル版に対応すると案内されています。読み取りは専用の機器を使わず、スマートフォンをカードリーダーとして使う専用アプリで行う方式で、iOS16以上またはAndroid11以上のNFC対応端末が条件です。
経路検索には「駅すぱあと」を搭載し、候補ごとに【早】【安】【楽】のアイコンが付きます。事前に設定した定期区間を自動控除して精算額を算出でき、これらの交通費まわりの機能は基本プランに含まれます。料金は50名で月額29,000円、100名で41,000円(いずれも税別)という人数に応じた段階制です。初期費用は公式の料金ページに記載がなく、問い合わせでの確認が必要です。
8. バクラク経費精算(株式会社LayerX)

領収書を撮影するとAIが金額や日付、勘定科目を読み取り、過去の仕訳を学習して入力の手間を減らす設計です。株式会社LayerXが展開するバクラクシリーズの一つで、申請や請求書の受取といった他の機能と同じ基盤でつながります。
交通系ICカードの取り込みは2通りです。1つはアプリでカードを読み取り、日付・区間・金額を自動入力する方法。もう1つはモバイルSuica・モバイルPASMOからダウンロードした乗車履歴のPDFを一括で取り込む方法です。機能ページの記載はSuica・PASMOなどの表現に留まり、対応カードの一覧は公表されていません。
通勤定期の区間情報を登録しておくと、申請時に定期区間分の運賃が自動で差し引かれます。出発地と到着地を入力すれば経路と運賃が計算され、複数の候補から選ぶ形です。料金は初期費用が無料、月額30,000円からで、ID単価や最低利用ID数は公表されておらず、料金表を請求して確認する形になります。
9. ジョブカン経費精算(株式会社DONUTS)

バックオフィス向けクラウドのジョブカンシリーズに含まれる経費精算システムで、社内稟議のワークフローと一体で提供されます。交通系ICカードはKitaca・Suica・PASMO・ICOCAなど9種類に対応します。
履歴の取り込みは、専用のスマートフォンアプリに交通系ICカードをかざす方式です。読み取ったデータは経費精算へ直接送信できます。ただしアプリで読み取れる履歴は直近19件までのため、古い履歴が上書きされる前に読み取る運用が必要です。
経路の自動検索と運賃の自動算出、定期券区間の自動控除にも対応します。料金は初期費用が無料で、1ユーザーあたり月額400円(税抜)です。ただし最低利用料金が月5,500円(税込)に設定されており、少人数での利用ではこの金額が下限になります。
10. freee支出管理 経費精算Plus(フリー株式会社)

フリー株式会社の支出管理サービスのうち、経費精算に絞ったプランです。利用中の会計ソフトを変えずに導入できると案内されています。交通系ICカードはSuica・PASMO・ICOCA・nimocaなど7種類に対応し、PiTaPaは事前チャージ分のみが対象です。
履歴の取り込みは専用アプリでカードを読み取る方式で、自分のスマートフォンに登録したモバイルSuica・モバイルPASMOを読み取るには、アプリを起動した別の端末が必要です。経路検索は駅すぱあとと連携し、IC運賃と通常運賃を切り替えて運賃を算出できます。
定期区間の自動控除は電車区間のみが対象で、freee人事労務に同じメールアドレスで従業員を招待し、通勤区間を登録しておくことが前提です。料金は年払いで月あたり7,500円(税抜)の基本料金に、当月に申請または承認を行ったユーザー1人あたり650円(税抜)が加算されます。初期費用は公式サイトに記載がありません。
11. ジンジャー経費(jinjer株式会社)

勤怠・給与・人事労務と同じ従業員データベースを共有する、統合型人事システム「ジンジャー」の経費精算モジュールです。経費だけを単独で導入することも、他の製品と組み合わせて使うこともできます。
交通費の申請では、経路検索によって運賃が自動で算出され、最安値の経路を確認できます。一方で、対応する交通系ICカードの個別の名称や履歴の読み取り手順、定期区間控除の条件は公表されていないため、自社のカード運用に乗るかどうかは問い合わせで確認する必要があります。
料金は利用する製品数と利用人数で決まり、1人あたり月額300円(税別)からです。初期費用やID単価、最低利用ID数は公表されておらず、資料請求または問い合わせでの確認が必要です。無料トライアルは1ヶ月間用意されています。
12. Concur Expense(株式会社コンカー)

SAPグループの株式会社コンカーが提供する、出張・経費管理クラウドの経費精算製品です。交通系ICカードの連携サービスはSuica・PASMO・nimocaが対象で、モバイルSuica・モバイルPASMOやApple Payに登録したカードにも対応します。
履歴の取り込み方式が複数用意されている点が特徴です。利用履歴が自動的に連携される方式、オフィスに設置したカードリーダー、モバイルアプリでの読み取りから選べます。JR東日本と提供する有償オプションでは、記名式のMy SuicaとモバイルSuicaの利用履歴が最短で乗車翌日に反映されます(定期券区間の乗車履歴と物販履歴は対象外)。
定期区間を登録した状態でICカード連携を行うと、重複する運賃は自動的に控除されます。経路検索は駅すぱあととの連携で行われます。一方で現行の料金表は公開されていません。公表されている金額は2020年7月の改定時に発表された月額29,000円〜(50ユーザーの場合、50ユーザーから契約可能)にとどまるため、費用は問い合わせでの確認が必要です。
13. 経費BANK(SBIビジネス・ソリューションズ株式会社)

10ID単位の契約で始められる、SBIビジネス・ソリューションズ株式会社の経費精算システムです。対応カードとして挙げられているのはKitaca・Suica・PASMO・ICOCAなど9種類で、モバイルSuica・モバイルPASMOには別の方式で対応します。
取り込み方式は2通りです。1つは別売の専用読み取り機にカードをタッチして乗車履歴を一括で読み込む方式で、最大6ヶ月分の履歴を保持し、必要な明細だけを選んで申請できます。もう1つはモバイルSuica・モバイルPASMOの利用明細を、SBIグループのMoneyLookとの連携で取得する方式で、読み取り機は使いません。
経路検索は駅すぱあとと連携し、検索結果には早・安・楽のマークが表示されます。定期区間を登録しておけば、検索時にその区間の運賃が自動で除外されます。料金は初期費用0円、10ID単位で月額3,000円(税抜)からですが、交通系ICカードとモバイルの連携は10IDあたり月額1,000円(税抜)のオプションです。
14. invox経費精算(株式会社invox)

請求書受領や文書管理のサービスを展開する株式会社invoxが、2024年8月に加えた経費精算サービスです。名前が挙がっている交通系ICカードはSuicaとPASMOで、ほかのカードへの対応は公表されていません。
履歴の取り込みは2通りです。市販のICカードリーダーアプリが出力したCSVファイルを追加料金なしで取り込めるほか、モバイルSuicaは会員サイトへのログインによる同期、または利用履歴のPDFの取り込みで登録できます。この同期はモバイルSuica IDでのログインのみに対応し、JRE IDでは利用できません。
経路検索では、乗換回数・料金・所要時間のどれを優先して検索するかを選べ、IC運賃ときっぷ運賃のどちらを初期値にするかも設定できます。定期区間は従業員ごとに期間と発着駅を登録して控除します。料金は初期費用0円で、月額基本料金1,980円(税抜)からに、実際に精算を行った人数分の1人あたり月額300円(税抜)が加わります(最低利用ID数の公表はありません)。
15. MOT経費精算(株式会社バルテック)

交通費に加えて、出張費や交際費の申請・精算までを扱う株式会社バルテックの経費精算システムです。クラウドPBXなどを展開するMOTシリーズの一製品として提供されています。
交通系ICカードはSuicaとPASMOの取り込みに対応し、経路と運賃は駅すぱあとから自動で入力されます。定期区間は自動で控除されます。ただし履歴の読み取り方式や、ICOCAなど他の交通系ICカード、モバイル版への対応は公表されていないため、自社で使うカードを読み取れるかは事前の確認が必要です。
料金は20IDまで月額3,980円(税抜)、1アカウントあたり199円(税抜)からという水準です。初期費用は公式サイトに記載がなく、無料トライアルの期間や条件とあわせて問い合わせで確認します。
16. WiMS/SaaS経費精算システム(株式会社ソリューション・アンド・テクノロジー)

人事・会計の業務をカバーするクラウドサービス群「WiMS/SaaS」のうち、会計領域のモジュールとして提供される経費精算システムです。多段階承認や申請内容による条件分岐、グループ会社をまたいだ承認運用に対応し、出張旅費や交際費など交通費以外の精算も同じ画面で扱えます。
交通費の取り込みは、NFC対応のiPhone・Android端末の専用アプリに交通系ICカードをかざし、利用履歴から経路と運賃を読み込む方式です。対応カードとして公式に挙げられているのはSuica・PASMO・ICOCA・PiTaPaなどで、モバイル版ICカードの可否や専用リーダーによる取り込みについては公式サイトに記載がありません。定期券区間の自動控除にも対応します。
経路と運賃はジョルダン乗換案内と連動して算出され、運賃改定も反映されます。承認画面には「早・安・楽」などの評価アイコンが表示され、申請された経路が適正かを確認しやすくしています。初期費用・月額費用とも公開されておらず、要件のヒアリングに基づく個別見積もりです。
17. Smart Go(NTTインテグレーション株式会社)

2019年にNTTコミュニケーションズ株式会社が東日本旅客鉄道株式会社の協力のもとで提供を開始した交通費精算サービスです。2025年4月に、NTTインテグレーション株式会社(当時の日本情報通信株式会社)が自社基盤へ移して引き継ぎました。モバイルSuicaの利用履歴をJR東日本のSuica専用サーバーからAPI経由で自動取得するため、従業員がカードをかざす操作は発生しません。
公式に案内されている対象は、モバイルSuica、カードタイプのSuica、Suica定期券です。PASMOやICOCAなど他の交通系ICカードへの対応は記載がありません。改札で引き落とされた実額をそのまま取り込む設計のため、経路検索・運賃計算や定期区間の自動控除についても、公式サイトに記載は見当たりません。
2026年6月には、切符など連携対象外の交通費を利用者が手作業で追加できる機能と、精算データからの仕訳データ作成支援が加わりました。料金は初期費用が無料、月額は30ユーザーまで24,000円(税抜)で、以降は10ユーザーごとに8,000円(税抜)が加算されます。30ユーザーに満たない場合も30ユーザー分の請求となります。
18. トランジット・マネージャー(株式会社ジェイアール東日本企画)

JR東日本グループの株式会社ジェイアール東日本企画が2016年から提供する、交通系ICカードの利用履歴を読み取ってデータ化するサービスです。単体で申請伝票を作るほか、すでに使っている交通費精算システムへ履歴データを渡す組み込み利用にも対応します。
対応カードは全国相互利用の対象となる10種類(Suica・PASMO・ICOCAなど)に加え、仙台エリアのicscaも読み取れます。取り込みは、スマートフォンへのタッチ、オフィス設置の専用端末、PaSoRiを接続したパソコン、モバイルSuica・モバイルPASMOからの直接取得の4通りです。
ただしモバイル版からの直接取得はAndroid端末に限られ、iPhoneのアプリでは登録・読み込みができません。
定期区間については、改札の処理で運賃が発生した区間だけが履歴に残る仕組みで、定期券の情報自体は読み取っていません。経路検索で運賃を計算するのではなく、実際に決済された金額を記録する設計です。料金は公式に公開されておらず、専用端末の費用も含めて問い合わせが必要になります。
19. 駅すぱあと 旅費交通費精算Web(株式会社ヴァル研究所)

1988年から続く自社開発の経路探索エンジン「駅すぱあと」を、そのまま旅費・交通費の精算に使えるようにしたクラウド型のサービスです。株式会社ヴァル研究所が提供しており、路線図をクリックして経路を探索でき、乗車券運賃とIC運賃の両方を算出します。検索結果には最安・最短などのアイコンが表示されます。
ICカードの取り込みは2通りあります。ソニー製のカードリーダーをパソコンに接続してSFCard Viewer 2で読み取る方法と、スマートフォンアプリ「トラマネ」でカードをかざす方法です。公式に対応が明記されているカードはSuicaとPASMOで、モバイルSuicaもアプリにかざして読み取る操作となり、サーバー間で自動的に同期する方式ではありません。
定期区間の控除は鉄道が対象で、探索した経路と定期区間が重なる分を差し引きます。公式カタログでは、横浜駅と品川駅の定期券を持つ社員が新橋駅へ向かう場合に、通常490円(IC運賃483円)の運賃が170円(IC運賃167円)になる例が示されています。
初期費用は0円、月額は1IDあたり200円(税別)で、最低5名から契約できます。年間契約のみで、契約期間中の解約や利用者数の削減はできません。最大2ヶ月の無料トライアルが用意されています。
20. ネクストICカード(株式会社ジオコード)

勤怠管理・交通費精算・経費精算を1つのIDで扱えるクラウドサービスです。3つの機能はモジュールとして分かれており、必要なものだけを選んで契約できます。運営は東証スタンダードに上場する株式会社ジオコードです。
交通費精算は、従業員が普段使っている交通系ICカードを読み取り、日付と乗車・降車駅、金額をマイページへ反映する仕組みです。読み取りにはiPhone 8以降の端末、Androidタブレット、Windowsのタブレット・パソコン(別途カードリーダーが必要)を使えます。モバイルSuicaとApple PayのSuicaにも対応します。
定期区間は、ICカード自体に定期券が登録されていれば自動で控除されます。一方で経路検索は標準機能ではなく、有料の「ジョルダン経路検索オプション」として提供されます。ICカードの履歴では鉄道会社の規定に沿った最短経路で精算されるため実際のルートと異なる駅が表示される場合があり、このオプションはその差を補う位置づけです。
サービス自体の初期費用はかからず、ユーザー利用料は月額200円からと案内されています。ただし基本利用料は個別見積もりで、ICカードリーダーなどの機器費用も別途必要です。無料トライアルがあり、期間を過ぎても自動で有料に切り替わることはないとされています。
21. kincone(株式会社ソウルウェア)

交通系ICカードを1回タッチすると、出退勤の打刻と交通費データの取得が同時に行われます。株式会社ソウルウェアが提供するクラウドサービスで、扱う範囲は勤怠管理と交通費精算の2つに絞られており、宿泊費や交際費を含む経費精算全般は対象としていません。
読み取りは、パソコンやタブレットに接続したカードリーダーへのタッチと、NFC対応のAndroid端末へのタッチに対応します。加えてモバイルSuica・モバイルPASMOであれば、読み取り機器を使わずに管理画面から利用履歴を取り込めます。公式に名称が確認できる物理カードはSuicaとPASMOです。
定期券の情報は、管理者または従業員本人が手動で登録する運用です。登録した定期代は、ICカードから読み取った交通費とは区別して出力されます。定期区間内の移動はICカードの履歴に運賃が記録されないため、タッチしても交通費としては読み取れません。
経路検索や運賃の自動計算に相当する機能は、公式サイトでは案内されていません。代わりにGoogleカレンダーやMicrosoft 365、サイボウズ Garoonと連携し、登録済みの予定から訪問先を申請画面へ呼び出せます。
料金は初期費用0円、1ユーザーあたり月額200円(税抜)で、5ユーザーから利用できます。全機能が追加料金なしで使え、年払いにすると5%割引、申込月と翌月の最大2ヶ月間は無料で試せます。
22. 交通費精算システム SPEASIC(エスピーイー株式会社)

交通費精算システム SPEASIC(スピーシック)は、交通系ICカードの乗車履歴をもとに、申請から承認、精算、会計システムへの連携までを電子化するクラウド型のサービスです。エスピーイー株式会社が開発し、ICカードを使った精算の仕組みで特許を取得しています(特許第4236124号)。
対応カードとして公式サイトに挙げられているのはSuica・PASMO・ICOCAです。読み取りには、インターネット接続環境があれば専用のパソコンを用意せずに使える独自開発のネットワークICカードリーダーと、iPhone向けのアプリを利用できます。アプリは端末の背面上部にカードをかざして乗車履歴やチャージ履歴を読み取る方式で、iOS 14.5以降に対応します。
定期券区間を含む乗車では、定期区間分を差し引いた運賃がICカードの履歴として記録され、その金額が精算に使われます。ICカードを使わない移動については経路探索サービス「駅すぱあと」との連携で運賃を算出でき、精算後のデータは勘定奉行や弥生会計などへ連携できます。
初期費用・月額費用・ID単価とも公開されておらず、いずれも要お問い合わせです。申し込み前に全機能を2ヶ月間試せる無料トライアルが用意されています。
交通費精算システムとは?できることと主な機能
製品を見たうえで、そもそも何がどこまで自動化される仕組みなのかを整理しておきます。導入後にどの作業が残るのかを把握しておくと、導入効果の見積もりの精度が上がります。
交通費精算に時間がかかる要因
交通費精算に時間がかかる理由は、1件あたりの金額が小さいのに、確認すべき項目が多いことにあります。申請1件ごとに、日付と訪問先、乗車区間、運賃、そして通勤定期の区間と重なっていないかを照合する必要があります。
申請する従業員の側にも負担があります。駅名と運賃を1件ずつ調べて入力する作業は、移動が多い月ほど後回しになりやすく、月末にまとめて処理されることで確認する側の負荷も一時に集中します。
さらに、紙の申請書や表計算ソフトで運用していると、承認の履歴が個人のメールや机上に散らばります。過去の申請内容を後から確認したいときに、どこを見れば正しい記録が残っているのかが分からなくなります。
交通費精算システムの主な機能
交通費精算システムが引き受ける機能は、大きく5つに整理できます。手作業のどこが置き換わるのかという観点で見ていきます。
1つ目は、交通系ICカード履歴の取り込みです。乗車区間と運賃が実際の利用記録として入るため、駅名と金額の手入力がなくなります。2つ目は経路検索と運賃の自動計算で、出発地と到着地を指定すると運賃が自動で入ります。ICカードを使わない現金精算やバス利用でも、この機能で入力の手間を減らせます。
3つ目が定期区間の自動控除です。あらかじめ登録した通勤定期の区間について、重なる分の運賃を差し引いて申請額を算出します。4つ目は申請・承認のワークフローで、承認経路と承認履歴がシステム上に残ります。5つ目が自動仕訳と会計ソフト連携で、承認された精算データが勘定科目に振り分けられ、会計側へ渡ります。
このうち、ICカード履歴の取り込みと定期区間の自動控除は、製品ごとに条件が大きく異なります。次のセクション以降で、それぞれどこまで自動化されるのかを具体的に見ていきます。
Suica・PASMOの利用履歴を交通費精算に使う方法
交通系ICカードの利用履歴は、システムを入れなくても取り出せます。ここでは取り出し方を整理したうえで、発行元が定めている表示・印字の上限を確認します。この上限を知っておくと、システムを入れずに運用した場合にどこで行き詰まるのかが分かります。
Suica・PASMOの利用履歴を取得する4つの方法
券売機で利用履歴を印字する
駅の多機能券売機やカード対応の券売機にカードを入れると、利用履歴を画面で確認し、紙に印字できます。印字された明細をそのまま証憑として保管する運用が、システムを使わない場合の基本形です。
ICカードリーダーで読み取る
パソコンに接続する読み取り機を使うと、駅へ行かなくても履歴を確認できます。読み取ったデータをそのまま精算システムへ渡せる製品もあり、その場合は取り込み方式の1つとして扱われます。読み取れる件数は機器と製品の仕様によって異なるため、各サービスの解説で個別に確認してください。
モバイルSuica・モバイルPASMOのアプリやWebから確認する
スマートフォンで利用しているモバイル版であれば、アプリや会員向けサイトから履歴を確認できます。外出先でも確認できるため、月末にまとめて処理する運用から抜け出しやすくなります。
経費精算システムと連携して自動で取り込む
交通費精算システムを使う場合は、上の3つで取り出していた履歴が申請画面に直接入ります。取り込みと同時に経路と運賃が確定し、定期区間の控除まで済んだ状態で申請されるため、確認する側の作業も申請内容の妥当性チェックに集中できます。
履歴の表示・印字の上限と対応端末の制約
利用履歴は無制限に残るわけではありません。上限はカードの発行元と、物理カードかモバイル版かで異なります。「26週間・100件」という条件がすべての交通系ICカードに共通するわけではない点に注意が必要です。
物理のSuicaについて、JR東日本は次のように案内しています。
履歴表示は、直近のご利用分最大20件まで確認でき、履歴印字は、直近のご利用分最大100件まで印字可能です。また、ご利用から26週間を超えた場合等、一部の場合において履歴を印字できない事がありますので、ご了承ください。
出典:Suicaの利用履歴を確認したいです。|JR東日本
印字については、直近100件まで、かつ利用から26週間以内という条件が案内されています。1日の利用回数が21回以上になった場合など、条件によっては印字されない履歴が生じることもあります。26週間や100件を超えた分は、個人情報の開示請求により過去1年以内の記録を確認できるとされています。
モバイルSuicaでは、会員向けサイトで26週間以内かつ100件までの履歴を確認できます。アプリでは当日分まで、サイトでは前日分までという違いもあります。
PASMOは条件が異なります。物理カードの残額履歴は原則として直近20件までで、26週間以内・最新100件まで確認できるのは一部の鉄道事業者に限られると案内されています。モバイルPASMOやApple PayのPASMOでは、指定した日以前の100件が対象で、当日分と26週間を経過した分は確認できません。
そしてもう1つ、交通費精算で見落とされやすい仕様があります。定期券の区間内だけを乗り降りした場合、その乗車は利用履歴に表示・印字されません。この点はJR東日本、モバイルSuica、PASMOのいずれの案内でも共通しています。履歴に出ないということは、定期区間と重なる移動を履歴だけで検証できないということでもあり、次に述べる定期区間の控除を仕組みで担保する必要が生じます。
出典・参考資料(5件)
履歴の取得から申請・承認・振込までの流れ
交通費精算は、履歴の取得から振込まで5つの段階で進みます。まず従業員が利用履歴を取り出し、日付と区間、金額を精算書の形にまとめます。次に上長が内容を承認し、経理担当者が経路と運賃、定期区間との重複を確認します。問題がなければ支払処理に回り、給与と合わせて、または個別に振り込まれます。
システムを導入すると、この流れのうち履歴の取り出しと精算書の作成が自動化され、承認と確認はシステム上で完結します。手作業として残るのは、申請内容が業務目的に沿っているかという、金額や経路では判断できない部分です。

また、最後の支払処理を、手元の現金から都度精算する形で回している場合は、その小口現金の運用ごと見直す選択肢もあります。廃止の進め方や法人カードなどの代替手段は、以下の記事で整理しています。
定期区間の自動控除はどこまで自動化できるか
交通費精算システムの機能のなかで、最も期待と実態にずれが生じやすいのが定期区間の自動控除です。ここでは、そもそもなぜ控除が必要なのか、自動控除が働く条件は何か、どのような場合に手作業が残るのかを順に整理します。
定期区間分を控除しないと何が問題になるのか
通勤定期券を会社が支給している場合、その区間の運賃は通勤手当としてすでに支払われています。同じ区間を含む移動を業務の交通費として申請すると、実際には追加の支出が発生していない部分まで支払うことになります。経費管理の観点では二重の支払いであり、社内規程の面でも説明が難しくなります。
税務上の扱いも押さえておく必要があります。所得税基本通達は、非課税となる旅費の範囲を次のように定めています。
法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいう。
出典:所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係〔旅費(第4号関係)〕9-3|国税庁
非課税となるのは「その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内」の金額とされ、その範囲を超える部分は給与所得等に算入すると定められています。実際には支出していない定期区間分を上乗せして精算していると、この範囲の判断で説明が付かなくなる可能性があります。控除は経費削減のためというより、支払いの根拠を保つための処理です。
やっかいなのは、この重複を履歴の確認だけでは見つけられない点です。記事前半で見たとおり、定期券の区間内だけを乗り降りした場合、その乗車は交通系ICカードの利用履歴に表示されません。定期区間と重なる移動があったかどうかは、履歴を眺めても分かりません。だからこそ、定期区間の情報をシステムに持たせて機械的に差し引く仕組みが必要になります。
自動控除が働く条件
自動控除は、従業員ごとの定期区間があらかじめシステムに登録されていて初めて働きます。登録の方法は製品によって分かれ、管理者がまとめて設定する形式と、従業員本人が申請時に登録する形式があります。人事情報と連携して通勤経路の登録内容を参照する製品もあり、この場合は人事側のデータが最新でないと控除も正しく働きません。
控除の対象範囲にも条件があります。鉄道の区間のみを対象とし、バスを対象外とする製品も見られます。実費支給ではなく定額支給の従業員を控除の対象から外す仕様もあります。自社の通勤手当の支給方法と噛み合うかどうかは、導入前に確認しておきたい点です。
控除が働くタイミングも製品によって違います。経路検索の段階で定期区間を除いた運賃を算出する製品もあれば、申請後の計算時に差し引く製品もあります。承認者の画面で控除前後の金額が見えるかどうかは、確認作業のしやすさに直結します。
手作業が残りやすいケース
自動控除を入れても、いくつかの場面では人の確認が残ります。1つ目は、申請経路と定期区間が一部だけ重なる場合です。始点から終点までが完全に一致する経路であれば機械的に差し引けますが、途中の数駅だけが定期区間に含まれるようなケースでは、どこからどこまでを控除対象とみなすかの扱いが製品によって変わります。
2つ目は、複数の定期券を持つ従業員がいる場合です。異動や兼務で2つの通勤経路がある、あるいは自宅最寄り駅までのバス定期と鉄道定期を併用しているといった運用では、登録できる区間の数に上限があるかを確認する必要があります。
3つ目は、区間の変更や解約の反映です。引っ越しや異動で通勤経路が変わったとき、システム側の登録がいつ切り替わるのかを決めておかないと、旧区間で控除され続ける、あるいは控除されないまま申請が通ってしまいます。定期券の更新月に合わせて登録内容を棚卸しする運用を、導入時のルールに含めておくと安全です。

交通費精算システムを導入するメリット
導入によって何が変わるのかを、申請する従業員、承認する上長、経理担当者の立場ごとに整理します。導入の効果を説明するときは、立場ごとに何がなくなるのかを分けて示すと伝わりやすくなります。
申請する従業員のメリット
駅名と運賃を1件ずつ調べて入力する作業がなくなります。ICカードの履歴を取り込むか、出発地と到着地を選ぶだけで、経路と運賃が確定します。スマートフォンから申請できる製品であれば、移動中や訪問先で処理を済ませられるため、月末にまとめて作業する必要もなくなります。
差し戻しが減る点も見落とせません。定期区間の控除や運賃の計算が自動で行われるため、金額の誤りを理由に申請が戻ってくる回数が減ります。
従業員側の負担を減らすことが導入の主目的なら、交通費に限らず、領収書の撮影から申請・承認までをスマートフォンだけで完結できるかも判断材料になります。アプリ主体の製品は、無料で使える範囲や対応端末の条件が製品ごとに分かれ、そこが現場で実際に使われるかどうかを左右します。スマートフォンでの使い勝手を起点に選ぶ場合は、以下の記事で製品を比較しています。
承認する上長のメリット
承認時に確認する内容が、金額の正しさから業務目的の妥当性へ移ります。運賃と経路はシステムが算出した値なので、上長は「その移動が業務として必要だったか」の判断に集中できます。
承認の滞留も減らせます。未処理の申請を通知する機能を持つ製品であれば、承認待ちのまま月をまたぐ申請を減らせます。承認の履歴がシステム上に残るため、誰がいつ承認したかを後から確認することもできます。
経理担当者のメリット
最も効果が大きいのが、目視での照合作業の削減です。申請された経路と運賃の妥当性、定期区間との重複という、件数に比例して増えていた確認作業が仕組みに置き換わります。
精算後の処理もつながります。承認済みのデータが勘定科目に振り分けられ、会計ソフトへ渡るため、仕訳の入力と転記が不要になります。証憑と申請データが同じ場所に残ることで、電子帳簿保存法への対応も、紙とデータが混在した状態より整理しやすくなります。結果として、月次の締めを前倒しできる余地が生まれます。
交通費精算システムの料金相場と費用の内訳
費用は初期費用と月額料金に分かれ、月額はさらに基本料金と利用人数に応じた従量部分で構成されます。相場の幅が広いカテゴリなので、金額そのものより費用の構成要素を押さえておくほうが、見積もりを比べるときに役立ちます。
初期費用の相場
初期費用は0円としている製品が中心です。ただし10万円規模の製品もあり、30万円規模の製品もあります。0円としていても、初期設定の支援や既存データの移行を有償のサービスとして別建てにしている場合があり、その場合は見積もりの段階まで金額が分かりません。
専用の読み取り機を使う方式では、機器の費用も加わります。本体を別売とする製品もあれば、市販の機器を利用できる製品もあるため、初期費用の比較では機器代を含めた総額で並べる必要があります。
月額料金とID単価の考え方
月額料金の形は大きく2つに分かれます。1つは利用人数に単価を掛ける形で、1IDあたり200円前後から700円程度が中心です。もう1つは基本料金に一定人数分が含まれ、超過分をID単価で加算する形で、この型は月額3万円前後を下限とする製品が目立ちます。少人数で始めるなら前者、数百名規模なら後者のほうが1人あたりの負担が下がることもあり、自社の人数で両方を試算して比べる必要があります。
比較するときは、最低利用ID数と契約単位に注意が必要です。10ID単位でしか契約できない、最少5名からといった条件があると、実際の利用人数より多く支払うことになります。年間契約のみで期間中の減員ができない製品もあるため、人数の増減が見込まれる場合は契約期間の条件も確認してください。
そもそも何を数えて課金するのかという基準自体も、製品によって分かれます。在籍する従業員数で数える体系と、その月に実際に精算した人数だけを数える体系があり、後者は移動の少ない従業員が多い組織ほど総額が下がります。株式会社マネーフォワードの栗本氏は、MCB FinTechカタログの取材で、同社が採用している課金の考え方を次のように説明しています。

課金の考え方として「アクティブユーザー課金」を採用しており、1ヶ月の中で経費精算に関わった方の人数に対して課金されます。従業員数で課金する他社とは異なり、実際に使った人数分だけを請求するという考え方です。例えば100名いる会社でも、実際に経費が発生する営業担当者と総務スタッフが計25名であれば、25名分のみのご請求となります。
全従業員が毎月移動するとは限らない業種では、この数え方の違いが月額の総額に直結します。見積もりを取るときは、単価だけでなく「何人分として計算されているのか」も合わせて確認しておくと比較がそろいます。
交通系ICカードとの連携を標準機能とせず、オプションとしている製品もあります。この記事の主題である交通費精算に直結する部分なので、基本料金に含まれるのか、月額の加算になるのかは必ず確認してください。
費用対効果を見積もるときの考え方
費用対効果は、削減できる工数を金額に換算して比べます。計算に必要なのは、月間の申請件数、1件あたりの確認にかかる時間、確認に関わる人数の3つです。申請件数に確認時間を掛けて月間の削減時間を出し、人件費の時間単価を掛けると、月額料金と比べられる金額になります。
1件あたりの確認時間は自社で実測するのが確実です。日付と訪問先、乗車区間、運賃、定期区間との重複という5点を目視で照合しているなら、1件あたり1〜2分はかかります。まず1週間分だけ時間を計り、月間の件数に引き延ばすと、根拠のある数字になります。
たとえば従業員150名・月400件の申請があり、1件あたり2分の確認を経理担当者が行っている場合、確認だけで月13時間ほどになります。時間単価を2,500円とすれば月33,000円程度です。全従業員が課金対象になる料金体系で1IDあたり月300円なら150名分で月45,000円となり、経理の確認時間だけでは費用に届きません。
届かせる要素は2つあります。1つは、経理担当者以外の時間です。申請する従業員が駅名と運賃を調べる時間が1件2分なら月400件で13時間、上長が金額を確かめる時間が1件30秒でも月3時間ほどになり、同じ時間単価で数えれば削減側は月70,000円前後まで積み上がります。もう1つは課金対象の数え方で、実際に精算した人数だけを数える料金体系なら、移動が発生しない従業員の分は費用に乗りません。
自社で試算した数字が現実的な水準かどうかは、実際の導入企業で何がどれだけ変わったかと突き合わせると判断しやすくなります。栗本氏は、紙ベースの精算フローを見直した企業の変化を次のように挙げています。

紙ベースの煩雑な経費精算フローが店舗と本社双方の業務時間を圧迫していて、毎月60店舗中50店舗で申請の差し戻しが発生している企業がいらっしゃいました。しかし、クラウドの導入後は、月初の作業時間が最大60時間から約6時間へ削減されたとのお声をいただいています。
この事例のように、差し戻しの多さと締め作業の集中が重なっている状態ほど、削減幅は大きく出ます。逆に、申請件数が少なく差し戻しもほとんど起きていない場合は、工数の削減額だけでは投資に見合わないこともあるため、次に挙げる数値化しにくい効果と合わせて判断します。
金額に換算しにくい効果もあります。月次の締めが数日早まること、定期区間の重複という指摘しづらい問題を人ではなく仕組みで止められること、承認履歴が残ることによる監査対応のしやすさです。これらは数値化が難しいものの、導入理由としては説明する価値があります。
交通費精算システムの選び方
ここからは、比較表の各列が自社にとって何を意味するのかを解説します。まず製品の守備範囲を決め、次に自社のICカード運用に乗るかを確かめ、最後に運用を支える機能と連携を確認する、という順で絞り込んでいきます。
交通費特化型と経費精算システム全般のどちらが合うか
最初に決めるのは、交通費だけを速く解決したいのか、経費精算全体を1つの仕組みにまとめたいのかです。この選択で見るべき製品群が変わります。
交通費に特化した製品は、ICカード履歴の取り込みと経路検索、定期区間の控除に機能を絞っている分、料金が抑えられ、導入も短期間で済む傾向があります。一方で、領収書の読み取りや交際費、出張旅費、請求書の支払いまでは扱わないため、それらを別のシステムで処理することになります。
経費精算全般に対応する製品は、交通費も経費の一種として扱います。精算から仕訳、支払いまでを1本の流れにできる点が利点ですが、交通費まわりの作り込みは製品によって差が大きく、料金も特化型より高くなりやすくなります。
判断の目安は、交通費以外の経費精算に今どれだけ手間がかかっているかです。交通費だけが突出して重く、他の経費は件数が少ないのであれば特化型で足ります。領収書の処理や請求書の支払いにも同程度の負荷があるなら、全般型でまとめたほうが結果的に運用は軽くなります。将来的に対象を広げる可能性があるなら、特化型でも会計ソフトや他の精算システムとデータを受け渡せるかを確認してください。
経費精算全体を1つの仕組みにまとめる方向で検討するなら、交通費だけでなく領収書処理や請求書の支払いまで含めて製品を並べたほうが、比較の抜けが出ません。以下の記事では、経費精算システム全般を料金・機能・使いやすさ・導入方法の観点で比較しています。
自社のICカード運用に合う取り込み方式か
記事の前半で自社に近いと感じた取り込み方式が、実際の運用に耐えるかの確認が必要です。見るのは、業務用スマートフォンの支給範囲、社用ICカードの共用の有無、直行直帰の頻度の3点です。
業務用のスマートフォンを一部の従業員にしか支給していない場合、スマートフォンで読み取る方式を全社に展開すると、私物端末の業務利用を認めるかという別の判断が必要になります。社用ICカードを部署で共用しているなら、誰の申請としてカードの履歴を扱うのかを決められる製品かどうかが要件になります。
直行直帰が多い組織では、オフィスの読み取り機だけに依存すると履歴の取り込みが滞ります。複数の方式に対応していて、従業員ごとに使い分けられる製品を選んでおくと、運用の幅が広がります。
対応する交通系ICカードと端末の範囲
対応するICカードの範囲は製品によって差があります。SuicaとPASMOのみを明示している製品もあれば、全国相互利用の対象となる10種類のカードに対応する製品もあります。関西や中部、九州に拠点がある場合や、従業員が地域の交通系ICカードを使っている場合は、この範囲が実務上の分かれ目になります。
モバイル版への対応も個別の確認が必要です。物理カードは読めてもモバイルSuicaは読み取り方式が異なる、あるいはモバイル版はアカウント連携でしか取り込めないという製品があります。同じスマートフォンに入っているモバイルICカードを、その端末自身では読み取れない仕様もあり、運用に影響します。
端末側の条件も確認が必要です。NFCに対応した機種であること、OSのバージョンが一定以上であることを条件とする製品があります。社内で利用している端末の世代が古い場合は、対象から外れないかを事前に確かめてください。ここで扱うのは製品側がどこまで対応しているかという話で、先に触れた表示・印字の上限はカードの発行元が定める仕様です。両者は別の制約なので、切り分けて確認してください。
申請ミスを抑える機能があるか
申請の誤りを事前に止める機能があると、差し戻しの往復が減ります。定期区間の自動控除については記事前半で詳しく見たので、ここでは選定時に確認する条件として、登録方法と控除の対象範囲が自社の運用に合うかを押さえておいてください。
経路の判定機能も確認が必要です。見るのは、複数の経路候補を提示するか、所要時間や運賃を基準に並べ替えられるか、選ばれた経路が妥当かを承認画面で示すか、の3点です。あわせて、申請内容の不備を送信前に検出する機能と、未申請・未承認を知らせる通知機能があるかも、確認作業の総量を左右します。
その際、経路の選び方には法令上の一律の基準があるわけではない点は押さえておいてください。国税庁が示す「最も経済的かつ合理的な経路」は通勤手当の非課税限度額を計算するための基準で、日々の業務移動の運賃計算を定めたものではありません。
どの経路を認めるかは各社の旅費規程で定める事項なので、システムに求めるのは「正解を自動判定すること」ではなく、自社の規程に沿った経路が選ばれているかを確認しやすくすることです。税務上どう判断されるかは記事末のFAQで整理しています。
会計ソフト連携・電子帳簿保存法への対応
精算の後工程まで含めて考えると、利用中の会計ソフトへデータを渡せるかが効いてきます。連携の形は、標準機能として直接つながるもの、指定形式のファイルを書き出して取り込むもの、個別開発が必要なものに分かれます。書き出し方式でも実務は回りますが、月次の作業として毎回発生する点は見込んでおく必要があります。
電子帳簿保存法への対応も確認が必要です。交通系ICカードの支払データを使うクラウドサービスの利用は電子取引に該当し、そのデータを保存する必要があると国税庁が示しています。
問5 当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存しておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。
⑷ クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問5|国税庁
紙の領収書をスキャンして保存する場合は、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。交通費では領収書が出ない移動も多いため、ICカードの履歴データと領収書のどちらも扱える製品かどうかが、運用のしやすさに影響します。
要件を満たすこと自体より、その状態を毎月続けることのほうが負担になりやすい部分でもあります。栗本氏は、導入の相談に至る企業が置かれている状況を次のように話しています。

導入の動機という点では、非生産的な時間の削減ももちろんですが、法令対応での電子帳簿保存法への対応が、依然として最も強い動機になっています。電子帳簿保存法の施行後、事務処理規定などを設けて電子データを原本として保存しているものの、業務フローは変更できておらず、結局紙ベースでの社内処理をおこなっている、というケースは多いです。紙と電子両方の保管を行っていて、二重運用で法令対応を乗り越えたもののそれを維持し続けるのがやはり大変だということで、しっかりシステム化しようという流れが続いています。
製品を見るときは、法令の要件に対応していると書かれているかだけでなく、紙とデータの二重保管が実際に解消される運用になるかまで確かめておくと、導入後に同じ状態が残るのを避けられます。
導入して現場に定着させるための注意点
製品を選んだ後、実際に使われる状態にするまでにいくつかの関門があります。導入前に決めておくと後戻りが減る点を4つ挙げます。
関係部門への事前確認
誰がどの端末で申請する運用にするのかは、選定の前に関係部門と決めておく必要があります。私物のスマートフォンを使うのか、社用の端末に限るのかは情報システム部門の判断が必要ですし、通勤定期の情報を扱うなら人事部門との調整も生じます。運用の形が決まっていないまま製品を選ぶと、導入後に取り込み方式を変えることになりかねません。
社内周知と操作の教育
最初の関門は、申請する従業員側の操作です。経理部門にとっては待望の仕組みでも、従業員から見れば新しい手順を覚える負担になります。ICカードの読み取り手順や定期区間の登録方法を、実際の画面に沿って案内する時間を確保してください。
従業員側の手間が減ることを具体的に伝えるのも効果があります。駅名と運賃を調べる作業がなくなること、移動中に申請を済ませられることが伝われば、切り替えへの抵抗は小さくなります。
導入後のサポート体制
提供元の問い合わせ窓口が、どの手段でいつ対応するのかは契約前に確認が必要です。電話とメールのどちらに対応するか、対応時間はいつまでかによって、締め日前後に問題が起きたときの復旧速度が変わります。
社内の一次受けを誰にするかも決めておく必要があります。従業員からの操作の質問をすべて提供元に回すと解決までに時間がかかるため、経理部門か情報システム部門に窓口を置き、そこで解決できない内容だけを提供元へ渡す形にすると運用が安定します。
切り替え時期の決め方
切り替えの時期は、月次の締めや決算期を避けて選ぶのが一般的です。従来の方法と新しいシステムが並行する期間があると、確認作業が一時的に増えるためです。
定期券の更新時期との兼ね合いも考慮が必要です。定期区間の情報を全従業員分登録する作業が発生するので、更新の時期に合わせると、登録内容の棚卸しと切り替えを一度に済ませられます。
まとめ
交通費精算システムを選ぶときに最初に効くのは、交通系ICカードの利用履歴をどう取り込むかという点です。従業員のスマートフォンでかざす方式、モバイル版のアカウントと連携して自動で取り込む方式、オフィスの読み取り機を使う方式のどれが自社の運用に乗るかで、候補は大きく絞られます。
次に確認したいのが、定期区間の自動控除がどこまで働くかです。定期券の区間内だけの乗車はICカードの利用履歴に残らないため、重複は履歴を見ても分かりません。登録の方法、控除の対象範囲、区間が一部だけ重なる場合の扱いを、自社の通勤手当の運用と突き合わせて確かめてください。
絞り込みの順序を整理すると、次のようになります。業務用スマートフォンを配っていない、または社用ICカードを部署で共用しているなら、オフィスの読み取り機に対応する型に候補が限られます。モバイルSuica・モバイルPASMOが定着していて申請操作そのものを減らしたいなら、アカウント連携で履歴を自動取得する型です。
従業員が個人のカードを使っていて私物端末の業務利用が認められているなら、スマートフォンでかざす型が最も選択肢が多くなります。
型が決まったら、交通費だけを速く解決したいのか、経費精算全体をまとめたいのかで候補をさらに半分に減らせます。そのうえで、定期区間の控除条件と対応する交通系ICカードの範囲が自社の要件を満たす製品を2〜3件まで絞り、料金と無料トライアルの有無を資料で確認するのが、最短の進め方です。対応ICカードの範囲・料金の内訳・会計ソフトとの連携は、比較表で製品ごとに整理しています。
候補が絞れたら、あとは各社の料金表と機能一覧を突き合わせる作業です。掲載サービスの資料は以下からまとめて請求できます。1社ずつ問い合わせなくても、初期費用・月額・交通費まわりの機能を並べて確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 交通費精算システムと経費精算システムは何が違いますか?
A. 扱う範囲が違います。交通費精算システムは、交通系ICカードの履歴の取り込み・経路検索・定期区間の控除という電車やバスの移動に特有の処理に機能を絞った製品で、経費精算システムは領収書の読み取りや交際費・出張旅費・請求書の支払いまで含めて扱い、交通費をその一部として処理します。
交通費だけが突出して重いなら前者で足ります。領収書の処理や請求書の支払いにも同程度の負荷があるなら、後者でまとめたほうが運用は軽くなります。ただし交通費まわりの作り込みは後者のなかでも差が大きいため、対応するICカードの範囲と定期区間の控除条件は製品ごとに確かめてください。
Q. 交通費精算システムはICOCAやmanacaなど地域の交通系ICカードにも対応していますか?
A. 交通費精算システムが読み取れるICカードの範囲は製品ごとに異なり、SuicaとPASMOのみを明示する製品から、全国相互利用の対象となる10種類に対応する製品まで分かれます。
全国相互利用の対象は、Kitaca・Suica・PASMO・TOICA・manaca・ICOCA・PiTaPa・はやかけん・nimoca・SUGOCAの10種類です(交通系ICカードの相互利用|PASMO)。ただし「カード同士が相互利用できること」と「精算システムがそのカードの履歴を読み取れること」は別の話です。
PiTaPaは電子マネーの全国相互利用の対象外とされており、事前にチャージした分だけを取り込める製品もあります。関西・中部・九州などに拠点があり、従業員が地域のカードを使っているなら、比較表の「対応する交通系ICカード」欄から確認してください。
Q. 交通費精算システムのモバイルSuica連携は、どの端末でも使えますか?
A. モバイルSuicaに対応した端末であることが前提となるため、手持ちのスマートフォンなら何でも使えるわけではありません。
JR東日本は対応機種の一覧を随時更新しており、「端末の発売時に動作確認を行っておりますが、OSのバージョンや操作環境によっては一部の機能に制限が発生する場合がございます」と案内しています(モバイルSuica対応端末を知りたい。|モバイルSuica)。同じ案内では、機種によってモバイルSuica・モバイルPASMOの発行可能枚数が異なり、合計枚数にも上限があるとされています。
社用と私用でカードを分ける運用を考えている場合は、この枚数の条件もあわせて確認してください。これはカード発行元側の条件で、精算システム側にも対応OSのバージョンなどの条件が別に付きます。
Q. 社用の交通系ICカードを複数人で使い回していても交通費精算システムは使えますか?
A. 使えますが、オフィスに置いた専用リーダーで読み取る方式が前提になり、読み取った履歴を誰の申請として扱えるかが製品選定の分かれ目になります。
交通系ICカードの利用履歴はカード単位で記録され、誰が乗ったかという情報は含まれません。共用カードでは、貸出簿や予約表など運用側の記録と突き合わせて申請者を特定できる状態にしておく必要があります。あるいは個人に紐づけず、カード単位で部署の経費として処理する形にするのかを、導入前に社内で決めておくと運用が安定します。
共用カードには定期券が載っていないことが多いため、定期区間の自動控除は個人カードの申請と扱いが変わる点も確認しておいてください。
Q. 交通費精算システムで、ICカードの利用履歴を取り込めなかった月はどう精算すればよいですか?
A. 取り込めなかった分は、経路検索を使って区間と運賃を入力する通常の申請で処理するのが基本です。
物理のSuicaは券売機での表示が最大20件、印字が直近100件までで、いずれも利用から26週間以内という条件が付きます。1日の利用が21回以上の場合や改札機へのタッチが不十分だった場合など、印字されない履歴が生じることもあります。
これらを超えた分について、JR東日本は記名式のカードであれば「個人情報の開示請求」により受付日から過去1年以内の範囲で履歴情報を開示すると案内しています(Suicaの利用履歴を確認したいです。|JR東日本)。ただし無記名式のカードは対象外で、定期券区間内の入出場記録も開示の対象にはなりません。手続きにも時間がかかるため、実務としては月内に履歴を取り込む締め切りを決めておくほうが確実です。
Q. 交通費精算システムは、申請経路と定期区間が一部だけ重なる場合も自動で控除できますか?
A. 始点から終点まで定期区間と一致する経路は機械的に差し引けますが、途中の一部だけが重なる経路の扱いは製品によって変わります。
重なる区間の運賃だけを差し引くのか、経路全体を控除の対象外として扱うのかは仕様によって分かれます。しかも定期券の区間内だけを乗り降りした記録はICカードの利用履歴に残らないため、控除が正しく効いたかを履歴から後追いで検証することもできません。選定の段階で、自社に実際に多い「通勤経路と主要な訪問先の組み合わせ」をいくつか用意し、トライアルで算出される金額を確かめておくのが確実です。
あわせて、複数の定期券を登録できるか、区間の変更をいつ反映するかも決めておきます。
Q. 交通費精算システムで通勤手当(通勤定期代)の管理もできますか?
A. 交通費精算システムが扱うのは業務移動の精算が中心で、通勤手当の支給額の算定や支払いは人事・給与側のシステムが担うのが一般的です。
ただし定期区間の自動控除には従業員ごとの通勤区間の登録が欠かせないため、人事システムに登録済みの通勤経路を参照できるのか、精算システムに別途登録するのかは確認が必要です。
なお通勤手当には非課税限度額があり、電車・バス通勤者の場合、運賃・時間・距離等の事情に照らして最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤したときの通勤定期券などの金額(1か月あたり15万円が上限)までが非課税とされています(No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当|国税庁)。この基準は通勤手当について定められたもので、日々の業務移動の運賃計算の基準ではありません。
Q. 交通費精算システムは、申請された経路が最短・最安かどうかを自動で判定してくれますか?
A. 経路の候補を提示したり所要時間・運賃で並べ替えたりする機能はありますが、どの経路なら認められるかを法令に基づいて判定してくれるシステムはありません。
業務移動の経路の選び方は各社の旅費規程で定める事項で、税務上は「その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内」かどうかで判断されます(所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係〔旅費(第4号関係)〕|国税庁)。したがって、どの経路を原則とするか、特急料金や有料座席をどこまで認めるかを規程の側で決めていないと、システムを入れても承認者の判断はぶれたままです。
導入を機に旅費規程の記述を見直し、システムには「規程どおりの経路が選ばれているかを確認しやすくする」役割を持たせるのが現実的です。
Q. 交通費精算システムは、ICカードを使わないバス代やタクシー代も精算できますか?
A. ICカードを使わない移動も、経路検索による運賃の入力や領収書の添付で申請できるのが一般的です。
現金で支払ったバス運賃などは、出発地と到着地を選ぶと運賃が入る経路検索機能で処理できます。タクシー代や特急料金のように領収書が出る支出は、領収書を撮影して申請に添付する形です。紙の領収書をスキャンして電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要があり、領収書は資金の流れに直結する「重要書類」として、速やかに、または業務サイクル後速やかに入力することが求められます。
国税庁は、要件を満たす入力装置であればスマートフォンやデジタルカメラも「スキャナ」に含まれるとしています(電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】|国税庁)。
Q. 交通費精算システムを導入すれば、電子帳簿保存法の要件は満たせますか?
A. システムを導入すること自体が要件の充足を保証するわけではなく、どのシステムでどう保存するかまで含めて条件を満たす必要があります。
国税庁は、交通系ICカードによる支払データ等を活用したクラウドサービスの利用は「電子取引」に該当し、取引情報に係るデータを保存しなければならないとしています。
同じ回答のなかで、訂正削除の記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムを利用して授受および保存をしていれば電子取引の保存に係る要件を満たすと考えられるとも示されており、製品選定では訂正削除の履歴が残る仕組みかどうかが確認点になります(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問5|国税庁)。
また、データを出力した書面だけを保存する対応は認められておらず、猶予措置の適用を受ける場合でも電子データそのものを保存し、提示できる状態にしておく必要があります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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