ファイルサーバーが起動しない、NASが異音を立てて共有フォルダーが開かない、RAIDのリビルドが途中で止まった——業務データを失った直後は、一刻も早く元に戻したい一方で、どの業者に、どう相談すればよいか判断がつきにくいものです。
データ復旧サービスは、こうして失われたデータを専用の設備と技術で取り出す事業者です。ただし料金体系(完全成果報酬か定額か)、対応できる機器や障害の範囲、セキュリティ認証、実績の示し方は各社で大きく異なり、選び方を誤ると高額な費用を払ったうえに復旧できない、あるいは稟議・監査に出せる証跡が残らない、という事態になりかねません。
本記事では、法人が復旧業者を選ぶために押さえておきたい4つのタイプと選定の6観点、DRAJ加盟状況・認証・料金体系・対応機器を横並びで見る比較表、症状別・機器別の料金の目安、そして稟議や監査に耐える契約・証跡の確認ポイントまでを整理します。物理データ復旧を主業とする16社を、自社の障害・機器・要件に合わせて絞り込めるようにまとめました。
また、いま起きている障害から相談すべきタイプ・業者を最短で絞り込めるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。障害が起きた機器・症状・重視する条件に答えるだけで、16社から候補が絞り込まれます。
目次
障害発生直後にやってはいけないこと
ここでは、業者に相談する前の初動で、復旧の可能性を自分で下げてしまわないために避けたい操作を説明します。焦って手を動かすほど状況が悪化しやすいのがデータ障害の特徴です。
一般社団法人日本データ復旧協会(DRAJ)は、データ復旧の可否や程度を左右する要素の一つとして、利用者側の「操作」を次のように定義しています。
上記の論理的障害と物理的障害には、共通して、データ復旧の可否・程度に影響する「原因」、「操作」、「度合い」の3つの要素があります。
出典:データ復旧サービスのガイドライン -『データ復旧率』表記等に関して-(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
② 操作
誤操作、書き込み、負荷を与えるアクセス、加工または不適切な処置に加え、放置、分解などの人為的処置を含めた状況を悪化させるきっかけのこと。
通電し続けること、再起動やリビルドを繰り返すこと、初期化やフォーマットを実行することは、いずれもこの「書き込み」「負荷を与えるアクセス」「不適切な処置」にあたり、復旧できたはずのデータを上書きしてしまう可能性があります。以下の操作は、業者に相談するまで控えるのが安全です。
ただし、正しい初動は症状によって分かれます。まず次の対応を押さえてください。

通電・再起動を繰り返さない(症状によって初動が異なる)
ハードディスクは、内部で円盤(プラッタ)が1分間に5,400〜7,200回転し、磁気を読み取るヘッドが数ミクロンの間隔で浮上しています。異音(カリカリ、カチカチ、ガリガリなど)や認識不良は物理的な故障のサインで、この状態で通電を続けたり再起動を繰り返したりすると、ヘッドが記録面を傷つけて被害が広がります。
アイ・オー・データ機器も、ハードディスクは内部で円盤が高速回転しヘッドが微小な間隔で浮上しているため、動作中に機器を動かしたり衝撃を与えたりすることが故障の原因になると案内しています。異音や認識不良など物理障害を疑う症状では、まず電源を落として通電をやめてください。
出典・参考資料(1件)
一方で、ランサムウェアなどサイバー攻撃でファイルが暗号化された場合は、初動が逆になります。警察庁は、感染時に慌てて電源を切ることについて次のように注意を促しています。
もしもランサムウェア被害に遭ってしまった場合は、まず感染端末等をネットワークから隔離し、被害拡大を防ぐのが望ましい。慌てて電源をオフにすると、ログ等の侵入の痕跡が失われてしまい、その後のフォレンジック調査が困難になる可能性があるので注意が必要である。
出典:令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(2026年3月)|警察庁
このように、物理的な故障(異音・認識不良)なら電源を落とす、サイバー攻撃による暗号化ならまずネットワークから切り離して電源は保持する、と症状によって初動が分かれます。
迷いやすいのが「起動しない・異音もしない・暗号化の兆候もない」という状態です。異音がなくても、基板やヘッドの故障で無音のまま認識されなくなることはあり、通電のたびに状態が進むおそれがあります。暗号化を疑う要素(身代金要求のメッセージ、拡張子の一括変更など)がないなら、物理障害の可能性がある側として扱い、電源を落として通電をやめるのが安全です。
NAS・RAIDの筐体では、ドライブを抜かずに筐体ごと預けるのが基本です。構成情報(RAIDレベル・搭載順)が解析の手がかりになるため、自分で分解して個別に送るより、現状のまま相談するほうが復旧の可能性を残せます。
あわせて知っておきたいのは、機器を保全できていれば比較検討の時間は取れるという点です。DRAJほか5団体が合同で編集したチェックシートは「HDDやSSDをパソコン等から取り外している、または電源を落としているのであれば、一般的には数か月程度は時間が経過しても復旧の難易度は変わらないと考えられます」としています。焦って1社に即決する必要はありません。
すでに再起動を何度か試してしまった場合も、そこで手を止めれば残せるものはあります。DRAJの定義では、状況を悪化させるきっかけには「放置」も含まれており、慌てて追加の操作を重ねるより、実施した操作(回数・順序・表示されたメッセージ)を記録して業者に伝えるほうが、適切な復旧方針を立てるうえで役立ちます。試した操作を隠さず伝えることが、結果的に復旧の近道になります。
判断に迷う場合は、電源を入れ直す前に業者へ連絡し、現状を伝えて指示を仰ぐのが確実です。
RAIDのリビルドを繰り返さない・HDDの順番を入れ替えない
RAIDで1台のドライブが故障したとき、交換とリビルド(再構築)で復旧できる場合もありますが、リビルド中は冗長性が失われた状態になります。NECはサーバーの構成ガイドで、大容量ドライブのRAIDは「障害復旧時に長時間のリビルドが必要」で「その間冗長性が失われます」と注意喚起しています。冗長性のない状態で書き込み負荷をかけ続けるリビルドの反復は、2台目の障害を招いてアレイ全体を失うリスクを高めます。
また、RAIDを構成するHDDの順番や搭載スロットは構成解析の重要な手がかりです。取り外した順番が分からなくなると、構成の復元に必要な情報が欠けてしまいます。うまくいかないからと抜き差しや順番の入れ替えを試すのではなく、現状のまま業者に構成解析を依頼するのが安全です。
初期化・フォーマット・チェックディスクを実行しない
「フォーマットしますか?」という表示や、OSが促す修復(チェックディスク)を実行すると、データの管理情報が書き換えられ、復旧が難しくなることがあります。DRAJが挙げる「書き込み」「不適切な処置」にあたる操作の典型です。表示に従わず、現状を保ったまま相談してください。
復旧ソフトによる自力復旧はどこまで許容できるか
市販の復旧ソフトは、誤って削除したファイルの復元など軽度の論理障害では有効なことがあります。ただし、異音や認識不良など物理障害が疑われる状態では、ソフトを動かすこと自体が通電・アクセスという負荷になり、状況を悪化させかねません。物理障害の可能性があるなら、ソフトの実行前に手を止めるのが安全です。
加えて、ソフトが「復旧できた」と表示しても、業務で使える形とは限らない点にも注意が必要です。DRAJらが編集したチェックシートは、復旧の意味が事業者や場面によって異なることを指摘しています。
データ復旧には、対象機器から1つのファイルでも復旧できれば、データ復旧できたという場合もあれば、データのファイル名だけが復旧できれば、データ復旧できたという場合もあります。データ復旧事業者が定義するデータ復旧の意味を理解していなければ、齟齬が生じますので、依頼したい内容がどのようなデータ復旧であるかを理解しましょう。
出典:データ被害時のベンダー選定チェックシート Ver.1.0(2022年12月16日)|日本データ復旧協会・デジタル・フォレンジック研究会・日本ネットワークセキュリティ協会ほか合同編集
ファイル名だけ戻っても中身が壊れていれば業務は再開できません。重要なデータであるほど、自力での試行は最小限にとどめ、早い段階で専門業者の初期診断を受けるのが結果的に近道になります。
障害状況を記録し、相談時に伝える情報を整理する
業者への相談をスムーズにするため、次の情報を控えておきます。障害が起きた機器(メーカー・型番・容量)、構成(単体かRAIDか、RAIDならレベルと台数)、症状(起動しない・異音・フォーマット表示・リビルド失敗・暗号化など)、発生した時刻とその前後の出来事、そしてこれまでに自分で試した操作です。特に「何をしたか」は、業者が復旧方針を立てるうえで欠かせません。
データ復旧サービスとは
ここからは、業者を比較する前提として、障害の種類・対応機器・機器修理との違い・依頼で得られることを整理します。自社の症状がどちらの障害にあたり、その機器が対応範囲かを押さえると、以降の比較が読みやすくなります。
症状から見分ける論理障害と物理障害
データ障害は、大きく論理障害と物理障害に分かれます。DRAJのガイドラインは、両者を次のように定義しています。
1.論理的障害
出典:データ復旧サービスのガイドライン(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
誤消去、誤削除、初期化、人為的または使用機器の仕様や不具合に起因する上書きなどによるデータ消失、セキュリティ環境における暗号化などによるデータ使用の困難、ファイル破損、マルウェアその他サイバー攻撃によるデータ破損など。主に電磁的記録媒体に対しI/Fや専用ドライブを介して作業可能な状態。
2.物理的障害
電磁的記録媒体の消耗や不具合、故障や破損、実装機器の不具合や自然災害などにおける外的要因による機能不全など。主に機能を損なった電磁的記録媒体の利用者または開発者からの読み書き命令に応答できる状態を一時的に回復させない限り作業不可能な状態。
症状に置き換えると、ファイルを誤って消した、フォーマットしてしまった、暗号化された、といった「機器自体は動くがデータが読めない」状態が論理障害です。一方、起動しない、異音がする、認識されない、リビルドに失敗したまま動かない、といった「機器の機能が損なわれている」状態は物理障害の可能性が高くなります。
論理障害は比較的作業しやすく、物理障害はクリーンルームでの分解や部品交換が必要になるため、費用も難易度も上がる傾向があります。この違いは、後述の料金相場や診断ツールの前提になります。
対応機器の全体像
データ復旧サービスが扱う機器は、HDD・SSD・USBメモリ・SDカードといった単体ストレージから、NAS、RAIDを組んだファイルサーバー、業務サーバー、仮想環境(VMware・Hyper-Vなど)、データベースまで幅広く及びます。ただし、どこまで対応できるかは業者ごとに差があります。
特にRAIDや仮想環境、データベースは構成解析の技術力が問われるため、法人の本番機を預けるなら、自社の機器と構成に対応した実績があるかを確認してください。
メーカー修理・機器修理との違い
データ復旧は「データを取り出すこと」が目的で、機器を直すメーカー修理とは別の工程です。むしろメーカー修理では、検査や部品交換の過程でデータが消えることがあります。アイ・オー・データ機器も、修理の案内で次のように明記しています。
◆ご注意◆
出典:ハードディスクの読み書きができなくなった(Q&A番号19623)|株式会社アイ・オー・データ機器
検査・修理の過程において、テストデータの書込み(上書き)を行うため、内部データは消去されます。
バックアップが可能な場合は、必ずバックアップを行った上でご依頼ください。
データが必要な場合は、修理に出す前にデータ復旧を検討する必要があります。復旧でデータを取り出したうえで、機器そのものは別途修理・交換する、という順序になる点を押さえておきましょう。
業者に依頼して得られること・得られないこと
専門業者に依頼すると、クリーンルームでの開封や構成解析など、自力では難しい重度の障害にも対応でき、稟議・監査に出せる作業報告書やNDA(秘密保持契約)を整えられる、といった利点があります。一方で、依頼すれば必ず復旧できるわけではありません。DRAJの会員企業への聞き取り調査では、次の結果が示されています。
参考までに、当協会の会員企業への聞き取り調査では、総受付数をもとに復旧できた数と復旧できなかった数を比較したところ、ほとんどの会員企業で概ね6:4または7:3の比率となりました。つまり、会員企業がデータ復旧の依頼を受けたうち、3〜4割はデータ復旧できない結果となっています。
出典:データ復旧サービスのガイドライン(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
費用がかかること、機器を預ける間は業務が止まりうること、機器修理は別工程であることも含め、依頼するかどうかは「そのデータを取り戻す価値」と照らして判断します。次章以降で、費用感や業務停止時間、証跡の確認方法を具体的に見ていきます。
データ復旧サービスの4タイプと自社に合うタイプの見分け方
ここでは、復旧業者を大きく4つのタイプに分けて整理します。自社の機器・規模・重視する条件から、まずどのタイプに相談すべきかを自己同定すると、16社の比較を短時間で絞り込めます。
エンタープライズ・大規模サーバー/RAID/仮想環境に強い型
RAIDを組んだファイルサーバー、業務サーバー、仮想環境(VMware・Hyper-V)、データベースなど、停止させられない本番機の重度障害に対応できるタイプです。クリーンルーム設備、大容量の交換部品在庫、RAID構成の解析力を備え、作業報告書やNDAなど法人の要件にも応えます。官公庁や大手企業の案件を扱う実績があり、他社が対応しきれない案件の受け皿にもなります。
停止できない基幹システムや、構成が複雑なRAID・仮想環境の障害なら、まずこのタイプが候補です。
ハードウェアメーカー・周辺機器由来の型
自社製のNAS・HDD・PCの内部構造に精通したメーカー系の窓口です。購入元と同じ系列に相談でき、保証期間内の軽度な論理障害は無償で対応することもあります。自社ブランドの機器を使っていて、まずメーカーに確認したい場合に向きます。ただし、メーカーによっては実作業を外部の専門会社に委託する分業型もあるため、「メーカー直営=自社ラボ一貫」とは限らない点は後述の各社紹介で確認してください。
中小企業・部門機器〜個人事業主に強い型
部門のファイルサーバー、単体のNAS、外付けHDD、SSD、USB・SDカードといった規模の案件を柔軟にさばくタイプです。無料の初期診断、完全成果報酬、スピード返却など、依頼のしやすさが強みになります。持ち込み拠点が近い、NDAを即日締結できる、といった小回りの良さも、業務停止時間を短くしたい現場に合います。
費用の予見性を優先する型(一律定額・軽度の定価提示)
定額もしくは上限固定の料金体系で、シングルディスクの中〜軽度の障害を安く相談できるタイプです。依頼前に費用が確定するため、予算が先に決まっていて超過を稟議に出せない場合の受け皿になります。ただし、認証の有無や重度障害への対応力は業者によって差があるため、費用の読みやすさと引き換えに何を確認すべきかは、各社紹介と比較表で見極めてください。
自社に合うタイプの見分け方
迷ったときは、次の順で考えると絞り込みやすくなります。まず、障害機器がRAID・サーバー・仮想環境なら、構成解析ができるエンタープライズ型が第一候補です。単体のNAS・HDDで、購入元のメーカーにまず相談したいならメーカー系。部門機器や外付けストレージで、スピードと持ち込みやすさを重視するなら中小・個人向け型。
予算が先に決まっていて費用の上振れを避けたいなら、費用の予見性を優先する型が候補になります。
障害が起きた機器・いまの症状・優先したいことの3問に答えると、16社から候補が絞り込まれます。結果は相談先の出発点で、依頼可否は各社の初期診断と見積りの条件を確認してから判断してください。
タイプの境界にあたる場合もあります。たとえば部門のRAID NASのように、機器はRAIDでも規模は基幹サーバーほどではない、というケースです。この場合は「止まっている業務の重さ」で寄せると判断しやすくなります。全社の業務が止まるならエンタープライズ型、部門内で代替がきくならメーカー系や中小企業向け型でも十分に対応できます。
逆に、機器が単体HDDでも、そこに全社の基幹データしか残っていないなら、構成解析まで対応できる業者に相談するのが安全です。
症状から寄せる方法もあります。異音や認識不良でクリーンルームでの開封が要りそうならエンタープライズ型かメーカー系、リビルド失敗なら構成解析に強いエンタープライズ型、暗号化や内部不正の疑いが絡むならフォレンジック調査まで一社で扱える業者が候補です。
障害内容から相談すべきデータ復旧サービスを診断する
タイプ別に見るデータ復旧サービスおすすめ16選
ここからは、4つのタイプごとに、物理データ復旧を主業とする16社を紹介します。各社の対応機器・料金体系・認証・強みを整理しました。掲載順は優劣ではなく、タイプ内での並びです。
エンタープライズ・大規模サーバー/RAID/仮想環境に強い型
RAID・サーバー・仮想環境など、停止できない本番機の重度障害に対応できる7社です。構成解析力とクリーンルーム設備、法人向けの証跡対応が選定のポイントになります。
1. アドバンスデザインのデータ復旧サービス(アドバンスデザイン株式会社)

1995年に「日本で初めてデータ復旧サービスを開始した」とする老舗で、2017年3月からはバッファローグループ傘下として、バッファロー製品の修理・復旧の技術提供も担っています。パソコン・外付けHDDに加えて企業のRAID/NAS/サーバー、SSD、テープメディア、旧世代のPC-98/9821系まで対応機器の幅が広く、法人向けオンサイト(出張)データ復旧も受託します。
認証はISO27001(登録範囲「データリカバリー、データセキュリティ及び関連事業」、認証番号S143)・ISO9001・プライバシーマークの3認証を保有し、DRAJの常任理事企業でもあります。診断前に元メディアのクローンを作成して原本を保全する運用と、「誇大な復旧率を謳わない」というDRAJ方針に沿って復旧率を数値で公表しない姿勢が特徴です。
料金は成功報酬制で、初期診断は無料。公式の症状別レンジではNAS/サーバー(HDD1本)が33,000円〜(物理66,000円〜)、HDD5本以上の構成は見積対応となっており、稟議に向けた最初の目安が公式ページで読める点も、法人担当者にとって扱いやすい選択肢になります。
2. デジタルデータリカバリー(デジタルデータソリューション株式会社)

累計相談件数は2011年1月からの通算で50万件超と公表されており、累計の相談件数50万件超を公表する物理データ復旧サービスです。HDD・SSDから企業のRAID/NAS/サーバーまで広く扱い、初期診断は完全無料、料金は成果報酬型、受付は24時間365日で、法人向けには出張対応も用意されています。
復旧率は92.6%(2025年9月実績)と公表されており、内訳は完全復旧52.0%・一部復旧40.6%・失敗7.4%まで開示されている点が、「復旧率の読み方」を重視する法人稟議で読みやすく働きます。数値の高さだけでなく、成功と一部復旧を分けて示す姿勢が透明性の裏づけになるからです。
認証はISO27001(JIS Q 27001:2023/ISO/IEC 27001:2022)とプライバシーマークの両方を保有し、依頼時には機密保持誓約書を交わす運用です。ただし料金レンジや作業報告書・削除証明書の様式は公式トップでは明記されていないため、稟議で必要な条件は初期診断時に個別に確認しておくと安心です。
3. エーワンデータ(エーワンデータ株式会社)

源流は1994年に旧・ワイ・イー・データのデータ復旧部門として国内最初期に立ち上がった事業で、2017年1月にエーワンデータ株式会社として独立承継されました。HDD・SSD・PC・メモリカード・USB・サーバー等の記憶媒体を対象に、データ復旧・データ消去・フォレンジック調査を専業で手掛けます。
料金は完全成果報酬型(No Data, No Charge)で、初期診断・調査費用は無料。無料診断時に「復旧できるファイルリスト」を提示し、そのリスト上のファイルが復旧できた場合を成功と定義する運用です。復旧の成否と課金の境界が事前に確定するため、成果報酬型でありがちな「一部復旧の解釈をめぐる後日の齟齬」を防ぎやすくなります。
DRAJの常任理事企業で、ISO27001を取得したデータ復旧専用ラボを運用しています。大手企業・官公庁の取引実績を掲げ、累計85,000件超の実績とあわせて、他社で復旧不能と診断された媒体の再依頼も受け付けています。
4. くまなんピーシーネット(株式会社くまなんピーシーネット)

代表の浦口康也氏がDRAJ会長を務める常任理事企業です。運営会社は熊本市の株式会社くまなんピーシーネット(2002年6月設立)で、HDD・スマートフォン・RAIDサーバー・NAS・SSD・USB・光学メディアと幅広く扱い、司法機関向けのデジタル・フォレンジック調査/証拠保全までカバーする点が独自です。
認証・設備の裏づけも具体的で、プライバシーマーク(認定登録日2006年8月25日)、経済産業省「情報セキュリティサービス基準」適合、クラス100のクリーンルームを保有し、物理障害の開封作業に用います。証拠性が問われる案件を扱ってきた実績から、監査や法的手続きで作業内容を説明する必要のある案件にも対応できます。
料金体系は固定料金型で、見積り提示後は復旧の成否にかかわらず提示価格を支払う仕組みです(成果報酬型ではない点に注意)。固定料金型は「復旧できなければ無料」ではないぶん、成功と不成功それぞれの費用条件と、不成功時にも調査報告書が受け取れるかを見積り時に書面で確認できていれば、費用を先に読める選択肢として成立します。
物理障害・特殊フォーマット・複数メディアの特定データ検索などでは開封解析検査費5,500〜11,000円/台が先行するため、この費用条件もあわせて確認したうえで臨むのが確実です。
5. Ontrack データ復旧(KLDiscovery Ontrack株式会社)

米KLDiscoveryグループのデータ復旧・データ消去・データ管理部門で、ブランド源流のOntrack Inc.は1985年設立、日本法人は2019年設立のKLDiscovery Ontrack株式会社(本社・東京都千代田区)が運営します。
世界22カ国規模の体制と、テープや仮想環境(VMware等)を含む広い機器レンジに対応しており、東京の「OTJ Enterprise DR Lab」がリモート復旧の拠点になっています。
対応の裾野は広く、公式ではApple・Dell・EMC・IBM・Toshiba・Western Digital・SanDisk・VMware・NetApp・QNAPといったストレージ/仮想化ベンダーが列挙されています。
納期は緊急(24時間365日受付・24時間以内着手)/優先(2〜3営業日)/標準(7〜10営業日)の3サービスレベルから選べるため、業務停止時間から逆算した見積依頼がしやすい設計です。
グループ累計の復旧実績として100万件超・120PB超が示される一方、日本語公式ページではISO27001等の認証やDRAJ加盟の明記が確認できません。国内の稟議で認証を必須要件とする場合は、初期問い合わせの段階で日本法人としての適用範囲を確認しておくのが安全です。
6. データサルベージ(株式会社ブレイバー)

株式会社ブレイバーが運営し、自社ラボで復旧作業を完結させる(外部委託しない)方針を掲げる物理データ復旧サービスです。
対応機器はHDD・サーバー・RAID0/1/5/6・NAS(TeraStation/LinkStation/LANDISK/ReadyNAS/Drobo)・SSD・光学メディアに加え、仮想環境(VMware/Hyper-V/VirtualBox/Xen)まで機種名レベルで公開されており、読者が現に使う機器を検索しやすい点が特徴です。
料金は完全成果報酬型で、復旧不可・希望データが見つからない場合は復旧料金を請求しない設計。障害レベルは実機診断後に確定し、軽度(レベル1〜2)は最短3時間で38,000円〜、中度(レベル3〜4)は最短4時間、重度(レベル5〜6)は最短6時間で、いずれも別途見積となります。運営歴は25年以上、累計成功事例は4,600件超と公表されています。
一方で、ISO27001・プライバシーマーク・DRAJ加盟・クリーンルームのクラス、および本社所在地・設立年は公式サイト上に明記がありません。認証や業界団体への加盟状況を稟議で問われる案件では、対応機器や成功事例と別に、これらの条件を初期の見積依頼で書面確認しておく必要があります。
7. 大阪データ復旧(アイフォレンセ日本データ復旧研究所株式会社)

データ復旧とデジタルフォレンジック調査の双方を主力とする専業事業者で、正式社名は「アイフォレンセ日本データ復旧研究所株式会社」、事業所名として「大阪データ復旧」を用います。
運営サイトはdaillo.com(データ復旧の窓口)とaiforense.co.jp(フォレンジック調査の窓口)の2系統ですが同一法人で、代表取締役の下垣内太氏はDRAJ理事・交流委員会委員長を務め、同社は常任理事企業です。
技術面ではRAID0/1/10/5/6のファイルサーバをメーカ不問で受託し、タワー型・ラックマウント型の双方に対応。NAS(LinkStation/LANDISK/TeraStation。QNAPのRAID6・5台構成の法人事例も公開)や、Windows/Mac/Linux/BSDまで自社対応します。
自社クリーンルームでヘッド交換・スピンドルモータ故障まで内製し、重度物理障害を外注しない体制が、法人利用率94.1%・全国80社以上の同業からのエスカレーション指名という数字の裏づけになっています。
認証については、ISO/IEC 27001:2022・ISO 9001:2015・ISO 14001:2015に基づく統合マネジメントシステムをISO/IEC 17050-1に基づく「自己適合宣言」(宣言日2026年2月3日)として公表している点に注意が必要で、第三者認証機関による認証取得ではありません。稟議で第三者認証を必須とする場合は、この違いを踏まえて要件と照らしてください。
料金表はWeb非公開(類似業者による模倣防止が公式の理由)で、物理障害の復旧は基本的に成功報酬制、相談・見積りは無料、事前見積を提示したうえで依頼可否を判断する運用です。復旧と証拠保全(ISO/IEC 27037準拠のプロセス)を一社で扱えるため、消えたデータが内部不正・情報漏洩・訴訟支援と絡む案件で、他社にない選択肢になります。
ハードウェアメーカー・周辺機器由来の型
自社製ストレージの内部構造に精通したメーカー系の3社です。購入元と同じ系列に相談できる安心感がある一方、実作業を外部委託する形態もあるため、その違いも押さえて紹介します。
8. バッファロー正規データ復旧サービス(株式会社バッファロー)

ハードウェアメーカーが受付から復旧作業までを自社受託する直営型のサービスで、外部委託ではなく株式会社バッファロー自身が実作業を担います。対応機器は自社ブランドに限定せず、PC・HDD・SSD・NAS・サーバー・USBメモリ・スマートフォン・SDカードまで「どんなメーカーのどんなメディアでも」対応と明記しています。全国3拠点(東京・名古屋・大阪)体制で、法人向けには掛け払いにも対応します。
料金は一律固定料金の成果報酬型で、初期診断・見積り・キャンセルはいずれも無料、復旧できなければ作業料金は発生しません。緊急対応は通常料金の30%増しの特別料金として明示されており、着手前に費用条件を読み切れる設計です。累計受付は10万件超、うち法人からの受付が4万件超と、法人案件の取扱量を具体的な件数で公表しています。
DRAJ(日本データ復旧協会)会員として協会の行動方針を遵守し、機密保持誓約書と作業完了報告書の発行にも対応するため、稟議・監査で書面証跡が必要な法人案件にも合わせやすくなっています。自社ブランド製品については、保証期間内の軽度な論理障害を無償復旧の対象としています。
9. ロジテックデータ復旧技術センター(ロジテックINAソリューションズ株式会社)

エレコムグループのロジテックINAソリューションズ株式会社が、長野県伊那市の自社施設内で運営するサービスです。PC周辺機器・ストレージメーカーとして蓄積した技術を、外部委託ではなく自社工場内のラボで復旧作業まで一貫して適用する形をとります。
対応機器は自社製に限定せず、HDD・NAS・RAID・SSD・USBメモリ・SDカード・ブルーレイ・DVD・FDD・カスタムPCまで全メーカーを対象としています。
料金は定額制で、簡易・通常・中度・重度の4段階に区分してそれぞれ固定料金を提示、見積り後の追加費用は発生しません(最低30,800円税込〜、重度は別途見積り)。調査・見積り・キャンセルは無料、復旧に失敗した場合の費用も無料です。復旧前に「判定付きファイルリスト」で対象データの復旧可否を確認できるため、費用対効果を判断してから正式発注に進める運用にも合わせられます。
DRAJ(日本データ復旧協会)会員企業として協会の行動方針を踏まえ、官公庁向けには顧客様式での見積書・納品書・請求書の発行にも対応するため、公的機関の調達フォーマットに合わせる必要がある案件にも受付段階から歩み寄れる設計になっています。
10. アイ・オー・データ機器 データ復旧サービス(株式会社アイ・オー・データ機器)

同じメーカー系でも、アイ・オー・データ機器の窓口サービスは実作業を外部の専門会社 AOSデータ株式会社(AOSデータ復旧サービスセンター)に委託する分業型で、メーカー自身は復旧作業を行いません。メーカーは受付窓口と自社製品の無償復旧を担い、有償の高度復旧は約9年にわたり提携する AOSデータ側が実施する構造です。他社製メディアの持ち込み復旧も委託先で受け付けます。
料金は成果報酬型で、相談・初期診断は無料、復旧に失敗した場合の費用も発生しません。単体ドライブは33,000〜132,000円、RAID・NASを含む複数ドライブ構成は88,000〜330,000円で、いずれも障害の重度により変動する4段階の症状区分にもとづいて提示されます。
対応機器はアイ・オー・データ製のLAN DISK(NAS)・RAIDサーバ・内蔵/外付け/ポータブルHDD・SSDを中心に、コンパクトフラッシュ・SDカード・USBメモリまでカバーします。
アイ・オー・データ機器の窓口ページでは、委託先であるAOSデータ側の情報管理体制として、ISMS(ISO/IEC 27001:2022)認証、24時間監視、指紋認証による入退室管理、バーコードによる媒体トレーサビリティが掲示されています。自社ブランドのストレージについては、保証期間内かつ軽度な論理障害を無償復旧の対象としています。
中小企業・部門機器〜個人事業主に強い型
部門機器や単体ストレージを、スピードと依頼しやすさで支える4社です。無料診断・成果報酬・持ち込み即応・NDA即日など、現場が動きやすい条件が強みになります。
11. データレスキューセンター(株式会社アラジン)

株式会社アラジンが運営し、日本データ復旧協会(DRAJ)の常任理事企業の一社です。PC・外付けHDD・SSDからNAS・RAID、SDカード・USBメモリまで幅広い媒体を扱い、論理障害・物理障害の双方に対応します。
料金は媒体と障害レベルの4段階で定額化されており、PC/HDD/SSDならレベル1が19,800〜34,800円、レベル4でも98,000〜298,000円と上限料金まで公表されているため、費用の天井を先に稟議へ載せられる数少ないタイプです(大容量媒体・RAID・他社開封済み品は上限対象外)。プライバシーマークとISO27001を取得済みで、機密データを扱う法人でも社内審査を通しやすい構成です。
初期調査は無料で、復旧可能なファイルのリストと見積もりを確認してから作業可否を判断でき、通常2営業日以内・最短6時間で初期報告が返ります。当日返却のスーパーエクスプレス(+40%)や翌日返却のエクスプレス(+20%)も選択でき、累計15万件超の受付実績を公表しています。
12. LIVEDATA(株式会社LIVEDATA)

秋葉原駅徒歩1分の自社ラボで、HDD・NAS・サーバー・USBメモリなどの物理/論理障害に対応するデータ復旧サービスです。運営は2006年設立の株式会社LIVEDATAで、復旧作業を外部へ委託せず全工程を自社で完結する体制を公式に明記しています。
情報管理面ではプライバシーマーク(2019年2月取得)とISO27001(2009年3月取得)を保有し、NDAは即日締結に対応します。料金は成果報酬制で、希望データが開ける状態で納品された場合のみ課金され、復旧できなければ無料返却。最低29,700円〜、HDDは容量を問わず66,000円〜で、相談・診断・見積もりまでは無料です。
持ち込み拠点が都心にあるため、機器を宅配便で送らずに現地で預けて即着手できます。平均作業時間は13.84時間で、翌日には復旧データが使える状態で戻ることを訴求しており、業務停止時間を最小化したい部門利用や個人事業主が入り口を選びやすい設計です。
13. AOSデータ復旧サービスセンター(AOSデータ株式会社)

データ復旧ソフト「ファイナルデータ」を長年展開してきたAOSデータ株式会社が運営する、「DATA119」ブランドの復旧サービスです。外付けHDD・SSD・PCに加え、サーバー・RAID・NAS・USBメモリ・SDカード・ビデオカメラ・スマートフォンまで幅広い媒体の論理/物理障害を対象とします。
料金は障害の重度別に軽度63,800円/中度107,800円/重度195,800円の定額で提示され、成果報酬方式のため復旧できなければ請求されません。相談・調査・見積もりまで無料で、依頼前に費用の目安を稟議に載せやすい構造です。
NEC・Lenovo・VAIO・エプソン・KDDIとの正規業務提携を掲げ、警察・検察向けの法廷提出用復旧にも対応します。アイ・オー・データ機器のメーカー窓口が受けた案件の実作業もAOSデータが引き受ける分業関係にあるため、メーカー経由で相談したつもりの読者が実質的に本サービスへ合流するケースがある点も押さえておくと選択しやすくなります。
14. 特急データ復旧ウィンゲット(株式会社ウィンゲット)

サーバー・RAID・NAS・外付けHDD・PCなど法人機器の復旧を、札幌・秋葉原・名古屋・大阪・福岡の5拠点と全国47都道府県の提携網でカバーするデータ復旧サービスです。運営は株式会社ウィンゲットで、機器を社外に出せない案件では出張サポートによる現地対応も選べます。
料金はプラン・機器・障害の程度で査定する従量型で、公式ページの価格帯はおおむね20,000〜98,000円超。完全成果報酬制で、復旧できなければ費用は発生せず、初期診断も無料です。「最短60分〜」のスピード対応と、データ保護セットプランや復旧のみのプラン、出張サポートといった複数の入り口が用意されています。
プライバシーマークの取得、NDAの締結、作業報告書の提供にも公式で言及しており、稟議や監査で証跡が求められる読者の一次候補になり得ます。ただし料金は診断後に確定する従量型のため、費用の天井を先に固定したい場合は定額型と並べて見積もりを取るのが実務的です。
費用の予見性を優先する型(一律定額・軽度の定価提示)
依頼前に費用が読める料金設計で、一般的な障害を安く相談できる2社です。認証や重度障害への対応力とのバランスも含めて紹介します。
15. PCエコサービス(株式会社AnswerMakeSolutions)

「機器・容量・障害の別を問わない一律定額」を打ち出すデータ復旧サービスです。運営元は東京拠点の株式会社AnswerMakeSolutionsで、対応機器はHDD・SSD・パソコン・SDカード・USBメモリのほか、法人利用が多いRAIDやNASも含みます。物理障害・論理障害のいずれにも対応します。
料金はストレージ1台につき39,800円(税込43,780円)の定額で、依頼前に費用が確定します。完全成果報酬で、初期診断・検査は無料です。作業前に復旧可能なファイルリストが提示され、最短3営業日で復旧、累計依頼実績は50,000件を突破したと公表しています。他社で10万〜40万円の見積りが出た案件も同じ定額で受けると訴求しています。
設備面ではデータ復旧装置PC-3000を常時30台以上備え、入退室管理・監視体制の下で機器を扱うと説明しています。一方、Pマーク・ISO27001・DRAJ加盟の公式記載は確認できないため、認証や業界団体加盟を稟議・監査で必須要件にする場合は、情報管理体制や作業報告書の様式を事前に書面で確認しておくのが確実です。
16. DATAOK(SOOHO Co., Ltd.)

「データ復旧研究センター DATAOK」の名称でSOOHO Co., Ltd.が運営するデータ復旧サービスです。障害内容と作業難易度に応じて査定する従量型の成功報酬制で、軽度の論理障害を低価格帯から受けられる点が特徴です。HDD・SSDに加え、NAS・サーバー・RAID・データベース・仮想サーバー・光学メディアまで対応機器が幅広く揃っています。
公式の料金ページでは、HDD・SSDの軽度論理障害が10,800〜48,000円、NAS(1台構成)が60,000〜128,000円のレンジで提示されています。初期診断は無料で、障害内容・復旧可能性・見積りまでを費用ゼロで確認でき、正式発注は結果を見てから判断できます。24時間以内に着手する超特急オプションは通常料金の1.5倍です。
セキュリティ面ではISO27001の記載があり、クリーンルームを完備しています。加盟団体としてはIDEMA(International Disk Drive Equipment and Materials Association)を明示する一方、Pマーク・DRAJ加盟・累計件数・復旧率の公式記載は確認できません。
定額ではなく従量査定のため、料金の上振れを避けたい場合は、見積り時にどの査定要素で金額が動くかを確認しておくと判断しやすくなります。
【比較表】DRAJ加盟・認証・料金体系・対応機器で16業者を横並びで見る
タイプ別の紹介で候補が絞れたら、ここで16社を横並びに比較します。DRAJ加盟状況、セキュリティ認証(Pマーク・ISO27001)、料金体系(完全成果報酬・定額・上限の有無)、初期診断の費用、対応機器、オンサイト対応、作業報告書の発行可否、初回対応スピードを一覧にしました。各列の読み方は、この後の料金相場・選び方・法人サーバーの各章で詳しく解説します。
表の「公式に記載なし」は、非対応という意味ではなく、公式サイト上で確認できなかったことを示します。作業報告書やNDAのように、法人案件では問い合わせ時に個別対応する業者が多い項目ほど、公式ページに載っていないことがあります。稟議で必須の条件がある場合は、この欄を候補を外す理由にするのではなく、初回の問い合わせで確認する項目のリストとして使ってください。
具体的には、書面(作業報告書・削除証明書・NDA)の発行可否と様式、成功と不成功それぞれの費用、機器の返却時期の3点を、最初の電話で揃えて聞くと比較が進みます。
| サービス名 | アドバンスデザイン | デジタルデータリカバリー | エーワンデータ | くまなんピーシーネット | Ontrack データ復旧 | データサルベージ | 大阪データ復旧 | バッファロー正規データ復旧サービス | ロジテックデータ復旧技術センター | アイ・オー・データ機器 | データレスキューセンター | LIVEDATA | AOSデータ復旧サービスセンター | 特急データ復旧ウィンゲット | PCエコサービス | DATAOK |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| DRAJ加盟区分 | 常任理事 | 公式に記載なし | 常任理事 | 常任理事 (代表がDRAJ会長) | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 常任理事 | 会員 | 会員 | 公式に記載なし | 常任理事 | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし (加盟団体の記載はIDEMA) |
| セキュリティ認証 | ISO27001(S143) Pマーク ISO9001 | ISO27001 Pマーク | ISO27001 (Pマークは公式に記載なし) | Pマーク 情報セキュリティサービス基準適合 クラス100クリーンルーム | 公式に記載なし (日本語公式で確認できず) | 公式に記載なし (クリーンルームのクラスも未記載) | ISO27001・9001・14001は 自己適合宣言(2026年2月3日) 第三者認証ではない (Pマークは公式に記載なし) | 公式に記載なし (Pマーク・ISO27001・クリーンルームとも未記載) | 公式に記載なし (ISMSはグループ側の言及のみ) | 委託先AOSがISMS (ISO/IEC 27001:2022)認証を掲示 | ISO27001 Pマーク | ISO27001 Pマーク | AOS公式では確認できず (委託元IOデータの窓口 ページでISMS掲示に言及) | Pマーク (登録番号は公式に記載なし) | 公式に記載なし (Pマーク・ISO27001とも未記載) | ISO27001 クリーンルーム完備 (Pマークは公式に記載なし) |
| 料金体系 | 成果報酬 NAS/サーバー(HDD1本)33,000円〜 物理66,000円〜 | 成果報酬 (金額レンジは公式に記載なし・要見積り) | 完全成果報酬 (No Data, No Charge) | 固定料金 (成果報酬ではない。見積り提示後は成否にかかわらず提示価格) | 公式に記載なし (要見積り) | 完全成果報酬 軽度38,000円〜/中度・重度は要見積り | 成果報酬(物理障害) 料金表はWeb非公開・個別見積り(見積り無料) | 一律固定料金+成果報酬 (緊急対応は30%増) | 定額制(難易度4段階) 最低30,800円/重度は要見積り・追加費用なし | 成果報酬 単体ドライブ33,000〜132,000円 RAID/NAS等88,000〜330,000円 | 定額制・上限料金まで明示 PC/HDD/SSD 19,800〜298,000円 (RAID・大容量媒体は上限対象外) | 成果報酬 最低29,700円〜/HDD 66,000円〜(容量不問) | 重度別の定額+成果報酬 軽度63,800円/中度107,800円/重度195,800円 | 完全成果報酬 プラン従量(公式の価格帯20,000〜98,000円超) | 一律定額+完全成果報酬 ストレージ1台39,800円(税込43,780円) | 成果報酬・従量査定(定額ではない) HDD/SSD軽度10,800〜48,000円 NAS(1台構成)60,000〜128,000円 |
| 初期診断 | 無料 (スマホ・タブレットは55,000円) | 無料 | 無料 復旧できるファイルリストを提示 | 無料 (物理障害等は開封解析検査費5,500〜11,000円/台) | 無料 (問い合わせ・見積り) | 無料 | 無料 (相談・見積り) | 無料 (見積り・キャンセルも無料) | 無料 (特定データ探索・被災媒体は有償) | 無料 | 無料 復旧可能データリストと見積りを提示 | 無料 | 無料 (相談・調査・見積り) | 無料 | 無料 (検査費も無料) | 無料 (見積りまで無料) |
| 対応機器 | HDD/SSD・NAS/RAID・サーバー テープ・旧世代メディアも対応 (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID・サーバー (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・サーバー メモリカード・USB (NAS/RAID・仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS・RAIDサーバー スマホ・光学メディア (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID・サーバー 仮想環境(VMware等)・テープ | HDD/SSD・NAS/RAID・サーバー 仮想環境(VMware/Hyper-V/VirtualBox/Xen) | HDD/SSD・NAS・RAIDサーバー(0/1/10/5/6) (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS・サーバー 全メーカーのメディアに対応 (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID 全メーカーのメディアに対応 (サーバー・仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・LAN DISK(NAS)・RAIDサーバ (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID (サーバー・仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID・サーバー (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID・サーバー (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID・サーバー (仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID (サーバー・仮想環境は公式に記載なし) | HDD/SSD・NAS/RAID・サーバー データベース・仮想サーバー |
| オンサイト対応 | ●法人向け出張復旧 | ●法人限定の出張対応 | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし (リモート復旧に対応) | 公式に記載なし | 公式に記載なし | ●法人・官公庁向け | 公式に記載なし | 公式に記載なし (社外持ち出し不可データはリモート対応) | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | ●出張サポート(全国5拠点+47都道府県の提携網) | 公式に記載なし | 公式に記載なし |
| 作業報告書 | 公式に記載なし | 公式に記載なし (機密保持誓約書は締結) | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | ●復旧過程の書面開示に対応(NDA締結可) | ●作業完了報告書・機密保持誓約書を発行 | 公式に記載なし (官公庁向けに顧客様式の見積書・納品書・請求書を発行) | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし (NDAは即日締結) | 公式に記載なし | ●作業報告書・NDAに公式で言及 | 公式に記載なし (復旧データリストは作業前に提示) | 公式に記載なし |
| 初回対応スピード | 公式に記載なし | 24時間365日受付 | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 緊急は24時間以内に着手 (優先2〜3営業日/標準7〜10営業日) | 軽度は最短3時間 (中度4時間/重度6時間) | 最短即日 (平均は数日〜2週間) | 公式に記載なし (緊急対応は特別料金で受付) | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 初期調査を通常2営業日以内 (最短6時間)に報告 | 平均作業時間13.84時間 | 公式に記載なし | 最短60分〜 | 最短3営業日 | 超特急は24時間以内に着手 (通常料金の1.5倍) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
各社公式サイトの記載(2026年8月20日時点)にもとづき作成。DRAJは一般社団法人日本データ復旧協会。「公式に記載なし」は非対応を意味するものではなく、公式情報では確認できなかった項目です。料金・条件は改定されることがあるため、依頼前に各社へご確認ください。
データ復旧の料金相場と料金体系
ここでは、稟議に載せる金額感を掴めるよう、症状や機器による費用の目安と、料金体系の見方を整理します。あらかじめ押さえておきたいのは、データ復旧には業界横断の統一料金が存在しないという点です。DRAJも次のように述べています。
簡単な作業で復旧できる記憶装置から大規模複雑なRAIDのようなものまでデータ復旧サービスの対象は多様にあります。そのため、作業料の統一的な料金の設定は困難なのが実情です。
出典:データ復旧サービスのガイドライン(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
以下の目安は、本記事の掲載16社が公表している料金をもとにした水準で、公的な統計値ではありません。実際の費用は障害の状態を診断したうえでの見積もりで確定します。
障害重度別(軽度・中度・重度)の料金レンジ
費用は障害の重さでおおよそ3段階に分かれます。軽度の論理障害は、掲載各社でも1万円台〜数万円台から相談できます(例:DATAOKはHDD/SSDの軽度論理障害で10,800円〜、データレスキューセンターはPC/HDD/SSDのレベル1で19,800円〜)。
中度〜重度になると数万円〜数十万円に上がり、AOSデータ復旧サービスセンターは重度別に軽度63,800円/中度107,800円/重度195,800円と定額提示しています。RAIDやサーバーなど構成が複雑な重度物理障害では、数十万円規模になることもあります。
機器別(HDD・SSD・NAS・RAID・サーバー・USB・SD)の料金の目安
機器の種類によっても費用感は変わります。単体のHDD・SSDは比較的抑えられ、NAS・RAID・サーバーは台数と構成解析の手間の分だけ高くなります。たとえばアイ・オー・データ機器の窓口では、単体ドライブが33,000〜132,000円、RAID/NASを含む複数ドライブ構成が88,000〜330,000円と案内されています。
USBメモリやSDカードは、軽度の論理障害であれば数千円台から相談できることがあり、物理的な破損では数万円台に上がります。予算を先に固定したい場合は、PCエコサービスのように物理・論理や容量を問わず一律39,800円(税込43,780円)とする定額型もあります。自社の機器がどの区分にあたるかを確認し、見積もりを取って確定させてください。
完全成果報酬制と定額料金制の違い
料金体系は、大きく完全成果報酬制と定額(上限)制に分かれます。完全成果報酬制は「復旧できなければ費用が発生しない」点が安心ですが、トレードオフもあります。5団体合同のチェックシートは次のように指摘しています。
完全成功報酬制の場合、復旧できなければ無料で終わるメリットがある反面、調査報告書が得られないデメリットもあります。復旧できる前提だけで契約を進めないように注意しましょう。
出典:データ被害時のベンダー選定チェックシート Ver.1.0(2022年12月16日)|日本データ復旧協会ほか合同編集
復旧できなかった場合でも「なぜ復旧できなかったか」の調査報告が稟議・監査で必要なら、報告書の提供有無を事前に確認しておく必要があります。一方の定額・上限制は、費用の天井が読めるため、予算を固定して稟議を通したい場合に向きます。どちらが良いかは、復旧の緊急度と、社内で求められる証跡の要件で選び分けます。
初期診断料と追加費用
費用は診断と作業で名目が分かれます。DRAJは、復旧の可否を見極める費用を「診断料」「調査料」「検査料」など、データを復元する費用を「作業料金」「復旧料金」などと呼ぶのが一般的だと説明しています。多くの業者は無料または有料の診断でデータリストと見積もりを提示し、利用者が同意して正式発注する流れです。
名目は業者ごとに異なるため、見積書では名目ではなく「どの場合にいくらかかるか」を確認してください。特急対応・返送料・復旧データの保存用メディア代・出張費などが別途かかることもあるため、総額で比較するのが確実です。
なぜ業者ごとに料金が違うのか
前述のとおり、対象となる機器と障害の幅が広く、DRAJも作業料の統一的な設定は困難だとしています。同じ「HDD復旧」でも、論理障害か物理障害か、容量やデータ量、RAID構成の複雑さ、クリーンルームでの作業が必要かによって手間が変わるため、料金に差が出ます。だからこそ、複数社に同じ条件で見積もりを取り、名目ではなく総額と条件で比較することが重要になります。
法人がデータ復旧業者を選ぶ際に確認する6つのポイント
タイプと比較表で候補を絞ったあとに、稟議に耐える形で1社を選ぶための6つの観点を、それぞれ「なぜ効くか」「どう判断するか」の順で整理します。表面的なチェックリストではなく、業者に確認すべき内容を具体化するのが目的です。
見積もりの取り方と費用条件(上限・復旧不可時/一部復旧時の扱い)はどうか
料金体系は業者ごとに異なるため、契約前に費用条件を書面で確認します。特に確認したいのは、成功と不成功の場合分けです。
DRAJは、費用負担を事前に明確にするためのチェックリストとして「RDRSP:2022 基準」(適正なデータ復旧の基準と価格を意味する略称)を示しており、事業者が診断料・作業費のそれぞれについて、成功時と不成功時にどちらがいくら負担するかを口頭で明確に説明することを求めています。この基準に沿った説明を求める、という形で業者に確認できます。
この場合分けが曖昧なまま作業に入ると、復旧できなかった場合の請求で認識のずれが生じます。
上限料金の有無、一部だけ復旧できた場合の扱い、返送料や追加費用の発生条件も、見積書の中で必ず確認してください。
復旧実績と復旧率の見方は正しいか
「累計◯万件」「業界No.1」といった数値は、そのまま技術力を示すわけではありません。DRAJは、事業者側の対応幅と技術力を次のように定義しています。
㋐ 対応力:論理的障害や物理的障害など、お客様のデータや電磁的記録媒体の種別に応じてそれぞれデータ復旧に対処できる事業者側の対応幅を指す。受付の件数ではない。
出典:データ復旧サービスのガイドライン(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
㋑ 達成力:お客様のデータや電磁的記録媒体に起こった論理的障害や物理的障害の難易度に応じた事業者側の技術力を指す。実績の件数ではない。
受付の件数は対応幅を、実績の件数は技術力を、それぞれ直接には表さない、というのが業界団体の考え方です。自社の障害と同じ種類・難易度の案件を扱った実績があるか、その内訳が公開されているかを確認するほうが、実態に近い判断ができます。復旧率については、次章で改めて読み方を説明します。
技術力(クリーンルーム・交換部品在庫・RAID構成解析)は要件を満たすか
物理障害の復旧では、クリーンルームでHDDを開封し、ヘッドや基板を交換して読み出す作業が発生します。クリーンルームの清浄度は日本産業規格(JIS B 9920-1)で分類され、業者によって「クラス100」などの表記が用いられます。RAIDやサーバーの障害では、レベル・ストライプサイズ・HDD順序を復元する構成解析の技術力が要求されます。
自社の障害に必要な技術水準を、業者の実績と設備で満たせるかを見極めてください。
初期診断のスピードと復旧までの目安はどれくらいか
本番機の障害では、業務停止時間が費用よりも大きな損失になることがあります。初期診断が何時間以内に始まるか、診断結果と見積もりが何営業日以内に出るか、緊急対応(当日・翌日)が可能か、持ち込みと配送のどちらが速いか、を確認します。オンサイト(出張)対応が可能な業者なら、機器を社外に出さずに済むため、機密性の高いデータでも扱いやすくなります。
セキュリティ認証(Pマーク・ISO27001・NDA・入退室管理)は稟議要件を満たすか
機器を業者に預けることは、業務データや個人情報を外部に持ち出すことを意味します。プライバシーマークは、JIPDECが「個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等」に付与する認証で、対象は法人単位、有効期間は2年です。
ISO/IEC 27001(JIS Q 27001)は情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の要求事項を定めた規格で、認証を受ける組織は「適用宣言書」で対象範囲を明示します。取得の事実だけでなく、認証の適用範囲が復旧作業を行う拠点・部門を含んでいるかを確認するのが実務的です。
加えて、ISO27001の第三者認証と、供給者自身が規格適合を宣言する「自己適合宣言」(ISO/IEC 17050-1 / JIS Q 17050-1)は、別の枠組みです。日本適合性認定協会(JAB)は、認証を「製品、プロセス、システム又は要員が特定の規格の要求事項に適合していることを第三者が審査し、証明すること」と説明しています。
業者の表記が第三者認証か自己適合宣言かを見分け、稟議・監査で必要な要件(第三者認証を必須とするか)と照らしてください。NDA(秘密保持契約)の締結時期・条件、預けた機器の入退室管理・アクセス制御も、あわせて確認する項目です。
DRAJ(日本データ復旧協会)加盟状況の意味と読み方はどうか
DRAJは、安心してデータ復旧サービスを利用できる環境の整備と業界の健全な発展を目的に、2009年に設立された業界団体です。会則上、会員区分は「正会員」「賛助会員」「特別賛助会員」の3種で、そのうち理事・常任理事は正会員の代表者から選ばれる役員です。協会サイトの会員一覧では「常任理事企業/理事企業/正会員企業/賛助会員企業/特別賛助会員企業」の見出しで各社が掲示されています。
ただし、加盟や区分そのものが品質を保証するわけではありません。協会は会員一覧に次のように明記しています。
※各会員が取り扱う製品やサービスについては、当協会で評価もしくは承認したものではありません。
出典:会員企業の紹介|一般社団法人日本データ復旧協会
また、常任理事は会則上「本会の設立に携わった理事の中から選定する」と定められており、設立母体の企業に位置づけられる枠です。技術力の格付けとは別軸である点も踏まえたうえで、加盟状況は「業界団体のガイドラインへの遵守姿勢がある」ことのサインとして読み、実際の技術・料金・証跡は個別に確認するのが実務的な使い方になります。本記事の掲載16社には、常任理事5社をすべて含めています。
法人サーバー・NAS・RAID・仮想環境の復旧で確認すべきこと
本番機の障害では、費用や時間だけでなく、法務・情報管理・監査対応まで踏み込んで業者を選ぶことになります。ここでは、中堅・中小企業の情シスが上長・監査に説明できる形で復旧要件を詰めるための確認ポイントを整理します。
RAID構成解析とリビルド失敗への対応
RAIDの復旧では、レベル(RAID5・RAID6・RAID10など)・HDD順序・ストライプサイズを正しく復元する構成解析が要になります。NECもサーバーの構成ガイドで、リビルド中のリスクを次のように注意喚起しています。
大容量ドライブにてRAIDを構築する場合、障害復旧時に長時間のリビルドが必要です。その間冗長性が失われますので、より信頼性を高めるためにもドライブ2台の障害に対応するRAID 6あるいはRAID 60でのご利用を推奨します。
出典:Express5800/T110k-M システム構成ガイド(2024年4月 第10版)|日本電気株式会社
リビルド中は冗長性が失われた状態になるという事実を踏まえると、失敗したリビルドを繰り返すことは冗長性のない状態で書き込み負荷を重ねることになり、二重障害のリスクを高めます。リビルドが1度失敗した時点で、追加のリビルドや抜き差しを止め、構成情報(RAIDレベル・HDD順序・スロット番号)を控えて業者に構成解析を依頼するのが安全です。
あわせて、ドライブ2台の障害に耐えるRAID 6・RAID 60への構成変更は、復旧を終えたあとの再発防止策として検討する価値があります。
サーバーOS・仮想環境・データベースへの対応
Windows Server・Linux・VMware・Hyper-V・Xen、そしてSQL Server・OracleといったデータベースはRAIDの上に載る構成が多く、下層のストレージ障害と上層のファイルシステム・DBの整合性の両方を扱える技術力が問われます。
仮想環境の仮想ディスクファイル(VMDK・VHDXなど)や、データベースのトランザクションログを含む復旧には、専用の解析ツールと経験が必要です。業者選定では、自社の環境と同じOS・仮想化基盤・DBの復旧実績があるかを確認してください。
オンサイト対応と持ち帰り対応の使い分け
機器を社外に持ち出せない案件では、業者の技術者が現地に来て作業するオンサイト対応が選択肢になります。持ち出し承認の手続きが煩雑な官公庁案件や、機密データを含む本番機で有効です。一方、クリーンルームでの分解が必要な重度物理障害は、機器を業者の拠点に預ける持ち帰り対応が基本になります。
どちらを選ぶかは、機器を持ち出す際の社内手続き(持ち出し承認・預かり証・輸送方法)と、業者側のクリーンルーム設備の有無で判断します。
作業報告書・削除証明書・返却証明と、稟議・監査に出せる証跡
法人案件では、復旧作業そのものだけでなく、作業内容の書面での証跡が求められます。個人情報保護委員会のガイドライン別添は、機器・電子媒体の廃棄について次のように定めています。
個人データを削除し又は個人データが記録された機器、電子媒体等を廃棄する場合は、復元不可能な手段で行わなければならない。また、個人データを削除した場合、又は、個人データが記録された機器、電子媒体等を廃棄した場合には、削除又は廃棄した記録を保存することや、それらの作業を委託する場合には、委託先が確実に削除又は廃棄したことについて証明書等により確認することも重要である。
出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)別添(令和8年6月一部改正)|個人情報保護委員会
この記述は、機器・データの廃棄・削除を外部に委託する場面の話ですが、復旧業者が作業のために自社設備へ複製した個人データを作業後に消去する状況にも、同じ考え方が実質的にあてはまります。業者選定の段階で、依頼から返却までに発行される書面——作業報告書(何をどう作業したか)、削除証明書(作業用データを消去した記録)、機器返却証明——の様式と、稟議・監査で使える程度の記載内容を、事前に確認してください。
NDA・委託契約と、機器を社外に出す際の手当て
復旧作業では、個人データを含む機器を業者が実際に取り扱うのが通常のため、外部への委託にあたる可能性が高くなります。個人情報保護法第25条は「個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。」と定めています。
個人情報保護委員会のQ&A(Q7-55)も、保守サービス事業者が個人データを取り扱う場合は法25条の監督が必要になるとしています。
実務では、NDA・委託契約・アクセス制御の取り決めを業者と結び、依頼の前に法務でチェックします。5団体合同のチェックシートは、法務が確認する具体的な観点として次のような項目を挙げています。
不利な項目としては、例えば、支払時期が対象機器の返却前か後か、支払う費用に齟齬が生じた場合に、対象機器の返却がされるかどうか、調査項目や作業経緯の提出の有無、復旧できなかった場合の原因提出の有無、対象機器の破損に関する責任の有無、追加費用の有無などが考えられます。
出典:データ被害時のベンダー選定チェックシート Ver.1.0(2022年12月16日)|日本データ復旧協会ほか合同編集
加えて、機器を業者に送る前に返却方法とタイミングを合意しておくと、費用の齟齬が生じた際に機器が戻らないといった事態を避けられます。オンサイト対応を選ぶ場合も、入退室記録や作業ログの残し方を含めて手順を決めておくのが安全です。
悪質業者を避けるためのチェックポイントと失敗事例
データ復旧サービスは、被害直後の心理的な焦りにつけこまれやすい業界でもあります。DRAJもガイドラインで、消費者トラブルにつながりやすい表記や営業手法への注意を呼びかけています。ここでは、契約前に避けたい「読み方の罠」と、複数社見積もりの実効的な価値をまとめます。
「復旧率100%」表記の読み方
DRAJは、「データ復旧率」という数字の使い方について次の方針を掲げています。
事業者は、
出典:データ復旧サービスのガイドライン(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
・「データ復旧率」という用語を営業活動に用いないことを推奨する。
・合理的な根拠とその説明のない、高い数値の「データ復旧率〇〇%」の表記はお客様を不当に誘引するおそれがあるため使用は控え、WEBサイト等での宣伝広告に表示しない。
・お客様のなかには、復旧できない障害が潜在的に3〜4割程度は存在するため、こうした復旧できない障害を除いた数値の実績表示や説明はお客様を誤解させるおそれがあるので、復旧できない障害を実績から除かない。
・データ復旧がうまく行かなかったにもかかわらず、診断料その他の名目で(作業の目的・複雑さ・手間・難度等を総合して)不均衡に多額な費用をお客様に請求できる内容の契約はしない。
・「RDRSP:2022 基準」を活用する。
加えて、復旧率の計算式そのものが業界内で統一されていないという指摘もあります。5団体合同のチェックシートは「データ復旧率の定義は各社バラバラです。データ復旧率については定まった基準がないため、復旧率だけを鵜呑みにしないように気をつけましょう。」と述べています。「復旧率99%」「業界No.1」といった数値は、そのまま比較の物差しに使うと判断を誤ります。
数値ではなく、自社と同種の障害での復旧事例や、成功と不成功の定義の説明で読むほうが実態に近づきます。
「診断無料」の裏側にある正当な費用と不当な請求の見分け方
「初期診断無料」は多くの業者が掲げていますが、正当な追加費用(特急対応・返送料・復旧データの保存メディア代・出張費)と、不当な請求は分けて考える必要があります。DRAJが受けている苦情相談のなかには、次のような類型が含まれています。
「診断料」などの名目で、実質的には単なる着手金に過ぎず、お客様からデバイス(ないし記憶媒体)を事業者が受け取っただけで(あるいは作業に着手したと言い分けされて)高額な診断料を請求される。
出典:データ復旧サービスのガイドライン(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
正当な追加費用は見積書に条件と金額が明示され、依頼者の同意を経て発注する流れになります。診断や作業に着手した実質がないのに費用を請求する、見積もりの提示前に費用が発生している、費用の齟齬が生じたときに機器が返却されない、といった契約は避けます。前章で触れた「RDRSP:2022 基準」に沿って、成功時と不成功時の費用負担を書面で場合分けしてもらうのが有効な予防策です。
セキュリティ不備による情報漏えい
機器を業者に預けるということは、業務データ・個人情報を一時的に社外に置くことを意味します。認証を保有していない業者、入退室管理や作業ログの取り扱いを開示できない業者、NDAの締結を拒む業者は、機密性の高いデータの復旧には向きません。前章のPマーク・ISO27001の読み方(適用範囲・第三者認証と自己適合宣言の区別)を思い出しながら、業者の情報管理体制を確認してください。
レスキュー商法の典型パターン
DRAJは、緊急事態につけこむ悪質な勧誘を「レスキュー商法」と呼び、データ復旧でも同種の被害が確認されているとして手口を類型化しています。
一刻も早くデータ復旧したい心理につけ込み、問い合わせたユーザーに対し急かすような言葉や、該当するか判らない実績や可能性で言葉巧みに勧誘する手口で、復旧結果に関わらず高額な契約を促す行為が該当します。
出典:データ復旧サービスのトラブルにあわれた方(レスキュー商法にご注意ください)|一般社団法人日本データ復旧協会
協会が挙げる手口には、次のような類型があります。契約前に同じ言い回しが出てきたら、一度立ち止まって複数社の見積もりを取ってください。
- 焦りにつけこむ勧誘:「早くしないと障害が悪化していく、今すぐしないと次が無い」「今なら装置やエンジニアに空きがあるのですぐ対応できる」「その障害はうちしか対応できない、他では復旧できない」
- キャンセル・作業中止に応じない:「既に作業が進んでいるので止められない」「診断をやめるともう二度と作業ができなくなる」「キャンセルは可能だが費用は全額払ってもらう」
- サイバー攻撃の混乱に乗じた勧誘:ランサムウェア感染被害で報道発表後に営業電話をかけてくる、あらゆる暗号化状態でも復号の可能性をほのめかす説明をしてくる
協会には実際の相談も寄せられています。ある法人の事例では、「データ復旧は時間勝負であり、今すぐ対応しないと悪化する可能性がある」「業界最大手の当社で対応できなければ他社では難しい」「一つも復旧できなかった場合は成果報酬0円なので安心してください」といった説明を受け、緊急性の高い業務データだったため他社比較を十分に行えないまま契約したものの、実際には約半分しか復旧できなかったと報告されています。
共通するのは、比較検討の時間を奪う点です。次のとおり、機器の状態を保全できていれば、比較の時間は取れます。
「今すぐ依頼しないと悪化する」を鵜呑みにしないための予備知識
被害直後の焦りにつけこんで「今すぐ契約しないと悪化する」と急がせる営業には注意が必要です。5団体合同のチェックシートは、電源を落として機器を取り外している状態なら、時間の経過だけでは復旧の難易度は基本的に変わらないと述べています。
HDDやSSDをパソコン等から取り外している、または電源を落としているのであれば、一般的には数か月程度は時間が経過しても復旧の難易度は変わらないと考えられます。
出典:データ被害時のベンダー選定チェックシート Ver.1.0(2022年12月16日)|日本データ復旧協会ほか合同編集
「時間経過で復旧できなくなる」と急かされたら、複数社に見積もりを取る時間を確保するのが安全です。もちろん、業務停止が続くこと自体は損失になるため、緊急対応の可否は現実的な判断材料として押さえますが、契約そのものの判断は焦らないほうが結果的にコストを抑えられます。
複数社に見積もりを取ることの実効的な価値
データ復旧の料金は業者ごとに幅があり、料金体系も成果報酬・定額・上限型で異なります。複数社に同じ条件で見積もりを依頼すると、費用の妥当な水準感が掴めるだけでなく、成功・不成功の定義や、追加費用の条件、機器返却のタイミングといった契約条件の違いも見えます。1社の説明だけを聞くよりも、稟議に出す情報の質が上がり、悪質な契約の兆候にも気づきやすくなります。
データ復旧を依頼してから完了するまでの流れ
初めて依頼する場合の全体像を掴んでおくと、業者への相談で確認すべきことが明確になります。おおよその流れは次のようになります。

問い合わせ・受付
電話・メール・Webフォームから、障害の状況(機器・症状・発生時刻・これまでに試した操作)を伝えます。緊急対応の受付時間、初期診断までのリードタイム、機器の持ち込みか配送かなど、依頼から作業までの流れを最初に確認します。
初期診断(無料・有料の切り分け)
機器を受け取った業者が、障害の程度と復旧の可否を診断します。DRAJは、診断料の名目や有償・無償の扱いが業者ごとに異なることを踏まえ、費用の場合分けを事前に明確化することを推奨しています。物理障害の疑いがある場合、簡易診断は無料でも、開封を伴う詳細診断が有償になるケースがあります。診断が終わると、復旧可能なファイルリストと見積もりが提示されます。
見積もり・料金合意
提示された見積もりと復旧可能なデータリストを確認し、正式に発注するかを判断します。成功時と不成功時の費用、追加費用の条件、支払時期と機器返却のタイミングをこの段階で書面で合意しておくと、後のトラブルを避けられます。稟議が必要な場合は、この見積もりを起票の材料に使います。
持ち帰りまたはオンサイト作業
依頼が確定すると、業者のラボでの作業(持ち帰り)または現地作業(オンサイト)に入ります。RAIDの構成解析、物理障害でのクリーンルーム開封、部品交換、論理復旧といった工程が、障害の内容に応じて実施されます。作業期間は障害の重さと構成の複雑さで変わり、軽度の論理障害なら数日、重度のRAID・サーバーの物理障害では2週間〜1か月以上かかることもあります。
復旧作業と作業報告書
作業完了後、復旧されたデータの内容と、作業の経緯・使用した手法・成功/失敗の結果を記した作業報告書が発行されます。「法人サーバー・NAS・RAID・仮想環境の復旧で確認すべきこと」で述べたとおり、稟議・監査に出せるかどうかは、この報告書の内容次第です。契約前の見積もり合意の段階で、報告書の様式と記載範囲を確認しておくのが確実です。
データ・機器返却と削除証明
復旧されたデータは、指定した保存メディア(HDD・SSD・クラウド転送など)で受け取ります。作業のために業者が一時的に複製した個人データは、依頼者の要件に応じて消去され、必要に応じて削除証明書が発行されます。機器そのものは元の状態で返却されるのが基本で、機器修理は別途、メーカー修理などで対応することになります。
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起きた後の復旧と、起きる前のクラウドバックアップ|再発防止のために備えるべきこと
復旧を依頼したあとは、同じ被害を繰り返さないための備えに視野を広げる時期です。ここでは、今回のインシデントから学ぶべき再発防止の型と、クラウドバックアップが埋める領域を短く整理します。
今回のインシデントから学ぶべき再発防止の型
復旧の依頼後は、障害の原因(機器の経年劣化、電源トラブル、人的操作、ランサムウェア感染など)と、被害の広がった経路(バックアップも同時に暗号化された、単一のRAIDに集約していた、など)を業者からの報告と社内調査で振り返ります。再発防止の焦点は「同じ原因で同じ被害が起きないか」と「起きたときに業務が止まらないか」の2軸です。
原因がランサムウェア感染だった場合、打つべき手は「侵入の入口」「端末」「社内ネットワーク」「復旧手段」の4つの層に分かれ、どの層が手薄だったかで優先順位が変わります。層ごとにどんな製品があり、自社はどこから着手すべきかを整理したい場合は、以下の記事が参考になります。
ランサムウェア対策ツール34選を比較|入口・端末・ネットワーク・復旧の4層で選ぶ
取引先からセキュリティ対策の状況を報告するよう求められたり、同業他社の被害報道を目にしたりして、ランサムウェア対策の見直しを迫られていませんか。しかし調べ始めると、端末の監視、社内通信の監視、バックアップ、認証の強化と、別々の製品カテゴリが…
クラウドバックアップが防ぐ被害の範囲
クラウドバックアップは、機器故障・人的操作ミス・災害・ランサムウェア感染など、原因を問わず「もう1つの世代のデータを別の場所に持つ」ことで業務を止めない備えです。世代管理(複数時点のバックアップ)と、書き込み後に改変できない保存方式(イミュータブル・ストレージ)を組み合わせると、ランサムウェアがバックアップにも及ぶ被害の型に対応できます。
特に法人の本番機では、次のように、バックアップ側が同時に暗号化される事例が指摘されています。
復旧を妨害するため、バックアップも一緒に暗号化される場合が多い。
出典:令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(2026年3月)|警察庁
ネットワークから隔離された保存先を持つ、書き換え不能な世代を残す、といったバックアップ設計は、復旧サービスに頼らずに業務を再開できる時間を短くします。どの範囲(イメージ単位かファイル単位か)をどの頻度で取るか、世代とイミュータブル保存にいくらかかるかは、サービスによって大きく異なります。姉妹記事では、その選び方と法人向け13サービスの比較を整理しています。
中堅・中小企業のBCPと稟議対応
再発防止は、機器・システムの選定だけでなく、社内のBCP(事業継続計画)や稟議プロセスの見直しも含みます。今回の障害で見えた「業務停止に耐えられる時間」「復旧までにかかった費用」「稟議で必要になった証跡」を、次のシステム更新やバックアップ運用の要件として反映すると、次のインシデントで動きが速くなります。
まとめ|自社の障害・規模・稟議要件で復旧業者を選び、次のインシデントに備える
データ復旧業者は、料金体系・対応機器・認証・実績の示し方が各社で大きく異なり、選定を誤ると費用と業務停止時間の両方が膨らみます。
この記事では、まず「触ってはいけない操作」で復旧可能性を落とさない初動を押さえ、論理障害と物理障害の違いから対応機器の全体像、4つのタイプで業者の性格を整理し、DRAJ加盟状況・認証・料金体系・対応機器を横並びで見る比較表と、症状別・機器別の料金の目安、稟議に耐える選び方6観点、法人サーバー・NAS・RAID・仮想環境の証跡要件までを解説しました。
掲載16社は、DRAJの設立母体である常任理事5社(アドバンスデザイン、エーワンデータ、くまなんピーシーネット、アイフォレンセ日本データ復旧研究所、データレスキューセンター=アラジン)を含む、物理データ復旧を主業とする事業者です。
相談先を絞るときは、まず障害機器と症状で型を決めると速く進みます。
RAID・サーバー・仮想環境ならエンタープライズ型(アドバンスデザイン、デジタルデータリカバリー、エーワンデータ、アイフォレンセ日本データ復旧研究所ほか)が出発点です。
自社製NAS・HDDならメーカー系(バッファロー、ロジテック、アイ・オー・データ)、部門機器を早く戻したいなら中小・個人向け型(データレスキューセンター、LIVEDATAほか)、費用を先に固めたいなら予見性重視型(PCエコサービス、DATAOK)が候補になります。
稟議で証跡が要る場合は、作業報告書や機密保持誓約書の発行を公式に明示している業者(バッファロー、アイフォレンセ日本データ復旧研究所、ウィンゲット)や、NDAの即日締結を掲げるLIVEDATAが確認の起点になります。公式に明示のない業者も、初回の問い合わせで発行可否と様式を確認すれば候補に残せます。
業者選びの次の一歩は、こうして絞った2〜3社への同時見積もりです。成功と不成功の場合分け、証跡の様式、機器の返却時期を揃えて聞くことで、稟議に出す情報の質が上がります。
そして復旧が終わったあとは、今回のインシデントを再発防止に反映し、クラウドバックアップと世代管理で、次に同じ被害が起きても業務を止めない備えへとつなげてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. データ復旧サービスとは何ですか?
A. データ復旧サービスとは、故障・誤削除・フォーマット・暗号化などで読み出せなくなったデータを、専用の設備と技術で記録媒体から取り出す専門サービスです。
対象となる機器は、HDD・SSD・USBメモリ・SDカードといった単体ストレージから、NAS、RAIDを組んだファイルサーバー、業務サーバー、仮想環境、データベースまで広がります。機器そのものを直すメーカー修理とは目的が異なり、修理では検査や部品交換の過程でデータが消えることがあるため、データが必要な場合は修理に出す前に復旧を検討する順序になります。
Q. データ復旧サービスに依頼すれば、必ずデータは復旧できますか?
A. データ復旧サービスに依頼しても必ず復旧できるわけではなく、受け付けた依頼のうち3〜4割は復旧できないとされています。日本データ復旧協会(DRAJ)が会員企業に実施した聞き取り調査では、復旧できた数と復旧できなかった数の比率がほとんどの会員企業で概ね6:4または7:3となり、3〜4割は復旧できない結果になっていると報告されています。
そのため、依頼を検討する段階で「復旧できなかった場合に費用がいくら発生するか」「復旧できなかった理由の報告書が受け取れるか」を先に確認しておくと、社内への説明が行き詰まりません。
出典・参考資料(1件)
- 出典:データ復旧サービスのガイドライン(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
Q. 「復旧率99%」「復旧率100%」をうたうデータ復旧業者は信頼できますか?
A. 復旧率の数値の高さは、データ復旧業者の信頼性や技術力を測る材料にはなりません。DRAJはガイドラインで、事業者に対し「データ復旧率」という用語を営業活動に用いないことを推奨し、合理的な根拠のない高い数値の表示を控えること、復旧できない障害を実績から除かないことを求めています。
加えて、5団体が合同編集したチェックシートは「データ復旧率の定義は各社バラバラです。データ復旧率については定まった基準がないため、復旧率だけを鵜呑みにしないように気をつけましょう。」と注意を促しています。復旧率ではなく、自社と同種の障害を扱った復旧事例と、成功・不成功をどう定義しているかの説明で判断してください。
出典・参考資料(2件)
- 出典:データ復旧サービスのガイドライン(第1版、2022年8月1日)|一般社団法人日本データ復旧協会
- 出典:データ被害時のベンダー選定チェックシート Ver.1.0(2022年12月16日)|日本データ復旧協会ほか合同編集
Q. データ復旧サービスで復旧できなかった場合、費用は本当に0円になりますか?
A. 完全成果報酬制を掲げるデータ復旧サービスでは復旧できなければ作業費は発生しないのが基本ですが、0円で終わるかどうかは契約の費用条件次第で、診断料・返送料・特急対応費などが別途発生する場合があります。
もう一点、5団体合同のチェックシートは「完全成功報酬制の場合、復旧できなければ無料で終わるメリットがある反面、調査報告書が得られないデメリットもあります」と指摘しています。復旧できなかった理由を稟議や監査で説明する必要があるなら、無料であることより報告書が受け取れるかを優先して確認してください。
DRAJが提唱する「RDRSP:2022 基準」に沿って、診断料と作業費のそれぞれについて成功時・不成功時の負担を書面で場合分けしてもらうのが確実です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:データ被害時のベンダー選定チェックシート Ver.1.0(2022年12月16日)|日本データ復旧協会ほか合同編集
Q. データ復旧サービスの作業期間はどれくらいかかりますか?
A. データ復旧サービスの作業期間は障害の重さと構成の複雑さで変わり、軽度の論理障害なら数日、RAIDやサーバーの重度の物理障害では2週間〜1か月以上かかることもあります。
業務再開の見通しを立てるには、全体の日数を一括で聞くのではなく、「初期診断が始まるまで」「診断結果とデータリスト・見積もりが出るまで」「作業が完了してデータを受け取るまで」の3区切りで確認するのが実務的です。業務停止時間そのものが損失になる本番機の障害では、当日・翌日の緊急対応やオンサイト(出張)診断に対応できるかも合わせて聞いておきます。
Q. データ復旧サービスに機器を預けると、データの中身を業者に見られませんか?
A. データ復旧では復旧可能なファイルの一覧を提示する工程などがあるため、業者がデータに触れることを前提に、契約と管理体制で扱いを縛るのが現実的な守り方になります。
個人データを含む機器の復旧を外部に依頼する場合、個人情報保護法第25条の委託先の監督が必要になる可能性が高いと考えられます。個人情報保護委員会のQ&A(Q7-55)は、保守サービス事業者がサービスの一部として情報システム内の個人データを取り扱う場合、法第25条に基づき当該事業者を監督する必要があるとしています。
実務としては、NDA(秘密保持契約)の締結、作業場所の入退室管理とアクセス制御、作業のために複製したデータの消去と削除証明書の発行を確認します。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)別添も、削除・廃棄を委託する場合は「委託先が確実に削除又は廃棄したことについて証明書等により確認することも重要である」としています。
出典・参考資料(3件)
- 出典:個人情報の保護に関する法律 第25条(委託先の監督)|e-Gov法令検索
- 出典:「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A」Q7-55|個人情報保護委員会
- 出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)別添(令和8年6月一部改正)|個人情報保護委員会
Q. ランサムウェアで暗号化されたデータは、データ復旧サービスで元に戻せますか?
A. ランサムウェアで暗号化されたファイルは通常、復号することが困難で、データ復旧サービスに依頼すれば暗号が解けるというものではありません。JPCERT/CCは「バックアップが残されていないファイルは、復旧が困難であるという想定で、別の手段による事業継続をご検討いただくことが一般的です。」としています。
身代金の支払いについても、JPCERT/CCは「身代金の支払いは行うべきではありません。」と明示しています。業者に相談する前に、公開されている復号ツール(No More Ransom、IPAのランサムウェア対策特設ページ)で自社の被害に対応する鍵が公開されていないかを確認する手もあります。
一方で、暗号化被害の初動は物理故障と逆で、慌てて電源を切らずネットワークからの隔離を優先します。復旧業者に依頼する場合は、無断で身代金を支払わないことを事前に合意しておいてください。
出典・参考資料(2件)
- 出典:侵入型ランサムウェア攻撃を受けたら読むFAQ|一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター
- 出典:ランサムウェア対策特設ページ|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
Q. RAIDのリビルドに失敗した後でも、データ復旧サービスで復旧できますか?
A. リビルドに失敗したRAIDでも復旧できる場合はありますが、可否と難易度はその後にどんな操作をしたかで変わります。
NECはサーバーの構成ガイドで、リビルド中は冗長性が失われると注意喚起しています。冗長性のない状態で書き込み負荷を重ねるリビルドの反復は、2台目の障害を招くリスクを高めます。1度失敗した時点で追加のリビルドやドライブの抜き差しを止め、RAIDレベル・HDDの搭載順序・スロット番号・これまでに実施した操作を控えたうえで、RAID構成解析の実績がある業者に相談してください。
Q. RAIDやNASのHDDは、故障した1台だけを取り外してデータ復旧業者に送ってもよいですか?
A. 原則として、故障した1台だけを送るのではなく、全台をそのままの状態で相談するのが安全です。RAIDはデータが複数のドライブに分散して記録されており、構成を復元するには全ドライブの状態と搭載順序の情報が必要になるためです。
やむを得ず取り外す場合は、スロット番号とドライブのシリアルを控え、順番が分かる形で梱包します。筐体ごと社外に出せない、あるいは持ち出し承認に時間がかかる場合は、機器を送る前にオンサイト(出張)診断や現地での構成情報の取得に対応できるかを業者に確認してください。
Q. データ復旧サービスとのトラブルは、どこに相談できますか?
A. DRAJは、業者との個別トラブルの解決を希望する場合、全国共通の「消費者ホットライン:188」への相談を案内しています。同協会は、加盟・非加盟を問わずデータ復旧サービスに関する相談を受け付ける窓口も設けています。
相談を有利に進めるには、見積書、費用条件の説明内容、機器の預かり証、担当者とのやり取りの記録を残しておくことが役立ちます。契約前に費用の場合分けを書面で受け取っておくと、そもそもトラブルに発展しにくくなります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:データ復旧サービスのトラブルにあわれた方(レスキュー商法にご注意ください)|一般社団法人日本データ復旧協会
Q. クラウドバックアップを導入していれば、データ復旧サービスは不要になりますか?
A. バックアップを取っていても、データ復旧サービスが不要になるとは限りません。最後にバックアップを取得した時点以降のデータは戻せませんし、バックアップ自体が同時に被害を受けることもあるためです。
警察庁は、ランサムウェア攻撃について「復旧を妨害するため、バックアップも一緒に暗号化される場合が多い」と指摘しています。逆に言えば、ネットワークから隔離した保存先や、書き込み後に改変できない世代を持つ設計にしておくほど、復旧業者に依頼せず自力で業務を再開できる範囲が広がります。復旧の依頼と並行して、バックアップの保存先と世代管理を見直しておくことが、次のインシデントでの停止時間を縮めます。
出典・参考資料(1件)
復旧の次に備えるクラウドバックアップの料金・手数料を一括チェック
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。











