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保険業界向けワークフローシステム比較|稟議・保険事務・基幹自動化のタイプ別に選ぶ

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保険会社の業務では、稟議や各種申請の紙・押印・郵送、新契約や保険金支払といった保険事務の書類処理に、いまも多くの時間と人手がかかっていないでしょうか。担当者ごとにやり方が異なって品質にばらつきが出たり、テレワーク下で書類の回覧が滞ったりする課題も広がっています。

こうした課題を解決する手段がワークフローシステムです。ただし「保険業界向け」とひとくちに言っても、その中身は一つではありません。社内の稟議・申請承認を電子化する汎用型から、保険事務の書類・イメージ処理に特化した型、保険基幹システムやデジタル保険基盤に業務自動化を組み込む型まであり、解決できる業務範囲は製品によって大きく異なります。自社のどの業務を効率化したいかによって、選ぶべき製品は変わります。

本記事では、保険業界で使えるワークフローシステムを対象業務のレイヤー別に整理し、それぞれの解決範囲・代表的な製品・選び方を比較・解説します。社内稟議の電子化・保険事務の書類処理・基幹業務への自動化組み込みという3つの切り口で全体像を示したうえで、生保・損保・少額短期保険・共済といった業態や、既存基幹システムとの連携、記録・監査証跡までを見据えた選定の観点を整理しました。

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保険業界のワークフロー業務が抱える課題

はじめに、保険会社の業務で電子化・効率化の対象になりやすい課題を整理します。多くの製品が解決の入り口に置いているのは、次の3つの課題です。

紙・押印・郵送に依存した申請と決裁

稟議書や各種申請書を紙で回覧し、上長の押印を得て決裁する運用は、承認者の不在や書類の差し戻しのたびに処理が止まります。支社・営業店と本社をまたぐ決裁では、書類の郵送にも日数がかかり、決裁完了までのリードタイムが読みにくくなります。新契約の申込書や保険金の請求書類といった保険事務でも、紙の書類を人手で仕分け・入力する工程が残っていると、繁忙期に処理が滞留しやすくなります。

担当者ごとの属人化と品質のばらつき

申請の書き方や添付書類の確認手順が担当者の経験に依存していると、記入漏れや確認漏れが起こりやすく、事務品質が人によって変わります。誰がどの案件をどこまで処理したかが見えにくいため、進捗の確認や引き継ぎにも手間がかかります。保険業では事務の正確性が顧客対応やコンプライアンスに直結するため、処理の標準化は品質面でも重要な課題です。

テレワークで滞る書類申請

出社を前提とした紙・押印の運用は、テレワークや複数拠点での勤務と相性がよくありません。承認のためだけに出社する、押印待ちで在宅日の業務が止まる、といった状況は、働き方の柔軟性を損ないます。申請から承認までをオンラインで完結できる仕組みがないと、業務の継続性そのものが場所に縛られてしまいます。

ワークフローシステムで解決できること・導入するメリット

ここからは、ワークフローシステムを導入することで前述の課題がどう解決するかを整理します。得られるメリットは、大きく「事務作業そのものの削減」と「業務品質の底上げ」の2方向に分かれます。

ペーパーレス化・電子承認による事務削減

申請から承認までをオンラインで完結させると、書類の印刷・押印・郵送・保管といった付随作業がなくなります。承認者はパソコンやスマートフォンから決裁でき、外出中や在宅中でも処理を止めません。書類の物理的な移動が消えることで、決裁完了までのリードタイムが短縮され、テレワークにも対応しやすくなります。新契約や保険金の請求書類を電子化する製品では、紙の仕分け・搬送・保管のコストそのものを削減できます。

業務の標準化・処理スピードの向上(属人化の解消)

申請フォームと承認ルートをシステム上で定義すると、誰が申請しても同じ様式・同じ手順で処理が進みます。記入漏れや承認順序の誤りをシステム側でチェックできるため、差し戻しが減り、事務品質のばらつきが抑えられます。案件ごとの進捗と処理履歴が記録として残るので、進捗確認や引き継ぎも容易になります。こうした処理の標準化は、内部統制の観点で求められる「誰が・いつ・何を承認したか」の記録の整備にもつながります。

保険業界向けワークフローシステムの種類(対象業務レイヤー別)

「保険業界向けワークフローシステム」と呼ばれる製品は、実際には対象とする業務の範囲が異なる3つのタイプに分かれます。自社が効率化したいのがどの業務なのかによって、検討すべきタイプが変わります。まずは全体像を押さえましょう。

保険業界向けワークフローシステムを対象業務のレイヤー別に3つに整理した図解。左から、社内の稟議・申請承認を電子化するタイプ(部署や業種を問わない社内手続き全般)、保険事務の書類・イメージ処理に特化したタイプ(新契約・保全・保険金支払の書類のイメージ化と工程管理)、保険基幹・デジタル保険基盤に業務自動化を組み込むタイプ(契約管理・引受査定・保険金支払など基幹業務への自動化)。汎用から保険特化・事業の中核へと対象業務が深まることを示す。
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社内の稟議・申請承認を電子化するワークフロー保険事務の書類・イメージ処理に特化したワークフロー保険基幹・デジタル保険基盤に組み込む業務自動化
主な対象業務稟議・各種申請・決裁など、部署や業種を問わない社内手続き全般新契約・保全・保険金支払など、申込書・請求書類のイメージ化と工程管理契約管理・引受査定・保険金支払など基幹業務へのワークフロー/AI自動化の組み込み
提供形態の傾向クラウド型のパッケージが中心。ユーザー数に応じた月額課金が多い保険会社向けの受託構築・専用ソリューションが中心保険基幹システムやデジタル保険プラットフォームの一機能として提供
向いている場面まず社内の紙・押印をなくし、決裁のスピードとテレワーク対応を改善したい大量の保険事務書類の処理品質を均一化し、事務センターの生産性を上げたい商品開発から契約管理まで一気通貫でデジタル化し、業務全体を自動化したい
該当する主なサービスX-point Cloud/Create!Webフロー/Gluegent Flow/MAJOR FLOW ワークフロー/ActionPassport/稟議決裁さくらさん新契約イメージワークフロー(プリマジェスト)Graphene・Nano/InsureMO/Inspire/Guidewire InsuranceSuite/Finnova保険・共済トータルサポートシステム/Salesforce Financial Services Cloud

※上記は各タイプの一般的な傾向です。個別の製品による対応範囲や提供形態は各社情報をご確認ください。

社内の稟議・申請承認を電子化するワークフロー

稟議・出張申請・経費申請・契約書の押印申請といった、部署や業種を問わない社内手続きを電子化するタイプです。申請フォームと承認ルートを自由に設計でき、保険会社の社内決裁にもそのまま適用できます。汎用の製品が多く、クラウドで短期間に導入しやすいのが特徴で、まず「紙と押印をなくす」ところから着手したい場合の入り口になります。

多くは業種を問わない汎用製品のため、保険会社で使う際は、複雑な承認ルールへの対応や既存システムとの連携を後述の選び方で個別に確認しておくと安心です。該当する主な製品は上の表と後半のサービス紹介で取り上げます。

保険事務(新契約・保全・保険金支払)の書類・イメージ処理に特化したワークフロー

申込書や請求書類をイメージデータ化し、保険事務の工程を管理するタイプです。書類の受付から点検・入力・確認までを画面上の工程として設計し、大量の書類を扱う事務センターの処理品質を均一化します。新契約の受付、契約後の保全(住所変更や契約内容の変更)、保険金・給付金の支払といった保険特有の事務に対象を絞り込んでいる点が、汎用の稟議ワークフローとの違いです。

この用途に専業で対応する製品は、生命保険の大規模事務を中心に数が限られます。損害保険・少額短期保険・共済で保険事務の書類処理を効率化したい場合は、次の基幹組み込み型が備える書類・工程管理の機能や、汎用ワークフローと文書管理・OCRの組み合わせも選択肢に入ります。

保険基幹・デジタル保険基盤に組み込む業務自動化

契約管理・引受査定・保険金支払といった保険の基幹業務そのものに、ワークフローやAIによる自動化を組み込むタイプです。保険基幹システムやデジタル保険プラットフォームの一機能として提供され、商品開発から契約管理までを一気通貫でデジタル化することを狙います。単なる承認の電子化にとどまらず、業務プロセス全体の設計・自動化に踏み込むため、保険事業の中核を刷新したい場合の選択肢になります。

導入規模が大きくなりやすいため、対象業務を絞ったスモールスタートが可能か、既存の保険基幹システムと連携できるかも含めて検討するとよいでしょう。該当する主な製品は上の表と後半のサービス紹介で取り上げます。

また、ワークフローの組み込み先となる保険基幹システムそのものの導入・刷新まで視野に入れている場合は、生保・損保など業態別の選び方や導入事例を整理した以下の記事が参考になります。

自社に合うのはどのタイプか

3つのタイプは排他的なものではなく、効率化したい業務が複数あれば組み合わせて検討することもあります。とはいえ出発点としては、まず社内の決裁を速くしたいのか、保険事務の書類処理を改善したいのか、基幹業務そのものを自動化したいのかを見極めると、候補を絞り込みやすくなります。

自社がどのタイプに適しているか判断が難しい場合は、以下の選定診断ツールで業務課題や業態を選ぶと、候補を数十秒で絞り込めます。

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【比較表】保険業界向けワークフローシステムの比較

ここからは、自社の課題や要件に合わせた客観的な比較・選定ができるよう、主要な保険業界向けワークフローシステムを対象業務レイヤー別に分類してご紹介します。対象業務・提供形態・保険業界での導入実績・対象業態の目安・料金の開示状況を横断的に整理しました。

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サービス名X-point CloudCreate!WebフローGluegent FlowMAJOR FLOW ワークフローActionPassport稟議決裁さくらさん新契約イメージワークフローGraphene・NanoGuidewire InsuranceSuiteInspireInsureMOFinnova保険・共済トータルサポートシステムSalesforce Financial Services Cloud
対象業務レイヤー社内稟議・申請承認社内稟議・申請承認社内稟議・申請承認社内稟議・申請承認社内稟議・申請承認社内稟議・申請承認保険事務イメージ処理基幹組込み自動化基幹組込み自動化基幹組込み自動化基幹組込み自動化基幹組込み自動化基幹組込み自動化
主な対象業務稟議・各種申請をノーコードで電子化
承認ルート分岐・代理承認・スマホ承認
紙の申請書レイアウトを保ったまま電子化
視覚的な承認ルート・条件分岐
申請・承認の電子化
Google Workspace/Microsoft 365連携・シングルサインオン(SSO)
申請書作成〜承認・決裁の電子化
合議・引き上げ承認・フォームデザイナー
Excel/Word/PDFの既存様式のまま稟議・申請を電子化
モバイル承認・基幹連携
稟議の作成〜承認・決裁をAIで支援
事前確認・過去事例照合・自動リマインド
新契約の申込書類をイメージ化し工程管理
モニタリング・権限管理
商品開発〜契約・保全・保険金支払を1基盤でデジタル化損保基幹(契約・引受/保険金支払/収納)のコアシステム見積〜申込・査定・契約管理・保全・請求・更改をSaaSで一気通貫
API連携で組込保険にも対応
基幹と販売チャネルの間に置く保険ミドルオフィス
API・マイクロサービスで組込保険に対応
保険基幹(契約・事故・収納)+代理店+契約者マイページを一括提供販売パートナー管理・審査・保険金請求をCRM基盤上でワークフロー化
提供形態クラウドクラウド/パッケージ(オンプレ)クラウドクラウド/パッケージ(オンプレ)クラウド/パッケージクラウド非公開(要問い合わせ)Graphene=PaaS/Nano=SaaSオンプレ/クラウドSaaSPaaS/SaaSプライベートクラウドSaaS
保険業界での導入実績公表なし公表なしアイペット損害保険(損保)公表なし楽天生命保険(生保)公表なし提供元は生保の保全・保険金支払で実績(日本生命ほか)
※本製品単体の実績は非公開
住友生命「Chakin」開発支援(生保)
少額短期保険の基幹稼働
SBI損保・三井住友海上ほか国内10社以上(損保)導入13社(2025年6月末時点)
ニッセイプラス少短・楽天少短ほか
国内32社(2026年5月時点)ダブルエー少額短期保険ほか
少短で契約数シェア約35%(2020年9月時点、日立システムズ調べ)
アフラック生命・明治安田生命・日本生命(生保)
JA共済連
対象業態の目安業種問わず(汎用)業種問わず(汎用)業種問わず(汎用)業種問わず(汎用)業種問わず(汎用)業種問わず(汎用)生保生保・損保・少短損保(P&C)生保・損保・少短/共済生保・損保・少短/共済少短・共済中心生保中心(共済含む)
料金開示度公開公開公開公開公開要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ一部公開(基本CRMライセンスは公開)
詳細情報公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る公式サイト

※各社の公式情報にもとづき作成しています。対応範囲・提供形態・料金は変更される場合があるため、最新の情報は各社にご確認ください。

主要な保険業界向けワークフローシステムの特徴

ここからは、各サービスの特徴を対象業務のタイプ別に紹介します。まずは多くの保険会社が着手しやすい社内の稟議・申請承認を電子化するタイプ、次に保険事務に特化したタイプ、最後に基幹業務への組み込み型の順に見ていきましょう。

社内の稟議・申請承認を電子化するワークフロー

まずは、社内の稟議や各種申請の決裁を電子化する汎用タイプの製品です。保険会社の社内手続きにそのまま適用でき、比較的短期間で導入しやすいのが特徴です。

1. X-point Cloud(株式会社エイトレッド)

X-point Cloudのウェブサイト

紙やExcelの申請書をノーコードで電子化し、申請フォームの作成から承認ルートの設定までを画面上で行えるクラウド型ワークフローシステムです。株式会社エイトレッドが、パッケージ版「X-point」のクラウド版として2011年に提供を開始しました。

初期費用は0円で、月額課金プランは基本料金20,000円(税抜)に1ユーザーあたり500円(税抜)を加えた体系です。本番同様の環境を30日間試せる無料トライアルが用意されており、導入は最短5営業日からとされています。

入力内容に応じた承認ルートの分岐や代理承認、スマートフォンからの承認に対応し、GMOサインやクラウドサインなどの電子契約サービス、kintoneとの連携も備えます。対応業種一覧には金融業が含まれますが、契約審査や保険金支払査定といった保険業務特化の機能は持たない汎用ワークフローで、社内の稟議・申請承認を電子化する用途に向いています。

2. Create!Webフロー(インフォテック株式会社)

Create!Webフローのウェブサイト

紙の申請書のレイアウトや運用フローを大きく変えずに電子化することをコンセプトにしたワークフローシステムです。1969年設立のインフォテック株式会社が開発し、クラウド版(SaaS)と、自社サーバーに設置するパッケージ版の両方を提供しています。

クラウド版は初期費用0円、1ユーザーあたり月額500円(税抜、年払いは年額5,500円)で、最低10ユーザーから1ユーザー単位で追加できます。パッケージ版は50ユーザー600,000円(税抜)からのライセンス価格が公開されています。

承認ルートは人型アイコンと接続線で描かれ、承認済み・承認中の状態を一目で確認できます。条件分岐や合議、複数世代の組織変更にも対応するため、多段階の決裁権限規定を持つ企業でも運用しやすい設計です。クラウド版はISO/IEC 27017を取得しています。

3. Gluegent Flow(サイオステクノロジー株式会社)

Gluegent Flowのウェブサイト

サイオステクノロジー株式会社が2011年から提供するクラウド型ワークフローシステムです。Google Workspace や Microsoft 365 のアカウント管理と連動し、シングルサインオンで利用できる点を特徴とします。

初期費用は0円で、月額料金は1ユーザーあたりベーシック400円、ビジネス500円、プレミアム1,200円(いずれも税別)の3プランです。最低契約数はベーシック・ビジネスが25ID、プレミアムが100IDで、110種類を超えるモデルテンプレートから申請書を用意できます。

保険業界では、アイペット損害保険が電子決裁と紙決裁の混在を解消する目的で導入した事例が公開されています。Google Workspace連携や自動決裁者割当などを取り入れ、3名体制・約3ヶ月で運用を開始し、申請件数は導入前の約2倍に増えたとされています。

出典・参考資料(1件)

4. MAJOR FLOW ワークフロー(パナソニック デジタル株式会社)

MAJOR FLOW ワークフローのウェブサイト

1999年以来25年以上にわたってワークフロー事業を手がけてきた開発元による汎用ワークフローシステムです。現在はパナソニックグループのパナソニック デジタル株式会社が提供し、クラウド版と、アドオン開発キットを標準搭載するパッケージ版から選べます。

料金は50ユーザーまで月額15,000円(税抜)で、以降は50ユーザー単位で15,000円ずつ加算する体系です。部品を配置して申請書を作るフォームデザイナーや、大人数での合議、不在時の引き上げ承認(代理承認)といった機能を備えます。

金融機関での導入事例として、PayPay銀行が発注稟議を予算管理システムと連携させ、予算管理・稟議業務全体で見込み4,500時間に対し2,700時間(充足度60%)の削減を達成した例が公開されています。これは銀行の事例であり、保険会社の稟議規程への対応実績は公式情報からは確認できません。

5. ActionPassport(株式会社イーネットソリューションズ)

ワークフローシステム「ActionPassport(アクションパスポート)」公式サイトのトップページ。申請・承認・決裁を電子化する管理画面イメージとナビゲーションが表示されている。

Excel・Word・PDFなど既存の申請書フォーマットをそのまま画面上で使えるクラウド型ワークフローシステムです。株式会社イーネットソリューションズが提供し、紙の見た目を保ったまま稟議書や各種申請書を電子化できる点を特徴とします。

クラウド版は初期費用がかからず、1アカウントあたり月額500円からの従量制で利用できます。スマートフォン・タブレット専用のインターフェースからの承認や、グループウェア・基幹システムとのデータ連携、API連携にも対応します。

保険業界では、楽天生命保険が紙ベースの稟議・申請書運用による決裁の遅れを解消する目的で導入した事例が公開されています。導入前は申請から決裁まで最大10日かかっていたところ、導入後は早くて1日、遅くとも2〜3日で完了するようになり、承認プロセスの所要時間を最大90%削減したと発表されています。

出典・参考資料(1件)

6. 稟議決裁さくらさん(株式会社ティファナ・ドットコム)

稟議決裁さくらさんのウェブサイト

稟議・申請承認の各工程をAIで支援する社内向けワークフローシステムで、株式会社ティファナ・ドットコムが「AIさくらさん」ブランドで展開する一製品です。稟議書の作成から申請・承認・決裁完了までを一気通貫でデジタル化します。

AIが稟議内容や添付資料を事前に確認して要点を整理し、過去事例をもとに判断材料を提示します。承認期日が近い稟議の自動リマインドや進捗の可視化に加え、合議制・多数決・指名制など企業ごとに異なる承認フローへのカスタマイズ対応を訴求しています。

導入時は専任スタッフが稟議やワークフローの内容をヒアリングし、初期設定まで代行する運用体制をとります。最高裁判所や国土交通省、自治体などを含む導入実績を掲げていますが、これらがAIさくらさん製品群全体の実績か本製品単体の実績かは公式には区別されていません。料金は公開されておらず、初期費用・月額費用とも問い合わせが必要です。

保険事務の書類・イメージ処理に特化したワークフロー

続いて、新契約・保全・保険金支払といった保険事務の書類処理に特化したタイプです。大量の書類を扱う事務センターの生産性向上を狙う保険会社に向いています。

7. 新契約イメージワークフロー(株式会社プリマジェスト)

新契約イメージワークフローのウェブサイト

生命保険の新契約事務——申込書類の受付・審査・データ化——を対象としたイメージワークフロー型のソリューションです。紙の申込書類を高速スキャナでイメージ化し、システム上で工程を管理します。開発・提供は、1968年創業でOCR・イメージ処理を手がけてきた株式会社プリマジェストです。

中心となる機能は3つです。案件の処理状況をグラフや一覧でリアルタイムに把握するモニタリング、ユーザーごとに対応業務・閲覧・操作を制御する権限管理、そして紙のイメージ化による破損・紛失・セキュリティリスクの軽減です。「いつ・誰が・何を・何件」処理したかを見える化し、受付チャネルや商品の多様化で属人化しがちな事務品質の均一化を狙います。

同社は2024年3月にキヤノンマーケティングジャパングループへ加わり、新契約のほか保全・保険金支払を含む保険事務領域でOCRやBPO運用の実績を持ちます。一方で、本ソリューション単体の料金・提供形態・導入社数は公式サイトで公開されていません。検討にあたっては、対応帳票や提供形態も含めて個別に問い合わせて確認する必要があります。

保険基幹・デジタル保険基盤に組み込む業務自動化

最後に、契約管理や引受査定などの基幹業務にワークフローやAIによる自動化を組み込むタイプです。業務プロセス全体のデジタル化を見据える保険会社に向いています。

8. Graphene・Nano(リードインクス株式会社)

Graphene・Nanoのウェブサイト

保険商品の開発から契約・保全、保険金の支払いまでを1つの基盤で扱う、保険会社(元受の生保・損保・少額短期保険業者)向けのデジタル保険プラットフォームです。提供元は、ソフトバンクの完全子会社であるリードインクス株式会社。PaaS形態の「Graphene」とSaaS形態の「Nano」に分かれています。

導入方式は、既存システムに接続する「インテグレート型」、並行して動かす「併存型」、メインの基幹システムとして使う「基幹システム型」の3つを用意しています。既存のシステム環境に応じて選べるほか、既存の保険商品をプラットフォーム上で組成する仕組みにより、新商品を短い期間で投入することを狙います。

住友生命の若年層向け保険「Chakin」の開発支援や、少額短期保険会社の基幹システムとしての稼働実績があります。初期費用・月額費用は公開されておらず、料金体系は個別の問い合わせで確認する必要があります。

9. Guidewire InsuranceSuite(Guidewire Software, Inc.)

Guidewire InsuranceSuiteのウェブサイト

損害保険(P&C)会社の基幹業務——契約管理・引受を担うPolicyCenter、保険金支払・損害サービスを担うClaimCenter、収納を担うBillingCenter——で構成されるコアシステム群です。米Guidewire Softwareが開発し、世界40カ国・570社以上の保険会社が採用しています。日本での窓口はガイドワイア・ソフトウェア・ジャパン株式会社です。

日本では2008年から事業を展開し、2012年のSBI損保による国内初導入以降、大手を含む10社以上の損保に採用が広がりました。日本の損害保険業界の収入保険料(GWP)の60%超が、同社のClaimCenter上で処理されているとされます(2025年4月時点の公式発表。ClaimCenterに限定した数値)。

近年はクラウド版「Guidewire Cloud Platform」への移行が進み、SOMPOグループやイーデザイン損保が採用しています。導入はNTTデータやPwCコンサルティングなどのSIパートナー経由が中心で、料金は個別見積もりとなっています。

10. Inspire(株式会社Finatext)

Inspireのウェブサイト

株式会社Finatext(東証グロース上場のFinatextホールディングスの保険事業会社)が2020年から提供する、SaaS型のデジタル保険基幹システムです。見積もり・申込・査定・契約管理・保全・保険金請求・更改まで、保険業務を一気通貫でオンライン化します。

生命保険(第一分野)・損害保険(第二分野)・傷害や医療などの第三分野のすべての保険商品に対応します。提供形態も、ローコードで立ち上げる「Inspire Express」、機能を単体導入できる「Inspire Select」、少額短期保険・共済向けの「Inspire for 少短/共済」と幅があり、導入規模や目的に応じて選べます。

Webサービスやアプリに保険を組み込む「組込保険」の基盤としても使われ、API連携により複数の保険会社の商品を同一画面で扱えます。導入実績は13社(2025年6月末時点)で、SmartHRの福利厚生サービス内でのデジタル保険マーケットプレイス共同開発も進んでいます。料金は非公開で、システム利用費は従量課金制です。

11. InsureMO(InsureMO株式会社)

InsureMOのウェブサイト

保険会社の基幹システム(コア)と販売チャネル(フロント)の間に置く「保険ミドルオフィス」基盤です。マイクロサービス・APIファースト・クラウドネイティブの構成で、部品化した保険業務のAPIを組み合わせて使います。原開発元は保険テック企業のeBaoTech(グローバル本社はシンガポール)で、日本ではInsureMO株式会社が展開しています。

既存のコアシステムを入れ替えずに、その上位へAPI・マイクロサービスの層を追加することで、新しい保険商品やデジタル販売チャネルを短期間で立ち上げられる点が特徴です。旅行・不動産・ECなど、保険会社以外の事業者が自社サービスに保険を組み込む「組込型保険」にも対応します。

グローバルでは50カ国以上・500社超で利用され、17,500以上の事前構築済み保険商品と2,500以上のアトミックAPIを備えます。国内の導入は32社(2026年5月時点)。2026年3月には保険専用のAIコーディング開発環境の提供も始めています。料金は要お問い合わせです。

導入による具体的な成果について、同社の河上氏は次のように説明しています。

河上氏
InsureMO株式会社 代表取締役
河上氏
独自インタビューより

具体例としては、大手カード会社が提供するブランドの証券の仕組みを当社で全面的に構築させていただいています。定量的な成果として本件は、要件変更があった中でも約4ヶ月で立ち上げ、エラーなく稼働しています。証券料率改定への対応では、コストとスピードが従来のおよそ2分の1まで圧縮できた事例も出ています。

12. Finnova保険・共済トータルサポートシステム(株式会社日立システムズ)

Finnova保険・共済トータルサポートシステムのウェブサイト

保険基幹システム・代理店システム・契約者向けシステム(マイページ)の3つを1つにまとめた、保険システムパッケージです。開発・提供は、日立製作所の完全子会社である株式会社日立システムズ。同社のデータセンター内に構築したプライベートクラウド環境から提供されます。

契約管理・事故管理(保険金支払)・収納管理といった基幹業務に加え、代理店管理や契約者マイページまでを一気通貫でカバーします。ルールエンジンを備えており、保険会社ごとのニーズにパラメータ設定で対応することで、必要最小限のカスタマイズで利用を始められます。

少額短期保険業界では10年以上の実績を持ち、契約数シェアは約35%(2020年9月時点、日立システムズ調べ)とされます。機能を絞り、初期導入費用を従来モデルの約10分の1に抑えた「小規模モデル」も別途用意されています。本体・小規模モデルとも料金は非公開で、要問い合わせとなっています。

13. Salesforce Financial Services Cloud(株式会社セールスフォース・ジャパン)

Salesforce Financial Services Cloudのウェブサイト

Salesforceが提供するCRM基盤「Customer 360」上に構築された、金融サービス業界特化型の業務プラットフォームです。日本法人は株式会社セールスフォース・ジャパン。保険業界向けには、販売パートナー(代理店)管理から審査(アンダーライティング)、保険金請求処理までを扱う構成を「生命保険ワークフロー管理ソフトウェア」として提供しています。

AIエージェント機能「Agentforce」を代理店管理の要約やリード識別、保険金請求対応の自動応答などに組み込めるほか、MuleSoft・Tableau・Slack・Data 360といったグループ製品と連携できます。国内では、アフラック生命(2020年に国内生保として初導入)・明治安田生命・日本生命などへの導入が公式に確認できます。

料金は、基本となるCRMライセンスが1ユーザーあたり月額39,000〜42,000円(年間契約時)で、これに保険機能ごとの個別ライセンスが加わります。保険契約管理や保険金請求管理などの主要機能は個別ライセンス(クレジット制やGWP連動制)に分かれているため、総費用は組み合わせ次第で変わり、個別の見積もりが前提になります。

保険業界向けワークフローシステムの選び方

ここからは、保険会社がワークフローシステムを選ぶ際に確認したい観点を整理します。汎用の製品比較で語られる機能・料金に加え、保険業ならではの視点を押さえると、導入後のミスマッチを避けやすくなります。

効率化したい対象業務と業態(生保・損保・少短/共済)に合っているか

最初に確認したいのは、効率化したい業務と製品の対象範囲が合っているかです。社内の決裁を速くしたいのに保険基幹の刷新まで含む大掛かりな製品を選ぶと、投資も導入期間も過大になります。逆に、保険事務の大量処理を改善したいのに汎用の稟議ワークフローだけを入れても、書類のイメージ化や工程管理には届きません。加えて、生命保険・損害保険・少額短期保険・共済では扱う事務も規模も異なります。

自社の業態で使われている実績があるか、業態特有の事務(生保の保全・損保の保険金支払など)に対応できるかを、製品の対象業務と照らして確認しましょう

既存の基幹システムやデータと連携できるか

ワークフローで処理した情報を、既存の保険基幹システムや会計システムと連携できるかも重要な観点です。連携ができないと、承認後のデータを人手で再入力することになり、効率化の効果が半減します。とくに基幹業務に踏み込むタイプでは、既存システムとのデータ連携方式(APIの有無、連携できる項目、リアルタイム連携か日次バッチか)が導入の可否を左右します。

社内稟議型の製品でも、人事システムやシングルサインオン基盤との連携可否を確認しておくと、運用負荷を抑えられます。

連携の可否は「コネクターがあるからすぐつながる」といった説明を鵜呑みにせず、自社の基幹システムの構成に合わせて確認することが大切です。既存の基幹が古い言語や独自仕様で構築されている場合、標準の連携機能だけでは接続できず、個社ごとの作り込みが必要になることも少なくありません。導入前に、実際の連携対象と方式を具体的に擦り合わせておくと、稼働後の手戻りを防げます。

記録・監査証跡など内部統制・規制対応に耐えられるか

保険業は事務の正確性と記録の保存が強く求められる業種です。「誰が・いつ・何を承認したか」の証跡が改ざんできない形で残るか、承認者の権限を役職や職務に応じて細かく設定できるかは、内部統制の観点で確認すべきポイントになります。申込書や請求書類を電子化する場合は、電子帳簿保存法などの記録の保存要件に沿った運用ができるかも見ておくと安心です。

監査対応や規制対応を見据えるなら、権限管理・操作ログ・保存期間の設定といった機能の有無を、導入前に具体的に確認しておきましょう

出典・参考資料(1件)

料金が明確か、費用の見通しを立てられるか

料金体系の明確さは、社内の予算取りや稟議のしやすさに直結します。社内稟議型のクラウド製品はユーザー数に応じた月額料金を公開していることが多く、1人あたり月額数百円から数千円程度が目安で、費用の見通しを立てやすい傾向があります。

一方、保険事務特化型や基幹組み込み型は個別見積もりが基本で、料金は「要お問い合わせ」となる場合が少なくありません。これは提供形態が受託構築や基盤導入で、対象業務や規模によって費用が大きく変わるためです。

料金が非公開の製品でも、見積もりを依頼する際に、対象業務・想定ユーザー数・月間の申請や書類の処理件数・既存基幹との連携要件を整理して伝えると、実態に近い概算を得やすくなります。複数社に同じ条件で見積もりを求めれば、費用の比較もしやすくなります。

少額短期保険や共済のように規模が限られる場合は、初期費用を抑えて始められる小規模向けモデルや、必要な機能だけを単体で導入できる提供形態があるかも確認しておきましょう。

導入時の注意点・失敗を避けるポイント

選定と並行して、導入・定着のフェーズで起こりがちな失敗も押さえておきましょう。次の3点は、事前に想定しておくとトラブルを避けやすくなります。

自社の複雑な承認ルールに製品が対応できない

保険会社の稟議・決裁には、金額や案件の種類によって承認者が変わる複雑なルールが存在することがあります。設定の自由度が低いパッケージ製品では、こうしたルールをそのまま再現できない場合があります。導入前に、自社の代表的な承認フローを実際に設定できるかを試し、難しい場合は個別のカスタマイズや設定支援に対応してくれるかを確認しておくと安心です。

要件を盛り込みすぎて投資と導入期間が膨らむ

あれもこれもと要件を詰め込むと、投資額も導入期間も膨らみ、稼働までに時間がかかります。効果が出るまでの期間が延びるほど、現場のモチベーションも下がりがちです。最初から全業務を一度に電子化しようとせず、効果の大きい業務から段階的に広げる進め方にすると、投資対効果を確認しながら無理なく定着させられます。

現場に定着せず運用が形骸化する

システムを導入しても、現場が使いこなせなければ効果は出ません。画面の分かりやすさやスマートフォン対応など、日常的に使う担当者にとっての操作性は定着を左右します。導入後の問い合わせ対応や運用相談にベンダーがどこまで応じてくれるかも、長く使ううえで重要です。導入して終わりではなく、運用フェーズのサポート体制まで含めて選ぶと、形骸化を防げます。

保険会社でのワークフローシステム導入効果・事例

実際に保険会社がワークフローシステムを導入すると、どの程度の効果が得られるのでしょうか。公表されている事例から、対象業務のタイプ別に定量的な効果を見ていきます。

社内稟議の電子化では、承認プロセスのリードタイム短縮と現場の事務負担の軽減が代表的な効果です。前半のサービス紹介でも、生命保険会社で決裁完了までの日数を大きく縮めた例や、損害保険会社で申請件数が増えた例に触れました。紙と押印に依存した決裁を電子化するだけでも、決裁のスピードと担当者の負担には目に見える変化が表れます。

保険事務の書類・イメージ処理に特化したタイプでは、大量の書類を扱う工程の時間短縮に効果が表れます。ある生命保険会社の保険金・給付金の支払業務(診断書のエントリー業務)では、書類処理の工程を見直すことで1件あたりの処理時間を10分から8分に短縮し、年間でおよそ280時間の削減につながったことが公表されています。

新契約・保全・保険金支払といった保険事務は処理件数が多いため、1件あたりのわずかな短縮でも年間では大きな削減量になります。

出典・参考資料(1件)

基幹業務への組み込み型でも、業務時間の削減や商品の市場投入までの期間短縮を目標に掲げる取り組みが進んでいます。効果は導入する業務範囲や自社の体制によって変わるため、各社の公表値は自社に当てはめる際の目安として捉え、導入前に自社業務での試算を行うことをおすすめします。

まとめ

保険業界向けのワークフローシステムは、社内の稟議・申請承認を電子化する汎用型、保険事務の書類・イメージ処理に特化した型、保険基幹・デジタル保険基盤に業務自動化を組み込む型の3つに大きく分かれます。自社がどの業務を効率化したいかによって、選ぶべきタイプは変わります。

製品を選ぶ際は、対象業務と業態への適合、既存基幹システムとの連携、記録・監査証跡などの内部統制対応、料金の明確さとスモールスタートの可否を確認すると、導入後のミスマッチを避けられます。まずは効果の大きい業務から段階的に始め、効果を見ながら広げていく進め方が、無理のない定着につながります。比較表と選定診断ツールを活用し、自社の課題に合ったシステムを見つけてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 保険業界向けワークフローシステムとは何ですか?

A. 保険業界向けワークフローシステムとは、保険会社の社内稟議・申請承認や、新契約・保全・保険金支払といった保険事務の書類処理を、紙・押印に頼らず電子化・自動化するシステムの総称です。ひとくちに保険業界向けと言っても対象とする業務範囲は製品によって異なり、社内の決裁を電子化する汎用型から、保険事務の書類・イメージ処理に特化した型、保険基幹システムに業務自動化を組み込む型まで幅があります。

自社のどの業務を効率化したいかによって、選ぶべき製品が変わります。

Q. 保険業界向けワークフローシステムにはどんなタイプがあり、それぞれどんな業務に向いていますか?

A. 保険業界向けワークフローシステムは、対象とする業務のレイヤー別に「社内の稟議・申請承認を電子化する汎用型」「保険事務(新契約・保全・保険金支払)の書類・イメージ処理に特化した型」「保険基幹・デジタル保険基盤に業務自動化を組み込む型」の3タイプに大きく分かれます

まず社内の紙・押印をなくして決裁を速くしたいなら汎用型、大量の保険事務書類の処理品質を均一化したいなら書類特化型、契約管理や引受査定など基幹業務そのものを自動化したいなら基幹組み込み型が向いています。3つは排他的ではなく、効率化したい業務が複数あれば組み合わせて検討することもあります。

Q. 保険業界向けワークフローシステムの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 保険業界向けワークフローシステムの導入期間は、社内稟議型のクラウド製品では最短で数営業日から数か月、基幹業務に組み込む大掛かりなタイプではより長期にわたるなど、対象業務の広さによって大きく異なります。たとえば汎用の稟議ワークフローには最短5営業日から導入できるとする製品や、数名の体制で約3か月ほどで運用を開始した保険会社の事例があります。

一方、契約管理や保険金支払など基幹業務まで対象を広げるほど要件定義や既存システムとの調整に時間がかかるため、導入期間は個別の要件で確認しておくと安心です。

Q. 保険業界向けワークフローシステムの料金は公開されていますか?

A. 保険業界向けワークフローシステムの料金は、社内稟議型のクラウド製品ではユーザー数に応じた月額料金が公開されていることが多い一方、保険事務特化型や基幹組み込み型は個別見積もりで「要お問い合わせ」となる場合が少なくありません。汎用の稟議ワークフローには初期費用0円・1ユーザー月額数百円といった料金を公開している製品があり、費用の見通しを立てやすい傾向があります。

保険基幹に踏み込むタイプは自社の業務範囲や規模で費用が変わるため、比較検討の段階で対象業務を絞って見積もりを取ると判断しやすくなります。

Q. 保険業界向けワークフローシステムは既存の保険基幹システムと連携できますか?

A. 保険業界向けワークフローシステムが既存の基幹システムと連携できるかは製品によって異なり、導入前にデータ連携方式(APIの有無、連携できる項目、リアルタイム連携か日次バッチか)を確認することが重要です。連携ができないと承認後のデータを人手で再入力することになり、効率化の効果が半減します。

とくに基幹業務に踏み込むタイプでは連携方式が導入の可否を左右し、社内稟議型でも人事システムやシングルサインオン基盤との連携可否を確認しておくと運用負荷を抑えられます。

Q. 保険業界向けワークフローシステムは少額短期保険や共済でも使えますか?

A. 保険業界向けワークフローシステムは、少額短期保険業者や共済でも利用でき、生保・損保の大手だけでなく、規模の限られる事業者向けの製品・提供形態も存在します。社内稟議型の汎用ワークフローは業態を問わず使えるほか、基幹組み込み型でも少額短期保険・共済に対応した提供形態や、この分野で実績を持つ製品があります。

ただし扱う事務や規模は業態によって異なるため、自社の業態で使われている実績があるか、業態特有の事務に対応できるかを製品の対象業務と照らして確認するとミスマッチを避けられます。

Q. 保険業界向けワークフローシステムは自社の複雑な承認ルールに対応できますか?

A. 保険業界向けワークフローシステムが自社の複雑な承認ルールに対応できるかは製品の設定自由度によって差があり、設定の自由度が低いパッケージ製品では金額や案件の種類で承認者が変わるようなルールをそのまま再現できない場合があります。保険会社の稟議・決裁には独自の複雑なルールが存在することがあるため、導入前に自社の代表的な承認フローを実際に設定できるかを試すことをおすすめします。

難しい場合は、個別のカスタマイズや設定支援に対応してくれるベンダーかどうかを確認しておくと安心です。

Q. 保険業界向けワークフローシステムは記録・監査証跡など内部統制に対応できますか?

A. 保険業界向けワークフローシステムの内部統制対応は、「誰が・いつ・何を承認したか」の証跡が改ざんできない形で残るか、承認者の権限を役職や職務に応じて細かく設定できるかを確認すべきポイントになります。保険業は事務の正確性と記録の保存が強く求められる業種のため、監査対応や規制対応を見据えるなら権限管理・操作ログ・保存期間の設定といった機能の有無を導入前に具体的に確認しましょう。

申込書や請求書類を電子化する場合は、電子帳簿保存法などの記録の保存要件に沿った運用ができるかも見ておくと安心です。

Q. 保険業界向けワークフローシステムはスモールスタートで導入できますか?

A. 保険業界向けワークフローシステムは、対象部署や対象業務を絞って小さく始め、効果を見ながら広げられる製品を選べばスモールスタートが可能です。社内稟議型のクラウド製品は少人数から始めやすく、基幹組み込み型でも機能を絞って初期費用を抑えた小規模向けモデルや、必要な機能から単体で導入できる提供形態を用意する製品があります。

とくに少額短期保険や共済のように規模が限られる場合は、最初から全業務を一度に電子化しようとせず、効果の大きい業務から段階的に導入すると過大投資を避けられます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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