海外の顧客から注文が入り始めたのに手元の決済で通らない、あるいは越境ECをこれから始めたいのに現地の決済手段への対応方法が見えない——このような場面で、候補となる決済手段や決済代行サービスを短時間で絞り込みたい担当者は少なくありません。
越境ECでは、日本国内向けECで用いてきたクレジットカード決済だけでは購入に至らないケースが増えています。地域ごとに主流の決済手段が異なるうえ、対応通貨や入金サイクル、EMV 3-Dセキュアなどのセキュリティ要件も国内向けECとは前提が変わります。
本記事では、越境ECで実際に使われる主要な決済手段の一覧、越境対応の決済代行サービス14社の比較、国・地域別の主要決済手段マトリクス、費用相場、EMV 3-Dセキュア義務化を含む注意点を整理します。読み終えたときに、自社が狙う国・商材と決済ニーズに合う候補を3〜5社に絞れる状態を目指します。
目次
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越境ECで使われる決済手段の一覧
ここからは、越境ECで実際に使われる主要な決済手段を、種類ごとに整理します。海外の消費者は自国で普段使い慣れた決済手段を求める傾向が強く、対応の可否が購入率と直結します。
電子商取引全体で見ると、Worldpay『Global Payments Report 2025』の集計ではデジタルウォレットが世界のオンライン取引額の56%、アジア太平洋(APAC)では77%を占め、カードを凌ぐ主要チャネルになっています。特にAPACの14市場中8市場で、デジタルウォレットが最大のオンライン決済手段です。
出典・参考資料(1件)
グローバルウォレット系(PayPal ほか)
PayPalは、越境ECで最も認知度の高いグローバルウォレットです。米国SECに提出されたPayPal Holdingsの2025年通期報告書(Form 10-K)では、2025年12月末時点のアクティブアカウントは4億3,900万口座、年間取扱高(TPV)は1兆7,900億USドルと開示されています。買い手保護制度が広く知られているため、初回購入時の心理的ハードルを下げる働きも見込めます。
PayPalは、加盟店手数料に加えて越境取引には追加料金がかかる点にも注意が必要です。PayPal米国のMerchant Feesページには次のとおり明記されています。
Additional fee for international commercial transactions: 1.50% (applies to all commercial transaction types on top of domestic fees)
Merchant Fees|PayPal(2026年7月15日更新、米国)
Apple PayやGoogle Payといった端末ウォレットは、決済処理そのものはカードや現地決済に接続される「入口」の位置づけで、越境EC事業者にとってはPSPが対応しているかを確認する対象になります。
中国系QR/カード決済(Alipay・WeChat Pay・銀聯/UnionPay)
中国本土の消費者を狙うなら、AlipayとWeChat Pay(微信支付)、そして銀聯(UnionPay)の3系統は避けて通れません。中国の消費者は日本発行の国際ブランドカードを持たないケースが多く、日本発カードだけの決済導線では中国市場にリーチできないためです。
銀聯カードの発行・利用範囲は、銀聯国際(UnionPay International)公式ページで次のとおり示されています。
UnionPayカードは58の国と地域で発行され、177の国と地域でご利用いただけます
銀聯国際について|UnionPay International 日本語版
Alipayは自社ブランドのAlipay(中国本土向け)に加え、パートナーウォレットを一括統合する「Alipay+」を展開しています。Alipay+ 経由でGCash(フィリピン)、Touch ‘n Go eWallet(マレーシア)、KakaoPay(韓国)、Naver Pay(韓国)、TrueMoney(タイ)など、東南アジア・東アジア各国の主要ウォレットに1接続でリーチできる設計です。
日本の事業者は、Alipay・WeChat Pay・銀聯の3系統と、Alipay+ 経由の地域決済のカバレッジを軸にPSPを選ぶことになります。
アジア各国のローカルウォレット・A2A決済(KakaoPay・GrabPay・GCash・PromptPay ほか)
韓国・東南アジアの主要市場では、それぞれ独自のローカルウォレットや口座間送金(Account-to-Account, A2A)が主流になっています。
韓国ではKakaoPay・Naver Pay・PAYCO、シンガポール・マレーシアではGrabPay・Touch ‘n Go eWallet・Boost、フィリピンではGCash・Maya、タイではPromptPay・TrueMoney・Rabbit LINE Payといった選択肢があります。
Worldpay『Global Payments Report 2025』が示すとおりAPACのオンライン決済はデジタルウォレット優位で、香港では電子商取引におけるデジタルウォレット支出額が同年に初めてカードを上回りました。狙う国が明確な事業者ほど、その国のローカルウォレット対応可否が候補絞り込みの重要な軸になります。
主要国際カードブランド(Visa・Mastercard・American Express・JCB・Diners)
グローバルに広く受け入れられるベースラインは、Visa・Mastercardの2大国際ブランドです。PayPalは自社ウォレット決済だけでなくカード決済のフォールバックとしても機能し、American Express・JCB・Dinersは対応エリアが限られるため、狙う地域の顧客層に合わせて拡張の可否を判断します。
越境で海外発行のカードを受け付ける場合は、後述のEMV 3-Dセキュア対応の可否と、対応通貨(消費者への表示通貨と加盟店への入金通貨)を必ずセットで確認します。
BNPL・分割払いの越境ECでの位置づけ
Buy Now Pay Later(BNPL、後払い分割)は、越境ECでも購入率を高める補完手段として存在感を増しています。KlarnaやAffirmといった欧米の主要BNPLは、高単価商材の一括購入に躊躇する消費者への選択肢となり、カート放棄の抑制につながる場面があります。
BNPLは越境EC全体の共通ニーズというより、狙う市場でBNPLが日常決済として定着しているかどうかで導入の要否が変わります。北欧・オーストラリア・ドイツなどKlarnaやAfterpayが広く普及した市場では、対応済みのPSPを候補に含めることで購入率のロスを抑えられます。
一方、日本発の後払いサービス(Paidy・NP後払い等)は国内消費者向けが中心で、海外の買い手には届かない点に注意が必要です。BNPLの重要度は市場ごとに二極化するため、全市場向けに一律で強化するよりも、狙う国のBNPL定着度から遡って判断するのが実務的です。
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越境EC対応の決済代行サービス比較と主要各社の紹介
ここからは、前節で挙げた決済手段を実際に自社ECへ実装してくれる「決済代行サービス(PSP)」を、越境対応の観点から比較します。国内向けECを長年支えてきた日本発PSPと、対応国・通貨・地域決済の広さで先行するグローバルPSPでは、強みと選定基準が異なります。
日本発 PSP とグローバル PSP の位置づけ・使い分け
日本発PSPは国内の主要カート・受注管理システムとの連携実績、日本語のサポート体制、日本のアクワイアリング(カード会社との加盟店契約)を含む一気通貫の提供が強みです。越境の主要決済手段(Alipay+/WeChat Pay/銀聯/PayPal)にも対応し、既存の国内EC運用と地続きで越境チャネルを追加できます。
グローバルPSPは対応通貨・対応国・地域決済のカバー範囲、加盟店手数料の透明性、API開発ドキュメントの厚みで優位です。特定国のローカルウォレットを含めて広く受注したい場合や、複数国に事業を展開する場合に候補となります。
日本発の主要決済代行
日本発PSPの中核は、GMOペイメントゲートウェイのマルチペイメントサービス、SBペイメントサービス、DGフィナンシャルテクノロジーのVeriTrans4G、SP.LINKS(旧ソニーペイメントサービス)のe-SCOTT Smartです。
KOMOJUは日本発でありながら韓国・中国・東南アジア・欧州のローカル決済カバレッジが厚く、越境志向で選ばれる場面が増えています。ID決済のAmazon Payは、海外Amazonアカウント保有者からの購入を捕捉できる観点で越境の周辺選択肢に位置付けられます。UnivaPayとelepayは、アジアのローカルウォレットを幅広く扱う専業寄りのPSPです。
グローバル系決済代行
グローバル系はStripe・PayPal・Adyen・Worldpay・Checkout.comが代表的です。Stripeは開発者向けAPIの充実と対応国・通貨の広さでスタートアップから中堅までの導入例が多く、Adyenは自社アクワイアリング(in-house acquiring)を持つ大規模事業者向けのエンタープライズ寄りの選択肢です。
Worldpay・Checkout.comは多通貨処理と地域決済カバレッジで欧州系グローバル展開に強みを持ちます。アジア発のOmise(旧Opn Payments)は、東南アジア進出を意識する事業者にとって東南アジア発のAPI型PSPとして固有の位置を占めます。
主要決済代行の比較表
越境EC対応の主要14社について、対応通貨・対応国・主要現地決済の対応可否・EMV 3-Dセキュア対応・料金水準をスポット比較表に整理します。数値は執筆時点で確認した各社公式情報に基づきますが、料金・対応範囲は変動するため、最終確認は必ず公式サイトで行ってください。
| サービス名 | KOMOJU | PGマルチペイメント | SBペイメントサービス | VeriTrans4G | e-SCOTT Smart | Omise | UnivaPay | elepay | Amazon Pay | Stripe | PayPal | Adyen | Worldpay | Checkout.com |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社KOMOJU | GMOペイメントゲートウェイ株式会社 | SBペイメントサービス株式会社 | 株式会社DGフィナンシャルテクノロジー | SP.LINKS株式会社 | Opn株式会社 | 株式会社ユニヴァ・ペイキャスト | ELESTYLE株式会社 | アマゾンジャパン合同会社 | ストライプジャパン株式会社 | PayPal Pte. Ltd. | Adyen Japan株式会社 | Worldpay株式会社 | Checkout株式会社 |
| 対応通貨・対応国 | 国内外65+決済手段 (韓・中・東南ア・欧・ブラジル) | 国内外30+決済手段 | 40ブランド以上 | 30種類以上 (マルチカレンシー対応) | 40種類以上 | 日本・タイ・シンガポール マレーシア・インドネシア・米国 | 海外モバイルウォレット 18ヶ国以上 | 40ブランド超 (アジア各国のローカルウォレット含む) | 米国・欧州の Amazonアカウントに対応 | 195カ国・135通貨以上 | 200+国・地域/100+通貨 (日本受取22通貨) | 150+通貨・200+ローカル決済手段 | 174カ国・135通貨 | 50+カ国・150+通貨 |
| Alipay+ | ● | ● | ● | ● | ● | – | ● | ● | × | – | – | ● | ● | ● |
| WeChat Pay | ● | ● | ● | – | ● | – | ● | ● | × | – | – | ● | ● | – |
| 銀聯(UnionPay) | ● | ● | ● | ● | – | – | – | – | × | – | – | ● | – | – |
| EMV 3-Dセキュア | ●(2.0を無償提供) | ●(3Dセキュア2.0) | ●(無償オプション) | ●(ASUKA-3DS導入支援) | ● | – | ● | ●(3Dセキュア2.0) | – | ●(3D Secure 2/SCA) | – | ●(3DS2・SCA) | ● | ● |
| 初期費用 | 無料 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ (連携プランは無料) | 無料 | 要問い合わせ | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 (最低請求額あり) | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 月額費用 | 無料 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ (連携プランは無料) | 無料 | 要問い合わせ | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 決済手数料の目安 | クレカ3.25%/銀聯2.80% Alipay 2.90%〜 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ (連携プラン3.5%〜) | Visa/Mastercard 2.95%〜 JCB 3.60%〜 | 要問い合わせ | クレカ3.6%〜 QR・コード3.24%〜 | 物販3.9%/デジタル4.5% | 国内カード3.6% (ブランド一律) | 国内3.60%+40円/件 越境4.10%+40円/件 | 要問い合わせ (interchange+++$0.13/取引) | 要問い合わせ (interchange-plus型) | 要問い合わせ |
| 詳細情報 | サービス詳細 | 公式サイト | サービス詳細 | サービス詳細 | サービス詳細 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | サービス詳細 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
本記事の14社は越境対応の観点で絞ったものです。国内EC・実店舗・サブスクを含めたオンライン決済システム全体を比較したい場合は、以下の記事で36サービスを整理しています。
オンライン決済システムおすすめ36選を徹底比較|実店舗・EC・サブスク別の選び方
ECサイトやWebサービスの決済手段が少なく、購入直前の離脱(カゴ落ち)に悩んでいませんか。クレジットカードに加えてコンビニ払いやQRコード決済、後払いまで顧客の希望に応えようとすると、決済会社ごとの個別契約や入金管理の手間が膨らみ、決済手…
1. KOMOJU(コモジュ)

KOMOJUは、株式会社KOMOJU(旧DEGICA、2026年3月社名変更)が提供する日本発の決済代行サービスです。初期費用・月額費用は0円で、売上発生時の決済手数料のみが発生する料金体系を採用しています。
65種類以上の国内外決済手段に対応し、韓国のKakaoPay・Naver Pay、中国のAlipay・WeChat Pay・銀聯、東南アジアのGCash・DANA・Touch ‘n Go、欧州のBancontact・BLIKなど、越境ECで求められる主要な現地決済を幅広くカバーします。
日本発でありながら海外ローカル決済のカバレッジが厚いため、越境志向のD2C事業者からアジア・欧州の中小市場を狙う事業者まで、幅広い読者層で候補に入りやすいPSPです。
2. PGマルチペイメントサービス(GMOペイメントゲートウェイ)

GMOペイメントゲートウェイ株式会社が提供するPGマルチペイメントサービスは、国内・国外あわせて30以上の決済手段を1契約で導入できる総合PSPです。クレジットカード決済に加え、Alipay・WeChat Pay・UnionPay(銀聯)・PayPal・Amazon Pay・Google Pay・Apple Payを含む幅広いラインナップを揃えています。
大手PSPとしての導入実績と、決済処理の信頼性・監視体制で、東証プライム上場企業から中堅ECまで採用されています。海外向けの追加通貨対応はグループのZ.com Payment byGMOにも接続でき、規模拡大時の道筋が用意されています。
3. SBペイメントサービス(オンライン決済サービス)

SBペイメントサービス株式会社は、ソフトバンクグループの決済代行として40ブランド以上のオンライン決済に対応しています。越境EC向けには、Alipay+・WeChat Pay・銀聯ネット決済の中国系3系統を自社ラインナップに揃え、公式サイト内の越境EC解説ページで中国・米国の主要決済手段を整理しています。
大手キャリア系決済代行として国内EC事業者への浸透度が高く、越境対応を国内契約と一元化したい場合の候補になります。
出典・参考資料(1件)
4. VeriTrans4G(DGフィナンシャルテクノロジー)

VeriTrans4Gは、株式会社DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)が提供する老舗の総合決済プラットフォームです。1997年創業以来の運用実績を持ち、クレジットカード・PayPal・銀聯・Alipay+を含む幅広い決済手段と、マルチカレンシークレジットカード決済の提供が特徴です。
大規模EC・エンタープライズ向けの導入実績が厚く、既存の国内向け決済基盤の延長線上で越境対応を組み込みたい場合の実装パートナーになります。
5. e-SCOTT Smart(SP.LINKS)

SP.LINKS株式会社(2025年10月にソニーペイメントサービスから社名変更)が提供するe-SCOTT Smartは、40種類以上の決済手段に対応する統合PSPです。公式サイト内で越境EC解説(「決済を制するものが越境ECを制する」等)を継続発信しています。
ソニーグループ由来のシステム基盤の安定性と、決済ブランドの網羅性を両立させたい事業者の候補になります。
6. Omise(オミセ、旧Opn Payments)

Omiseはタイ発のAPI型PSPで、タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシア・日本・米国で展開しています。単一のAPIで多通貨・多数の地域決済手段に接続でき、東南アジア進出を意識する事業者にとって他社では代替しにくい選択肢となります。
2025年3月にブランドをOmiseへ回帰し、日本市場では受入決済ブランドの拡充が続けられています。
7. UnivaPay(ユニヴァペイ)

UnivaPayは、株式会社ユニヴァ・ペイキャストが提供する越境志向のPSPです。Alipay+・WeChat Payに加え、KakaoPay・Naver Pay・Toss Pay(韓国)、Alipay HK、MPay、JKOPAY、Tinaba、Bluecode、東南アジア各国のウォレットなど、海外モバイルウォレット18ヶ国以上への対応を明示的に打ち出しています。
Webサイトなしで支払いリンクを発行する形態にも対応しており、SNS販売や海外顧客への請求書型受注など、越境で発生しがちなニッチな回収シーンにも合わせやすい設計です。
8. elepay(エレペイ)

elepayは、ELESTYLE株式会社が提供するAPI/SDK寄りの決済ゲートウェイです。Alipay・WeChat Pay・Alipay+・DANA・Boost・TrueMoney・GCash・KakaoPayを含む40ブランド超のアジア決済を一括導入できる点が特徴で、開発者向けドキュメントの整備が厚く、実装粒度で選ばれる場面が多くあります。
9. Amazon Pay(アマゾンペイ)

Amazon Payは、Amazonアカウントに登録された住所・支払い情報を用いて外部ECで決済できるID決済です。米国・欧州のAmazonアカウントを持つ消費者からの越境注文を捕捉できます(アジア圏の各国 Amazon は対象外)。
本記事の14社の中では、単独で越境の主軸を担うタイプではなく、他PSPと併用して米欧のAmazonユーザー層の購入率ロスを抑える補完枠として位置付けます。中国・東南アジアを主軸に狙う場合の第一候補にはなりません。
10. Stripe(ストライプ)

Stripeは、開発者向けAPIの充実と対応国・通貨の広さで急速に普及したグローバルPSPです。ストライプジャパン株式会社が日本の加盟店契約を担い、Payment LinksのようなノーコードUIからカスタム実装まで段階的に選べます。既にShopifyなどのカートを運用している事業者にとって、越境決済の第一候補として上がりやすいサービスです。
ストライプジャパンは越境EC向けの日本語コンテンツにも継続して投資しており、日本市場への対応度は年々厚みを増しています。
11. PayPal(ペイパル)

PayPalは、越境ECにおけるグローバルウォレットの代表格です。前述のとおり2025年12月末時点で4億3,900万のアクティブアカウントを持ち、200以上の市場でサービスを展開しています。海外の買い手にとって既知の決済手段であり、初回購入のハードルを下げる働きが見込めます。
加盟店手数料は基本料率に加えて越境取引時に追加料金が発生します。米国の Merchant Fees では +1.50%(記載どおり)、日本の PayPal ビジネス手数料表では +0.50%(3.60%→4.10%)と料率の建付けが異なるため、事業者の PayPal アカウント所在(日本/米国など)に応じた実際の料率で試算します。
12. Adyen(アディエン)

Adyenはオランダ発のグローバルPSPで、150以上の通貨と200以上のローカル決済手段を単一プラットフォームで提供し、自社アクワイアリング(in-house acquiring)を持つ点が特徴です。日本国内のアクワイアリング機能も保有し、ファーストリテイリングをはじめとする国内エンタープライズの導入事例があります。
中〜大規模で複数国に事業を展開する場合や、決済データを1つのダッシュボードで横断把握したい事業者の候補となります。
13. Worldpay(ワールドペイ)

Worldpayは英国発のグローバルPSPで、174カ国・135通貨に対応し、越境ECをコア訴求として位置づけています。多通貨処理(レートロック・DCC・為替マークアップ)に関する機能が厚く、為替差損の管理を重視する事業者に選ばれます。日本市場ではスマートチェックアウトなどの代理店経由での提供が中心です。
グローバル決済動向の年次レポート『Global Payments Report』を毎年発行しており、本記事でも同レポートの数値を参照しています。
14. Checkout.com

Checkout.comは英国発のPSPで、50カ国以上・150通貨以上に対応しています。2024年11月に日本市場でのローカルアクワイアリング機能を導入し、日本法人・METI登録・日本クレジット協会加入体制での提供に移行しました。
中〜大規模の越境事業者に向けて、Adyen・Worldpayと並ぶ選択肢の1つとして候補に上ります。
国・地域別「その国で普段使われている決済手段」対応マトリクス
ここからは、狙う国・地域を選んだときに「その市場の消費者が日常的に使う決済手段」の全体像を把握できるように整理します。
経済産業省『令和6年度 電子商取引に関する市場調査』(2025年8月)によれば、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆6,372億円(前年比+8.5%)、米国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は3兆1,397億円(前年比+6.0%)に達しています。これら2市場と、それ以外のアジア・欧州市場では前提が異なるため、地域別に整理します。
東アジア(中国/韓国/台湾/香港)
中国はAlipay・WeChat Payを中心とするデジタルウォレットが日常決済の中核で、実店舗・オンラインを問わず日本発カードでは決済が完結しない場面が多くあります。海外購入向けにはAlipayや銀聯(UnionPay)が主軸で、日本発PSPを介して接続します。
韓国はKakaoPay・Naver Pay・PAYCOのローカルウォレットに加え、Samsung Payやカード会社発行の各種ローカルカードが利用されます。KOMOJUなど韓国決済カバレッジの厚い日本発PSPで対応可能です。
台湾・香港では国際ブランドのカードが広く受け入れられる一方、香港はデジタルウォレット(Alipay HK・Octopus など)の比率が電子商取引でカードを上回る段階に入っています。
東南アジア(シンガポール/マレーシア/タイ/インドネシア/フィリピン/ベトナム)
東南アジアはローカルウォレットとA2A決済の存在感が急速に高まっている地域です。シンガポール・マレーシアではGrabPay・Touch ‘n Go eWallet・Boost、タイではPromptPay・TrueMoney・Rabbit LINE Pay、インドネシアではOVO・DANA・GoPay、フィリピンではGCash・Mayaが主要な現地決済手段です。
これらへの網羅的な対応を狙う場合は、Alipay+統合を持つPSP(SBペイメントサービス・GMO PG など)、あるいは東南アジア発のOmiseが候補になります。
北米(アメリカ/カナダ)・欧州(英・独・仏など)
北米はクレジットカードとPayPalが依然として主流で、Worldpayの集計では2024年時点で米国のオンライン取引額の40%がデジタルウォレット、カナダの電子商取引の32%がデジタルウォレット経由となっています。ApplePay・GooglePayをオンラインでも受け付けられるPSPが優位です。
欧州はカード決済に加え、ドイツのSofort/Lastschrift、オランダのiDEAL、ベルギーのBancontact、ポーランドのBLIK、ポルトガルのMultibancoといった国別のA2A・銀行送金型の決済が根強く残ります。国別のローカル決済対応の網羅性がPSP選定に効きます。
国別対応マトリクス
主要国・地域と代表的な決済手段を、狙う市場に応じた候補選定の入口として一枚で示します。
| 国・地域 | 中国 | 韓国 | 台湾 | 香港 | シンガポール | マレーシア | タイ | インドネシア | フィリピン | ベトナム | アメリカ | カナダ | 英国 | ドイツ | フランス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 主要国際カード | 銀聯(UnionPay)中心 | Visa、Mastercard | Visa、Mastercard、JCB | Visa、Mastercard、AmEx | Visa、Mastercard、AmEx | Visa、Mastercard | Visa、Mastercard | Visa、Mastercard | Visa、Mastercard | Visa、Mastercard | Visa、Mastercard、AmEx | Visa、Mastercard、AmEx | Visa、Mastercard、AmEx | Visa、Mastercard | Visa、Mastercard、AmEx |
| 主要デジタルウォレット | – | Samsung Pay | Apple Pay、Google Pay | Apple Pay、Google Pay | PayPal、Apple Pay、Google Pay | Apple Pay、Google Pay | Apple Pay、Google Pay | – | – | – | PayPal、Apple Pay、Google Pay | PayPal、Apple Pay、Google Pay | PayPal、Apple Pay、Google Pay | PayPal、Apple Pay、Google Pay | PayPal、Apple Pay、Google Pay |
| 主要ローカル決済 | Alipay、WeChat Pay、銀聯(UnionPay) | KakaoPay、Naver Pay、Toss Pay、PAYCO | JKOPAY、LINE Pay | Alipay HK、Octopus、WeChat Pay HK | GrabPay、DBS PayLah!、PayNow | Touch n Go eWallet、Boost、GrabPay、FPX | PromptPay、TrueMoney、Rabbit LINE Pay | OVO、DANA、GoPay | GCash、Maya | MoMo、ZaloPay、VNPay | Venmo | Interac | – | Sofort、Lastschrift、SEPA Direct Debit | Cartes Bancaires |
| 特記事項 | 日常決済はデジタルウォレット中心。日本発PSPでは Alipay+/WeChat Pay/銀聯ネット決済 で接続 | 現地カード会社発行カードとローカルウォレットが主流 | 国際ブランドカードが広く受け入れられる | 2025年に電子商取引のデジタルウォレット支出がカードを上回る(Worldpay 2025) | Alipay+ 統合で GrabPay 等を捕捉可能 | 銀行A2A(FPX)とローカルウォレットが並存 | PromptPay(A2A決済)が急速に拡大 | ローカルウォレット3強が中心 | GCash が突出、Maya が続く | 現地ウォレット・銀行送金が拡大中 | オンライン取引の40%がデジタルウォレット(Worldpay 2025)。BNPL(Klarna/Affirm)浸透 | 電子商取引の32%がデジタルウォレット経由(Worldpay 2025) | BNPL(Klarna 等)が定着 | 銀行送金・口座振替(A2A)の比率が高い | 国内カードスキーム Cartes Bancaires が主流 |
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越境EC対応の決済代行を選ぶ観点
ここからは、候補を3〜5社に絞るための判断軸を整理します。国内向けECのPSP選定と共通する項目もありますが、越境EC特有の論点に絞って重要度の高い5つを取り上げます。
対象国・地域と、そこで使われる決済手段のカバー率
最初の軸は、自社が狙う国の主要決済手段をPSPが押さえているかどうかです。中国を狙うなら Alipay+・WeChat Pay・銀聯の3系統、韓国なら KakaoPay・Naver Pay・PAYCO、東南アジアなら Alipay+ 統合と主要ローカルウォレットの対応可否を確認します。
網羅性の高いPSPほど手数料が上がりやすい傾向があるため、「狙う国だけの対応で十分か、複数市場に広げるか」を最初に決めておくと、比較の判断が早くなります。
対応通貨数と入金通貨(多通貨対応の実装深度)
「対応通貨」には、消費者への表示通貨と、加盟店に入金される通貨の2種類があります。表示は現地通貨で行い入金は円で受ける方式(表示通貨変換)、両方を現地通貨で扱う方式(マルチカレンシー)、加盟店側で通貨ヘッジまで担う方式など、PSPによって実装深度が異なります。
入金通貨が円でない場合は外貨口座や送金経路の準備が必要になり、会計処理や税務にも影響します。実装深度と社内対応コストのバランスで判断します。
手数料水準と入金サイクル(越境で発生しやすい追加コスト)
越境ECでは、基本の決済手数料に加えて、越境取引限定の追加手数料、通貨換算手数料、海外送金の中継手数料などが積み上がります。同じPSPでも、決済手段(カード、ウォレット、A2A)ごとに料率が異なるため、実際の取扱ミックスに合わせて総コストを試算します。
入金サイクルは日本国内向けよりも長くなる傾向があり、現金化のタイミングが仕入れサイクルに与える影響を確認します。
セキュリティ・不正対策(EMV 3-Dセキュア対応/不正検知エンジン/チャージバック保険)
越境EC向けカード決済では、日本発PSPを介する場合は後述のEMV 3-Dセキュア対応が実装ゲートになります。加えて、不正検知エンジン(機械学習ベースのスコアリングやルール型フィルタ)、チャージバック発生時の保険や補償の有無で、事業者側のリスク負担が変わります。
越境では海外の不正利用パターン(配送先と請求先の乖離、身元不明カードでの高額購入など)に晒されやすいため、標準機能で提供されるのか、オプション課金なのかを確認します。
自社カート・EC基盤との組み込み方式(実装容易性)
自社ECがShopify・EC-CUBE・futureshopなどの既製カートを使っているのか、独自基盤かによって、PSPの選定基準は変わります。既製カートを使っている場合は公式プラグインまたは連携アプリの提供状況を、独自基盤の場合はREST API・SDK・Webhookのドキュメント品質を確認します。
実装工数はランニングコストと同じくらい選定に影響する要素です。開発リソースが限られる小規模事業者ほど、Payment LinksのようなノーコードUIを持つPSP(Stripe など)が有力候補になります。
越境EC決済の費用相場(初期費用・月額・決済手数料・入金サイクル)
ここからは、越境ECにかかる決済コストの全体像を整理します。公開情報から相場感を掴めるよう、費用項目・主要PSPの実額水準・見落としがちな追加コストの順に見ていきます。
費用項目の全体像
越境EC決済の費用は、次のような要素で構成されます。
- 初期費用:契約時にかかる導入費(0円〜数十万円が目安)
- 月額固定費:管理画面や運用サポートに紐づく月額料金(0円〜数万円)
- 決済手数料:取引ごとに発生する料率(決済手段・国・カードブランドで変動)
- 入金サイクル:売上が加盟店口座に入金されるまでの期間(月次締めから複数回入金まで)
- 入金通貨・為替手数料:現地通貨受け取り時の通貨換算手数料
- 振込手数料・海外送金中継手数料:海外口座での受け取り時に発生する外部コスト
主要PSPの費用相場の目安
初期費用・月額固定費が0円のPSPとしては、KOMOJU・Stripe・PayPal・Omise・elepay・Amazon Payが代表例で、いずれも実際に決済が発生したときにだけ手数料が計上されます。導入検討時に固定コスト部分をゼロで見積もれる選択肢です。
公開されている決済手数料の実額を並べると、KOMOJU が国内カード 3.25%、Stripe が国内発行カード 3.6%、PayPal が国内 3.60%+40円/件・越境 4.10%+40円/件(+0.50%加算、PayPal 日本のビジネス手数料表)、Amazon Pay が 3.9%〜4.5%、Omise が 2.95%〜、elepay が 3.6%〜となっています。
カード決済ベースでは概ね 2.95%〜4.5% のレンジに収まり、Alipay/WeChat Pay 等の地域決済はさらに個別料率です。公開値のあるPSPを起点に、社内資料での概算試算を組み立てられます。
GMO PGマルチペイメントサービス・SBペイメントサービス・VeriTrans4G・e-SCOTT Smart・UnivaPay・Worldpay・Checkout.com などの大手日本発PSPおよび一部グローバル大手は、事業規模と決済手段の組み合わせに応じた個別見積もりで、初期費用・月額固定費・決済手数料の実額は公式非公開のケースがほとんどです。
社内検討で相場感を示す場合は「初期費用ゼロから/月額基本料は要問い合わせ〜数万円/決済手数料は要問い合わせ」と幅を持たせて記載し、実額は候補社への見積もり依頼で確定させます。
Adyen・Worldpay は interchange++(カード会社への実費インターチェンジに代行料率を上乗せする料金モデル)を採用しており、事業規模が大きくなるほどコスト最適化が効きやすい構造です。中〜大規模の越境事業者では、この料金モデル自体が候補判断の一要素になります。
費用比較で見落としがちな項目(越境特有の追加コスト)
PayPalは、米国のMerchant Feesページに次のとおり、越境取引の基本料率に上乗せする追加料金が明示されています。
A transaction is international when the sender and recipient are registered with or identified by PayPal as residents in different markets.
Additional fee for international commercial transactions: 1.50% (applies to all commercial transaction types on top of domestic fees)
Merchant Fees|PayPal(米国、2026年7月15日更新)
越境時の追加手数料は他のグローバルPSPでも同様の仕組みが用意されていることが多く、基本料率だけを比較すると総コストの逆転が起きます。加えて、通貨換算手数料(0.5〜2%程度)、外貨口座での受け取り時の中継手数料(送金経路によって数千円〜)、決済単価の低いマイクロトランザクションでの固定手数料の相対比率などが、実運用の総コストを押し上げやすい要素です。
越境EC決済で押さえるべき注意点
ここからは、候補選定の後段で見落とすと売上・利益・信頼を毀損しやすい5論点を整理します。多通貨表示、為替差損、EMV 3-Dセキュア義務化、越境特有のチャージバック、関税・DDP/DAPの選択の順に取り上げます。
現地通貨表示と自動通貨変換(表示通貨と決済通貨の分離)
海外の消費者に価格を示すときは、可能な限り現地通貨で表示するのが基本です。円建て表示のままだと購入前に暗算での換算負担が発生し、購入率が下がりやすくなります。表示通貨変換(自動)に対応するPSP・カートを使えば、閲覧地域に応じた通貨表示に切り替えできます。
ただし、表示通貨と決済通貨・入金通貨は必ずしも一致しません。表示は現地通貨で行いつつ決済・入金は円で受ける方式では、消費者側にDCC(Dynamic Currency Conversion=加盟店側の口座通貨で決済する際にカード会社が自国通貨への換算を提示する仕組み)が適用され追加手数料が発生する場合がある点にも留意します。
為替差損と入金通貨の扱い
入金通貨が円以外の場合、売上計上時と入金時の為替レート差により為替差損益が発生します。売上規模が大きいほど為替の変動リスクは無視できません。
PSPによってはレートロック(一定期間レートを固定する仕組み)や、多通貨口座への直接入金オプションを提供しています。会計処理の負担、外貨口座維持コスト、為替ヘッジの必要性を含めて判断します。
EMV 3-Dセキュア義務化(2025年3月末施行)と越境EC事業者への実務影響
日本国内のEC加盟店には、2025年3月末を期限としてEMV 3-Dセキュアの導入が義務づけられています(現在は施行済み)。「クレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】」(クレジット取引セキュリティ対策協議会、事務局:一般社団法人日本クレジット協会)は次のように明記しています。
EC 加盟店における非対面不正利用被害が増加している現状を踏まえ、2025 年 3 月末までに、原則、全ての EC 加盟店に EMV 3-D セキュアの導入を求めることとしている。
クレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】|クレジット取引セキュリティ対策協議会(2024年3月)
同ガイドラインは決済事業者に対しても、加盟店契約時の説明義務を課しています。
EC 加盟店と新規に加盟店契約する際は、2025 年 3 月末までに EMV 3-D セキュアを導入することを説明した上で契約する。
クレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】|クレジット取引セキュリティ対策協議会
この義務は日本のアクワイアラー契約下にあるEC加盟店を対象とするため、海外PSPと直接契約する形態には直接及びませんが、日本発PSP(GMO PG・SBPS・VeriTrans4G・KOMOJU など)を使う場合は実装ゲートとして必ず組み込まれます。
施行以降、未対応の加盟店はカード会社側で認証エラー時の責任分岐(ライアビリティシフト)を受けられず、チャージバック負担が事業者に残る運用に切り替わっています。越境ECでも、海外発行カードを受け付ける以上、3-Dセキュア対応は購入率と不正リスクの両面で必須要件と捉えるのが実務的です。
義務化の対象範囲や、期限までに加盟店側でやるべき作業、未対応の場合に発生するリスクを踏み込んで整理したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
越境EC特有のチャージバック・不正利用対策とPSP別実装比較
越境ECではチャージバック(消費者側からのカード決済取り消し)の発生率が国内EC比で高くなる傾向があります。配送先と請求先の乖離、身元確認の困難さ、時差による事後対応の遅れなどが背景です。PSPによって、3-Dセキュア対応、不正検知エンジン、チャージバック保険(PSP側が損失の一部を補償する仕組み)の提供状況が異なるため、代表的なPSPを軸に整理します。
| PSP | Stripe | Adyen | PayPal | KOMOJU | GMO PGマルチペイメント |
|---|---|---|---|---|---|
| EMV 3-Dセキュア | 標準(3D Secure 2) | 標準(3D Secure 2) | ブラウザ環境で対応 | 標準対応 | 標準対応(ASUKA-3DS 導入支援) |
| 不正検知エンジン | Stripe Radar(機械学習ベース、標準搭載) | Adyen RevenueProtect(標準搭載) | 不正検知フィルタ内蔵 | 基本的な不正検知(対応可否は要問い合わせ) | Fraud Detection(オプション) |
| チャージバック補償/対応 | Chargeback Protection(オプション) | チャージバック手数料は発生/補償はプランで拡張 | Seller Protection(対象取引の未承認取引補償) | 手数料負担は事業者側 | 個別見積もり/補償はプラン依存 |
比較の要点は、①EMV 3-Dセキュアが標準対応か追加オプションか、②不正検知エンジンが独自か外部連携か、③チャージバック補償やチャージバック手数料負担の設計、の3点です。狙う市場・単価帯・不正リスク許容度に応じて、標準搭載型(Stripe / Adyen)と個別プラン型(GMO PG / SBPS / VeriTrans4G)を使い分けます。
チャージバック発生時に加盟店側が負担する金額の内訳や、3-Dセキュア・不正検知エンジン・チャージバック保証の使い分けを掘り下げて確認したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関税と DDP/DAP の選択(越境配送・返品との関係)
物販の越境ECでは、決済単体だけでなく、関税や輸入税の負担を「販売事業者」「消費者」のどちらが負うかを事前に決めます。
DDP(Delivered Duty Paid)は販売事業者が関税・輸入税を負担する条件で、消費者はチェックアウト時点で総額を確定できます。
DAP(Delivered at Place、旧称DDU=Delivered Duty Unpaid。Incoterms 2010 で DAP に置き換わって以降 DAP が正式名称)は消費者が受取時に関税を支払う条件で、事業者側の会計処理は簡素になる一方、消費者にとってサプライズコストとなり返品率を押し上げる場面があります。
越境ECの決済フローは、この関税負担の設計と密接に関わります。DDPを採る場合は、決済金額に関税相当額を含めて請求できる仕組みや、物流会社との連携(DHL・FedEx などのDDPプログラム)を含めて検討します。消費者向けページで「DDU」の呼称を使う場面もありますが、Incoterms 2020ではDAPが正式名称です。
出典・参考資料(1件)
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まとめ
越境EC決済は、地域ごとに主流の決済手段が大きく異なるうえ、EMV 3-Dセキュア義務化・為替差損・チャージバック・関税といった国内向けECには無い論点が絡み合います。本記事で示した「決済手段の全体像」「越境対応PSP14社の比較」「国別対応マトリクス」「選定観点」「費用相場」「注意点」を組み合わせれば、狙う市場・商材・単価に合う候補を3〜5社に絞り込む段階まで進めるはずです。
狙う市場別に、候補選定の起点になりやすい組み合わせは次のようになります(あくまで比較検討の出発点で、最終判断は各社の見積もりと自社取扱ミックスで確定します)。
- 中国本土を主軸に狙う:KOMOJU、GMO PGマルチペイメント、SBペイメントサービス(Alipay/WeChat/銀聯の3系統をカバーする日本発PSPを起点)
- 韓国・東南アジアを主軸に狙う:KOMOJU、UnivaPay、elepay、Omise(KakaoPay/Naver Pay/GrabPay/GCash 等ローカルウォレット対応の広さで選ぶ)
- 米欧D2Cで越境を始める:Stripe、PayPal、Amazon Pay(Payment Links や既存カート連携の実装容易性と、米欧消費者への到達性で選ぶ)
- 複数市場でエンタープライズ展開する:Adyen、Worldpay、Checkout.com(対応通貨・国数の広さ、自社アクワイアリング、interchange++ 料金モデルで選ぶ)
絞り込んだ後は、必ず各社の公式サイトで最新の対応通貨・料金・入金サイクルを確認し、自社の取扱ミックスに合わせた総コストを試算したうえで、社内検討の資料を作成する流れを推奨します。決済手段はサービス選定の入口であり、実装・運用・改善の継続で越境ECの購入率は着実に伸ばせる領域です。
決済だけでなく、越境ECサイトの構築や、翻訳・海外倉庫・カスタマーサポートなどの運営面もあわせて外部委託を検討している場合は、以下の記事で越境EC代行サービスを比較しています。
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越境EC決済に関するよくある質問(FAQ)
Q. 越境EC決済とは何ですか?
A. 越境EC決済とは、日本の事業者が海外の消費者からの購入を受け付けるために、その市場で使われる決済手段(Alipay・WeChat Pay・PayPal・現地カードブランドなど)を自社ECに組み込む仕組みです。
日本国内向けECの決済(国内発行カードや電子マネー)だけでは、海外の買い手が購入を完了できない場面が多く、対応可否が購入率と直結します。地域ごとに主流の決済手段が大きく異なるため、狙う国・地域と、それを扱える決済代行サービス(PSP)の選定が越境EC決済の中核になります。
Q. 越境EC決済で最初に対応すべき国はどこですか?
A. 越境EC決済で最初に狙う国は、購入額規模の大きい中国と米国から検討するのが実務的な出発点です。経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月)では、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額が2兆6,372億円、米国消費者による購入額が3兆1,397億円と示されています。
ただし、自社の商材が特定市場の消費者に強く支持されている場合(例:韓国向けのK-Beauty周辺、東南アジア向けの食品・アパレルなど)は、その市場のローカルウォレット(KakaoPay・GrabPay・GCashなど)への対応を先に固めた方が費用対効果が高くなります。
Q. 越境EC決済でAlipay・WeChat Payを日本のPSP経由で導入できますか?
A. Alipay・WeChat Payは、日本発の主要PSP(GMOペイメントゲートウェイのPGマルチペイメントサービス、SBペイメントサービス、VeriTrans4G、KOMOJU、UnivaPay、elepayなど)経由で導入できます。日本の事業者がAntグループやテンセントと直接契約するのではなく、PSPが取次となる形が一般的です。
WeChat Payは中国本土の微信アカウントからの決済、Alipayは「Alipay+」として東南アジア各国のウォレット統合にも接続できます。中国本土の消費者を狙う場合は、Alipay・WeChat Payに加えて銀聯(UnionPay)の3系統を揃えるのが基本形です。
Q. Shopifyで日本発の決済代行を越境EC決済に使えますか?
A. Shopifyでは、KOMOJU・GMOペイメントゲートウェイ・SBペイメントサービスなどの日本発PSPが公式アプリまたは連携アプリを提供しており、越境EC決済にも利用できます。Shopify Payments(Stripe基盤)を主軸に据えつつ、Alipay・WeChat Pay・銀聯といった中国系決済のみ日本発PSPを追加する使い分けも可能です。
対応アプリと連携範囲は各社公式ページとShopify App Storeで最新情報を確認してください。Shopifyのプランや地域設定によって、利用できるアプリや機能が変わる場合があります。
Q. EMV 3-Dセキュア義務化に対応していないと越境EC決済にどう影響しますか?
A. EMV 3-Dセキュア未対応で越境EC決済を続けると、カード会社からの加盟店契約解除や、チャージバック損失を加盟店側が全額負担するリスクが高まります。日本ではクレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】により、EC加盟店へのEMV 3-Dセキュア導入が2025年3月末までに原則義務化されています。
日本のアクワイアラー契約下にあるEC加盟店が対象となる制度ですが、越境ECで海外発行カードを受け付ける場合も、購入率と不正リスクの両面から3-Dセキュア対応は事実上の必須要件です。日本発PSP(GMO PG・SBPS・VeriTrans4G・KOMOJUなど)を使う場合、実装ゲートとして必ず組み込まれます。
Q. 越境EC決済のPSPは個人事業主でも契約できますか?
A. 個人事業主でも、Stripe・PayPal・KOMOJUなどオンライン申し込みで契約審査を受けられるPSPを中心に、越境EC決済のPSPと契約できます。開業届の控えや本人確認書類の提出が求められるのが一般的で、法人格の有無を必須要件としないPSPが選択肢の中心になります。
一方で、GMOペイメントゲートウェイのPGマルチペイメントサービスや、VeriTrans4Gなど大手日本発PSPは、法人・中堅以上の事業者向けに設計された契約プロセスをとることが多く、個人事業主単独では審査ハードルが上がる場面があります。取扱高の見込みや商材リスクに応じて、審査の通りやすさと必要な機能のバランスで選定します。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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