取引先を装ったメールの添付ファイルや、日々やり取りする業務ファイルの中に、パターンファイルにまだ載っていないマルウェアが混ざっていないか。社内の誰かがそれを開いてしまう前に止める手立てがない、という不安を抱えていませんか。
受け取ったファイルを業務ネットワークから切り離した環境で実際に動かし、その挙動から悪意の有無を判定するのがサンドボックス製品です。ただ、提供の形は、ネットワークの出入口に置く専用機、既存のファイアウォールやメールセキュリティに検査だけを足すもの、担当者が検体を投入して詳しく調べるものまで分かれています。何を基準に絞ればよいか迷いやすい領域です。
本記事では、サンドボックス製品19サービスを提供形態のタイプ別に比較・解説します。判定が出るまでファイルの配信を止められるのか、自社に流れるファイル量を捌けるのか、いま使っている製品を入れ替えずに追加できるのかという、導入判断に直結する観点を整理しました。自社の条件に合う製品を見極める材料としてご活用ください。
また、貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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サンドボックス製品とは?
サンドボックス製品とは、受け取ったファイルやプログラムを業務ネットワークから切り離した検査用の環境で実際に動かし、その挙動からマルウェアかどうかを判定する製品・サービスです。英語の sandbox(砂場)が語源で、外に影響が及ばない閉じた場所で自由に動かしてみる、という発想からこの名前が付いています。
サンドボックスとは、攻撃されても影響を与えない仮想環境を用意し、不審なファイル等を仮想環境にて動作させ異常がないかを分析するものである。サンドボックス型ではない標的型攻撃対策では、不正プログラムの検出方法として主にシグネチャを用いて検出するが、シグネチャに登録されていない不正プログラムや未知の不正プログラムに関しては、検出できない問題があった。そこで、サンドボックス型の標的型攻撃対策として、不審なファイル等の動作等を隔離された仮想環境において確認し、ファイルの動作等に異常がないかの確認を行うことで、未知の不正プログラムに対してもその挙動において判断することが可能となる。
出典:政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン(令和7年度版)第3部〜付録 p.256|内閣官房 国家サイバー統括室
従来のウイルス対策ソフトは、既知のマルウェアの特徴を記録した定義ファイル(パターンファイル)と照合して判定します。この方式では、まだ誰も報告していない新種の検体は照合先が存在せず、素通りしてしまいます。
サンドボックスは「照らし合わせる」のではなく「動かして確かめる」ため、定義ファイルに載っていない検体でも、ファイルを暗号化しようとする・外部の指令サーバーに接続しようとするといった悪意ある振る舞いから判定できます。
未知のファイルが「マルウェア」と判定されるまでの流れ

製品によって細部は異なりますが、判定までの流れは概ね共通しています。まず、メールの添付ファイルやWebからダウンロードされたファイルなど、検査対象がサンドボックスへ送られます。次に、Windowsなどの実行環境を再現した仮想マシン、あるいは物理端末の上でそのファイルを実際に開き、動作させます。
実行中は、どのファイルを作成・書き換えたか、レジストリをどう変更したか、どこへ通信しようとしたか、どのシステム関数を呼び出したかが記録されます。この記録を悪性の振る舞いのパターンと突き合わせ、最終的に「悪意あり」「悪意なし」「判定不能」といった結果が返ります。悪意ありと判定されれば、製品の設定に応じてファイルの配信が止められたり、端末から隔離されたり、管理者にアラートが飛んだりします。
何を観測するかは、公的機関が実際に運用している仕組みの説明からも読み取れます。警察庁は令和7年の情勢資料で、自らの解析部門が用いるサンドボックスについて「不正プログラムを仮想環境で自動的に実行して他のコンピュータとの通信、ファイルの作成、プログラムの実行等の挙動を取得する」仕組みと説明しています。
この一連の処理には時間がかかります。数秒で終わる製品もあれば、10分以上を要する場合もあり、この待ち時間をどう扱うかが製品ごとの設計思想の差になります。詳しくは判定までの扱いの節で整理します。
サンドボックス製品の主な機能
提供形態を問わず、サンドボックス製品は次の4つの機能で構成されています。
- 検査環境の構築:業務環境から隔離した仮想マシンや物理端末を用意し、検体を実行できる状態にします。自社で実際に使っているOSやアプリケーションの構成を再現できる製品もあり、その環境でしか発症しない検体を捕まえられます
- 挙動の観測と判定:ファイル操作・レジストリ変更・通信先・呼び出されたシステム関数などを記録し、悪性の振る舞いかどうかを判定します。実行前にファイルの構造を調べる静的解析を組み合わせ、明らかに問題のない検体を先に振り分けて処理時間を短縮する製品もあります
- 遮断・隔離:悪意ありと判定した検体について、メールの配信を止める、ダウンロードをブロックする、すでに配信済みのメールを受信箱から回収する、といった処置を行います
- 解析レポートの出力:何をしようとした検体だったのかを、通信先の一覧・プロセスの動き・スクリーンショットなどとともに記録します。攻撃の全体像を追うインシデント対応で使う情報です
未知のマルウェア対策として必要とされる理由
特定の組織を狙う標的型攻撃では、その標的のためだけに作られた検体が使われることがあります。世の中に出回っていない検体には定義ファイルが存在しないため、パターンファイル照合を主体とした対策では検知できません。攻撃者が検体を少し書き換えるだけで別のファイルとして扱われ、照合をすり抜けてしまう点も同じ理由によるものです。
この問題は公的なガイドラインでも指摘されています。内閣官房 国家サイバー統括室が示す政府機関等の対策基準のガイドラインは、標的型攻撃ではソースコードを部分的に改変した亜種や新たな脆弱性を突く検体など「不正プログラム対策ソフトウェア等の検知を回避しようとする攻撃が多く見られる」とし、シグネチャ以外の手法を用いる製品・サービスを導入する重要性が高まっていると記しています。
実際、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、機密情報を狙った標的型攻撃は組織向けの脅威として11年連続で選出されています。
加えて、ランサムウェアのように暗号化が始まってからでは復旧が難しい攻撃では、端末で実行される前に止められるかどうかが被害の大きさを左右します。実行して確かめるという方式は処理に時間がかかる代わりに、定義ファイルの更新を待たずに新種へ対応できます。ここが、既存のウイルス対策やファイアウォールに検査を足す価値になります。
パターンファイル照合・EDR・無害化(CDR)との違い
サンドボックスと似た目的を持つ対策はいくつかあり、守備範囲が重なる部分と重ならない部分があります。導入を検討する前に、いま自社にある対策との役割の違いを整理しておくと、何を足すべきかが見えやすくなります。前掲のガイドラインは、シグネチャ以外の検知方式として次の3つを例に挙げ、これらを組み合わせて防御することを勧めています。
例えば、必要に応じ以下の検知方式を複数組み合わせて多重防御を行うことにより、攻撃にスクリプト等を使用するファイルレスマルウェア対策としても効果が期待できるなど、不正プログラムの検知精度を向上させることで、端末及びサーバ装置に対する不正プログラム感染リスクの低減を図ることも可能となる。
出典:政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン(令和7年度版)第3部〜付録 p.344|内閣官房 国家サイバー統括室
・シグネチャに依存せずにOSのプロセスやメモリ、レジストリへの不正なアクセスや書き込みを監視し、不正プログラムの可能性がある処理を検知した場合には、不正プログラムの実行を防止するとともに、これを隔離する方式(振る舞い検知方式)
・シグネチャ方式では未対応の亜種を検知しやすい方式(機械学習検索方式)
・仮想環境内で検査対象ファイルを実行し、不正な動作を検知する方式(サンドボックス方式)
この整理に沿って、身近な対策との違いを見ていきます。
- パターンファイル照合(従来型のウイルス対策):既知の検体を高速・低負荷で弾きます。判定に時間はかかりませんが、定義ファイルに無い検体は通します。サンドボックスは、この照合をすり抜けた検体を実行して確かめる後段の役割を担います
- EDR(エンドポイントでの検知と対応):端末上で実際に起きた不審な動きを検知し、感染後の広がりを追跡・封じ込めます。守るタイミングが「実行された後」である点がサンドボックスと逆で、実行前に止めるサンドボックスとは補い合う関係にあります
- 無害化(CDR:ファイルの再構成):ファイルを実行せずに分解し、マクロやスクリプトなど危険な要素を取り除いて再構成します。判定を待たずに安全なファイルを即座に届けられる一方、悪意があったかどうかは分かりません。「危険を取り除く」無害化と「悪意を見極める」サンドボックスは目的そのものが違い、両方を組み合わせる製品もあります
提供形態で分かれる4つのタイプ
サンドボックス製品を絞り込むとき、最初の分かれ道になるのが提供形態です。機器を設置できるのか、検体を社外のクラウドに出してよいのか、いま使っている製品に足したいのか、社内に解析を担当できる人がいるのか。この4つの条件で、候補は大きく絞れます。まず下表で自社に当てはまる型を確かめてから、該当する型の説明を読み進めてください。
| タイプ | ネットワークの出入口に置く専用機タイプ | クラウドで検査するタイプ | いま使っている製品に検査を足すタイプ | 検体を投入して詳しく解析するタイプ |
|---|---|---|---|---|
| 本記事での該当数 | 4サービス | 2サービス | 8サービス | 5サービス |
| 設置と検査の場所 | 自社に機器(物理/仮想アプライアンス)を設置し、社内で検査する | ベンダーのクラウド基盤へ検体を送り、そこで検査する | 既存のファイアウォール・メールセキュリティ・Webゲートウェイのサブスクリプションとして追加し、多くはクラウドで検査する | 担当者が検体を投入し、クラウドまたは自社内の解析基盤で詳細なレポートを得る |
| 向いている組織の条件 | 検体を社外に出せない。全社の通信をまとめて検査したい。機器を設置・運用できる体制がある | 機器を持ちたくない。検査基盤の運用と解析環境の更新を外部に任せたい | 既存製品を入れ替えずに検査だけ追加したい。守りたい経路が特定の1つ(メールなど)に絞れている | 社内に解析を担当できる人がいる。インシデントが起きたときに検体の中身まで調べたい |
| 留意点 | 初期費用が大きく、処理能力の上限を超えると検査待ちが発生する | 検体が社外に出るため、機密ファイルの取り扱いを社内規程と取引先の取り決めで確認する必要がある | 対象の経路がその製品の守備範囲に限られる。単体では買えず上位ライセンスへの移行が要る場合がある | 自動で遮断する製品ではないため、日常の入口対策としては別の型と組み合わせる必要がある |
※上記は各タイプにおける一般的な傾向です。個別のサービスにおける実際の機能搭載の有無や提供形態(標準・オプション等)については各社情報をご確認ください。
ネットワークの出入口に置く専用機タイプ(アプライアンス型/仮想アプライアンス)
社内ネットワークとインターネットの境界に専用の機器を置き、そこを通るファイルを検査する形態です。一般にアプライアンス型と呼ばれ、物理アプライアンスのほか、自社の仮想基盤に載せる仮想アプライアンスとして提供される製品もあります。
この型が合うのは、機器を設置・運用できる体制があり、かつ検体を社外に出せない事情を抱えている場合です。検査が社内で完結するため、取引先から預かった図面や設計データなど、契約上クラウドへ送れないファイルも扱えます。
全社の通信を1カ所で見られるため、メールとWebのどちらから入ってきた検体も同じ機器で扱えます。一方で機器の購入費用が初期にまとまって発生するため、容量の見積もりが選定の山場になります。考え方は自社のファイル量を捌けるかで整理します。
クラウドで検査するタイプ(クラウド型)
検体をベンダーのクラウド基盤へ送り、そこで実行検査する形態です。一般にクラウド型と呼ばれ、機器を持たずに始められ、解析環境の更新や新しい回避手口への対応はベンダー側で進みます。処理能力を自社で見積もる負担も小さく、ファイル量の増減にも追随しやすい形です。
選ぶかどうかの分かれ目は、検体を社外へ出せるかどうかです。国内のリージョンで解析が完結する製品もあれば、海外の基盤に送られる製品もあり、何をどこまで確認すべきかは検体を社外のクラウドに出せるかで整理します。
いま使っている製品に検査を足すタイプ(サブスクリプション/アドオン)
すでに導入しているファイアウォール、メールセキュリティ、Webゲートウェイに、サンドボックス検査のライセンスを追加する形態です。今回比較する19サービスのうち8サービスがこの形で提供されており、既存製品を入れ替えずに済むため、社内でも説明しやすい選択肢になります。
守りたい経路が特定の1つに絞れていて、いまの製品構成を変えたくないなら、この型が向きます。守れる範囲が母体製品の守備範囲に限られる点と、機能単体で買い足せるのか上位ライセンスへの移行が要るのかは、単体で買えるのか、既存製品のオプションなのかで整理します。
検体を投入して詳しく解析するタイプ(解析プラットフォーム)
担当者が疑わしいファイルを手動またはAPIで投入し、その検体が何をしようとしたのかを詳しいレポートで受け取る形態です。通信先の一覧、プロセスの動き、メモリの内容、実行中のスクリーンショットまで得られ、攻撃の全体像を追うインシデント対応や、攻撃者の手口を調べる脅威情報の収集に使われます。
この型は自動で通信を遮断する製品ではないため、日常の入口対策としては前の3つの型と組み合わせて使います。レポートを読み解ける担当者がいて初めて価値が出る点も、導入前に押さえておきたいところです。無料枠を持つ製品もあり、まず1件試してから判断できます。
未知のファイルを「実行前に止められる」のか(判定までの扱い:保留・事後対処・解析専用)
サンドボックス製品を選ぶうえで核心になるのが、そのファイルを社員が開く前に止められるのかという点です。実行して確かめる方式には判定までの待ち時間が必ず発生するため、その間ファイルをどう扱うかで製品の性格が分かれます。
扱いは大きく次の3つですが、2つのモードを設定で選べる製品や、扱いを公表していない製品もあります。前節の提供形態とは別の軸で、同じ製品が「クラウドで検査する」かつ「事後対処になる」こともあります。

判定が出るまで配信・ダウンロードを保留する(実行前に止まる)
判定が返るまでメールを受信箱に入れない、あるいはダウンロードを完了させない方式です。誰も検体に触れないまま処理が終わるため、実行前に止めたいという要件には最も素直に応えます。エンドポイント側で未解析ファイルの実行そのものを保留する機能を持つ製品もあります。
代償は待ち時間です。判定に数分かかる製品ではその分だけメールの到着が遅れ、誤検知を手動で解除するフローがないと業務が止まります。待ち時間内に結果が返らなければそのまま配信する(フェイルオープン)設定を持つ製品もあり、その設定のままでは「保留する製品」を選んでも実行前に止まりません。導入時の設定内容まで確認が要ります。
いったん通し、判定後に隔離・回収する(事後対処になる)
ファイルはいったん配信し、後から判定が悪性と出た時点で、配信済みのメールを受信箱から自動で回収したり、端末上のファイルを隔離したりする方式です。業務が待たされないため、メールの遅延を嫌う組織では現実的な選択になります。
ただし、回収が終わるまでの間に受信者が添付ファイルを開いてしまう可能性は残ります。この方式を選ぶ場合は、エンドポイント側のEPP・EDRで実行そのものを止められる体制を併せて持っておくと、隙間が埋まります。
自動遮断はせず、担当者が投入した検体を解析する
解析プラットフォーム型の製品がこれにあたります。通信経路に入らないため、そもそも配信を止める・止めないという役割を持ちません。「この添付ファイルは開いてよいか」と現場から相談が来たときに担当者が投入して確かめる、あるいはインシデント発生後に検体の挙動を調べる、という使い方です。
入口で自動的に止めたいのであれば、この型だけでは要件を満たしません。日常の防御は前の2つの方式を持つ製品に任せ、解析プラットフォームは調査の道具として併せ持つ、という組み合わせが実務的です。
提供形態をまたいで19サービスの判定までの扱いを一覧にすると、次のとおりです(この後の比較表の「判定までの扱い」欄に対応しています)。
| 判定までの扱い | 判定が出るまで保留する(7サービス) | 設定でどちらかを選べる(1サービス) | 無害化した複製を先に配信し、原本の判定は続ける(1サービス) | 通してから事後に対処する(1サービス) | 自動遮断は行わず、担当者が投入した検体を解析する(5サービス) | 公表なし(4サービス) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 該当するサービス① | FortiSandbox | Barracuda Advanced Threat Protection | Check Point Threat Emulation | WildFire(Advanced WildFire) | Joe Sandbox | Deep Discovery Inspector |
| 該当するサービス② | AhnLab MDS | VMRay Platform | Trellix Intelligent Sandbox/Network Security | |||
| 該当するサービス③ | Microsoft Defender for Office 365 | Cisco Secure Malware Analytics | MetaDefender Aether | |||
| 該当するサービス④ | ESET LiveGuard Advanced | ANY.RUN | Sophos Firewall Zero-Day Protection | |||
| 該当するサービス⑤ | Proofpoint Targeted Attack Protection | FFRI yarai analyzer Professional | ||||
| 該当するサービス⑥ | Symantec Email Security.cloud | |||||
| 該当するサービス⑦ | Zscaler Cloud Sandbox | |||||
| 補足 | 判定が返るまでメールを受信箱に入れない、ダウンロードを完了させないという扱いです | 検査完了まで通さないスキャン優先モードと、遅延を出さない配送優先モードを選択します | ファイルから危険な要素を取り除く Threat Extraction を併用したときの扱いです | 判定後にシグネチャを連携製品へ配信し、以降の同一検体を入口で遮断します | 通信経路に入らないため、配信を止める・止めないという役割は持ちません | 公開情報では扱いを確認できなかったもので、対応していないという意味ではありません |
「公表なし」は対応していないという意味ではなく、公開情報で扱いを確認できなかったという意味です。この4サービスは判定を返す検査基盤や監視型の製品で、配信を止めるかどうかは組み込み先の製品や設置方法で決まります。
また、保留する製品でも、待ち時間内に判定が返らなかったファイルをそのまま配信する設定を持つ場合があります。実行前に止まる状態で運用できるかは、製品名だけでなく導入時の設定まで確認してください。
サンドボックス製品の選び方
ここからは、比較表を読む前に押さえておきたい選定の軸を整理します。前半の4つは自社の条件から決まる軸、後半の2つは製品の作りで差が出る軸です。自社側の制約を先に固めてから製品側の違いを見ると、候補が絞りやすくなります。
守りたい経路(メール/Web/ネットワーク/手動投入)で選べているか
サンドボックス製品は「どこを通るファイルを検査するか」が製品ごとに決まっています。メールセキュリティのアドオンならメールの添付ファイル、Webゲートウェイに統合された製品ならWebからのダウンロード、ネットワーク型の専用機なら境界を通る通信全般、解析プラットフォームなら担当者が投入したファイルが対象です。
判断のしかたは、直近1年で自社に実際に届いた不審ファイルがどの経路から来たかを振り返ることです。標的型メールの相談が多いならメール経路を厚くする製品、業務でファイル共有サービスやWebからのダウンロードが多いならWeb経路も守れる製品、というように優先順位が決まります。
1つの製品で全経路を賄おうとすると選択肢が専用機に絞られ、費用も上がります。守る範囲を欲張らず、実際に危ないところから固めるほうが導入は進みます。
自社のファイル量を捌けるか(処理性能の公表をどう読むか)
実行して確かめる方式は、1件あたりに数十秒から数分を要します。流入するファイル量が処理能力を超えると検査待ちの列ができ、メールの遅延や、判定を待たずに配信する設定への切り替えを迫られます。専用機タイプでは特に、機種の選定を誤ると導入後に効き目が落ちます。
ただし、処理能力を数値で公表しているベンダーは限られます。今回比較した19サービスのうち、1時間あたりや1日あたりの解析ファイル数を公式資料で示しているのは一部で、多くは「要お問い合わせ」です。
公表がある製品はその数値をそのまま比較でき、公表がない製品は自社のファイル量を伝えて機種の提案を受けることになります。公表値を読むときは、その数値が単体機のものか、ベンダー全体の集計値かを確認してください。全世界の利用者から集めた検体数を製品の処理能力のように見せている資料もあり、そのまま自社の見積もりに使うと大きく外れます。
では自社の量はどう見積もるか。筋道は「1日に受信するメール数 × 添付ファイルが付いている割合 × そのうち実行可能ファイルやマクロを含む文書の割合」です。検査にかかるのは最後の絞り込み後の数で、全メール数よりかなり少なくなります。
掛け合わせる割合は業種や取引形態で大きく変わるため、一般的な数字を当てはめず自社の実測値を使ってください。メール数と添付の割合はメールゲートウェイやメールセキュリティ製品の集計から、Webからのダウンロードはプロキシやセキュアウェブゲートウェイのログから、直近1か月分を出せます。
従業員数から概算する場合も、この実測値で補正しないと機種選定を誤ります。あわせてピーク時(月末・期末)の量で余裕を見ておくと、繁忙期に詰まりません。
検体を社外のクラウドに出せるか(社内規程・取引先との取り決めの確認)
クラウドで検査するタイプと、既存製品に検査を足すタイプの多くは、検体をベンダーのクラウドへ送って解析します。ここで問題になるのが、そのファイルを社外に出してよいかという点です。取引先から受け取った設計データや個人情報を含む書類が検査対象に入る場合、秘密保持契約や自社の情報管理規程に照らして「第三者提供」に当たらないかの確認が要ります。
確認すべきなのは3点です。解析が行われる国・リージョン、検体の保管期間、他の顧客と共有される脅威情報に検体そのものが含まれるかどうか。国内リージョンで解析が完結する製品や、閉じたネットワーク内に解析基盤を置ける製品もあるため、出せない場合でも選択肢は残ります。ここを詰めずに進めると、法務・情報管理の確認で差し戻されます。
単体で買えるのか、既存製品のオプションなのか
この点は、実際に支払う金額を大きく左右します。同じ「サンドボックス機能」でも、購入のしかたは製品によって次のように分かれます。
- 製品単体で買える:専用機タイプや解析プラットフォームの多くがこれにあたります。既存の環境構成を変えずに追加できます
- 機能単体のライセンスとして買い足せる:既存のファイアウォールやメールセキュリティに、その機能だけを追加できる形です。ただし母体の製品側で別のライセンス(Web保護・メール保護など)が前提になることがあります
- 上位ライセンスに移行しないと使えない:サンドボックス機能が上位のバンドルにのみ含まれる形です。この場合、追加費用はサンドボックス単体の価格ではなく、ライセンス階層の差額になります
見積もりを依頼するときは「サンドボックス機能を追加したい」ではなく「いま契約している◯◯のライセンスに、この機能を足すといくらになるか」と聞くと、実際に支払う金額が返ってきます。
回避型マルウェアへの対策方式で選ぶ(CPUレベル検査/ハイパーバイザー監視/ベアメタル解析)
攻撃者側も、検体が仮想環境で動かされていることを察知して活動を止める手口を使います。マウスの動きがない、仮想マシン特有のドライバがある、といった痕跡を調べ、サンドボックスの中だと分かれば何もせずに終了する検体です。この場合、サンドボックスは「悪意なし」と判定してしまいます。「サンドボックスは回避される」と言われるときに問題になるのは、この点です。
この手口は個別の事例ではなく、攻撃手法の分類体系である MITRE ATT&CK でも「Virtualization/Sandbox Evasion(T1497)」として類型化されています。仮想環境特有の痕跡を調べる方法、利用者の操作があるかを確かめる方法、時間の経過を測って解析環境かどうかを判断する方法の3つに整理されており、備えるべき相手が体系化された技術であることが分かります。
各社はこれに対して異なる方式で備えています。CPUの命令レベルで実行を追い、回避の判断が下される前の挙動を捉える製品や、ゲストOSの内側にエージェントを置かず外側の仮想化基盤から観測して気づかれにくくする製品があります。仮想マシンではなく物理端末(ベアメタル)で実行して仮想環境の痕跡を作らない製品や、実行を遅らせる検体の待機時間を早送りする製品もあります。
どの方式が優れているかを一般論で決めることはできません。確認したいのは、検討している製品が回避対策として何を実装しているかを公式資料で説明できているかどうかです。説明がない製品は、回避型の検体に対する備えを比較材料にできません。
検知後の分析サポート・運用支援があるか
サンドボックスが「悪意あり」と判定したとき、その後に何をすべきかを自社だけで判断できるとは限りません。検体がどこへ通信しようとしたのか、他の端末にも同じファイルが届いていないか、といった調査が続きます。ベンダー側でどこまで支援を受けられるかは、運用が回るかどうかに直結します。
確認したいのは、日本語での問い合わせ窓口があるか、対応時間は平日日中のみか24時間365日か、検知内容についての個別相談を受け付けるか、他社製品との連携設定を支援してもらえるか、といった点です。海外ベンダーの製品では国内代理店が窓口になるケースが多く、その代理店が日本語での技術支援まで担うのか、一次受付だけなのかで実際の運用負荷が変わります。
サンドボックス製品の費用相場と料金の公開状況
まず、金額そのものを確認できる製品から示します。今回比較した19サービスのうち、公式サイトで実額を公開しているのは3サービスで、残りは要お問い合わせです。公開されている料金は次のとおりです。
| サービス名 | Microsoft Defender for Office 365 | Joe Sandbox | ANY.RUN |
|---|---|---|---|
| 公開されている料金 | プラン1: 1ユーザーあたり月額299円 プラン2: 1ユーザーあたり月額749円 (いずれも年間サブスクリプションの月額換算) | Cloud Basic: 無料(月15回まで解析) Cloud Light: 1ユーザーあたり年5,200スイスフラン Cloud Pro・Cloud Enterprise: 要お問い合わせ | Community: 期限なしの無料 Hunter・Enterprise Suite: 要お問い合わせ |
| 補足 | Microsoft 365 E3・Business Premium などにはプラン1が含まれ、追加のライセンス購入なしで有効化できます | 無料の Cloud Basic は、投入した検体と解析結果が公開で共有される設定です | 無料の Community は個人ライセンス扱いで、仮想マシンの実行時間は60秒、投入できるファイルは16MBまでという制限が付きます |
※2026年8月時点の各社公式情報による。
出典・参考資料(3件)
料金が非公開であること自体は、この分野では珍しいことではありません。処理能力・ユーザー数・既存契約との組み合わせで金額が変わるためです。
金額の当たりを付けるうえで手がかりになるのが費用の構造で、これは提供形態でおおむね決まります。
- 専用機タイプ:機器の購入費用(またはリース)が初期にまとまって発生し、これに年間のサブスクリプション費用が加わります。機種は処理能力で分かれるため、必要な容量の見積もりがそのまま金額を左右します
- クラウドで検査するタイプ:初期の機器費用はなく、利用者数または解析件数に応じた年額・月額になります。件数課金の製品では、想定を超えた月の扱い(追加課金か上限で停止か)を契約前に確認します
- いま使っている製品に検査を足すタイプ:ユーザー単位の月額・年額が既存ライセンスに上乗せされます。上表のように単価を公開している製品もあり、費用の見通しは最も立てやすい形です
- 解析プラットフォームタイプ:解析回数や利用者数に応じたプラン制で、無料枠を持つ製品もあります。まず無料枠で1件解析して出力レポートを確かめてから、有償プランを検討できます
見積もりを取るときは、想定ユーザー数、1日の検査対象ファイル数の概算、いま契約しているセキュリティ製品の型番とライセンス階層を先に伝えると、比較可能な形の金額が返ってきます。個別の製品ごとの公開状況は、この後の比較表の費用欄で確認してください。
このとおり費用の構造は提供形態ごとに違うため、見積もりを依頼する前に自社がどの型かを決めておく必要があります。守りたい経路、検体を社外に出せるか、導入の形、解析まで自社で行うか。この4問に答えると候補が絞れる診断ツールを、以下にご用意しました。
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【比較表】サンドボックス製品おすすめ19選を比較
ここからは、主要なサンドボックス製品19サービスを4つの提供形態別に分類してご紹介します。表の「判定までの扱い」「解析処理能力」「単体導入の可否」の各欄は、これまでの節で見てきた選定軸に対応しています。
「単体導入の可否」の記号は、●=製品単体で購入できる、△=母体製品の契約や上位ライセンス階層が前提、×=単体では購入できない、という意味です。「公表なし」は、単体で買えるかどうかを公開情報から確認できなかったという意味で、買えないことを示すものではありません。
旧製品名から現行ブランド名への対応
この分野は企業の統合やブランドの再編が続いており、数年前の資料で見た製品名が現在は別の名前になっていることが少なくありません。旧名で調べてきた場合に比較表の中で見失わないよう、主な対応を先に整理します。
| 旧製品名 | FireEye NX | McAfee Advanced Threat Defense(ATD) | FireEye Detection on Demand | Sophos Sandstorm | OPSWAT Filescan / MetaDefender Sandbox | SandBlast | Cisco Threat Grid | ESET Dynamic Threat Defense |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 現行の名称 | Trellix Network Security (NX) | Trellix Intelligent Sandbox | Trellix Detection as a Service | Sophos Firewall の Zero-Day Protection | MetaDefender Aether | Check Point の Threat Emulation(Quantum/Harmony 各製品に搭載) | Cisco Secure Malware Analytics | ESET LiveGuard Advanced |
| 経緯 | 2022年1月に McAfee Enterprise と FireEye の製品事業が統合し Trellix が発足 | 同上。旧世代のバージョンはサポート終了が公式に告知されている | 同上。API/クラウドで検体を検査するサービス | Sophos 公式の現行ブランド名は Zero-Day Protection(Sandstorm は旧称) | 2026年6月に多層構成の製品として再編。旧製品ページは現行ページへ転送される | ブランド名としては残るが、経路ごとに製品名が分かれている | Cisco のセキュリティ製品ブランド刷新に伴う改称 | クラウドサンドボックス機能の名称変更 |
【タイプ別比較表】ネットワークの出入口に置く専用機タイプ(4サービス)
自社に機器を設置し、社内で検査を完結させる製品です。検体を社外に出せない組織や、メールとWebの両方をまとめて検査したい組織の候補になります。
| サービス名 | FortiSandbox | Deep Discovery Inspector | Trellix Intelligent Sandbox/Network Security | AhnLab MDS |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | ハードウェアアプライアンス/仮想アプライアンス/クラウド/FortiGate 向けサブスクリプション | 物理アプライアンス/仮想アプライアンス(Inspector) 解析専用アプライアンス(Analyzer) | オンプレミスアプライアンス(Intelligent Sandbox) ネットワーク型アプライアンス(Network Security) クラウド API(Detection as a Service) | ネットワークアプライアンス インライン設置と TAP/SPAN ミラーリングの両方に対応 |
| 検査対象の経路 | ネットワーク全般(FortiGate 連携) メール(FortiMail 連携) エンドポイント API・ICAP 経由の投入 | ネットワーク通信全般(全ポート・100種類超のプロトコル) 他製品からの検体(API・ICAP・メール)と手動投入(Analyzer) | ネットワーク通信 担当者による手動投入 API 経由のファイル・URL 投入 | ネットワーク通信(実行ファイル・文書・スクリプト) メール エンドポイント上のファイル |
| 判定までの扱い | 判定が出るまで保留する (FortiOS 7.2 以降の FortiGate と組み合わせたインラインブロッキング) | 公表なし (インライン設置か TAP/SPAN 監視かは公式に明示なし。Analyzer は投入された検体を解析) | 公表なし (Intelligent Sandbox は投入された検体を解析) | 判定が出るまで保留する (実行の保留はエンドポイントのエージェントとの併用が前提) |
| 解析処理能力 | 旧世代機の公表値のみ確認 (現行機種の1時間あたり解析ファイル数は未公表) | 公表なし | 公表なし (現行モデルの公表値は確認できず) | 公表なし |
| 回避型マルウェアへの対策 | スリープ処理・プロセス識別・レジストリ参照の検知 物理端末の挙動を模して仮想環境の痕跡を見せない方式 | 公表なし (自社の端末構成に合わせたカスタムイメージ上で実行) | シグネチャに依存しない MVX/IVX エンジンでの動的解析 実環境と同じ OS・パッチ構成のカスタムイメージ | 仮想環境を探索する動作を無効化する Anti-VM 対策 |
| 解析場所 | 自社内(アプライアンス/仮想アプライアンスを設置) ベンダーのクラウド(FortiSandbox Cloud)も選択可 | 自社内(物理/仮想アプライアンスを設置) | 自社内(アプライアンスを設置) クラウド API 版(Detection as a Service)も提供 | 自社内(ネットワークアプライアンスを設置) |
| 国内サポート窓口 | 日本法人あり(フォーティネットジャパン合同会社) 国内正規代理店が販売・導入支援 日本語サポート窓口の記載は公表なし | 日本法人あり(トレンドマイクロ株式会社) 日本語のドキュメントポータルあり サポート窓口・対応時間は公表なし | 日本の事業体あり(Musarubra Japan株式会社) 国内代理店(テクマトリックス等)経由 対応時間・言語対応は公表なし | 日本法人あり(株式会社アンラボ) 日本語の問い合わせ窓口(電話・メール)を公開 |
| 単体導入の可否 | ●(アプライアンス・VM・クラウドとして単体で導入可) | ●(アプライアンス単体で導入) | ●(アプライアンス単体で導入) | ●(ネットワークアプライアンス単体で導入可) |
| 費用 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※記載内容は2026年8月時点の各社公式情報によります。「公表なし」は、公開されている情報ではその項目を確認できなかったという意味で、その製品が対応していないことを示すものではありません。導入検討時は各社へ直接ご確認ください。
※表中の用語:ICAP=プロキシなどの通信機器が検査用サーバーへファイルを渡すときに使う標準的な仕組み。TAP/SPAN=通信をコピーして受け取る接続方式で、通信そのものは止めずに監視します。MVX/IVX=Trellix が自社の解析エンジンに付けている名称です。
1. FortiSandbox(フォーティネットジャパン合同会社)

機械学習を用いた静的解析でまず振り分け、そこで判定が付かないファイルを仮想環境での動的解析に回す二段構えの検査が、Fortinet の FortiSandbox の基本設計です。検査環境として Windows・macOS・Linux・Android に加え、産業制御システム向けのOSも用意されています。
判定待ちのファイルの扱いには選択肢があります。FortiOS 7.2 以降の FortiGate と組み合わせた場合、疑わしいファイルを判定が返るまで保留したうえで通過させるインラインブロッキングが使えます。回避型のマルウェアに対しては、スリープ処理やレジストリ参照といった仮想環境を探る動作の検知に加え、物理端末の挙動を模して仮想環境の痕跡を見せない方式を実装しています。
提供形態は、ハードウェアアプライアンス、自社の仮想基盤に載せる FortiSandbox-VM、Fortinet が運用する FortiSandbox Cloud、FortiGate 向けのサブスクリプションの4種類で、料金はいずれも構成に応じた見積もりです。Modbus や S7comm など制御系のプロトコルにも対応しており、工場や制御ネットワークまで含めて検査したい場合の候補になります。
2. Deep Discovery Inspector(トレンドマイクロ株式会社)

社内を流れる通信そのものを監視対象に置く製品です。すべてのネットワークポートと100種類を超えるプロトコルを対象に、外部とのやり取りだけでなく社内の端末間の通信も可視化します。物理アプライアンスと仮想アプライアンスのどちらの形でも導入できます。
サンドボックスは仮想アナライザと呼ばれる内蔵機能で、OS・言語・ドライバ・インストール済みアプリケーションを自社の端末構成に合わせたイメージを作り、その上で検体を実行できます。多段階のダウンロードやC&C通信まで観察するセーフライブモードも備え、ファイルの大量変更や暗号化といったランサムウェア特有の挙動も検知対象です。
同じ Deep Discovery シリーズには、解析だけを担う Deep Discovery Analyzer もあります(いずれも料金は要お問い合わせ)。メールセキュリティ製品やWebセキュリティ製品から送られた不審ファイルを一元的に解析するアプライアンスで、Webサービス API・ICAP・メール経由での受け取りと、管理コンソールからの手動投入に対応します。
3. Trellix Intelligent Sandbox/Network Security(Musarubra Japan株式会社)

2022年1月に McAfee Enterprise の事業部門と FireEye の製品事業が統合して発足したのが Trellix です。
旧 FireEye NX は Trellix Network Security(NX)、旧 McAfee Advanced Threat Defense は Trellix Intelligent Sandbox という名称に変わり、シグネチャに頼らず検体を実行して判定する MVX エンジンの系譜を引き継いでいます。
Intelligent Sandbox は自社に設置するアプライアンス型で、実際に使っているクライアント環境と同じOS・パッチレベルのカスタムイメージ上で検体を動かせます。管理者がサンドボックス環境へ直接つないで手動操作を交えるインタラクティブモードも備え、アンチウイルスエンジン・脅威データベース・静的コード解析・動的解析を組み合わせて判定します。
ネットワーク型の Network Security(NX)については、発展形にあたる Trellix NDR が投入されており、公式ブログでは既存の利用者が NX の機能を保持したまま移行できると説明されています。国内では Musarubra Japan と販売代理店が窓口となり、料金は公開されていないため見積もりでの確認になります。
4. AhnLab MDS(株式会社アンラボ)

韓国の AhnLab, Inc. が開発し、日本法人の株式会社アンラボが提供するネットワークアプライアンス型の製品です。実行ファイル・文書ファイル・スクリプトを仮想環境で動かし、プロセスやファイルの生成、通信先、アクセスしたURLを合わせて見たうえで不正かどうかを判定します。
端末側との連携に踏み込んでいる点が他の専用機と異なります。エンドポイントのエージェントが未解析ファイルの実行を検知すると、解析が終わるまで実行を保留し、不正と判定されればファイルの削除や端末の隔離まで行います。仮想環境を調べて活動を止めようとするマルウェアに対しては、その探索動作を無効化する対策を実装しています。
料金は非公開で、問い合わせによる見積もりとなります。設置はインライン、TAP/SPANポート経由のミラーリングのいずれにも対応し、SSL/TLS復号製品やスパムフィルタ製品とも連携できるため、既存のネットワーク構成に合わせて組み込めます。公式サイトでは Common Criteria 認証の取得も示されています。
【タイプ別比較表】クラウドで検査するタイプ(2サービス)
機器を持たず、ベンダーのクラウド基盤で検査する製品です。解析環境の更新をベンダー側に任せられる代わりに、検体の取り扱いを社内規程と照らして確認する必要があります。
| サービス名 | WildFire(Advanced WildFire) | MetaDefender Aether(旧 MetaDefender Sandbox) |
|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(日本を含む地域別リージョンを選択可) プライベートクラウド・オンプレミス構成 API 単体契約 | クラウド版 MetaDefender Core へ組み込むオンプレミス版 エアギャップ環境 |
| 検査対象の経路 | 次世代ファイアウォール・Prisma Access を通過するファイル Cortex XDR が検知したファイル API 経由の投入 | ファイル転送・リムーバブルメディア・メール添付・クラウドストレージ・Web トラフィック REST API 経由の投入 |
| 判定までの扱い | 通してから事後に対処する (判定後にシグネチャを連携製品へ配信し、以降の同一検体を入口で遮断) | 公表なし (判定を返す検査基盤。配信を止めるかは組み込み先の製品側で制御) |
| 解析処理能力 | 公表なし | 1サーバーあたり1日25,000件超 (大半のファイルを20秒未満で判定) |
| 回避型マルウェアへの対策 | 実機(ベアメタル)解析とランタイムメモリ分析 (Advanced WildFire で追加) | CPU・OS の命令レベルのエミュレーションで実行 (仮想環境を検知して止まる検体にも動作を促す設計) |
| 解析場所 | ベンダーのクラウド(日本を含むリージョンを指定可) プライベートクラウド・オンプレミス構成も選択可 | ベンダーのクラウド(複数の AWS リージョンで運用。所在の公表なし) オンプレミス版・エアギャップ環境も選択可 |
| 国内サポート窓口 | 日本法人あり(パロアルトネットワークス株式会社) 本製品専用のサポート窓口・対応時間は公表なし | 日本法人あり(OPSWAT JAPAN株式会社) 国内ディストリビューター(ネットワールド)経由 製品ドキュメントの日本語対応は公表なし |
| 単体導入の可否 | △(API 利用のみのスタンドアロン契約は可能。通信の検査には次世代ファイアウォール等が前提) | ●(スタンドアロン提供と MetaDefender Core への統合のどちらも可) |
| 費用 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト |
※記載内容は2026年8月時点の各社公式情報によります。「公表なし」は、公開されている情報ではその項目を確認できなかったという意味で、その製品が対応していないことを示すものではありません。導入検討時は各社へ直接ご確認ください。
5. WildFire(Advanced WildFire)(パロアルトネットワークス株式会社)

同社の次世代ファイアウォールやエンドポイント製品 Cortex XDR が受け取った未知のファイルをクラウドへ送り、実行して挙動を観察するマルウェア分析エンジンです。悪性と判定された検体のシグネチャは連携する製品へ配信され、以降は同じ検体を入口で遮断できます。
ライセンスは3階層に分かれています。次世代ファイアウォールに標準で組み込まれる基本機能ではシグネチャ更新が24〜48時間ごとに限られ、WildFireサブスクリプションでリアルタイム配信とAPI利用が加わります。上位のAdvanced WildFireでは実機(ベアメタル)解析とランタイムメモリ分析が追加されます。
料金は公開されておらず要お問い合わせですが、解析を行うクラウドは地域ごとに分かれており、日本リージョンを指定すれば検体の解析を国内で完結させられます。SOARツールなど自社製品以外から検体を送りたい場合は、API利用のみのスタンドアロン契約も選べます。
6. MetaDefender Aether(OPSWAT JAPAN株式会社)

旧称は「MetaDefender Sandbox」で、さらに以前はOPSWAT Filescanという名前でした。この製品が2026年6月に再編され、日本法人のOPSWAT JAPAN株式会社が同月17日に国内提供を発表しています。脅威情報との照合、実行前の静的解析、動的解析、脅威スコアリング、機械学習による脅威ハンティングという5つの層を通して1つの判定を返す構成です。
動的解析を担う「Adaptive Sandbox」は、仮想マシンではなくCPUとOSの命令レベルのエミュレーションで検体を動かす方式です。仮想環境を検知して活動を止めるマルウェアにも動作を促せると公式が説明しており、対応ファイル形式は120種類以上、抽出する振る舞い指標は900種類以上でMISP・STIX・JSON形式へ書き出せます。
全ファイルを仮想実行にかけず8割超を手前の層で処理する設計により、大半のファイルを20秒未満で判定し、1サーバーあたり1日25,000件超の解析に対応するとしています。提供形態はクラウド版、MetaDefender Coreへ組み込むオンプレミス版、外部と切り離したエアギャップ環境の3通りで、料金は要お問い合わせです。
出典・参考資料(1件)
- 出典:Adaptive Sandbox|OPSWAT, Inc.(リンク)
【タイプ別比較表】いま使っている製品に検査を足すタイプ(8サービス)
すでに導入しているファイアウォールやメールセキュリティに、サンドボックス検査を追加する製品です。守れる経路が母体製品の守備範囲に限られる点と、単体で買えるかどうかが選定の分かれ目になります。
| サービス名 | Microsoft Defender for Office 365 | Sophos Firewall Zero-Day Protection | ESET LiveGuard Advanced | Proofpoint Targeted Attack Protection | Symantec Email Security.cloud | Barracuda Advanced Threat Protection | Check Point Threat Emulation | Zscaler Cloud Sandbox |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(Microsoft 365 のライセンスに追加) | Sophos Firewall(XGS シリーズ)に追加するサブスクリプション 解析はクラウドの SophosLabs Intelix | クラウド(ESET PROTECT のアドオン。解析は ESET Cloud) | クラウド(メールセキュリティの機能群) | クラウド(MX レコードを向けて経路に組み込むメールゲートウェイ) | クラウド(Barracuda Email Protection。API 連携・インライン導入・MX レコード変更に対応) アプライアンス(Email Security Gateway) | Quantum ゲートウェイに組み込む機能 クラウド検査/専用アプライアンス追加 | クラウド(Zscaler Internet Access に統合) |
| 検査対象の経路 | メールの添付ファイル SharePoint・OneDrive・Microsoft Teams 上のファイル(非同期スキャン) | Web からのダウンロード メールの添付ファイル (実行可能ファイルと実行コンテンツを含む文書) | エンドポイントが見つけた不審ファイル(実行ファイル・アーカイブ・スクリプト・文書) メール・ブラウザ経由のダウンロード メールサーバー製品 | メールの添付ファイル(パスワード保護文書・Zip・URL 埋め込み添付を含む) メール内の URL(クリックのたびに再検査) | メールの添付ファイル メール内の URL(クリック時の保護) | メールの添付ファイル URL の動的分析 | メール Web ダウンロード ゲートウェイを通過するファイル転送全般 エンドポイント・クラウドメール(Harmony 各製品) | クラウドを通過する Web 通信(HTTP/HTTPS/FTP) SSL/TLS 通信の検査 API 経由の投入(Advanced) |
| 判定までの扱い | 判定が出るまで保留する (既定は検疫。本文だけ先に届ける動的配信も選択可) | 公表なし | 判定が出るまで保留する (メール・ブラウザ経由のダウンロードは実行を保留。待機時間は5〜60分で指定) | 判定が出るまで保留する (公式は受信箱に届く前に検出・分析・ブロックすると説明。URL は配信後のクリック時に再検査) | 判定が出るまで保留する (最大保留時間は管理者が設定。時間内に判定が返らないメールはそのまま配信) | 判定が出るまで保留する/通してから事後に対処する (検査完了まで通さないスキャン優先モードと、遅延を出さない配送優先モードを選択) | 無害化した複製を先に配信し、原本の判定はバックグラウンドで継続 (Threat Extraction 併用時) | 判定が出るまで保留する (通過するファイルをインラインで検査し、判定まで利用者へ渡さない) |
| 解析処理能力 | 公表なし (メール添付の検査は通常15分以内に完了と公式ドキュメントに記載) | 公表なし | 公表なし (大半のサンプルは数分内に解析から防御まで完了と公式資料に記載) | 公表なし | 公表なし | 公表なし | 約1,300件/時(TE250XN)〜約8,000件/時(TE2000XN-56VM) (代理店が公開するアプライアンスのデータシート) | インライン検査は1日あたりの処理件数無制限 (API 経由の動的解析は既定で月3,000ファイル) |
| 回避型マルウェアへの対策 | 公表なし | サンドボックス回避手法の検知 (静的解析・動的解析・ディープラーニング・CryptoGuard と併用) | 公表なし | 公表なし | 仮想環境での実行に加え、必要に応じて物理ハードウェア上での実行に切り替え(Cynic) | 公表なし | CPU レベルでのエクスプロイト検出 | 公表なし |
| 解析場所 | ベンダーのクラウド(Microsoft 365 データが保存されているのと同じリージョンで実行) | ベンダーのクラウド(SophosLabs Intelix。所在の公表なし) | ベンダーのクラウド(ESET Cloud。所在の公表なし) | ベンダーのクラウド(所在の公表なし) | ベンダーのクラウド(所在の公表なし) | ベンダーのクラウド(所在の公表なし) アプライアンス構成でも検査はクラウド | ベンダーのクラウド(米国・ドイツ・アイルランド・中国・オーストラリア) 専用アプライアンスを追加すれば自社内で検査 | ベンダーのクラウド(Zscaler のクラウド基盤。解析拠点の所在は公表なし) |
| 国内サポート窓口 | 日本法人あり(日本マイクロソフト株式会社) 日本語ドキュメント・日本語ポータルあり 対応時間はサポート契約により異なる | 日本法人あり(ソフォス株式会社) 国内は認定販売代理店経由 日本語の営業窓口あり | 国内総販売代理店のキヤノンマーケティングジャパンが日本語サポートを提供 管理コンソール・ヘルプも日本語 | 日本法人あり(日本プルーフポイント株式会社) 日本語の製品ページ・データシートあり サポート窓口の言語対応・時間は公表なし | 国内代理店(SB C&S株式会社)経由で販売・問い合わせ 日本語 UI・日本語サポートの可否は公表なし | 日本法人あり(バラクーダネットワークスジャパン株式会社) サポート窓口の対応時間・言語体制は公表なし | 日本法人あり(チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社) 販売・保守は国内代理店が主体 日本語対応可(範囲は要問い合わせ) | 日本法人あり(ゼットスケーラー株式会社、東京・大阪拠点) 日本語サポート窓口の有無・対応時間は公表なし |
| 単体導入の可否 | △(Defender for Office 365 プラン1以上が必要。単体アドオンとしても購入可) | △(Zero-Day Protection のモジュール単体で買い足せる。Xstream Protection Bundle にも同梱) | ×(単体購入は不可。ESET PROTECT Advanced/Complete/Essential Plus/Elite/Enterprise のいずれかの契約にアドオンとして追加) | 公表なし | 公表なし (サンドボックス機能が基本契約に含まれるか別売かは公式に明示なし) | △(Email Protection は全プランに同梱。Email Security Gateway では Cloud Protection Layer と ATP のオプション契約が必要) | 公表なし (Quantum ゲートウェイ等に組み込まれる機能として提供。単体販売の可否は公式に明示なし) | ×(Zscaler Internet Access の契約が前提。上位機能は Advanced Cloud Sandbox) |
| 費用 | 単体アドオンはプラン1が1ユーザーあたり月額299円、プラン2が749円 (年間サブスクリプションの月額換算) Microsoft 365 E3・Business Premium 等にはプラン1が同梱 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※記載内容は2026年8月時点の各社公式情報によります。「公表なし」は、公開されている情報ではその項目を確認できなかったという意味で、その製品が対応していないことを示すものではありません。導入検討時は各社へ直接ご確認ください。
7. Microsoft Defender for Office 365(日本マイクロソフト株式会社)

Microsoft 365 のメール・コラボレーション保護製品に含まれる「セーフ添付ファイル(Safe Attachments)」が、サンドボックス検査にあたる機能です。マルウェア対策の一次スキャンを通過した添付ファイルを仮想環境で実際に開き、公式ドキュメントが「デトネーション」と呼ぶ処理で挙動を確かめます。
対象はメールの添付ファイルに加え、SharePoint・OneDrive・Microsoft Teams 上のファイルにも既定で及びます。ただし後者については、全ファイルを検査するのではなく、共有イベントや脅威シグナルを手がかりに非同期でスキャンする仕様だと公式ドキュメントに明記されています。
セーフ添付ファイルは Defender for Office 365 プラン1から使えるため、プラン1が含まれる Microsoft 365 E3 や Business Premium を契約していれば追加のライセンス購入なしで有効化できます。配信の扱いは、検出したメッセージを検疫する「ブロック」が既定値で、本文だけ先に届けて添付ファイルをプレースホルダーに置き換える「動的配信」も選べます。
8. Sophos Firewall Zero-Day Protection(ソフォス株式会社)

次世代ファイアウォール Sophos Firewall(XGS シリーズ)に追加できるサンドボックス機能で、旧称は Sandstorm です。ファイアウォールが Web のダウンロードやメールの添付ファイルの中に実行可能ファイル・実行コンテンツを含む文書を見つけると、同社のクラウド解析基盤 SophosLabs Intelix へ送って検査します。
解析は静的解析と動的解析を併用し、ディープラーニングによる判定、脆弱性を突く動作の検知、ランサムウェアによる暗号化を捉える CryptoGuard、サンドボックス回避手法の検知を組み合わせます。判定にあたっては、ファイル・メモリ・レジストリ・ネットワークの挙動が観測されます。
価格は公開されておらず、公式サイトからの見積もり依頼になります。ライセンスはZero-Day Protection 単体のモジュールとして買い足せるほか、上位の Xstream Protection Bundle にも標準で含まれるため、いま使っているファイアウォールに検査だけを足したい場合に扱いやすい形です。
9. ESET LiveGuard Advanced(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)

エンドポイント製品が見つけた不審なファイルを、クラウドの解析環境「ESET Cloud」へ自動送信して調べるクラウドサンドボックスです。開発はスロバキアの ESET で、国内の販売とサポートはキヤノンマーケティングジャパン株式会社が担っています。
解析は、3つの機械学習モデルによるサンプル比較、サンドボックスでの振る舞い分析、スキャンエンジンによる異常分析を重ねる多段構成です。悪質と判定されたファイルは社内の全端末で自動的にブロックされ、大半のサンプルは数分内に解析から防御まで完了すると公式資料に記載されています。
メールやブラウザ経由でダウンロードしたファイルについては、解析結果が返るまで実行を保留させる設定(待機時間は5〜60分で指定)も持ちます。ただしこの機能は単体では購入できず、ESET PROTECT Advanced など対象プランの契約にアドオンとして追加する形になります。料金は要お問い合わせです。
10. Proofpoint Targeted Attack Protection(日本プルーフポイント株式会社)

Proofpoint がクラウド型サンドボックスと位置づけるメールセキュリティの機能群で、添付ファイルとURLの両方を検査対象にしています。添付ファイル側の TAP Attachment Defense は、パスワード保護された文書やZipファイルの中身、URLを埋め込んだ添付ファイルも扱います。
URLは受信箱に届く段階でいったん書き換えられ、利用者がクリックするたびにリアルタイムで再検査されます。配信後にリンク先を悪性へ差し替える手口への備えになる仕組みです。公式資料は、高度な脅威を受信箱に届く前に検出・分析・ブロックすると説明しています。
一方で、判定を待つ具体的な時間と、この機能群を単体で契約できるかどうかは公式に公開されていません。料金も非公開で、利用ライセンス数と契約期間に応じた見積もりになります。公式ページには無料トライアルとデモの申し込み窓口が用意されています。
11. Symantec Email Security.cloud(Broadcom Inc.)

クラウド上でメールを中継して検査する、Broadcom のメールゲートウェイサービスです。MXレコードをクラウド側へ向けて経路に組み込む構成をとります。旧ブランド名は MessageLabs で、国内では SB C&S 株式会社などの代理店を通じた販売となり、料金は公開されていません。
検査は2段構えです。ヒューリスティックと機械学習で静的に判定する Skeptic の後段に、クラウドサンドボックスの Cynic が入り、隔離環境でファイルを実行しながら、マウス操作やファイル操作といった利用者の動きを模して挙動を観察します。
Cynic は仮想環境での実行に加え、必要に応じて物理ハードウェア上での実行へ切り替えます。仮想環境だと気づくと動作を止める検体への対策として設けられた仕組みです。判定を待つ最大保留時間は管理者が設定でき、その時間内に結果が返らなかったメールはそのまま配信されます。
12. Barracuda Advanced Threat Protection(バラクーダネットワークスジャパン株式会社)

添付ファイルのサンドボックス検査を、Barracuda はメールセキュリティ製品の一機能として提供しています。脅威シグネチャの照合や静的解析で判定が確定しなかったファイルだけをクラウド上のサンドボックスで実行し、挙動を確かめる多層構成です。
買い方は製品ラインで分かれます。クラウド型の Barracuda Email Protection では、サンドボックス検査が Advanced・Premium・Premium Plus の全プランに含まれます。アプライアンス型の Barracuda Email Security Gateway では、Cloud Protection Layer と ATP のオプション契約が別途必要です。
判定までの扱いは、遅延を発生させない配送優先モードと、検査が完了するまでメールを通さないスキャン優先モードの2つから選べます。クラウド型はAPI連携・インライン導入・MXレコード変更のいずれの方式でも既存のメール基盤に組み込めます。料金はいずれも要お問い合わせです。
13. Check Point Threat Emulation(チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社)

Check Point では、サンドボックス検査は Threat Emulation という機能単位で提供され、ゲートウェイ製品 Quantum などに組み込まれる形をとります。旧称の SandBlast は現在もブランド名として使われており、ファイルから危険な要素を取り除いて再構成する Threat Extraction と対になっています。
この2つを組み合わせると、再構成した安全なファイルを先に届けながら、原本のサンドボックス検査を裏側で続けられます。公式の説明では、無害化したファイルの配信は数秒、サンドボックスの判定は数分とされています。ただし具体的な秒数の保証値は公開されていないため、遅延の許容範囲は自社の運用に照らして確認が要ります。
オンプレミスで検査する場合は、専用アプライアンスを追加する構成があります。販売代理店が公開するデータシートでは、TE250XN が1時間あたり約1,300件、TE2000XN-56VM が約8,000件を推奨検査数として示しています。クラウドで検査する場合の解析基盤は米国・ドイツ・アイルランド・中国・オーストラリアに置かれています。料金は代理店経由の見積もりです。
出典・参考資料(1件)
- 出典:SandBlast Zero-Day Protection(SandBlast TE Appliances データシート)|株式会社アズジェント(リンク)
14. Zscaler Cloud Sandbox(ゼットスケーラー株式会社)

セキュアWebゲートウェイ「Zscaler Internet Access(ZIA)」に統合された検査機能で、単体の製品としては提供されておらず、利用にはZIAの契約が前提になります。クラウドを通過する通信からファイルを取り出して解析するインライン方式で、判定が出るまで利用者へ渡さない設計です。
グレードはStandardとAdvanced Cloud Sandboxの2段階です。ZIAに標準で含まれるStandardで検査できるのはWindowsの実行ファイル・ライブラリ・Zip書庫の3系統に限られ、Office文書やPDF、スクリプト類、Androidアプリまで対象を広げるにはAdvancedが必要になります。
Advancedでは、6億件のサンプルで学習したAI/MLモデルが良悪をリアルタイムに判定するAI Instant Verdict、MITRE ATT&CKに対応付けたレポート、API経由での検体投入(動的解析を伴う送信は既定で月3,000ファイル)が加わります。SSL/TLS通信の検査とインラインでの処理件数は無制限とされ、料金は要お問い合わせです。
出典・参考資料(1件)
- 出典:Zscaler Cloud Sandbox ソリューションブリーフ|Zscaler, Inc.(PDF)
【タイプ別比較表】検体を投入して詳しく解析するタイプ(5サービス)
担当者が検体を投入し、挙動を詳しいレポートで受け取る製品です。自動遮断の役割は持たないため、入口対策としては他の型と組み合わせて使います。
| サービス名 | Joe Sandbox | VMRay Platform | Cisco Secure Malware Analytics | ANY.RUN | FFRI yarai analyzer Professional |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(Cloud Basic/Light/Pro/Enterprise の4プラン) | クラウド版/オンプレミス版 | クラウドサブスクリプション/オンプレミスアプライアンス | クラウド(Community/Hunter/Enterprise Suite) | 自社サーバーに構築するオンプレミス (買い切り型とサブスクリプション型を選択) |
| 検査対象の経路 | 担当者が投入するファイル・URL REST API 経由の投入(Cloud Pro 以上) メール監視(Cloud Pro 以上) | Web コンソールからの手動投入 ICAP・REST API 経由の自動投入 | 担当者が投入する検体 REST API 経由の投入 Secure Endpoint・Secure Email からの転送 | 担当者がブラウザ越しに操作しながら投入するファイル・URL API 経由の投入(Enterprise Suite) | 担当者が投入するファイル・フォルダ(一括投入) Web API 経由の投入 |
| 判定までの扱い | 担当者が投入した検体を解析する (自動遮断は行わない) | 担当者が投入した検体を解析する (自動遮断は行わない) | 担当者が投入した検体を解析する (自動遮断は行わない) | 担当者が投入した検体を解析する (自動遮断は行わない) | 担当者が投入した検体を解析する (自動遮断は行わない) |
| 解析処理能力 | 月15回(無料の Cloud Basic) 月50回(Cloud Light) 月100回以上(Cloud Pro) 1日200回以上(Cloud Enterprise) | 公表なし (レポート数・判定数のクォータ制と従量課金) | Secure Email と組み合わせる構成は既定で1日200件 (クラウド単体契約の上限は公表なし) | Enterprise Suite は月1,500件超の API 解析枠 (無料の Community は1回の実行60秒・16MB まで) | 公表なし (1台のサーバーに最大6つの解析環境を構築) |
| 回避型マルウェアへの対策 | 静的解析と動的解析を組み合わせるハイブリッド解析 物理端末(ベアメタル)での実行(Cloud Enterprise) | ゲスト OS にエージェントを置かず、仮想化基盤の外側から挙動を観測 | 公表なし (Glovebox で実行中の検体を解析者が直接操作・録画で確認できる) | ブラウザ越しに仮想マシンを操作できるため、人の操作がないと先へ進まない検体にも対応 | 仮想環境検知の影響を受けにくくする解析対策機能 (システム時間進行機能・疑似環境ツール) |
| 解析場所 | ベンダーのクラウド(欧州内でのデータ処理を公式に明示) | ベンダーのクラウド/自社内(オンプレミス版)を選択可 | ベンダーのクラウド/自社内(オンプレミスアプライアンス)を選択可 | ベンダーのクラウド(所在の公表なし) | 自社内(自社サーバーに構築するオンプレミス) |
| 国内サポート窓口 | 国内正規販売代理店(S&J株式会社)が日本語窓口 無償プランはサポート対象外 | 日本法人なし 国内代理店(株式会社アクティブディフェンス研究所)が日本語サポート・導入支援 | 日本法人あり(シスコシステムズ合同会社) 本製品専用の日本語ページ・窓口は公表なし | 日本法人なし 日本語サイトと国内代理店経由の対応 本体に日本語窓口の記載なし | 国内開発の日本企業(株式会社FFRIセキュリティ) 販売パートナー経由で購入前相談・導入支援 公式サイト・ドキュメントは日本語 |
| 単体導入の可否 | ●(解析プラットフォーム単体で契約) | ●(解析プラットフォーム単体で契約) | ●(クラウドサブスクリプションの単体契約が可能) | ●(解析プラットフォーム単体で契約) | ●(解析システム単体で導入) |
| 費用 | 無料プランあり(Cloud Basic) Cloud Light は1ユーザーあたり年5,200スイスフラン、上位プランは要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 無料プランあり(Community) 有償プランは要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※記載内容は2026年8月時点の各社公式情報によります。「公表なし」は、公開されている情報ではその項目を確認できなかったという意味で、その製品が対応していないことを示すものではありません。導入検討時は各社へ直接ご確認ください。
15. Joe Sandbox(Joe Security LLC)

スイスのJoe Security LLCが開発する解析プラットフォームで、ファイルとURLを実行して挙動を調べます。静的解析と動的解析を組み合わせたハイブリッド解析に加え、上位のCloud Enterpriseでは仮想マシンではなく物理端末で実行するベアメタル解析にも対応します。日本国内はS&J株式会社が正規販売代理店として窓口を担います。
解析レポートには、メモリダンプ、通信のキャプチャ、実行中のスクリーンショット、IoC(侵害指標。攻撃の痕跡になる通信先やファイルの特徴)の自動抽出、MITRE ATT&CKの攻撃手法への対応づけが含まれます。出力形式はJSON・XML・PDF・HTML・MAEC・MISPで、全形式を使えるのはCloud Pro以上のプランです。
料金は4段階に分かれています。無料のCloud Basicは月15回まで解析できますが、投入した検体と解析結果は公開で共有される設定です。有償のCloud Lightは1ユーザーあたり年5,200スイスフラン、Cloud ProとEnterpriseは要お問い合わせとなります。
16. VMRay Platform(VMRay GmbH)

ゲストOSの中に監視用のエージェントを置かず、仮想化基盤の外側から検体の挙動を観測する設計が、ドイツのVMRay GmbHが開発する本製品の特徴です。解析環境の痕跡が検体側から見えにくいため、サンドボックスだと気づくと活動を止める検体でも挙動を記録しやすいと公式資料は説明しています。
クラウド版とオンプレミス版のどちらでも導入でき、検体を社外に出せない場合は自社内に解析基盤を置けます。担当者がWebコンソールから検体を投入する使い方と、ICAPやREST API経由で他の製品から自動投入する使い方の両方に対応し、対応OSはWindows・macOS・Linuxです。
SplunkやCortex XSOARなどのSIEM・SOAR製品との公式連携があり、既存のセキュリティ監視業務に組み込む前提の作りになっています。費用はレポート数・判定数のクォータ制と従量課金を組み合わせる形で、金額は非公開のため要お問い合わせです。日本国内は2018年4月に販売・サポート契約を結んだ株式会社アクティブディフェンス研究所が窓口となります。
17. Cisco Secure Malware Analytics(シスコシステムズ合同会社)

旧称Threat Gridの名前で知られてきたマルウェア解析基盤です。2014年にシスコシステムズがThreatGRID社を買収して自社のセキュリティ製品群へ統合し、その後現在の名称に変わりました。静的解析と動的解析を組み合わせて未知のファイルを実行し、挙動と脅威スコアを出力します。
解析の道具として特徴的なのがGloveboxと呼ばれる機能で、隔離環境で実行中の検体を解析者が画面越しに直接操作でき、実行の様子を録画で見返すこともできます。自動判定だけでは結論が出ない検体を、担当者が手を動かして確かめる用途を想定した作りです。
提供形態はクラウドサブスクリプションと、検体を社外へ出さずに済むオンプレミスアプライアンスの2つです。同社のメールセキュリティ製品と組み合わせる構成では1日あたりの解析件数が既定で200件とされ、クラウド単体契約の上限は公表されていません。料金は非公開で、本製品専用の日本語ページも用意されていないため、確認は国内の販売窓口が起点になります。
18. ANY.RUN(ANYRUN FZCO)

検体を投入して結果を待つのではなく、ブラウザ越しに仮想マシンを自分で操作しながら挙動を観察できる点が、ドバイのANYRUN FZCOが運営する本サービスの作りです。添付ファイルを開く、圧縮ファイルを展開する、表示されたリンクをたどるといった、人の操作がないと先へ進まない検体にも対応できます。
無料のCommunityプランが期限なしで用意されており、まず1件試してレポートの中身を確かめてから有償プランを検討できます。ただし無料枠は個人ライセンス扱いで、仮想マシンの実行時間は60秒、投入できるファイルは16MBまでという制限があります。
有償のHunterでは実行時間が660秒、ファイル上限が100MBに広がり、解析結果を非公開にできます。最上位のEnterprise SuiteはWindows Server 2025やmacOSを含む環境に対応し、月1,500件を超えるAPI経由の解析枠とチーム管理機能が付きます。いずれも価格は要お問い合わせで、国内ではアンカーテクノロジーズ株式会社が日本語で製品情報と価格を案内しています。
19. FFRI yarai analyzer Professional(株式会社FFRIセキュリティ)

国内で開発されているマルウェア自動解析システムで、検査対象のファイルやフォルダを一括で投入すると、隔離環境で実行した結果がレポートとして出力されます。検体を外部のセキュリティベンダーに預けず、自社内で解析を完結できる点を訴求しており、ハニーポットで採取した検体や標的型攻撃メールの添付ファイルの調査を想定した製品です。
レポートには、マルウェアが呼び出したWin32 APIの履歴が引数を含めて時系列で記録され、プロセスとスレッドの相関も可視化されます。解析結果をコメントとして逆アセンブラIDAへ取り込むスクリプトも提供されており、検体の中身まで踏み込んで調べる担当者に向いた作りです。
料金は公開されておらず販売パートナー経由での見積もりで、ライセンスは買い切り型に加え、2024年12月から契約期間に応じたサブスクリプション型も選べるようになりました。1台のサーバーに最大6つの解析環境を構築でき、PE形式に加えてOffice文書やスクリプトなど30種類以上の拡張子を検査できます。
サンドボックス製品を導入するメリット
候補が絞れたら、次に要るのは導入効果を確かめる材料です。サンドボックスを追加すると何が変わるのかに加えて、その効果をどう確かめるかまで3つの観点で整理します。
パターンファイルに無い未知の検体を、社内の誰かが開く前に見つけられる
この効果を確かめるには、いま何が素通りしているかを自社の数字で出すのが早道です。メールセキュリティ製品の検疫ログに残っているのは、パターンファイルで弾けた分だけです。EDRを入れているなら、端末で実行された後に検知した件数がそのまま「実行前に止められなかった件数」になります。
導入後は月ごとの解析件数と悪性判定件数がレポートに残るため、次の契約更新のときに効果を説明する材料としても使えます。
標的型攻撃・ゼロデイ攻撃で使われる新種の検体に対応できる
新種に効くことは言葉だけでは伝わりにくいため、実物で見せるのが早道です。無料枠を持つ解析プラットフォームに自社へ届いた不審ファイルを1件投入すれば、通信先やプロセスの動きまで書かれたレポートが出ます。
そのレポートを、いまの対策が同じファイルをどう扱っていたかと並べて示すと、何が見えていなかったのかが具体的に伝わります。検討の初期に手を動かせる点も、この型の使いどころです。
既存のネットワーク・メール構成を入れ替えずに後付けできる
1つの経路から始めて、効果を見ながら広げられる点も導入判断をしやすくします。まずメールの添付だけを対象にし、次の更新時にWeb経路を足すという進め方であれば、初年度に出す金額を抑えられます。
ミラーリングで通信をコピーして検査する専用機なら、既存の通信経路に手を入れずに設置でき、外すときも同じ手順で戻せます。試験導入から始める提案がしやすい形です。
サンドボックス製品の弱点と、単体では防ぎきれない部分を補う対策
導入前に押さえておきたい弱点と、それを埋めるための組み合わせを順に見ていきます。いずれも製品選定や運用設計で影響を小さくできるもので、あらかじめ把握しておくと検討が前に進みます。
仮想環境を検知して活動を止める検体がある
前述のとおり、サンドボックスの中だと察知して何もせずに終了する検体があります。この場合は「悪意なし」と判定され、そのまま社内に届きます。一定時間が経ってから動き出す検体や、利用者がファイルを開いてマウスを動かすまで待つ検体も同じ問題を起こします。
各社が備えている対策方式は選び方で整理したとおりで、比較表の「回避型マルウェアへの対策」欄でも製品ごとに確認できます。ただし、どの方式でも回避をゼロにはできません。すり抜ける検体がある前提で、この後に見る組み合わせの対策まで含めて設計する必要があります。
判定が出るまでのタイムラグが業務に与える影響
実行して確かめる以上、判定には時間がかかります。判定を待つあいだメールを保留する設定にすると、その分だけ相手からのメールが遅れて届きます。急ぎのやり取りが多い部署では、この遅延そのものが問題になります。
対応の方向は2つです。1つは、判定を待たずに配信し、悪性と分かった時点で受信箱から回収する運用に切り替えること。もう1つは、判定待ちの対象を実行可能ファイルとマクロを含む文書に絞り、明らかに問題のない形式は静的な検査だけで通すこと。多くの製品はこの絞り込みを標準で行っていますが、対象範囲の設定は導入時に確認しておきたい項目です。
初期費用と運用負荷
専用機タイプでは機器の購入費用が初期にまとまって発生します。加えて、判定結果を誰が確認し、誤検知が出たときに誰が解除するのかという運用の担い手が要ります。導入したものの、アラートを見る人がいないまま通知が溜まっていく状態は、費用に見合いません。
既存製品への追加という形であれば初期費用を抑えられますし、ベンダー側の分析サポートが手厚い製品を選べば運用の担い手の問題も軽くなります。自社の体制で回せる形から始めるほうが、結果として長く使えます。
弱点を補うために組み合わせる対策(多層防御でのサンドボックスの位置づけ)
侵入経路そのものがファイル以外に広がっている点も押さえておきたいところです。警察庁は令和7年の情勢資料で、近年はインターネットに露出した箇所から遠隔操作で内部に侵入する手口が多くを占めると記載しています。
同資料は、標的型攻撃メール等の添付ファイルによる感染は少なくなっており、侵入経路はVPN機器が6割以上を占めるとも記しています。ファイルの検査で塞げるのは経路の一部です。
ここまでの弱点は、サンドボックス単体で解決するものではありません。入口・端末・運用のそれぞれで受け止める仕組みを持つことで、すり抜けた検体が被害に至るまでの間に止められる機会が増えます。政府機関等の対策基準のガイドラインも、サンドボックス型の対策を単独の解決策としてではなく、ファイアウォールやURLフィルタリングなどと並ぶ選択肢の一つとして位置づけています。
必要な対策としては、外部からの不正なアクセス等による侵入を防ぐための対策(入口対策)のみならず、侵入されてしまったとしても情報を外部へ漏えいさせないための対策(出口対策)が重要である。(中略)さらに、入口対策と出口対策の両方で有効なサンドボックス型の標的型攻撃対策を利用することも考えられる。
出典:政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン(令和7年度版)第3部〜付録 p.255|内閣官房 国家サイバー統括室

エンドポイント側(EPP・EDR)で受け止める
サンドボックスをすり抜けた検体は、最終的に端末で動きます。端末上のふるまいを監視するEPP・EDRがあれば、実行された時点で不審な動作を検知して止められます。判定を待たずに配信する運用を選ぶ場合、この端末側の備えが最後に止められる層になります。
端末側の層をこれから整えるなら、EDR(端末を監視する)とNDR(社内ネットワークの通信を監視する)のどちらから手を付けるかが最初の分かれ目になります。監視する場所が違うため、すり抜けた検体を端末での実行時に捉えるのか、感染後に社内へ広がる通信で捉えるのかによって、選ぶ製品も必要な体制も変わります。
次の記事では、この2つの層の役割の違いと製品ごとの選び方に加え、自社で監視を回すか外部のMDRに委ねるかの費用と体制まで整理しています。
メール・Webの経路側(無害化・SWG)で入口を減らす
ファイルからマクロやスクリプトを取り除いて再構成する無害化を併用すると、判定を待たずに安全な形のファイルを届けられます。原本はサンドボックスで検査し、結果が出たら原本を渡す、という組み合わせを標準で持つ製品もあります。Web経路については、業務に不要なカテゴリのサイトへのアクセスを制限するだけでも、検査対象そのものを減らせます。
運用側(従業員教育・検知後の対応フロー)で埋める
技術で止めきれない部分は、運用で補うのが現実的です。不審なメールを開かずに報告する習慣があれば、そもそも検査対象に届く前に止まります。検知が出たときに誰へ連絡し、どの範囲を調査し、いつ復旧するのかというフローを、導入と同時に決めておくことも欠かせません。
組み合わせる対策の候補も一緒に見ておきたい場合は、以下から資料を請求できます。
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導入後の運用体制(誰がアラートと解析レポートを見るか)
製品を選ぶ段階で、導入後に誰が何を担当するかまで見通しておくと、導入してから慌てずに済みます。選んだ型によって必要な体制が違うためです。
判定を保留する製品は、誤検知を解除するフローを先に決めておく
配信を止める設定で運用する場合、必ず起きるのが「取引先からの正常なファイルが止まった」という問い合わせです。誰がその判定内容を確認し、どの権限で解除し、どれくらいの時間で戻すのか。この手順が決まっていないと、情報システム部門に問い合わせが集中して業務が滞ります。
解除の判断に迷う場合に備えて、ベンダーや代理店に個別相談できる契約かどうかも確認しておくと安心です。判定の根拠を示すレポートが日本語で読める製品かどうかも、この場面で効いてきます。
解析プラットフォームは、レポートを読める担当がいて初めて回る
検体を投入して詳しく調べる型は、出力されるレポートを読み解ける人がいなければ価値が出ません。通信先の一覧やプロセスの動きから「何をしようとした検体か」を判断する作業には、ある程度の知識と経験が要ります。
社内に担当を置けない場合は、外部のセキュリティ監視サービスに解析まで委ねる選択肢もあります。自社で持つべきは製品なのか、それとも運用を含めたサービスなのか。この問いを先に整理しておくと、比較する対象そのものが変わります。
まとめ
サンドボックス製品は、定義ファイル照合をすり抜けた未知のファイルを隔離環境で実際に動かし、その挙動から悪意の有無を判定する製品です。選定でまず決まるのは提供形態で、検体を社外に出せるか、機器を設置できるか、既存製品に足したいか、社内に解析担当がいるかという条件で候補が絞れます。
そのうえで確認したいのが、判定が出るまでファイルの配信を止められるのか、自社に流れるファイル量を捌ける処理能力があるのか、単体で購入できるのか上位ライセンスへの移行が要るのか、という3点です。いずれも導入後の効き目と実際に支払う金額に直結しますが、公表している製品と非公開の製品が分かれる領域でもあります。比較表で公表状況を確かめ、必要な数字は見積もり時に確認してください。
条件の組み合わせからは、次のようにタイプで当たりを付けられます。個別の製品名までは比較表と選定診断ツールで絞り込んでください。
- 検体を社外に出せない × メールとWebをまとめて守りたい:検査が社内で完結する専用機タイプが候補です。同じタイプの中でも、判定が出るまで配信を保留する扱いを公表している製品なら、実行前に止めたいという要件にも応えられます
- メールの添付ファイルだけを守りたい:いま使っているメール基盤に検査を足すタイプで足ります。契約中のライセンス階層にすでに含まれている場合もあるため、自社の契約内容の確認から始めるのが早道です
- メールの遅延を出したくない:配信モードを選べる製品、無害化した複製を先に届ける製品、いったん通して事後に回収する製品が向きます。いずれも既存製品に検査を足すタイプに含まれます
- Webからのダウンロードを止めたい:Webゲートウェイやファイアウォールに検査を足すタイプを見ます。母体製品の契約が前提になるか、機能だけ買い足せるかで追加費用が変わります
- 社内に解析担当を置ける:検体を投入して詳しく解析するタイプが選択肢に入ります。無料枠を持つ製品もあるため、レポートの中身を確かめてから有償プランを判断できます
仮想環境を検知して活動を止める検体があるため、サンドボックス単体で未知のマルウェアをすべて止められるわけではありません。エンドポイント側のEPP・EDR、経路側の無害化、運用側の対応フローと組み合わせ、すり抜けた検体を別の層で受け止める設計にすることで、投資に見合う効果が出ます。
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よくある質問(FAQ)
Q. サンドボックス製品と、開発・テストで使う仮想環境(サンドボックス)は同じものですか?
A. サンドボックス製品と開発・テスト用の仮想環境は、隔離した環境でプログラムを動かすという考え方が共通するだけで、目的が異なります。開発・テストで使う仮想環境は、動かした結果が本番環境に影響しないようにするための場所であり、そこで動かしたプログラムが悪意あるものかどうかを判定したり、危険と分かった時点で配信を止めたりする仕組みは持ちません。
本記事で扱うサンドボックス製品は、隔離実行の考え方をマルウェア検査に用い、挙動の観測と判定、遮断・隔離、解析レポートの出力までを行う点が違います。
Q. OSに標準で付いているサンドボックス機能でサンドボックス製品の代わりになりますか?
A. 代わりにはなりません。OS標準の機能が提供するのは隔離された実行環境そのもので、悪意の有無を自動で判定して配信を止める仕組みや、解析レポートを出力する仕組みは含まれないためです。
サンドボックス製品は、メールやWebといった経路に組み込まれ、そこを通るファイルを自動的に検査して社員が開く前に処理を終えます。OS標準の隔離環境は、担当者が手元で1件確かめる用途には使えても、全社に流れるファイルを継続的に検査し、悪性と判定したものを遮断する役割は担えません。
Q. 無料で使えるサンドボックスと有償のサンドボックス製品は何が違いますか?
A. 無料で使えるサンドボックスは、担当者が検体を1件ずつ投入して調べる解析用途が中心です。月あたりの解析回数、仮想マシンの実行時間、投入できるファイルサイズに上限が付き、個人ライセンス扱いの製品もあります。
投入した検体と解析結果が公開で共有される設定の製品もあるため、無料枠を業務ファイルにそのまま使えるとは限りません。製品ごとの無料枠の有無と金額は、比較表の「費用」欄で確認できます。
取引先から預かったファイルや業務ファイルを扱う場合は、解析結果を非公開にできるか、法人として契約できるかを確かめたうえで有償プランを検討することになります。また、無料枠を持つのは解析プラットフォームタイプの製品で、メールやWebの経路に組み込んで自動で遮断する使い方はできません。まずレポートの中身を確かめる目的には向いています。
Q. EDRを導入していればサンドボックス製品は不要ですか?
A. 不要にはなりません。EDRが守るのは検体が端末で実行された後、サンドボックス製品が守るのは実行される前で、担当する時間帯が逆だからです。
EDRは端末上で実際に起きた不審な動きを検知し、感染後の広がりを追跡・封じ込めます。一方サンドボックス製品は、経路を通るファイルを実行前に検査して社員に届く前に止めます。両者は補い合う関係にあります。
判定を待たずに配信して事後に回収する運用を選ぶ場合は、端末側のEPP・EDRが最後に止められる層になります。どちらから整備するかは、自社に届いている不審ファイルの経路と、いまある対策の抜けで決めるのが現実的です。
Q. サンドボックス製品で検査できるファイル形式は何ですか?
A. サンドボックス製品の検査対象は実行可能ファイルとマクロを含む文書が中心です。どこまで対象を広げられるかは、製品とライセンス階層によって変わります。
標準のライセンスでは実行ファイル・ライブラリ・圧縮書庫だけが動的な検査の対象で、Office文書やPDF、スクリプト類、スマートフォンのアプリまで広げるには上位ライセンスが要る製品があります。一方で、100種類を超える形式に対応するとうたう製品もあります。
全ファイルを実行検査にかけると処理が滞るため、多くの製品は明らかに問題のない形式を静的な検査だけで通す絞り込みを標準で行っています。自社でやり取りの多い形式が動的な検査の対象に入っているかは、導入時に確認しておきたい項目です。
Q. 検体を社外のクラウドに出せない場合でもサンドボックス製品は導入できますか?
A. 導入できます。自社に機器を置く専用機タイプのほか、クラウドで検査するタイプにも、解析に使うリージョンを国内に指定できる製品や、自社内に解析基盤を置くオンプレミス版があるためです。
外部と切り離したエアギャップ環境での提供や、検体を外部のベンダーに預けずに社内で解析を完結できることを掲げる製品もあります。製品ごとにどこで解析されるかは、比較表の「解析場所」欄で確認できます。
クラウドで検査する製品を検討する場合は、解析が行われる国・リージョン、検体の保管期間、他の顧客と共有される脅威情報に検体そのものが含まれるかの3点を先に確認しておくと、法務・情報管理の確認で差し戻されずに済みます。
Q. サンドボックス製品は導入までにどれくらいの準備が必要ですか?
A. サンドボックス製品の導入に必要な準備は選ぶ提供形態で大きく変わり、機器の設置を伴うかどうかが分かれ目になります。専用機タイプは、自社に流れるファイル量からの処理能力の見積もりと機種の選定、設置とネットワークへの組み込み(インラインで通すのかミラーリングで受けるのか)の検討が必要です。
既存のファイアウォールやメールセキュリティにライセンスを追加するタイプであれば、機器の入れ替えも設定の作り直しも発生しません。実際に要する期間は構成によって変わるため、見積もりを依頼する際にあわせて確認してください。
クラウドで検査する製品を選ぶ場合は、検体を社外に出してよいかを法務・情報管理の担当と確認する工程が先に入ります。ここを飛ばすと社内の最終確認で差し戻されるため、製品の選定と並行して進めておくと滞りません。解析プラットフォームタイプには無料枠を持つ製品があり、まず1件解析してレポートの中身を確かめてから有償プランを判断できます。
Q. 「サンドボックスは回避される」と聞きますが、それでも導入する価値はありますか?
A. 回避型の検体があること自体は、導入しない理由になりません。今回比較した19サービスのうち12サービスが、回避への対策を公式資料で説明しています。
公表されている対策は、CPUや命令のレベルで実行を追う、仮想マシンではなく物理端末で動かす、ゲストOSにエージェントを置かず外側から観測する、待機する検体の時間を進める、解析者が画面越しに操作して先へ進めるといった方向に分かれます。
どの製品が何を実装しているかは、比較表の「回避型マルウェアへの対策」欄で製品ごとに確認できます。
残る7サービスは対策方式を公表していません。対応していないという意味ではありませんが、回避型の検体への備えを比較材料にはできないため、検討時にベンダーへ直接確認することになります。
出典・参考資料
出典・参考資料(4件)
サンドボックス製品と組み合わせる対策の料金・費用を一括チェック
サンドボックスと組み合わせて使うEDR、メールの無害化、セキュアウェブゲートウェイの資料を、MCB FinTechカタログでまとめて請求できます。料金や機能を横並びで確認したうえで、問い合わせ先を絞り込めます。
すり抜けた検体を端末側・経路側で受け止める層を並行して検討する場合は、以下からご利用ください。
一括ダウンロードする
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















