「決算説明会を動画で配信したい」「東証プライム移行にあたって株主総会をハイブリッド化したい」「アナリストだけでなく個人投資家にもIR情報を届けたい」——上場企業のIR・広報担当者が、こうした宿題を渡されて最初に検索するのが「IR動画配信」というキーワードです。
IR動画配信とは、上場企業(またはIPO準備企業)が、決算説明会・株主総会・IR説明動画などを、株主・投資家・アナリストなどのステークホルダーに動画で届ける仕組みです。個人投資家向けの視聴サイト(IR動画のポータルサービス)ではなく、”配信する側”の企業が使うプラットフォームや制作サービスを指します。
この記事では、IR動画配信の主な用途と配信形態、主要サービスの見取り図、費用感の目安、選び方の観点を1本で押さえられるように整理しました。制度背景(プライム市場の情報開示要件・フェアディスクロージャー・電子提供制度・バーチャル株主総会解禁)にも一次情報の条文リンクで踏み込むので、社内の検討材料としても活用いただけます。
目次
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IR動画配信とは?上場企業が動画で株主・投資家に情報を届ける仕組み
IR動画配信とは、上場企業(またはIPO準備企業)が、経営状況・財務情報・戦略説明・株主総会などの内容を動画にして、株主・機関投資家・個人投資家・アナリストなどのステークホルダーに届ける仕組みです。
決算説明会のライブ中継、株主総会のハイブリッド配信、経営者による中期経営計画説明、個人投資家向けIR動画などが代表的な用途で、専用の動画配信プラットフォームやIR特化の制作パッケージを組み合わせて配信します。
本記事の対象は、動画を”配信する側”の上場企業・IPO準備企業のIR・広報・経営企画担当者です。個人投資家がIR動画を視聴するためのポータルサイトや、投資家向けIRチャネルの紹介記事は、視点が違うため本記事では扱いません。
日本取引所グループ(JPX)が公開している「上場会社のIR動画」事例集ページには、実際に上場企業がどのような形でIR動画を出しているかがまとまっているので、あわせて参考にできます。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:上場会社のIR動画|日本取引所グループ(JPX公式サイト)
IR動画配信の主な用途|決算説明会・株主総会・IR説明動画など5類型
ここからは、IR動画配信の代表的な用途を5類型に分けて整理します。自社が取り組もうとしているのが「どの用途」に当たるかを最初に確認しておくと、後述するサービスの見取り図・費用感の章で自社に近い選択肢を絞り込みやすくなります。
決算説明会(四半期・通期)のライブ・オンデマンド配信
四半期決算・通期決算の説明会を、機関投資家・アナリスト向けの会場開催と並行して、株主・個人投資家向けに動画で配信する用途です。決算発表日にライブ中継し、当日中〜翌営業日にアーカイブ動画を公開する運用が一般的で、Q&Aセッションの取り扱い(そのまま公開するか編集するか)が実務上の論点になります。
株主総会のハイブリッド配信・バーチャルオンリー株主総会
会場を開催しつつオンラインでも視聴・参加できるハイブリッド型と、会場を設けずオンラインのみで開催するバーチャルオンリー型があります。バーチャルオンリー型は産業競争力強化法の特例により実施できるようになった形態で、後述する「なぜ今IR動画配信が必要か」章で制度背景を整理します。議決権電子行使との連携が必要になるケースがある点も、他の用途とは違うポイントです。
IR説明動画(中期経営計画・戦略説明会)
中期経営計画の発表や成長戦略説明会などを動画化する用途です。会場開催と並行してオンデマンド配信するケースが多く、決算説明会よりもコンテンツの企画・編集に時間をかけられる分、映像品質・図表演出・字幕対応など制作面の作り込みが行われる傾向にあります。
個人投資家向けIR動画(トップメッセージ・事業説明)
経営者のトップメッセージや事業内容の解説動画を、個人投資家向けに常時公開しておく用途です。決算説明会が半期に1回・株主総会が年1回のイベントであるのに対し、こちらは常設のIRチャネルとして自社IRサイトやYouTubeなどに掲載します。長さは3〜10分程度の短尺が中心で、動画1本ずつの企画・制作を継続的に回す運用が特徴です。
有価証券報告書・統合報告書と連動した通期説明動画
有価証券報告書・統合報告書の公表と連動して、内容を動画で解説する用途です。ESG説明会・サステナビリティ報告説明などもこの類型に含まれ、機関投資家との建設的な対話(コーポレートガバナンス・コードの本旨)を意識したコンテンツ設計が求められます。動画本体の制作に加えて、報告書PDFへのリンク導線・関連資料の同時提供も設計に組み込みます。
自社の当面の宿題がどの類型か決まったら、次章で制度背景を押さえた上で、配信形態3類型(ライブ/オンデマンド/ハイブリッド)から自社に合う組み合わせを確認しましょう。
なぜ今IR動画配信が必要か|プライム市場・フェアディスクロージャー・電子提供制度・バーチャル株主総会
IR動画配信が上場企業のIR運営で存在感を増している背景には、投資家層の変化に加えて、複数の制度改正が重なっています。ここでは社内の検討材料に使える粒度で、4つの背景を条文単位で押さえます。
東証プライム市場の情報開示要件と個人投資家層の拡大
2022年4月の東証市場区分再編以降、プライム市場は「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」と位置づけられ、コーポレートガバナンス・コードの全原則適用や、決算短信・IR資料・招集通知など主要開示書類の英文開示の充実が求められています。個人投資家層も新NISAの拡充で拡大しており、機関投資家向けの説明会だけでは届かない層へIR動画で情報を届けるニーズが高まっています。
フェア・ディスクロージャー・ルール(金商法27条の36)による同時・同質の情報開示要請
フェア・ディスクロージャー・ルール(FDR)は、上場会社が未公表の重要な情報を証券会社・機関投資家などの特定の第三者に伝えた場合、原則として同時にすべての投資家に公表するよう求めるルールです。金融商品取引法27条の36に規定されており、意図的な伝達の場合は伝達と同時、意図せざる伝達の場合はすみやかに公表することが義務づけられています。
上場会社等及びその役員、代理人、使用人その他の従業者……のうち、その者の職務に関し、当該上場会社等に係る運用資産等の運用に関する調査分析又は投資判断を提供する業務……を行う者に対して、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する公表されていない重要な情報の伝達を行うときは、当該伝達と同時に、当該重要情報を公表しなければならない。
出典:金融商品取引法 第27条の36 第1項|e-Gov 法令検索
決算説明会をアナリスト向け会場のみで実施し、個人投資家向けの同時開示手段を用意しないと、FDRの趣旨に反する運用になりかねません。ライブ配信・オンデマンド公開を並行して行うことが、FDRの実務対応として広く採用されている理由の一つです。
出典・参考資料(1件)
- 出典:金融商品取引法(e-Gov 法令検索)|第27条の36「上場会社等の公平開示義務」(法令原文)
バーチャル株主総会の解禁(産業競争力強化法特例)とハイブリッド・バーチャルオンリー化
会社法上、株主総会は場所を定めて招集することが原則ですが、産業競争力強化法の特例により、上場会社は定款変更のうえ経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることで、場所を定めないバーチャルオンリー株主総会を開催できます。2021年6月の同法改正により運用が始まりました。
会場開催と並行してオンラインでも参加・出席できるハイブリッド型は、経済産業省・法務省が2020年2月に策定した「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」により、会社法の枠内で実施可能な運用形態として整理されています。バーチャルオンリー型に踏み切る前段階として、多くの上場企業が採用しているのがハイブリッド型です。
出典・参考資料(2件)
電子提供制度(会社法325条の2〜4)による招集通知の電子化と株主総会運営のデジタル化
2022年9月1日施行の改正会社法により、株主総会資料の電子提供制度が導入されました。会社法325条の2〜4に規定されており、振替株式を発行する上場会社は電子提供措置をとる旨を定款に定めることが必要です。
招集通知の主要内容をウェブサイト等で電子的に提供する運用が事実上必須になっており、招集通知の電子化と、IR動画(総会前の事業説明・議案説明動画など)のインライン提示は親和性が高い組み合わせになります。
配信形態は3類型|ライブ・オンデマンド・ハイブリッドの違いと向く用途
IR動画配信の配信形態は、ライブ(当日リアルタイム配信)/オンデマンド(事前収録の配信)/ハイブリッド(両者の組み合わせ)の3類型に大きく分かれます。用途との対応を表で押さえておくと、自社の宿題に合う形態がひと目でわかります。
| 配信形態 | 特徴 | 向く用途 | 実務上の留意点 |
|---|---|---|---|
| ライブ配信 | 本番当日にリアルタイムで配信。Q&Aや議決権行使を組み込める | 決算説明会(当日ライブ中継)/株主総会のハイブリッド/バーチャルオンリー総会 | 本番トラブルのリスク。冗長化・技術者派遣の要否を検討 |
| オンデマンド配信 | 事前収録した動画を任意のタイミングで公開・視聴可能 | IR説明動画(中計)/個人投資家向けトップメッセージ/有価証券報告書連動動画 | 公開タイミングとFDRの整合。編集品質・字幕対応を作り込む余地 |
| ハイブリッド配信 | ライブ配信+アーカイブ公開。当日のライブ視聴とアーカイブ視聴を両立 | 決算説明会(ライブ+アーカイブ)/株主総会のハイブリッド開催 | アーカイブ公開の速度(実務では本番終了から3時間程度以内が目安) |
※アーカイブ公開の目安は上場企業向けの実務コラム等で示されている実務基準で、明文の公的基準ではありません。
決算説明会は「ライブ+アーカイブ(ハイブリッド)」、株主総会は「ハイブリッドまたはバーチャルオンリー」、IR説明動画は「オンデマンド」が現時点の実務での典型的な組み合わせです。自社の当面の宿題がどれに当たるかを確認したら、次章のサービス見取り図で候補サービスを絞り込みましょう。
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IR動画配信サービスの見取り図|汎用プラットフォーム型とIR特化型
IR動画配信で使うサービスは、大きく「汎用の動画配信プラットフォーム型」と「IR特化のパッケージ/制作一体型」の2群に分かれます。前者は社内動画・ウェビナー・IRなど幅広い用途に汎用的に使えるプラットフォームで、機能・料金の透明性と自社での運用の自由度が特徴。後者はIR実務のパッケージ提供や制作・配信の代行に強く、内製リソースが薄い企業にとって使いやすい形をとります。
下表に、汎用プラットフォーム型(自社検討にも組み込みやすい汎用型としてULIZAを含む)とIR特化型の代表5サービスを、得意用途・料金レンジ・実績社数の目安で並べました。
| サービス名 | ULIZA(ウリザ) | SmartVision IR | IR Times | IR pocket | NTTスマートコネクト バーチャル株主総会・IR動画配信 | リンクソシュール(オンライン決算説明会) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供企業 | 株式会社PLAY | 株式会社アイヴィジョン | 株式会社サイトスコープ(ソリューション事業部) | 株式会社Magical Pocket | NTTスマートコネクト株式会社 | 株式会社リンクソシュール |
| サービス種別 | 汎用の動画配信プラットフォーム型 | IR特化パッケージ | IR特化パッケージ | IR特化パッケージ | IR特化パッケージ(バーチャル株主総会に強い) | IR特化 制作一体型(オンライン決算説明会) |
| IR用途での位置づけ | 決算説明会・株主総会のライブ配信/IR説明動画のオンデマンド配信/ライブ運用代行(Live Technical Support) | IR説明会動画・トップメッセージのオンデマンド配信・英語ネイティブ吹替オプション | 個人投資家と公開企業をつなぐIR動画リレーション(2008年から運用) | IR向け動画配信(スライド同期・見出し連動・モバイル最適化・投資家コミュニケーション機能) | バーチャル株主総会/ハイブリッド株主総会/決算説明会のライブ配信・技術者派遣・視聴数レポート | オンライン決算説明会の企画〜制作〜配信の一体運用・アーカイブ公開のスピード対応 |
| 料金の目安 | 月額 50,000円〜(Standardプラン、税抜)/初期費用 50,000円〜/Enterpriseは要問い合わせ | 月額 50,000円〜(税別) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 実績社数の目安 | 累計500社以上(PLAY公式・2023年時点) | 大手企業導入ロゴ30社以上(カカクコム/セブン&アイHD/サンリオ/日本マクドナルド ほか) | 利用企業12社以上を掲載(吉野家HD/キーコーヒー ほか) | 非公開 | 通算1500契約超(自社ソリューション群全体) | 非公開(グループ支援実績は多数) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※料金・実績社数は各社公式サイト等で公表されている情報にもとづく2026年8月時点の目安です。最新の内容は各社にご確認ください。
汎用プラットフォーム型はIR用途に限らず社内動画・ウェビナー・研修などを1つの管理画面で運用でき、初年度の投資が中期的な資産として残る利点があります。ULIZAはそのなかで、株主総会・決算説明会のライブ配信を対応用途として公式に明記し、ライブ配信運用代行(Live Technical Support)も自社で提供しています。
汎用プラットフォーム型(IR以外の用途にも広げたい・自社で管理画面を運用したい企業向け)の選択肢をより詳しく比較したい場合は、以下の記事で17サービスを詳細比較していますので、あわせてご覧ください。
1. ULIZA(ウリザ)|株式会社PLAY

ULIZA(ウリザ)は、株式会社PLAYが自社開発・運営する国内クラウド動画配信プラットフォームです。オンデマンド配信(VOD)・スケジュール配信に沿った疑似ライブ配信・リアルタイムのライブ配信の3方式に対応し、動画の登録・管理・配信・分析を1つの管理画面で行えます。
株式会社PLAYは、日本テレビをはじめとした各テレビ局の動画配信基盤や、Hulu・TVerなど大手動画配信サービスの構築・運用支援で培った知見を、一般企業向けに展開した経緯を持ちます。
IR用途では、公式サイトの対応用途として「株主総会・決算説明会のライブ配信(IR)」が明記されています。IPアドレス制限・参照ドメイン制限・URL有効期限・同時視聴数制限・OpenID Connect によるSSO・OTP二段階認証・Widevineベースの DRM など、クローズド配信向けのアクセス制御が幅広く用意されています。
限定公開が前提の株主総会や有償のIRイベントに必要なアクセス制御を備えています。ライブ配信の運用については「Live Technical Support」として、撮影・配信管理を専任スタッフが代行する有償サービスを別途用意しており、内製リソースが薄いIR部門でも本番運用を任せられます。
料金は Standard プランが月額 50,000円〜、Pro プランが月額 100,000円〜が目安で、配信流量(月間1,000GBまで/2,000GBまで)と機能範囲(チャット・イベント機能・SSO の可否など)でプランを切り分けています。
初期費用ゼロ・月額 7,500円〜の軽量プラン(ULIZA mini)も用意されており、まずはトップメッセージ動画などから小さく始めたい企業にも導入しやすい料金レンジです。2026年時点の累計導入は600社以上、継続率はほぼ95%と、株式会社PLAYが公式インタビューで説明しています。
IR動画配信サービスの選び方|上場企業のIR運営で押さえたい6つの観点
ここからは、IR動画配信サービスを選ぶ際に上場企業のIR運営として押さえておきたい6つの観点を整理します。一般の社内動画・ウェビナーとは違って、株主・投資家という外部ステークホルダーに配信するため、失敗が経営判断や株価に響き得る点が特有の要件です。
本番の配信品質と冗長化体制は担保されているか
決算説明会・株主総会のライブ配信は、当日一発勝負の運用です。配信サーバやエンコーダの二重化、複数拠点からのバックアップ回線、監視オペレーターの常駐など、本番中のトラブルを抑える冗長化体制がどこまで担保されているかは、必ず確認しておきたい観点です。過去のライブ配信でどのような障害が起こり、どう回復してきたかを提供元に具体的に聞き、公表可能な事例があれば見せてもらうと判断材料になります。
ライブ配信の運用支援(撮影・配信スタッフの派遣)は必要か
自社に映像制作・配信オペレーションの人員がいない場合、撮影・スイッチング・配信管理を提供元スタッフが代行するかどうかで運用の負担が大きく変わります。決算説明会・株主総会など年数回の大きなイベントだけを外部に任せ、常設のIR動画(トップメッセージ等)は内製で回す組み合わせもよく採用されます。自社の内製化方針と照らして、部分委託が可能かも合わせて確認するとよいでしょう。
議決権電子行使や質疑応答のインタラクション機能は要件を満たすか
株主総会のハイブリッド化・バーチャルオンリー化を進める場合、視聴者側からの議決権電子行使・質問投稿・投票機能をどこまでサービス側で提供しているかが選定の分かれ道になります。既に議決権電子行使プラットフォーム(ICJなど)を導入している場合は、そのシステムと動画配信をどう組み合わせるか(同一URL内埋め込みか別画面か)を整理してから、候補サービスに要件を伝えると比較しやすくなります。
英語同時字幕・多言語対応は将来必要になるか
東証プライム市場では英文開示の充実が求められており、海外機関投資家への配信を視野に入れる場合、英語同時字幕・多言語音声対応の有無が中期的な選定条件になります。現時点で英語対応が不要でも、将来的にプランのアップグレードで追加できるか、外部の同時通訳サービスと連携できるかを最初のうちに確認しておくと、後々の乗り換えコストを抑えられます。
視聴ログ・アクセス分析はどこまで取れるか
誰がどの動画を・どこまで視聴したかの分析機能は、IR施策の効果測定に加えて、機関投資家との建設的な対話の準備(誰が関心を持っているかの把握)にも使えます。個人単位のトラッキングか、集計指標(総視聴回数・平均視聴時間・時間帯別視聴数など)どちらまで取れるか、CSV/API での外部書き出しに対応するかを確認しましょう。
株主総会のライブでは、時間帯ごとの視聴数レポートを配信終了後に受け取れるかも、NTTスマートコネクトなど競合が言及している要件です。
限定公開・パスワード・SSOなどのセキュリティ制御はIR用途に足りるか
株主限定の説明動画や有償IRセミナーなど、視聴を特定の対象者に絞りたい場合、IPアドレス制限・参照ドメイン制限・パスワード認証・SSO 連携・DRM(ダウンロード後の再生制御)などの制御機能が要件に足りているかを確認します。ISO/IEC 27001(ISMS)・SOC 2・プライバシーマークなど第三者認証の取得状況も、社内の情報セキュリティ部門との調整に使える情報です。
IR動画配信の費用感|公開されている実数と、非公開項目の見積り方
IR動画配信の費用感は、月額プラットフォーム利用料と1イベントあたり配信費用の2種類に大きく分かれます。公開されている実数を並べたうえで、非公開項目(多くは「要問い合わせ」)を見積もる際のチェックポイントを整理します。
| 費用項目 | 公開されている料金(サービス/プラン) | 非公開項目の見積り方 |
|---|---|---|
| 月額プラットフォーム利用料(汎用型) | ULIZA mini:7,500円〜(年払い・税抜)/ULIZA Standard:50,000円〜(月額・税抜)/ULIZA Pro:100,000円〜(月額・税抜) | 配信流量と同時視聴数、必要な機能範囲(SSO・OTP・チャット等)で見積り。将来の増枠余地を確認 |
| 月額プラットフォーム利用料(IR特化型) | SmartVision IR:50,000円〜(月額・税別) | 導入初期費用・オプション費用の有無、英語対応の追加費用を確認 |
| 1イベントあたり配信費用 | 各社非公開(NTTスマートコネクト・リンクソシュールほか) | 撮影・配信技術者派遣の有無、機材レンタル、予備日程の確保費用、当日リハーサル費用を項目分解 |
| 制作費(オプション) | 各社非公開 | 撮影・編集・字幕・多言語翻訳(英語・中国語ほか)の単価。1本あたりか月次パッケージかを確認 |
| アーカイブ公開・保管費用 | 非公開(月額料金に含まれるケース/別枠のケースあり) | ストレージ容量、保管年数(IR資料は開示から最低3〜5年程度の保管が望ましい)を確認 |
※料金は各社公式サイト等で公表されている情報にもとづく2026年8月時点の目安です。最新の金額と適用条件は各社にご確認ください。
汎用の動画配信プラットフォーム型は、初期費用ゼロで月額数千円〜数万円から始められる軽量プランを持つケースがあり、まずはトップメッセージ動画などの少量配信から試すには入りやすい選択肢です。
決算説明会・株主総会など1回の重要イベントを外部支援込みで頼む場合、IR特化型と汎用型の運用代行を組み合わせる形になり、1イベントあたりの費用は数十万円〜数百万円の帯に幅広く分布します。
相見積りを取る際は、月額料金・1イベント料金・撮影/配信技術者派遣・機材・字幕・英語対応の各項目を分解して比較すると、見積り金額の内訳が読みやすくなります。
IR動画配信の準備の流れ(企画から本番・アーカイブ公開まで)
IR動画配信の準備は、以下の流れで進めるのが実務の標準的な段取りです。決算説明会・株主総会などの本番日から逆算して、少なくとも3ヶ月前には準備を始めておくとリハーサル・字幕・アーカイブ公開までの時間を確保しやすくなります。
- 目的・形式の決定:用途(決算説明会・株主総会・IR説明動画など)と配信形態(ライブ/オンデマンド/ハイブリッド)を決め、必要な視聴対象と規模の目安を固める。
- コンテンツの企画と準備:登壇者・スクリプト・スライド・想定Q&A、質問受付フォームの用意。株主総会は招集通知の電子提供と同時期に告知準備を並走させる。
- 技術的な準備・リハーサル:撮影機材・エンコーダ・回線・配信URL・視聴制限(IP・SSO・パスワード)の設定。リハーサルは本番と同じ経路で最低1回、大型イベントなら複数回実施する。
- 告知と招待:IRサイト・SNS・招集通知への配信URL掲載、機関投資家・アナリストへの個別案内。決算発表日の同時公表を守り、フェア・ディスクロージャー・ルールの趣旨から外れないよう注意する。
- 本番配信の実施:ライブは監視オペレーターとエスカレーション体制を整え、Q&A・質問投稿の運営ルール(誰が何を答えるか)を事前に決めておく。
- アーカイブ公開・フォローアップ:終了後すみやかにアーカイブを公開し(実務では本番終了から3時間程度以内が目安)、視聴ログを踏まえて次回の企画に反映する。書き起こし・議事録・字幕を後日追加するケースもある。
IR動画配信で失敗しやすいポイントと回避策
初めてIR動画配信に取り組む企業でつまずきやすい代表的な4つのポイントと、それぞれの回避策を整理しておきます。
本番中の配信トラブル(冗長化と技術者派遣)
ライブ配信中に映像が止まる・音声が途切れるといったトラブルは、株主・投資家からの信頼に直結します。回避策は、配信サーバ・回線・エンコーダの二重化、複数拠点からのバックアップ経路の確保、そして本番当日の技術者派遣を組み合わせることです。
決算説明会・株主総会のような重要イベントでは、リハーサルを本番前提のフルセットアップで行い、想定外の障害シナリオへの復旧手順まで整えておくのが安心です。
質疑応答の運営とフェア・ディスクロージャー違反リスク
決算説明会でアナリストの質問に踏み込んだ回答をしすぎると、未公表の重要情報を一部の投資家に先出しする形になり、フェア・ディスクロージャー・ルール(金商法27条の36)の趣旨に反する運用になり得ます。
回避策は、質問の対象範囲を事前にルール化し、想定Q&Aで答える範囲を経営企画・法務・IRで擦り合わせておくことです。想定外の質問には即答せず、「後日IRサイトで文書回答する」旨をその場で伝える運用も一般的に取られています。
アーカイブ公開の遅れ(3時間内公開の実務基準)
ライブ配信が終わった後、アーカイブ動画の公開が遅れると、ライブを視聴できなかった株主・個人投資家の情報アクセスが不平等になります。上場企業向けの実務コラムでは、決算説明会のアーカイブは本番終了から3時間程度以内に公開すべきという実務基準が示されており、公表版の動画・書き起こし・スライドPDFをセットで即日公開できる運用体制を整えておくと安心です(明文の公的基準ではなく実務指針としての目安)。
字幕・多言語対応の不足による海外機関投資家の離反
東証プライム市場では英文開示の充実が求められており、海外機関投資家をIR動画のオーディエンスに含めていく企業では、英語字幕・英語吹替・同時通訳のいずれかの用意が中期的に選定条件になります。
回避策は、いきなり全動画の多言語対応をせずに、決算説明会(英語字幕)・IR説明動画(英語吹替オプション)・株主総会(同時通訳)と用途ごとに手段を切り分けて段階導入することです。プランのアップグレード余地を最初のうちに確認しておくと、後々の乗り換えコストを抑えられます。
まとめ
IR動画配信は、決算説明会・株主総会・IR説明動画などを、上場企業(またはIPO準備企業)が動画で株主・投資家に届けるための仕組みです。用途は5類型(決算説明会/株主総会/IR説明動画/個人投資家向けIR動画/有価証券報告書連動動画)、配信形態は3類型(ライブ/オンデマンド/ハイブリッド)に整理でき、自社の宿題がどの用途・どの形態かを最初に確認するのが検討の入口になります。
制度背景としては、東証プライム市場の情報開示要件、フェア・ディスクロージャー・ルール(金商法27条の36)、電子提供制度(会社法325条の2〜4)、バーチャル株主総会の解禁(産業競争力強化法特例)が重なっています。上司や社内稟議への説明はこれらの条文単位で押さえておくと通りやすくなります。
サービスは汎用の動画配信プラットフォーム型(ULIZAなど)とIR特化型(SmartVision IR・IR Times・IR pocket・NTTスマートコネクト・リンクソシュール)の2群に分かれます。料金は月額数千円〜数十万円と幅があるので、公開されている実数と非公開項目を分けて相見積りを取るのが実務の標準です。
まずは自社の当面の用途を1つに絞り、候補サービスを2〜3社まで絞り込んでから資料請求で詳細を確認しましょう。動画配信システム全般の詳細比較は、以下から関連サービスの最新資料をまとめてお取り寄せいただけます。
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よくある質問(FAQ)
Q. IR動画配信とは何ですか?
A. IR動画配信とは、上場企業(またはIPO準備企業)が、決算説明会・株主総会・IR説明動画・トップメッセージなどを動画にして、株主・投資家・アナリストなどのステークホルダーに届ける仕組みです。個人投資家がIR動画を視聴するためのポータルサイトではなく、”配信する側”の企業が使う動画配信プラットフォームやIR特化の制作サービスを指します。
用途は、決算説明会のライブ配信、株主総会のハイブリッド配信、経営者による中期経営計画説明、個人投資家向け短尺動画、有価証券報告書連動動画などが代表的です。
Q. 決算説明会や株主総会の動画配信は、本番の何ヶ月前までに相談すべきですか?
A. 3〜6ヶ月前を目安に配信事業者へ相談するのが一般的です。NTTスマートコネクトなどバーチャル株主総会に強い提供元も同水準の期間を推奨しています。企画・登壇者調整・スクリプト作成・機材選定・リハーサルまで含めると、決算説明会でも2〜3ヶ月、株主総会のように議決権行使や招集通知の電子提供と連動するものは3〜6ヶ月の準備期間が現実的です。
急ぎの案件は事業者によって受付可否が変わるので、まず候補社に直接相談してスケジュール余裕を確認しましょう。
Q. 本番当日の配信技術者派遣はどのサービスでも受けられますか?
A. 汎用の動画配信プラットフォーム型・IR特化型のいずれでも、多くの事業者がライブ本番の技術者派遣(オプション扱い)に対応しています。ULIZA(株式会社PLAY)は「Live Technical Support」として撮影・配信管理を専任スタッフが代行する有償サービスを別途提供しており、NTTスマートコネクト・リンクソシュールなどIR特化型も配信専門技術者の派遣を訴求しています。
自社にライブ運用の内製リソースが薄い場合は、月額プラットフォーム利用料とは別に技術者派遣費用の見積りを取り、費用感を確認してください。
Q. 配信後にどれくらい視聴されたかのレポートは受け取れますか?
A. ほとんどのサービスで、配信後に視聴数・時間帯別視聴数・平均視聴時間などの基本レポートを受け取れます。汎用プラットフォーム型(ULIZAなど)は管理画面から常時ダッシュボードで確認でき、CSV/API での外部書き出しに対応するケースも多くあります。
IR特化型は、配信終了後に時間帯別視聴数のレポートを個別に提供するスタイルが一般的です。個人単位のトラッキングか集計指標までかは、自社の情報セキュリティ方針と合わせて事前に確認してください。
Q. バーチャルオンリー株主総会は、どんな上場企業でも実施できますか?
A. いきなり実施できるわけではなく、定款変更を行い、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることが必要です。産業競争力強化法の特例により、上場会社は所定の手続きを経ることで場所を定めないバーチャルオンリー株主総会を開催できますが、確認の要件は経済産業省・法務省の実施基準にもとづきます。
ハイブリッド型(会場開催と並行してオンライン視聴・参加もできる形態)は特例なしで会社法の枠内で実施できるため、まずはハイブリッドから始める企業も多く見られます。
Q. 英語同時字幕・多言語対応は必須ですか?
A. 現行制度上の「必須」ではありませんが、東証プライム市場では英文開示の充実が求められており、海外機関投資家をオーディエンスに含める企業では中期的に用意が必要になります。プライム市場は英文開示実施状況が公表対象になっており、決算短信・IR資料・招集通知の英文開示が段階的に進んでいます。
動画側の英語対応は、いきなり全動画を多言語化するのではなく、用途ごとに手段を切り分けて段階導入するのが現実的です(例:決算説明会は英語字幕、IR説明動画は英語吹替、株主総会は同時通訳)。
Q. アーカイブ動画は本番終了後、どれくらいで公開すべきですか?
A. 実務コラム等では本番終了から3時間程度以内に公開すべきという目安が示されています(明文の公的基準ではありません)。フェア・ディスクロージャー・ルールの趣旨から、ライブ視聴できなかった株主・個人投資家との情報アクセスの不平等を最小化する狙いです。動画本体・書き起こし・スライドPDFをセットで即日公開できる運用体制を整えると、後日アクセスした株主に対する情報開示が滑らかになります。
Q. 1回だけの単発イベントでもサービスを導入できますか?
A. 単発イベントでも導入できます。汎用プラットフォーム型(ULIZAなど)は年契約の月額料金(Standard 月額 50,000円〜/Pro 月額 100,000円〜、税抜)に加え、単月契約の料金プランを提供している場合があります。
単月契約の料金は年契約と別体系となるため、公式サイトで最新プランを確認してください。IR特化型の制作一体パッケージ(リンクソシュールなど)は、1イベント単位での見積りが可能です。
年数回のイベント運営に留めるか、月額プラットフォームを常設するかは、動画コンテンツの本数と社内での動画活用範囲を照らして決めるとよいでしょう。
動画配信システムの料金・手数料を一括チェック
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。














