取引先や社内の人物を装ったメールが実際に届いていて、既存のスパムフィルタでは止めきれていない。添付ファイルを開いた社員が出たものの、次に何を入れれば侵入を止められるのか判断できない。標的型攻撃メールの対策を検討する場面では、こうした状況から出発することがほとんどです。
難しいのは、対策が「フィルタリング」「サンドボックス」「無害化」「EDR」といった手段の名前で語られていて、それぞれが攻撃のどの段階を止めるのかが見えにくいことです。自社の防御が薄い層が分からなければ、どの製品を足すべきかも決まりません。
本記事では、標的型攻撃メールが「届く→開く→端末が感染する→情報が持ち出される」と進む流れに沿って、それぞれの対策手段が何を防げて何を防げないかを整理します。そのうえで、受信ゲートウェイから無害化、エンドポイント防御、侵入後の検知まで26サービスをタイプ別に比較し、導入形態・運用負荷・費用の観点から絞り込む判断軸まで解説します。
今すぐ製品を比較したい場合は、「標的型攻撃メール対策サービスの比較表」からご覧ください。
すでに添付ファイルやリンクを開いた社員が出ている場合は、製品の検討より先に「標的型攻撃メールを開いてしまったときの初動対応」をご覧ください。証拠を残したまま被害の広がりを止める手順が、この段階では優先されます。
また、自社の状況に合わせて次に足すべき対策が最短でわかるよう、貴社向けの「30秒で終わる選定診断ツール」を記事中盤にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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標的型攻撃メールとは|迷惑メール・フィッシング・BECとの違い
対策手段を比べる前に、この記事が防ぐ対象を確認しておきます。どこまでを標的型攻撃メールとして扱うかによって、後で見る各手段の守備範囲の評価が変わるためです。
特定の組織を狙って送られるメールという定義
標的型攻撃メールは、特定の組織を狙った諜報活動の入口として送られるメールです。情報処理推進機構(IPA)は、標的型攻撃と、その侵入手口としてのメールの関係を次のように説明しています。
標的型攻撃とは、特定の組織(民間企業、官公庁、団体等)に対して行われるサイバーエスピオナージ(サイバー諜報活動)であり、主に機密情報の窃取を目的としています。標的型攻撃では、標的とする組織の状況に応じて様々な手口が使われます。ここで、標的組織に侵入するための手口の一つとして、標的型攻撃メールを使った攻撃があります。標的型攻撃メールは、メールの添付ファイルや本文に記載された URL リンク先にマルウェアを仕込み、アクセスしたパソコンをマルウェアに感染させます。
出典:企業組織を狙うメールを悪用した攻撃の手口とその対策|独立行政法人情報処理推進機構
ここで押さえておきたいのは、メールは標的型攻撃の侵入経路の一つだという点です。同機構の資料では、メール以外にVPN機器などの脆弱性を突く不正アクセスや、閲覧先のWebサイトを改ざんする手口も侵入経路として挙げられています。本記事はメール経路に絞って対策手段を比べますが、メールを塞げば標的型攻撃全体に備えられるわけではありません。
警察庁は集計上の定義として、市販のウイルス対策ソフトでは検知できない不正プログラムを添付し、業務に関連した正当なメールであるかのように装って送られるものを標的型メール攻撃としています。「既存のウイルス対策ソフトをすり抜けること」が定義に組み込まれている点が、対策を考えるうえでの出発点になります。
出典・参考資料(1件)
迷惑メール・フィッシング詐欺・ビジネスメール詐欺(BEC)との違い
メールを悪用した攻撃はいくつかの型に分かれ、型が違えば有効な対策も変わります。IPAは、不特定多数に同じ文面を送るフィッシングメールと、標的型攻撃メールの違いを次のように整理しています。
2.1 章で解説したフィッシングメールは、一般的に同じ文面のメールを不特定多数に送る「ばらまき型」の一種です。一方で、標的型攻撃メールは、標的とする人物をあらかじめ定め、標的の業務内容を調べ上げた上で業務に関連した攻撃メールを送ります。そのため、知らない人物からのメールであっても、受信者(標的)がそのメールを開かざるを得ない、もしくは興味をそそる内容を記載しています。
出典:企業組織を狙うメールを悪用した攻撃の手口とその対策|独立行政法人情報処理推進機構
もっとも、実務で届くメールは「一点狙いの精巧なメール」ばかりではありません。警察庁が令和2年に把握した標的型メール攻撃4,119件のうち、同じ文面や不正プログラムが10か所以上に送られた「ばらまき型」が全体の95%を占めていました。精巧な一通だけを想定した対策では、実際に届く大半のメールと噛み合いません。
ビジネスメール詐欺(BEC)は、経営層や取引先になりすまして送金や口座変更を指示する攻撃です。マルウェアも不正なURLも使わない場合がある点が標的型攻撃メールと決定的に異なり、添付ファイルやリンクを検査する仕組みでは検査対象そのものが存在しません。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、標的型攻撃(第5位)とビジネスメール詐欺(第10位)は別の脅威として並んでいます。
この記事で比較するのは、マルウェアや不正なURLを運ぶメールを止めるための技術的な対策です。BECのように文面だけで完結する攻撃には、後述する送信ドメイン認証や表示のわかりやすさ、承認フローの見直しといった別の備えが必要になります。
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標的型攻撃メールはどこで止めるか|攻撃が進む4つの段階と対策手段の対応
ここからは、攻撃がどのように進み、どの段階でどの手段が効くのかを整理します。自社の防御が薄い層を見きわめる出発点になります。
攻撃は「届く→開く→端末が感染する→情報が持ち出される」の順に進む
標的型攻撃メールによる被害は、一瞬で完結するわけではありません。メールが受信箱に届き、受信者が添付ファイルやリンクを開き、端末がマルウェアに感染し、そこを足がかりに情報が持ち出されるという順に進みます。段階が分かれているということは、止められる箇所も複数あるということです。
実際の事案でも、この進み方は日付単位で確認できます。2016年に旅行代理店グループで発生した情報流出では、取引先を装ったメールの添付ファイルを開いたことで端末が感染し、その後の内部から外部への不審な通信によって異常が把握されました。詳しい経緯は後述の被害事例で扱います。
この記事では、攻撃の進み方に沿って対策を次の4段階に分けて整理します。この4段階は、公的機関が定めた分類ではありません。

段階ごとに使える対策手段の対応表
以下の対応表は、対策手段が攻撃のどの段階で働き、何を防げて何を防げないかを示したものです。「防げないこと」の列が、次に足すべき層を示します。
| 対策手段 | メールフィルタリング(迷惑メール判定・送信元レピュテーション) | 送信ドメイン認証(SPF / DKIM / DMARC) | サンドボックス(添付ファイル・URLの実行解析) | メール無害化(サニタイズ・CDR) | URLの書き換え・クリック時の再検査/外部メールの警告表示 | 標的型攻撃メール訓練・教育 | エンドポイント防御(次世代アンチウイルス・振る舞い検知) | EDR / NDR / XDR | 端末にデータを残さない構成 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 止まる段階 | 届く前 | 届く前 | 届く前 | 届く前 | 開く段階 | 開く段階 | 端末が感染する段階 | 情報が持ち出される段階 | 情報が持ち出される段階 |
| 防げること | 既知の迷惑メール送信元・大量配信されている不審メールの遮断 | 自組織や取引先のドメインを詐称したメールの識別と受信拒否 | 定義ファイルに無い未知のマルウェアを、隔離環境で動かして挙動から判定 | マクロや埋め込みオブジェクトを取り除いた再構築により、未知・既知を問わず実行要素を排除 | 配信後に不正化されたリンク先への到達・外部からのメールであることの明示 | 不審なメールに気づく確率の向上と、報告フローが実際に回るかの検証 | 定義ファイルに依存せず、実行前の判定や実行時の挙動から感染を止める | 感染後の内部通信・横移動・外部への送信を検知して封じ込め、範囲を追跡 | 端末が感染しても、その端末から持ち出せるデータ自体を減らす |
| 防げないこと | 初めて使われる送信元からの一通・正規のドメインを乗っ取って送られたメール | 攻撃者が自分で取得した類似ドメインからのメール・表示名だけを似せたメール | 解析環境を検知して動作を止めるマルウェア・解析に時間がかかる大量配信時の遅延 | 本文だけで完結する詐欺・元ファイルの機能が失われることによる業務への影響 | 正規サイトを悪用した誘導・警告表示に慣れた受信者のクリック | 訓練で扱っていない新しい文面や誘導手段 | 検知を回避するよう作り込まれたマルウェア・正規ツールを悪用した攻撃 | 感染そのもの・ログを見て対応する運用体制がない場合の実効性 | 認証情報の窃取を起点としたクラウド上のデータへの到達 |
※上記は各手段における一般的な機能の傾向です。個別のサービスにおける実際の機能搭載の有無や提供形態(標準・オプション等)については各社情報をご確認ください。
この表のうち、本記事が製品を比較するのはフィルタリング・サンドボックス・無害化・エンドポイント防御・EDR / NDR / XDRの5つです。残る手段は性質が異なるため対象外にしています。送信ドメイン認証は自社ドメイン側のレコード設定と受信側の判定ポリシーの運用、訓練は人の運用、データを残さない端末構成は端末環境の設計に属し、OS・ソフトウェアの更新は全段階の前提として表の外に置いています。
一つの手段だけでは穴が残る理由
対応表を見ると、どの手段にも「防げないこと」があることがわかります。これは製品の優劣ではなく、それぞれが働く段階と検査の対象が異なることによる構造的な限界です。総務省も、標的型攻撃について次のように述べています。
標的型攻撃を一つの手段で防ぐことは困難ですが、社員・職員の対策としては、標的型攻撃メールの手口をよく知り、そのようなメールが届いても添付されたファイルを開封したり、リンクをクリックしたりしないようにすることが大切です。
出典:標的型攻撃への対策|国民のためのサイバーセキュリティサイト(総務省)
とりわけ厄介なのは、攻撃者が検知されないことを確かめてから攻撃を始める点です。IPAが2011年に公表した設計・運用ガイドは、入口での対策だけでは足りない理由を次のように説明しています。同じ構図は、技術的な検知をすり抜ける攻撃を前提に人の役割を論じた同機構の2026年8月のレポート(後掲)にも引き継がれています。
しかし、このような「入口対策」だけで十分ではありません。それは、入口からだけでは攻撃を防げない場合もあるためです。例えば、ゼロデイの脆弱性を狙った標的型攻撃のメールにおいては、そのメールに添付されているファイルがウイルスであったとした場合、ウイルス対策ソフトがそのウイルスを検知できない場合はウイルスに感染してしまいます。また、ウイルス対策ソフトについても、全てのウイルスを検知できるとは限りません。攻撃者は検出状況を確認し、検出されないファイルを作成してから攻撃を開始するためです。
出典:「新しいタイプの攻撃」の対策に向けた設計・運用ガイド 改訂第2版(2011年11月)|独立行政法人情報処理推進機構
同じガイドは、入口での対策を軽んじてよいとは述べていません。入口で対策を実施すれば攻撃の成功率は相当数下げられる一方、それだけでは防げない場合が存在するという整理です。層を積むほど守備範囲は広がりますが、予算と運用工数には上限があるため、実務では「どこから積むか」を決めることになります。
順序を決める手がかりは、いま自社で何が起きているかです。不審なメールが受信箱まで届いているなら、届く前の検査を厚くするほうが効きます。すでに開いた人が出ている、または端末で何が起きたか追えないなら、届く前はすり抜けられた実績があるため、端末側と侵入後の検知を先に埋めます。判断がつかない場合は次節の確認方法で現状を把握してください。
技術的な検知をすり抜けたメールに対しては、受信者自身が最後の検知役になります。IPAは2026年8月に公開したレポートで、この点を端的に述べています。
メールのフィルタリング等の技術的な検知対策をすり抜ける攻撃に対して、人(役職員)は、意識を高めることによって、第二の検知対策になり得る
出典:企業組織を狙うメールを悪用した攻撃の手口とその対策|独立行政法人情報処理推進機構
自社の現状を対応表に当てはめると、どの段階が空いているかが見えてきます。ただし「当てはめる」には、いま自社に何が入っているかを先に確認する必要があります。
自社にいま何が入っているかを確認する方法
対応表は手段ごとの守備範囲を示すものなので、自社の穴を特定するには手元で確認できる事実と突き合わせる必要があります。以下は、追加の製品を入れずに確認できる項目です。
- なりすましが判定されているか:受信したメールのヘッダにある
Authentication-Resultsを開き、spf=dkim=dmarc=の判定結果を見ます。実際に届いた不審なメールでこれらがpassになっているなら、送信元は詐称ではなく攻撃者が自分で用意したドメインです。届く前の層を足しても、この経路は塞がりません。 - 自社ドメインが詐称対策をしているか:自社ドメインの
_dmarcサブドメインのTXTレコードを引き、p=の値を確認します。レコードが無い、またはp=noneのままであれば、自社を騙るメールが取引先に届いても受信側で拒否されません。これは自社の受信ではなく、取引先を守る側の設定です。 - 未知の添付を検査する契約があるか:契約中のメール基盤のライセンスに、未知のファイルを実行して判定する機能が含まれているかを確認します。含まれていても既定で無効な場合があるため、契約の有無と設定の有無は別に確認してください(具体的な境界は後述します)。
- 検査が実際に働いているか:隔離されたメールの通知が管理者や利用者に届いているか、直近で隔離・警告の実績があるかを見ます。製品が入っていても通知が誰にも届いていない場合、判定はされていても運用としては機能していません。
- 端末側が実行後の挙動まで追えるか:導入済みのウイルス対策製品が、感染を止めるだけでなく実行後の挙動を記録して後から追跡できるかを確認します。追跡できない場合、開いた社員が出たときに影響範囲を特定できません。
- 開いた後の手順が決まっているか:報告先・報告様式・端末をどうするかが文書になっているかを確認します。決まっていない場合は、製品よりこちらが先です(初動対応で扱います)。
1と2で判定が働いていなければ届く前の層が、3と4で未知のファイルが検査されていなければ同じく届く前の層が、5が追えなければ端末と侵入後の層が空いています。次章では、各手段が実際に何を検査しているのかまで踏み込みます。
対策手段ごとに、何を防げて何を防げないか
ここからは、各手段が実際に何を検査し、どこで素通ししてしまうのかを、段階ごとに見ていきます。製品名で語られる機能を、自社の穴に対応づけられる粒度まで開きます。
届く前に止める手段
受信ゲートウェイやクラウド型のメールセキュリティが担う層です。メールが受信箱に入る前に検査するため、受信者の判断に頼らずに済む一方、検査をすり抜けたものはそのまま届きます。
メールフィルタリング(迷惑メール判定・送信元レピュテーション)
送信元のIPアドレスやドメインの評価、本文や件名の特徴、大量配信の傾向などから、迷惑メールらしさを判定して隔離する仕組みです。すでに多くの組織で稼働しており、ばらまき型の攻撃メールを大きく減らす効果があります。
一方で、判定の根拠が「過去に悪用された実績」に寄るため、初めて使われる送信元から届いた一通や、正規のドメインが乗っ取られて送られたメールは通過します。標的型攻撃メールが業務メールを模して作られることを考えると、この層だけで止まると期待するのは現実的ではありません。
送信ドメイン認証(SPF / DKIM / DMARC)で防げるなりすましと防げないなりすまし
なりすましは標的型攻撃メールの中心的な手口です。警察庁が令和2年に把握した4,119件では、送信元メールアドレスが偽装されていると考えられるものが全体の97%を占めていました。送信ドメイン認証は、この偽装を機械的に見分けるための仕組みです。
出典・参考資料(1件)
SPFは送信元サーバーのIPアドレスを、DKIMは電子署名をそれぞれ検証します。DMARCはこの2つの結果を使い、受信者が実際に目にする差出人(ヘッダFrom)のドメインと整合しているかを確認します。
送信ドメイン認証技術には,認証する送信者情報や認証に用いる仕組みが異なる 2 つの認証方式,SPF, DKIM があります.送信ドメイン認証技術 DMARC は,これら 2 つの認証結果を利用し,メール受信者が一般的に送信者と考える,メールヘッダ上の送信者 (ヘッダ From) との整合性を確認し,認証する技術です.その意味で,DMARC は総合的な送信ドメイン認証技術といえます.
出典:送信ドメイン認証技術 DMARC 導入ガイドライン|迷惑メール対策推進協議会 技術ワーキンググループ
ここから守備範囲が導けます。DMARCが確認するのはヘッダFromのドメインが認証結果と整合しているかであって、そのドメインが信頼できる相手のものかどうかではありません。同ガイドラインも、認証を通過したことがなりすましでないことの証明にはならないと明記しています。
迷惑メール特にフィッシングは,さまざまな手法で特定のサービスや事業者をなりすまそうとするため,DMARC などの送信ドメイン認証技術で認証できたとしても,なりすましメールでないとは限りません.認証されたドメイン名が受け取るべきメールであるかを確認する必要があります.
出典:送信ドメイン認証技術 DMARC 導入ガイドライン|迷惑メール対策推進協議会 技術ワーキンググループ
攻撃者が取引先のドメインによく似た別のドメインを自分で取得して送れば、そのドメインでの認証は正しく通ります。IPAも、BECの文脈で取引先の正規ドメイン名とよく似た偽ドメイン名が使われる場合があるとして、差出人のドメインが一見正しくても過信しないよう注意を促しています。
さらに、認証されたドメイン名が受信者の画面に出ているとは限りません。同ガイドラインは、メールソフトが本来のメールアドレスではなく表示名を優先して表示するため、認証されたドメイン名が明確に提示されない場合があると指摘しています。表示名だけを実在の担当者名に似せる手口には、認証の結果が受信者に届かないという別の課題があります。
出典・参考資料(2件)
実務上は、自社ドメインを騙られない側の設定(自ドメインのSPF・DKIM・DMARCレコードの整備)と、受信時に認証結果をどう扱うかの設定を分けて考えると整理しやすくなります。前者は取引先に届く自社名義のメールを守り、後者は自社に届くメールの判定に効きます。
サンドボックス(添付ファイル・URLの実行解析)
サンドボックスは、添付ファイルやリンク先を隔離した仮想環境で実際に動かし、その挙動から危険かどうかを判定する仕組みです。定義ファイルに載っていない未知のマルウェアでも、通信を試みる、ファイルを書き換えるといった動きから検知できます。
総務省も、標的型攻撃メールのウイルスは対策ソフトでは検出されないような新種(未知)のものが多いため感染に気づきにくいと指摘しており、既知情報の照合だけに頼らない検査が求められる背景がここにあります。
出典・参考資料(1件)
限界もあります。攻撃者側も解析環境で動作しないよう作り込むため、仮想環境を検知すると何もしないマルウェアには判定が効きません。また実行して観察する以上、解析には時間がかかり、配送の遅延や大量受信時の処理能力が運用上の制約になります。
メール無害化(サニタイズ・CDR)
無害化は、判定するのではなく危険になりうる要素をあらかじめ取り除いてファイルを作り直す方式です。Officeファイルのマクロや埋め込みオブジェクト、PDFのスクリプトなどを除去し、安全な要素だけで再構成したファイルを受信者に届けます。本文のHTMLをテキストに変換したり、URLをリンクとして機能しない形にしたりする実装もあります。
攻撃者がマクロの有効化を促す手口は現在も使われています。警察庁と内閣サイバーセキュリティセンターは注意喚起で、Microsoft Officeファイルのマクロ「コンテンツの有効化」ボタンをクリックさせるよう誘導される場合があるとして、安易にクリックしないよう呼びかけています。無害化は、この誘導が届く前に実行要素そのものを消してしまう発想です。
出典・参考資料(1件)
代償は業務側に出ます。マクロを含む業務ファイルは機能を失った状態で届くため、原本を別途保管して申請ベースで取り出せるようにするなど、運用の設計が欠かせません。また、本文だけで送金を指示するような攻撃には、取り除く対象がないため効きません。
サンドボックスと無害化はどう違うか
この2つは同じ「添付ファイル対策」として並べられがちですが、依拠している前提が正反対です。サンドボックスは「危険かどうかを見分けられる」ことを前提に判定し、無害化は「見分けられないかもしれない」ことを前提に、判定せず作り直します。
この違いは、防げないことの質にそのまま表れます。サンドボックスは判定を誤れば通してしまうのに対し、無害化は判定しないため未知のマルウェアでも実行要素は残りませんが、ファイルの機能を犠牲にします。前章で引いたIPAの指摘(攻撃者は検出されないファイルを作ってから攻撃を始める)は、検知に依存する方式の限界を示しています。
実際の製品では、両方を組み合わせる構成も採られます。無害化で実行要素を落としたうえで、必要に応じて元のファイルをサンドボックスで解析するといった順序です。どちらか一方を選ぶ二者択一ではなく、業務ファイルの使い方と許容できる遅延から決める問題として捉えるのが実務的です。
開く段階で効かせる手段
受信箱に届いてしまったメールに対して、受信者が開く・クリックする瞬間に働く層です。技術と人の両方が関わります。
URLの書き換え・クリック時の再検査と、外部メールの警告表示
本文中のURLを検査用のURLに書き換えておき、受信者がクリックした時点で改めてリンク先を検査する方式です。配信時点では無害だったページが、後から不正なページに差し替えられる手口に対応できます。
あわせて使われるのが、社外から届いたメールであることを本文の先頭などに表示する警告です。前述のとおり認証されたドメイン名は受信者の画面に出ないことがあるため、認証結果や外部発信であることを見える形にすることには意味があります。
ただし、正規のクラウドストレージやフォーム作成サービスを踏み台にした誘導は、リンク先そのものが正規サイトのため判定が難しくなります。警告表示についても、すべての外部メールに同じ表示が出続けると受信者が読み飛ばすようになるという運用上の弱点があります。
訓練で受信者側の耐性を上げる(防げること・防げないこと)
疑似的な攻撃メールを送って開封率を測り、教育につなげる訓練は、開く段階に効く代表的な手段です。IPAは訓練の設計として、不審メール受信の報告を手順に従って行うところまでを演習することを挙げています。開封率を下げるだけでなく、報告フローが実際に回るかを確かめる場として位置づけられています。
防げないこともはっきりしています。同じくIPAは、文面や誘導手段が変化するため、特定の文面に注意するだけでなく、不自然・不審なメールに対して広く意識を高める内容にすることが望ましいとしています。訓練で扱った文面を覚えさせるだけでは、次の手口に追随できません。
出典・参考資料(1件)
訓練が成果につながるかは、報告先や判断の基準を定めた社内ルールと、日常的な教育がどこまで整っているかに左右されます。ルールの作り方と、形骸化させない教育プログラムの組み立て方は、以下の記事で手順に沿って解説しています。
端末で実行させない手段
添付ファイルを開いてしまった後、端末側で感染を止める層です。メール経路の対策をすり抜けた場合の受け皿になります。
先に押さえておきたいのは、この層はメール経路の検査を代替しないことです。エンドポイント製品は端末上で起きることを見る設計で、配送前のメール本文や添付ファイルを検査する仕組みは持ちません。EDR主要ベンダーの中には自社でメールゲートウェイ製品を持たず、メールセキュリティ製品との連携で経路側の情報を受け取る設計もあり、「端末を強くしたのでメール側は不要」という置き換えは成立しません。
エンドポイント防御(次世代アンチウイルス・振る舞い検知)で端末の感染を止める
定義ファイルとの照合ではなく、ファイルの構造をAIモデルで判定したり、実行時の挙動を監視して不正な動きを止めたりする方式です。実行前に判定するもの、実行を許したうえで挙動から止めるものがあり、どちらの設計かで対応できる攻撃が変わります。
この層にも限界があります。警察庁と内閣サイバーセキュリティセンターは、ウイルス対策ソフトがマルウェアを検知して駆除したからといって安全な状態になったとは限らないとし、検知できていないマルウェアが潜伏している可能性を指摘しています。検知結果を最終的な安全確認として扱わない前提が必要です。
OS・ソフトウェアの更新で塞げる範囲(すべての層の前提になる運用)
標的型攻撃メールの多くは、文書ファイルやアプリケーションの脆弱性を突いてマルウェアを実行させます。OSやアプリケーションを最新に保つことは、攻撃が成立する余地そのものを減らすため、どの層の製品を入れるかとは独立して必要な運用です。
一方で、修正プログラムが提供される前の脆弱性を突かれれば更新では防げません。前章で引いたIPAの指摘のとおり、ゼロデイの脆弱性を狙う攻撃は更新と検知の両方をすり抜けます。更新は前提であって、それ自体が対策の完結にはなりません。
持ち出しを止める手段
感染したことを前提に、情報が外部へ出ていく段階を捉える層です。侵入を許した後にどれだけ早く気づけるかが被害の規模を左右します。
EDR / NDR / XDR で侵入後に検知する
端末の挙動を記録して不審な動きを追うEDR、ネットワークを流れる通信から異常を検知するNDR、両者にクラウドやID基盤の情報を加えて相関させるXDRが、この層の中心です。感染そのものは止められなくても、外部との通信や内部での横移動を捉えて封じ込めることを狙います。
この層が機能するかどうかは、ログの扱いに左右されます。警察庁と内閣サイバーセキュリティセンターは、ログは侵害の原因と範囲の把握に必要不可欠な情報源であり、攻撃者が侵入先のログを消去する可能性があるため、可能な限り別のサーバへ集約して保存するよう求めています。
出典・参考資料(1件)
導入時に見落とされやすいのが運用です。検知したアラートを誰が見て、どう判断し、どこまで対処するのかが決まっていなければ、記録は残っても行動につながりません。自社に監視体制がない場合は、監視と一次対応を含めて提供される形態を検討することになります。
端末にデータを残さない構成で情報を持ち出させない
業務データを端末に保存させず、クラウドやファイルサーバー側に集約する構成にすると、端末が感染しても、その端末から持ち出せるデータ自体が少なくなります。再起動で端末の状態を初期化する仕組みも、同じ発想で被害の残存を抑えます。
ただし、この構成が守るのは端末上のデータです。認証情報を盗まれてクラウド側のデータに直接到達される経路には効きません。標的型攻撃メール対策として単独で選ぶというより、端末の紛失・盗難対策と合わせて検討する層になります。
実際にこの構成を採る製品は、データの持たせ方によってオフラインで使えるか、いま使っているPCをそのまま活かせるかが変わります。方式ごとの違いと製品の比較は以下の記事で扱っています。
データレスクライアントとは?おすすめの11製品を徹底比較|VDIとの違いと選び方
PCの紛失や盗難、テレワーク端末からの情報漏えいに不安を感じていませんか。働く場所が社内外に広がるなかで、端末にデータが残る限り、紛失・盗難・サイバー攻撃のたびに情報が外部へ流出するリスクがつきまといます。 対策としてVDI(デスクトップ仮…
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Microsoft 365 / Google Workspace の標準機能でどこまで防げるか
専用製品の検討に入る前に、すでに契約しているメール基盤で何が賄えているのかを確認すると、重複した投資を避けられます。ここでは標準機能の守備範囲と、追加ライセンスとの境界を整理します。
標準プランに含まれる検査と、含まれない検査
クラウド型のメール基盤には、迷惑メール対策とウイルス対策が標準で組み込まれています。Microsoft 365 の場合、クラウドメールボックスを持つ全サブスクリプションに Exchange Online Protection が含まれ、接続元の評価、既知のウイルスのシグネチャ照合、迷惑メールの判定、送信ドメイン認証の結果によるなりすまし検知までを担います。
ここで境界になるのが「既知かどうか」です。標準機能が対象とするのは、評判情報やシグネチャで判別できる既知の脅威と大量送信型の攻撃が中心で、定義ファイルに載っていない未知のマルウェアや、個別に作り込まれた標的型のメールは対象外とされています。前章で見たサンドボックスや無害化が担う領域が、ちょうどここから始まります。
Microsoft 365 では、この上乗せ分が Microsoft Defender for Office 365 として提供されます。添付ファイルを隔離環境で検証する「安全な添付ファイル」、リンクをクリック時とその後も継続的に検証する「安全なリンク」、なりすまし保護の拡張が Plan 1 に、攻撃シミュレーション訓練や侵害後の自動調査・対応が Plan 2 に含まれる構成です。
出典・参考資料(1件)
注意したいのは、機能の有無だけでなくどのポリシーで適用されているかです。安全なリンクには既定のポリシーがなく、「組み込みの保護」プリセットが他のポリシーで定義されていない受信者に適用されます。個別ポリシーを作ればそちらが優先されるため、誰にどのポリシーが当たっているかを確認しないと、意図した設定が効いていない範囲が生まれます。
Google Workspace の標準機能と、エディションで変わる範囲
Google Workspace でも境界の引かれ方は同じです。Gmail は既定で受信メッセージをスキャンし、迷惑メールの可能性・不審な添付ファイル・不審なリンクを検出します。添付ファイルについては、管理者がセキュリティ設定を有効にしているかどうかにかかわらず、すべてのメッセージが不正なソフトウェアの観点でスキャンされるとされています。ここまでは全エディション共通の土台です。
その上に、管理コンソールから有効にする「高度なフィッシングと不正なソフトウェアへの対策」があり、添付ファイル(信頼できない送信者から届いた不審な添付ファイルやスクリプト)、リンクと外部画像(短縮URLに隠されたリンク、リンク先画像の悪質なコンテンツ)、なりすましと認証(ドメイン名や従業員名のなりすまし、未認証メール)の3つのカテゴリで判定を追加できます。
未知のマルウェアを実際に動かして判定するセキュリティサンドボックスは別建てで、対応エディションは Frontline Plus・Business Standard・Business Plus・Enterprise Standard・Enterprise Plus、zipやrar内のファイルもスキャン対象です。
デフォルトはオフで、管理者が有効にしないと未知の添付は実行解析を経ずに届きます。前節で「契約と設定は別に確認」と書いたのはこの構造のためです。
出典・参考資料(2件)
追加ライセンスで足すか、専用製品を足すかの判断
未知の脅威への検査を足す方法は2つあります。契約中のメール基盤の上位ライセンスで賄う方法と、受信ゲートウェイに専用製品を挟む方法です。どちらを選ぶかは、必要な機能と運用の一本化のどちらを重く見るかで決まります。
上位ライセンスで賄う場合、管理画面が1つで済み、経路設計も不要です。Microsoft は Defender for Office 365 Plan 1 が Business Premium に含まれ、2026年7月1日付で E3 にも含まれるとしています。
追加されるのは Plan 1(安全なリンク・添付ファイル、フィッシング対策、リアルタイム検出)で Plan 2 は対象外です。既存ライセンスに含まれていないか先に確認する価値があります。
専用製品を挟む選択が効くのは、日本の商習慣に合わせた機能が必要な場合です。パスワード付きZIPファイルの自動解凍と検査、宛先ドメイン単位での無害化の出し分け、原本を別途保管して申請ベースで取り出す運用などは、国内向け製品に実装が厚い領域です。前章の無害化の代償(業務ファイルの機能が失われる)を運用で吸収する仕組みが要る場合は、専用製品側に分があります。
複数のメール基盤が混在している組織や、オンプレミスのメールサーバーを併用している組織でも、基盤に依存しないゲートウェイ型のほうが構成を揃えやすくなります。逆に単一の基盤に統一済みで、必要な機能が上位ライセンスに含まれているなら、製品を増やさない判断のほうが運用負荷は下がります。
対策手段を絞り込む判断軸(導入形態・運用負荷・費用感)
足すべき層が決まったら、次は現実的な制約から候補を絞り込む段階です。ここでは導入形態・運用負荷・費用の3つの軸を整理します。
導入形態(ゲートウェイ型/API連携型/オンプレ)で変わること
ゲートウェイ型は、MXレコードを切り替えてメールを検査サービス経由で受け取る方式です。受信箱に届く前に遮断できるため確実性が高い一方、メールの経路そのものを変更するため、切り替え時の検証と障害時の影響範囲の設計が必要になります。
API連携型は、メール基盤の受信箱を直接監視し、届いた後に不審なメールを検知・回収する方式です。経路を変えないため導入時の影響が小さく、既存のゲートウェイと併用しやすい反面、一度は受信箱に届くことを前提とした設計になります。
オンプレミス型・アプライアンス型は、社内にサーバーや専用機器を置く方式です。処理内容を自社の統制下に置けることと、外部にメールを預けない構成が求められる業種で選ばれます。機器の処理能力が受信量の上限になるため、1時間あたりの処理件数など公表されている性能値を自社の受信量と突き合わせる確認が要ります。
運用負荷(誤検知対応・隔離メールの解放・ログ確認)
導入後に効いてくるのが、日々の運用にかかる手間です。検査を厳しくするほど正規のメールが隔離される頻度が上がり、解放の依頼と判断が情報システム部門に集まります。利用者が自分で隔離メールを確認・解放できる仕組みがあるかどうかで、負荷は大きく変わります。
無害化を導入する場合は、原本を必要とする業務からの申請にどう応えるかが運用の中心になります。原本を一定期間保管して所定の手順で取り出せる仕組みがあるか、宛先ドメインや送信元ごとに無害化の適用を出し分けられるかを確認しておくと、導入後の摩擦を減らせます。
侵入後の検知を担う層では、アラートを誰が見るかが最大の論点です。自社に監視の担い手がいない場合、製品を導入しても検知結果が滞留します。監視と一次対応まで含む提供形態を選ぶか、対応を委託するかを、製品選定と同時に決めておく必要があります。
費用の考え方(課金単位と目安)
メール層の料金は1メールアドレスあたりの月額で示されるものが中心です。公式に金額を公開している製品では、受信対策のみで月額200円、実行解析を含むプランで月額400円、上位ライセンス提供で月額299円と749円、オンプレ版とクラウド版の月額換算で250円と500円といった水準が示されています(2026年8月時点。金額と提供元は比較表の「料金」欄で確認できます)。
ここで注意したいのが、アドレス数で課金しない製品があることです。処理性能(コア数)で課金し、メールアドレス数を問わない体系の製品があり、初期費用110,000円・月額38,500円からという価格が公開されています。アドレス単価で横並びに比べると、この型は比較の枠から漏れます。
規模で試算すると差が見えます。1,000人規模でアドレス単価200円の受信対策を入れると年額240万円、実行解析まで含む400円のプランなら年額480万円です。
エンドポイント側は1台あたりの月額または年額で示されます。国内販売元が公表している価格には年額4,200円、月額500円(年額6,000円)、月額700円(年額8,400円)といった水準があり、1,000台なら年額420万円から840万円の幅に収まります。
一方で、料金を公開していない製品も少なくありません。特に外資系のメールセキュリティやEDR製品は、代理店経由の個別見積もりが前提になっているものが多く、比較表でも「要お問い合わせ」と記載しています。この場合は、機能要件を先に固めてから複数社に同条件で見積もりを依頼する進め方が現実的です。上に挙げた公開価格の水準は、その見積もりが妥当かを判断する目安になります。
見落としやすいのが最低契約数と最低利用期間です。最低10ユーザー、最小30アドレス、50アカウントからの受付、最低利用期間1年といった条件が公開されており、小規模な部門単位で試したい場合は事前の確認が欠かせません。逆に規模が大きい場合は、ライセンス数に応じた参考価格が設定されている製品があるため、自社の規模で見積もりを取り直す価値があります。
この投資額が妥当かを社内で説明する材料としては、後半で扱う公表済みの被害事例と公的統計が使えます。
自社に合うタイプが判断しづらい場合
ここまでの3つの軸(導入形態・運用負荷・費用)を自社の条件に当てはめると候補は絞れますが、どの層から手を付けるかまでは決めきれない場合もあります。そうした場合でも貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるように、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
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【比較表】標的型攻撃メール対策サービス26選を比較
ここからは、自社の課題や要件に合わせて比較・選定できるよう、標的型攻撃メール対策サービス26製品を4つのタイプ別に整理してご紹介します。タイプは、前半で整理した攻撃の段階に対応しています。
無害化は「届く前に止める」段階の一手法ですが、危険かどうかを判定せずに再構築するという設計の違いが選定に効くため、別のタイプとして並べています。
ここで比較するのは、日本国内で調達・運用できることを公式情報で確認できた製品です。日本法人・国内代理店・日本語サポートのいずれも公式に確認できない製品は、国内の情報システム部門が現実に選べないため含めていません。従業員向けの標的型攻撃メール訓練は、製品を導入して防ぐ性質のものではないため扱いません。

攻撃メールを受信箱に届かせない(メールゲートウェイ/クラウドメールセキュリティ)
メールが受信箱に入る前に検査する層の製品です。送信ドメイン認証の判定、添付ファイルとURLの検査、サンドボックス解析をどこまで持つかで守備範囲が変わります。
| サービス名 | m-FILTER MailFilter | IIJセキュアMXサービス | Active! zone SS | Mail Defender | GUARDIANWALL Inbound Security for Mail Gateway | Cloud Mail SECURITY SUITE | Microsoft Defender for Office 365 | Trend Micro Email Security | Proofpoint Email Protection | Barracuda Email Protection | Cisco Secure Email | FortiMail | Trellix Email Security |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態(クラウド/オンプレ) | クラウド/オンプレミス | クラウド | クラウド | クラウド/オンプレミス(仮想・物理アプライアンス) | クラウド | クラウド | クラウド | クラウド/オンプレミス(アプライアンス) | クラウド/オンプレミス(仮想・物理アプライアンス) | クラウド/オンプレミス(仮想アプライアンス) | クラウド/オンプレミス(仮想アプライアンス) | クラウド/オンプレミス(アプライアンス・仮想マシン) | クラウド/オンプレミス(アプライアンス・AWS) |
| メール経路への組み込み | ゲートウェイ型 | ゲートウェイ型 | ゲートウェイ型 | ゲートウェイ型 | ゲートウェイ型 | ゲートウェイ型 (Microsoft 365・Google Workspaceにアドオン) | Microsoft 365に組み込み (経路変更なし) | ゲートウェイ型/API連携型 | ゲートウェイ型/API連携型 | ゲートウェイ型/API連携型 | ゲートウェイ型/API連携型 | ゲートウェイ型/API連携型 | ゲートウェイ型/API連携型 |
| 送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC) | 公式に記載なし | ●SPF・DKIM・DMARC | 公式に記載なし | △SPF・DKIMのみ明記 | ●SPF・DKIM・DMARC | ●SPF・DKIM・DMARC・ARC | ●EOP標準のなりすまし判定 | ●SPF・DKIM・DMARC | △DMARC対応は別製品 | ●SPF・DKIM・DMARC | ●SPF・DKIM・DMARC | ●SPF・DKIM・DMARC | 公式に記載なし (送信元ドメインの登録の新しさで判定) |
| サンドボックス | △オプション | △オプション | △上位プランのみ | 公式に記載なし | ●仮想アナライザ | ●受信対策プランに含む | △Plan 1以上(安全な添付ファイル) | ●動的解析(日本語環境をエミュレート) | △別製品(TAP)で提供 | △別オプションの契約が必要 | ●未知のファイルをクラウドで解析 | △FortiSandboxとの連携 | ●仮想環境で多段に実行 |
| パスワード付きZIP・暗号化ファイルの検査 | △パスワード付きZIPを判定(中身の検査は記載なし) | 公式に記載なし | ●サンドボックスプランで解凍して無害化 | 公式に記載なし | ●パスワード解析で暗号化ZIP内を検査 | △受信対策の一機能として記載 | 公式に記載なし | ●DDEI(アプライアンス)が解凍して解析 | △別製品(TAP)でパスワード保護ファイルを解析 | 公式に記載なし | ●パスワード保護ファイルの解析に対応 | 公式に記載なし | ●パスワード保護・暗号化ファイルも解析 |
| 添付ファイルの無害化 | ●マクロ除去(再構築はオプション) | ●マクロ除去は標準(削除・テキスト化はオプション) | ●マクロ除去・画像化・分離 | △別製品との連携オプション | ●マクロ等のアクティブコンテンツを除去 | △同社の別サービスで提供 | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | ●宛先ドメイン単位で設定 | 公式に記載なし |
| 無害化前の原本の保管・取り出し | 公式に記載なし | 公式に記載なし | ●受信メールを複製して保全 | ●証拠保全アプリが原本を保管(二重配送) | 公式に記載なし | △原本保管は同社の別サービス(Σ-ST・CyberMail-CDR) | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | 公式に記載なし | ●原本を保管しWebメールで閲覧 | 公式に記載なし |
| URLのクリック時再検査 | 公式に記載なし (本文中URLをクラウド側で検査) | 公式に記載なし (URLリンクの無効化はオプション) | 公式に記載なし | 公式に記載なし (本文中URLを自動で非リンク化) | ●クリック時に再検査 | △リアルタイムURLフィルタリング | ●Plan 1以上(安全なリンク) | 公式に記載なし (URLは視覚分析で判定) | ●クリック時に再検査 | ●クリック時に再検査 | ●クリック時に再検査 | ●クリック時に再検査 | ●クリック時に再検査 |
| 料金 | オンプレミス版 月額換算250円/ライセンス クラウド版 同500円(いずれも参考価格) | 要お問い合わせ | 初期費用100,000円 月額200〜400円/アドレス(税抜) | 初期費用110,000円 月額38,500円〜(クラウド版1コアプラン) | 初期費用0円 月額200円〜/ユーザー(税別) | 月額200円/アカウント〜 (受信対策プラン・50アカウントから) | Plan 1 月額299円/ユーザー Plan 2 月額749円(いずれも年払い) | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 提供会社 | デジタルアーツ株式会社 | 株式会社インターネットイニシアティブ | 株式会社クオリティア | 株式会社CYLLENGE | キヤノンマーケティングジャパン株式会社 | サイバーソリューションズ株式会社 | Microsoft Corporation | トレンドマイクロ株式会社 | Proofpoint, Inc. | Barracuda Networks, Inc. | Cisco Systems, Inc. | Fortinet, Inc. | Musarubra US LLC(Trellix) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は2026年8月時点の各社公式情報にもとづく整理です。機能の搭載有無や提供形態(標準・オプション等)・料金は変更される場合があるため、最新の内容は各社の公式情報をご確認ください。
添付ファイルを無害化して届ける
危険かどうかを判定せず、実行要素を取り除いてファイルを作り直すことを主機能とする製品です。対応できるファイル形式の広さと再構築の精度で選ぶ層になります。
ここで注意したいのは、無害化を検討する際の候補がこの2製品に限られないことです。前掲の受信ゲートウェイ層の比較表にも「添付ファイルの無害化」の行があり、マクロ除去などの無害化機能をあわせ持つ製品が複数あります。メール対策全体をまとめて1製品で賄いたいならゲートウェイ側の無害化機能を、対応形式の広さや再構築の方式そのものを要件にするならこの層を、という選び分けになります。両方の表を見比べてください。
| サービス名 | Votiro Disarmer/Menlo File Security | OPSWAT MetaDefender |
|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(エージェントレス・API連携)/オンプレミス | オンプレミス(Email Gateway Security)/クラウド(Cloud Email Security) |
| メール経路への適用方法 | Exchange OnlineとのAPI連携 オンプレミス版はGoogle Workspaceのメールを無害化して転送 | Exchange等のメールサーバー経由で導入 クラウド版はMicrosoft 365向け(Google Workspaceは公式に記載なし) |
| 対応形式(Office文書) | ●マクロ等を除去して再構築 | ●マクロ・OLEオブジェクト等を除去 |
| 対応形式(PDF) | ● | 公式に記載なし |
| 対応形式(ZIP・アーカイブ) | ● | ●アーカイブ30種類以上(英語ページ) |
| 対応形式(パスワード保護ファイル) | ● | 公式に記載なし |
| 対応形式数の公式表記 | 220種類以上 | 公式サイト内で分かれる (120種類以上/180種類以上/200種類以上) |
| 検知に依存するか | 依存しない (安全と確認できた要素だけで再構築) | 依存しない (アクティブコンテンツを除去して元の形式で再構築) |
| 料金 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 提供会社 | Menlo Security, Inc. | OPSWAT, Inc. |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は2026年8月時点の各社公式情報にもとづく整理です。機能の搭載有無や提供形態(標準・オプション等)・料金は変更される場合があるため、最新の内容は各社の公式情報をご確認ください。
端末での感染を止める
受信箱をすり抜けたメールを開いてしまった場面で、端末側の実行を止める層の製品です。実行前に判定するか実行後の挙動で判定するかが、対応できる攻撃の違いに直結します。この層の製品も上位プランでEDR機能を持ちますが、1台の端末で起きることを止めるのを主機能とする点で次の層と分かれます。
| サービス名 | FFRI yarai | SentinelOne | CrowdStrike Falcon | Deep Instinct | Arctic Wolf Aurora Protect(旧CylancePROTECT) | Symantec Endpoint Security | LANSCOPE サイバープロテクション |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 判定のタイミング | 実行前・実行後 (5つのエンジンで多段に判定) | 実行前・実行後 (静的解析と行動分析) | 実行前・実行後 (機械学習と攻撃の兆候〈IOA〉) | 実行前・実行時・実行後 (実行前は20ミリ秒未満) | 実行前 (約30ミリ秒で静的解析) | 実行前・実行後 (端末側とクラウド側の機械学習) | 実行前 (Aurora ProtectとDeep Instinctから選択) |
| 定義ファイルへの依存 | 依存しない | 依存しない | 依存しない | 依存しない | 依存しない | 公式に記載なし | 依存しない |
| EDR機能 | ●本体ライセンスに標準搭載 | △上位のSingularity Completeに含む | △Falcon Enterprise以上に含む | △実行後は解析・可視化とネットワーク隔離 | △上位のAurora Endpoint Defenseに含む | △上位のEndpoint Security Completeのみ | △Aurora Focusの追加が必要 |
| 提供形態 | オンプレミス/クラウド/マネージドサービス | クラウド(単一エージェント+管理コンソール) | クラウド(単一エージェント) | クラウド(DSXプラットフォーム) | クラウド管理(エージェント) | クラウド管理/オンプレミス/両者の混在 | クラウド(国内での運用支援込み) |
| 料金 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 月額7.99〜19.99米ドル/デバイス (中小企業向けの公開価格) | 年額4,200円/ライセンス(税抜) ※エムオーテックス経由の公開価格 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 月額500円/台〜(Aurora Protect) Aurora Focus併用時は月額700円/台 |
| 提供会社 | 株式会社FFRIセキュリティ | SentinelOne, Inc. | CrowdStrike Holdings, Inc. | Deep Instinct Ltd. | Arctic Wolf Networks, Inc. | Broadcom Inc.(Symantec Enterprise) | エムオーテックス株式会社 |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は2026年8月時点の各社公式情報にもとづく整理です。機能の搭載有無や提供形態(標準・オプション等)・料金は変更される場合があるため、最新の内容は各社の公式情報をご確認ください。
侵入後に検知し、情報の持ち出しを止める
感染を前提に、端末・ネットワーク・クラウドの挙動から侵入後の動きを捉える層の製品です。前の層との違いは、端末単体ではなくネットワーク・ID・クラウドを横断して挙動を相関させることを主機能にしている点にあります。何を監視対象にするかと、運用を誰が担うかで選択肢が分かれます。
| サービス名 | Network Blackbox | Microsoft Defender XDR | Palo Alto Cortex XDR | Darktrace |
|---|---|---|---|---|
| 監視対象 | ネットワーク(全パケットを保存) | 端末・ID・メール・クラウドアプリ | 端末・ネットワーク・クラウド・ID | ネットワークを中心にメール・クラウド・ID・端末 |
| 検知方式 | シグネチャ照合と振る舞いの異常検知 | 各Defender製品のアラートを相関 | 機械学習による行動分析 | 自己学習型AIによる異常検知 |
| 導入方式 | アプライアンス(スイッチのミラーリング) | クラウド(複数のDefender製品の展開で有効化) | クラウド(端末にエージェントを導入) | アプライアンス/クラウド(併用構成) |
| 料金 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 提供会社 | 株式会社クワッドマイナージャパン | 日本マイクロソフト株式会社 | パロアルトネットワークス株式会社 | Darktrace Limited |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※上記は2026年8月時点の各社公式情報にもとづく整理です。機能の搭載有無や提供形態(標準・オプション等)・料金は変更される場合があるため、最新の内容は各社の公式情報をご確認ください。
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標的型攻撃メール対策サービス26選の詳細
ここからは、各サービスが何を検査し、どのような形態で導入するのかを、タイプごとに詳しく見ていきます。
攻撃メールを受信箱に届かせないサービス13選
受信ゲートウェイやクラウドメールセキュリティとして、届く前の検査を担う製品です。
1. m-FILTER MailFilter(デジタルアーツ株式会社)

デジタルアーツ株式会社のメールセキュリティ製品「m-FILTER」のうち、社外から届く攻撃メールへの対策を担う機能です。安全な送信元のIPアドレスとドメインの組み合わせをデータベース化し、受信ゲートウェイの段階で正当な送信元かどうかを判定します。
本文中のURLは短縮URLやリダイレクトを伴うものを含めて同社のクラウドサーバー側で検査し、添付ファイルは危険な拡張子・マクロ・パスワード付きZIPを対象に判定します。2026年2月からは、外部ツールとの連携なしに添付ファイルを無害化するオプションも提供されています。サンドボックスでの解析は「Anti-Virus & Sandbox」オプションで追加する構成です。
導入形態はオンプレミス版・クラウド版・別筐体のゲートウェイ型から選べ、Microsoft 365やGoogle Workspaceとの連携はクラウド版が担います。公式が示す参考価格はオンプレミス版が1ライセンス月額換算250円、クラウド版が同500円で、前者は500ライセンス・5年契約を想定した金額です。
2. IIJセキュアMXサービス(株式会社インターネットイニシアティブ)

受信時の脅威メール対策と送信時の情報漏えい対策を、単一のクラウドゲートウェイでまとめて引き受けるサービスです。既存メールサーバーの手前に置くゲートウェイ構成、メールボックスごと委託するフルアウトソース構成、Microsoft 365・Google Workspaceと連携する構成の3通りから選べます。
受信メールには複数エンジンの迷惑メールフィルタとアンチウイルス、添付ファイル内のマクロ除去が標準で適用されます。加えてSPF・DKIM・DMARCによる送信ドメイン認証を標準機能として備え、差出人が詐称されたメールを検知します。添付ファイルの削除・HTMLのテキスト化・本文中URLの無効化を行う無害化と、仮想環境で添付ファイルを実行するサンドボックスはオプションです。
料金はメールアドレス数とオプションの選択に応じた個別見積もりで、公式サイトに概算を取得できる見積もりフォームが用意されています。最低利用期間は1ヵ月(アドバンストアーカイブオプションを除く)で、1ヵ月の無償トライアルを利用できます。
3. Active! zone SS(株式会社クオリティア)

メッセージング専業の株式会社クオリティアが2023年6月に提供を開始した、Microsoft 365・Google Workspaceと連携するクラウド型のゲートウェイサービスです。同社は誤送信防止やメールアーカイブを別サービスとして展開しており、受信側の攻撃メール対策を担うのが本サービスにあたります。
受信メールに対しては、添付ファイル内のマクロ除去、添付ファイルの画像化、添付ファイルの分離とWebダウンロード化、HTMLメールのテキスト化を行います。送信元の国名を国旗アイコンで表示し、受信者が見た目で異常に気づけるようにする機能も備えています。
上位のサンドボックスプランでは、パスワード付きZIPや読み取りパスワード付きファイルも画面上で解凍・展開したうえで検査し、ウイルスチェックでグレー判定になったファイルをふるまい検知に回します。料金は初期費用10万円、月額はベーシックプランが1アドレス200円、サンドボックスプランが400円(いずれも税抜・30アドレスから)です。
4. Mail Defender(株式会社CYLLENGE)

誤送信防止・侵入防止・証拠保全の3つのアプリを1製品にまとめた、株式会社CYLLENGEの統合メールセキュリティです。既存のメール環境を変えずに手前へ置くゲートウェイ型で、Microsoft 365やGoogle Workspace、オンプレミスのメールサーバーのいずれとも組み合わせられます。
受信対策を担う侵入防止アプリは、SPF・DKIM認証の設定によるなりすまし検知、本文中URLの自動非リンク化、HTMLからテキストへの変換を行います。添付ファイルの無害化は同社の別製品「Fast Sanitizer」との連携オプションで実現する形で、単体の標準機能ではありません。
証拠保全アプリを併用すると、無害化前の原本をアーカイブしたうえで無害化後のメールを配送する二重配送の構成が組めます。課金はコア数と容量が基準で利用アドレス数は無制限、クラウド版は誤送信防止・侵入防止アプリの1コアプランが初期費用110,000円・月額38,500円から、最低契約期間は12ヶ月です。30日間の無料トライアルがあります。
5. GUARDIANWALL Inbound Security for Mail Gateway(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)

トレンドマイクロの「Trend Micro Email Security」を基盤に、キヤノンマーケティングジャパン株式会社が2023年11月から提供している受信メール専用のクラウド型ゲートウェイです。自社ドメインのMXレコードを向け直すだけで導入でき、サーバーやセキュリティ機器を自社で持つ必要がありません。
検査は、スパムメールフィルタ・ウイルス検索・コンテンツフィルタ・送受信フィルタ・ドメインベース認証・仮想アナライザ・Webレピュテーションの7機能を多層で適用する構成です。ドメインベース認証はSPF・DKIM・DMARCの3方式に対応し、送信ドメインと送信元IPアドレスの組み合わせを登録したうえでの判定もできます。
暗号化ZIPはパスワードを解析して中身まで検査でき、URLはクリックした時点で最新の脅威データベースを再照会するTime-of-Clickプロテクションが働きます。料金は初期費用0円、月額200円〜/ユーザー(税別)で、最低契約ライセンス数は10ユーザー、最低利用期間は1年です。
6. Cloud Mail SECURITY SUITE(サイバーソリューションズ株式会社)

Microsoft 365やGoogle Workspaceをそのまま使いながら、標準では足りない日本向けのセキュリティ機能・管理機能を後から足すアドオン型のサービスです。受信対策・送信対策・メールアーカイブ・シングルサインオンから、必要なものだけを選んで組み合わせます。
受信対策では標的型攻撃対策とサンドボックス、本文中リンクのリアルタイムURLフィルタリング、パスワード付きZIPへの対策を提供します。送信ドメイン認証はSPF・DKIM・DMARCに加えARCにも対応し、ドメイン単位で有効・無効を切り替えられる作りです。
料金は1アカウントあたりの月額で、受信対策プランが200円、送受信対策プランが400円、アーカイブまで含むエンタープライズプランが650円という設定です(プランと従業員数により変動)。契約は50アカウントからで、以降は10アカウント単位で追加できます。
7. Microsoft Defender for Office 365(Microsoft Corporation)

全プランに標準搭載されるExchange Online Protection(EOP)と、そこへ上乗せするPlan 1・Plan 2という三層で保護範囲が変わる構成です。EOPが対象とするのは既知のウイルスや大量送信型の迷惑メールが中心で、Exchange Online・SharePoint・OneDrive・Teamsを対象に上位層が積み上がります。
Plan 1では、シグネチャを持たない添付ファイルを隔離された検証環境で解析する「安全な添付ファイル」と、URLをクリックした時点およびクリック後も継続して検証する「安全なリンク」が加わります。Plan 2はこれに攻撃シミュレーショントレーニング、脅威エクスプローラー、調査と対応の自動化が追加されます。
価格は日本語の公式ページ表示でPlan 1が1ユーザー月額299円、Plan 2が749円(いずれも年払い)です。Microsoft 365 Business PremiumやE3/G3にはPlan 1が、E5/A5/GCC G5にはPlan 2が含まれます。Plan 2の機能は90日間無料で試せます。
8. Trend Micro Email Security(トレンドマイクロ株式会社)

トレンドマイクロのメールセキュリティは単一の製品ではなく、防御層と導入形態の異なる複数の製品で構成されています。Microsoft 365・Google WorkspaceにAPI連携するクラウド型、メールサーバーの前段に置くクラウドゲートウェイ、標的型攻撃メールの検知に特化したアプライアンスの3系統から選ぶ形です。
クラウド型では、AIによる文体分析で送信者になりすましたメッセージを検知し、添付ファイルはサンドボックスで動的解析、URLはコンピュータビジョンによる視覚分析で詐欺サイトを判定します。SPFとDKIMの検証結果にアライメントチェックを加えてDMARC判定を行い、失敗したメッセージは設定に応じて削除・隔離・配信に振り分けます。
アプライアンス型のDeep Discovery Email Inspectorは、日本語環境をエミュレートしたサンドボックスとパスワード保護添付の解凍解析に対応し、インライン遮断・BCC・ネットワーク監視の3モードで組み込めます。料金は公式非公開で代理店経由の見積もり前提です。
国内ではキヤノンMJが本サービスを基盤にGUARDIANWALL Inbound Security for Mail Gateway(前掲)も提供します。
9. Proofpoint Email Protection(Proofpoint, Inc.)

メール経路上にセキュアメールゲートウェイとして置く方式と、Microsoft 365のAPIに連携する方式のどちらでも導入できます。日本語の公式製品ページでは現在「Core Email Protection(CEP)」という名称が使われており、製品一覧では従来の「Proofpoint Email Protection」表記も併存しています。
添付ファイルは保護された仮想環境やベアメタル環境で実際に起動して挙動を解析し、パスワード保護された文書やZipファイルも対象になります。本文中のURLは書き換えたうえで配信し、クリックされた時点でリアルタイムに解析する方式です。
なりすまし対策は製品が分かれており、DMARCの導入・運用支援はEmail Fraud Defense、配信後に悪性と判明したメールの受信箱からの回収はThreat Response Auto-Pullが担います。料金は公式に非公開で、国内はNRIセキュアや日立ソリューションズなどの代理店経由の見積もりが基本です。
10. Barracuda Email Protection(Barracuda Networks, Inc.)

バラクーダのメールセキュリティは、ゲートウェイ製品にセキュリティ教育やバックアップまでを束ねた製品群として提供されています。攻撃メールを止める観点で中心になるのは、配信前に検査するゲートウェイ型と、受信箱に届いた後にAPIで検知する型の2種類です。
ゲートウェイ側では多段階の検査を行い、メール内のリンクは自動的に書き換えてクリック時にサンドボックスで判定します。API連携型のImpersonation ProtectionはMXレコードを変更せずMicrosoft 365に接続し、過去のメール履歴を学習したソーシャルグラフ分析でなりすましやアカウント乗っ取りを検知して、配信後に悪性と判明したメールを自動削除します。
注意したいのは、Email Security Gatewayのサンドボックス機能がCloud Protection Layer/ATPの別オプション契約を前提としている点です。プランはAdvanced・Premium・Premium Plusの3段階で価格は非公開、受信トレイに届いたメールを無料で診断するEmail Threat Scanが用意されています。
11. Cisco Secure Email(Cisco Systems, Inc.)

クラウド型のSecure Email Threat Defenseと、従来型の受信ゲートウェイであるSecure Email Gatewayの2系統で構成され、いずれも同社の脅威インテリジェンス基盤Cisco Talosの情報を検知に使います。Threat DefenseにはAPI連携中心のEssentialsと、ゲートウェイ展開まで含むAdvantageの2段階があります。
添付ファイルはハッシュ照合で評判を確認したうえで、未知のファイルをクラウド型サンドボックスに送って挙動を解析し、パスワード保護されたファイルにも対応します。URLはリアルタイムに解析するほか、配信後に判定が変わったURLについても事後に修復する仕組みを持ちます。
送信ドメイン認証はSPF・DKIM・DMARCに加え、独自のForged Email Detectionを備えます。ただしDMARCレコードを持たない送信元ドメインに対しては検証自体がスキップされるため、この機能だけでは判定の根拠が得られない点は押さえておく必要があります。料金は非公開で、契約期間は1年・3年・5年から選ぶ形です。
12. FortiMail(Fortinet, Inc.)

受信したメールを既知の脅威・疑わしい・未知・BECの4段階に自動で分類し、段階に応じた処理を割り当てる設計です。既知の脅威はアンチウイルス・アンチスパムエンジンで即時に遮断し、未知のファイルはFortiSandboxとの連携で動的解析にかけ、無害と確認されるまで配送を保留します。
添付ファイルの削除・HTMLタグの無効化・URLの除去といった無害化は宛先ドメイン単位で出し分けられ、無害化前の原本は別途保管してWebメールから閲覧できます。受信後にユーザーがURLをクリックした時点で改めて検査し、危険と判定されたURLへのアクセスを遮断する仕組みも持ちます。
導入形態はハードウェアアプライアンス5モデル、仮想マシン6構成、クラウド版の3系統です。クラウド版にはMXレコードを切り替えるゲートウェイ型と、Microsoft 365・Google WorkspaceにAPI連携する型があります。料金は非公開で、メールボックス単位・ユーザー単位の年額という課金軸のみ公開されています。
13. Trellix Email Security(Musarubra US LLC(Trellix))

McAfee Enterprise事業とFireEyeの統合により2022年に発足したTrellixの製品で、サンドボックス解析エンジンを中核に据えています。フルクラウド型のCloud版と、オンプレミスまたはAWS上に構築するServer版があり、Server版は既存のメールゲートウェイの後段にインラインまたはBCCモードで配置します。
添付ファイルはOS・アプリケーション・ブラウザの組み合わせごとに用意した仮想環境で実行し、シグネチャに依存しない挙動解析を行います。実行ファイル・文書・アーカイブに加えQRコードも対象で、パスワードで保護された添付ファイルも解析できます。送信元ドメインの登録の新しさを判定する独自技術により、なりすましも検知します。
URLは書き換えたうえで配信し、クリックされた時点でクラウドサンドボックスが再検査します。Microsoft 365・Google WorkspaceとAPI連携していれば、配信後に悪性と判明したメールを受信箱から自動で削除できます。料金は非公開で、Server版はEX 3600が最大875添付ファイル/時間など機種ごとに処理能力の上限が示されています。
添付ファイルを無害化して届けるサービス2選
判定に依存せず、ファイルを作り直して届ける方式の製品です。
14. Votiro Disarmer/Menlo File Security(Menlo Security, Inc.)

Votiro は、メール添付やダウンロードファイルの無害化(CDR)を専業としてきたイスラエル発の製品です。2025年2月に米 Menlo Security, Inc. が買収し、グローバルでは同社の「File Security」へ統合された一方、国内では代理店のアズジェント株式会社が買収後も「Votiro Disarmer」の名称で販売と日本語での導入支援を続けています。
この製品の軸は、ファイルが危険かどうかを判定しないことにあります。公式が「Positive Selection」と呼ぶ方式で、すべてのファイルを潜在的に危険なものとみなし、安全と確認できた要素だけで新しいファイルを組み直します。マクロや埋め込みオブジェクトのように安全と確認できない要素は、悪性かどうかを問わず再構築の過程で取り除かれます。
対応形式は公式ページで220種類以上とされ、Office文書、PDF、EML、パスワード保護ファイルなどが例示されています。メール経路へはエージェントレスのAPI連携で組み込むのが基本で、Exchange Online 向けの手順と、オンプレミス版で Google Workspace のメールを無害化して転送する手順が公式に用意されています。料金は要お問い合わせです。
15. OPSWAT MetaDefender(OPSWAT, Inc.)

MetaDefender は、無害化(Deep CDR)、30以上のアンチマルウェアエンジンによる並列スキャン、動的解析を組み合わせたファイル脅威対策のプラットフォームです。メール向けにはオンプレミス型の MetaDefender Email Gateway Security と、Microsoft 365 向けの MetaDefender Cloud Email Security があります。
このうち Deep CDR は、公式が「検知に依存しない」と明記する技術です。ファイルが悪性かどうかを判定せずに要素単位へ分解し、マクロや埋め込みオブジェクト、OLEオブジェクトといったアクティブコンテンツを除去したうえで、元のファイル形式を保ったまま再構築します。入れ子になったアーカイブ内のファイルも再帰的に無害化すると説明されています。
対応ファイル形式の数は公式サイト内でも「120種類以上」「180種類以上」「200種類以上」と記載が分かれ、Google Workspace への対応も公式では確認できません。自社が扱う形式とメール基盤は個別確認が安全です。国内は2018年設立のOPSWAT Japan株式会社とネットワールド等の販売パートナーが提供・サポートを担い、料金は公式非公開です。
端末での感染を止めるサービス7選
開いてしまった添付ファイルを、端末側で実行させないための製品です。
16. FFRI yarai(株式会社FFRIセキュリティ)

株式会社FFRIセキュリティが国内で開発・解析を行うエンドポイントセキュリティ製品で、2009年から提供されています。既知マルウェアの定義ファイルと照合する方式を採らず、プログラムのふるまいを解析して攻撃を検知・防御する設計です。
判定は5つのエンジンで多段に行われます。実行前にはファイルの内部構造を調べるStatic分析エンジンと、脆弱性を狙う攻撃を捉えるZDPエンジンが働き、実行後は保護領域内で動作させるSandboxエンジン、プロセスの挙動を監視するHIPSエンジン、機械学習エンジンが加わります。定義ファイルの配信を待たずに未知の攻撃へ対応できることが、この構成の狙いです。
EDR機能は追加費用なしで本体ライセンスに標準搭載され、端末のネットワーク隔離、リモート駆除、脅威ハンティングまで同一ライセンスで利用できます。ライセンスはPC1台につき1本の年間契約で、最小数はオンプレミス・クラウドが5、マネージドサービスが70。公式に料金表はなく、富士通・NEC・日立システムズなどの販売パートナー経由の見積もりです。
17. SentinelOne(SentinelOne, Inc.)

単一の軽量エージェントと統合管理コンソールで、次世代アンチウイルス・EDR・XDR・クラウドワークロード保護までをまとめて扱う「Singularity Platform」です。米国本社は2013年設立で、2021年にNYSEへ上場しています。
判定はエージェント側のAIが担い、静的解析と行動分析の双方から不正なプロセス・ファイルをリアルタイムで隔離・停止します。攻撃の流れを自動で再構成する「Storyline」を備えるほか、ランサムウェアに暗号化されたファイルをOSの再構築なしに復旧するロールバック機能があり、実行を止めきれなかった場合の復旧手段まで含む構成です。
エンドポイント保護はパッケージが階層化されており、EDR/XDRを含むのは上位のSingularity Completeで、下位のSingularity Coreは次世代アンチウイルス相当の検知が中心です。価格は公式非開示で、エンドポイント単位の年額ライセンスを見積もりで確認します。国内は2017年4月設立のSentinelOne Japan株式会社と代理店が販売・導入支援を担います。
18. CrowdStrike Falcon(CrowdStrike Holdings, Inc.)

まず守備範囲を確認しておくと、CrowdStrikeはメール本文や添付ファイルを配送前に検査するメールゲートウェイ製品を自社では持ちません(2026年8月時点の公式サイトで確認)。担うのは添付ファイルやリンクを開いた後の端末側で、メール経路の情報はMimecastやProofpointなどとの連携で受け取る設計です。
端末側では、次世代アンチウイルスのFalcon Preventが機械学習と独自のIndicator of Attack(攻撃の兆候)を組み合わせ、実行前の段階で不正なファイル・プロセスをブロックします。実行後もランタイムの機械学習と振る舞い分析が続き、ファイルレス攻撃やゼロデイ攻撃を捕捉します。ハッシュ照合に依存しないため、クラウド未接続の端末でもセンサー内蔵のモデルで基本的な防御が働きます。
侵入後の検知・対応はFalcon Insight XDRが担当し、攻撃経路の可視化やリモートからの端末操作に対応します。中小企業向けには公開価格があり、EDRを含むFalcon Enterpriseが月額19.99米ドル/デバイス、Falcon Goが月額7.99米ドル/デバイス(100デバイスまで)です。国内の窓口はクラウドストライク合同会社です。
19. Deep Instinct(Deep Instinct Ltd.)

マルウェア検知に特化して設計した独自のディープラーニングのニューラルネットワークで、ファイルが実行される前に悪性かどうかを予測する製品です。公式データシートは、実行前のDeep Static Analysisが20ミリ秒未満で悪性ファイルを識別し、実行そのものを阻止すると説明しています。
判定は実行前・実行時・実行後の3段階に分かれます。実行時にはランサムウェアの暗号化やコードインジェクションを振る舞いで捉え、実行後は自動分類などの解析・可視化を担います。標的型攻撃メールで多いOffice文書とPDFについては、埋め込みDDE・OLEオブジェクトやマクロ、HTAやActiveScriptの実行への対策が公式に挙げられています。
メールゲートウェイ型の製品はなく、メール経路へはDSX for ApplicationsによるAPI連携でファイルを検査する形です。国内は2020年9月設立のディープインスティンクト株式会社のもと、6社の代理店が販売しています。エムオーテックス(LANSCOPE)経由の公開価格は年額4,200円(税抜)/1ライセンスで、新規は5ライセンスからです。
20. Arctic Wolf Aurora Protect/旧CylancePROTECT(Arctic Wolf Networks, Inc.)

提供元と名称が変わっている製品です。2012年にCylanceが開発したAIベースの次世代アンチウイルスが源流で、2019年にBlackBerry傘下へ移り、2024年12月の譲渡契約を経て2025年2月にArctic Wolfへ事業が譲渡されました。2025年春以降、製品名もCylancePROTECTからAurora Protectへ順次変更されています。
中核は実行前のAI判定です。AIエンジン「Alpha AI」がファイルの実行前に静的解析を行い、約30ミリ秒で実行の可否を判断します。定義ファイルの日次配信を受けず、エージェント側の学習済みモデルで判定するため、インターネット未接続の環境でも検知が働きます。実行前の判定を補う機能として、メモリ保護、PowerShellやマクロのスクリプト制御、アプリケーション制御も搭載されています。
実行後の振る舞い検知を担うのは、EPP単体のAurora Protectではなく、EDR(Aurora Focus)を加えたAurora Endpoint Defense以上の構成です。価格は公式非公開で、日立ソリューションズやNECソリューションイノベータなどの代理店が日本語サポート付きで個別に見積もります。
21. Symantec Endpoint Security(Broadcom Inc.)

オンプレミス版Symantec Endpoint Protectionのクラウド管理版にあたる製品です。Symantecの法人向けセキュリティ事業は2019年11月にBroadcomへ移り、現在はSymantec Enterprise部門が提供しています。EPPとEDRを単一エージェント・単一コンソールで扱える構成が軸で、クラウド・オンプレミス・両者の混在にも同じエージェントで対応します。
防御機能は攻撃前・攻撃時・侵害時・事後対応の4段階に整理されています。EDRを使えるのは上位の Endpoint Security Complete のみで、下位の Endpoint Security Enterprise は EPP 中心です。正規の運用でも使うPowerShellなどの悪用には、利用実態を学習して制限する Adaptive Protection があります。
実行前の判定には端末側とクラウド側の検知を組み合わせた機械学習が使われますが、具体的なアルゴリズム名や処理性能の数値は公式ページでは確認できません。公式サイトに料金表はなく、国内はSB C&SやTD SYNNEXなどの代理店経由の個別見積もりです。運用を任せたい場合は、世界6拠点のSOCが24時間365日対応するマネージドEDR(MEDR)を別途契約できます。
22. LANSCOPE サイバープロテクション(エムオーテックス株式会社)

検知エンジンを自社では開発せず、ここまで紹介したDeep InstinctとAurora Protectのエンジンを、エムオーテックスが日本語のサポート・運用支援込みでパッケージ化して提供するサービスです。検討時は同じエンジンを二重に比べるのではなく、直接契約するか、国内窓口を介して使うかという違いとして見ると整理しやすくなります。
判定の仕組みは元の製品と同じで、Aurora Protectはパターンファイルに依存しないAIによるファイル特性の解析、Deep Instinctはディープラーニングによる実行前の検知・隔離です。EDRのAurora FocusはAurora Protectとのセット提供が前提で、根本原因の調査、感染端末のネットワーク隔離、リモートスクリプト実行、フォレンジック証跡の収集に対応します。
料金はAurora Protect単体が月額500円/台(年額6,000円/台)、Aurora Focusを加えると月額700円/台(年額8,400円/台)で、最小5台から。Deep Instinctを選ぶ場合は要お問い合わせです。導入実績は2025年3月時点で4,400社以上と公式サイトに記載されています。
侵入後に検知し、情報の持ち出しを止めるサービス4選
感染後の動きを捉えて、情報が外部へ出ていく前に封じ込めるための製品です。
23. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

韓国の Quad Miners が開発した NDR(ネットワーク検知・対応)製品で、国内では2021年設立の日本法人と、総代理店の株式会社フーバーブレインをはじめとする代理店が提供しています。ネットワークを流れるパケットを100%取得して保存し、検知・調査・対応までを1つの製品でまかなう構成です。
導入はスイッチのミラーリングでトラフィックを複製して取り込む方式で、通信経路に機器を挟まないため既存ネットワークへの影響を抑えられます。検知は既知の脅威を照合するシグネチャと、平常時からの振る舞いのずれを見る異常検知の2本立てで、MITRE ATT&CK のシナリオに沿った脅威ハンティングも備えます。
全パケットを保存しているため、アラートが出た後に過去の通信まで遡り、メールやファイル送受信といった操作の中身まで復元して侵害の範囲を追えます。Syslog や REST API で EDR・SIEM とも連携し、既存製品の置き換えではなく補完として組み合わせる設計です。料金は初期費用・月額とも公開されておらず(2026年6月時点)、要お問い合わせとなります。
24. Microsoft Defender XDR(日本マイクロソフト株式会社)

先に受信ゲートウェイ層で取り上げた Microsoft Defender for Office 365 は、この Defender XDR を構成する製品の1つです。XDR は単独で購入する製品ではなく、複数の Defender 製品を展開すると自動的に有効になる統合レイヤーにあたるため、メール対策とは別に買い足すものではありません。
公式が挙げる構成製品は、端末を見る Defender for Endpoint プラン2、ID の悪用を捉える Defender for Identity、メールとコラボレーションツールを担う Defender for Office 365 プラン2、SaaS を対象とする Defender for Cloud Apps の4つです。展開したワークロードが多いほど、相関できる範囲が広がります。
各製品のアラートは Defender ポータルで1つのインシデントに束ねられ、フィッシングメールから侵害された端末、その後の横移動までを1か所で追跡できます。進行中の攻撃を自動で封じ込める機能も備えます。料金はユーザー単位のサブスクリプションで初期費用の記載はなく、必要なライセンスの組み合わせで金額が変わるため、公式の料金ページで確認してください。
25. Palo Alto Cortex XDR(パロアルトネットワークス株式会社)

端末に入れるエージェントを起点に、ネットワーク・クラウド・アイデンティティのデータを同じ基盤で相関させる XDR です。マルウェアやエクスプロイトを防ぐエンドポイント保護に加えて、感染した後に端末や社内で起きる動きを捉える役割を担います。
検知の軸は機械学習による行動分析で、デバイスやユーザーの平常時の挙動を学習し、過去の自分自身や組織内の他ユーザーと比べたずれを見つけます。外部の指令サーバーとの通信、社内の横移動、データの持ち出しといった侵入後の動きが主な検知対象で、関連するアラートは1件のインシデントに集約され、根本原因が示されます。
対処はエージェントを導入済みの端末をワンクリックでネットワークから隔離できるほか、自動実行にも対応します。監視を自社で抱えられない場合に向けて、MDR(マネージド検知&レスポンス)やマネージド脅威ハンティング、インシデントレスポンスといった提供形態も用意されています。国内の窓口は2009年設立の日本法人と販売代理店で、価格は公開されておらず要お問い合わせです(2026年6月時点)。
26. Darktrace(Darktrace Limited)

2013年に英国ケンブリッジで設立された Darktrace の製品で、日本にはダークトレース・ジャパン株式会社があり、国内での提供は販売代理店経由が中心です。既知の攻撃パターンに照らして判定するのではなく、その組織自身の正常な状態を AI が学習し、そこからのずれを異常として検知します。
学習に使うのは汎用の脅威モデルではなく自社環境のデータで、暗号化された通信も分析の対象に含まれます。中核はネットワークの挙動分析ですが、製品はメール・クラウド・OT・アイデンティティ・エンドポイントに分かれており、これらを横断して同じ AI が相関を取る構成です。
検知した異常は Cyber AI Analyst が自動で調査し、事業への影響度で優先順位を付けます。対処はデバイスの隔離、強制的な再認証、IP のブロックなどを自律的に実行し、24時間体制のグローバル SOC による支援も公式に案内されています。導入は全世界で約1万社。料金は監視対象のデバイス数に応じた個別見積もりで、公開価格はありません。
実際に届く攻撃メールの手口と見分け方
ここからは、社内への周知に使える材料として、実際に使われている手口と受信者が確認できるポイントを整理します。技術的な対策をすり抜けたメールに気づけるかどうかは、受信者の判断に委ねられるためです。
実際に使われる手口と文面のパターン
標的型攻撃メールの文面は、受信者が普段やりとりしているメールを模して作られます。総務省は、文面の特徴を次のように説明しています。
標的型攻撃メールの文面は、業務でやりとりしているメールの送信者、よく使われているメールの件名や宛先、内容、添付ファイルの形式、署名などを真似て、受信側をだまそうとするものが主流です。一見して不審な点があまりなく、気がつきにくいのが特徴です。また、メールの件名や内容を、「緊急」や「重要」など、受信側の興味を引いたり、読まなければならないと思わせたりするような細工がされています。
出典:標的型攻撃への対策|国民のためのサイバーセキュリティサイト(総務省)
マルウェアの運び方も一つではありません。IPAは、メールの添付ファイルや本文に記載されたリンク先にマルウェアを仕込む手口を挙げたうえで、メール本文や件名、添付ファイル名が業務や取引に関連する内容に偽装され、実在する組織の差出人名が使われる場合もあると説明しています。
出典・参考資料(1件)
受信者が確認するチェックポイント
周知の内容として最も具体的なのは、警察庁と内閣サイバーセキュリティセンターが2025年1月に公表した注意喚起です。「普段と違う形式で届いたか」に着目するという、実務で使える確認の観点が示されています。
送信者が所属する組織のメールアドレスや、過去にやりとりした実績のあるメールアドレスから受信したメールであっても、普段と少しでも異なる状況や違和感があれば、添付ファイルを開いたり、リンクをクリックしたりせず、送信者に確認してください。
例えば、普段は Microsoft Office ファイルをそのまま添付するやりとりが多いのに、パスワード付き Zip ファイルが届く場合、拡張子が VHD や ISO といった日頃のやりとりでは見かけない形式のファイルが届く場合や、Google Drive や OneDrive 等のリンクからファイルをダウンロードさせようとする場合は、不審と判断して送信者や所属組織のシステム管理者などに確認・相談してください。
出典:MirrorFace によるサイバー攻撃について(注意喚起)|警察庁・内閣サイバーセキュリティセンター
ここで挙げられた具体例は、前半で見た対策手段と対応しています。パスワード付きZipファイルは検査を回避するために使われ、これに対応するのが暗号化ファイルを解凍して検査する機能です。クラウドストレージのリンク経由の配布には、クリック時の再検査が効きます。
あわせて周知したいのが、マクロの扱いです。同注意喚起は、添付ファイルを開いた際にマクロの「コンテンツの有効化」ボタンをクリックさせるよう誘導される場合があるとして、安易にクリックしないよう呼びかけています。
国内で起きた被害事例と脅威の実態
ここからは、社内説明や稟議で使える裏づけとして、公表されている被害事例と公的統計を確認します。いずれも公表主体の資料または公的機関の報告に基づいています。
国内で公表されている被害事例
日本年金機構は2015年6月1日、外部からのウイルスメールによる不正アクセスで個人情報が流出したことを公表しました。同機構自身の発表資料は、原因を次のように記載しています。
電子メールのウイルスが入った添付ファイルを開封したことにより、不正アクセスが行われ、情報が流出したものと認められます。
出典:日本年金機構の個人情報流出について(平成27年6月1日)|日本年金機構
流出の規模は、会計検査院の平成28年度決算検査報告で約125万件(対象者約101万人分)と記載されています。流出は2015年5月21日から23日までの間に行われ、判明したのは5月28日でした。件数と対象者数は別の数字である点は、社内説明でも取り違えやすい箇所です。
出典・参考資料(1件)
もう一つ、対策の設計に示唆が多いのが2016年の旅行代理店グループの事案です。NTTドコモが公表した報道発表資料には、i.JTB社からの報告として経緯が日付単位で記載されています。
2016年3月15日(火曜)、i.JTB社のパソコンに取引先を装ったメールが届き、添付ファイルを開いたことにより、i.JTB社のパソコンがウィルスに感染。
3月19日(土曜)〜24日(木曜)、i.JTB社が、i.JTB社内の本来個人情報を保有していないサーバーにおいて、内部から外部への不審な通信を複数確認。
出典:提携先のJTB社のグループ会社サーバーへの不正アクセスに伴う「dトラベル」の個人情報流出の可能性について(2016年6月14日)|株式会社NTTドコモ
この経緯は、攻撃が段階を追って進むことをそのまま示しています。入口では止まらず、端末が感染し、気づいたきっかけは内部から外部への不審な通信でした。同資料によれば、個人情報が含まれていたと判明したのは5月13日で、感染から約2か月が経過しています。
規模については、同資料に2016年6月10日時点で外部に流出した可能性があると特定された約793万人分と記載されています。調査の進行に伴って数字が動くため、社内で共有する際は時点を添えるのが正確です。
被害が及ぶ範囲(情報漏えい・金銭被害・取引先への拡大)
被害は自社の情報流出だけにとどまりません。IPAは、標的型攻撃による影響を次のように整理しています。
また、データ削除等による企業等の活動の妨害、その企業のサプライチェーンに属する関連組織への攻撃の踏み台としての悪用、暗号資産を窃取して犯罪組織の資金源とする等、組織の規模や業種を問わず狙われるおそれもある。
出典:情報セキュリティ10大脅威 2026[組織編]解説書|独立行政法人情報処理推進機構
取引先への踏み台として悪用されれば、自社が加害者側に回ります。同機構は、攻撃者が組織内部に潜伏し、長期にわたり活動を行うケースもあるとしており、気づかないまま被害が広がる構図は前述の事例とも一致します。
被害の大きさを金額で示して予算を確保したい場合は、他業種の復旧費用や損失計上の実例と、経営層向けの稟議書の組み立て方をまとめた以下の記事が材料になります。
公的統計で確認する脅威の実態
脅威が現在も続いていることは、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」で確認できます。組織向けの脅威として「機密情報を狙った標的型攻撃」が第5位に入っており、初選出の2016年から11年連続11回目の選出です。同ランキングは、情報セキュリティ分野の研究者や企業の実務担当者など約250名による選考会の審議・投票を経て決定されています。
出典・参考資料(1件)
件数の把握については注意が必要です。警察庁は令和2年に把握した標的型メール攻撃を4,119件と公表していましたが、件数の公表は令和2年版が最後で、それ以降の版には同種の統計がありません。現在の件数として引用できる公的な数字は存在しない点を、社内説明の際は押さえておくと誤解を避けられます。
直近の動きは、個別の注意喚起として公表されています。警察庁と内閣サイバーセキュリティセンターは2025年1月、攻撃グループ「MirrorFace」による攻撃について、第三者になりすまし、マルウェアを添付したメールやマルウェアをダウンロードさせるリンクを記載したメールを送信して感染させる標的型メール攻撃が確認されているとして注意喚起を行っています。
出典・参考資料(1件)
標的型攻撃メールを開いてしまったときの初動対応
対策を積んでいる途中でも、開封は起こりえます。ここでは、実際に起きたときに情報システム部門がその場で動けるよう、手順と注意点を整理します。まず全体の流れを示します(各項目の根拠は以下の各節で示します)。
- 報告した本人が:添付ファイルを開いた場合は、その端末をネットワークから切断する。
- 報告した本人が:フィッシングサイト等にパスワードを入力していた場合は至急変更する。同じパスワードを他のサービスでも使っていた場合は、そちらも変更する。
- 報告した本人が:組織があらかじめ定めた初動対応を行ったうえで、システム管理者やセキュリティ担当者に連絡し、指示を受ける。
- 報告様式に沿って:受信日時、送信元、URLリンク・添付ファイルの有無、URLリンクのクリック・添付ファイル開封の有無を記録する。
- 情報システム部門が:利用者への状況ヒアリング、端末のフルスキャンと不正通信の確認、危険度に応じた全役職員への注意喚起、メールフィルタリングの追加ルール設定を行う。
- 情報システム部門が:被疑端末の調査や影響範囲の調査は、専門知識や経験がない状態では実施せず、経験者やセキュリティ事業者に相談する。
- あらかじめ定めた基準で:取引先などへ被害が拡大しうる場合のエスカレーション先を判断する。被害が発生した場合や国家支援型の攻撃の可能性がある場合は、警察や管轄省庁への連絡も検討する。
手順が定まっていないことが被害を広げる
前述の日本年金機構の事案について、会計検査院は流出が起きた直接の要因を次のように記載しています。手順の不在が、事態の確認の遅れにつながったという認定です。
検証報告書等によれば、流出事案を発生させた直接的な要因は、機構において、標的型攻撃を受けた場合における対応については、LANケーブルの抜線以外に具体的な定めがなく、このため、メールの開封の有無や不正なプログラムへの感染の有無等の事態の確認が遅れ、有効な対策が講じられなかったことであるとされている。
出典:平成28年度決算検査報告 第4章 第2 年金個人情報に関する情報セキュリティ対策の実施状況等について|会計検査院
「ネットワークから切り離す」だけでは足りず、開封の有無や感染の有無をどう確認するかまで手順に含める必要があることを示しています。同報告は、当時この機構がインシデント対処手順書を策定しておらず、CSIRTも設置していなかったとも記載しています。
開いてしまった直後に行うこと
IPAは、利用者が行う初動対応の例として次を挙げています。組織があらかじめ定めた初動対応を行ったうえで、システム管理者やセキュリティ担当者に連絡して指示を受けるという順序です。
誘導されたフィッシングサイト等にパスワードを入力した場合は至急変更する。同じパスワードを他のサービスでも使用していた場合、他のサービスのパスワードも変更する
添付ファイルを開いた場合、パソコンをネットワークから切断する
出典:企業組織を狙うメールを悪用した攻撃の手口とその対策|独立行政法人情報処理推進機構
実際の対処の例としては、前述の日本年金機構の発表資料に、不正アクセスが発見された時点で直ちにウイルスに感染したPCを隔離し、外部への情報流出を防止するため全拠点でインターネットへの接続を遮断したと記載されています。警察への通報も併せて行われました。
安易に自分で調べないという注意
見落とされやすいのが、調査の進め方です。JPCERTコーディネーションセンターは、被疑端末の調査について次のように注意を促しています。
被疑端末の調査や影響範囲の調査は、専門知識や経験が無い状態で実施すると攻撃の痕跡を消してしまうなどのリスクがありますので安易に実施せず、経験者やセキュリティ事業者などに相談してください。
出典:高度サイバー攻撃 (標的型攻撃) に関する連絡|一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター
切り分けのために端末を操作すると、後の調査に必要な痕跡が失われることがあります。被疑端末を特定できた場合は証拠保全を行ってから次の調査に進むのが原則です。前述のとおり、ログを別のサーバへ集約しておく運用も、この段階で効いてきます。
報告のルールと様式をあらかじめ決めておく
事故が起きてから様式を考えていては、確認が遅れます。IPAは管理者が事前に定めておく事項として、報告先と報告の書式を挙げ、書式に含める項目まで具体的に示しています。
報告先と報告の書式を定める(受信日時、送信元、 URL リンク・添付ファイルの有無、 URL リンククリック・添付ファイル開封の有無を含める)
出典:企業組織を狙うメールを悪用した攻撃の手口とその対策|独立行政法人情報処理推進機構
管理者側の対応としては、利用者への状況ヒアリング、端末のフルスキャンと不正通信の確認、危険度に応じた全役職員への注意喚起、メールフィルタリングの追加ルール設定が挙げられています。取引先などへ被害が拡大しうる場合に、誰にエスカレーションするかの判断基準も、あらかじめ定めておく事項とされています。
被害が発生した場合や国家支援型の攻撃の可能性がある場合は、警察や管轄省庁への連絡も選択肢になります。IPAは相談先として警察庁の「サイバー事案に関する相談窓口」と、同機構の「サイバーセキュリティ 相談・届出窓口一覧」を案内しています。
出典・参考資料(2件)
まとめ
本記事では、標的型攻撃メールの対策を「届く前」「開く段階」「端末が感染する段階」「情報が持ち出される段階」の4つに分けて、それぞれの手段が何を防げて何を防げないかを整理し、主要な26サービスをタイプ別に比較しました。
選定で重要なのは、製品の優劣を比べることよりも、自社の防御がどの段階で薄いかを先に見きわめることです。総務省が指摘するとおり一つの手段で防ぎきることは難しく、どの層を足すかを決める順序で考えると、必要な機能と予算の折り合いがつけやすくなります。判断の目安は次のとおりです。
- 不審なメールが受信箱まで届いている:届く前の層が空いています。既存の判定をすり抜けている以上、既知情報の照合を強めるより、未知のファイルを実行して判定する層を足すほうが効きます。
- 業務上どうしても添付ファイルを受け取る必要がある:判定に依存しない無害化が選択肢になります。元のファイルの機能が失われる代償を、原本の保管と取り出しの運用で吸収できるかが分かれ目です。
- すでに開いた社員が出ている:届く前の層はすり抜けられた実績があります。端末側で実行を止める層を先に埋めるほうが、次の一通で同じことが起きるのを防げます。
- 何が起きたか分からない・影響範囲を追えない:侵入後に検知する層が空いています。この層はログを見る運用体制とセットでないと実効性が出ないため、誰がアラートを見るかを決めてから選定してください。
MCB FinTechカタログでは、標的型攻撃メール対策サービスの資料を無料で一括ダウンロードできます。気になったサービスの資料を取り寄せて、自社に合う組み合わせの比較検討を進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 標的型攻撃メールとは何ですか?
標的型攻撃メールとは、特定の組織を狙った諜報活動の入口として、添付ファイルや本文中のURLリンク先にマルウェアを仕込んで送られるメールです。IPAは、標的とする組織に侵入するための手口の一つとして位置づけています。
メールの件名や本文、添付ファイル名は業務や取引に関連する内容に偽装され、実在する組織の差出人名が使われる場合もあります。標的型攻撃の侵入経路はメールだけではなく、VPN機器などの脆弱性を突く不正アクセスやWebサイトの改ざんも用いられます。
Q. 標的型攻撃メールとフィッシングメールの違いは何ですか?
標的型攻撃メールとフィッシングメールの違いは、送信先と文面を特定の相手に絞り込んでいるかどうかです。IPAによれば、フィッシングメールは同じ文面を不特定多数に送る「ばらまき型」の一種である一方、標的型攻撃メールは標的とする人物をあらかじめ定め、その業務内容を調べ上げたうえで業務に関連した内容で送られます。
この違いは、選ぶべき検査の種類に直結します。不特定多数に同じ文面が送られるメールは、送信元の評価や大量配信の傾向から機械的に落とせますが、一通ずつ業務に合わせて作り込まれたメールは、その判定には引っかかりません。標的型攻撃メールを想定するなら、送信元の評価に加えて、添付ファイルやリンク先の中身そのものを検査する層が必要になります。
出典・参考資料(1件)
Q. 標的型攻撃メール対策は、Microsoft 365 や Google Workspace の標準機能だけで足りますか?
標的型攻撃メール対策として、メール基盤の標準機能だけで足りるとは言えません。標準で組み込まれている迷惑メール対策・ウイルス対策が主な対象とするのは、評判情報やシグネチャで判別できる既知の脅威と大量送信型の攻撃で、定義ファイルに載っていない未知のマルウェアや個別に作り込まれたメールは対象外とされています。
不足分を足す方法は、契約中のメール基盤の上位ライセンスで賄う方法と、受信ゲートウェイに専用製品を挟む方法の2つです。ライセンスの構成は改定され、上位プランにしか含まれなかった機能が下位プランへ広がることもあるため、製品を探す前に、いま支払っているライセンスに未知の脅威への検査が含まれていないかを最新の条件で確認するのが先になります。
もう一つ確認しておきたいのが、含まれていても自動的に効いているとは限らない点です。保護の対象がポリシーで指定したユーザーに限られる機能もあり、全員が対象に入っているかまで見ないと、契約しているのに一部の利用者に効いていない状態が残ります。
Q. 標的型攻撃メール対策のゲートウェイを導入していれば、端末側の対策は不要ですか?
標的型攻撃メール対策では、受信ゲートウェイと端末側の製品は止める段階が違うため、両方を持つことは重複投資になりません。ゲートウェイは受信箱に届く前に検査する層、端末側は開いてしまった後に実行を止める層で、後者は前者をすり抜けたメールの受け皿です。IPAは、攻撃者が検出されない状態を確認してから攻撃を始めるため、入口の対策だけでは防げない場合があると指摘しています。
むしろ支出が重なりやすいのは、同じ段階に同じ検査を二つ買ってしまうときです。メール基盤の上位ライセンスに含まれる添付ファイルの隔離実行と、専用ゲートウェイのサンドボックスは、どちらも「届く前」に同じ検査を行います。予算に上限があるなら、いま何も置いていない段階から順に足すほうが、同じ金額でも塞がる穴は多くなります。
Q. 標的型攻撃メール対策の専用製品を入れた後も、既存の迷惑メールフィルタは残すべきですか?
既存の迷惑メールフィルタは、専用製品を入れた後も残すのが基本です。クラウド型のメール基盤では迷惑メール対策とウイルス対策が契約に標準で組み込まれていて外せないことが多く、判定の根拠(送信元の評価や既知のシグネチャ)も専用製品の検査(未知の添付ファイルの解析や無害化)とは別のものなので、並べても検査が無駄に重なるわけではありません。
実務で問題になるのは検査そのものではなく、隔離されたメールの置き場所と、解放を依頼する窓口が二か所に分かれることです。利用者がどちらを見ればよいのか、解放を誰が判断するのかを決めないまま並べると、問い合わせが情報システム部門に集まります。どちらの層で隔離するか、利用者が自分で隔離メールを確認・解放できる仕組みがあるかを、導入時に決めておくと運用が落ち着きます。
Q. 自社を装った標的型攻撃メールが取引先に届いていると連絡を受けた場合、どうすればよいですか?
自社を装って社外に送られたメールは受信側の対策では止められないため、自社ドメインの送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)を整えることが対処の中心になります。IPAは、送信元組織がSPFやDMARC等の送信元詐称対策を適切に行っていない場合は差出人の偽装が可能だとしています。自ドメイン側の設定は、自社に届くメールではなく、自社名義で取引先に届くメールを守るためのものです。
ただし、攻撃者が自社によく似た別のドメインを取得して送っている場合、そのドメインでの認証は正しく通るため、自社側の設定では止められません。迷惑メール対策推進協議会のガイドラインも、認証できたとしてもなりすましメールでないとは限らないと明記しています。この場合は取引先への注意喚起と、送金や口座変更に関わる依頼はメール以外の手段で直接確認するというルールの共有が、現実的な対処になります。
出典・参考資料(2件)
Q. 標的型攻撃メール対策で無害化(CDR)を導入すると、業務が止まりませんか?添付ファイルの原本は取り出せますか?
無害化は実行要素を取り除いて添付ファイルを作り直すため、そのままではマクロ付きの業務ファイルが機能を失った状態で届きます。ただし製品側にも逃げ道があり、無害化前の原本を保管して利用者が参照・取り出しできる仕組みや、信頼できる送信元・ドメインからのメールを無害化の対象から外す設定を備えたものがあります。業務が止まるかどうかは、この2つをどう設計するかで決まります。
選定時に確認したいのは、原本の保管が標準機能かオプション課金か、保管期間はどれだけか、原本の取り出しを誰の承認で行うかの3点です。マクロ付きのファイルを日常的にやり取りする部署を先に洗い出し、その部署は除外設定にするのか、申請で原本を受け取る運用にするのかを導入前に決めておくと、稼働直後の差し戻しを避けられます。
Q. 標的型攻撃メール対策の導入には、どれくらいの期間と情報システム部門の工数がかかりますか?
標的型攻撃メール対策の導入にかかる期間は、製品側の設定作業よりも、自社で決めなければならないことの多さで変わります。既存の経路を変えないAPI連携型は権限の付与と設定が中心で影響が小さく、MXレコードを切り替えるゲートウェイ型では切り替え時の検証と、障害時にメールをどう流すかの設計が加わります。社内に機器を置く方式では、機器の手配と、受信量に見合う処理性能かどうかの見積もりが前段に必要です。
技術以外の準備も工数に含めて見積もってください。隔離されたメールを誰が解放するか、無害化するなら原本をどの手順で取り出すか、利用者にいつ何を周知するかが決まっていないと、設定が済んでも本稼働には移せません。最低利用期間が1年に設定されている製品もあるため、評価導入や試用ができるかどうかも含め、契約前に導入の流れと自社側の作業範囲を各社に確認しておくと、社内の計画が立てやすくなります。
Q. 標的型攻撃メール対策サービスの費用を各社で比べるときは、何を揃えて見積もればよいですか?
標的型攻撃メール対策サービスの見積もりは、課金単位・オプションの範囲・最低契約条件の3つを揃えないと総額の比較になりません。メールを検査する製品は1メールアドレスあたりの月額、端末側の製品は1台あたりの月額または年額で示されるのが一般的で、単価だけを横に並べても数えている対象が違います。まず自社のメールアドレス数と対象端末数を確定させてから、各社に同じ条件で提示を依頼してください。
次に見るのが機能の含まれ方です。サンドボックス・無害化・原本保管・アーカイブは、基本料金に含む製品と単価上乗せのオプションになる製品があり、条件を揃えないと安く見えていた側が逆転します。50アカウントからの受付や最低利用期間1年といった最低契約条件、代理店経由の個別見積もりが前提の製品もあるため、必要機能を先に固めてから相見積もりに進むと判断がぶれません。
Q. 標的型攻撃メールを開いてしまった場合、まず何をすればよいですか?
標的型攻撃メールを開いてしまった場合は、添付ファイルを開いたならパソコンをネットワークから切断し、パスワードを入力したなら至急変更したうえで、システム管理者やセキュリティ担当者に連絡して指示を受けます。これはIPAが利用者の初動対応の例として挙げているもので、同じパスワードを他のサービスでも使っていた場合は、そちらも変更の対象になります。
連絡時は、受信日時・送信元・URLや添付ファイルの有無・クリックや開封の有無を伝えると担当者が影響範囲を判断しやすくなります(IPAが報告書式に含めるよう挙げている項目)。一方で、その先の調査を自分で進めるのは避けてください。JPCERT/CCは、被疑端末の調査を専門知識なしに行うと攻撃の痕跡を消すリスクがあるとして、経験者やセキュリティ事業者に相談するよう促しています。
出典・参考資料(2件)
出典・参考資料
出典・参考資料(21件)
- 出典:企業組織を狙うメールを悪用した攻撃の手口とその対策|独立行政法人情報処理推進機構
- 出典:情報セキュリティ10大脅威 2026|独立行政法人情報処理推進機構
- 出典:情報セキュリティ10大脅威 2026[組織編]解説書|独立行政法人情報処理推進機構
- 出典:「新しいタイプの攻撃」の対策に向けた設計・運用ガイド 改訂第2版(2011年11月)|独立行政法人情報処理推進機構
- 出典:標的型攻撃への対策|国民のためのサイバーセキュリティサイト(総務省)
- 出典:令和2年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
- 出典:令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
- 出典:MirrorFace によるサイバー攻撃について(注意喚起)|警察庁・内閣サイバーセキュリティセンター
- 出典:平成28年度決算検査報告 第4章 第2 年金個人情報に関する情報セキュリティ対策の実施状況等について|会計検査院
- 出典:日本年金機構の個人情報流出について(平成27年6月1日)|日本年金機構
- 出典:提携先のJTB社のグループ会社サーバーへの不正アクセスに伴う「dトラベル」の個人情報流出の可能性について(2016年6月14日)|株式会社NTTドコモ
- 出典:高度サイバー攻撃 (標的型攻撃) に関する連絡|一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター
- 出典:送信ドメイン認証技術 DMARC 導入ガイドライン|迷惑メール対策推進協議会 技術ワーキンググループ
- 出典:DMARC によるなりすましメール対策|JPAAWG(第4回フィッシング対策勉強会資料)
- 出典:Microsoft Defender for Office 365 service description|Microsoft Learn
- 出典:Microsoft Defender for Office 365 の完全な安全なリンクの概要|Microsoft Learn
- 出典:Office 365 に Microsoft Defender が必要な理由|Microsoft Learn
- 出典:有害な添付ファイルを検出するルールを設定する|Google Workspace 管理者 ヘルプ
- 出典:高度なフィッシングと不正なソフトウェアへの対策|Google Workspace 管理者 ヘルプ
- 参考資料:サイバー事案に関する相談窓口|警察庁
- 参考資料:サイバーセキュリティ 相談・届出窓口一覧|独立行政法人情報処理推進機構
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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