社用スマートフォンを全員に配る予算はないものの、従業員が私物のスマートフォンで業務連絡を取っている。そんな状態を黙認したまま、対策を先送りにしていませんか。私物端末には会社の管理が及ばないため、紛失時に情報を消せず、退職者の端末に業務データが残り続けるリスクを抱えたままになります。
私物端末の業務利用(BYOD)を正式に認めるなら、業務データだけを会社が管理できる状態をつくることが出発点になります。ただ、端末そのものを管理下に置く方法もあれば、端末には業務データを一切残さない方法もあり、自社にどれが合うのかは判断が分かれるところです。
本記事では、BYOD管理ツール21サービスを方式別に比較・解説します。私物端末に何をインストールさせるのか、会社から私用領域がどこまで見えるのか、退職時に業務データだけを消せるのかという、私物端末ならではの判断材料を製品ごとに整理しました。自社に合うツールを選ぶための材料としてご活用ください。
また、貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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BYOD管理ツールの3つのタイプと向き・不向き
BYOD管理ツールは製品数こそ多いものの、「私物端末をどこまで会社が管理するか」という一点で3つのタイプに分かれます。まず全体像を確認しましょう。

| タイプ | 端末ごと管理するMDMタイプ | 端末を管理せず業務データを預けないリモートアクセスタイプ | 業務環境ごと切り離す仮想環境・データレスタイプ |
|---|---|---|---|
| 私物端末に入れるもの | 管理用のプロファイル または専用アプリ | 専用アプリ または専用ブラウザのみ | 接続用のアプリ またはブラウザのみ |
| 業務データの置き場所 | 端末内の業務領域 (会社が管理できる区画) | 会社側のサーバー・クラウド (端末には残さない) | クラウド上の業務端末 または社内サーバー |
| 私用領域への踏み込み | OSの分離機能を使えば 私用領域は管理対象外にできる | アプリの外には関与しない | 接続中の画面以外には関与しない |
| 対応OSの傾向 | iOS・Android が中心 製品によりWindows・macOSも | iOS・Android・Windows・macOS と幅広い製品が多い | Windows パソコンが中心 製品によりブラウザだけで利用可 |
| 向いている企業 | すでに社用端末をMDMで管理していて 同じ画面に私物端末も加えたい企業/ 紛失時に確実に手を打てる状態を優先する企業 | 業務委託先や短期のスタッフも含め 端末を管理せずに使わせたい企業 | 私物パソコンで業務アプリや 重い作業をさせたい企業 |
※上記は各タイプにおける一般的な機能の傾向です。個別のサービスにおける実際の機能搭載の有無や提供形態(標準・オプション等)については各社情報をご確認ください。
端末ごと管理するMDMタイプ
私物端末に管理用のプロファイルや専用アプリを入れ、遠隔ロック・業務データの削除・アプリの配布といった操作を会社側から行えるようにするタイプです。MDM(Mobile Device Management、モバイルデバイス管理)と呼ばれ、もともとは会社が貸与する端末の管理を主目的に発展してきました。
私物端末に使う場合の分かれ目は、OSが備える分離の仕組みを使うかどうかにあります。AndroidのAndroid Enterprise(仕事用プロファイル)やiOSのユーザ登録(User Enrollment)を使うと、端末の中に業務専用の区画をつくり、その区画だけを会社が管理する形になります。端末全体を管理下に置く方式とは、従業員から見た受け入れやすさが大きく変わります。
すでに社用端末をMDMで管理している企業であれば、同じ管理画面に私物端末を加えられる点も利点になります。一方で、私物端末に会社の管理プロファイルを入れること自体に抵抗を示す従業員がいる場合は、次に挙げる2つのタイプも検討の対象に入ります。
端末を管理せず業務データを預けないリモートアクセスタイプ
私物端末には専用アプリや専用ブラウザだけを置き、メール・スケジュール・ファイル・社内システムはその中だけで扱わせるタイプです。業務データは会社側のサーバーやクラウドに置いたままで、端末のストレージには保存させません。
端末そのものを管理下に置かないため、会社が支給していない端末にも配りやすいという特徴があります。業務委託先や短期のスタッフ、あるいは複数の会社の仕事を掛け持ちしている人の端末にも展開しやすく、MDMを導入していない企業でも単独で始められます。
制約としては、扱える業務が「そのアプリやブラウザの中でできること」に限られる点が挙げられます。専用アプリが対応していない社内システムや、端末の機能と密接に連携する業務は、この方式では扱えないことがあります。
業務環境ごと切り離す仮想環境・データレスタイプ
私物のパソコンから会社と同じデスクトップ環境に接続する、あるいは私物パソコンのローカルにデータを残さない仕組みでファイルを扱うタイプです。画面転送で会社のパソコンやクラウド上の業務端末を操作する方式と、端末内のデータを暗号化・分散して単体では復元できない状態にする方式があります。
前のタイプと同じ画面転送の仕組みを使う製品もありますが、分かれ目は接続先です。前のタイプは既存のグループウェアや社内システムを専用アプリ越しに使わせるのに対し、こちらは業務用のデスクトップ環境そのもの(自席のパソコンやクラウド上の仮想パソコン)に接続させます。会社と同じアプリケーションをそのまま動かせる代わりに、接続先の環境を用意する手間が加わります。
私物パソコンで自社開発のWindowsアプリを動かしたい場合や、設計・編集のように処理の重い作業をさせたい場合に向きます。スマートフォン向けのツールでは扱えない領域を埋めるタイプで、対象がWindowsパソコンに限られる製品も少なくありません。
接続先の環境を用意する必要があるため、初期の設計と費用は他の2タイプより大きくなる傾向があります。スマートフォンでのメール確認が主な用途であれば、リモートアクセスタイプのほうが導入は軽く済みます。
失敗しないBYOD管理ツールの選び方
ここからは、比較表を読む前に押さえておきたい5つの判断軸を解説します。自社の状況を当てはめていくと、候補となるタイプが自然に絞られます。
自社の端末構成で選べるタイプが決まるか
最初に確認するのは、業務に使わせる私物端末の内訳です。iPhoneが中心なのか、AndroidとiPhoneが混在しているのか、そして私物のパソコンまで含めるのかで、選べる製品が大きく変わります。
スマートフォンとタブレットだけであれば3つのタイプすべてが候補に入りますが、私物パソコンを含めると選択肢は絞られます。スマートフォン向けを主軸に設計された製品はパソコンの管理に対応していないことが多く、逆にパソコン向けのデータレス製品はスマートフォンに対応していません。私物パソコン特有の制約は後述の「私物パソコンを業務利用するときの制約」で詳しく扱います。
Apple製品だけを使う組織であれば、Appleの管理機能に特化した製品が候補になります。ただしAndroidを管理対象に含められない製品もあるため、将来Androidが混ざる可能性がある場合は、対応OSの範囲を先に確認しておくと選び直しを避けられます。
私物端末に何を入れさせ、その結果どこまで会社に見えるか
従業員の受け入れやすさを左右するのは、この一点です。私物端末にインストールさせるものは、管理用プロファイル、専用アプリ、専用ブラウザ、あるいは何も入れずブラウザだけ、と製品によって異なります。入れるものが軽いほど従業員の抵抗は小さくなりますが、会社が制御できる範囲も狭くなります。
判断の目安になるのは、社内で私物端末の利用に反対する声がどこから出ているかです。「会社に私用アプリや位置情報を見られたくない」という懸念が強い場合は、端末を管理下に置かないリモートアクセスタイプか、OSの分離機能を使って私用領域を管理対象外にできるMDMが候補になります。反対に、端末の紛失時に確実に対処できる状態を優先するなら、端末そのものを管理できるMDMが有利です。
判断の前提として押さえておきたいのは、私物端末向けに用意された登録方式であれば、私用領域は会社から見えないとOSの提供元が明記している点です。Googleは仕事用プロファイルについて個人用のアプリ・データ・使用状況を組織は確認できないとし、Appleは位置情報・SMS・通話記録・Safariの履歴の取得をすべての登録方法で禁止しています。
従業員への説明材料になるこの範囲は、「会社から何が見えるのか」で公式の記載とともに整理しています。
退職・紛失時に業務データだけを消せるか
私物端末では、会社が端末を初期化することはできません。従業員の写真や連絡先まで消えてしまうためです。そこで確認したいのが、業務データだけを選んで削除できるか(セレクティブワイプ)という点になります。
この機能の有無は製品によって差があり、公式ドキュメントに明記している製品と、遠隔での初期化しか記載がない製品に分かれます。後者を私物端末に使うと、いざ退職者が出たときに「消せるのは端末全体だけ」という事態になりかねません。比較表では、公式に明記されているかどうかをそのまま記載しています。
端末に業務データを保存させないリモートアクセスタイプや仮想環境タイプでは、この論点の性質が変わります。消すべきデータが端末上に存在しないため、アカウントを止めればアクセスを断てるという考え方です。
既存の認証基盤・グループウェアと連携できるか
導入後の運用負荷を左右するのが、すでに使っているID基盤やグループウェアとの相性です。従業員のアカウントを2か所で管理する状態になると、入社・異動・退職のたびに二重の作業が発生します。
すでにMicrosoft 365やGoogle Workspaceを契約している場合は、その契約に含まれる管理機能で要件を満たせないかを先に確認すると、追加費用を抑えられることがあります。別の製品を選ぶ場合も、既存のID基盤と連携できるかどうかで、日々の運用の手間が変わります。
そもそも社内にID基盤がなく、クラウドサービスごとにアカウントを個別管理している状態であれば、認証基盤の整理を先に進めたほうが、私物端末の入退社対応も楽になります。ID管理と認証をクラウド側でまとめるIDaaSの仕組みと選び方は、以下の記事で解説しています。
料金・最低ライセンス数・契約期間はどうなっているか
稟議に必要な金額は、月額単価だけでは出せません。初期費用の有無、最低ライセンス数、年間契約かどうかの3点を合わせて確認します。
特に見落としやすいのが最低ライセンス数です。1台から使える製品もあれば、200ライセンス以上を前提とする製品もあり、私物端末を使う従業員が10人程度の企業では選択肢がそもそも限られます。試験導入から始めたい場合は、最低契約数の小さい製品や無料枠のある製品を候補に入れると進めやすくなります。
タイプごとの費用感と、月額以外にかかるものは「料金相場と費用の内訳」で整理しています。
診断ツールですぐにわかる|自社に合うBYOD管理ツール
5つの軸のうち、自社ではどれを優先すべきか決めきれない場合もあります。以下の診断では、端末の構成・従業員に求められる範囲・既存の契約・規模の4問に答えるだけで、条件に合うタイプと製品が絞り込まれます。比較表を読む前の目安としてご利用ください。
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【比較表】BYOD管理ツールおすすめ21選を比較
ここからは、自社の課題や要件に合わせた客観的な比較・選定ができるよう、主要なBYOD管理ツール21製品を3つのタイプ別に分類してご紹介します。表は「私物端末に入れるもの→業務データと私用データの分け方→業務データだけの削除→対応OS→費用」の順に見ると候補を絞りやすい構成です。
セルの「公式に明記なし」は、提供元が公開している情報の中にその記載を確認できなかったことを指します。機能が無いという意味ではありませんが、私物端末で使う以上は問い合わせで確かめておきたい項目です。逆に記載のある製品は、従業員への説明にそのまま使える材料を持っていることになります。
「業務データと私用データの分け方」欄に出てくる仕組みは、大きく2系統に分かれます。端末の中に業務専用の区画をつくる方式(仕事用プロファイル、ユーザ登録、コンテナ)と、端末の外に業務環境を置いて画面や結果だけを見せる方式(サンドボックス、画面転送、秘密分散)です。それぞれで会社から実際に何が見えるのかは、会社から何が見えるのかで公式の記載とともに扱います。
端末ごと管理するMDMタイプの比較
| サービス名 | CLOMO MDM | SPPM | BizMobile Go! Direct | Microsoft Intune | Google エンドポイント管理 | ManageEngine Endpoint Central Cloud | IBM MaaS360 | OPTiM Biz | Jamf Pro |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 私物端末に入れるもの | 管理プロファイル (専用アプリのみでの利用も可) | 専用アプリ(SPPM Agent) | 管理プロファイル | 対象アプリのみ (端末を登録せずアプリ保護ポリシーで利用可) | 不要(基本のエンドポイント管理は業務アカウントへのサインインのみ) 高度な管理はAndroid Device Policyアプリ・構成プロファイル | 管理プロファイル(iOSはユーザ登録) | 管理プロファイル (iOSはユーザー登録、Androidは仕事用プロファイル) | 公式に明記なし | 管理プロファイル(ユーザ登録) |
| 業務データと私用データの分け方 | Work Profileモード(Android) SECURED APPsでアプリ領域のみを管理 | Work Profile(Android) iOS側の分離方式は公式に明記なし | 業務アプリと個人アプリ間のデータ送受信を禁止 私物端末では個人が入れたアプリを非表示にできる | アプリ保護ポリシー(MAM) 職場アカウントで扱ったデータのみを保護 | Androidの仕事用プロファイル 個人用のアプリ・データ・使用状況は組織に公開されない | コンテナ化 iOSはApple User Enrollmentで業務データ専用の領域を作成 | 暗号化コンテナ 個人アプリ・データ・行動への可視性と制御権は持たない | 公式に明記なし (記載は会社支給端末向けのDevice Owner Modeのみ) | ユーザ登録(User Enrollment) 組織のデータと個人データをOS側で分離 |
| 業務データだけの削除 | ●(アプリ内データのみ削除) | 公式に明記なし | ●(セレクティブワイプ) | ●(MAMの選択的ワイプ) | ●(仕事用データのワイプ/アカウントのリモートワイプ) | ●(業務データのみワイプし個人データは変更しない) | ●(業務データ・業務アプリのみ消去) | 公式に明記なし | ●(組織のデータのみ削除。写真・書類は保護) |
| 対応OS | iOS / iPadOS / Android / macOS / Windows 11(Pro・Enterprise) | Android / iOS / Windows 11(Pro・Enterprise)/ Mac | iOS / iPadOS / Android / Windows 10・11 / macOS | iOS / iPadOS / Android / Windows(MAM) MDMはmacOS・Linuxにも対応 | Android / iOS・iPadOS Windows・ChromeOSは高度なエンドポイント管理以上 | Windows / Mac / Linux / iOS / Android | iOS / iPadOS / Android / ChromeOS(BYOD向け) Windows・macOSも管理対象 | iOS / iPadOS / Android / Windows / macOS | Mac / iPhone / iPad / Apple TV Androidは上位バンドルJamf for Mobile |
| 初期費用 | 19,800円(税抜) | 0円 | 0円 | 公式に明記なし | 公式に明記なし | 公式に明記なし | 公式に明記なし | 45,000円/1契約 | 要問い合わせ |
| 月額費用・最低ライセンス数 | 基本料2,100円/月+300円/台/月(税抜) 最低5ライセンス | モバイル330円/台/月、PC550円/台/月(税込) 1台から(最低契約台数なし) | 330円/台/月(税込、標準プラン) 最低10台 | Plan 1 1,199円/ユーザー/月、Plan 2(アドオン)599円/ユーザー/月 Microsoft 365 E3(5,847円)・E5(8,995円)にも同梱 | Google Workspaceの契約に同梱(単体販売なし) 仕事用プロファイルはBusiness Plus以上 | 25エンドポイントまで無料 有償版は年額218,000円〜(50エンドポイント基準、日本語ページ表記) | 2.97〜6.68ドル/デバイス/月(米国公式) 日本円建て価格の掲示なし | モバイル300円/台/月、PC500円/台/月 最低契約台数は公式に明記なし | 要問い合わせ(デバイス台数・契約年数・バンドル構成に応じた個別見積もり) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※2026年8月時点で各社の公式サイト・公式ドキュメントを確認した結果です。「公式に明記なし」は公開情報で確認できなかったことを示し、機能が無いことを意味しません。●=業務データのみの削除を公式に明記/△=端末上のデータ削除機能はあるが遠隔からの消去は公式に明記なし/「端末にデータを残さない設計」=消すべきデータが端末上に残らないため、アカウント停止・接続遮断で対応します。
端末を管理せず業務データを預けないリモートアクセスタイプの比較
| サービス名 | moconavi | CACHATTO One | smartBYOD | SmartGate | マジックコネクト・ネオ | i-FILTER ブラウザー&クラウド | HENNGE Secure Browser |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 私物端末に入れるもの | 専用アプリ(MDM・構成プロファイル不要) | 専用アプリ(セキュアブラウザ) | 専用アプリ(セキュアアプリ) | 専用アプリ(SmartGateアプリ) | 専用アプリ(画面表示用のビューア) | 専用ブラウザ(SecureBrowser) | 専用ブラウザ(HENNGE Secure Browser) |
| 業務データと私用データの分け方 | 企業領域をサンドボックス化 業務データを端末や通信経路に残さない | セキュアブラウザ経由でのみ社内システムへアクセス ファイルのローカル保存禁止・業務終了時にデータを削除 | セキュアアプリ内でのみ業務を行う 端末本体に業務データを残さない | SmartGateアプリの中だけで業務を完結 アプリより外の情報は取得しない | 画面転送 業務データはオフィスのPC側に留まり手元の端末に届かない | 業務は専用ブラウザー、私用は標準ブラウザーに分ける プライバシーモードで端末に残すデータを設定 | セキュアブラウザ(ローカルデバイスへの保存禁止) |
| 業務データだけの削除 | 端末にデータを残さない設計 | 端末にデータを残さない設計 | ●(個人データを残しセキュアアプリのデータのみ削除) | 端末にデータを残さない設計 | 端末にデータを残さない設計 | △(自動初期化機能でデータを削除。遠隔消去は公式に明記なし) | 端末にデータを残さない設計 |
| 対応OS | iOS / iPadOS / Android / Windows | Windows(PC向けセキュアブラウザ) iOS・Android(スマホ向けブラウザ) | iOS 13.0〜16.X / Android 5.0〜13.X | iOS / Android / Windows | Windows / macOS / iOS / iPadOS / Android(手元端末) | iOS / Android(SecureBrowser) WindowsはMultiAgent | iOS / Android / Windows / macOS |
| 初期費用 | 公式に明記なし | 公式に明記なし | 要問い合わせ | 0円(自社セットアップ) 代行セットアップは390,000円 | アプリ型10,000円〜/アプリ型ライト5,000円〜(税別) | 公式に明記なし | 公式に明記なし |
| 月額費用・最低ライセンス数 | 基本料15,000円/テナント/月+720円/ID/月(税別) Contacts・Browserは360円/ID/月 いずれも最低10ID | サービス基本利用料120,000円/年+セキュアブラウザ84,000円/10ユーザー/年(税別) 年間契約・最低10ライセンス | 要問い合わせ | 500円/ID/月(10〜99ID)〜300円/ID/月(2,000ID〜) 課金は30IDから | 年間使用料 アプリ型21,600円/ライト14,400円/プレミアム28,800円(税別・1アカウント) | 月額換算200円(500ライセンス購入時の参考価格) 段階別の価格表は要問い合わせ | HENNGE Oneの契約に含む(単体契約不可) Identity Edition 300〜500円/ユーザー/月・最低200ID(年払い) Ultra Suite 800〜1,000円/ユーザー/月・最低100ID〜50ID |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※2026年8月時点で各社の公式サイト・公式ドキュメントを確認した結果です。「公式に明記なし」は公開情報で確認できなかったことを示し、機能が無いことを意味しません。●=業務データのみの削除を公式に明記/△=端末上のデータ削除機能はあるが遠隔からの消去は公式に明記なし/「端末にデータを残さない設計」=消すべきデータが端末上に残らないため、アカウント停止・接続遮断で対応します。
業務環境ごと切り離す仮想環境・データレスタイプの比較
| サービス名 | Shadow Desktop | CACHATTO SecureContainer | ZENMU Virtual Drive | Windows 365 | Ericom |
|---|---|---|---|---|---|
| 私物端末に入れるもの | 専用クライアント(私物PCにインストール) | 専用クライアント(私物PC向けはSwitch版) | 専用クライアント(Windows PCにインストール) 私物PCでの利用可否は公式に明記なし | ブラウザーのみ(専用アプリWindows Appも利用可) | 不要(HTML5対応ブラウザのみ) |
| 業務データと私用データの分け方 | オンデマンド起動で業務環境に切り替え 私物PCのローカルファイルは仮想化の対象外 | 端末内に暗号化された隔離領域(セキュアコンテナ)を作成 その中だけで業務を行う | 秘密分散(ZENMU-AONT) 仮想ドライブのデータをPC内とクラウドに分けて保管 | 業務環境をクラウドPC(仮想デスクトップ)に切り出す 業務データはクラウドPC側に留まる | 画面転送 業務アプリケーションとデータはサーバー側で処理 |
| 業務データだけの削除 | ●(管理コンソールから利用を停止しキャッシュを削除) | ●(隔離領域のデータをサインアウト・シャットダウン時に削除) | ●(クラウド側の分散片へのアクセスを停止し復元不可にする) | 端末にデータを残さない設計 | 公式に明記なし |
| 対応OS | Windows 11(Pro・Enterprise・Education) Homeエディションでの可否は公式に明記なし。Mac・iOS・Android非対応 | Windows 11のみ AD版はPro・Enterprise、Switch版はHome・Pro・Enterprise。Mac・iOS・Android非対応 | Windows 10(20H2以降)・Windows 11の64bit版 Mac版は2027年春頃リリース予定 | Windows / macOS / ChromeOS / Linux(ブラウザー接続) | HTML5対応ブラウザが動く端末(Mac・Linux・Chromebook・タブレット等) |
| 初期費用 | 0円 | 公式に明記なし | 公式に明記なし | 公式に明記なし | ライセンス330,000円/10指名ユーザー(Ericom Connect) |
| 月額費用・最低ライセンス数 | 要問い合わせ 最低5ライセンス | 基本利用料120,000円/年+ユーザーライセンス96,000円/10ユーザー/年(税別) | Enterprise Edition 1,800円/ユーザー/月(税抜、年間契約・5ライセンスから) Limited Edition 500円/ライセンス/月(税抜) | Business 5,247〜10,494円/ユーザー/月(税抜、300ユーザーまで) Enterpriseはスペック別で5,247円〜(別途ライセンスが必要) | 年間サポート75,000円/10指名ユーザー(Ericom Connect) |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト |
※2026年8月時点で各社の公式サイト・公式ドキュメントを確認した結果です。「公式に明記なし」は公開情報で確認できなかったことを示し、機能が無いことを意味しません。●=業務データのみの削除を公式に明記/△=端末上のデータ削除機能はあるが遠隔からの消去は公式に明記なし/「端末にデータを残さない設計」=消すべきデータが端末上に残らないため、アカウント停止・接続遮断で対応します。
各BYOD管理ツールの詳細解説
ここからは、21サービスをタイプ別に個別に解説します。私物端末に何を入れるのか、私用領域にどこまで踏み込むのか、業務データだけを消せるのか、いくらかかるのかを製品ごとに整理しました。
端末ごと管理するMDMタイプの9サービス
端末に管理用のプロファイルや専用アプリを入れ、会社側から業務領域を制御するタイプです。OSの分離機能への対応状況が、私物端末で使えるかどうかの分かれ目になります。
1. CLOMO MDM(株式会社アイキューブドシステムズ)

私物端末での使い方を2通り用意している点が、導入10,000社以上を掲げるCLOMO MDMの特徴です。端末ごと管理するMDMとして使うほか、専用アプリ群「CLOMO SECURED APPs」だけを入れて、業務データを扱うアプリ領域だけを管理する形でも使えます。後者はMDMを導入せずに単体で利用できます。
Androidでは「Work Profileモード」を提供し、業務用データと個人用データの棲み分けができると公式サイトは説明しています。万が一の際にはアプリ内データのみを削除できると公式に明記されており、端末全体を初期化せずに業務データを引き上げられます。iOS側の分離方式については記載がありません。
料金は初期費用19,800円、月額基本利用料2,100円に加えて、デバイス1台あたり300円(いずれも税抜)。最低契約台数は5ライセンスで、それ以降は1ライセンス単位で追加できます。
2. SPPM(株式会社AXSEED)

Android Enterpriseの4つの管理形式に対応した国産のデバイス管理サービスで、提供元の株式会社AXSEEDは17年を超える運用実績を掲げています。中核製品のSPPM 3.0では、Work Profileを「デバイスに個人領域と仕事領域を構成 BYOD需要に対応」と公式の機能一覧に明記しています。
初期費用と月額基本料は0円で、SPPM 3.0の利用料はモバイル1台あたり330円、パソコン1台あたり550円(いずれも税込)。1台から契約でき、最低契約台数の制限がありません。指定エリア外での利用を制限するジオフェンス機能は、月額110円(税込)/IDのオプションです。
私物端末には「SPPM Agent」というエージェントアプリを導入します。退職時に業務領域だけを削除できるか、機能一覧にある位置情報取得が仕事用プロファイルの端末にも及ぶかは公式に記載がなく、私物端末で使う前に確認しておきたい点です。
3. BizMobile Go! Direct(IoT-EX株式会社)

初期費用と月額固定費用がかからず、標準プラン330円(税込)/台/月から使えるクラウド型のMDMです。提供元はIoT-EX株式会社(旧BizMobile株式会社)で、課金対象は管理サーバーと通信した端末のみ、最低契約台数は10台となっています。
業務データの引き上げでは、公式の機能一覧にセレクティブワイプが挙げられており、「MDMで配付したルール(アプリ、プロファイル)を削除、MDM管理状態は継続」と説明されています。iOS・iPadOS・Android・Windows・macOSのいずれでも使えます。
私用領域への配慮としては、私物端末の場合に個人的にインストールしたアプリを非表示にできると公式サイトに記載があります。業務アプリと個人アプリの間でデータを送受信させない制御も備えます。位置情報の取得は月額110円/台のオプションで、私用時間帯の扱いについての記載はありません。
4. Microsoft Intune(日本マイクロソフト株式会社)

Microsoft 365やMicrosoft Entra IDと統合されたエンドポイント管理サービスで、端末を登録して管理するMDMと、端末を登録せずにアプリ単位でデータを守るMAM(アプリ保護ポリシー)の両方を持ちます。
私物端末で効いてくるのは後者です。公式ドキュメントは「Intune アプリ保護ポリシーはあらゆるモバイル デバイス管理 (MDM) ソリューションとの依存関係なしで使用できます」と明記しています。登録なしの利用は個人所有端末でよく使われる形だと説明されており、退職時はMAMの選択的ワイプで、業務アプリ内のデータだけを削除できます。
ただし登録しない端末には、アプリの配布・証明書プロファイル・社内Wi-FiやVPNの設定を配れないと公式に明記されています。ライセンスは単体のPlan 1・Plan 2のほか、Microsoft 365 E3(5,847円/ユーザー/月)とE5(8,995円/ユーザー/月)にも含まれます。
5. Google エンドポイント管理(Google LLC)

Google Workspaceの管理コンソールに組み込まれた機能で、単体では販売されていません。管理レベルは「基本のエンドポイント管理」「高度なエンドポイント管理」「エンタープライズ エンドポイント管理」の3段階に分かれ、契約しているエディションで使える範囲が決まります。
私物端末では、基本のエンドポイント管理なら専用アプリも構成プロファイルも入れずに済み、業務アカウントにサインインするだけで管理対象になります。この段階でもパスコードの適用とアカウントのリモートワイプは使えます。
Androidの仕事用プロファイルを使うにはBusiness Plus以上の契約が必要で、端末には「Android Device Policy」アプリを入れます。個人用のアプリ・データ・使用状況は組織に公開されないとGoogleは説明しており、仕事用データだけのワイプにも対応します。各エディションの月額は公式の価格ページで確認してください。
6. ManageEngine Endpoint Central Cloud(ゾーホージャパン株式会社)

パッチ管理・資産管理・モバイルデバイス管理を1つのコンソールに集約した統合エンドポイント管理で、日本ではゾーホージャパン株式会社が提供します。会社所有の端末と従業員所有の端末を区別してポリシーを分ける機能を、全エディション共通で使えます。
私物端末では、コンテナ化によって業務データと個人データを分ける方式をとります。iOSはAppleのユーザ登録(User Enrollment)で業務データ専用の領域を作り、公式サイトは退職時に業務データのみをワイプし、個人データには手を加えないと説明しています。
料金は25エンドポイントまで無料で全機能を使え、有償版は50エンドポイントを基準にした年額です。日本語の価格ページではEnterprise Editionが218,000円/年から、UEM Editionが332,000円/年から、Security Editionが383,000円/年からと表示されています。無料トライアルは30日間です。
7. IBM MaaS360(日本アイ・ビー・エム株式会社)

「IBM Security MaaS360」の名称でも知られる統合エンドポイント管理で、スマートフォンからノートパソコンまでを1つのコンソールで扱います。私物端末にはOS標準の登録方式をそのまま使います。iOS・iPadOSはユーザー登録(User Enrollment)、Androidは仕事用プロファイル(Profile Ownerモード)で、業務アプリとデータを暗号化されたコンテナに収めます。
Androidの仕事用プロファイルについて、公式ドキュメントはプロファイル内は完全に管理できる一方、個人のアプリ・データ・行動に対する可視性と制御権は持たないと明記しています。BYOD Privacy Settingsを有効にすると、管理者は企業アプリカタログ以外から入れた個人アプリを見られなくなります。
退職・紛失時は、業務データと業務アプリだけを遠隔で消去できます。料金は米国の公式ページでEssentialsが1デバイス月額2.97ドル、Enterpriseが6.68ドルからと示されており、日本円建ての価格は掲示がありません。国内は日本アイ・ビー・エムと販売パートナー経由での見積もりになります。
8. OPTiM Biz(株式会社オプティム)

国内で広く使われている国産MDMで、私物端末向けの仕様は公式情報で確認できず、私物端末で使う際の3つの判断材料には現時点で答えられません。その前提で読んでください。
株式会社オプティムが自社開発するMDMで、iOS・iPadOS・Android・Windows・macOSを1つの管理画面で扱えます。公式サイトでは18万社以上への導入と、500機種以上への対応を掲げています。
料金は1契約あたり初期費用45,000円、月額はモバイル端末が1台300円、パソコンが1台500円です。ウイルス対策などのオプションが機能ごとに月額100〜600円/台で用意されているほか、位置情報や時間帯に応じてセキュリティ設定を自動適用する特許技術「ゾーン管理」を備えます。
一方で、私物端末向けの仕様は公式サイトで確認できません。Androidの管理ページに記載があるのは会社支給端末向けのDevice Owner Modeで、仕事用プロファイルやiOSのユーザ登録への対応、業務データだけを削除できるかどうかは明記がありません。私物端末に使うなら、事前の問い合わせが必要です。
9. Jamf Pro(Jamf Japan合同会社)

Mac・iPhone・iPad・Apple TVに対象を絞ったApple製品専業の管理サービスです。2002年に開発が始まった「The Casper Suite」を前身とし、日本ではJamf Japan合同会社が窓口となります。Android端末の管理は、上位バンドルの「Jamf for Mobile」の範囲です。
私物のiPhone・iPadには、Appleがユーザ登録(User Enrollment)と呼ぶ方式で登録します。ユーザーがApple IDでサインインする方式と、管理者が発行するプロファイルを入れる方式の2通りが用意されており、いずれもiOS・iPadOS 13.1以降が前提です。
公式ドキュメントは、管理者が端末から削除できるのは組織のデータのみで、写真や書類といった個人データは保護されると明記しています。料金は公開されておらず、デバイス台数・契約年数・バンドル構成に応じた個別見積もりです。無料トライアルは14日間用意されています。
端末を管理せず業務データを預けないリモートアクセスタイプの7サービス
私物端末に専用アプリや専用ブラウザだけを置き、業務データは会社側に留めるタイプです。端末を管理下に置かずに済むため、管理される側の心理的な負担が小さく済みます。
10. moconavi(株式会社レコモット)

私物端末にMDMや構成プロファイルを入れずに使えることを前面に掲げる、株式会社レコモットのテレワークプラットフォームです。電話・メール・チャット・カレンダー・ファイル閲覧といった業務機能を、専用アプリの中にまとめて提供します。導入実績は1,700社以上・34万ID以上(2025年9月現在の概数)と公式サイトに記載されています。
業務データと私用データは、企業領域をサンドボックス化する方式で分けます。公式は業務データを端末や通信経路に一切残さないと説明し、紛失や盗難の際もリモートでのデータ削除や端末管理は不要としています。従業員がどのアプリをインストールしているかなど、私用領域が管理者に知られることはないとも明記されています。
料金は2025年9月1日からの体系で、クラウド基本料金15,000円/テナント/月に、ID単位の従量課金が加わります(税別)。従量分はmoconaviが720円/ID/月、moconavi Contactsとmoconavi Browserが360円/ID/月で、いずれも最低10IDから利用できます。クラウド利用時の初期費用は公式に明記がなく、無料トライアルは30日間です。
11. CACHATTO One(e-Janネットワークス株式会社)

e-Janネットワークス株式会社が展開するハイブリッドワークプラットフォームで、セキュアコンテナ・VPN・リモートデスクトップ・セキュアブラウザなど6つの製品を用途に応じて組み合わせて使います。私物端末での利用については、公式がセキュアブラウザを名指しし、社給端末を持たない社員もBYODでリモートワークが可能だと説明しています。
セキュアブラウザは、社内から社外への一方向のHTTPS通信だけで社内システムやクラウドへアクセスさせる仕組みです。ファイルのローカル保存は禁止され、業務終了時にはデータを削除するため、端末側に業務データが残りません。公式コラムは、社内システムに直接アクセスさせないためMDMなどの監視ツールは不要だと説明しています。
契約は年間単位で、会社IDごとのサービス基本利用料が120,000円/年(保守・管理者サポート・コネクタ1本を含む)かかります。セキュアブラウザのユーザーライセンスは84,000円/10ユーザー/年(税別)で、最低10ライセンス単位での契約になります。大規模導入時にはボリュームディスカウントの用意があります。
12. smartBYOD(富士ソフト株式会社)

私物のスマートフォン・タブレットを業務に使うことに絞って設計された、富士ソフト株式会社のクラウド型ツールです。従業員は専用のセキュアアプリをダウンロードし、その中で業務を行うため、端末本体には業務データが残りません。
退職・紛失時の扱いについては、万が一の紛失時に個人データは残したままセキュアアプリのデータのみを削除できると公式が明記しています。加えて、通話・通信の公私分計、無操作ログアウト、操作履歴の記録にも対応します。不正端末の検知やパスワード制限を行うデバイス認証機能を製品自体が備える点は、外部のMDMを使わない設計を掲げる他製品と成り立ちが異なります。
公式ページに記載されている対応OSは、iOS 13.0〜16.XとAndroid 5.0〜13.Xです。現行のOSより古い世代までの記載にとどまるため、自社の従業員が使っている端末で動くかどうかは問い合わせで確かめる必要があります。
また初期費用・月額費用とも公式ページに記載がなく、料金の把握には問い合わせが前提になります(2026年8月時点)。無料トライアルの案内や導入社数の公表も、公式ページ上では確認できません。
13. SmartGate(メディアマート株式会社)

端末にアプリを1つ入れるだけで、VPNを使わずに社内システムやクラウドサービスへ暗号化通信で接続できるシングルサインオン基盤です。提供元はメディアマート株式会社で、公式はBYODや業務委託先の端末でも容易に運用できると説明しています。
私用領域との関係について、公式はSmartGateの中だけセキュリティが保たれ、SmartGateより外の情報は取得しないと説明しています。添付ファイルはダウンロードさせず表示のみに限り、接続先の履歴を含めてデータを端末に残しません。退職や紛失の際は、ユーザー単位・端末単位でアクセスを遮断する形で対応します。
初期費用は自社でセットアップすれば無料、メディアマートに代行を依頼する場合は39万円です。月額はID数の段階制で、10〜99IDが500円/ID/月、100〜499IDが450円/ID/月と下がり、2,000ID以上では300円/ID/月になります。課金は30IDからで、月ごとに発行した接続ID数を集計して増減します。
14. マジックコネクト・ネオ(NTTテクノクロス株式会社)

オフィスのPCのデスクトップ画面を手元の端末に転送して遠隔操作する、画面転送方式のリモートアクセスサービスです。NTTテクノクロス株式会社が提供し、累計導入実績は20,000社以上と公式サイトに記載されています。
アプリ型では手元の私物端末に専用アプリを入れますが、これは画面を表示するビューアで、業務データそのものは手元に届きません。公式は、自身のパソコンにデータをダウンロードすることなく利用でき、手元の端末には情報が一切残らないと明記しています。私物端末をMDMに登録する必要はなく、許可していない端末からの接続は端末限定機能で拒否します。
料金は税別で、アプリ型が初期費用10,000円〜・年間使用料21,600円、USBキー型が初期費用15,000円〜・年間使用料21,600円です。アプリ型ライトは初期費用5,000円〜・年間使用料14,400円で、上位のプレミアムはいずれも年間28,800円になります。無料トライアルの有無は、公式料金ページでは確認できません。
15. i-FILTER ブラウザー&クラウド(デジタルアーツ株式会社)

MultiAgentとSecureBrowserという2つのラインナップで構成される、デジタルアーツ株式会社のエンドポイントWebセキュリティ製品です。Windows端末はMultiAgent、iOS・Android端末はSecureBrowserが受け持つため、私物のスマートフォンで使うのは後者になります。
公式は私物端末での使い分けを、通常のインターネットアクセスは使い慣れた標準ブラウザーを利用し、社内システムへのアクセスは本製品に限定する、という形で説明しています。SecureBrowserには、端末に残すデータを許可または禁止に設定するプライバシーモードと、特定のタイミングでデータを削除できる自動初期化機能があります。いずれも管理者がグループ単位で設定できます。
公式が示す参考価格は、500ライセンス購入時で月額換算200円です。ライセンス段階別の価格表は公式サイトに掲載がなく、価格表の取り寄せか問い合わせが必要になります。初期費用・無料トライアルの有無、MDMプロファイル併用の要否についても、公式ページ上に明記は見当たりません。
16. HENNGE Secure Browser(HENNGE株式会社)

Microsoft 365やGoogle Workspaceのメール・スケジューラーを、端末にデータを残さずに閲覧させる業務用の専用ブラウザです。HENNGE株式会社が提供し、公式の機能名は「セキュアブラウザ(ローカルデバイスへの保存禁止)」となっています。
まず押さえたいのは契約の形で、このブラウザだけを単体で契約することはできず、HENNGE Oneの契約が前提になります。
Identity EditionはIdPが300円/月・ユーザー、IdP Proが500円/月・ユーザーで、いずれも年払い・最低200IDからです。Ultra SuiteはBasicが800円/月・ユーザー(最低100ID〜)、Proが1,000円/月・ユーザー(最低50ID〜)で、追加課金なくセキュアブラウザを使えます。
私物端末にはアプリストアで配布される専用アプリを入れ、HENNGE Oneのアカウントでログインして使います。MDMプロファイルやデバイス証明書の併用が必要かどうかは、公式ページ上では確認できません。紛失時の対応は端末にデータを残さない設計そのものが前提で、セレクティブワイプに相当する機能名の公式明示はありません。
業務環境ごと切り離す仮想環境・データレスタイプの5サービス
私物パソコンから業務環境に接続する、あるいは端末内のデータを単体では使えない状態にするタイプです。私物パソコンを業務に使わせたい場合の受け皿になります。
17. Shadow Desktop(アップデータ株式会社)

アップデータ株式会社が提供する、パソコン内のデータをクラウドストレージへ自動的に退避させ、端末側には残さないソフトウェアです。ファイルのアイコンは従来どおりパソコン上に表示され、開くときにクラウドから取り出して一時的にキャッシュする仕組みで、キャッシュはAES 256bitで暗号化されます。
起動方法は、会社支給のパソコン向けの自動起動と、私物パソコン向けのオンデマンド起動から選べます。オンデマンド起動では普段は私物のデスクトップをそのまま使い、業務のときだけ仕事用の環境に切り替えるため、私物パソコンのファイルは仮想化の対象に入りません。紛失時は管理コンソールから該当端末の利用を停止し、クラウドとの接続を切ってキャッシュを削除できます。
対応するのはWindowsのみで、Mac・iOS・Androidでは利用できません。公式の動作環境ページが挙げるエディションはPro・Enterprise・Education系で、私物パソコンに多いHomeエディションでの可否は明記がありません。料金は公開されておらず、5ライセンスからの契約と最大30日間の無料トライアルが案内されています。
18. CACHATTO SecureContainer(e-Janネットワークス株式会社)

パソコンの中に暗号化された隔離領域をつくり、その中だけで業務を行わせるソフトウェアです。e-Janネットワークス株式会社が提供しており、隔離領域内のファイルはサインアウトやシャットダウンのタイミングで削除されるため、業務を終えると端末にデータが残りません。
製品は会社支給の専用機向けの「セキュアコンテナ AD」と、私物パソコン向けの「セキュアコンテナ Switch」に分かれます。私物パソコンで使うのはSwitch版で、こちらはHomeエディションにも対応します。AD版の対応OSはWindows 11 Pro/Enterpriseに限られ、Homeエディションが多い私物パソコンでは利用できません。
Switch版はWindows 11 Home/Pro/Enterpriseに対応し、通常のWindows環境と隔離領域をユーザー自身が切り替えて使います。
いずれの版もWindows専用で、macOS・iOS・Androidには対応していません。料金は基本利用料が年額120,000円(税別)、ユーザーライセンスが10ユーザーあたり年額96,000円(税別)で、初期費用は公式ページに記載がなく問い合わせが必要です。動作環境ではメモリ16GB以上が推奨されており、私物パソコンの性能によっては要件を満たさない場合があります。
19. ZENMU Virtual Drive(株式会社ZenmuTech)

株式会社ZenmuTechの秘密分散技術「ZENMU-AONT」を用い、パソコン内とクラウド上にデータを分けて保管するソフトウェアです。パソコンに作られる仮想ドライブ(標準ではZドライブ)へ保存したデータは、両方の断片がそろわないと元に戻せません。
紛失や盗難のときはクラウド側の断片へのアクセスを止めることで、手元に残る断片から元のデータを復元されることを防げます。現行製品が対応するのはWindows 10(バージョン20H2以降)とWindows 11の64bit版で、Mac版は2027年春頃のリリース予定で未提供です。
料金はEnterprise Editionが1ユーザーあたり月額1,800円(税抜、年間契約・5ライセンスから)、機能を絞ったLimited Editionが1ライセンスあたり月額500円(税抜)です。公式サイトには私物端末での利用を前提とした案内がなく、私物パソコンに導入してよいかは契約条件とあわせて確認が必要です。
20. Windows 365(日本マイクロソフト株式会社)

クラウド上に用意したWindowsのパソコンをユーザーごとに1台割り当て、手元の端末から接続して使うサービスです。日本マイクロソフト株式会社が国内で提供しており、接続にはブラウザーか専用アプリ「Windows App」を使い、WindowsのほかmacOS・Chrome OS・Linuxからも利用できます。
私物端末側はブラウザーがあれば接続でき、端末をMicrosoft Intuneなどの管理下に登録することは、ブラウザーからの接続の前提条件としては示されていません。業務データはクラウド上のパソコンに置かれるため、退職時はライセンスの割り当てを解除すれば業務環境ごとアクセスを断てます。
料金はBusinessが1ユーザーあたり月額5,247円から10,494円(税抜)で、テナントあたり300ユーザーまで、ライセンス上の前提条件なく契約できます。Enterpriseを選ぶ場合は、Windows 10/11 Enterprise・Microsoft Intune・Microsoft Entra ID P1のライセンスが別途必要です。
21. Ericom(株式会社アシスト)

イスラエルのEricom Softwareが開発し、国内では株式会社アシストが総代理店として販売するクライアント仮想化ソリューションです。サーバー側で動くWindowsのデスクトップやアプリケーションに手元の端末から接続する方式で提供されます。主力の「Ericom Connect」は10万ユーザー規模の同時アクセスに対応する設計です。
「AccessNow」はHTML5対応のブラウザから業務環境へ接続する機能で、私物端末に専用クライアントを入れる必要がありません。対応する接続元としてMac・Linux・Chromebook・タブレットなどが挙げられており、Windowsパソコン以外も業務に使わせたい場合の候補になります。
業務アプリケーションとデータはサーバー側で処理され、端末には画面が転送されます。ただし端末にデータを残さない仕組みについての明示的な説明は公式ページになく、私用領域の扱いとあわせて確認が必要です。料金はEricom Connectが10名の指名ユーザーでライセンス330,000円、年間サポート75,000円で、30日間の評価版も用意されています。
BYOD管理ツールの料金相場と費用の内訳
ここからは、稟議に必要な金額を組み立てるために、タイプごとの費用感と月額以外にかかるものを整理します。以下の金額は各社が2026年8月時点で公表している料金にもとづくもので、非公開の製品は問い合わせが必要です。
タイプ別の月額レンジ
端末ごと管理するMDMタイプは、国産の製品が1台あたり月額300〜330円前後に集まります。これに加えて、契約単位の基本料や初期費用が別途かかる製品があります。
一方、海外製やパソコンまで統合管理する製品は課金の単位も水準も異なり、1ユーザーあたり月額1,000円台の製品や、50台単位の年額で20万円台からという製品もあります。すでにMicrosoft 365やGoogle Workspaceを契約している場合は、その契約に含まれる管理機能を使えるかどうかで、追加費用の有無が変わります。
端末を管理せず業務データを預けないリモートアクセスタイプは、ユーザー単位の課金が中心です。公表価格のある製品では1IDあたり月額300〜720円程度で、これに加えてテナント単位の基本料を設ける製品や、10ユーザー単位の年額ライセンスで販売する製品があるため、単価だけを並べても総額の比較にはなりません。
1ライセンスあたり月額換算200円という参考価格を示す製品もありますが、これは500ライセンスをまとめて購入した場合の金額で、少人数で始める場合の単価ではありません。
業務環境ごと切り離す仮想環境・データレスタイプは幅が最も広く、データを端末に残さないだけの製品はライセンスあたり月額500円程度から、クラウド上に業務用パソコンを用意する製品は1ユーザーあたり月額5,000円台からとなります。後者は業務端末そのものをクラウドに置き換えるため、他のタイプとは費用の性質が異なります。
月額以外にかかる費用(初期費用・最低ライセンス数・契約期間)
初期費用は製品によって差が大きく、無料の製品と数万円かかる製品に分かれます。設定作業を提供元に代行してもらう場合は、別途の作業費が発生することもあります。
総額を左右しやすいのは最低ライセンス数です。1台から契約できる製品がある一方で、5ライセンス・10ライセンス・30ID・50ID・100ID・200IDを下限とする製品もあります。私物端末を使う従業員が10人程度の企業が200ID下限の製品を検討すると、実際に使う人数と支払う金額が大きく乖離します。
契約期間の単位も確認が必要です。月額表記の製品でも年間契約を前提とするものがあり、年額でしか販売していない製品もあります。試験導入から始めたい場合は、無料枠や無料トライアルの有無とあわせて確認しておくと、社内の合意を得やすくなります。
公表されている料金で、私物スマートフォン50台を1年間使う場合を組み立ててみます。端末ごと管理するタイプでは、初期費用19,800円+月額基本料2,100円+1台あたり300円という料金体系の製品なら、初年度は19,800円+(2,100円+300円×50台)×12か月で約225,000円です。初期費用0円・1台あたり330円の製品であれば、330円×50台×12か月で198,000円になります。
端末を管理しないタイプでは、テナント基本料15,000円+1IDあたり360円という体系の製品で、(15,000円+360円×50ID)×12か月=396,000円。1IDあたり450円で基本料のない製品なら450円×50ID×12か月=270,000円です。
同じ50人でも、基本料の有無と単価の組み合わせで年額に倍近い開きが出ます。いずれも税別・2026年8月時点の公表料金にもとづく計算で、実際の見積もりは各社に確認してください。
社用端末を配る場合との費用の比べ方
私物端末の活用を検討する動機の多くは、社用端末を配る費用を抑えることにあります。ただし、両者を比べるときに管理ツールの月額だけを見ると、判断を誤ります。
社用端末を配る場合は端末の購入費または割賦、回線契約、初期設定の作業、故障時の代替機まで含めた費用がかかります。私物端末に切り替えると、これらは不要になる一方で、管理ツールの利用料に加えて、通信費の負担分を従業員に支払うかどうかという論点が新たに生じます。後述の「私物端末の業務利用規程」で扱う費用負担の決め方が、そのまま比較の前提になります。
社用端末を配る側の金額と手間が分からないと、この比較は成り立ちません。会社が貸与する端末を管理するMDMの月額料金、紛失時の遠隔ロック、初期設定(キッティング)をどこまで任せられるかを製品ごとに確認したい場合は、以下の記事をご覧ください。
法人向けMDMおすすめ13選を比較|月額料金の実額と紛失時ロック・キッティング対応、BYOD運用の要件を解説
業務用スマートフォンやタブレットの配布台数が増え、Excel台帳での管理や、紛失発覚時の一次対応に限界を感じていませんか。従業員に貸与した端末は、契約情報の管理、キッティングとアプリ配布、機能制限、そして紛失や退職時のリモートロック・データ…
会社から何が見えるのか|業務領域と私用領域を分けられる範囲
私物端末の管理で最も反発を招くのが、「自分の端末を会社に覗かれる」という受け止め方です。ここからは、OSの仕組みとして会社が取得できる情報・できない情報を、AndroidとAppleの公式ドキュメントに沿って切り分けます。

Android Enterprise の仕事用プロファイルで分けられる範囲
Androidには、端末の中に業務専用の区画をつくる「仕事用プロファイル」という仕組みがあります。Googleはこの仕組みで組織が扱える範囲を次のように説明しています。
デバイスに仕事用プロファイルが設定されている場合、組織は仕事用のアプリやデータを確認、管理できます。個人用のアプリ、データ、使用状況の詳細については、組織は確認することもアクセスすることもできません。
注: 組織は、個人用プロファイル内のアプリやデータを確認することはできません。
出典:組織がデバイスに適用するポリシー|Android Enterprise ヘルプ(Google)
ただし、まったく何も見えないわけではありません。個人所有の端末に仕事用プロファイルを追加した場合、組織はモデル・シリアル番号・デバイスID・電話番号・携帯通信会社・OS・MACアドレスといった端末そのものの情報を確認できると、同じページに記載があります。従業員に説明するときは、この範囲を伏せずに伝えたほうが信頼を得られます。
位置情報の扱いには注意が必要です。組織が確認できるのは「仕事用プロファイル内のアプリのネットワークアクティビティと位置情報」であり、私用アプリの位置情報は対象外です。また、仕事用プロファイルで設定したVPNは個人用プロファイルの通信を経由させないことも明記されています。
会社側が実施できる操作は、仕事用プロファイル内のデータの作成・アクセス・削除、パスコードの最小要件の適用、仕事用プロファイルへのアクセス停止、両プロファイル間で共有できる内容の制限などです。退職時には仕事用プロファイルを削除することで、その中のデータだけが端末から消えます。
出典・参考資料(2件)
iOS のユーザ登録(User Enrollment)で分けられる範囲
iPhoneとiPadでは、私物端末向けに設計された登録方法が用意されています。Appleの現行ドキュメントでの名称は「アカウント駆動型ユーザ登録」で、その位置づけは次のように説明されています。
アカウント駆動型ユーザ登録はBYOD(自分のデバイスを持ち込み、組織ではなくユーザがデバイスを所有する)を導入するために設計されています。
(中略)アカウント駆動型ユーザ登録では、ITチームが管理できるのは組織アカウント、設定、およびデバイス管理サービスでプロビジョニングされる情報のみで、ユーザの個人アカウントは管理できません。
出典:ユーザ登録とデバイス管理|Appleプラットフォーム導入(Apple、2024年12月11日公開)
Appleは登録方法ごとに管理サービスで使える情報と機能を一覧で公開しています。アカウント駆動型ユーザ登録では、管理対象データのリモート消去、パスコードの要求、管理対象アプリのインストールと構成などが可能な一方、シリアル番号などの一意のデバイス識別子の照会、電話番号の照会、すべてのアプリのリストの照会、端末全体のリモート消去はできません。
従業員の不安に直接答える事実として押さえておきたいのは、次の項目が登録方法を問わず一律で「禁止」とされている点です。デバイスの位置情報の照会、アプリ使用頻度の収集、個人用のカレンダー・連絡先・メール・メモ・リマインダーの表示、iMessageまたはSMSメッセージの表示、通話記録の表示、Safariブラウザの履歴の表示。
会社が貸与する端末に使う自動デバイス登録であっても、これらは行えません。
業務データの分離は、暗号鍵のレベルで行われます。登録が完了するとOSが別の暗号化鍵を作成し、端末の登録を解除するとその鍵が破棄されるとAppleは説明しています。管理対象アプリは登録解除時に必ず削除されるため、退職時に業務データだけを無効化できる仕組みがOS側に用意されていることになります。
出典・参考資料(2件)
端末にデータを置かないタイプでの見え方
専用アプリや専用ブラウザの中だけで業務を行わせる方式では、会社が関与するのはそのアプリの内側に限られます。端末そのものを登録しないため、OSの管理機能を通じて端末情報を取得すること自体が発生しません。
画面転送で会社のパソコンやクラウド上の業務環境を操作させる方式も同様で、私物端末側に残るのは接続用のアプリだけです。ただし、どの製品も接続元の端末を識別する情報や利用の記録は取得します。「何も記録されない」と説明すると後で食い違いが生じるため、製品ごとの公式の記載にあたることになります。
私用領域の扱いについて、各社が公式に明記している内容は次のとおりです。従業員への説明資料をつくるときは、ここに挙げた文言をそのまま引ける製品を選ぶと話が早くなります。
| サービス | moconavi | SmartGate | smartBYOD | IBM MaaS360 | Jamf Pro | ManageEngine Endpoint Central Cloud | Google エンドポイント管理 | 上記以外の掲載製品 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 私用領域について公式が明記していること | 従業員がどのアプリをインストールしているかなど、プライベート領域を管理者に知られることはないと明記 | SmartGateの中だけセキュリティが保たれ、SmartGateより外の情報は取得しないと明記 | 取得は最低限のデータのみとし、社員を監視でけん制する運用からの脱却を掲げる | 仕事用プロファイル内は完全に管理する一方、個人のアプリ・データ・行動への可視性と制御権は持たないと明記。BYOD Privacy Settings で企業アプリカタログ以外の個人アプリを管理者から見えなくできる | ユーザ登録では組織のデータのみを削除でき、写真やドキュメントなどの個人データは保護されると明記 | 会社所有端末とBYODで適用ポリシーを分け、ユーザーのプライバシーに影響が出ないようにすると明記 | 仕事用プロファイルでは個人用のアプリ、データ、使用状況は組織に公開されないと明記 | 公式に明記なし(端末にデータを残さない設計であることの説明にとどまるものを含む) |
※2026年8月時点で各社の公式サイト・公式ドキュメントを確認した結果です。「公式に明記なし」は公開情報で確認できなかったことを示し、私用領域を取得することを意味しません。
従業員に説明するときの伝え方
説明の順番は、「何が見えないか」から入るより、「何が見えるか」を先に示したほうが納得を得やすくなります。見えない範囲を強調してから見える範囲が出てくると、隠していた印象を与えるためです。
そのうえで、公式ドキュメントの該当箇所を資料に添えると説得力が変わります。会社の言い分ではなくOSの提供元が公開している仕様として示せるため、「本当にそうなのか」という疑問をその場で解消できます。Androidでは仕事用プロファイルの設定時に、利用規約と取得・記録の対象となるデータの詳細を従業員自身が確認したうえで同意する流れになっている点も、あわせて伝えられます。
私物パソコン(Windows・Mac)を業務利用するときの制約
私物端末の話はスマートフォンを前提に語られることが多く、私物パソコンの扱いは情報が手薄になりがちです。実際には、パソコンのほうが選択肢が限られ、確認すべき条件も多くなります。
スマートフォン向けツールでは私物パソコンを管理できない
スマートフォンとタブレットの管理を主目的に設計された製品は、パソコンを管理対象に含めていないことがあります。含めている製品でも、パソコン向けは別料金として設定されている場合が多く、台数分の費用が別途かかります。
逆に、私物パソコンにデータを残さないことを主眼とした製品群は、スマートフォンに対応していません。スマートフォンとパソコンの両方を業務に使わせたい場合は、1製品ですべてをまかなおうとせず、それぞれに適した製品を組み合わせる前提で検討したほうが現実的です。
対応OS・エディションの制限(Windows Homeなど)
私物パソコンで特に確認が必要なのが、Windowsのエディションです。法人向けの管理製品にはWindows 11 Pro以上を動作要件とするものがあり、量販店で個人が購入するパソコンに多いHomeエディションでは動かないことがあります。
同じ製品でも、会社支給機向けと私物端末向けで対応エディションが分かれているケースがあります。導入を決めてから従業員のパソコンが要件を満たしていないと判明すると、対象者を絞るか製品を選び直すことになるため、候補を絞る段階で動作環境のページまで確認しておくと手戻りを防げます。
Macについても同様で、Windows専用として提供されている製品は少なくありません。従業員の私物パソコンにMacが含まれる場合は、対応の有無を早い段階で確認する必要があります。
私物パソコンにデータを残さないという選択肢
私物パソコンを会社の管理下に置くことへの抵抗が強い場合や、対応エディションの壁に当たった場合の代替案が、端末にデータを残さない方式です。クラウド上に用意した業務用パソコンにブラウザから接続する方法、社内のパソコンを画面転送で操作する方法、端末内のデータを単体では復元できない状態にして保管する方法があります。
いずれも私物パソコンのローカルに業務データが蓄積されないため、退職時に端末から回収すべきデータが残りません。パソコンを管理するのではなく、業務環境そのものを端末の外に置くという発想の転換になります。
このうち、端末にデータを残さないままいま使っているパソコンを活かす製品群は「データレスクライアント」と呼ばれます。データの保存先やオフラインで使えるかどうかで方式が分かれ、VDI(デスクトップ仮想化)とは費用のかかり方も変わります。方式ごとの違いと製品を広く比べたい場合は、以下の記事で整理しています。
BYOD管理ツールとは?
BYOD管理ツールは、従業員の私物端末を業務に使わせるにあたって、業務データだけを会社の管理下に置き、私用のデータには踏み込まない状態をつくるためのツールです。ここまで使ってきた用語を、あらためて整理しておきます。
BYOD(私物端末の業務利用)とは
BYOD(Bring Your Own Device)は、従業員が個人で所有するスマートフォン・タブレット・パソコンを業務に使うことを指します。会社が端末を用意しないため調達費用がかからない一方、端末の所有者が従業員である以上、会社が端末を自由に初期化したり私用の領域を覗いたりすることはできません。
この「会社の所有物ではない端末で、会社のデータをどう守るか」という制約が、BYOD管理ツールが解こうとしている課題です。会社が貸与する端末の管理とは前提が異なります。
MDM・MAM・EMM・MCMの違い
私物端末の管理を調べていると、似た略語がいくつも出てきます。管理する対象がそれぞれ異なります。
| 略語 | MDM(モバイルデバイス管理) | MAM(モバイルアプリケーション管理) | EMM(エンタープライズモビリティ管理) | MCM(モバイルコンテンツ管理) |
|---|---|---|---|---|
| 管理する対象 | 端末そのもの | 業務用アプリと、その中のデータ | 端末・アプリ・コンテンツ・IDの総称 | 業務で扱うファイル・文書 |
| 私物端末での使われ方 | 端末に管理プロファイルを入れ、遠隔ロックやポリシー適用を行う。OSの分離機能と組み合わせると業務領域だけを管理できる | 端末を管理下に置かず、業務アプリ単位でデータの持ち出しや保存を制御する。私用アプリには関与しない | MDMとMAMを含む上位概念として使われる。製品名としてはUEM(統合エンドポイント管理)と呼ばれることも多い | 業務ファイルの閲覧・保存・共有の範囲を制御する。EMMの一機能として提供されることが多い |
製品を比べるときに実務上効いてくるのは、MDMとMAMの線引きです。端末を管理対象に登録させるのか、業務アプリだけを制御するのかで、従業員に求める手続きも、会社が取得できる情報の範囲も変わります。
BYODとCYOD・COPEの違い
私物端末の活用には、会社と従業員のどちらが端末を所有するかで複数の形があります。CYOD(Choose Your Own Device)は、会社が用意した複数の候補から従業員が機種を選ぶ方式で、端末の所有者は会社です。COPE(Corporate Owned, Personally Enabled)は、会社が支給した端末の私的利用を認める方式を指します。
いずれも端末は会社の所有物なので、会社は端末全体を管理でき、必要なら初期化もできます。本記事が扱うBYODだけが、端末の所有者が従業員である点で管理の前提が異なります。
私物端末の業務利用はどこまで広がっているか
私物端末が業務に入り込む前提そのものは、すでに整っています。総務省の令和8年版情報通信白書は、2025年の世帯保有率について次のように記載しています。
デジタルを活用する際に必要となるインターネットなどに接続するための端末について、2025 年の情報通信機器の世帯保有率は、「モバイル端末全体」で 97.1%であり、その内数である「スマートフォン」は 91.8%である。また、パソコンは 64.4%となっている
出典:令和8年版 情報通信白書 第Ⅱ部第1章第11節「デジタル活用の動向」|総務省
スマートフォンは9割超の世帯に行き渡っている一方、パソコンは64.4%にとどまります。私物パソコンを前提にした運用が全従業員に適用できるとは限らないことが、この差から読み取れます。
対して、ルールの整備は追いついていません。情報処理推進機構(IPA)が2025年5月に公表した中小企業向けの実態調査(有効回答4,191社)は、次の設問を置いています。
個人所有の情報機器を業務で利用する場合のセキュリティ対策を明確にしていますか?
出典:2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書(2025年5月)調査票 Q80 項目21|独立行政法人情報処理推進機構
この設問に「明確にしている」と回答した企業は、同報告書によれば全体の2割強にとどまります。端末は行き渡っているのに、業務で使うときの決めごとを整えている企業は少数派で、この差が私物端末の業務利用が黙認のまま放置されやすい理由でもあります。
私物端末を業務利用するメリット(会社側・従業員側)
ここからは、私物端末の業務利用を社内で提案するときに使える便益を、会社側と従業員側の両方の視点から整理します。どちらか一方の都合だけで進めると、運用が定着しにくくなります。
会社側のメリット:端末調達・維持費の削減とシャドーITの可視化
最も分かりやすいのは費用面です。従業員の人数分の端末を購入し、回線を契約し、初期設定を行い、故障時の代替機を用意するという一連の負担がなくなります。人の増減が多い組織ほど、端末の手配と回収に費やしていた時間も減らせます。
見落とされがちなもう一つの効果が、すでに起きている私物端末の業務利用を表に出せることです。会社が認めていないだけで実際には私物のスマートフォンで業務連絡や資料のやり取りが行われている場合、その状態は会社から一切見えません。正式に認めて管理ツールを入れることで、どの端末で何が扱われているかを把握できる状態に変わります。
従業員側のメリット:2台持ちの解消と使い慣れた端末での業務
従業員にとっては、社用と私用で2台を持ち歩く負担がなくなることが最も実感しやすい変化です。外出の多い職種では荷物が減り、充電やソフトウェア更新といった端末の世話も1台分で済みます。
操作に慣れた自分の端末をそのまま使えるため、新しい機種の使い方を覚える必要もありません。会社側から見ても、端末の操作に関する問い合わせが減るという副次的な効果が期待できます。
私物端末を業務利用するときのリスクと注意点
ここからは、管理せずに黙認している状態で何が起きうるかを具体的に見ていきます。いずれも、管理ツールと運用ルールの両方がそろって初めて抑えられるものです。
紛失・盗難による情報漏えい
私物端末は勤務時間外も持ち歩かれるため、社用端末より紛失・盗難に遭う機会が多くなります。加えて、画面ロックの設定やOSの更新が従業員任せになっていると、拾得者が中身を見られる状態のまま失われることもあります。
会社が管理していない端末では、紛失の連絡を受けても打てる手がありません。業務データを遠隔で消すことも、業務システムへの接続を止めることもできず、被害の範囲すら把握できない状態になります。
シャドーIT・私用クラウドへの業務データ持ち出し
私物端末には、従業員が個人で使っているクラウドストレージやメッセージアプリが入っています。業務ファイルを扱う手段が用意されていないと、手元にある使い慣れた手段で送ってしまうことになります。
この経路で持ち出された業務データは、会社の管理外の場所に置かれたまま残り続けます。退職後も個人のアカウントに残っている可能性があり、後から回収することもできません。
マルウェア感染と古いOSの放置
OSやアプリの更新を従業員の判断に任せていると、脆弱性が残ったままの端末が業務に使われ続けます。私用の利用範囲が広いぶん、業務専用の端末より不審なアプリやリンクに触れる機会も多くなります。
管理ツールの中には、OSのバージョンや画面ロックの設定が条件を満たさない端末からの接続を止められるものがあります。従業員に注意喚起を繰り返すより、条件を満たさない端末は業務システムに入れないという仕組みで担保するほうが確実です。
従業員の反発でルールが形骸化する
私物端末の管理で最も多いつまずきは、技術的な問題ではなく従業員の抵抗です。「自分の端末を会社に監視される」と受け取られると、管理ツールの導入自体が進まなくなります。
導入できたとしても、納得が得られていなければ、管理対象外の端末で業務連絡を続けるという抜け道が残ります。表向きはルールがあるのに実態は変わらないという状態になり、かえって現状把握が難しくなります。会社から実際に何が見えるのかを事実として示せるかどうかが、この分かれ目になります。
労働時間・時間外連絡の管理が難しくなる
手元の端末で業務のメールやチャットが受け取れる状態は、勤務時間の内外の境目を曖昧にします。就業時間後や休日に業務連絡へ対応した時間をどう扱うかは、セキュリティとは別の論点として残ります。
技術的な対策としては、業務アプリへの接続を許可する時間帯を制限できる製品もあります。運用面では、時間外の連絡に関する取り決めを規程に盛り込み、対応が必要な場合の扱いを事前に決めておくことになります。
私物端末の業務利用規程と従業員の同意|導入前に決めること
ツールを選んでも、社内の決めごとがないままでは運用は始まりません。ここからは、導入と並行して決めておく5つの項目を扱います。
対象者・対象端末・対象業務の範囲を決める
最初に決めるのは、誰のどの端末で何をしてよいかの線引きです。全従業員を対象にするのか、外出の多い部署に限るのか、雇用形態や業務委託先まで含めるのかで、必要なライセンス数も選ぶ製品も変わります。
対象端末では、スマートフォンだけを認めるのか私物パソコンまで含めるのかを決めます。あわせて、OSのバージョンや画面ロックの設定など、業務利用を認める最低条件も定めておくと、後から個別に判断する手間がなくなります。
対象業務については、メールとスケジュールの確認までとするのか、ファイルの編集や基幹システムへのアクセスまで認めるのかで、必要な方式が変わります。閲覧までなら端末にデータを残さない方式で足りますが、編集作業まで含めるなら業務環境を切り離す方式が候補になります。
通信費・通話料の負担と公私分計
私物端末を業務に使わせる以上、通信費と通話料をどう扱うかは避けて通れません。会社が全額補助するのか、定額の手当を支給するのか、業務利用分を実費で精算するのかを決めます。
従業員に費用を負担させる定めを置く場合は、就業規則への記載が必要になります。厚生労働省はテレワークのガイドラインで、労働基準法の条文と結びつけて次のように示しています。
労使のどちらがどのように負担するか、また、使用者が負担する場合における限度額、労働者が使用者に費用を請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等において規定しておくことが望ましい。特に、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされている(労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)第 89 条第5号)。
出典:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(令和3年3月25日改定)|厚生労働省
このガイドラインはテレワークを前提にしたものですが、私物端末の通信費という論点は共通します。就業規則の作成義務は常時10人以上の労働者を使用する事業場に課されるものである点も、労働基準法第89条とあわせて確認しておくとよいでしょう。
実務上は、定額の手当を支給する方法と、業務利用分を按分して精算する方法に分かれます。同ガイドラインは在宅勤務の通信費について「実際の費用のうち業務に要した実費の金額を在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえて合理的・客観的に計算し、支給することも考えられる」としており、どちらかを義務づけてはいません。
管理ツールの中には、業務利用分の通話を会社側の契約に振り分けられるものもあり、精算の手間を減らす手段として検討できます。
従業員の同意取得と誓約書
私物端末から会社が情報を取得することについて、まず押さえておきたいのは、法が求めているのは本人の同意そのものではないという点です。個人情報保護委員会は、従業者を対象とするモニタリングを実施する場合の留意点を次のように示しています。
個人データの取扱いに関する従業者の監督、その他安全管理措置の一環として従業者を対象とするビデオ及びオンラインによるモニタリングを実施する場合は、次のような点に留意することが考えられます。なお、モニタリングに関して、個人情報の取扱いに係る重要事項等を定めるときは、あらかじめ労働組合等に通知し必要に応じて協議を行うことが望ましく、また、その重要事項等を定めたときは、従業者に周知することが望ましいと考えられます。
○モニタリングの目的をあらかじめ特定した上で、社内規程等に定め、従業者に明示すること
出典:「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A A5-7|個人情報保護委員会
○モニタリングの実施に関する責任者及びその権限を定めること
○あらかじめモニタリングの実施に関するルールを策定し、その内容を運用者に徹底すること
○モニタリングがあらかじめ定めたルールに従って適正に行われているか、確認を行うこと
求められているのは、目的を特定して社内規程に定め、従業者に明示し、責任者と運用ルールを決めて、そのとおりに運用されているかを確認することです。この4点がそのまま、規程に書くべき項目になります。
誓約書は、明示した内容を従業員が理解したことの証跡として実務上有用です。個人情報保護法は、本人から直接書面で個人情報を取得する場合、あらかじめ利用目的を明示しなければならないと定めています(第21条第2項)。誓約書を使うなら、まず何のために端末情報を取得するのかを書くことになります。
誓約書に盛り込む項目としては、業務利用を認める端末の条件、会社が取得する情報の範囲とその目的、紛失時の連絡手順、退職時のデータ削除への協力、費用負担の取り扱いが挙げられます。会社が取得する情報の範囲は、前述の「会社から何が見えるのか」で確認した公式の記載に沿って具体的に書くと、認識の食い違いを防げます。
出典・参考資料(2件)
退職・紛失時のデータ削除フロー
製品にセレクティブワイプの機能があるかどうかと、実際にそれを運用で回せるかどうかは別の問題です。誰がいつ何をするかを決めておかないと、いざというときに動けません。
紛失の場合は、従業員から情報システム部門への連絡経路を、休日や夜間も含めて決めておきます。連絡を受けた側が業務データの削除や接続の停止を行う権限を持っているか、担当者が不在のときに誰が代わるかまで決めておくと、対応が止まりません。
退職の場合は、人事部門からの退職連絡と、情報システム部門での削除作業をつなぐ手順が必要です。最終出社日にアカウントを止めるのか、退職日をもって業務領域を削除するのかを決め、作業したことの記録を残す形にしておきます。
情シス・人事労務・経理でそれぞれ決めておくこと
私物端末の業務利用は、情報システム部門だけで完結しません。関係する部門ごとに決めるべきことが分かれます。
情報システム部門は、対象端末の条件、管理ツールの設定、取得する情報の範囲、紛失・退職時の作業手順を担います。人事労務部門は、就業規則への反映、誓約書の様式、時間外の業務連絡の取り扱いを決めます。個人情報保護委員会が示す留意点にある「あらかじめ労働組合等に通知し必要に応じて協議を行う」という部分も、人事労務部門の担当範囲です。
経理部門は、通信費の手当や実費精算の方法と、その支給が給与課税の対象になるかどうかを整理します。3部門のどれかが決まらないまま導入を進めると、運用開始後に従業員からの問い合わせが宙に浮きます。
BYOD管理ツール導入の進め方
ここからは、製品を絞り込んだあとに何から着手するかを順に見ていきます。ツールの選定と並行して社内の調整を進めておくと、導入後の定着が早くなります。
現状の私物端末利用を可視化する
最初にやることは、いま誰がどの端末で何をしているかを把握することです。私物端末の業務利用を認めていない企業でも、実態としては使われていることが少なくありません。
部署ごとの聞き取りに加えて、業務システムやグループウェアの接続元の記録を見ると、想定していなかった端末からのアクセスが見つかることがあります。ここで把握した実態が、対象者と対象業務を決める材料になります。
私物端末に限らず、社用パソコンやソフトウェアのライセンスまで含めて「誰が何を使っているか」を台帳として持ちたい場合は、IT資産管理ツールが受け皿になります。どこまでを管理範囲に含めるかで製品も料金体系も変わるため、全体像から検討したい方は以下の記事をご覧ください。
タイプを絞ってトライアルする
候補を3つのタイプのいずれかに絞ったら、実機での試用に進みます。無料トライアルや無料枠を公式に案内している製品もあるため、該当するものがあれば少人数で実際の業務を回してみるのが確実です。
試用時に確認したいのは、機能の一覧ではなく日常の使い勝手です。業務アプリの起動にどれだけ手間がかかるか、通信が不安定な場所でも使えるか、私用の操作を妨げないかといった点は、カタログでは分かりません。情報システム部門だけでなく、実際に使う部署の従業員に触ってもらうと判断材料が増えます。
従業員への説明と展開
展開の前に、会社が何を見られて何を見られないのかを従業員に説明し、同意を得ます。ここを飛ばして一斉に配布すると、設定を求めるたびに個別の問い合わせと反発が発生し、展開が止まります。
展開は一斉ではなく、部署単位で段階的に進めるほうが安全です。最初の部署で出た質問と手順の詰まりを反映してから次に進めば、後続の負担を減らせます。
運用開始後に起きること
導入直後に増えるのが、情報システム部門への問い合わせです。私物端末は機種もOSのバージョンもばらばらで、社用端末のように「同じ画面を見ながら説明する」ことができません。手順書を機種別に用意するか、よくある質問を社内に公開しておくと負担を抑えられます。
もう一つ起きやすいのが、導入したのに使われないという状態です。専用アプリの操作が煩雑だったり、業務に必要な機能が足りなかったりすると、従業員は元の手段に戻ります。定期的に利用状況を確認し、使われていない部署があれば理由を聞き取って、設定や運用ルールを調整していくことになります。
まとめ
BYOD管理ツールは、私物端末をどこまで会社が管理するかで3つのタイプに分かれます。自社の端末構成と、従業員に受け入れてもらえる管理の範囲を先に決めると、候補は自然に絞られます。
端末を会社の管理下に置いても差し支えない組織で、紛失時の確実な対処を優先するなら、端末ごと管理するタイプが向きます。私物端末に会社の管理を入れることへの抵抗が強い場合や、業務委託先の端末にも展開したい場合は、端末を管理せず業務データを預けないタイプが選択肢になります。私物パソコンで業務アプリや重い作業をさせたいなら、業務環境ごと切り離すタイプが受け皿になります。
候補を絞るときは、従業員数と最低ライセンス数の噛み合わせを先に見ると早く進みます。私物端末を使う従業員が数十人であれば、1台から契約できる製品や無料枠のある製品が現実的な出発点になり、数百ID単位の契約を前提とする製品はその時点で候補から外れます。3つのタイプそれぞれに、小さく始められる料金体系の製品と、規模が要る製品の両方があります。
自社の端末構成と予算から候補を絞りたい場合は、本記事の選定診断ツールと比較表を併せてご利用ください。
どのタイプを選ぶ場合でも、ツールの導入だけでは運用は始まりません。対象者と対象業務の範囲、通信費の負担、従業員の同意、退職時のデータ削除の手順を決めて初めて、私物端末の業務利用が会社の制度として機能します。
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BYOD管理ツールでよくある質問(FAQ)
Q. BYOD管理ツールとは何ですか?
A. BYOD管理ツールとは、従業員の私物端末を業務に使わせるにあたって、業務データだけを会社の管理下に置き、私用のデータには踏み込まない状態をつくるためのツールです。
実現の方式は3つに分かれます。私物端末に管理用のプロファイルや専用アプリを入れて業務領域を管理する「端末ごと管理するMDMタイプ」、専用アプリや専用ブラウザの中だけで業務をさせる「端末を管理せず業務データを預けないリモートアクセスタイプ」、業務環境そのものを端末の外に置く「業務環境ごと切り離す仮想環境・データレスタイプ」です。どれを選ぶかは、私物端末にどこまで踏み込むかで決まります。
Q. BYODで使うMDMとMAMは何が違いますか?
A. MDM(モバイルデバイス管理)は端末そのものを、MAM(モバイルアプリケーション管理)は業務用アプリとその中のデータを管理する仕組みで、私物端末では「端末を登録させるか、業務アプリだけを制御するか」という違いになって表れます。
MDMでも、Androidの仕事用プロファイルやiOSのユーザ登録(Appleの現行ドキュメントでは「アカウント駆動型ユーザ登録」)を使えば、端末の中の業務領域だけを管理する形にできます。
一方でMAMのように端末を登録させない使い方には制約もあり、Microsoftは端末を登録しない場合にアプリの配布・証明書プロファイル・社内Wi-FiやVPNの設定を配れないと公式ドキュメントに明記しています。従業員に求める手続きの重さと、会社が制御できる範囲は表裏の関係にあります。
Q. BYOD管理ツールを入れると、会社は私物端末の写真や私用アプリまで見られるようになりますか?
A. 私物端末向けに用意された登録方式を使う限り、私用のアプリ・データ・使用状況は会社から見えないと、GoogleとAppleの公式ドキュメントが明記しています。
Googleは仕事用プロファイルについて「個人用のアプリ、データ、使用状況の詳細については、組織は確認することもアクセスすることもできません」と説明しています。Appleはアカウント駆動型ユーザ登録について「ITチームが管理できるのは組織アカウント、設定、およびデバイス管理サービスでプロビジョニングされる情報のみ」と説明しています。
ただし、まったく何も見えないわけではありません。Androidでは、個人所有の端末に仕事用プロファイルを追加した場合でも、モデル・シリアル番号・電話番号・携帯通信会社・OS・MACアドレスといった端末そのものの情報を組織が確認できると同じヘルプに記載があります。
従業員に説明するときは、この範囲を伏せずに伝えるほうが納得を得やすくなります。詳しくは「会社から何が見えるのか」で整理しています。
出典・参考資料(2件)
- 出典:組織がデバイスに適用するポリシー|Android Enterprise ヘルプ(Google)
- 出典:ユーザ登録とデバイス管理|Appleプラットフォーム導入(Apple)
Q. 会社は私物端末の位置情報を取得できますか?
A. iPhone・iPadでは、Appleが「デバイスの位置情報を照会する」ことをすべての登録方法で「禁止」と示しており、管理サービスから端末の位置情報を照会することはできません。Androidで組織が確認できるのは、仕事用プロファイル内のアプリのネットワークアクティビティと位置情報に限られ、私用アプリの位置情報は対象外です。
一方で、位置情報の取得を独自のオプション機能として提供している製品もあります(SPPMのジオフェンス、BizMobile Go! Directの位置情報取得など、いずれも月額110円/台のオプション)。何をどこまで取得するかは、選ぶ製品と会社側の設定によって変わります。取得する場合は、その目的をあらかじめ特定して社内規程に定め、従業員に明示することが求められます。
出典・参考資料(2件)
- 出典:Appleデバイスでの登録方法|Appleプラットフォーム導入(Apple)
- 出典:組織がデバイスに適用するポリシー|Android Enterprise ヘルプ(Google)
Q. 従業員が私物端末への管理ツール導入を拒否したら、BYODは進められませんか?
A. 端末を会社の管理下に置く方式だけが選択肢ではないため、拒否が出ることを前提に、端末を管理しない方式や社用端末を貸与する別ルートを用意しておくのが現実的です。私物端末は従業員の所有物であり、導入を一律に強制できるかは労働契約や社内規程の内容によります。
拒否の理由が「自分の端末を会社に覗かれたくない」という点にあるなら、専用アプリや専用ブラウザの中だけで業務をさせるリモートアクセスタイプなら、端末そのものを登録させずに済みます。業務上どうしても端末の管理が必要な役割については、その対象者にだけ社用端末を貸与する例外を規程に書いておくと、拒否した従業員の業務が止まりません。
Q. 私物端末に入れた管理プロファイルや業務アプリを、従業員が勝手に削除することはできますか?
A. 私物端末では従業員側で管理を解除できる余地が残るため、解除された端末が業務システムに入れない状態にしておくことで担保します。ただし、解除がそのまま情報漏えいにつながるわけではありません。
Googleは仕事用プロファイルを削除するとその中のローカルデータがすべて削除されると説明し、Appleもユーザーが登録を解除した場合には暗号化鍵が破棄され、管理対象アプリは登録解除時に必ず削除されると説明しています。解除された時点で、業務データは端末から消えます。
実務で問題になるのは、解除したまま業務を続けられてしまう場合です。管理下にない端末からは業務システムに接続できないようにする仕組み(デバイス認証、接続元の端末を限定する機能など)を備えているかを、ツール選定の段階で確認しておくとよいでしょう。
Q. 退職者が非協力的な場合でも、私物端末に残った業務データを消せますか?
A. 端末に業務データを保存させない方式であれば、アカウントを止めるだけでアクセスを断てるため、退職者の協力がなくても対応できます。端末内に業務データが残る方式では、遠隔での削除指示を出すことはできますが、その指示が実際に端末へ届くかどうかは端末の通信状況に左右されます。
この差は製品選定の分かれ目になります。人の出入りが多い組織や、退職時に端末を操作してもらえない事態が想定される場合は、端末にデータを置かないリモートアクセスタイプや仮想環境・データレスタイプのほうが、運用の確実性が高くなります。
あわせて、退職時のデータ削除への協力を誓約書に盛り込み、人事部門からの退職連絡と情報システム部門の削除作業をつなぐ手順を決めておきます。詳しくは「私物端末の業務利用規程と従業員の同意」で扱っています。
Q. パート・アルバイトや業務委託先の私物端末も、BYOD管理ツールの対象にできますか?
A. 対象にできます。とくに端末を管理下に置かないリモートアクセスタイプは、会社が支給していない端末にも配りやすく、業務委託先や短期のスタッフにも展開しやすい方式です。
ただし、決めごとを書く場所が相手によって変わります。雇用している従業員であれば就業規則と誓約書に、業務委託先であれば業務委託契約や覚書に、業務データの取り扱いと契約終了時の措置を定めることになります。会社が取得する情報の範囲を明示する点は、どちらでも共通です。
費用面では、人の入れ替わりが多いほど課金単位が効いてきます。ID単位で毎月の増減を反映できる製品や、最低ライセンス数の小さい製品を選ぶと、稼働していない分の支払いを抑えられます。
Q. 私物パソコンと私物スマートフォンで、別々のBYOD管理ツールを使ってもよいですか?
A. 問題ありません。むしろ、1製品で両方をまかなおうとせず、それぞれに適した製品を組み合わせる前提で検討したほうが現実的です。
スマートフォンとタブレットの管理を主目的に設計された製品は、パソコンを管理対象に含めていないことがあります。逆に、私物パソコンにデータを残さないことを主眼とした製品はスマートフォンに対応していません。無理に1製品へ寄せると、どちらかの要件が満たせなくなります。
組み合わせる場合の注意点は運用側にあります。管理画面が分かれるぶん設定と棚卸しの手間が増え、費用も別々に発生します。既存のID基盤と連携できる製品を選んでおくと、入社・異動・退職のたびに同じ作業を二度行う状態を避けられます。
Q. すでにMDMを導入している端末でも、別のBYOD管理ツールを併用できますか?
A. 構成プロファイルを使わない方式の製品には、既存のMDMと併用できると説明しているものがあります。専用アプリの中で業務を完結させるタイプには、MDMを導入していなくても単独で使え、MDM導入済みの端末でも併用できるとする製品があります。
Microsoftも、Intuneのアプリ保護ポリシーは「あらゆるモバイル デバイス管理 (MDM) ソリューションとの依存関係なしで使用できます」と公式ドキュメントに明記しています。
一方で、同じ端末にMDMを重ねて登録することは想定されていない場合があります。「既存のMDMを乗り換えるのか」「MDMは残して別方式のツールを足すのか」を先に整理したうえで、各社に併用の可否を確認するのが確実です。
Q. 会社支給の端末と私物端末が混在していても、同じBYOD管理ツールで管理できますか?
A. 多くの製品が会社支給端末と私物端末の両方に対応しており、1つの管理画面で扱えます。ただし、所有者の区分ごとにポリシーを分けられるかどうかは製品によって差があります。
会社所有の端末と個人所有の端末では、そもそも会社が実施できる操作の範囲が異なります。Androidの場合、会社所有の端末には個人用プロファイル側にもポリシーを適用できますが、個人所有の端末で管理対象になるのは仕事用プロファイルの中だけです。会社所有と従業員所有を区別してポリシーを分ける機能を、標準で備える製品もあります。
混在させる場合は、管理画面上で所有区分を判別できるか、区分ごとに別のポリシーを当てられるかを確認しておくと、運用開始後に設定を作り直さずに済みます。会社支給端末側の製品と料金は、以下の記事で比較しています。
Q. BYOD管理ツールは月額いくらから始められますか?
A. 各社が公表している料金では、端末ごと管理するMDMタイプの国産製品が1台あたり月額300〜330円前後、リモートアクセスタイプが1IDあたり月額300〜720円程度、仮想環境・データレスタイプは月額500円程度から5,000円台までと分布しています(2026年8月時点)。
海外製やパソコンまで統合管理する製品は、これより単価が高い水準になります。
ただし総額は月額単価だけでは決まりません。契約単位の基本料や初期費用の有無、最低ライセンス数(1台から使える製品もあれば、200ライセンス以上を前提とする製品もあります)、年間契約かどうかの3点を合わせて確認する必要があります。タイプ別の内訳は「料金相場と費用の内訳」で整理しています。
多くの製品が14〜30日程度の無料トライアルや無料枠を用意しているため、少人数で実際の業務を回してから稟議に進む進め方もとれます。
Q. 無料で使えるBYOD管理ツールはありますか?
A. 無料枠を設けている製品はあります。25エンドポイントまで全機能を無料で使える製品があるほか、すでに契約しているMicrosoft 365やGoogle Workspaceに含まれる管理機能を、追加費用なしで使える場合もあります。
ただし無料枠には台数や機能の上限があります。現状の把握と小規模な試験導入に使い、対象者を広げる段階で有償プランに切り替える前提で考えるのが現実的です。
新しい製品を検討する前に、既存契約に含まれる管理機能で自社の要件を満たせないかを確認しておくと、追加費用そのものを避けられることがあります。
Q. 私物端末から社内(オンプレミス)のシステムにアクセスさせることはできますか?
A. できます。ただし、クラウドサービスへの接続だけで済む場合と違い、社内に中継用のサーバーや接続用の端末を置く構成が必要になる製品があります。
クラウド上の業務サービスに接続するだけであれば専用の機材を用意せずに使える製品が多い一方、社内システムへ通信を引き込む場合は中継サーバーの設置(レンタルで提供する製品もあります)や、社内のパソコンを画面転送で操作する構成が前提になります。接続先が社内にあるかクラウドにあるかで、初期費用と構築の手間が変わります。
候補を絞る段階で、私物端末から使わせたい業務システムを一覧にし、それぞれの接続方式と必要な機材を各社に確認しておくと、導入後の手戻りを防げます。
Q. 私物端末の通信費は、会社が負担しなければなりませんか?
A. 私物端末の通信費を会社が負担しなければならないと一律に定めた法令は見当たりません。ただし、従業員に費用を負担させる定めを置く場合には、その事項を就業規則に規定しなければならないとされています(労働基準法第89条第5号。就業規則の作成義務は常時10人以上の労働者を使用する事業場が対象です)。
厚生労働省はテレワークのガイドラインで、労使のどちらがどのように負担するかをあらかじめ話し合い、就業規則等に規定しておくことが望ましいとしています。在宅勤務の通信費については、実費を勤務の実態を踏まえて合理的・客観的に計算して支給することも考えられると示しており、定額の手当と実費精算のどちらかを義務づけてはいません。
なお、同ガイドラインはテレワークを前提にした文書であり、オフィス勤務中の私物スマートフォン利用にそのまま当てはまるものではありません。
出典・参考資料(2件)
- 出典:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(令和3年3月25日改定)|厚生労働省
- 出典:労働基準法 第89条|e-Gov 法令検索
Q. 社内規程がないまま、BYOD管理ツールだけ先に導入してもよいですか?
A. 従業員の端末から情報を取得する目的をあらかじめ特定して社内規程等に定め、従業員に明示することが求められるため、規程の整備とツールの導入は並行して進めるのが安全です。
個人情報保護委員会は、従業者を対象とするモニタリングを実施する場合の留意点として、目的をあらかじめ特定して社内規程等に定め従業者に明示すること、実施に関する責任者と権限を定めること、実施ルールを策定して運用者に徹底すること、ルールどおり行われているかを確認することを挙げています。この4点は、そのまま規程に書くべき項目になります。
実務では、対象者・対象端末・対象業務の範囲、費用負担の扱い、紛失時と退職時の手順まで決めてから展開すると、運用開始後の問い合わせと反発を減らせます。決めておく項目は「私物端末の業務利用規程と従業員の同意」で扱っています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A A5-7|個人情報保護委員会
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















