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中小企業の与信管理のやり方|進め方・与信限度額の決め方・回収リスクの備えを解説

中小企業の与信管理のやり方のサムネイル画像

掛け取引が中心の中小企業では、取引先へ商品やサービスを先に渡し、代金は後日まとめて受け取ります。もし取引先の支払いが滞れば、売上は立っているのに現金が入らず、自社の資金繰りを圧迫します

この焦げ付きを防ぐ取り組みが与信管理です。取引先の信用力を見極め、いくらまで掛けで取引してよいか(与信限度額)を決め、取引が始まった後も相手の変化を見張る一連の管理を指します。ただ、専任の与信部署を置けない中小企業では、進め方が分からないまま営業担当の感覚頼みになりがちです。

本記事では、取引前の情報収集から与信限度額の具体的な決め方、取引開始後のモニタリング、それでも残る回収リスクへの備えまでを、中小企業が実際に手を動かせる形で順を追って解説します。自社の与信ルールづくりの土台としてお役立てください。

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中小企業に与信管理が必要な理由

まず、与信管理とは何か、なぜ中小企業ほど必要なのかを手短に押さえます。ここが腹落ちすると、後述する手順や限度額の決め方の意味が掴みやすくなります。

与信・与信管理とは

取引先に代金の支払いを一定期間待つことを認めるのが「信用を与える(与信)」です。与信管理は、その与信によって生じる焦げ付きのリスクを抑える取り組みを指します。取引先の経営状態に応じて、取引の可否や取引の規模を決めるという考え方です。

取引先に対して売上債権の支払いを一定期間猶予することを、「信用を与える(与信)」と表現する。売り上げを伸ばしていく過程で増えていく売上債権や与信金額による焦げ付き発生などのリスクを抑える取り組みを「与信管理」という。これは、取引先の経営状態(倒産可能性)に応じて、取引の可否や取引の規模を決めるという手法だ。

出典:J-Net21 経営ハンドブック「債権管理・回収の知識と手法」|中小企業基盤整備機構

「信用管理」「債権管理」とほぼ同じ意味で使われることもあります。与信管理は、取引先を調べて信用力を評価する信用調査と、いくらまで掛けで取引してよいかの上限を決めて運用する与信限度の設定・運用の2つが柱です。

売掛金の焦げ付きが連鎖倒産につながる

自己資本の厚い大企業と違い、中小企業は手元資金に余裕が少なく、大口の売掛金が1件焦げ付くだけで資金繰りが立ち行かなくなることがあります。取引先の倒産に引きずられて自社まで倒れる連鎖倒産のリスクも、掛け取引には常に潜んでいます。

企業倒産は現在も高い水準で発生しています。2026年7月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)は、東京商工リサーチの集計で1,028件(前年同月比6.9%増)、帝国データバンクの集計で1,037件(前年同月比8.5%増)でした。取引先の支払い不能はどの業種にも起こり得るという前提で、与信管理に取り組む必要があります。

出典・参考資料(2件)

専任担当を置けない中小企業の与信管理の現実

中小企業では、経理担当が本来業務のかたわら与信も見る、あるいは営業担当が取引可否をその場の印象で判断する、といった運用が実情です。人手も時間も限られ、与信の基準やルールが社内に整備されていないため、判断が属人的になりやすい構造があります。

だからこそ、少人数でも回せる型を先に持っておくことが効きます。取引前に何を見るか、限度額をどう決めるか、取引開始後に何を監視するかを決めておけば、担当者が代わっても判断がぶれません。次章から、その型を具体的に組み立てていきます。

中小企業の与信管理の進め方【4つのステップ】

与信管理は、大きく「情報収集 → 信用力の評価 → 与信限度額の設定 → 取引開始後のモニタリング」という流れで進めます。信用調査で相手を評価し、与信限度を設定・運用するという2つの業務を軸にした、一般的な進め方です。

中小企業の与信管理の進め方を4ステップで示した図。STEP1 情報を集める(登記・決算書・信用調査・現場情報で取引先を知る)、STEP2 信用力を評価する(定量・定性・商流の3つの角度で取引の可否と規模を判断)、STEP3 与信限度額を決める(掛けで取引してよい上限を設定)、STEP4 モニタリングする(取引開始後も定期的に見直し限度額を上げ下げ)の順に矢印でつながる流れ。

STEP1 取引先の情報を集める

新規の掛け取引を始める前に、相手を知るための情報を集めます。集める情報は大きく3種類あります。

  • 自社で確認できる情報:商業登記(会社の実在・資本金・役員・設立時期)、ホームページ、決算書の提示依頼、取引先の評判やこれまでの支払い状況
  • 信用調査会社の情報:帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業信用調査。評点や倒産確率、財務データを外部の目で得られる
  • 現場・商流の情報:訪問した際の事業所の様子、在庫や設備の状態、仕入先・販売先との関係など、書類に表れない兆候

あわせて、取引先が反社会的勢力でないかの確認(反社チェック)も取引開始前に済ませます。反社チェックは、新聞・ニュース記事の検索や専用データベース、信用調査会社のオプションなどで行います。自社だけで決算書や信用情報を集めきれない場合は、信用調査会社のレポートを併用すると効率的です。

STEP2 集めた情報で信用力を評価する

集めた情報をもとに、取引先の信用力を評価します。見る角度は3つに整理できます。

  • 定量評価:決算書の数字から、財務の安全性・収益性・資金繰りを読む(次章のチェックリストで詳述)
  • 定性評価:経営者の姿勢、事業の将来性、業界の動向、取引先の主要な販売先など、数字に表れない要素
  • 商流評価:お金と商品がどう流れているか。仕入から販売、入金までの流れに不自然さがないか

これらを総合して、取引先を「安全に取引できる相手か」「取引額を抑えるべき相手か」に区分します。社内で格付け(ランク分け)の基準を決めておくと、この評価を次のステップの限度額に機械的につなげられます。

STEP3 与信限度額を決める

信用力の評価をもとに、その取引先に「売掛金の残高として、いくらまで許すか」の上限を決めます。これが与信限度額(与信枠)です。倒産の可能性が低い相手には限度を大きく、可能性が高い相手には小さく設定するのが基本的な考え方です。

限度額をいくらに置くかは、取引の内容、取引先の信用状況、これまでの取引実績、そして自社がどこまで貸し倒れに耐えられるか(貸し倒れ負担能力)を総合して決めます。骨子は、月商をもとにした必要枠と、自社の純資産から見た上限の両面で見積もり、低い方に収めることです。具体的な計算方法は「与信限度額の決め方」で詳しく解説します。

STEP4 取引を始めた後もモニタリングして見直す

与信管理は取引開始時の審査で終わりではありません。取引先の経営状態は時間とともに変わるため、取引開始後も定期的に信用力を見直し、限度額を上げ下げします。入金の遅れや支払条件の変更要請といった変化の兆しを早くつかむことが、焦げ付きの回避につながります。詳しくは「取引開始後のモニタリング」で解説します。

取引前チェックリスト|取引先の何をどこまで確認するか

ここでは、STEP1・STEP2 で行う取引前の確認を、そのまま自社のチェックシートに転用できる形で整理します。まず確認項目の一覧を示し、次に決算書のどこを見るか、最後に決算書を出してもらえない相手をどう評価するかを解説します。

確認項目一覧(取引前チェックシート)

確認項目見るポイント
商業登記会社が実在するか、資本金・設立時期・役員に不自然な点がないか。頻繁な商号・所在地の変更は注意
決算書(2〜3期分)財務の安全性・収益性・資金繰り。単年でなく複数期の推移で赤字や債務超過の傾向を見る
支払条件・取引条件掛けの期間(サイト)、締め支払いのタイミング、想定する取引金額が自社の体力に見合うか
支払遅延・トラブルの兆候過去の支払遅延、値引き・支払条件見直しの要請、手形ジャンプの有無
反社チェック取引先が反社会的勢力・関係者でないか。取引開始前に必ず確認
現場・評判事業所の様子、在庫・設備の状態、業界内での評判、主要な販売先・仕入先

すべてを毎回フルに調べる必要はありません。取引金額が小さい相手は登記と支払条件の確認まで、大口取引や継続取引になる相手は決算書と信用調査まで、というように、リスクの大きさに応じて確認の深さを変えると省力化できます。

決算書のどこを見るか(財務指標と安全性の目安)

決算書を入手できたら、支払い能力に直結する安全性の指標を中心に確認します。代表的な3つの指標と、財務分析で一般によく使われる目安は次のとおりです。いずれも行政が定めた基準ではなく実務上の目安で、業種によって適正水準は大きく異なるため、幅を持って捉えてください。

指標計算式安全性の目安(一般的な目安・業種差あり)
自己資本比率自己資本 ÷ 総資本 × 100概ね30%以上が一つの目安、40〜50%以上で優良とされる。低いほど借入依存が大きい
流動比率流動資産 ÷ 流動負債 × 100120〜150%以上が安全圏の目安、200%以上で優良。100%を割ると短期の支払余力に懸念
当座比率当座資産 ÷ 流動負債 × 100100%以上が一つの目安。流動比率より厳しめに短期の支払い能力を見る

各指標の数値は決算書(貸借対照表)から拾えます。自己資本は純資産の部の合計、総資本は資産の部の合計(負債+純資産)です。流動資産・流動負債は1年以内に現金化・支払う資産と負債を指し、当座資産は流動資産のうち現預金・受取手形・売掛金など、棚卸資産を除いた換金性の高い資産です。

これらは単年の数値だけで判断せず、2〜3期分の推移で悪化傾向がないかを見ることが大切です。加えて、売上に対して売掛金や在庫が不自然に膨らんでいないかも、資金繰りの詰まりを示すサインとして確認します。

出典・参考資料(1件)

決算書を出してもらえない取引先をどう評価するか

中小企業には決算書を開示する義務がなく、新規の取引先に提示を求めても断られることは珍しくありません。決算書が手に入らないときは、次のような代替手段で信用力を推し量ります。

  • 信用調査会社の評点・レポート:帝国データバンクや東京商工リサーチの企業評点は、決算書がなくても外部の評価として使える
  • 現場情報:訪問時の事業所の活気、設備・在庫の状況、従業員の様子などから経営の実態を推し量る
  • 商流・取引条件の工夫:初回は前金や代金引換にする、少額から取引を始めて実績を見ながら限度額を上げる、といった条件面での保全

決算書がないことを理由に取引を諦めるのではなく、確認できる情報の範囲で限度額を小さく設定し、取引実績を積みながら見直していくのが現実的です。

与信限度額の決め方|代表的な計算式と目安

与信管理でもっとも悩ましいのが、「結局いくらまで掛けで取引してよいか」という限度額の設定です。唯一の正解はなく、代表的な考え方が複数あります。ここでは主要な決め方を紹介し、そのうえで実額に落とす計算例を示します。

限度額を決める代表的な考え方

与信限度額の設定基準は、大きく次の3つの視点に分けられます。1つの式に頼らず、複数の視点で試算して低い方を採るのが安全側の運用です。

  1. 自社の純資産を基準にする:万一貸し倒れても自社が耐えられる範囲に限度額を抑える考え方。「自社純資産 × 一定割合 × 取引先の格付けウェイト」で算出する
  2. 自社の売上債権を基準にする:自社全体の売掛金残高のうち、1社に集中しすぎない範囲に抑える考え方
  3. 取引先の仕入債務を基準にする:取引先が支払っている仕入代金の規模から、自社が占めてよいシェアを見積もる考え方

このほか、取引先を信用力でランク分けし、格付けに応じて限度額の上限を段階的に決める方式もあります(例:上位ランクは仕入債務の30%まで、下位ランクは数%まで、といった配分)。いずれの方法でも、算出した金額をそのまま使うのではなく、自社の貸し倒れ負担能力と照らして無理のない水準に調整することが欠かせません。

出典・参考資料(2件)

実額での当てはめ例

取引予定額から必要な限度額を見積もる方法として、月商をもとにした計算式があります。1か月あたりの取引見込み額に、代金を回収するまでの期間(回収サイト)を掛けて、必要な与信枠を求めます。

必要な与信限度額 =(月間の取引見込み額 × 売掛期間の月数)+(月間の取引見込み額 × 手形期間の月数)

たとえば、ある取引先との取引が月100万円、代金回収まで2か月(締めの翌月末払い)で手形がない場合、必要な与信枠は「100万円 × 2か月 = 200万円」と見積もれます。取引が拡大して月300万円になれば、必要枠は600万円へ膨らみます。これはあくまで「取引に必要な枠」の目安です。

一方、自社の体力から見た「許してよい上限」は、純資産をもとに算出します。たとえば純資産3,000万円の会社が、社内で「1社あたり純資産の10%まで」を与信方針とし、信用力が中位(格付けB相当)の相手にウェイト0.5を掛けると、上限は「3,000万円 × 10% × 0.5 = 150万円」となります。割合やウェイトの水準は各社の方針で定めます。

この例では、取引に必要な枠200万円が、自社体力から見た上限150万円を上回っています。その場合は、取引額を150万円以内に抑えるか、後述の保全手段で超過分のリスクを移すかを検討します。必要枠が上限に収まっていれば、その金額を与信限度額として設定できます。複数の方法で試算し、低い方に合わせるのが安全側の運用です。

与信限度額の決め方を示した図。取引に必要な枠(月間の取引見込み額×回収までの月数、計算例:月100万円×2か月=200万円)と、自社体力から見た上限(純資産×一定割合×取引先の格付けウェイト、計算例:純資産3,000万円×10%×0.5=150万円)の2つを試算し、低い方に収める。この例では必要枠200万円が上限150万円を上回るため、取引額を150万円以内に抑えるか超過分を保全手段でカバーする。数値は本文の計算例。
出典・参考資料(1件)
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取引開始後の焦げ付きを防ぐモニタリングと見直し

取引先の経営状態は日々変わります。取引開始時に問題なくても、その後に業績が傾くことは珍しくありません。焦げ付きを防ぐには、取引開始後の継続的なモニタリングが欠かせません。

見張るべき変化の兆しには、次のようなものがあります。こうしたサインが出たら、電話や訪問で状況を確かめ、必要に応じて信用調査会社の最新情報も取り寄せて、限度額の縮小や取引条件の見直しを検討します。「入金遅延が2回続いたら新規の出荷を止めて再審査する」といった対応の基準を決めておくと、判断が遅れません。

  • 入金の遅延や、支払条件の見直し・支払サイトの延長を求められる
  • 経営者が急に不在がちになる、キーとなる社員が相次いで退職する
  • 資産の売却、急な安売り、取引銀行の変更など、資金繰りの逼迫をうかがわせる動き

すべての取引先を同じ頻度で見直すのは非効率です。取引額の大きい相手や信用力に不安のある相手は頻度を上げ、小口で安定している相手は年1回の定期見直しにするなど、リスクに応じて濃淡をつけると省力化できます。取引先の企業情報の変化を自動で通知する与信管理サービスを使えば、少人数でも変化の察知を仕組み化できます。

自社の与信ルールに落とし込む(与信規程・チェックシートの考え方)

ここまでの手順を担当者の頭の中だけに置くと、人が代わった途端に判断がぶれます。属人化を防ぐには、与信のルールを文書にまとめておくことが有効です。与信規程には、一般に次のような要素を盛り込みます。

  • 与信限度額の決め方:どの基準・計算方法で限度額を算出するか
  • 決裁権限:誰がいくらまでの与信を承認できるか(金額に応じた承認者の段階)
  • モニタリングのルール:見直しの頻度、監視する変化の兆し、限度額を見直すトリガー
  • 回収と与信停止のルール:入金遅延が起きたときの督促の手順、取引を止める基準

最初から完璧な規程を作る必要はありません。取引前チェックシートと簡単な限度額の算定ルールから始め、運用しながら決裁権限やモニタリングのルールを足していくと、無理なく社内に定着します。大切なのは、与信判断を「なんとなく」から「根拠を持って説明できる」状態に変えることです。

回収リスクに備える保全手段とサービスの活用

どれだけ丁寧に与信管理をしても、取引先の突然の倒産による貸し倒れをゼロにはできません。自力の管理に加えて、回収リスクを外部に移す・和らげる保全手段を組み合わせておくと安心です。ここでは主な選択肢を整理し、それぞれがどんな会社・場面に向くかを比較します。

保全手段の全体像(手段ごとのカバーの仕組みと向く場面)

保全手段はカバーの仕組みが手段ごとに異なります。「損失を穴埋めするもの」と「資金繰りを下支えするもの」、「自力管理を効率化するもの」を区別して選ぶことが大切です。

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取引信用保険経営セーフティ共済(倒産防止共済)保証(保証型)ファクタリング売掛保証・掛け払い代行(BtoB後払い)与信管理システム
カバーの仕組み取引先の支払い不能で被った損害の一定割合を保険金で補償取引先が倒産したとき、無担保・無保証で共済金を借り入れられる(損失の補償ではなく資金の貸付)売掛債権に保証をかけ、貸し倒れ時に保証金を受け取る与信審査・請求・回収を代行し、与信通過した債権は未回収でも保証信用情報の収集・スコアリング・取引先の変化通知などを効率化(リスクの移転はしない)
特徴・向く場面損害保険会社が提供。多数の取引先をまとめて包括契約でカバーしたい会社向け。補償は損害の全額ではなく一定割合中小機構が運営する公的制度。掛金は損金算入でき、少額から備えたい中小企業向け。あくまで貸付で、返済負担が残る点に注意特定の取引先の貸し倒れリスクだけをピンポイントで移したい場合に。支払遅延は保証対象外となる場合がある与信から回収までの実務ごと外部に任せたい会社向け。専任担当がいない中小企業と相性が良い自力管理を続けつつ省力化・精度向上をしたい会社向け

取引信用保険は、取引先の支払い不能で被った損害の一定割合を保険金として支払う保険商品です。原則として継続的な取引先を対象とし、多数の取引先をまとめて包括契約でカバーできます。

経営セーフティ共済は、掛金月額5,000円〜20万円(5,000円単位、総額800万円まで積み立て可能)で備える公的制度です。取引先が倒産した際に「回収困難となった売掛金債権等の額」か「掛金総額の10倍(最高8,000万円)」のいずれか少ない額まで、無担保・無保証で借り入れられます。

保証型ファクタリングは、売掛債権に保証料を払って保証をかけ、貸し倒れが生じた際に保証金を受け取る仕組みです。資金調達を目的とする買取型ファクタリングとは異なります。

出典・参考資料(3件)

同じ「損失に備える」手段でも、取引信用保険と売掛保証では、どの取引先をどこまで対象にするかの設計自由度が異なります。売掛保証を手がける事業者は、両者の違いを次のように説明しています。

阿久津氏
リコーリース株式会社 BPO本部 BPO営業部 マーケティング課 課長
阿久津氏
独自インタビューより

保証設計の柔軟性が一番大きいと思います。たとえば取引信用保険の場合、保険対象先を選ぶことができず、全取引先を包括的にかけなければならないという制約があります。ファクタリングですと、1社2社の大きな売掛金を現金化するという使い方が中心です。一方、当社の場合は、気になる取引先だけを複数社ピックアップして保証をかけることができます。保証の設定額もお客様ご自身で決めていただけますし、繁忙期には厚く、閑散期には薄くといった調整も可能です。

気になる取引先だけにピンポイントで保証をかけられる売掛保証は、保証範囲や料金体系がサービスごとに大きく異なります。自社の取引先構成に合う一社を選びたい方は、各社の保証内容・料金・ファクタリングとの違いまで比較した以下の記事が参考になります。

与信管理システムそのものの詳しい比較は、専門のまとめ記事に譲ります。ここでは、専任担当のいない中小企業と相性の良い掛け払い代行型のサービスを取り上げます。掛け払い代行は、前述の売掛保証に請求書発行・代金回収・督促の代行まで束ねた型で、与信から回収までの実務をまとめて外部に任せられます。

与信・回収を代行できるサービスの比較

与信審査から請求・代金回収・売掛金保証までを代行できる代表的なサービスを比較します。いずれも、与信を通過した債権は未回収でも保証される点が中小企業にとっての要点です。既存取引の請求・回収を丸ごと外注したいなら請求まるなげロボ、新規取引先に後払いを提供して販路を広げたいならRP掛け払い、と使い分けます。

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サービス名請求まるなげロボRP掛け払い
提供会社株式会社ROBOT PAYMENT株式会社ROBOT PAYMENT
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サービス個別紹介

1. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求まるなげロボの公式サイト。企業間取引の請求・回収を丸ごと代行し売掛金を100%保証するサービスの説明が掲載されている。

請求まるなげロボは、東証グロース上場の株式会社ROBOT PAYMENTが提供する、企業間(BtoB)取引の請求業務アウトソーシングサービスです。与信審査・請求書の発行と送付・代金回収・入金消込・督促までを一括で代行し、利用企業は請求情報を渡すだけで売掛金サイクルの実務から解放されます。

中小企業にとっての要点は、与信管理と未回収リスクの移転を同時に実現できることです。同社の審査で適格債権と判断され、かつ与信を通過した債権については、入金遅延や貸し倒れが起きても売掛金が100%保証されます(保証は適格・与信通過債権に限られ、無条件ではありません)。与信を通過しなかった取引先分も同じプラットフォームで請求管理でき、全取引を一元化できる点も、専任担当のいない経理部門に向いています。

手数料は公式サイトで「1.0%〜」と案内されています(取引する商材・金額・取引条件によって個別に算出されるため、具体的な水準は見積もりで確認が必要です)。導入時には専任担当による支援が用意され、初めて請求代行を利用する企業でも運用を立ち上げやすい体制が整っています。

2. RP掛け払い(株式会社ROBOT PAYMENT)

RP掛け払いの公式サイト。企業間取引の掛け払い(後払い)決済を代行し与信通過債権を100%保証するサービスの説明が掲載されている。

取引先に後払いを提供しながら、与信のリスクは負わずに掛け取引を広げたい——そんな場面に向くのがRP掛け払いです。請求まるなげロボと同じ株式会社ROBOT PAYMENTが、企業間取引向けの掛け払い(後払い)決済代行として提供しています。与信審査・請求書の発行と送付・代金回収・入金消込・督促までを代行します。

与信を通過した適格債権は、入金遅延や貸し倒れが起きても100%保証されるため、未回収リスクを同社に移せます。利用は法人間取引に限られ、個人事業主は利用できません。手数料率は公式サイト上の複数ページで下限の表記が分かれており、確定した料率と適用条件は見積もり・商談で確認する必要があります。新規取引先の開拓を後払いで後押ししつつ、回収の手間とリスクを抑えたい企業に適した選択肢です。

ここで取り上げた2サービスのほかにも、企業間の掛け払い(後払い)を代行するサービスは数多くあります。手数料や入金サイクル、未回収保証の範囲を横並びで見比べて自社に合う一社を探したい方は、以下の比較記事もあわせてご確認ください。

まとめ

中小企業の与信管理は、「取引前に情報を集めて信用力を評価する」「自社の体力に見合う与信限度額を決める」「取引開始後もモニタリングして見直す」という手順を型にすることから始まります。限度額は唯一の正解がないため、純資産基準や月商をもとにした試算など複数の視点で見積もり、低い方を採る運用が安全です。

そのうえで、自力の管理では防ぎきれない貸し倒れには、取引信用保険・経営セーフティ共済・保証ファクタリング・売掛保証や掛け払い代行といった保全手段を組み合わせます。専任の与信担当を置けない場合は、与信審査から回収・保証までを代行できるサービスを活用すれば、少人数でも回収リスクを抑えながら取引を広げられます。まずは自社に合う手段の資料を見比べ、現実的な運用に落とし込んでください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 与信管理とは何ですか?

与信管理とは、取引先の信用力を見極めて、いくらまで掛けで取引してよいか(与信限度額)を決め、取引開始後も相手の変化を見張る一連の取り組みです。掛け取引では商品やサービスを先に渡して代金を後から受け取るため、取引先の支払いが滞ると売掛金が焦げ付きます。与信管理は、この焦げ付きのリスクを抑えるために、取引先を調べて評価する信用調査と、与信限度額の設定・運用を2つの柱として行います。

Q. 中小企業の与信管理は何から始めればよいですか?

中小企業の与信管理は、取引前チェックシートと、簡単な与信限度額の算定ルールを用意することから始めるのが現実的です。最初から完璧な与信規程を作る必要はありません。

まず取引先の商業登記・決算書・支払条件・反社チェックといった確認項目を一覧にし、限度額は月商をもとにした試算など一つの基準から決められるようにします。運用しながら決裁権限やモニタリングのルールを足していけば、専任担当がいなくても無理なく社内に定着します。

Q. 与信限度額はどのくらいの頻度で見直せばよいですか?

与信限度額の見直しは、取引先のリスクに応じて濃淡をつけ、取引額の大きい相手や信用に不安のある相手は頻度を上げ、小口で安定した相手は年1回程度を目安にすると効率的です。すべての取引先を同じ頻度で見直すのは現実的ではありません。加えて、入金の遅延や支払サイトの延長要請といった変化の兆しが出たときは、定期見直しを待たずにその都度、限度額の縮小や取引条件の見直しを検討します。

Q. 決算書を出してもらえない取引先とは取引しない方がよいですか?

決算書を提示してもらえないだけで取引を諦める必要はなく、信用調査会社の評点や現場情報で信用力を推し量り、限度額を小さく抑えて取引実績を積みながら見直していくのが現実的です。中小企業には決算書を開示する義務がないため、新規の取引先が提示に応じないことは珍しくありません。初回は前金や代金引換にする、少額から取引を始めるといった条件面の工夫でリスクを抑えつつ、取引を続けるなかで信用力を見極めていきます。

Q. 与信管理を社内で回すのが難しいのはどんな会社ですか?

与信管理を社内だけで回すのが難しいのは、経理担当が専任でなく、与信の基準づくりや判断のノウハウを社内に持たない会社です。人手も時間も限られるなかで判断が属人的になりやすく、焦げ付きの兆候を捉えきれないことがあります。こうした場合は、与信審査から請求・回収・売掛金の保証までを代行するサービスを使えば、実務を外部に任せながら未回収リスクを抑えられます。

Q. 取引信用保険と経営セーフティ共済はどう使い分ければよいですか?

両者は、取引信用保険が損害の一定割合を保険金で補償するのに対し、経営セーフティ共済は取引先の倒産時に共済金を借り入れる貸付制度である点が最大の違いです。多数の取引先をまとめてカバーしたい場合は取引信用保険、少額の掛金から公的制度で備えたい場合は経営セーフティ共済が向きます。

経営セーフティ共済は掛金月額5,000円〜20万円(5,000円単位)で総額800万円まで積み立てられ、掛金は損金に算入できます。ただし共済金はあくまで貸付のため、返済負担が残る点に注意が必要です。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)|中小企業基盤整備機構(https://tkyosai.smrj.go.jp/

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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