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M&Aアドバイザーとは?M&A仲介との違い・業務内容・費用相場・選び方を解説

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後継者不在で会社を譲りたい、あるいは事業拡大のため他社の買収を検討したい——そう考え始めたときに、取引先や銀行から「M&Aアドバイザー」「M&A仲介会社」といった言葉を耳にします。名称が入り混じっていて、まず「M&Aアドバイザーとは何者で、具体的に何をしてくれる人なのか」を押さえたい方は多いのではないでしょうか。

本記事では、M&Aアドバイザーの役割と業務内容、M&A仲介との違い、費用相場(レーマン方式)、依頼から成約までの流れ、会社の分類、選び方のチェックリストまでを、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」を参照しながら解説します。依頼先を絞り込む前の判断材料として活用してください。

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M&Aアドバイザーとは

M&Aアドバイザーとは、売り手または買い手のどちらか一方と契約し、その依頼者の利益のためにM&Aの成立を支援する専門家です。相手候補の探索、企業価値評価(バリュエーション)、基本合意やデュー・ディリジェンス(DD)の段取り、条件交渉、最終契約書のレビュー、クロージング後の統合支援(PMI)まで、一連の実務を代理人として担います。

実務の場面では「M&Aアドバイザリー」「ファイナンシャル・アドバイザー(FA)」といった呼称もほぼ同じ意味で使われます。

この位置づけは、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」の第1章 用語集で明確に定義されています。

FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側(※)又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する(業務範囲は個別の支援機関ごとに異なる。)。(中略)FA契約とは、FA が譲り渡し側(※)・譲り受け側の一方との間で結ぶ契約をいい、これに基づく業務をFA業務という。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章 用語集(17〜18頁

ガイドラインでは、M&Aアドバイザーの具体的な業務範囲を「M&Aのプロセスごとに提供する主な業務の例」として一覧で示しています。バリュエーションは「時価純資産法、マルチプル法、DCF法等の複数のアプローチにより実施」、マッチングは「依頼者の希望やM&A実施後のシナジー等も踏まえた候補先の探索、選定、紹介」「企業概要書の作成・提供」と定義されています。

基本合意の交渉・締結では「トップ面談の調整(事前準備〜当日の詳細な段取りのサポートを含む)」「基本合意書の作成支援」、DDでは「実施スケジュールの調整・管理」や各種DD(ビジネス・財務・法務・税務)の「実施又は実施支援」と、代理人としての実務が段階ごとに具体化されています。

抽象的に「M&Aの成功を支援する専門家」と語られることが多いM&Aアドバイザーですが、実像は上記のような各プロセスに紐づく具体的な代理業務の集合体です。相手を「探す」だけでなく、評価する・作る・調整する・確認する、という工程を代わりに動かす存在だと捉えると、依頼を検討する段階でイメージが具体化します。

M&AアドバイザーとM&A仲介の違い

ここからは、読者からの疑問がもっとも多い「M&Aアドバイザーと『M&A仲介』は何が違うのか」を、契約上の立場と利益相反リスクの観点で整理します。中小企業庁のガイドラインは、両者を別の契約類型として明確に定義しています。

仲介者とは、譲り渡し側(※)・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する(業務範囲は個別の支援機関ごとに異なる。)。(中略)仲介契約とは、仲介者が譲り渡し側(※)・譲り受け側双方との間で結ぶ契約をいい、これに基づく業務を仲介業務という。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章 用語集(17頁

立場・報酬・利益相反リスクの対比表(5観点)

この定義の違いを、依頼者の視点で扱いやすい5観点にまとめると次の通りです。

観点M&Aアドバイザー(FA・片手)M&A仲介(両手)
契約上の立場売り手または買い手の一方と契約し、その依頼者の代理人として動く売り手・買い手双方と契約し、両者の間に立って合意形成を支援する
報酬の出所契約した一方の依頼者からのみ受領(片手取引)売り手・買い手の双方から受領(両手取引)
利益相反リスク依頼者と利害が一致するため構造的な利益相反は生じにくい両当事者の利益が対立し得るなかで調整するため、構造的な利益相反リスクがあると中小企業庁が指摘
DDでの立場依頼者の代理人として、財務・法務・税務DDに実質的に踏み込める両当事者への公平性の観点から、DDの実施スケジュール調整・資料整理の支援に限定される
向いている売り手・買い手希望条件(価格・雇用・スキーム)の追求を優先したい売り手や、投資判断の妥当性を独立に確認したい買い手相手候補が広く見つかることを重視する売り手・買い手、あるいは双方の合意形成を短時間で進めたい当事者

ガイドラインは、仲介者の構造的な利益相反について次のように整理しています(「なお、利益相反が直ちに違法となるものではない」との一節が続きます)。

譲り渡し側・譲り受け側は、M&Aの当事者であり、M&Aの成立、その内容や条件等に関し、それぞれの利益が対立し得る関係にある。仲介者は、このような関係にある両当事者から依頼を受けて、M&Aが成立するよう利害を調整する業務を行うが、一方の利益を優先し、又は一方の利益を害するリスクがあると指摘されている(仲介者における利益相反のリスク)。なお、利益相反が直ちに違法となるものではない。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第2章Ⅱ5「仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」(98〜100頁

ガイドラインは、同章で仲介者に対して具体的に禁止される行為も5点列挙しています。要点は、譲り受け側からの追加手数料や譲渡額差分を報酬として要求する行為、リピーター依頼者を優遇する行為、一方当事者への情報の秘匿や偽伝達などです。仲介契約を検討する際は、これらが業務体制上どのように防止されているかを事前に確認すべき論点と位置づけられています。

DD段階では立場の違いが特に表面化します。ガイドラインは「仲介者の場合は、譲り渡し側における開示資料の整理・作成のサポートやDDの実施スケジュールの調整・管理といった直接的にDDの調査内容の検討や調査を踏まえた評価・判断に影響しない範囲での支援に限る」と明記しており、DDの実質判断は依頼者側またはFAが担う建て付けが読み取れます。

売り手・買い手それぞれに向くのはどちらか

売り手側で「譲渡価格や雇用条件、契約条件を粘り強く追求したい」「利害の一致した代理人が欲しい」というニーズが強い場合は、片手取引のM&Aアドバイザー(FA)が親和性の高い選択肢になります。買い手側で「投資判断の妥当性を独立に検証したい」「バリュエーションや契約条項の妥当性を代理人視点でチェックしたい」場合も同様です。

一方、譲り渡し側・譲り受け側の双方が「まずは相手候補を早く広く見つけたい」「関係者を極力広げず、成立まで短期間で進めたい」というスタンスであれば、両者の間に立つ仲介契約が動きやすい局面もあります。実務では、双方の意向・案件規模・地域性を踏まえて判断します。

参考までに、経営コンサルタントとの違いに触れておくと、経営コンサルは業績改善や中期経営計画などの経営全般の助言が本業で、M&Aプロセスの代理人業務そのものは通常提供しません。M&Aの実行支援を求めるならFAまたは仲介、経営改善や統合後の運営改革まで求めるなら経営コンサル、と役割を分けて考えます。

片手取引のセルサイドFAは会社ごとに料金体系・支援範囲・成約実績が異なるため、複数社の公表資料や見積書を並べて比較することが実務的です。

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M&Aアドバイザーの費用相場

ここからは、費用感が読めず予算設計に踏み出せない方へ向けて、報酬体系の全体像を整理します。中小企業庁のガイドラインは、実務で多く見られる料金体系として次の4種類を示しています。

料金体系として、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の形式が多く見られることから、これらの概要について、以下、整理する。ただし、仲介者・FA の手数料には一般的な法規制がなく、どのような料金体系を採用するかは、あくまで各仲介者・FA による点については留意が必要である(着手金・月額報酬・中間金を設けず、成功報酬のみを設ける仲介者・FA も相当数あるとされる。また、着手金・月額報酬・中間金が成功報酬に含まれるか否かの確認も必要である。)。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅴ1「手数料の種類」(63頁

費用体系の全体像

4種類の手数料は、それぞれ発生タイミング・目安金額・アドバイザー間での採用有無が異なります。

手数料発生タイミング目安金額のレンジ採用の有無(実務)
着手金仲介契約・FA契約の締結時数十万〜数百万円(ガイドラインの計算事例では税抜100万円)採用する会社と採用しない会社に分かれる
月額報酬(リテーナー)契約期間中に月ごと定額数十万〜200万円程度採用する会社と採用しない会社に分かれる
中間金(マイルストーンフィー)基本合意締結時など、案件完了前の一定時点成功報酬の10〜20%相当を先取りする例が多い採用する会社と採用しない会社に分かれる
成功報酬クロージング時など案件完了時後述のレーマン方式で算出。最低手数料の下限を設けるアドバイザーが多いほぼ全てのアドバイザーが採用

ガイドラインが明記するように「着手金・月額報酬・中間金を設けず、成功報酬のみを設ける仲介者・FA も相当数ある」ため、着手金や月額の有無だけで良し悪しは判断できません。各費目の金額と「成功報酬に含まれるか否か」を事前に開示するかどうかを見るのが実務上の目安です。

成功報酬とレーマン方式の階層料率

成功報酬の算定には、業界で広く用いられているレーマン方式が採られる場合が多くあります。ガイドラインは階層料率の一例として次を提示しています。

以上の価額を基に報酬を算定する手法として、レーマン方式が採られることが多い。レーマン方式は、「基準となる価額」に応じて変動する各階層の「乗じる割合」を、各階層の「基準となる価額」に該当する各部分にそれぞれ乗じた金額を合算して、報酬を算定する手法であり、特にM&A専門業者において広く用いられている。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅴ2「レーマン方式及び最低手数料」(64〜65頁
基準となる価額乗じる割合
5億円以下の部分5%
5億円超10億円以下の部分4%
10億円超50億円以下の部分3%
50億円超100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%
レーマン方式の階層料率の一例(ガイドラインは「あくまで一例であり、各階層における価額・割合は各仲介者・FAにより異なる」と付記)。
出典・参考資料(1件)

日本M&Aセンターの手数料ページM&Aキャピタルパートナーズのレーマン方式解説など大手アドバイザーの公表料金でも、ほぼ同一の階層料率が採用されていることが確認できます。ただし基準額(後述)や最低手数料は会社ごとに異なります。

階層方式は具体例で見ると理解しやすくなります。ガイドラインが提示する事例1(譲渡額1億円・株式譲渡・6か月で成約したケース)は次の通りです。

事例1 事業承継・引継ぎ支援センターの登録機関等であるM&A専門業者に依頼したところ、6か月間の業務遂行により、譲渡額1億円の株式譲渡が成立したケース
・着手金100万円(税抜)【成功報酬は別途】
・月額報酬:なし
・中間金:なし
・成功報酬:前述のレーマン方式(基準:譲渡額、最低手数料:500万円(税抜))

手数料
・着手金:100万円×110%=110万円(税込)・・・(a)
・月額報酬:0円
・中間金:0円
・成功報酬:1億円×5%×110%=550万円(税込)・・・(b)
⇒手数料総額:660万円(税込)・・・(a)+(b)
※譲渡額から手数料総額を控除した金額は9,340万円となる。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅴ3「具体例」事例1(66頁

この事例では、譲渡額1億円のうち手取り額はおよそ9,340万円になります。ここでは「最低手数料500万円」の設定があるものの、成功報酬(550万円)が最低手数料を上回るため、レーマン方式の計算どおりの請求になっています。

案件によっては「最低手数料が成功報酬を上回るため最低手数料が優先される」ケースもあります。例えば、譲渡額5,000万円・株価レーマンで成功報酬が本来「5,000万円×5%=250万円」となる案件でも、最低手数料500万円が優先されて請求される仕組みです。譲渡額1億円を下回るあたりから最低手数料が実質的な下限になりやすく、小規模案件では手取り率が目減りしやすい点は事前に確認しておきます。

見落としがちな注意点:報酬基準額の違い(株式価値 vs 企業価値)

レーマン方式の料率階層は業界でほぼ共通ですが、料率を掛ける「基準となる価額」は会社ごとに異なります。中小企業庁「M&A支援機関登録制度 実績報告」は、実務で使われる基準額の類型を次のように整理しています。

主に使われている報酬基準額の例(成功報酬=報酬基準額×報酬率)※①〜④は一例で他のケースもある
①株価レーマン=株式価額
②オーナー受取額レーマン=株式価額+役員借入金
③企業価値レーマン=株式価額+ネット有利子負債 ※ネット有利子負債=有利子負債-現預金等
④移動総資産レーマン=株式価額+有利子負債+その他の負債

出典:中小企業庁 事業環境部財務課「M&A支援機関登録制度 実績報告等について」(第8回中小企業の経営資源集約化等に関する検討会 資料1、令和3年度実績、16頁

同資料の集計では、レーマン方式を採用する387社のうち「株価レーマン」の採用が38.2%と最多で、移動総資産レーマン・企業価値レーマンも一定の割合を占めています。同じ譲渡額でも、株価レーマンと移動総資産レーマンでは報酬額が大きく変わるため、見積り比較の際は「料率だけでなく基準額の定義」を並べて確認することが重要です。

M&Aキャピタルパートナーズが「創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする『株価レーマン方式』を採用しております」と公式に説明しているように、基準額の設定は会社ごとに方針が異なります。

出典・参考資料(4件)

M&Aアドバイザーへの依頼から成約までの流れ

ここからは、依頼を検討する読者が実務の期間感と自分の関与を掴めるように、依頼から成約までの流れを時系列で整理します。中小企業庁のガイドラインは、中小M&Aの「一般的な手続の流れ」として10工程を挙げています。本記事では、そのうち①意思決定・②仲介者/FAの選定を「依頼前の準備」として合流させ、実際に稼働する8ステップで示します。

依頼〜成約までの全体像と期間目安

ガイドラインは、相手が見つかる(マッチング)までの期間と、クロージング後の引継ぎ期間について、それぞれ次のように示しています。

個別のケースにより異なるが、通常、希望する譲り受け側とのマッチングには、数か月〜1年程度の時間を要することが見込まれることから、早期に判断して動き出すことが重要である。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅰ4(1)「早期判断の重要性」(30頁

譲り渡し側は、譲り受け側の希望に応じて、引継ぎ等の作業に適宜協力することが望まれる。こういった作業には、3か月〜1年程度の時間を要することが多いが、個別のケースにおいて異なる。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章Ⅱ3(10)「クロージング後(ポストM&A)」(56頁

マッチングに数か月〜1年、引継ぎに3か月〜1年ですから、初期相談からPMI完了まではおおむね1年〜2年を見込むと現実に近い期間感です。マッチングが早いケースでは初期相談から成約まで半年程度で進む場合もあり、案件規模・希望条件・業界特性によって振れ幅があります。

8ステップの詳細(売り手の関与と期間目安)

依頼後の実務は次の8ステップで進みます。売り手が関与する場面と、アドバイザーが代理で動く場面を分けて記載します。

  1. M&A戦略の立案とスキーム検討:譲渡目的(後継者不在/選択と集中/EXITなど)と希望条件(価格帯・雇用維持・時期)を、アドバイザーとのヒアリングで言語化します。株式譲渡・事業譲渡・会社分割などのスキームもここで方向性を固めます。売り手の関与は主にヒアリングへの回答と資料提供。所要期間はおおむね1〜2か月。
  2. 企業価値評価(バリュエーション):ガイドラインは「時価純資産法、マルチプル法、DCF法等の複数のアプローチにより実施」と定義しています。アドバイザーが決算書・事業計画・KPIを基にレンジを算出し、譲渡希望価格の妥当性を検証します。売り手は開示資料の提供が中心で、算定作業自体はアドバイザーが担当。所要期間は1か月前後。
  3. 相手候補の選定・マッチング(IM作成):アドバイザーが「依頼者の希望やM&A実施後のシナジー等も踏まえた候補先の探索、選定、紹介」を行い、企業概要書(Information Memorandum)や意向表明書の作成支援まで担います。売り手はNDA(秘密保持契約)締結の判断とネームクリア(社名開示)の可否判断を求められます。所要期間は数か月〜1年(前述の30頁の期間目安)。
  4. 基本合意(LOI/MOU)の締結:候補先とのトップ面談や条件交渉を経て、譲渡価額の目安・独占交渉権・DDのスケジュールなどを基本合意書に落とし込みます。アドバイザーは論点整理・条件交渉の調整・基本合意書作成の支援を担当。売り手は最終決裁者としての合意判断を行います。所要期間は1〜2か月。
  5. デュー・ディリジェンス(DD)の受入れ:譲り受け側が外部専門家を起用して、財務・法務・税務・ビジネス・人事などの調査を行います。アドバイザーは「開示資料の整理・作成支援」「DDの実施スケジュールの調整・管理」を担い、必要に応じて「各種DD(ビジネス・財務・法務・税務)の実施又は実施支援」(法務DD・税務DDは外部士業に委託)まで踏み込みます。売り手は資料提出とインタビュー対応が集中的に発生する期間です。所要期間は1〜2か月。
  6. 条件交渉・最終契約(SPA等)の締結:DDで浮上した論点を最終契約に反映します。アドバイザーは「交渉にあたっての論点の洗い出し・整理」「最終契約の内容についての助言」「最終契約に想定した条件が漏れなく盛り込まれているかの確認」を担いつつ、ガイドラインが推奨するように最終的には弁護士等への確認を依頼することが望まれます。売り手は経営者保証の扱い・表明保証条項などの重要論点で意思決定を求められます。所要期間は1〜2か月。
  7. クロージング:譲渡対価の入金確認、株式譲渡の手続、必要に応じた登記手続などをアドバイザーが実行支援します(登記手続は司法書士等の士業に委託)。売り手はクロージング当日の実務手続と関係者への説明が中心。所要期間は1〜2週間程度。
  8. クロージング後の引継ぎ(PMI)支援:譲り受け側からの要請に応じて、業務・取引先・従業員の引継ぎに協力します。ガイドラインは3か月〜1年程度の期間を目安として示しています。アドバイザーの関与範囲は契約により異なり、契約終了後は関与しない場合、PMIまで並走契約する場合など、事前に確認が必要です。

秘密保持は、①〜③のマッチングに入る前段階で必ずNDAを締結し、社名開示のタイミング(ネームクリア)はアドバイザーが売り手の意向を確認しながら管理する建て付けです。ガイドラインの10工程では、NDA締結・情報開示のフェーズがマッチング内で明示されています。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)第1章Ⅱ3「中小M&Aにおける一般的な手続の流れ」(中小企業庁、36〜56頁
  • 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)第2章Ⅱ4(2)①「M&Aプロセスごとに提供する主な業務の例」(中小企業庁、88〜90頁
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M&Aアドバイザーに依頼するメリット・デメリット

費用と流れが掴めた段階で、依頼するかどうかを判断する材料として、代表的なメリット・デメリットを整理します。

メリットとして代表的な3点は次のとおりです。

  • 希望条件を追求できる代理人が付くことで、譲渡価額・雇用条件・契約条件の最大化が図れる
  • DD段階でリスクが早期に洗い出され、成約後のトラブルを回避しやすい
  • 相手候補の探索・企業価値算定・契約書レビューといった実務を任せられ、本業への集中が可能になる

一方で、デメリット・注意点も3点挙げられます。

  • 先の費用体系で見たとおり最低手数料500万円〜の負担が発生する案件が多く、譲渡額が小さい案件ほど手取り率が下がる
  • 交渉が長期化・決裂した場合でも、着手金・月額報酬の一部は返金されないケースがある
  • 情報開示が広がるほど社内外への漏洩リスクが上がるため、NDA運用や関係者コントロールを丁寧に設計する必要がある

実務では、費用負担と本業集中のトレードオフ、そして情報開示と漏洩リスクの兼ね合いをどう設計するかが判断の分かれ目になります。

M&Aアドバイザー会社の主要な分類と代表企業

ここからは、依頼先候補として名前が挙がるM&Aアドバイザー会社の全体像を、5つの分類で示します。

中小企業庁「M&A支援機関登録制度 実績報告」(令和3年度)によれば、登録支援機関2,823者のうち報告対象期間に成約実績のあった723者が扱った譲渡側3,403件について、業態別の内訳は次のとおりです。

M&A専門業者(仲介)2,046件・M&A専門業者(FA)338件・M&Aプラットフォーマー26件・金融機関643件・士業(弁護士・税理士・公認会計士・中小企業診断士)159件・経営コンサル30件・その他161件と、業態別に一定の偏りがあります。

アドバイザー会社の5分類と代表企業

実務では、以下の5類型でおおまかに区分できます。各分類の代表企業と得意領域を並列で見ておくと、自社の規模・目的に合う候補群を絞り込みやすくなります。

分類代表企業(例)対応案件規模の傾向報酬体系の傾向特徴
証券会社・投資銀行野村證券、大和証券、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、JPモルガンなど中堅〜大型(数十億円以上)FA契約、レーマン方式(企業価値・移動総資産基準が中心)クロスボーダー案件・上場企業の資本業務提携などに強み。中小企業向けの窓口は限定的
会計系ファーム(FAS・Big4)デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー、PwCアドバイザリー、EYストラテジー・アンド・コンサルティング、KPMG FAS など中堅〜大型(数十億円以上が中心)FA契約、時間チャージ+成功報酬の複合型が多い財務・税務・法務DD、バリュエーション、モデリング、PMIまで一気通貫。監査法人グループの実務蓄積が背景
独立系M&AブティックM&Aキャピタルパートナーズ、日本M&Aセンター、ストライク、fundbook、M&A総合研究所 など中小〜中堅(数千万〜数十億円)仲介契約が中心(一部FA併用)、レーマン方式+最低手数料中小企業のオーナー承継案件が主戦場。全国ネットワークとマッチング件数の多さが強み
金融機関(銀行・信託)三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、地方銀行、信託銀行 など中小〜中堅FA契約・仲介契約の両方あり、レーマン方式+最低手数料取引先ネットワークを活用した候補紹介、事業承継・後継者難への対応窓口として機能
士業事務所(弁護士・会計士)西村あさひ法律事務所、大手監査法人系グループ、地域の会計事務所 など小規模〜中堅時間チャージ、部分業務ごとの報酬設定法務DD・税務DD・契約書レビューなど専門論点の代理を、既存の顧問関係の延長で担当
M&Aアドバイザー会社の5分類と代表企業・得意領域(一次情報を基に整理)。
出典・参考資料(3件)

独立系M&Aブティックのなかには、売主専任・業界特化などのポジションに絞り込んだ「特化型M&Aアドバイザリー」もあります。両手取引の仲介と異なり片手取引で売主の代理人に徹する立場や、Web3など特定業界に特化して技術DDまで踏み込む立場が代表例です。以下、2社を紹介します。

独立系M&Aブティックの派生:特化型M&Aアドバイザリーの例(2社)

売主専門・業界特化を訴求するセルサイドFA型のサービスは、大手総合ファームとは異なる立ち位置で、中小企業の事業承継や特定業界での売却案件で選択肢に上がります。2社の位置づけを比較表で確認したうえで、個別に見ていきます。

2社のスポット比較表

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サービス名M&A LeadConsensus Base M&A
特化領域売主専門(セルサイド専任)
業種は問わず対応
Web3・ブロックチェーン業界特化
(GameFi/NFT/DeFi/ウォレット/
Layer1・Layer2/DID/ZK技術等)
対応案件規模譲渡企業の売上
5,000万円〜10億円クラスが中心
(公表成約事例7件より)
公式に非公開
報酬体系完全成功報酬制(片手取引)
着手金・中間金・月額報酬0円
成功報酬は譲渡対価×レーマン方式1〜5%
買主からは手数料を受領しない
要問い合わせ
(着手金・成功報酬とも公式非公開)
支援範囲買い手候補の探索・条件交渉サポート
相談〜クロージング〜PMIまで
候補先探索・LOI/MOU締結支援
DDマネジメント・契約交渉・PMI設計
+技術DD(Web3特有の技術評価)
相談形態初回相談無料
全国対応・オンライン相談可
初回相談無料
国内外の案件に対応
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る

1. M&A Lead|売主専門のM&Aアドバイザリー(M&A Lead株式会社)

M&A Lead 公式サイトのスクリーンショット

M&A Leadは、買主からは手数料を受け取らない片手取引の完全成功報酬モデルを採る売主専門のセルサイドFAです。公式サイトでも「M&A仲介会社ではありません」と明示しており、両手取引の仲介モデルとは立場を分けています。

着手金・中間金は無料で、報酬発生はクロージング時の成功報酬のみ。自社アドバイザーに加え「100を超えるM&Aネットワーク」を活用し、他社の仲介会社・独立系アドバイザーとも連携して買い手候補にアプローチする体制を取っています。

公表されている成約事例は、譲渡企業の売上規模5,000万円〜10億円クラスが中心で、事業承継・カーブアウト(上場企業の子会社譲渡)・投資ファンドEXITなどの背景で成約実績があります。全国対応・オンライン相談可、成約までの目安は「早ければ3〜4か月、条件交渉が長引く場合は6〜9か月」と公式FAQで案内されています。

2. Web3業界特化M&Aアドバイザリー|Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

Consensus Base(Web3業界特化M&Aアドバイザリー)公式サイトのスクリーンショット

Consensus Baseは、Web3・ブロックチェーン事業のM&A(買収・売却・提携)を検討する経営者向けのWeb3業界特化型M&Aアドバイザリーで、買収側・売却側の双方に対応します。2015年設立でブロックチェーン受託開発・技術コンサルティングを提供してきた背景があり、2023年にM&Aアドバイザリー事業を開始しました。

GameFi・NFTプラットフォーム・DeFi・ウォレット開発・Layer1/Layer2プロジェクト・DID/ZK技術企業などを対象領域とし、技術デューデリジェンス(技術DD)まで自社内で提供する点が、会計系FASとの違いです。

支援範囲は、買収・売却・提携候補先の探索とマッチング、LOI/MOU締結支援、DDマネジメント、契約交渉・契約書策定、PMI設計・推進まで、案件開始からPMIまで一括で対応します。

「Web3事業を買収して参入したい企業」「自社のWeb3アセットを売却・資本提携したい企業」を主対象として、国内外の案件に対応。料金体系(着手金・成功報酬の詳細)は公式で非公開のため、無料相談窓口での確認が必要です。

M&Aアドバイザリー・FAに限らず、資金繰り・財務戦略・事業承継など経営局面ごとに専門領域を持つ金融コンサル会社を横断的に比較検討したい場合は、以下の記事で専門領域別に主要19社の特徴と費用相場を整理しています。

M&Aアドバイザーの選び方チェックリスト

ここからは、初めてのM&Aで悪質業者や不透明な契約に当たらないための客観的なチェック軸を、6項目のリスト形式で示します。問い合わせや初回面談の場でそのまま確認事項として使えることを意識しています。

  • M&A支援機関登録番号を保有しているか:中小企業庁が令和3年8月に創設した「M&A支援機関登録制度」に登録されているかを、登録支援機関のデータベース(M&A支援機関登録制度公式サイト)で確認できます。事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)はこの登録機関の支援のみが補助対象になるため、費用計画で補助金の活用を想定する場合はこのチェックが実質的な前提条件になります。
  • 報酬体系が透明に開示されているか:レーマン方式の階層料率、着手金・月額報酬・中間金の有無、最低手数料の金額を、契約前の書面で提示してもらえるかが判断材料になります。同登録DBでは各機関の手数料算定基準まで確認可能な設計になっています。
  • 報酬基準額(株式価値/オーナー受取額/企業価値/移動総資産)が明確か:先の費用相場で見たとおり、料率が同じでも基準額が違えば報酬総額は数倍変わります。「株価レーマン」「移動総資産レーマン」など、自社の場合の計算例を提示してもらえるかがひとつの物差しです。
  • 専任契約の縛りと解除条件が明示されているか:中小企業庁ガイドラインは「専任条項を設ける場合には、仲介契約・FA契約の契約期間を最長でも6か月〜1年以内を目安として定めるべき」とし、テール期間(契約終了後にも成功報酬が発生する期間)は「最長でも2〜3年以内」を目安としています。これを超える期間設定が提示された場合、根拠と修正可否の確認が必要です。
  • 自社の業界・規模での成約実績があるか:業種特有の商慣行や規制、案件規模による標準的な進め方があるため、類似案件の成約事例(業種・売上規模・成約時期)が判断の手がかりになります。M&A支援機関登録DBでは業種・件数の実績も一部確認できます。
  • 担当者の資格・経歴が確認できるか:M&A支援機関登録番号のほか、公認会計士・税理士・弁護士などの国家資格、日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)認定M&Aアドバイザーなどの民間資格、過去の成約実績(件数・業種)が、担当者単位で開示されるかがひとつの目安です。中小企業庁は令和8年度に「中小M&A資格試験」の実施機関公募を開始しており、今後は同資格の取得状況も判断材料に加わる見込みです。

不適切事例に遭遇した場合や事後の相談窓口として、M&A支援機関登録事務局が設置する情報提供受付窓口と、M&A仲介協会の苦情相談窓口があります。これらの窓口の存在を先に把握しておくと、契約時のリスク許容度を判断しやすくなります。

出典・参考資料(3件)
  • 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)第2章Ⅱ7「専任条項の留意点」・第2章Ⅱ9「テール条項の留意点」(中小企業庁、103〜105頁
  • 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)第1章 用語集「M&A支援機関登録制度」(中小企業庁、18頁
  • 参考資料:令和7年度補正中小企業活性化・事業承継総合緊急支援事業(中小M&A資格試験実施事業)の企画競争公募(中小企業庁、2026年3月27日公表

小規模案件への対応とM&Aプラットフォームとの使い分け

「自社くらいの規模でも対応してもらえるのか」と気になる方は少なくありません。前節の分類で触れたとおり、登録機関全体では中小案件も広く扱われており、実態として譲渡額数千万円〜1億円規模の案件も多くの登録機関で対応されています。

その一方で、レーマン方式の最低手数料(500万〜1,000万円程度)が実質的な下限になるため、譲渡額が1億円を下回るような案件では手取り率が目減りしやすくなります。この場合の選択肢が、事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県に設置された公的無料窓口)の活用や、M&Aプラットフォーム(TRANBI・BATONZなど)の利用です。

プラットフォームは初期費用や成約料が比較的抑えられるモデルで、譲渡額数百万円〜数千万円規模の案件でも実現可能性があります。ただし、DDや契約書レビューなどの実務は買い手側/売り手側でそれぞれ士業を起用する必要があります。

そのため「マッチングはプラットフォーム、実務は士業やスポットFA」というハイブリッド利用が選択肢に上がります。案件規模・希望条件・自社の実務リソースを踏まえて、どの組み合わせが現実的かを検討します。

まとめ:自社の状況別・次のアクション

M&Aアドバイザーは、売り手または買い手の一方と契約する片手取引の代理人です。両者双方と契約するM&A仲介とは、報酬の出所と利益相反リスクの構造が異なるため、自社の立場・案件規模・希望条件で選び分けます。ここでは本記事で示した論点を、意思決定の分岐で整理しました。

  • まず費用感を掴みたい → レーマン方式の階層料率(5億円以下5%〜100億円超1%)と、着手金・月額・中間金・成功報酬の4種類の組み合わせを確認。複数社から見積書を取り寄せ、基準額(株式価値/オーナー受取額/企業価値/移動総資産)の定義を並べて比較する。
  • 悪質業者・不透明な契約を避けたい → 選び方チェックリスト第1〜第4項目(M&A支援機関登録番号/報酬体系の透明性/報酬基準額/専任条項・テール条項)を初回面談で書面ベースで検証する。事業承継・引継ぎ補助金の適用も同時に判断できる。
  • 譲渡額が1億円を下回る小規模案件 → 事業承継・引継ぎ支援センター(公的無料窓口)への相談や、M&Aプラットフォームと士業のハイブリッド利用も選択肢に。最低手数料500万円〜が実質的な下限になるため、依頼形態を柔軟に検討する。
  • 売主の代理人として希望条件を追求したい → 独立系ブティックのセルサイドFA(本記事で紹介したM&A Leadが該当)や、会計系FAS・大手金融機関のFA部門で複数の候補を比較する。
  • Web3・特定業界のM&Aを検討している → 業界特化型FA(本記事で紹介したConsensus Baseなど)で、対象業界の技術DDまで対応できる支援機関を検討する。

依頼から成約までは、マッチングに数か月〜1年、引継ぎに3か月〜1年を要するのがガイドラインの目安です。まずは複数社の資料を並べて、比較検討を始めましょう。

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よくある質問(FAQ)

Q. M&Aアドバイザーとは何ですか?

A. M&Aアドバイザーとは、売り手または買い手の一方と契約し、その依頼者の代理人として相手候補の探索・企業価値評価・条件交渉・DD段取り・契約書レビュー・PMI引継ぎまでを担う専門家です。

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」ではFA(フィナンシャル・アドバイザー)として定義され、譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約する「M&A仲介」とは、契約上の立場と報酬の出所が異なります。

Q. M&Aアドバイザーへの相談は、どのタイミングで始めるのがよいですか?

A. M&Aアドバイザーへの相談は、後継者不在や事業拡大などでM&Aが選択肢に上がった段階で、早期に始めるのが望ましいです。中小企業庁ガイドラインは「マッチングには数か月〜1年程度の時間を要する」として早期判断を求めており、成約希望時期から逆算すると、初期相談から成約・PMI完了までおおむね1〜2年を見込む案件が多くなります。

「まだ具体的に決めていない」段階でも初回面談は無料で対応するアドバイザーが大半のため、選択肢の整理から相談を始めて構いません。

Q. M&Aアドバイザーを介さず、売り手・買い手だけでM&Aを進めることはできますか?

A. M&Aアドバイザーに依頼せず当事者だけでM&Aを進めることは制度上は可能です。中小企業庁ガイドラインも中小M&Aの一般的な手続の流れとして「(2)-2 仲介者・FAを選定せず、工程の多くの部分を自ら行う場合」を正式な選択肢として位置づけています。

ただし、バリュエーション・DD・最終契約書の作成といった専門性の高い工程を自社だけで担うのは実務負担が大きく、経営者保証や表明保証条項の設計を誤ると成約後のトラブルにつながります。

実務では、公的無料窓口の事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、M&Aプラットフォーム(TRANBI・BATONZなど)でのマッチング、士業への部分業務依頼を組み合わせる「ハイブリッド利用」が現実的な選択肢に上がります。

Q. M&Aアドバイザーと契約した後、セカンドオピニオンとして別の会社に相談してもよいですか?

A. M&Aアドバイザーへの依頼中でもセカンドオピニオンを求めてよく、専任契約が結ばれている場合でも合理的な理由なくこれを妨げてはならないと、中小企業庁ガイドラインが明記しています。

セカンド・オピニオン(「他の支援機関への相談」ともいう。)とは、中小M&Aを行おうとしている者が支援機関と契約を締結する際や、支援機関から受けた助言の内容の妥当性を検証したい場合等に求める他の支援機関による意見や助言をいう。(中略)依頼者が意見を求めたい部分を明確にした上、これを妨げるべき合理的な理由がない場合には、M&A専門業者は当該依頼者に対し、他の支援機関に対してセカンド・オピニオンを求めることを許容すべきである。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」第1章 用語集「セカンド・オピニオン」(19頁)・第2章Ⅱ7「専任条項の留意点」(103頁

ガイドラインの定義では、同種のM&A専門業者に助言の妥当性を再確認する狭義のセカンド・オピニオンと、顧問税理士・公認会計士・弁護士や事業承継・引継ぎ支援センターに相談する広義のセカンド・オピニオンの2通りが認められています。バリュエーションの妥当性・契約書の重要条項・報酬基準額の水準など、判断に迷う論点で活用します。

Q. M&Aアドバイザーへの依頼費用に、事業承継・引継ぎ補助金は使えますか?

A. M&Aアドバイザーへの依頼費用に事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)を使うには、依頼先が中小企業庁「M&A支援機関登録制度」の登録支援機関であることが要件です。中小企業庁ガイドラインは「予め登録制度に登録を受けた支援機関の提供する支援に係るもののみを補助対象としている」と明記しています。

問い合わせの初期段階で、①M&A支援機関登録番号の有無、②同補助金の対象となる支援スコープ(仲介手数料・FA手数料のどこまでが補助対象になるか)、③補助金申請の支援可否、を担当者に確認しておくと費用計画の解像度が上がります。登録支援機関はM&A支援機関登録制度公式サイトのデータベースで検索できます。

Q. M&Aアドバイザーや譲り受け側の不適切事例に遭った場合、どこに相談できますか?

A. M&Aアドバイザーや譲り受け側の不適切事例に遭った場合の相談窓口として、中小企業庁の「M&A支援機関登録事務局 情報提供受付窓口」とM&A仲介協会の「苦情相談窓口」が公式に設置されています。前者は登録支援機関の不適切事例情報を受け付け、登録制度の運営や他企業への注意喚起にも活用されます。

中小企業庁ガイドラインは、仲介者・FA側の禁止行為として「譲り受け側からの追加手数料の取得」「リピーター依頼者の優遇」「譲渡額差分の報酬要求」「一方当事者への情報の秘匿・偽伝達」など5類型を明示しています。

譲り受け側の不適切事例としても「M&A成立後に譲り渡し側の資金を個人口座に送金する行為」「経営者保証を譲り受け側に移行させる想定であったにもかかわらず移行しない行為」などが公式に指摘されており、契約前に譲り受け側の情報確認・経営者保証扱い・表明保証条項の設計を担当アドバイザーと詰めておくことがリスク低減につながります。

相談窓口: M&A支援機関登録事務局 情報提供受付窓口M&A仲介協会 苦情相談窓口

Q. M&Aアドバイザーに必要な資格はありますか?依頼時にどのような資格を確認できますか?

A. M&Aアドバイザー業務そのものに必須の国家資格はありません。実務では公認会計士・税理士・弁護士などの国家資格、日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)認定M&AアドバイザーやM&Aエキスパート認定制度などの民間資格の保有状況を、担当者単位で確認します。

加えて、中小企業庁は令和8年度に「中小M&A資格試験」の実施機関公募を開始しており、今後は本試験の合格実績も判断材料に加わる見込みです。

個人資格に加えて、法人としての信頼性を測る客観的な指標が中小企業庁「M&A支援機関登録制度」への登録の有無です。同制度は「本ガイドラインの遵守を宣言する等した仲介業務又はFA業務を行う者」が登録できます。

登録支援機関のデータベースでは各機関の手数料算定基準(採用料率・報酬基準額・最低手数料の額・報酬の発生タイミング)まで確認できる設計になっています。担当者の資格・経歴と所属会社の登録状況を、初回面談で書面ベースで検証する運用が実務的です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
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