「ERPで予算管理までできるのでは?」——予算管理の担当者なら、決裁者や上司から一度は投げかけられる問いかもしれません。既に会計や販売管理のERPが入っている企業であればなおさら、予算管理のためにわざわざ別のシステムを追加する理由の説明を求められます。
本記事では、代表的なERP(NetSuite/Oracle/SAP/GRANDIT/マネーフォワード クラウドERP)の予算管理機能で「できること・できないこと」、専用の予算管理システム(DIGGLE/X-KPI/Scale Cloud/Loglass 経営管理/Manageboard/bixid など)との違い、選び方の判断軸、併用パターン、コスト感と進め方を整理します。
先に結論を示しておくと、部門別・プロジェクト別の予実対比や、購買・発注に対する予算枠の統制までであれば、ERP側の予算管理機能で足りるケースがあります。一方、複数シナリオでのフォーキャスト、非財務KPIを含む多軸ドリルダウン、事業部門が自分で入力する経営会議向けダッシュボードまで踏み込みたい場合は、専用の予算管理システムに分があります。両者の公式ドキュメント・公式サイトを突き合わせて確認します。
目次
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ERPと予算管理システムの守備範囲の違い
ERPと予算管理システムはそもそも同じ土俵の製品なのか、別レイヤーの製品なのかから整理します。結論から言えば、両者は担当する業務範囲もデータの持ち方も異なる別レイヤーの製品です。
ERP(NetSuite/Oracle Cloud ERP/SAP S/4HANA/GRANDIT/マネーフォワード クラウドERP など)は全社取引データを一元管理する基幹システムで、予算はその一機能です。
一方、予算管理システム(DIGGLE/Loglass 経営管理/Manageboard/Scale Cloud/bixid/X-KPI など)は会計・ERP・SFA・販売管理から予算・実績・KPIを吸い上げ、経営管理に特化した製品群です。
以下は、ERPと予算管理システムの守備範囲を7つの観点で並べた比較表です。
| 種別 | ERP | 予算管理システム |
|---|---|---|
| 機能範囲 | 会計・購買・販売・在庫・人事など全社基幹業務を一元管理し、予算はその一機能として扱う | 予算編成・予実管理・シナリオプランニング・多軸分析・KPI管理に特化 |
| 対象業務 | 部門別・プロジェクト別の予実対比、購買・発注の予算枠統制 | 複数シナリオのフォーキャスト、部門・拠点・KPIの多軸ドリルダウン、経営会議向けダッシュボード |
| データの持ち方 | 総勘定元帳を土台に、全社の取引データを一元管理 | 会計・ERP・SFA・販売管理など複数の外部システムから吸い上げて統合 |
| 導入コスト感 | 公式非公開・要問い合わせ (コアプラットフォーム+オプションモジュール+ユーザー数+初期導入費で構成) | bixid 月額0円〜/Scale Cloud 月額10万円〜/他は要問い合わせ |
| 向いている企業規模 | 全社の基幹業務を一元管理する規模の企業 | 中小・会計事務所(bixid)〜上場企業・複数子会社(Scale Cloud/Loglass 経営管理)まで、製品ごとに幅 |
| 連携方式 | 同一ベンダー内でのモジュール追加が基本 (NetSuite+Planning and Budgeting アドオン等) | 会計ソフトAPI連携+CSV取込 (マネーフォワード クラウド会計/freee会計/勘定奉行クラウド/Salesforce ほか) |
| 導入期間 | 要件・モジュール数・ユーザー数で大きく変動 (公式に一律の目安なし) | Manageboard 標準約3か月 (他製品は公式に一律の目安なし) |
ERPの予算管理機能で「できること」と「できないこと」
「ERPで予算管理はどこまでできるのか」を実物の製品機能で確認します。対象はNetSuite Planning and Budgeting、Oracle Cloud EPM Planning/Fusion Cloud ERP Budgetary Control、SAP S/4HANA+SAP Analytics Cloud、GRANDIT、マネーフォワード クラウドERPです。
ERPの予算管理機能でできること
ERPが得意な予算管理領域は、大きく次の4つに整理できます。①予算編成とシナリオ・プランニング、②予実対比と承認ワークフロー、③予算執行の統制(発注・支出の予算超過をシステム側で止める仕組み)、④損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の連動、です。順に見ていきます。
まず予算編成とシナリオ・プランニング。NetSuite Planning and Budgetingは「予算策定と予測」「シナリオ・プランニングおよびモデリング」「任意の次元数のシナリオ・モデリングと多次元プランニング」を機能として掲げます(NetSuite公式)。
Oracle Cloud EPM Planningも「複数のシナリオを迅速にモデル化し、変化に迅速に対処します」「モンテカルロ・シミュレーション(さまざまな要因を確率的に振ってシナリオの起こりやすさを比較する統計手法)を使用して、さまざまなシナリオの可能性を判断」とシナリオ計画を明示しています(Oracle公式)。
予実対比と承認ワークフローも各ERPの中核機能です。NetSuiteは「NetSuite ERPの総勘定元帳から動的に入力および更新」される仕組みで、「モデリング機能、承認ワークフローおよびレポートを使用して、会社全体および部門別の両方の予算と計画を容易にします」と説明されています(NetSuiteモジュールガイド)。
国産ERPのGRANDITは経理モジュール内で「基本的な財務会計業務はもちろん、部門別、プロジェクト別の予算、見込および実績を管理」でき(GRANDIT公式)、教育コースの目次にも「予算科目構成登録」「予算入力」「見込入力」「実績データの更新」まで独立章として並びます(GRANDIT教育コース)。
マネーフォワード クラウドERPも会計モジュール内で部門別予算・予実対比を扱え、既存の会計データの延長で予算プロセスを回せる点は国産ERPに共通の特徴です。
予算執行の統制(発注・支出が予算枠を超えないよう起票時に検証・遮断する仕組み)はERPの得意領域です。
Oracle Fusion Cloud ERPのBudgetary Controlは「システム・オプションのグループと、支出超過を防ぐために予算および予算消費に対して検証の対象となるトランザクションを決定するために使用されるプロセス」と定義されています(Oracle公式ドキュメント、公共部門向け)。
「リアルタイム支出の管理」「購買依頼および購買オーダーの一般会計仕訳の生成」を担い、ERPの中で購買・発注と予算枠を突き合わせる用途で効きます。
損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の連動もERP側の強みです。NetSuiteは「損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書が、GAAP」に基づき「関連付けられている」形で財務諸表を作成できると明示しています(NetSuite公式)。多通貨・連結会計や海外子会社の実績集約は、ERP本体の総勘定元帳を土台にしている点で相性がよい領域です。
ただし、主要ERPの多くで予算計画・シナリオ計画は本体標準機能ではなく、別モジュール・別スイートとして提供されている点は押さえておく必要があります。NetSuiteのPlanning and Budgetingは公式ページで「アドオンのモジュール」と位置づけられ、「ユーザーは、年間ライセンス料を支払い」登録する仕組みと明記されています(NetSuite公式)。
モジュールガイドでも「NetSuite ERPソフトウェアには、コアとなる財務および会計機能に加え」て追加する形と説明され、「モジュールごとに機能が異なるため、モジュールのライセンス料も異なります」とされています(NetSuiteモジュールガイド)。
Oracleも同じ構造で、予算編成・シナリオ計画はFusion Cloud ERP本体ではなく独立したEPM製品スイートCloud EPM Planningが担います。
SAPはS/4HANA本体のUniversal Journal・Group Reporting(連結・計画連結)に加え、SAP Analytics Cloud(SAC)で予算計画・分析を担う役割分担型で、ERP本体だけで予算編成一式が回る構造ではありません。国産のGRANDIT・マネーフォワード クラウドERPは経理モジュール内に予算機能を内包する点で対照的です。
ERPの予算管理機能で弱い/できないこと
ERPが機能面で弱くなりがちなのは、次の4つの領域です。第1に、複数シナリオを並べて比較する操作感——楽観/中立/悲観、チャレンジ予算と保守予算を横並びで切り替え、事業部が自分でシナリオを差し替えて経営会議に間に合わせる使い方はERP本体では想定されにくく、Planning and Budgeting/EPM Planning/SACといった別モジュール側の機能に依存します。
第2に、非財務KPI(受注件数・稼働率・顧客数・チャーン率など)を財務予算と接続した多軸ドリルダウン——ERP本体の総勘定元帳は財務仕訳の一貫性を最優先に設計されているため、先行指標KPIを軸としてPLの内訳に降りていくような分析は本体UI単独では組みにくい領域です。
第3に、事業部門が自分の手で入力する経営会議向けダッシュボードUI——ERPは経理・情シスの運用を前提とした画面設計のため、事業部担当者が経営会議当日に数字を差し替える運用には馴染みにくく、実務ではExcelが残りやすい部分です。
第4に、表計算ソフトからのフォーマットを崩さない取り込み——事業部が既にExcelで作り込んだ予算フォーマットをそのままの見た目で持ち込んで統合する仕組みはERP本体に基本的に用意されていません。これらの領域は、次節で見る専用の予算管理システムに分があります。
予算管理システムでこそできること(ERPで弱い/できない部分)
ここからは、ERPと同じ「予算管理」というラベルの下にあっても、予算管理システム側でこそ扱いやすい機能を、代表製品の公式ページで確認していきます。
シナリオプランニング・フォーキャストの柔軟さ
Scale Cloudは「マルチシナリオのフォーキャスト・複数パターン予算作成」を機能として掲げ、モデリング対象を「PL/BS/CF+結果指標KPI+先行指標KPI」まで広げています(Scale Cloud公式)。Loglass 経営管理は「予算・実績・見込を自由に並べてワンクリックで比較」と、複数バージョンの並列比較を訴求しています(Loglass公式)。
Manageboardも「業績シミュレーション」「チャレンジ予算・計画バージョン管理」を持ち、着地見込みレポート(ローリングフォーキャスト=実績が積み上がるたび残月の見込みを更新し年度末の着地を随時更新する方式)まで一気通貫で回せます(Manageboard公式)。ERPでも複数シナリオは扱えますが、事業部が自分で差し替えて経営会議に間に合わせる運用は予算管理システムの想定シーンです。
部門・拠点ドリルダウンと非財務KPI連携
Loglass 経営管理は「事業別・製品別・プロジェクト別・取引先別など、見たいデータを、見たい切り口で、簡単に分析」でき、「グループ全体での業績管理はもちろん、組織体制の変更や、複数の組織図管理にも対応」と、多軸分析と組織変更の吸収を明示しています(Loglass公式)。DIGGLEも「見たい軸や粒度で瞬時にデータを可視化する高度な分析機能」を掲げます(DIGGLE公式)。
非財務KPIとの接続では、Scale Cloudが「結果指標KPI」(売上・利益など)に加え「先行指標KPI」(商談件数・稼働率など、結果に先立って動く数字)までモデリング対象に含め、bixidも「KPI管理(財務+非財務)」を機能として持ちます(Scale Cloud公式/bixid公式)。
粒度に特化した例では、X-KPIが公式で「これまでになかった日次予実管理に特化したクラウド型サービス」と打ち出し、日次単位での予算作成と実績入力・帳票作成に軸を絞っています(X-KPI公式)。月次・四半期の予実対比を前提としたERP側とは、動かす粒度自体が異なります。
Excel資産の活かしやすさとダッシュボード
Loglass 経営管理は「表計算ソフトと連携し、事業部横断での予算策定をスムーズに」を機能の中心に据えています(Loglass公式)。DIGGLEも「会計だけでなく、ERP、SFA、販売管理などの各種システムから出力したデータを取り込み、一元管理」する設計で(DIGGLE公式)、事業部がExcelで作り込んだ予算フォーマットを大きく壊さず移行できる点はERP本体では代替しにくい価値です。
経営会議向けダッシュボードでは、Scale Cloudが「ダッシュボード」「多軸分析」「異常値の自動検知・通知」を掲げ(Scale Cloud公式)、Manageboardも「差異分析・ドリルダウン分析(PL項目クリックで配下KPIを表示)」でPLと配下KPIを行き来できます(Manageboard公式)。予算編成と経営会議での可視化を同じシステムで賄える点が予算管理システムの強みです。
ERPと予算管理システム、どちらを選ぶか(判断軸)
ここまでの守備範囲・機能差を踏まえて、自社ではどちらを選ぶべきか(あるいは併用か)を判断するための軸を整理します。
4つの判断軸
判断軸は次の4つで整理できます。軸①は「既存ERP資産の有無」という前提条件的な性質を持ち、残りの3軸(規模/プロセス複雑さ/連携先)が、その前提の上でどのくらいの予算管理システムが必要かを測るスケールになります。
- 【前提条件】既存ERPの有無と予算管理モジュールの有効化状況:NetSuite Planning and Budgeting/Oracle Cloud EPM Planningの契約有無、GRANDIT経理モジュールで足りるか、SAPならSAC側の契約状況。既存ERPが無ければ、この時点で予算管理システム側の検討が主軸になる
- 企業規模と対象部門・拠点数:従業員数、海外子会社の有無、部門数、連結対象範囲
- 予算プロセスの複雑さ:扱いたいシナリオ数、非財務KPI連携の要否、月次締めのタイミング、事業部門が自分の手で入力する必要の有無
- 連携先の数と種類:会計、ERP、SFA、販売管理、人事・給与など、実績データの供給元をいくつ束ねる必要があるか
この4軸で自社の位置を確認すると、ERPで足りるケース/専用システムが要るケース/併用が向くケースの3ケースに振り分けやすくなります。おおまかな対応関係は以下の通りです。
| 状況(4軸の組み合わせ) | 該当ケース |
|---|---|
| 軸① 既存ERP無し(または予算管理モジュール未契約) | 専用の予算管理システムが主軸 |
| 軸① 既存ERP有り+軸③ シナリオ数少・非財務KPI連携不要 | ERP本体(+既契約アドオン)で足りる |
| 軸① 既存ERP有り+軸③ 複数シナリオ/非財務KPI連携/事業部入力UIが必要 | ERPと予算管理システムの併用 |
ケース別の当てはめ
軸① 既存ERP有り+軸③ シナリオ数少・非財務KPI連携不要 → ERPで足りる。部門別・プロジェクト別の予算と実績の突合、購買・発注の予算枠統制までで運用が完結するケースです。GRANDITが経理モジュール内で「部門別、プロジェクト別の予算、見込および実績を管理」できるように、会計の延長で回る予算管理ならERP本体(または既契約のアドオン)で十分な場合があります(GRANDIT公式)。
予算執行の統制を厳格に行いたい公共部門・大企業では、Oracle Fusion Cloud ERPのBudgetary Controlのような支出統制側の機能が候補になります。
軸① 既存ERP無し(または軸③ 複数シナリオ・非財務KPI連携・事業部入力UIが必要) → 専用の予算管理システム。複数シナリオのフォーキャスト、多軸ドリルダウン、経営会議向けダッシュボード、事業部門の入力UIが必要なケースです。上場・上場準備・複数子会社ならScale CloudやLoglass 経営管理、中小企業や会計事務所連携ならbixidのような公開料金のサービスが候補です。
軸① 既存ERP有り+軸③ プロセス複雑(複数シナリオ/非財務KPI連携)または軸④ 連携先が複数 → 併用。既にERPが入っていて総勘定元帳の一貫性は動かせないが、予算プロセスの複雑さがERPの標準UIでは吸収しきれないケースです。この場合、ERPを実績データの供給元に据え、予算管理システム側でシナリオ・KPI連携・ダッシュボードを回す構造を取ります。次節で具体的な連携パターンを見ます。
ERPと予算管理システムの併用パターンとデータ連携
ERPと予算管理システムを併用する場合、両者の間でどうデータをやり取りするかは、導入検討で最初に問われる論点です。主要な連携パターンを3つ整理します。
1つ目は会計・ERP側のAPIを直接叩いて予算管理システムに実績データを取り込む方式です。Manageboardは「会計ソフト API 連携(マネーフォワード クラウド会計/freee会計/勘定奉行クラウド)」を公式に明示しています(Manageboard公式)。
Scale Cloudも「勘定奉行クラウド(直接連携)/freee会計/Salesforce(API)」までAPI連携先を公表しており、会計だけでなくSFAまで含めた点が実務で効きます(Scale Cloud公式/OBC勘定奉行連携ページ)。API直連携は供給元となる会計・SFAが少数に絞り込め、日次〜週次のリアルタイム性まで求める企業に向く方式です。
2つ目はCSVでの一括取込です。DIGGLEは「会計だけでなく、ERP、SFA、販売管理などの各種システムから出力したデータを取り込み、一元管理」する設計で、複数の基幹システムから吸い上げる用途を明示しています(DIGGLE公式)。Manageboard・Scale Cloud・bixidも同時対応し、入り口が不揃いな場合に向く方式です。
3つ目は同一ベンダー内のモジュール連携です。Manageboardはマネーフォワードグループの製品で、マネーフォワード クラウド会計の実績データを前提とした導入プログラムが用意されています。NetSuite本体にPlanning and BudgetingをアドオンとしてONにする構造も、同一ベンダー内モジュール連携の一形態です(NetSuiteモジュールガイド)。
既存の会計・ERPと予算管理システムのベンダーが揃うとデータ連携の運用コストが下がるため、会計を含めベンダーを統一する意思がある企業や、既に主要基幹をひとつのグループに寄せている企業に向く方式です。
導入コスト感と進め方の目安
最後に、導入検討の直前で問われる費用感と、導入までの進め方の目安を整理します。
ERP側の予算管理モジュールの費用・期間の目安
主要ERP(NetSuite/Oracle EPM/SAP)の予算管理モジュールの具体金額は、いずれも公式非公開・要問い合わせが標準です。Planning and Budgetingはアドオンモジュールなので、コアプラットフォーム+Planning and Budgetingのライセンス+ユーザー数+初期導入費、という積み上げになります(NetSuiteモジュールガイド)。
NetSuiteの公式グローバル価格説明でも、料金は「core platform, optional modules and the number of users」の掛け合わせで構成され、別途「one-time implementation fee for initial setup」が発生するとされており、金額そのものは公表されていません(NetSuite公式)。
導入期間についても、主要ERPの公式サイトから「◯か月」と一律に読み取れる箇所はほとんどありません。要件・モジュール数・ユーザー数・既存システムとの連携範囲で大きく変動するため、実務では複数ベンダーから見積もりを取って比較するのが基本です。国産のGRANDITは経理モジュール内包型で、既存ERPを刷新せずに予算管理を強化する用途では、追加のライセンス投資を伴わないケースもあります。
予算管理システム側の費用・期間の目安
予算管理システム側は、公式に料金を公開している製品があります。中小企業向けのbixidはFree 0円/Simulation 10,000円/Planning 25,000円/Professional 50,000円/Custom 70,000円〜(いずれも税抜、月額)と月額プランを明示しています(bixid公式)。
中堅〜上場準備企業向けのScale Cloudは公式トップおよびOBC勘定奉行連携ページで「月額10万円〜」と明示しています(Scale Cloud公式)。他の主要製品(Loglass 経営管理/DIGGLE/X-KPI/Manageboard)は公式に金額を公開しておらず、要問い合わせが標準です。
導入期間ではManageboardが「標準約3か月の導入プログラム(初回ミーティング→キックオフ→フォロー→ラップアップ)」を公式に明示している数少ない事例です(Manageboard公式)。他の予算管理システムも数か月単位の導入プログラムを持つケースが多く、ERP本体の刷新に比べれば短い期間で立ち上げられるのが一般的です。
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予算管理システム主要製品の紹介
ここからは、予算管理システム側の代表的な製品を紹介します。ERP側の予算管理モジュールと並行して情報収集する際の当たりを付けるためのラインナップです。DIGGLE、X-KPI、Scale Cloud、Loglass 経営管理、Manageboard、bixid の6製品を取り上げます。
以下はご紹介した予算管理システムの比較表です。
| サービス名 | DIGGLE | X-KPI | Scale Cloud | Loglass 経営管理 | Manageboard | bixid |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | ディグル株式会社 | 株式会社パブリックアイデンティティ (日本経済社グループ) | 株式会社Scale Cloud | 株式会社ログラス | 株式会社ナレッジラボ (マネーフォワードグループ) | 株式会社YKプランニング |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 50万円 (KPI設計コンサル1事業モデル分を含む) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 0円(アカウント作成無料) 導入サポートは30万円〜/Customは50万円 |
| 月額料金 | 要問い合わせ (Standard/Enterprise の2プラン) | 要問い合わせ | 10万円〜 | 要問い合わせ | 要問い合わせ (Standard/Essential の2プラン) | Free 0円/Simulation 10,000円/Planning 25,000円/Professional 50,000円/Custom 70,000円〜(税抜) |
| ERP連携 | freee会計・勘定奉行クラウド・弥生会計とAPI/CSV連携 Salesforce・ERPとも連携可 | 会計ソフト・グループウェアとAPI連携 | 勘定奉行クラウド(直接連携)/freee会計/Salesforce(API)/Googleスプレッドシート/CSV | Excel/CSVでのインポート・エクスポート中心 | マネーフォワード クラウド会計/freee会計/勘定奉行クラウドとAPI連携 CSV・Googleスプレッドシート連携 | 弥生会計ほか会計ソフトの仕訳データ取込 |
| 主な特徴 | 予実管理特化。勘定科目より細かい粒度での損益管理と、非財務KPIを組み合わせたドリルダウン/スナップショット分析 | 予算と実績の差異・異常値を自動検知しチャット通知。ノーコードでKPI/ダッシュボードを設計、日次予実管理に対応 | PL/BS/CFに加え先行指標KPIまでモデリング。マルチシナリオのフォーキャストと、予算用/実績用の2種類の関数を組める | 累計導入社数No.1を訴求(2025年10月時点、無償提供を除く)。配賦・計算科目・独自KPIをノーコード設定、子会社・連結対応 | 累計10,000社突破。PL項目クリックで配下KPIをドリルダウン、業績シミュレーション、標準約3か月の導入プログラム | 中小企業向け経営支援クラウド。損益+貸借+キャッシュの多面計画、KPI管理(財務+非財務)、登録事業者数20,000社 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※掲載サービスは資料ダウンロード、非掲載サービスは公式サイトへのリンクとなります。
※各社が公式サイト等で公開している2026年6月時点の情報にもとづきます。料金・機能・連携先は変更される場合があるため、詳細は各社の公式サイト・資料をご確認ください。
ここで挙げた6製品はERP併用を前提に取り上げた代表例です。予算管理システムを、料金帯・タイプ別(予実管理特化/経営管理特化/連結・グループ対応 など)でより幅広く比較したい場合は、以下の記事をあわせてご覧ください。
DIGGLE(ディグル株式会社)

予実管理(予算策定・予実突合・見込管理・レポーティング)を一つのクラウド上に閉じ込めた特化型サービスで、ディグル株式会社が提供しています。Excel中心の予実管理に起こりがちな属人化・集計工数の削減が用途の中心です。
主要機能は、勘定科目より細かい粒度での損益管理、非財務指標(KPI)を組み合わせたドリルダウン/スナップショット分析、事業部と経営企画の非同期連携による予算策定、複数ユーザー同時編集、BIツールへのデータ出力です。
ERP・会計側との連携では、freee会計・勘定奉行クラウド・弥生会計とAPI/CSVで連携するほか、Salesforce・ERPとも連携可能で、既存の基幹システムを実績データの供給元に据えて予算管理システム側で予実・KPI分析を回す構成が組めます。料金は初期費用・月額とも要問い合わせで、プランは Standard/Enterprise の2構成です。
X-KPI(株式会社パブリックアイデンティティ)

日本経済社の子会社である株式会社パブリックアイデンティティが提供する、クラウド型のKPI・予実管理ツールです。複数部門・拠点・プロジェクト単位のKPIと予実データをクラウド上で集約し、リアルタイムに可視化する用途を担います。
ノーコードでKPI項目・レポート・ダッシュボードを設計・運用でき、予算と実績の差異・異常値を自動検知して原因とともにチャットツールへ通知します。専門知識がなくても部門・拠点・プロジェクト単位のKPIを一元管理でき、管理部門・経営層・現場社員の全社利用を想定している設計です。
ERPを含む会計ソフト・グループウェアとAPI連携し、既存のデータ基盤を活かした運用が可能です。既存ERPを実績データの供給元に据え、予算管理システム側で複数部門横断のKPI集約と差異分析を回す構成に向きます。料金は初期費用・月額とも要問い合わせです。
Scale Cloud(株式会社Scale Cloud)

公認会計士の広瀬好伸氏が代表を務める株式会社Scale Cloudが提供する経営管理クラウドで、財務数値(PL/BS/CF)と非財務数値(KPI)を関連づけて一元管理する設計が中心的な価値です。指標変化に対するKGI/PL/BS/CFの応答を見るマルチシナリオのフォーキャスト・複数パターン予算作成に対応します。
結果指標KPIに加え先行指標KPIまでモデリング対象に含め、経営用/管理部用/事業部用など複数のダッシュボードを組める点、指標を起点にしたメンション・会議・タスク管理を備える点が主要機能です。公式インタビューでは「PLとKPIを接続してKPI積み上げで予算作成が可能」で、「予算用と実績用の2種類の関数を組める」点が他社との技術差だと説明されています。
ERP・会計側とは、勘定奉行クラウドと直接連携、freee会計・SalesforceとAPI連携し、Googleスプレッドシート・CSV明細取込にも対応します。料金は月額10万円〜と公式に明示されており、初期費用50万円には一つの事業モデルに対するKPI設計コンサルティングが含まれます。
Loglass 経営管理(株式会社ログラス)

「次世代型経営管理クラウド」を公式呼称に据える Loglass 経営管理は、株式会社ログラスが提供する製品です。導入企業には KDDI、関西電力、GMOインターネットグループなどの東証プライム上場企業が並び、公式サイトで「累計導入社数 No.1(2025年10月31日時点、無償提供を除く)」と訴求しています。
Excel・会計ソフト等に散在する予算・見込・実績・KPIデータを収集・統合し、予算策定・予実管理・差異分析・着地見込み(ローリングフォーキャスト)を一気通貫で回します。複雑な配賦ロジックや EBITDA・ROE 等の計算科目、自社独自KPI指標をノーコードで設定でき、子会社・部門管理と連結対応を備える点が中堅〜大企業向けの機能面での特徴です。
ERPを含む会計・基幹システムからは Excel/CSV でのインポート・エクスポートで実績データを取り込む構成が中心で、ERP本体の総勘定元帳を残したまま予算プロセスを別立てで回す併用パターンに向きます。料金は初期費用・月額とも公式非公開で、要問い合わせです。
Manageboard(株式会社ナレッジラボ)

マネーフォワードグループの株式会社ナレッジラボが提供するクラウド型の予算管理・経営管理プラットフォームです。Excel・スプレッドシートなど社内に散在するデータを一元管理し、予算編成・予実管理・着地見込み・財務分析・業績シミュレーションをクラウド上で完結させます。公式プレスリリース(2025年11月18日)では累計導入社数が10,000社を突破したと発表されています。
主要機能は、チャレンジ予算・計画バージョン管理を含む予算編成、実績・達成率・前年同期比較を並べる予実管理、着地見込みレポート、PL項目クリックで配下KPIを表示する差異分析・ドリルダウン、ワンクリックの業績シミュレーション、PL/BS/CF連動の財務三表一元管理です。
ERP・会計との連携では、マネーフォワード クラウド会計・freee会計・勘定奉行クラウドとAPI連携し、同一ベンダー内のモジュール連携型でMFクラウドERPの実績データを前提とした運用も組めます。導入は標準約3か月のプログラム(初回ミーティング→キックオフ→フォロー→ラップアップ)が用意され、料金は初期費用・月額とも要問い合わせ(Standard/Essential の2プラン)です。
bixid(株式会社YKプランニング)

山口県防府市の株式会社YKプランニング(行本会計事務所のシステム部門から独立)が提供する経営支援クラウドで、公式は「中小企業のための経営管理クラウド」と位置づけています。会計ソフトの仕訳データをもとに、月次決算・予算管理・キャッシュフローなどの経営数字を自動で可視化する設計で、登録事業者数は2024年4月時点で20,000社を突破しています。
単年月次計画・中期年次計画の作成、予実の「モニタリング」機能、資金繰り・借入金管理、貸借・キャッシュ計画、KPI管理(財務+非財務)、企業ドックによる多角的な経営診断、グループ連結(オプション)まで、損益に閉じない多面計画を持つ点が特徴です。
ERP・会計側は弥生会計ほか会計ソフトの仕訳データ取込が前提の設計で、全国の会計事務所向けツール「財務維新」経由の中小企業への導入基盤を持ちます。料金はFree 0円/Simulation 10,000円/Planning 25,000円/Professional 50,000円/Custom 70,000円〜(税抜、月額)と公開で、中小企業でも投資判断しやすい価格帯です。
まとめ
ERPで予算管理をどこまで賄えるか、専用の予算管理システムに切り替える/併用するラインを公式ドキュメントで整理しました。
ERP側で足りるのは部門別・プロジェクト別の予実対比、購買・発注の予算枠統制で運用が完結するケースで、GRANDITの経理モジュール内包型や、NetSuite Planning and Budgeting/Oracle EPM Planningなどのアドオン・別スイートで補うケースが該当します。
一方、複数シナリオのフォーキャスト、非財務KPIを含む多軸ドリルダウン、事業部門の入力UI、経営会議向けダッシュボードまで踏み込むなら専用の予算管理システムに分があります。上場・複数子会社ならScale Cloud/Loglass 経営管理、中小や会計事務所連携ならbixid、CSV/APIで柔軟に取込むならDIGGLE/Manageboard、日次予実ならX-KPIが当たりです。
併用パターンでは、ERPを実績データの供給元に据え、予算管理システム側でシナリオ・KPI連携・ダッシュボードを回す構造が現実解になります。各社の資料を並べて機能・料金・連携先を突き合わせるのが、次の一手です。
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ERPと予算管理システムに関するよくある質問(FAQ)
Q. 予算管理システムとERPは何が違うのですか?
A. 担当する業務範囲もデータの持ち方も異なる別レイヤーの製品です。ERPは全社の取引データを一元管理する基幹システムで、その一機能として予算を扱います。予算管理システムは、その基幹側から実績データを吸い上げ、シナリオ・KPI・ダッシュボードといった経営管理の運用に特化した層です。
Q. ERPだけで予算管理は完結できますか?
A. ERPだけで完結できるかは、対象業務が「部門別・プロジェクト別の予実対比と予算執行の統制」までか、「複数シナリオや非財務KPI連携まで」かで分かれます。前者ならERP本体(または既契約のアドオン)で足りるケースがあり、後者では専用の予算管理システムに分があります。詳細は本文の「ERPと予算管理システム、どちらを選ぶか(判断軸)」セクションを参照してください。
Q. 主要ERPの予算管理機能は本体に標準搭載されていますか?
A. 主要ERPの予算計画・シナリオ計画機能は、多くの場合ERP本体の標準機能ではなく、アドオンモジュールや別スイートとして提供されます。NetSuiteのPlanning and Budgetingは公式で「アドオンのモジュール」と位置づけられ、Oracleでは予算編成をFusion Cloud ERP本体ではなく独立したCloud EPM Planningが担います。
SAPもS/4HANA本体(Universal Journal・Group Reporting)とSAP Analytics Cloud(SAC)の役割分担型です。国産ERPではGRANDITやマネーフォワード クラウドERPのように経理モジュール内に予算機能を内包する製品もあり、ERPごとに構造が異なります。
Q. 専用の予算管理システムを追加するとERPと重複投資になりませんか?
A. 両者は守備範囲が重ならないため、原則として重複投資にはなりません。ERPは会計仕訳の一貫性を最優先に設計された基幹システムで、実績データの供給元として機能します。予算管理システムはそのERPから実績を吸い上げ、シナリオ・KPI連携・経営会議向けダッシュボードを回す層に位置します。
併用パターンではERPを実績データの供給元に据え、予算管理システム側で複数シナリオや多軸分析を担う分業が現実解になります。既にERPのアドオン(NetSuite Planning and Budgetingなど)を契約している場合は、その機能で足りるかを先に確認するのが妥当です。
Q. 既存ERPと連携できる予算管理システムはどう見分ければよいですか?
A. 公式サイトの「連携先」欄で自社の会計・ERP・SFAが挙げられているか、API連携かCSV連携かの方式で見分けます。Manageboardはマネーフォワード クラウド会計・freee会計・勘定奉行クラウドとAPI連携し、Scale Cloudは勘定奉行クラウド(直接連携)・freee会計・Salesforce(API)まで公表しています。
DIGGLEは会計に加え「ERP、SFA、販売管理などの各種システムから出力したデータを取り込み、一元管理」する設計で、直接API連携が用意されていないシステムの実績はCSVでの一括取込に対応する製品で補えます。
Q. 中小企業でも専用の予算管理システムを入れる意味はありますか?
A. Excelと会計システムだけでは予算編成の集計や部門横断の突合が回らなくなった段階で、中小企業でも専用の予算管理システムを導入する意味は出てきます。中小企業や会計事務所連携なら公開料金の月額プランを持つbixid、上場準備や複数子会社ならScale CloudやLoglass 経営管理が候補で、企業規模と予算プロセスの複雑さに応じてレンジを選ぶ形になります。
まずは自社の予算プロセス(扱いたいシナリオ数、非財務KPI連携の要否、事業部門が自分で入力する必要の有無)を棚卸ししたうえで、費用対効果を判断するのが実務的です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















