媒介契約書の電子化は、令和4年(2022年)5月18日の宅地建物取引業法施行規則の改正で解禁され、これまで紙・押印で回してきた不動産仲介の実務者が電子交付の可否・根拠条文・適法要件を確認するタイミングを迎えています。
取引先や社内から「媒介契約書も電子化していいらしい」と聞いても、社内稟議と取引先への説明が通る形で根拠を押さえたうえでなければ、実際の運用には踏み切れません。
本記事では、媒介契約書電子化の施行日・根拠条文・適法4要件をまず結論から示します。続いて依頼者から承諾を取る際の承諾書に書くべき項目、34条の2書面と35条書面・37条書面・37条の2書面の電子化可否の切り分け、標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号)の改正内容、一般・専任・専属専任の3類型で実務差があるかを整理します。
あわせて、承諾取得から電子交付・電子署名・保管までの実務フロー、宅建士の記名押印の扱いやレインズ登録証明書の電子交付・地方公共団体側での署名確認といった落とし穴、そして適法4要件を満たす電子契約サービスの選び方までを、国土交通省プレスリリース・IT重説マニュアル・改正後の宅建業法・施行規則の逐語引用とともに解説します。
目次
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媒介契約書は電子化可能:施行日・根拠と適法4要件
まず結論からお伝えすると、媒介契約書(宅建業法34条の2に定める書面。以下「34条の2書面」)は、令和4年5月18日以降、依頼者の承諾を得て所定の要件を満たすことで、電磁的方法(電子メール送信・Webからのダウンロード・USBメモリ等の交付など)による提供が可能です。
本節では、施行日と根拠条文、そして適法に電子化するために満たすべき4つの要件を、公式プレスリリース・条文原文の逐語引用とともに整理します。
施行日と根拠条文
媒介契約書の電子化は、令和3年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第37号。以下「デジタル社会形成整備法」)による宅地建物取引業法の改正で解禁されました。宅建業法上の根拠は第34条の2第11項で、宅建業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)の改正とあわせて、令和4年5月18日から施行されています。
令和3年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第37号)において、押印を求める行政手続・民間手続について、その押印を不要とするとともに、民間手続における書面交付等について電磁的方法により行うことなどを可能とする見直しが行われました。宅地建物取引業法関連では、宅地建物取引士の押印廃止や、重要事項説明書、契約締結時書面、媒介契約締結時書面等の書面の電磁的方法による提供を可能とする改正規定が令和4年5月18日から施行されます。
出典:国土交通省 不動産・建設経済局「不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります。~宅地建物取引業法施行規則の一部改正等を行いました~」(令和4年4月27日)https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00036.html
媒介契約書の電子化の直接の根拠となる宅建業法第34条の2第11項は、次のとおり規定しています。「依頼者の承諾を得て」電磁的方法による提供ができること、「国土交通省令で定めるもの」で提供すること、電磁的方法による提供の場合には「記名押印し、これを交付したものとみなす」こと、の3層構造で電子交付の適法性を担保しています。
宅地建物取引業者は、第一項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面に記名押印し、これを交付したものとみなす。
出典:宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第三十四条の二第十一項e-Gov 法令検索
適法4要件(承諾・電磁的方法の明示・出力可能性・改変検知)
宅建業法34条の2第11項と、これを受けた宅建業法施行規則第15条の14〜第15条の16を組み合わせると、媒介契約書を適法に電子交付するために満たすべき要件は次の4点にまとまります。国土交通省令の逐語で、承諾に係る「電磁的方法の種類」と「ファイルへの記録の方式」の明示、依頼者側での「書面出力可能性」、「改変が行われていないかどうかを確認することができる措置」がそれぞれ規定されています。
| 要件 | 内容 | 根拠条項 |
|---|---|---|
| ①相手方の事前承諾 | 依頼者から、電磁的方法により媒介契約書を受領することの承諾を、あらかじめ得る。承諾には書面・電子メール・Webページ・電磁的記録媒体のいずれの方式でも可(IT重説マニュアル 表2) | 宅建業法34条の2第11項/施行規則第15条の16 |
| ②電磁的方法の種類・ファイル記録形式の明示 | 承諾を得る際に、宅建業者が使用する電磁的方法の種類(電子メール/Webダウンロード/CD-ROM・USBメモリ等)と、ファイルへの記録の方式(PDF・Excel等のソフトウェア形式とバージョン)を依頼者へ示す | 施行規則第15条の15 |
| ③書面出力可能性 | 依頼者が、受け取ったファイルの内容を出力することで書面を作成できる仕組みを備える | 施行規則第15条の14第2項第1号 |
| ④改変が行われていないかどうかの確認措置 | ファイルに記録された記載事項について、改変が行われていないかどうかを確認できる措置を講じる(電子署名・タイムスタンプなどが実務上の代表的な実装例) | 施行規則第15条の14第2項第2号 |
施行規則第15条の14第2項は、電磁的方法の基準として、①書面出力可能性、②改変検知、③相手方への通知(電子計算機のファイル記録型を採用する場合)を挙げています。原文は次のとおりです。
前項各号に掲げる方法は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
出典:宅地建物取引業法施行規則(昭和三十二年建設省令第十二号)第十五条の十四第二項e-Gov 法令検索
一 依頼者が依頼者ファイルへの記録を出力することにより書面を作成できるものであること。
二 ファイルに記録された記載事項について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること。
三 前項第一号ロに掲げる方法にあつては、記載事項を宅地建物取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する旨又は記録した旨を依頼者に対し通知するものであること。ただし、依頼者が当該記載事項を閲覧していたことを確認したときはこの限りでない。
ここで、要件④の「電子署名等による改変検知」は、条文上は「改変が行われていないかどうかを確認することができる措置」と規定されており、電子署名やタイムスタンプは実務上の代表的な実装例です。電子契約サービスを選ぶ際は、この改変検知の措置がどの方式(立会人型・当事者型の電子署名、独立したタイムスタンプの付与など)で実装されているかを確認します。
あわせて、電子計算機のファイル記録型(=Web ダウンロード方式、施行規則第15条の14第1項第1号ロ)を採用する場合は、上記4要件に加えて、記載事項をファイルに記録した旨を依頼者へ通知する要件(同条第2項第3号)が加わります。実装は後述の「Step2 契約書のアップロードと電子交付」を参照してください(電子契約サービスのメール通知やアクティビティログ機能で対応するのが一般的)。
依頼者から承諾を取る:承諾書に書くべき項目
適法4要件のうち、実務で最も具体的な準備を要するのが「①相手方の事前承諾」と「②電磁的方法の種類・ファイル記録形式の明示」です。以降で、承諾書に必ず記載すべき項目、記載例、承諾を撤回された場合の運用方法を、宅建業法施行規則と国土交通省IT重説マニュアルの逐語をもとに順に見ていきます。
承諾書に必ず記載すべき項目チェックリスト
承諾書に必ず盛り込むべき項目は、宅建業法施行規則第15条の15で明示的に定められています。同条は、承諾を得る際に依頼者へ示すべき事項を、次の2つに整理しています。
令第二条の六第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により示すべき電磁的方法の種類及び内容は、次に掲げる事項とする。
出典:宅地建物取引業法施行規則 第十五条の十五e-Gov 法令検索
一 前条第一項各号に掲げる方法のうち宅地建物取引業者等が使用するもの
二 ファイルへの記録の方式
また、国土交通省の「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和4年4月)P.10 は、承諾に先立って依頼者へ示す2項目について、選択肢を明確にしています。34条の2書面(媒介契約書)も同マニュアルの参照範囲に含まれ、関係条文として施行令第2条の6・施行規則第15条の16が紐づけられています。
具体的には、説明の相手方等への電磁的方法による提供に係る意向確認に先だって、宅建業者は①重要事項説明書等の電子書面を提供する方法(表1)及び②重要事項説明書等の電子書面のファイルへの記録の方式(ソフトウェアの形式(Excel や PDF 等)やバージョン等をいう。以下同じ。)を説明の相手方等へ示す必要があります。
出典:国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和4年4月)P.10https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001479781.pdf
表1 重要事項説明書等の電子書面を提供する方法
ⅰ 電子書面を電子メール等により提供
ⅱ 電子書面を Web ページからのダウンロード形式により提供
ⅲ 電子書面を記録した CD-ROM や USB メモリ等の交付
以上を踏まえ、承諾書に記載する項目を「A. 施行規則第15条の15で法定の記載事項」と「B. 実務上あわせて記載しておくとよい項目」に分けて整理すると次のとおりです。自社ひな型を見直す際は、A の2点が漏れなく盛り込まれているかを最優先で確認します。B は法定要件ではありませんが、承諾書の主体・意思表示・時点を後日確認できる形にしておくために推奨されます。
A. 施行規則第15条の15で法定の記載事項(必須)
- 電磁的方法の種類:電子メール/Webページからのダウンロード/CD-ROM・USBメモリ等のうち、どの方式で提供するか
- ファイルへの記録の方式:PDF・Excel等のソフトウェア形式とバージョン
B. 実務上あわせて記載しておくとよい項目(推奨)
- 宅建業者側の氏名(商号)・免許番号:承諾書の差出人(承諾を得る主体)を後日確認できるように
- 承諾する旨の意思表示:依頼者が電磁的方法による提供を受けることに承諾する旨の記載(トラブル時の証跡)
- 依頼者の氏名・日付:承諾の主体と時点を後日確認できる形
- 撤回申出の方式の案内:後日「紙で受け取りたい」と申し出があった場合の申出経路を案内(詳細は後述の「承諾の撤回方法と依頼者への案内」節)
承諾書サンプルの記載例(本記事による作成例)
公的な承諾書の法定様式や公式雛型は、現時点で用意されていません。IT重説マニュアルQ9は次のとおり明示しています。「法定様式やひな型はありません。また、署名、押印を必要とする定めもありません」。したがって、宅建業者は施行規則第15条の15とIT重説マニュアルの記載項目要件を満たす形で、自社独自に承諾書を組み立てる必要があります。
参考として、上記チェックリストを反映した記載例を以下に示します。これは法定様式ではなく、規則第15条の15とIT重説マニュアルの記載事項要件から本記事が独自に組み立てた作成例であり、実際の運用にあたっては自社の法務担当・宅建協会等への確認をおすすめします。
【媒介契約書の電磁的方法による提供に係る承諾書(作成例)】
本記事が宅地建物取引業法施行規則第十五条の十五(e-Gov法令検索)および国土交通省 IT重説マニュアル(令和4年4月)P.10の記載事項要件を踏まえて作成した記載例(法定様式・公式雛型ではありません)
○○○○株式会社(免許番号 ○○知事(○)第○○○○○号)殿
当職は、貴社が宅地建物取引業法第34条の2第11項に基づき当職に交付する媒介契約書について、下記の電磁的方法により提供を受けることに承諾します。
1. 電磁的方法の種類:□ 電子メールへの添付による提供 / □ Web ページからのダウンロード形式による提供 / □ CD-ROM・USB メモリ等の交付(該当するものにチェック)
2. ファイルへの記録の方式:PDF 形式(Adobe Acrobat/Adobe Reader で閲覧可能な形式)
3. 貴社が「令和○年○月○日」以降に交付する媒介契約書について本承諾を適用します
令和○年○月○日
依頼者氏名:____________ 印
ご住所:____________
承諾の撤回方法と依頼者への案内
電磁的方法による提供に承諾した依頼者は、その後で提供方法を書面(紙)に切り替えたいと申し出ることができます。IT重説マニュアルP.11 は、宅建業者が拒否する旨の申出を取得する方法として、承諾取得と同様の4方式(書面/電子メール/Webページ/電磁的記録媒体)を挙げています。
重要事項説明書等の電磁的方法による提供を受けることについて承諾した説明の相手方等が書面の電磁的方法による提供を拒否する場合には、次の方法により、説明の相手方等から拒否する旨の申出を取得する必要があります。
出典:国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和4年4月)P.11https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001479781.pdf
ⅰ 拒否する旨を記載した書面(紙)を受領
ⅱ 拒否する旨を電子メール等で受信
ⅲ Web ページ上で拒否する旨を取得
ⅳ 拒否する旨を記録した CD-ROM や USB メモリ等の受領
実務上は、承諾書に「撤回を希望される場合は、書面・電子メール・Web ページ・電磁的記録媒体のいずれかにより貴社(宅建業者)へお申し出ください」といった案内を1文添えておくと、依頼者が撤回時に迷いません。中小事業者では、承諾書と撤回申出のフォームを同一のPDFやWebフォームに統合しておくと、運用がシンプルになります。
34条の2書面/35条書面/37条書面/37条の2の電子化可否 横並び一覧
実務者が混同しやすい4書面——34条の2書面(媒介契約書)、35条書面(重要事項説明書)、37条書面(契約書)、37条の2書面(クーリング・オフ書面)——について、電子化の可否と根拠条文、実装上の注意点を横並びで整理します。
| 書面 | 電子化 | 根拠条文 | 実装上の注意 |
|---|---|---|---|
| 34条の2書面(媒介契約書) | 可 | 宅建業法34条の2第11項/施行規則第15条の14〜16 | 依頼者の事前承諾+適法4要件を満たす。承諾の主体は媒介の依頼者(IT重説マニュアルQ5) |
| 35条書面(重要事項説明書) | 可 | 宅建業法35条第8項・第9項/施行規則第16条の4の8ほか(第15条の14〜16と同趣旨の要件が規定) | 宅建士による説明とセットで運用(IT重説)。承諾の主体は買主・借主等(説明の相手方)で、34条の2書面(依頼者)とは主体が異なる(IT重説マニュアルQ5) |
| 37条書面(契約書) | 可 | 宅建業法37条第4項・第5項/施行規則第16条の4の12ほか(第15条の14〜16と同趣旨の要件が規定) | 「契約が成立したとき」に交付(第37条第1項本文)。電子でも契約締結前の事前交付は法定されていない。承諾の主体は契約の当事者(IT重説マニュアルQ5) |
| 37条の2書面(クーリング・オフ書面) | 宅建業者側からの告知:現状の実務通念では紙で交付/買主側の撤回意思表示:書面(電子化不可、法定) | 宅建業法37条の2第1項本文 | 条文が明示的に縛るのは「買主側の撤回意思表示は書面による」点で、これは電磁的方法で代替できない。宅建業者側からの告知書面については宅建業法上の明文の電子化根拠が34条の2・35条・37条のような形で規定されていないため、現状の実務通念では紙で交付する扱い(社内法務・宅建協会への確認をおすすめ) |
| 農地・採草放牧地の賃貸借契約書 | 不可(書面必須) | 農地法21条 | 「農地又は採草放牧地の賃貸借契約」に限定。「農地の売買」や「宅地」は含まない |
37条書面の交付タイミングについては、宅建業法第37条第1項本文が「契約が成立したとき」と定めており、電子で交付する場合も同じ制約が働きます。電子契約サービスの都合で「契約締結前に事前提示できるから37条書面もそのまま先に送っておく」といった運用は、宅建業法上想定されていません。
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
出典:宅地建物取引業法 第三十七条第一項本文e-Gov 法令検索
農地・採草放牧地の賃貸借契約書については、農地法21条が「書面により…明らかにしなければならない」と規定しており、電磁的方法での代替は明文の根拠がなく現行運用では書面必須です。ここで注意したいのは、農地法21条が縛るのは「農地又は採草放牧地の賃貸借契約」であって、農地の売買や宅地の取引は含まれない点です。「農地取引は電子化不可」と一般化しないよう、契約類型で切り分けます。
(契約の文書化)
出典:農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二十一条e-Gov 法令検索
第二十一条 農地又は採草放牧地の賃貸借契約については、当事者は、書面によりその存続期間、借賃等の額及び支払条件その他その契約並びにこれに付随する契約の内容を明らかにしなければならない。
標準媒介契約約款の改正内容(平成2年建設省告示第115号)
宅建業法改正とあわせて、国土交通省の標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号)も令和4年5月18日から施行される内容で改正されました。プレスリリースは「所要の形式面の改正」と説明していますが、自社の媒介契約書ひな型を直すうえで押さえるべき差分は次の5点に集約されます。
「電磁的方法による契約成立」という新規条項が追加されたわけではなく、既存条項の押印廃止・電磁的提供の参照追記・語句差替えが「機械的に同じ形」で3類型すべての約款に入っています。
- 押印廃止:「宅建士が記名押印した書面」→「宅建士が記名した書面」
- 35条書面の電磁的提供の参照追記:重要事項説明書の交付について「宅地建物取引業法第35条第8項又は第9項の規定による提供を含みます」を追記
- 37条書面の電磁的提供の参照追記:契約書の交付について「宅地建物取引業法第37条第4項又は第5項の規定による提供を含みます」を追記
- レインズ登録証明書の電磁的提供の追記:登録を証する書面の交付について「宅地建物取引業法第34条の2第12項の規定による提供を含みます」を追記
- 「文書」→「文書等」への語句差替え:有効期間の更新申出の様式に電磁的方法を含む余地を作る
実際の新旧対照は、専任媒介契約書2(二)(重要事項説明書の交付)で次のように変わっています。
改正後:乙は、甲に対し、目的物件の売買又は交換の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、宅地建物取引業法第35条に定める重要事項について、宅地建物取引士が記名した書面を交付(宅地建物取引業法第35条第8項又は第9項の規定による提供を含みます。)して説明させます。
出典:国土交通省「【新旧(抜粋)】標準媒介契約約款の一部を改正する件」(令和4年4月27日公布、令和4年5月18日施行)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001479780.pdf
改正前:宅地建物取引士が記名押印した書面を交付して説明させます。
また、レインズ登録証明書についても、宅建業法34条の2第12項が新設されたことを受けて、専任媒介契約書1(四)で電磁的提供の参照が追記されました。
改正後:目的物件を登録したときは、遅滞なく、甲に対して宅地建物取引業法第50条の6に定める登録を証する書面を交付(宅地建物取引業法第34条の2第12項の規定による提供を含みます。)します。
出典:国土交通省「【新旧(抜粋)】標準媒介契約約款の一部を改正する件」https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001479780.pdf
改正前:登録を証する書面を交付します。
これら4点の改正は、専任媒介契約・専属専任媒介契約・一般媒介契約の3類型すべての約款に、同じ形で反映されています。自社の媒介契約書ひな型を電磁的方法に対応させる際は、記名押印欄の見直しに加え、35条書面・37条書面・レインズ登録証明書の交付方法に電磁的提供の参照を明示する運用が現実的です。
媒介契約3類型(一般/専任/専属専任)での電子化実務の差
実務者が日常業務で使い分けている3類型——一般媒介・専任媒介・専属専任媒介——について、電子交付の要件に差があるかを整理します。結論を先に述べると、電磁的方法での提供に関する要件そのものには3類型間の差はありません。異なるのは、従来から存在する専任・専属専任固有の重い義務(レインズ登録期間・業務処理状況の報告義務・有効期間の上限)です。
3類型で電子交付要件に差はあるか
結論として、電磁的方法による提供の要件に3類型間の差はありません。宅建業法34条の2第11項は「第一項の書面の交付に代えて」と規定しており、第一項の媒介契約書には一般媒介・専任媒介・専属専任媒介のすべてが含まれます。標準媒介契約約款の改正(前節参照)でも、3類型それぞれの契約書・約款で押印廃止と電磁的提供の参照追記が「機械的に同じ形」で入っており、電子化の実装上、類型による差はありません。
したがって、承諾取得・電磁的方法の種類とファイル記録形式の明示・書面出力可能性・改変検知の適法4要件は、どの類型を締結する場合も同じ形で満たす必要があります。自社のひな型を1つ用意すれば、3類型すべての運用に対応できます。
専任・専属専任固有の義務(レインズ登録・業務報告)と電子交付の接点
電子交付の要件そのものに差はない一方で、専任媒介・専属専任媒介固有の義務は電子交付の実務フローに関わってきます。宅建業法34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間を3か月以内と定めており、第5項は指定流通機構(レインズ)への登録義務、第9項は業務処理状況の報告義務を定めています。
依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
出典:宅地建物取引業法 第三十四条の二第三項e-Gov 法令検索
専任媒介・専属専任媒介では、宅建業法第34条の2第12項に基づき、レインズ登録証明書(登録を証する書面)も電磁的方法で提供できるようになりました。標準媒介契約約款の改正で、レインズ登録証明書の交付について「宅地建物取引業法第34条の2第12項の規定による提供を含みます」が追記されているのはこのためです。
電子契約サービスで媒介契約書と登録証明書をあわせて交付・保管する運用にすることで、実務の一元化が進みます。
業務処理状況の報告義務については、専任媒介で「2週間に1回以上」、専属専任媒介で「1週間に1回以上」の報告が求められます(第9項)。この報告そのものの様式には宅建業法上の縛りは無く、電子メール・専用ポータル・自社の物件管理システムなど、依頼者が確認できる形であれば柔軟に実装できます。
媒介契約書電子化の実務フロー
続いて、承諾取得から電子交付・電子署名・保管までの一連の実務フローを、宅建業法・施行規則・電子帳簿保存法(税務保存が必要な場合)の要件を踏まえてステップ単位で整理します。
Step1 依頼者からの承諾取得
媒介契約書の電子交付の前提として、依頼者から事前承諾を得ます。承諾書には、前掲のとおり①電磁的方法の種類、②ファイルへの記録の方式を必ず明示します。承諾自体の様式は、書面・電子メール・Webページ上のチェック・電磁的記録媒体(CD-ROM/USB メモリ等)のいずれでも可です。撤回時の申出方法もあわせて依頼者へ案内します(詳細は「依頼者から承諾を取る:承諾書に書くべき項目」節を参照)。
Step2 契約書のアップロードと電子交付
承諾済みの電磁的方法により媒介契約書を電子交付します。宅建業法施行規則第15条の14第1項が定める電磁的方法の種類は、次の3系統です。実務では電子契約サービス経由の Web ダウンロード方式(ロ)が主流で、電子メール添付(イに近い運用)や CD-ROM・USB メモリ交付(二)は補完的な位置づけになります。
法第三十四条の二第十一項の国土交通省令で定める方法は、次に掲げるものとする。
出典:宅地建物取引業法施行規則 第十五条の十四第一項e-Gov 法令検索
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 宅地建物取引業者等(…)の使用に係る電子計算機と依頼者等(…)の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて書面に記載すべき事項(以下この条において「記載事項」という。)を送信し、依頼者等の使用に係る電子計算機に備えられた依頼者ファイルに記録する方法
ロ 宅地建物取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された記載事項を電気通信回線を通じて依頼者の閲覧に供し、依頼者等の使用に係る電子計算機に備えられた当該依頼者の依頼者ファイルに当該記載事項を記録する方法
二 電磁的記録媒体をもつて調製するファイルに記載事項を記録したものを交付する方法
ロの Web ダウンロード方式を採る場合は、施行規則第15条の14第2項第3号により、記載事項をファイルに記録した旨を依頼者へ通知する必要があります(ただし、依頼者が閲覧していたことを確認したときはこの限りでない)。電子契約サービスの多くは、この通知を自動化する「メール通知」「アクティビティログ」機能で対応しています。
Step3 電子署名(改変検知の担保)
宅建業法施行規則第15条の14第2項第2号が求める「改変が行われていないかどうかを確認することができる措置」を、電子署名やタイムスタンプで実装します。電子署名法第3条は、本人による電子署名が付されている電磁的記録について「真正に成立したものと推定する」と規定しており、電子署名の付与は民事訴訟法上の真正成立の推定効を得るためにも実務上有効です。
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第三条e-Gov 法令検索
電子契約サービスにおける電子署名の実装は、大きく「立会人型」と「当事者型」に分かれます。立会人型は、電子契約サービス事業者名義の電子署名を契約書に付与する方式で、依頼者側の電子証明書の準備が不要な代わりに、真正成立の推定効の解釈は「事業者による本人性確認プロセスの適正性」に依存します。
当事者型は、依頼者本人の電子証明書で電子署名を付与する方式で、電子署名法3条の要件を直接的に満たしやすい一方、依頼者側での証明書取得の負担が発生します。宅建業法施行規則の要件(改変検知)はどちらの方式でも満たせるため、依頼者の負担と真正性の要求水準のバランスで選定します。
Step4 電子帳簿保存法の3要件と保存
媒介契約書を税務上の証憑として保存する場合には、電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)の要件を満たす必要があります。実務上「3要件」と呼ばれる真実性・可視性・検索性の要件は、電子帳簿保存法施行規則第4条第1項(電子取引の保存要件)と、そこが準用する第2条第2項第2号・第6項第5号に規定されています。
①真実性の確保:施行規則第4条第1項は、次の4類型のいずれかを満たすことを求めています。タイムスタンプの付与、訂正削除の履歴確認、訂正削除ができないシステム、事務処理規程の整備——のうちどれか1つでよく、電子契約サービスの多くは「タイムスタンプの付与」または「訂正削除履歴の確認」を機能として備えています。
法第七条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には、…(略)…次に掲げる措置のいずれかを行い、…(略)
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第四条第一項e-Gov 法令検索
一 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
二 次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すこと。
三 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
ロ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
四 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。
②可視性と③検索性は、施行規則第4条第1項が準用する第2条第2項第2号(ディスプレイ・プリンタでの出力)、第6項第5号(検索機能)で定められています。電子契約サービスの管理画面で契約書一覧を検索・閲覧・PDFダウンロードできる仕組みがあれば、通常はここも満たせます。
保存期間については、電子帳簿保存法本体では定めがなく、法人税法施行規則第67条・所得税法施行規則第63条など税法本体で原則7年(繰越欠損金の適用時は10年)と定められています。「電子帳簿保存法で5年」と紐づけると法源が違うため、実務上は「税法本体で原則7年」と整理する方が正確です。
中小事業者では、電子契約サービスの保管機能に加えて、社内バックアップの保管年数を7年(または10年)に設定して運用します。
ただし、媒介契約書そのものが「国税関係書類」に該当するかどうかは事案により異なります。税務上の証憑として保存する場合に電子帳簿保存法の対象になる、と整理するのが実務的です。
あわせて、宅建業者には宅建業法第49条・施行規則第18条による帳簿の備付け・保存義務が別に定められており、業務に関する帳簿・書類は原則5年(自ら売主となる新築住宅は10年)の保存が求められます。税法上の保存期間(原則7年、繰越欠損金の適用時10年)と宅建業法上の保存期間(5年/10年)の両方が並行して適用されるため、実務では長い方の年数に合わせて社内保管年数を設定するのが安全です。
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媒介契約書を電子化するメリット
社内稟議や取引先への説明で「なぜ電子化するのか」を問われた際の材料として、媒介契約書電子化の主なメリットは次のとおりです。宅建業法・標準約款の改正で押印廃止も実現したため、締結までのリードタイムを大幅に短縮できるようになりました。
- 締結リードタイムの短縮:郵送・持参・押印の往復が不要になり、依頼者との合意から契約締結までを電子的に短時間で完了できる
- 保管効率化・検索性向上:紙のファイルキャビネットから電子ファイル管理に移行することで、保管スペース・検索時間・過去契約の参照コストを削減できる
- 遠方の依頼者との契約が容易:出張契約や郵送のやり取りが減り、地方物件・遠隔地の依頼者との媒介契約締結が円滑になる
- 災害・BCP対応:クラウド保管により、紙原本の紛失・災害リスクへの備えが強化される
ただし、媒介契約書はもともと印紙税の課税文書ではないため、売買契約書(37条書面)で語られる「印紙税の非課税化によるコスト削減」は、媒介契約書の電子化では直接の効果として発生しません。この点は取引先や社内から質問されやすいので、あらかじめ整理しておくのが有効です。
実務上の落とし穴と周辺論点
媒介契約書電子化の運用を進めるうえで、実務者が遭遇しやすい落とし穴と周辺の実務論点をまとめます。監査や社内法務・宅建協会からの照会に耐えられる形にしておくと、電子化への移行がスムーズです。
相手方のIT環境が整わない場合の対応
高齢の依頼者や、業務用の電子メール・スマートフォンを日常的に使わない依頼者から媒介の依頼を受ける場合、電磁的方法での提供の承諾を得られないケースがあります。この場合は、宅建業法34条の2第11項が「依頼者の承諾を得て」と定めていることから、承諾が得られなければ電子交付できません。書面(紙)での交付に切り替え、これまでどおりの運用を継続します。
また、いったん承諾を得た後で「やはり紙で受け取りたい」と申し出があった場合の運用は、前掲の「承諾の撤回方法と依頼者への案内」節のとおり、書面・電子メール・Webページ・電磁的記録媒体のいずれかで撤回申出を受ける方法をあらかじめ用意しておきます。
宅建士の記名押印の扱い(電子交付での取り扱い)
デジタル社会形成整備法による改正で、宅建士の押印は廃止されました(記名押印→記名)。標準媒介契約約款の改正でも、「宅建士が記名押印した書面」の文言が「宅建士が記名した書面」に改められています。電子交付の場合、宅建士の記名は電子ファイル内に明示され、電子契約サービスの署名パネル等で確認できる形で実装されます。
ここで注意したいのは、電子署名法第3条の「本人による電子署名」による真正成立の推定と、宅建業法上の「宅建士の記名」は、別の要件系統である点です。電子契約サービスで契約書に電子署名を付与すること自体は電子署名法上の要件を満たす手段ですが、宅建業法上「宅建士の記名」があるかどうかは電子ファイル内の記載事項として別途確認する必要があります。
レインズ登録証明書の電子交付
専任媒介・専属専任媒介では、指定流通機構(レインズ)への登録後に「登録を証する書面」を依頼者へ交付する必要があります(宅建業法34条の2第6項)。デジタル社会形成整備法による改正で第12項が新設され、この登録証明書についても電磁的方法による提供が可能になりました。
宅地建物取引業者は、第六項の規定による書面の引渡しに代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を引き渡したものとみなす。
出典:宅地建物取引業法 第三十四条の二第十二項e-Gov 法令検索
実務では、媒介契約書の電子交付と登録証明書の電子提供を同じ電子契約サービスで一元的に扱えると効率的です。電子契約サービスを選ぶ際は、レインズ登録証明書に相当するファイル形式のアップロード・依頼者への通知・承諾取得のフローがあわせて運用できるかを確認する必要があります。
地方公共団体側での署名確認(国不動第569号)
宅建業者が固定資産課税台帳を閲覧する際に、地方公共団体側が電子媒介契約書に付された電子署名をどう確認するかについては、令和8年3月26日付で国土交通省不動産・建設経済局 不動産業課長から「国不動第569号」(各業界団体の長宛)が発出されています。
これは、令和6年8月8日付の総務省自治税務局固定資産税課長通知「宅地建物取引業者による固定資産課税台帳の閲覧及び評価証明書の取得について」を受けた見直し・補足で、電子署名の確認方法として一般的なPDF閲覧ソフトウェアの署名パネルを利用する方法が含まれる旨を明確化しています。
また、「宅地建物取引業者による固定資産課税台帳の閲覧及び評価証明書の取得について」(令和6年8月8日総務省自治税務局固定資産税課長通知)において別添している国不動第43号において「市町村が当該電磁的記録に宅地建物取引業者の依頼者による電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第2条第1項に規定する電子署名をいう。)が行われていることを確認する方法」が示されているところ、今般、規制改革実施計画を踏まえ、総務省及び国土交通省で協議したところであり、当該確認方法には一般に用いられているPDF閲覧機能を有するソフトウェアを利用して、電子署名を講じたものであること及び電子署名により電子書面の改変有無の確認を当該ソフトウェアの署名パネルなどの表示内容から確認する方法も含まれるので、その旨周知する。
出典:国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課長「国不動第569号」(令和8年3月26日)全宅連会員向け周知ページ
実務者にとって重要なのは、地方公共団体の固定資産税課税台帳を閲覧する際、電子媒介契約書を提示すれば、市町村側で PDF 閲覧ソフトの署名パネル等から電子署名の存在と改ざんの無いことを確認する扱いが正式に認められた点です。
これにより、紙の媒介契約書を持参する必要は無くなり、電子ファイルでの提示が固定資産税台帳閲覧の実務でも通用します。中小事業者の運用改善にもつながる論点で、社内での電子化推進の材料として押さえておくのが有効です。
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媒介契約書電子化に対応する電子契約システム
ここまで整理してきた適法4要件を満たし、宅建業者・不動産取引実務で運用できる電子契約サービスを4つご紹介します。承諾取得フロー・電子署名(立会人型/当事者型)・タイムスタンプ・書面出力・長期保存の観点で、自社の運用に合うサービスを選定する参考としてください。
4サービスの俯瞰:スポット比較表
| サービス名 | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン | マネーフォワード クラウド契約 | freeeサイン |
|---|---|---|---|---|
| 承諾取得フロー | テンプレート・ワークフロー・アクセスコード認証で承諾書送付〜締結を一元運用 | 封筒送信・ワークフロー・アドレス帳・アクセスコード認証で承諾書送付を一元運用 | 社内申請ワークフロー・テンプレート機能で承諾書送付を運用可 | Wordテンプレート・ワークフロー・URL発行・SMS送信で承諾書送付を運用可 |
| 電子署名(立会人型/当事者型) | 立会人型(標準・事業者署名型) 当事者型(マイナンバーカード署名) | 立会人型(契約印タイプ) 当事者型(実印タイプ) ハイブリッド署名対応 | 立会人型(事業者署名型)に対応 ※当事者型の対応は資料請求で要確認 | 立会人型(電子サイン) 当事者型(電子署名、PAdES準拠の長期署名) |
| タイムスタンプ | ●総務大臣認定タイムスタンプを全プラン標準付与 | ●総務大臣認定タイムスタンプ標準付与(GMO・セイコー発行) | ●締結時に自動で付与 | ●総務大臣認定タイムスタンプ(アマノ株式会社発行) |
| 書面出力(PDF) | ●締結後PDFをダウンロード・保管 | ●締結後PDFをダウンロード・保管 | ●締結後PDFをダウンロード・保管 | ●締結後PDFをダウンロード・保管 |
| 長期保存対応 | ●タイムスタンプ付与で10年間の長期署名に対応 | ●延長タイムスタンプで真正性を10年間延長(Adobe AATL対応) | ●電子帳簿保存法の電子取引に対応(長期署名機能の詳細は資料請求で要確認) | ●電子サインは10年、電子署名は10年ごとに再付与で延長可 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
各サービスの個別紹介
クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が2015年から提供する立会人型電子契約サービスの国内草分けで、金融・不動産・自治体を含む幅広い業種で導入実績を持ちます。宅建業界向けの解説メディアも自社で運営しており、宅建業法・電子帳簿保存法の要件に沿った運用の情報発信が継続的に行われている点が特徴です。
媒介契約書の電子交付では、承諾取得のワークフロー・立会人型電子署名・タイムスタンプの自動付与・書面PDF出力・クラウド保管を一貫して運用でき、宅建業法施行規則第15条の14〜16の適法4要件を単一のサービスで満たせます。長期保存や電子帳簿保存法対応のオプションもあり、税務証憑としての保存にも対応します。
電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインは、電子認証局を運営する GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する電子契約サービスで、立会人型と当事者型(実印相当の高信頼電子署名)の両方式に対応する点があります。当事者型は依頼者本人の電子証明書による電子署名で、電子署名法第3条の要件を直接的に満たしやすく、真正成立の推定効を担保しやすい選択肢となります。
媒介契約書の電子交付では、依頼者の属性(個人/法人)や取引の性質に応じて立会人型と当事者型を使い分けられます。また、電子認証局を自社運営していることから、電子署名の信頼性・改変検知の担保についてもエビデンスを明示しやすい点も、社内稟議や取引先説明の材料になります。
マネーフォワード クラウド契約(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド契約は、バックオフィス SaaS シリーズ「マネーフォワード クラウド」の1サービスとして提供される電子契約サービスです。運営元自ら「媒介契約書は電子化できる?電子化の流れやメリット・デメリットを解説」の解説記事を自社メディアで公開しており、宅建業法改正への対応情報の整備が明確です。
マネーフォワード クラウドの会計・給与・請求書などのシリーズとシームレスに連携できるため、既にマネーフォワード クラウドを導入している宅建業者では、契約書・請求書・仕訳を横断的に管理でき、税務証憑の一元管理と電子帳簿保存法対応の効率化が期待できます。立会人型の電子署名とタイムスタンプに対応し、適法4要件を満たします。
freeeサイン(freee株式会社)

freeeサインは、会計・給与・人事労務のクラウドサービスを展開する freee 株式会社が提供する電子契約サービスで、弁護士監修による解説メディアで宅建業法改正・農地法21条・37条書面の交付タイミング制限まで踏み込んだ情報発信を行っています。電子化できる書類・できない書類の対称整理が明確で、実務者が「この書面は電子交付してよいか」を確認する参照先として使いやすい点も特徴です。
立会人型の電子署名・タイムスタンプ・PDF出力・クラウド保管が揃っており、宅建業法施行規則の適法4要件を満たします。freee会計・freee人事労務との連携で、契約書・給与・経理業務の一元管理にも展開しやすい構成です。
電子契約システム全体をさらに比較検討したい場合は、下記の記事もあわせてご覧ください。承諾取得フローや電子署名方式(立会人型/当事者型)だけでなく、費用・機能・導入実績を横断的に比較しています。
まとめ:媒介契約書電子化の適法運用と自社ひな型見直しへ
媒介契約書の電子化は、令和4年5月18日以降、宅建業法34条の2第11項と宅建業法施行規則第15条の14〜16を根拠に、依頼者の事前承諾を得て所定の4要件(相手方承諾/電磁的方法の種類とファイル記録形式の明示/書面出力可能性/改変検知)を満たすことで適法に運用できます。承諾書の記載事項は施行規則第15条の15に定められており、公的な法定様式・雛型は存在しないため、自社で組み立てる必要があります。
4書面(34条の2書面/35条書面/37条書面/37条の2書面)の電子化可否と、農地法21条による農地・採草放牧地の賃貸借契約書の書面必須要件を切り分けたうえで、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3類型で電子交付要件そのものに差はない点を押さえます。
標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号)は、記名押印→記名の押印廃止、35条書面・37条書面・レインズ登録証明書の電磁的提供の参照追記、更新申出「文書」→「文書等」への語句差替えの5点で改正されており、自社ひな型の見直しはこの5点を軸に進めます。
実務フローは承諾取得→電子交付→電子署名→保管の4ステップで、税務証憑として保存する場合は電子帳簿保存法施行規則第4条+準用先第2条の3要件と、法人税法施行規則第67条の保存期間(原則7年)を満たします。
宅建士の記名は電子交付でも維持され、レインズ登録証明書も第12項により電磁的提供が可能です。令和8年3月26日付の国不動第569号により、地方公共団体側での電子署名確認方法もPDF閲覧ソフトの署名パネルが正式に認められました。
これらの要件をすべて満たす電子契約サービスを選ぶことで、媒介契約書電子化の全面移行が実現します。承諾取得フロー・電子署名(立会人型/当事者型)・タイムスタンプ・書面出力・長期保存の4点を比較し、自社の運用に合うサービスを選定してください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 媒介契約書の電子化とは何ですか?
媒介契約書の電子化とは、宅地建物取引業法34条の2に定める媒介契約書(34条の2書面)を、依頼者の事前承諾を得たうえで、電子メール送信・Webからのダウンロード・電磁的記録媒体の交付といった電磁的方法により提供する運用のことです。
令和4年5月18日以降、宅建業法施行規則第15条の14〜16に定める4要件(相手方承諾/電磁的方法の種類とファイル記録形式の明示/書面出力可能性/改変検知)を満たすことで、紙・押印での書面交付に代えて適法に運用できます(施行日と根拠条文の詳細は本文「媒介契約書は電子化可能:施行日・根拠と適法4要件」節)。
Q. 媒介契約書の電子化はいつから可能になりましたか?
媒介契約書の電子化は、令和4年(2022年)5月18日から可能です。デジタル社会形成整備法(令和3年法律第37号、令和3年5月19日公布)による宅建業法改正で第34条の2第11項が新設され、同日施行の宅建業法施行規則の改正および国土交通省プレスリリース(令和4年4月27日)により、依頼者の承諾を得て電磁的方法による提供ができる枠組みが正式に整備されました。
Q. 媒介契約書のうち電子化できない書類はありますか?
媒介契約書そのものは、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3類型いずれも電子化できます。ただし、農地または採草放牧地の「賃貸借契約書」は農地法第21条により書面が必須で、電磁的方法での代替はできません。同条は「農地又は採草放牧地の賃貸借契約」に限定した規定であり、宅地の取引や農地の売買契約、通常の媒介契約書は対象外なので混同しないよう注意します。
あわせて、宅建業法37条の2のクーリング・オフ書面は「買主側の撤回意思表示の様式」を書面と定めるもので、宅建業者側からの告知の様式とは別枠組みです(4書面の切り分けは本文「34条の2書面/35条書面/37条書面/37条の2の電子化可否 横並び一覧」節)。
Q. 媒介契約書は一般媒介・専任媒介・専属専任媒介のいずれでも電子化できますか?
媒介契約書の電子交付要件は、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3類型で共通で、実装上の差はありません。宅建業法34条の2第11項は「第一項の書面の交付に代えて」と規定しており、第1項の媒介契約書に3類型すべてが含まれます。
標準媒介契約約款の改正(令和4年5月18日施行)も3類型共通で押印廃止・電磁的提供の参照追記が「機械的に同じ形」で入っているため、自社ひな型を1つ用意すれば3類型すべての運用に対応できます(詳細は本文「標準媒介契約約款の改正内容」節)。
Q. 媒介契約書電子化の承諾書に公式雛型はありますか?
公的な法定様式や公式ひな型は用意されていません。国土交通省のIT重説マニュアルQ9は「法定様式やひな型はありません。また、署名、押印を必要とする定めもありません」と明示しています。
したがって宅建業者は、宅建業法施行規則第15条の15とIT重説マニュアル(令和4年4月)P.10 の記載事項要件——①電磁的方法の種類、②ファイルへの記録の方式——を満たす形で自社で承諾書を組み立てる必要があります(記載例は本文「依頼者から承諾を取る:承諾書に書くべき項目」節)。
Q. 媒介契約書電子化の承諾を依頼者が撤回したい場合はどうすればよいですか?
依頼者は、いったん承諾した後でも「書面(紙)で受け取りたい」と申し出ることができます。撤回申出の方式は、書面・電子メール・Webページ・電磁的記録媒体(CD-ROM/USBメモリ等)のいずれでも可で、承諾取得時と同じ4方式が国土交通省IT重説マニュアルP.11で定められています。
承諾書に「撤回を希望される場合は、上記いずれかの方式で貴社(宅建業者)へお申し出ください」と1文添えておくと、依頼者が撤回時に迷わずに済みます(詳細は本文「承諾の撤回方法と依頼者への案内」節)。
Q. 媒介契約書を電子化すると宅建士の記名押印はどうなりますか?
デジタル社会形成整備法による宅建業法改正で、宅建士の押印は廃止され、電子交付でも「宅建士の記名」が電子ファイル内に明示されていれば足ります。標準媒介契約約款も「宅建士が記名押印した書面」→「宅建士が記名した書面」に改められています。
電子契約サービス上の宅建士氏名の表示や署名パネル等で記名を確認できる形で実装するのが実務対応です。加えて、電子契約サービスによる電子署名の付与は電子署名法上の要件を満たす手段ですが、宅建業法上の「宅建士の記名」があるかどうかは電子ファイル内の記載事項として別途確認する必要があります(詳細は本文「宅建士の記名押印の扱い(電子交付での取り扱い)」節)。
Q. 媒介契約書とあわせてレインズ登録証明書も電子交付できますか?
専任媒介・専属専任媒介で交付するレインズ登録証明書(登録を証する書面)も、電磁的方法での提供が可能です。デジタル社会形成整備法による改正で宅建業法34条の2第12項が新設され、標準媒介契約約款にも「宅地建物取引業法第34条の2第12項の規定による提供を含みます」の参照が追記されました。
実務では、媒介契約書と登録証明書を同じ電子契約サービスで一元的に交付・保管する運用にすると、依頼者への通知・承諾取得のフローも一本化できて効率的です(詳細は本文「レインズ登録証明書の電子交付」節)。
Q. 地方公共団体の閲覧時に電子媒介契約書の電子署名はどう確認されますか?
宅建業者が固定資産課税台帳を閲覧する際の電子署名の確認方法は、令和8年3月26日付の国土交通省「国不動第569号」により、一般的なPDF閲覧ソフトウェアの署名パネルから電子署名の存在と改ざんの有無を確認する方法が正式に認められています。
これにより、紙に印刷せずに電子ファイルのまま電子媒介契約書を提示することが、固定資産税課税台帳閲覧の実務でも通用します。本通知は令和6年8月8日付の総務省自治税務局固定資産税課長通知を受けた見直し・補足として発出されたもので、各業界団体の長宛に周知されています(詳細は本文「地方公共団体側での署名確認(国不動第569号)」節)。
Q. 電子化した媒介契約書は何年保存すればよいですか?
媒介契約書を税務証憑として保存する場合、保存期間は税法本体で原則7年、繰越欠損金の適用時は10年です(法人税法施行規則第67条、所得税法施行規則第63条)。電子帳簿保存法本体には保存期間の定めがないため、「電子帳簿保存法で5年」と紐づけると法源を取り違えます。
電子契約サービスの保管機能に加え、社内バックアップの保管年数を7年(または10年)に設定して運用します。あわせて、電子帳簿保存法施行規則第4条の真実性・可視性・検索性の3要件をサービス側の機能で満たせているか確認します(詳細は本文「Step4 電子帳簿保存法の3要件と保存」節)。
Q. 媒介契約書を電子化すると印紙税は削減できますか?
媒介契約書はもともと印紙税の課税文書に該当しないため、電子化しても印紙税削減の効果は発生しません。売買契約書(37条書面)の電子化で語られる「印紙税の非課税化によるコスト削減」は、媒介契約書には当てはまらない点に注意します。
取引先や社内から「電子化で印紙税が浮くのでは」と質問された場合、この点を先回りで整理しておくと、稟議や取引先説明の場で混乱を招きません。媒介契約書電子化のメリットは、締結リードタイムの短縮・保管効率化・遠隔地契約の円滑化・BCP対応といった業務面が中心です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















