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企業買収とは?M&A・合併との違いから手法・進め方までわかりやすく解説

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後継者不在への備えや事業拡大の手段として、「企業買収」や「M&A」という言葉を耳にする機会が増えています。一方で、実際に検討を始めようとすると「買収とは具体的に何をどうすることなのか」「M&Aや合併と何が違うのか」があいまいなまま、という声も少なくありません。

企業買収には株式譲渡や事業譲渡などいくつもの手法があり、進め方や費用の考え方も手法によって変わります。まず言葉の意味と全体像を正しく押さえることが、自社にとって現実的な選択肢かどうかを見極める第一歩になります。

本記事では、企業買収とは何かという定義から、M&A・合併との違い、主な手法、進め方の流れ、費用相場と相談先までを、はじめて調べる方にもわかりやすく解説します。専門用語はその場で意味を補いながら整理するので、「自社で買収を検討すべきか」「誰に相談すればよいか」を判断する材料としてご活用ください。

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企業買収とは?

企業買収とは、ある会社が他の会社の株式や事業を買い取り、その会社の経営権(支配権)を取得することです。「買収」と聞くと乗っ取りのような強引な印象を持つ方もいますが、実際には後継者不在の解決や成長戦略の一環として、当事者双方の合意のもとで行われるケースが大半を占めます。

ここでいう経営権とは、株主総会での議決権を通じて会社の重要事項を決められる立場を指します。会社法では株式を自由に譲渡できることが原則として定められており、株式を買い集めて議決権の多数を握ることで、会社の経営を実質的にコントロールできるようになります。

出典・参考資料(1件)

買収の対象は「会社そのもの(株式)」の場合と「特定の事業だけ」の場合があり、どちらを取得するかで手続きや引き継ぐ範囲が変わります。この違いは後半の「企業買収の手法(スキーム)と違い」で詳しく整理します。

企業買収とM&A・合併の違い

企業買収を理解するうえでつまずきやすいのが、「M&A」「合併」との違いです。ここでは3つの言葉の関係を整理します。

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M&A(エムアンドエー)買収合併
意味Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略。企業の合併・買収・提携などを幅広く含む総称他社の株式や事業を取得して経営権を得ること。M&Aの代表的な手段の一つ2つ以上の会社を1つの法人に統合すること
対象会社法人として存続する(株主や経営権が移る)消滅する会社が生じる(権利義務を存続会社が承継)

M&Aとの違い

M&Aは合併・買収・提携などを含む幅広い総称で、企業買収はそのなかの一手段という関係です。買収はM&Aの一部であり、対立する概念ではありません。実務では、株式や事業を取得して経営権を得る行為をまとめて「M&A(買収)」と呼ぶ場面も多く見られます。

合併との違い

買収と合併の最大の違いは、対象会社が法人として残るかどうかです。買収では対象会社は存続し、株主や経営権が移ります。一方の合併は複数の会社を1つに統合する手続きで、会社法上、合併により消滅する会社が生じ、その権利義務は存続会社(または新設会社)が引き継ぎます。

出典・参考資料(1件)

子会社化・経営統合との違い

子会社化は、買収の結果として対象会社を自社グループの支配下(議決権の過半数などを保有する状態)に置くことを指し、買収の一つの結果形態といえます。経営統合は、複数の会社が持株会社の傘下に入るなどして経営を一体化させる枠組みで、買収や合併を組み合わせて実現されることもあります。いずれも「買収」と近い文脈で使われますが、指している範囲が異なる点に注意が必要です。

友好的買収と敵対的(同意なき)買収

企業買収は、対象会社の経営陣(取締役会)の同意を得て進めるかどうかで、大きく2種類に分けられます。ここからは、その違いと、買収に備える防衛策を解説します。

友好的買収

友好的買収は、対象会社の取締役会の合意を得たうえで進める買収です。中小企業の事業承継や、成長を目的とした売却の多くはこの形にあたります。売り手と買い手が条件をすり合わせながら進めるため、従業員の雇用や取引先との関係を維持しやすい点が特徴です。

敵対的(同意なき)買収

敵対的買収は、対象会社の取締役会の同意を得ないまま、株式を買い集めて経営権の取得を目指す買収です。主に上場企業を対象に、株式公開買付け(TOB)などを通じて行われます。中小企業(非上場)の実務ではまれですが、株式をどれだけ握ると何ができるのかを知っておくと、経営権と議決権の関係を理解しやすくなります。

会社法では、株主総会の決議に必要な議決権の割合が定められています。普通決議は出席株主の議決権の過半数、重要事項を扱う特別決議は出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。(第1項)
前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、……出席した当該株主の議決権の三分の二……以上に当たる多数をもって行わなければならない。(第2項)

出典:会社法 第309条(株主総会の決議)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

この規定から、議決権のおおよその目安が導けます。過半数(約51%)を握れば普通決議を単独で可決でき、3分の2(約67%)以上を握れば定款変更などの特別決議も単独で可決できます。逆に3分の1(約34%)を超えて保有すると、単独で特別決議を阻止できます。特別決議に必要な3分の2の賛成が成立しなくなるためです。いずれも定款で異なる割合を定められる「原則」の数値です。

買収防衛策(事前・事後)

買収防衛策は、望まない買収から経営権を守るための対策で、実施のタイミングによって事前と事後に分かれます。

  • 事前の防衛策:買収を仕掛けられる前に備える手段。買収者が一定割合の株式を取得した際に他の株主へ新株予約権を割り当てて持株比率を下げる「ポイズンピル(ライツプラン)」などが知られています。
  • 事後の防衛策:買収を仕掛けられた後に対抗する手段。友好的な第三者(ホワイトナイト)に支援を求める、重要事業を切り離すなどの方法があります。

買収防衛策は主に上場企業で問題になる論点です。まずは「敵対的な買収に備える仕組みがある」という全体像を押さえておけば十分です。

企業買収の手法(スキーム)と違い

企業買収には複数の手法(スキーム)があり、「何を取得するのか」「対象会社が存続するか」「手続きの重さ」が異なります。まず全体像を一覧で確認し、そのあと制度上の分類ごとに解説します。

企業買収の手法を『何を取得するか』で3つに分類した図。株式取得は会社そのもの(株式)を取得する方法で、株式譲渡・株式交換・株式移転・第三者割当増資・TOBが該当する。事業の取得は特定の事業だけを選んで売買する方法で、事業譲渡が該当する。会社の分割は事業に関する権利義務を別会社へ承継させる組織再編で、会社分割が該当する。
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株式譲渡株式交換株式移転第三者割当増資TOB(株式公開買付け)事業譲渡会社分割
分類株式取得株式取得株式取得株式取得株式取得事業の取得会社の分割
取得・移転するもの対象会社の株式対象会社の発行済株式の全部対象会社の発行済株式の全部新たに発行する株式上場会社の株式特定の事業(資産・負債・契約など)事業に関する権利義務
手続き・特徴株式を売買して経営権を移す。手続きが比較的シンプルで、中小企業のM&Aで最も多く使われる対象会社を完全子会社化する。対価に自社株式を使える新たに設立する持株会社に株式を取得させる。経営統合で使われる特定の相手に新株を割り当てて資本参加。資本提携や資金調達を兼ねる上場会社の株式を市場外でまとめて買い付ける。金融商品取引法上の手続きが必要会社ではなく事業だけを売買。引き継ぐ範囲を選べるが、契約や許認可の移転手続きが個別に必要事業を切り出して別会社へ承継させる(吸収分割・新設分割)。組織再編の枠組みを使う

各手法の定義は会社法・金融商品取引法にもとづく。2026年9月時点の制度概要。

株式取得による買収

株式取得は、対象会社の株式を手に入れて経営権を得る方法です。会社そのものを引き継ぐため、資産・負債・契約・従業員などがそのまま対象会社に残る点が特徴です。代表的な手法は次のとおりです。

株式譲渡

株式譲渡は、対象会社の株主が保有する株式を買い手に売却し、経営権を移す手法です。会社法上、株式は原則として自由に譲渡できるため、手続きが比較的シンプルで、中小企業のM&Aで最も多く用いられます。会社の資産や契約関係を包括的に引き継げる一方、後述する簿外債務なども一緒に引き継ぐ点に注意が必要です。

株式交換・株式移転

株式交換は、対象会社の発行済株式の全部を他の会社に取得させ、完全子会社にする手法です。株式移転は、1つまたは複数の会社が発行済株式の全部を新たに設立する会社に取得させる手法で、持株会社を作って経営統合する場面で使われます。いずれも対価に自社株式を活用できる点が、現金が必要な株式譲渡との違いです。

第三者割当増資

第三者割当増資は、対象会社が特定の相手に新株を発行して割り当てる方法で、会社法上の募集株式の発行等の枠組みで行われます。買い手は資本参加によって議決権を得られ、対象会社は資金を調達できるため、資本業務提携の入り口として使われることもあります。

TOB(株式公開買付け)

TOB(株式公開買付け)は、上場会社の株式を市場外で不特定多数の株主から買い付ける手法です。買付け価格や期間を公告して行うもので、一定の条件に該当する場合は金融商品取引法によりTOBによることが義務づけられています。非上場の中小企業の買収では使われませんが、ニュースで見かける上場企業の買収でよく登場します。

事業譲渡

事業譲渡は、会社そのものではなく、特定の事業(資産・負債・契約・従業員など)を選んで売買する手法です。会社法上、事業の全部または重要な一部を譲渡する場合は株主総会の決議が必要とされています。引き継ぐ範囲を個別に選べるため、簿外債務などを承継しにくい一方、契約の巻き直しや許認可の取り直しといった移転手続きが個別に発生します。

会社分割

会社分割は、会社が営む事業に関する権利義務を、他の会社に承継させる組織再編の手法です。既存の会社に承継させる「吸収分割」と、新たに設立する会社に承継させる「新設分割」の2類型があります。事業譲渡と似ていますが、権利義務を包括的に承継できる点や、対価に株式を使える点が異なります。

出典・参考資料(2件)

企業買収のメリット

買い手にとっての企業買収のメリットは、時間をかけずに経営資源を取り込める点に集約されます。代表的なものは次のとおりです。

  • 事業規模・シェアの拡大:同業の会社を取得することで、売上や市場シェアを一気に広げられます。
  • 新規事業への参入:すでに事業基盤を持つ会社を取得すれば、ゼロから立ち上げるより短期間で新分野へ参入できます。
  • シナジー(相乗効果)の創出:販売網や技術を組み合わせることで、単独では得られない効果を狙えます。
  • 人材・技術・ノウハウの獲得:採用や研究開発に時間がかかる人材や技術を、事業ごと取り込めます。
  • リスク分散:異なる事業や地域を取得することで、特定の市場に依存しない体制を作れます。

企業買収のデメリット・リスク

企業買収には相応のリスクも伴います。特に押さえておきたいのが次の4点です。いずれも事前の調査(デューデリジェンス)や統合計画で影響を抑えられるため、リスクの中身を理解しておくことが重要です。

簿外債務・偶発債務の引き継ぎ

簿外債務とは、貸借対照表に計上されていない債務のことです。未払残業代や保証債務、係争中の訴訟による賠償リスク(偶発債務)などが該当します。株式譲渡のように会社を包括的に引き継ぐ手法では、こうした債務も一緒に承継してしまうおそれがあるため、買収前の調査で洗い出すことが欠かせません。

PMI(経営統合)の負担

PMI(Post Merger Integration=買収後の経営統合)は、買収後に人事制度や業務システム、企業文化を統合していく取り組みです。ここがうまくいかないと、期待したシナジーが得られず、買収そのものが失敗に終わることもあります。買収は「成約したら終わり」ではなく、統合まで見据えて計画する必要があります。

人材の流出

買収による環境の変化をきっかけに、対象会社の中核人材や経営陣が退職してしまうことがあります。人材や技術の獲得を目的に買収したのに肝心の人が抜けてしまえば、狙った効果は得られません。処遇や役割を早期に示し、キーパーソンの定着を図ることが重要です。

のれんの減損リスク

のれんとは、買収額が対象会社の純資産を上回る差額のことで、ブランド力や顧客基盤など目に見えない価値を表します。日本の会計基準では、のれんは資産に計上し、20年以内の期間にわたって規則的に償却します。買収後に期待した収益が得られず価値が損なわれたと判断されると、のれんは減損会計の対象となり、減損損失を計上することになります

出典・参考資料(1件)

企業買収の進め方・流れ

企業買収は、目的の整理から統合までを段階的に進めます。ここでは、一般的な流れを8つのステップで示します。

企業買収の進め方を8つのステップで示した流れ図。ステップ1は目的・戦略の策定、ステップ2は相手先の探索・選定、ステップ3はトップ面談・条件交渉、ステップ4は基本合意書の締結、ステップ5はデューデリジェンス(対象会社を精査しリスクを洗い出す)、ステップ6はバリュエーション(最終的な買収価格を算定)、ステップ7は最終契約の締結、ステップ8はクロージング・PMI(決済・経営権の移転と統合)。
  1. 目的・戦略の策定:なぜ買収するのか、どんな会社を求めるのかを明確にします。
  2. 相手先の探索・選定:仲介会社やアドバイザーの支援を受けながら、候補企業を探します。
  3. トップ面談・条件交渉:経営者同士が面談し、譲渡価格や条件をすり合わせます。
  4. 基本合意書の締結:おおまかな条件で合意し、基本合意書を結びます。
  5. デューデリジェンス(買収監査):財務・法務・事業などの観点から対象会社を精査し、リスクを洗い出します。
  6. バリュエーション(企業価値評価):調査結果を踏まえ、最終的な買収価格を算定します。
  7. 最終契約の締結:譲渡内容を確定し、最終契約を結びます。
  8. クロージング・PMI:代金の決済と経営権の移転を行い、統合(PMI)を進めます。

中小企業のM&Aについては、中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を公表し、進め方や仲介者・アドバイザーの留意事項を示しています。進め方の詳細を確認したいときの参考になります。

出典・参考資料(1件)

買収を成功させるためのポイント

買収を成功に近づけるには、進め方の各段階での質が問われます。特に次の3点が重要です。

  • デューデリジェンスを徹底する:簿外債務や訴訟リスクを見落とさないよう、財務・法務・事業の各面から丁寧に精査します。
  • 統合(PMI)を計画的に進める:買収後の人事・システム・文化の統合を、成約前から計画しておきます。
  • 専門家の支援を受ける:手続きが多岐にわたるため、M&A仲介会社やアドバイザーなど専門家の関与が有効です。

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企業買収の費用相場と相談先

企業買収では、対象会社を取得する費用に加えて、仲介会社やアドバイザーへの手数料、デューデリジェンス費用などがかかります。ここでは、費用の考え方と、どこに相談すればよいかを整理します。

手数料体系(レーマン方式)の考え方

M&Aの仲介会社やアドバイザーの成功報酬は、「レーマン方式」と呼ばれる計算方法が広く使われています。取引金額が大きくなるほど手数料率が段階的に下がる仕組みで、区分ごとに料率を適用して合算します。一般的な料率区分は次のとおりです。

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5億円以下の部分5億円超〜10億円以下の部分10億円超〜50億円以下の部分50億円超〜100億円以下の部分100億円超の部分
手数料率5%4%3%2%1%

一般的なレーマン方式の料率区分の例。実際の料率・区分は会社により異なる。

たとえば譲渡対価が3億円の場合、5億円以下の部分に5%を適用して手数料は1,500万円程度が目安です。最低手数料を設けている会社も多く、その水準は数百万円から会社によって幅があります。着手金や中間金の有無とあわせて、依頼前に料金体系を確認することが大切です。財務・法務などのデューデリジェンス(買収監査)を専門家に依頼する場合は、これとは別に費用がかかります。

企業価値評価(バリュエーション)の3つのアプローチ

買収価格の土台となる企業価値は、主に3つのアプローチで評価されます。実務ではこれらを組み合わせて算定するのが一般的です。

  • コストアプローチ:会社の純資産(時価)をもとに評価する方法。中小企業で使われることが多い。
  • マーケットアプローチ:類似する上場企業や過去の取引事例と比較して評価する方法。
  • インカムアプローチ:将来生み出すと見込まれる利益やキャッシュフローをもとに評価する方法(DCF法など)。

どこに相談すればいいか(仲介・FA・公的機関の違い)

企業買収の相談先は、大きく3つに分けられます。それぞれ立場が異なるため、自社の状況に合わせて選ぶことが大切です。

  • M&A仲介会社:売り手と買い手の間に立ち、双方の合意形成を支援します。中立の立場でマッチングから成約までを仲介します。
  • ファイナンシャル・アドバイザー(FA):売り手または買い手の一方と契約し、依頼者の利益を最大化する立場で助言します。譲渡条件を有利に進めたい場合に向きます。
  • 公的な支援機関:各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターなどが、中立の立場で無料相談に対応しています。

公的機関の活用も広がっており、全国の事業承継・引継ぎ支援センターにおける第三者承継(M&A)の成約件数は、令和6年度で2,132件に達しています。仲介とFAの役割の違いや手数料の考え方は、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」でも整理されています。

出典・参考資料(1件)

買収される側(売り手)はどうなる?

買収は買い手の視点で語られがちですが、売り手(買収される側)にとっても重要な選択です。友好的な買収では、次のような変化が想定されます。

従業員への影響

株式譲渡のように会社が存続する形の買収では、従業員の雇用は原則としてそのまま引き継がれます。事業承継を目的とした買収では、後継者不在で廃業に至れば失われていた雇用を守れる点が、売り手にとっての大きな意義になります。ただし、統合の過程で人事制度や評価が変わることはあり、処遇の擦り合わせが課題になる場合があります。

取引先との関係

会社が存続する買収では、取引先との契約や関係も基本的に維持されます。むしろ、買い手企業の信用力や販売網が加わることで、取引が広がるケースもあります。一方で、事業譲渡のように契約を個別に移す手法では、取引先ごとに契約を結び直す必要が生じることがあります。

企業風土の変化

買収後は、買い手企業の経営方針や意思決定の仕組みが持ち込まれ、企業風土が変わることがあります。これは成長の機会にもなりますが、従業員の戸惑いにつながることもあります。売り手にとっては、買い手が自社の文化や従業員をどう扱う方針かを、交渉段階で確認しておくことが安心につながります。

経産省「企業買収における行動指針」(2023年策定)とは

企業買収をめぐる近年の動きとして、経済産業省が2023年8月に「企業買収における行動指針」を策定・公表しました。これは、上場会社の経営支配権を取得する買収を中心に、当事者が尊重すべき原則やベストプラクティスを示したものです。

指針では、企業価値・株主共同の利益の原則、株主意思の原則、透明性の原則という3つの原則が示されています。対象はあくまで上場会社の買収であり、非上場の中小企業の買収を直接規律するものではありませんが、買収を健全なものとして捉える社会的な流れを表す動きとして押さえておくと理解が深まります。

出典・参考資料(1件)

企業買収の相談はM&Aアドバイザリー・FAへ

企業買収は手続きが多く、専門的な判断が求められる場面が続くため、買い手・売り手のいずれの立場でも専門家の関与が有効です。特に会社や事業の売却・譲渡を検討する売り手は、依頼者の立場に立って条件交渉まで支援するファイナンシャル・アドバイザー(FA)に相談することで、進め方の見通しを立てやすくなります。

ここでは、M&Aアドバイザリー・FAサービスを紹介します。一般的な業種のM&Aは1社目を、Web3・ブロックチェーン領域の案件は2社目を、それぞれ相談先の候補として検討できます。

各サービスの支援範囲や手数料体系を横断的に確認したい場合は、以下の比較表もあわせてご覧ください。

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サービス名M&A LeadWeb3業界特化M&Aアドバイザリー|Consensus Base
サービス形態売主専門(セルサイド専任)
買主からは手数料を受け取らない片手取引
買収・売却の両方に対応する
伴走型M&Aアドバイザリー
特化・対応領域業種を問わず対応
(事業承継〜上場子会社の売却まで)
Web3・ブロックチェーンに特化
(GameFi・NFT・DeFi等の技術DDに対応)
手数料体系完全成功報酬制
レーマン方式(譲渡対価の1〜5%)
着手金・中間金なし
要問い合わせ
(案件ごとの個別見積もり)
対応エリア全国対応国内外(クロスボーダー対応)
無料相談ありあり
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る

1. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadのウェブサイト

M&A Leadは、売り手(譲渡企業)だけの立場で支援する「売主専門」のM&Aアドバイザリーです。売り手と買い手の双方から手数料を受け取る一般的な仲介会社とは異なり、買い手からは手数料を受け取らない「片手取引」を採用しています。譲渡価格や雇用・契約条件など、売り手に有利な条件の追求に専念できる立場を明確にしているのが特徴です。

着手金・中間金・月額報酬はかからず、成約時のみ費用が発生する完全成功報酬制で、手数料はレーマン方式(譲渡対価の1〜5%)にもとづきます。相談は無料で全国に対応しており、事業承継から上場企業の子会社の切り出しまで、幅広い規模・背景の売却案件を扱っています。後継者不在の解決や、成長のための会社・事業の売却を検討する売り手に向いたサービスです。

2. Web3業界特化M&Aアドバイザリー(コンセンサス・ベイス株式会社)

Consensus BaseのM&Aアドバイザリーのウェブサイト

コンセンサス・ベイスが提供するのは、Web3・ブロックチェーン業界に特化したM&Aアドバイザリーです。同社はブロックチェーンの受託開発で培った技術知見を持ち、その強みをM&Aの技術デューデリジェンスや事業評価に活かせる点が特徴です。スマートコントラクトの評価やトークンの取り扱いに関する法務的な整理など、Web3特有の論点に対応します。

対象は、GameFi(ゲームで報酬を得られる仕組み)やNFT、DeFi(分散型金融)などのWeb3事業を買収して参入したい企業や、自社のWeb3アセットを売却・資本提携したい企業です。候補先の探索から契約交渉、統合(PMI)まで一気通貫で支援し、国内外のネットワークを活用したクロスボーダー案件にも対応します。

料金は案件ごとの個別見積もりで、初期相談は無料です。一般的な事業の買収ではなく、Web3・ブロックチェーン領域という特化した分野で相談先を探す場合の選択肢になります。

ここで紹介した2社のほかにも、M&Aや事業承継、財務戦略を支援する会社は数多くあります。専門領域ごとの違いや費用相場、選び方をふまえて相談先を広く比較したい場合は、以下の記事もあわせてご確認ください。

まとめ

企業買収とは、他社の株式や事業を買い取り、経営権を取得することです。M&Aという総称の一手段であり、会社が存続する点で合併とは異なります。手法には株式譲渡・事業譲渡・会社分割などがあり、「何を取得するか」「手続きの重さ」によって使い分けられます。

買収には事業拡大や人材獲得といったメリットがある一方、簿外債務の引き継ぎやPMIの負担といったリスクも伴います。進め方は目的の整理からデューデリジェンス、統合までの段階を踏み、手続きが多岐にわたるため、仲介会社やアドバイザーなど専門家の支援が有効です。

後継者不在に備えたい、あるいは単独では時間のかかる事業拡大や新分野への参入を進めたいといった課題があるなら、買収や売却は現実的な選択肢になります。まずは言葉の意味と全体像を押さえたうえで、自社の状況に合った相談先を選ぶことから始めてみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 企業買収とは何ですか?

A. 企業買収とは、ある会社が他の会社の株式や事業を買い取り、その会社の経営権(支配権)を取得することです。M&A(合併・買収の総称)の代表的な手段の一つで、乗っ取りのような強引なものではなく、後継者不在の解決や成長戦略の一環として、当事者双方の合意のもとで行われるケースが大半を占めます。

Q. 企業買収とM&A・合併は何が違いますか?

A. 企業買収は、M&Aという総称に含まれる一手段であり、対象会社が法人として存続する点で合併とは異なります。M&Aは合併・買収・提携などを幅広く含む言葉で、買収はそのなかの代表的な手段です。買収では対象会社は存続して株主や経営権が移るのに対し、合併は複数の会社を1つに統合するため、会社法上、消滅する会社が生じその権利義務を存続会社が引き継ぎます。

Q. 中小企業の買収では、どの手法が多く使われますか?

A. 中小企業のM&Aでは、株式を売買して経営権を移す「株式譲渡」が最も多く使われます。会社法上、株式は原則として自由に譲渡できるため手続きが比較的シンプルで、会社の資産や契約関係を包括的に引き継げるのが理由です。ただし包括的に引き継ぐぶん、簿外債務など隠れた負担も一緒に承継するおそれがあるため、買収前の調査(デューデリジェンス)で洗い出すことが欠かせません。

Q. デューデリジェンス(DD)とは何ですか?

A. デューデリジェンス(DD)とは、買収の前に対象会社を財務・法務・事業などの観点から精査し、リスクを洗い出す調査のことです。買収監査とも呼ばれ、買収の流れの中盤(条件のすり合わせ後、最終契約の前)に行われます。簿外債務や係争中の訴訟といった見えないリスクを見落とさないための重要な工程で、ここでの発見が最終的な買収価格や契約条件にも反映されます。

Q. 企業買収にはどのくらいの費用がかかりますか?

A. 企業買収では、対象会社を取得する費用に加えて、仲介会社やアドバイザーへの手数料、デューデリジェンス費用などがかかります。対象会社の取得費用は企業価値評価(バリュエーション)にもとづいて決まり、金額は案件ごとに大きく異なります。

仲介・アドバイザーの成功報酬は、取引金額が大きくなるほど料率が段階的に下がる「レーマン方式」で計算されるのが一般的です。着手金や中間金の有無、最低報酬額は会社によって異なるため、依頼前に料金体系を確認することが大切です。

Q. 企業買収について相談したいときは、どこに相談すればよいですか?

A. 企業買収の相談先は、M&A仲介会社、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)、公的な支援機関の大きく3つに分けられます。仲介会社は売り手と買い手の間に立って中立の立場で成約までを支援し、FAは売り手か買い手の一方と契約して依頼者に有利な条件を追求する立場で助言します。

まず中立の立場で無料相談したい場合は、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターも選択肢になります。自社が売り手か買い手か、条件交渉をどこまで委ねたいかに応じて選ぶとよいでしょう。

Q. 中小企業でも企業買収(M&A)はできますか?

A. 企業買収(M&A)は中小企業でも広く行われており、後継者不在の解決策としても活用されています。事業規模が大きくなくても、仲介会社やアドバイザー、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターといった公的機関の支援を受けながら進められます。後継者不在や成長戦略の選択肢として、現実的に検討できます。

Q. 敵対的買収で自社が乗っ取られる心配はありますか?

A. 取締役会の同意を得ずに進める敵対的(同意なき)買収は、主に上場企業を対象としたもので、非上場の中小企業の実務ではまれです。敵対的買収は株式公開買付け(TOB)などで株式を買い集めて行われるもので、望まない買収から経営権を守る「買収防衛策」も、主に上場企業で問題になる論点です。中小企業では「敵対的買収に備える仕組みがある」という全体像を押さえておけば十分で、過度に不安視する必要はありません。

Q. 買収される側(売り手)にはどんなメリットがありますか?

A. 買収される側(売り手)には、後継者不在で廃業に至れば失われていた雇用や事業を守れるという大きなメリットがあります。株式譲渡のように会社が存続する形の買収では、従業員の雇用は原則としてそのまま引き継がれ、取引先との契約や関係も基本的に維持されます。むしろ、買い手企業の信用力や販売網が加わることで取引が広がるケースもあります。

一方で、統合の過程で人事制度や評価が変わり、処遇の擦り合わせが課題になる場合もあります。買い手が自社の文化や従業員をどう扱う方針かを、交渉段階で確認しておくと安心です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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