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ブロックチェーンによるトレーサビリティとは?仕組み・活用事例・導入課題をわかりやすく解説

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産地偽装や模倣品への対策、製品回収(リコール)が起きたときの原因究明のスピードは、多くのメーカーや流通企業にとって悩みの種です。こうした課題への打ち手として、生産から流通までの履歴を「後から書き換えられない形」で記録するブロックチェーンのトレーサビリティが注目されています。

取引先や経営層から相談を受けて調べ始めた人も、自社の課題から自分で情報を集め始めた人も、まずは「うちの製品でもブロックチェーンで追跡できるのか」を仕組みから理解したいと考えています。

本記事では、ブロックチェーンを使ったトレーサビリティとは何か、なぜ改ざん防止や追跡に強いのかという仕組みを、従来のデータベースやバーコード管理との違いを交えて解説します。あわせて、食品・製造・サプライチェーンでの実際の活用事例と、オラクル問題やコストといった導入前に知っておきたい課題まで整理します。

読み終えたときに、社内で説明できるレベルで仕組みと事例をつかみ、自社の産地証明・リコール追跡・真贋証明にブロックチェーンが向くかどうかを判断するための材料が得られる構成にしています。実現を支援するサービスも後半で紹介します。

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ブロックチェーンによるトレーサビリティとは

ブロックチェーンによるトレーサビリティとは、原材料の生産から加工・流通・販売までの履歴を、ブロックチェーンという改ざんが難しいデータベースに記録し、後からたどれるようにする仕組みです。「いつ・どこで・誰が・何を扱ったか」の記録を関係者で共有し、問題が起きたときにさかのぼって原因を特定したり、逆に出荷先を追跡したりできる状態をつくります。

そもそもトレーサビリティ(追跡可能性)は、食品分野では農林水産省が次のように定義しています。

食品トレーサビリティとは、「食品の移動を把握できること」
各事業者が食品を取扱った際の記録を作成し保存しておくことで、食中毒など健康に影響を与える事故等が発生した際に、問題のある食品がどこから来たのかを調べ(遡及)、どこに行ったかを調べること(追跡)ができます。

出典:トレーサビリティ関係|農林水産省

この「移動を把握し、遡及・追跡できる」という考え方は食品に限りません。工業製品の部品履歴、医薬品の流通経路、ブランド品の真贋証明など、産地偽装やリコール、模倣品が問題になる分野に共通する仕組みです。ブロックチェーンは、この履歴を「一度記録したら後から書き換えにくい形」で残せる点が、従来の管理方法との大きな違いになります。

トレーサビリティが求められる背景

トレーサビリティへの関心が高まっている背景には、大きく3つの動機があります。1つ目は消費者保護で、食中毒や異物混入などの事故が起きたとき、問題のある製品がどこから来てどこへ行ったかを速やかに特定し、被害の拡大を防ぐ必要があります。

2つ目はブランド保護です。産地偽装や模倣品が出回ると、正規の生産者やブランドの信頼が損なわれます。履歴を証明できれば、「本物であること」「表示どおりの産地であること」を裏づけられます。3つ目はリコール対応の効率化で、不具合が判明した際に、影響範囲を絞り込んで対象製品だけを回収できれば、コストと時間を抑えられます。

ブロックチェーンの基礎(分散台帳・改ざん耐性)

ブロックチェーンは、取引データを「ブロック」という単位でまとめ、それを鎖(チェーン)のように連結して保存する技術です。学術研究では、次のように整理されています。

ブロックチェーン技術とは、分散してデータを管理する仕組みである。ネットワーク参加者全員が同じデータを保持するため、一部の参加者のノードで障害が発生しても、それ以外のノードで処理を継続することが可能であり、高い業務継続性を実現する。また、データは順次、前のデータとそのハッシュ値を用いて連結されているため、データの改ざんは非常に困難である。

出典:ブロックチェーン技術がトレーサビリティおよび消費者行動に与える影響について|岩田健一郎・河合勝彦(経営情報学会2019年秋季全国研究発表大会)

ポイントは「参加者全員が同じデータを持つ(分散)」ことと、「前のデータのハッシュ値でつないでいるため書き換えが難しい(改ざん耐性)」ことの2点です。この2つが、トレーサビリティの土台となる「後から履歴を書き換えられない」性質を生み出します。次の章で、その仕組みをもう一段くわしく見ていきます。

なぜ改ざんに強く追跡できるのか(仕組み)

ここからは、ブロックチェーンがなぜ改ざんに強く、履歴を追跡できるのかを、仕組みの面から解説します。「改ざんできない」という言葉だけでは腹落ちしにくいため、3つの原理に分けて整理します。

改ざんに強い3つの原理(ハッシュ連結・分散保持・合意形成)

1つ目はハッシュ連結です。ハッシュ値とは、データを一定の長さの文字列に変換した「指紋」のようなもので、元のデータが少しでも変わると値が大きく変化します。ブロックチェーンでは、各ブロックに前のブロックのハッシュ値を含めて連結するため、途中の記録を1つ書き換えると、それ以降のブロックのハッシュ値がすべて食い違い、改ざんがすぐに露見します。

2つ目は分散保持です。台帳は特定の管理者だけが持つのではなく、ネットワークに参加する複数のノード(コンピューター)が同じ内容を保持します。一部のノードが壊れたり書き換えられたりしても、他のノードに同じ履歴が残っている状態をつくります。

3つ目は合意形成です。仮に1台のノードで記録を改ざんしても、他の多数のノードが持つ「正しい履歴」と一致しないため、ネットワーク全体としてはその改ざんを受け入れません。エンタープライズ向けのブロックチェーン基盤であるHyperledger Fabricの公式ドキュメントも、この点を次のように説明しています。

Each block’s header includes a hash of the block’s transactions, as well a hash of the prior block’s header. In this way, all transactions on the ledger are sequenced and cryptographically linked together. (中略) Even if one node hosting the ledger was tampered with, it would not be able to convince all the other nodes that it has the ‘correct’ blockchain because the ledger is distributed throughout a network of independent nodes.

出典:Ledger(release-2.5)|Hyperledger Fabric Documentation

つまり「各ブロックが前のブロックのハッシュで鎖のようにつながっている(ハッシュ連結)」「台帳が独立した複数のノードに分散している(分散保持)」「1台を書き換えても他のノードを説得できない(合意形成)」という3つが組み合わさることで、後から履歴を書き換えられない状態が生まれます。

ブロックチェーンが改ざんに強い3つの原理を示す図。ハッシュ連結(各ブロックに前のブロックのハッシュ値を含めて連結し、途中を書き換えると以降の値が食い違い改ざんが露見する)、分散保持(台帳を複数のノードが同じ内容で保持し、一部が壊れても他のノードに同じ履歴が残る)、合意形成(1台を書き換えても他の多数のノードの正しい履歴と一致せず改ざんが受け入れられない)の3つが組み合わさり、後から履歴を書き換えられない状態が生まれることを示す。

トレーサビリティの実装で使われるのは、参加者を限定した許可型(コンソーシアム型・プライベート型)のブロックチェーンが中心です。

従来のデータベース・バーコード管理との違い

従来のトレーサビリティは、特定の管理者が中央のデータベースで記録を管理する「中央集権型」が主流でした。総務省の実証事業資料では、中央集権型とブロックチェーンを用いた分散型の違いが、以下のように対比されています。従来方式が悪いという話ではなく、「誰が記録を管理し、書き換えの余地がどこにあるか」という構造の違いを押さえておくと、ブロックチェーンが向く場面が判断しやすくなります。

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比較項目記録の管理主体記録の書き換えにくさ障害時の継続性履歴の共有範囲
従来方式(中央集権型データベース)特定の管理者が取引データを管理し、更新や参照の許可も管理者が握る管理者の権限があれば記録を後から変更でき、改ざんの検知は仕組みに依存中央のシステムが単一障害点になりやすい管理者を介して参照を許可する形が基本
ブロックチェーン方式(分散型)管理者などの第三者機関の監視がなくても、参加者全員でシステムを運用するハッシュ連結と分散保持により、後からの書き換えが露見しやすい一部のノードで障害が起きても、他のノードで処理を継続できる取引の当事者どうしが同じ履歴を共有し、相互に監視できる

※中央集権型・分散型の管理構造の記述は、下記の総務省実証事業資料の対比を参照しています。

出典・参考資料(1件)

現物とデータをどう結びつけるか(QR・2次元コード)

ブロックチェーンは「記録を守る」仕組みですが、それだけでは現物(実際の製品)とデータを結びつけられません。そこで実務では、QRコードや2次元コード、ICタグといった識別コードを現物に付け、その読み取りを起点にブロックチェーンへ記録する形が取られます。総務省の実証事業では、食材の流通をQRコードで管理し、取引データと紐づける運用フローが示されています。

QRコードで現物とブロックチェーン上の記録を結びつける流れを示す図。STEP1の生産(川上)では産地を入力してQRコードを印字し商品や伝票に添付、STEP2の加工・流通(川中)では入荷時にQRコードを読み込み出荷時にあらためて印字、STEP3の飲食・小売(川下)では入荷時にQRコードを読み込み産地などの履歴を確認する。各段階の読み取り・印字を起点にブロックチェーンへ記録し、現物と履歴をつなぐことを示す。

具体的には、生産業者が産地を出荷時に入力してQRコードを印字し、商品や伝票に添付します。加工・流通業者や飲食業者は、入荷時にそのQRコードを読み込み、出荷時にはあらためてQRコードを印字してシステムで手続きします。

こうして「現物に付いたコード」と「ブロックチェーン上の記録」を各段階で結びつけることで、川上から川下まで履歴が途切れずにつながります。ブロックチェーン単体ではなく、識別コードとの組み合わせが実務の要になる点は、押さえておきたいところです。

出典・参考資料(1件)

業界別の活用事例(食品・製造・医薬・サプライチェーン)

ここからは、ブロックチェーンによるトレーサビリティが実際に使われている事例を、企業名・追跡対象・成果とともに紹介します。食品なら事故時の回収範囲の特定、製造なら真贋証明、商社なら調達・流通の透明化と、業界によって効きどころは変わります。まずは全体像を一覧で示します。

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事例ウォルマート × IBM Food Trust伊藤忠商事の実証実験旭化成 × TIS「Akliteia®」ヘルスケア・ブロックチェーン・コラボレーション(HBC)日本ジビエ振興協会(mijin採用)総務省・九州の中食/外食実証
業界食品小売商社・サプライチェーン製造・真贋証明医薬食品(ジビエ)食品(中食・外食)
追跡対象葉物野菜など食品天然ゴム原料ブランド品(皮革製品・鞄など)医療用医薬品の流通経路・在庫ジビエ(野生鳥獣肉)個体うなぎ・ぶた・とりなどの食材
主な成果店舗から農場までの追跡が7日から2.2秒に短縮(初期パイロット)生産地から加工工場までの流通の透明化偽造品の混入段階を可視化し、真正性と原本性を担保工場出荷から廃棄までを可視化するプラットフォームの運用検証(2023年4月開始)検査・加工・破棄の履歴を個体単位で保存し改ざんを検知参加事業者による産地表示の共有、消費者の79.6%が普及希望

食品小売:ウォルマート × IBM Food Trust

ブロックチェーンによる食品トレーサビリティの代表例が、ウォルマートとIBM、そして11社の食品企業が構築したIBM Food Trustです。ウォルマートとIBMの初期パイロットでは、店舗から農場まで商品をたどるのにかかっていた時間が、7日からわずか2.2秒に短縮されました。大腸菌汚染などの食品事故が起きたとき、この追跡スピードが被害拡大の防止に直結します。

出典・参考資料(1件)

国内の事例:商社・製造・医薬での取り組み

国内でも複数の事例があります。伊藤忠商事は、事業投資先や取扱商品のサプライチェーン上の資源を安定的に調達・供給し、流通の透明性を確保するため、ブロックチェーンを使ったトレーサビリティシステムの実証実験を実施しました。スマートフォンアプリで受渡者間の取引内容を相互認証し、日時・位置情報とあわせてブロックチェーン上に記録することで、天然ゴムが加工工場に至るまでの流通を透明化する取り組みです。

真贋証明の分野では、旭化成とTISが偽造防止デジタルプラットフォーム「Akliteia®」を構築しています。当初は皮革製品や鞄などのブランド品を対象に、正規品であることを証明する用途で展開されています。

偽造防止ラベル・真贋判定デバイス・ブロックチェーンの3要素で構成され、真贋判定デバイスのスキャン結果を、ブロックチェーンプラットフォーム「Corda」を用いたクラウドサービス「Akliteia®ネット」に記録します。これにより、サプライチェーンのどの段階で偽造品が多く混入したかを、定量的に把握・可視化できるようになります。

出典・参考資料(2件)

医薬品の分野でも取り組みが進んでいます。塩野義製薬・武田薬品・田辺三菱製薬・ファイザーと日本IBMが主導するコンソーシアム「ヘルスケア・ブロックチェーン・コラボレーション(HBC)」は、医薬品データプラットフォームの運用検証を2023年4月に開始しました。

ブロックチェーンと、商品識別の国際標準を定めるGS1の履歴記録の規格(EPCIS)を組み合わせ、医薬品の流通経路と在庫を可視化する仕組みです。工場出荷から廃棄までのトレーサビリティ強化と、偽造医薬品の流通防止をめざしています。医薬品は品質保持や偽造防止の観点から適正流通が強く求められる分野で、欧米では追跡の法制化も進んでいます。

出典・参考資料(1件)

サプライチェーン全体でブロックチェーンを活用する場合のメリットや進め方は、伊藤忠商事のような取り組みも含めて、導入事例とあわせて別記事で整理しています。自社の調達・流通の透明化に関心がある方は、こちらも参考になります。

公的な実証:食材トレーサビリティと消費者の反応

食品分野では、公的な実証事業のデータも参考になります。日本ジビエ振興協会は、国産ジビエ肉の流通ルートを確立するため、プライベート型ブロックチェーンを用いた個体管理システムを導入しました。一頭ごとに履歴を残すジビエは、個体単位のトレーサビリティが分かりやすい例といえます。

ハンターや加工者による検査・加工・破棄など、シカが売りに出されるまでの履歴を都度ブロックチェーンに書き込むことで、作業記録を確実に保存し、改ざんがあれば履歴が残る仕組みになっています。中核技術には国産のブロックチェーン「mijin」が採用されました。

総務省の「身近なIoTプロジェクト」では、九州で中食・外食の食材トレーサビリティの実証事業が行われました。うなぎ・ぶた・とりを対象に、川上の生産業者から川中の加工・流通業者、川下の飲食業者までをブロックチェーンでつなぐ取り組みで、KPIの計測結果として次のように報告されています。

  • トレーサビリティ情報の確認事業者数 ⇒10事業者全社が確認
  • 中食・外食において消費者が原料原産地情報を容易に取得 ⇒ 高評価:79.6%が普及希望
  • 共通の信頼できるトレーサビリティシステム導入 ⇒ 中~高評価:6割が有償でも導入と回答
出典:ブロックチェーン技術を利用した中食・外食の食材トレーサビリティーの社会実装|総務省 身近なIoTプロジェクト

消費者の約8割が普及を望み、6割が有償でも導入したいと回答した点は、トレーサビリティが単なるコストではなく、消費者の信頼という価値につながることを示しています。

メリットと知っておきたい限界

ここまで見てきた仕組みと事例を踏まえ、導入によって得られるメリットと、あわせて知っておきたい課題・限界を整理します。良い面だけでなく限界も理解しておくことが、自社に合うかどうかの判断につながります。

導入で得られるメリット

主なメリットは3つに整理できます。1つ目はリコール対応の迅速化です。履歴がつながっていれば、問題の発生源と影響範囲を素早く特定でき、回収の範囲を絞り込めます。ウォルマートの事例が示すように、追跡にかかる時間を大幅に短縮できる可能性があります。

2つ目は真贋証明とブランド保護です。改ざんが難しい履歴があれば、産地や本物であることを裏づけられ、模倣品や産地偽装への対策になります。3つ目は関係者間の情報共有です。取引の当事者が同じ履歴を共有することで、それぞれが個別に台帳を突き合わせる手間が減り、相互に監視できる状態が生まれます。

導入前に知っておきたい課題・限界

一方で、ブロックチェーンは万能ではありません。最も重要な限界が、いわゆるオラクル問題です。ブロックチェーンは「一度記録された情報が改ざんされないこと」は保証しますが、「そもそも入力された情報が正しいかどうか」は保証しません。現物と記録が一致している保証は、ブロックチェーンの外側にあるためです。

これはブロックチェーン全般に共通する課題で、外部データを扱う技術文脈でも指摘されています。Ethereum Foundationの開発者ドキュメントは、外部から取り込むデータについて、その情報が正しいソースから取得され、改ざんされていないかをどう検証するかが課題になると説明しています。

トレーサビリティに当てはめると、産地の入力を偽ったり、別の製品にすり替えたりすれば、ブロックチェーン上には「正しく記録された誤った情報」が残ってしまいます。だからこそ、識別コードによる現物との紐づけや、入力段階の運用ルールが重要になります。

出典・参考資料(1件)

ほかにも、多数の取引を高速に処理する性能(スケーラビリティ)の制約、サプライチェーンに関わる複数の企業に参加してもらう調整の難しさ、そして構築・運用にかかるコストと費用対効果の見極めが課題になります。

総務省の実証でも、システムの構築・運用コストは事業者にとっての導入障壁として挙げられており、日本ジビエ振興協会の事例でも、構築費用・ランニングコスト・セキュリティが導入時の検討材料になったと報告されています。技術の特性だけで判断せず、自社の課題に本当に必要かを見極める姿勢が欠かせません。

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自社で活用できるか——適用が向くケースと始め方

最後に、自社のトレーサビリティにブロックチェーンが向くのか、どう始めればよいのかを整理します。すべての追跡業務にブロックチェーンが必要なわけではなく、従来のデータベースで十分なケースも多くあります。次の3つの観点で、適用が向くかを見極めるとよいでしょう。

適用が向くかを見極める3つの観点

1つ目は「正本を誰が持つか」です。信頼できる単独の管理者がいて、その管理者が履歴を一元管理すればよい場合は、従来の中央集権型データベースのほうが手軽です。逆に、特定の1社に管理を委ねにくく、当事者どうしで対等に履歴を共有したい場合に、分散型の利点が生きます。

2つ目は「多対多の連携があるか」です。生産・加工・流通・小売と、多数の企業が関わり、それぞれのシステムをまたいで履歴をつなぐ必要があるほど、共通の台帳を持つ意味が大きくなります。3つ目は「証拠性が重要か」です。

産地偽装や模倣品への対抗、リコール時の説明責任など、「記録が後から書き換えられていない」ことを対外的に示す必要があるかどうかが判断軸になります。逆にこれらに当てはまらないなら、無理にブロックチェーンを選ぶ必要はありません。

これらの観点を踏まえて「自社でも試してみたい」と考えた場合、いきなり本格導入するのではなく、小さく試すPoC(概念実証)から始めるのが現実的です。まず特定の製品ラインや取引の一部で仕組みを検証し、効果と課題を見極めてから範囲を広げていく進め方が、コストと失敗のリスクを抑えられます。

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ブロックチェーンによるトレーサビリティの構想整理やPoC、開発を相談できるサービスもあります。まだ理解を深めている段階であれば、無理に1社ずつ読み込む必要はなく、全体像だけ掴んでおいても構いません。以下は、Web3・ブロックチェーンの事業化を構想段階から支援する主なサービスの比較で、トレーサビリティへの対応度は各社で異なります。

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比較項目Web3事業立ち上げ・導入支援
(コンセンサス・ベイス)
Web3 CONSULTING & DEVELOPMENT
(アツラエ)
Web3コンサルティング・
ブロックチェーン開発(Netsujo)
提供会社コンセンサス・ベイス株式会社
(2015年設立)
株式会社アツラエ
(旧クリプトリエ事業を承継)
Netsujo株式会社
(京都・2023年設立)
提供形態戦略立案から技術実装・組織構築まで一貫支援するコンサルティングコンサル+受託開発を企画から運用までワンストップ構想整理からPoC設計・スマートコントラクト開発・運用まで一貫支援
トレーサビリティ対応ブロックチェーンの業務導入支援メニューにトレーサビリティを明記Web3全般のPoC・受託開発が対象(トレーサビリティ用途の公表実績はなし)機械の製造・出荷履歴をオンチェーン管理するトレーサビリティ構想の相談実績
料金の目安要問い合わせ
(初回ヒアリング無料)
要問い合わせ
(プロジェクト個別見積もり)
固定パッケージを公開
Web3 PoC設計80万円/スマートコントラクト監査40万円(税抜・2026年9月時点)
資料ダウンロードサービスページで確認
強み累計43社・103件超の実績。
事業戦略と技術実装を両面で支援
PoC段階から実装まで一貫。
アプリ開発・UI/UXデザインも社内で対応
業界で珍しい固定価格パッケージを公開。
撤退基準も事前に設定
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るサービス詳細を見る

1. Web3事業立ち上げ・導入支援コンサルティング(コンセンサス・ベイス)

コンセンサス・ベイスのWeb3事業立ち上げ・導入支援コンサルティングの紹介ページ

コンセンサス・ベイス株式会社が提供する、企業のWeb3事業立ち上げや既存サービスへのブロックチェーン導入を、戦略立案から技術実装・組織構築まで一貫して支援するコンサルティングです。提供メニューには「ブロックチェーンの業務導入支援(トレーサビリティ・証明書等)」が明記されており、トレーサビリティを自社業務に取り入れたい企業の相談先として位置づけられます。

2015年設立で「日本初のブロックチェーン技術の専門企業」を掲げ、事業側の戦略設計とスマートコントラクトの実装を同じ社内で担える体制が特徴です。同社が公表する実績は累計43社・103件超で、ソフトバンク・大和総研ホールディングス・GMOグローバルサイン・NECといった企業への対応も紹介されています。初回ヒアリングは無料で、資料請求から検討を始められます。

2. Web3 CONSULTING & DEVELOPMENT(アツラエ)

株式会社アツラエのWeb3 CONSULTING & DEVELOPMENTの紹介ページ

企画段階の相談からPoC・受託開発、リリース後の運用までをワンストップで手がけるのが、株式会社アツラエのWeb3 CONSULTING & DEVELOPMENTです。「まずはPoCで試してみたい」という段階から本格的なサービス実装まで、同じチームで一貫して任せられる体制を強みとしています。

特徴的なのは、「なぜWeb3を使う必要があるのか」「この技術がどの経営課題に効くのか」という問いから整理するアプローチです。技術ありきで進めず、ブロックチェーンを使わないほうがよい場合はその旨も伝える姿勢を掲げています。

トレーサビリティのような新しい取り組みで、社内稟議に向けて「なぜこの技術なのか」を整理したい段階から相談できる点が、検討の入り口として役立ちます。料金はプロジェクトごとの個別見積もりで、資料請求から相談を始められます。

技術ありきで進めない姿勢について、同社の大波氏は独自インタビューで、相談時によくある状況を交えて次のように説明しています。

大波氏
株式会社アツラエ セールスチーム マネージャー
大波氏
独自インタビューより

Web3のコンサルというと、技術起点で「ブロックチェーンで何ができるか」という話から入りがちですが、当社では「なぜWeb3を使う必要があるのか」「この技術がどのような経営課題に効くのか」という問いから一緒に整理するようにしています。実際にお客様とお話ししていて多いのは、社内稟議で「なぜWeb3なのか」を説明しきれず、企画が前に進まないという状況です。そこで当社では、目的の解像度を上げるワークショップ型のアプローチを取り入れ、「この技術を使わない方が良い場合はそう申し上げる」スタンスまで含めてご提案の範囲にしています。

3. Web3コンサルティング・ブロックチェーン開発(Netsujo)

NetsujoのWeb3コンサルティング・ブロックチェーン開発の紹介ページ

京都発で事業開発(BizDev)を手がけるNetsujo株式会社が提供する、Web3・ブロックチェーン領域の構想整理からPoC設計・スマートコントラクト開発・運用までを一貫支援するサービスです。医療・農業・金融・製造業・自治体など幅広い業界での支援実績があり、製造業では機械の製造・出荷履歴をオンチェーンで管理するトレーサビリティ構想の相談も受けています。

「Web3を導入する前提で提案しない」という姿勢を掲げ、Web2やAIで十分な場合はその選択肢も提示する点が特徴です。

料金面では、固定価格のパッケージを公開しています。「Web3 PoC設計」は80万円(税抜)・4週間、「スマートコントラクト発注前監査」は40万円(税抜)・2週間などから始められます。曖昧な構想を、社内稟議やベンダー選定に使える形に整理したい段階に向いています。

本記事で触れた「まずは小さくPoCから始める」という進め方について、Netsujo株式会社の飯田氏は独自インタビューで、PoCの位置づけを次のように語っています。

飯田氏
Netsujo株式会社 代表取締役
飯田氏
独自インタビューより

PoCは「試作品を作ること」ではなく、次の投資判断に必要な材料を集めるプロセスだと考えています。成功条件だけでなく、撤退基準も着手前に決めます。検証結果が不十分なまま「もう少し続けよう」と延長すると、費用と時間だけが積み上がります。何が分かれば終了するのか、どの条件なら本番移行しないのかを合意し、結果が期待通りでない場合も学びを残して止められる設計にします。

まとめ

ブロックチェーンによるトレーサビリティは、ハッシュ連結・分散保持・合意形成という3つの原理によって「後から書き換えにくい履歴」を実現し、産地偽装への対策やリコールの迅速化、真贋証明に役立ちます。ウォルマートの食品追跡や、国内の商社・製造・食品の事例のように、実用段階の取り組みも広がっています。

一方で、入力データの正しさは別に担保が必要というオラクル問題や、コスト・関係者の調整といった課題もあります。自社に合うかは、正本の所在・多対多の連携・証拠性の重要度という観点で見極め、まずは小さくPoCから試すのが現実的です。構想の整理から相談できる支援サービスも活用しながら、自社の課題解決につながる形を検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. ブロックチェーンによるトレーサビリティとは何ですか?

A. ブロックチェーンによるトレーサビリティとは、原材料の生産から加工・流通・販売までの履歴を、改ざんが難しいブロックチェーンに記録し、後からたどれるようにする仕組みです。

「いつ・どこで・誰が・何を扱ったか」の記録を関係者で共有し、問題が起きたときにさかのぼって原因を特定したり、出荷先を追跡したりできる状態をつくります。食品の産地証明、工業製品の部品履歴、医薬品の流通経路、ブランド品の真贋証明など、産地偽装やリコール、模倣品が問題になる分野で活用されています。

Q. ブロックチェーンに記録すれば、履歴は本当に改ざんできないのですか?

A. ブロックチェーンに記録した履歴は、後から書き換えることが非常に困難ですが、「絶対に不可能」というわけではありません。各ブロックが前のブロックのハッシュ値でつながっているため、途中の記録を1つ書き換えると以降のブロックの値がすべて食い違って改ざんが露見します(ハッシュ連結)。

さらに台帳を複数のノードが同じ内容で保持し(分散保持)、1台を書き換えても他の多数のノードと一致しないため受け入れられません(合意形成)。この3つの原理が組み合わさることで、事実上書き換えられない履歴が実現されます。

Q. ブロックチェーンに記録すれば、産地や品質などの情報は正しいと保証されますか?

A. いいえ、ブロックチェーンは記録された情報が改ざんされないことは保証しますが、そもそも入力された情報が正しいかどうかは保証しません。これは「オラクル問題」と呼ばれる限界で、産地の入力を偽ったり別の製品にすり替えたりすれば、ブロックチェーン上には「正しく記録された誤った情報」が残ってしまいます。

現物と記録が一致している保証はブロックチェーンの外側にあるため、QRコードなど識別コードによる現物との紐づけや、入力段階の運用ルールをあわせて設計することが重要になります。

Q. ブロックチェーンによるトレーサビリティは、従来のデータベース管理と何が違うのですか?

A. 最大の違いは、特定の管理者が記録を一元管理する「中央集権型」ではなく、取引の当事者どうしが同じ履歴を共有する「分散型」である点です。従来のデータベースは管理者の権限があれば記録を後から変更でき、改ざんの検知は仕組みに依存します。

一方ブロックチェーンは、ハッシュ連結と分散保持により後からの書き換えが露見しやすく、一部のノードで障害が起きても他のノードで処理を継続できます。ただし信頼できる単独の管理者が一元管理すれば足りる場合は、従来のデータベースのほうが手軽です。

Q. トレーサビリティにはどの種類のブロックチェーンが使われるのですか?

A. トレーサビリティの実装で使われるのは、参加者を限定した許可型(コンソーシアム型・プライベート型)のブロックチェーンが中心です。暗号資産のように不特定多数が参加するパブリック型ではなく、生産・加工・流通・小売など特定の関係者だけが参加する形が適しています。

実際の事例でも、日本ジビエ振興協会はプライベート型ブロックチェーン(国産の「mijin」)を、旭化成とTISは「Corda」を、IBM Food Trustはエンタープライズ向け基盤を採用するなど、業務用途向けの許可型が使われています。

Q. ブロックチェーンだけで、現物(実際の製品)まで追跡できるのですか?

A. ブロックチェーン単体では現物とデータを結びつけられず、QRコードや2次元コード、ICタグといった識別コードとの組み合わせが必要です。ブロックチェーンは「記録を守る」仕組みであり、現物に付けたコードの読み取りを起点にブロックチェーンへ記録することで、はじめて現物と履歴がつながります。

総務省の実証事業でも、生産業者が産地を入力してQRコードを印字し、加工・流通・飲食の各段階でそのコードを読み込む運用で、川上から川下まで履歴を途切れさせない仕組みが示されています。

Q. 中小企業でもブロックチェーンによるトレーサビリティを導入できますか?

A. 導入自体は可能ですが、構築・運用にかかるコストと費用対効果を見極めたうえで、小さくPoC(概念実証)から始めるのが現実的です。総務省の実証でもシステムの構築・運用コストは事業者にとっての導入障壁として挙げられており、まずは特定の製品ラインや取引の一部で仕組みを検証し、効果と課題を確認してから範囲を広げる進め方が、コストと失敗のリスクを抑えられます。

自社に本当に必要かは、正本を誰が持つか・多対多の連携があるか・証拠性が重要かという観点で見極めるとよいでしょう。構想の整理やPoCから相談できる支援サービスを活用する方法もあります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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