売掛金を回収したとき、どの勘定科目で仕訳を切ればよいか迷った経験はないでしょうか。現金や普通預金への入金だけでなく、手形・電子記録債権での回収、振込手数料が差し引かれた入金、一部だけの入金、買掛金との相殺など、回収の形はさまざまで、そのたびに処理が変わります。
本記事では、売掛金を回収したときの仕訳を、勘定科目と借方・貸方を金額入りの具体例で示しながら、回収パターンごとに整理します。あわせて、取引先の倒産や長期の未入金で回収できなくなったときの貸倒損失・貸倒引当金の処理を、税務上の要件とともに解説します。
自分のケースに当てはまる仕訳を見つけて記帳を終え、回収が滞ったときにどう備えるかまで見通せる状態を目指します。
目次
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売掛金を回収したときの基本仕訳と全体像
はじめに、売掛金が発生してから回収されるまでの流れと、回収時の基本となる仕訳を確認します。多くの回収パターンは、この基本形の応用として理解できます。

売掛金とは(回収仕訳を切る前の最小限の前提)
売掛金は、商品やサービスを掛けで販売し、その代金を後日受け取る権利を表す資産の勘定科目です。掛け販売の時点で「売掛金」として計上し、実際に入金があった時点で消し込みます。売上を計上するタイミングは、原則として商品の引き渡しやサービスの提供が完了した時点です(実現主義)。
発生時と回収時の基本仕訳
110,000円(消費税込み)の商品を掛けで販売した場合、発生時には売掛金を計上します。税込経理方式では次のように仕訳します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 110,000 | 売上 110,000 |
その後、この売掛金が普通預金に振り込まれて回収できたときは、売掛金を減らして預金を増やします。これが回収時の基本仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 110,000 | 売掛金 110,000 |
現金で回収した場合は、借方が「現金」に変わるだけで考え方は同じです。回収時は「借方に受け取った資産(現金・普通預金など)、貸方に売掛金」を基本形として押さえておくと、以降のパターンにも応用できます。
取引先が振り出した小切手を受け取って回収したときは、その小切手を通貨代用証券として「現金」勘定で処理します。銀行に持ち込めばすぐに換金できるためで、簿記上は現金と同様に扱うのが基本です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 110,000 | 売掛金 110,000 |
回収パターン別の仕訳例(手形・電子記録債権・クレジット・値引き・返品・消費税)
ここからは、現金・預金以外での回収や、回収額が変わるケースの仕訳を、パターンごとに見ていきます。自社の取引に当てはまるものを確認してください。
手形で回収したとき(受取手形)
売掛金の代金を約束手形で受け取ったときは、いったん「受取手形」に振り替えます。現金や預金がすぐに増えるわけではなく、手形の満期日に決済されて初めて入金される点が現金・預金回収との違いです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 受取手形 110,000 | 売掛金 110,000 |
手形が満期を迎えて入金されたときは、受取手形を消し込みます。ここでは当座預金への入金を例にしていますが、普通預金に入金される場合は借方を普通預金に置き換えます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 当座預金 110,000 | 受取手形 110,000 |
電子記録債権で回収したとき
電子記録債権は、でんさいネットなどの記録機関に発生記録をすることで生じる金銭債権で、手形に近い性質を持ちます。会計処理は手形債権に準じて取り扱い、売掛金が電子記録債権に置き換わったときは「電子記録債権」の勘定科目に振り替えます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 電子記録債権 110,000 | 売掛金 110,000 |
支払期日に普通預金へ入金されたときは、電子記録債権を消し込みます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 110,000 | 電子記録債権 110,000 |
電子記録債権の会計処理は、企業会計基準委員会の実務対応報告で取り扱いが示されています。売掛金などと区分して表示する場合は「電子記録債権」の科目を用い、重要性が乏しい場合は手形債権に含めて表示できます。
クレジットカードで支払いを受けたとき
掛け販売した代金をクレジットカード決済で回収する場合、決済代行会社から入金される際に加盟店手数料が差し引かれるのが一般的です。決済から入金までは日数があり、その間は売掛金のまま残ります。入金時に、差し引かれた手数料を「支払手数料」で処理し、入金額と合わせて売掛金を消し込みます。手数料を1,100円とすると、次のようになります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 108,900 支払手数料 1,100 | 売掛金 110,000 |
値引きがあったとき(売上値引)
掛け販売の後に値引きをしたときは、値引額だけ売上を減らし、売掛金も減らします。値引額を5,000円とすると、次の仕訳になります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上(売上値引) 5,000 | 売掛金 5,000 |
返品があったとき(売上戻り)
掛けで販売した商品が返品されたときは、返品分の売上を取り消し、売掛金を減らします。33,000円分が返品された場合の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上(売上戻り) 33,000 | 売掛金 33,000 |
消費税の扱い(税抜経理と税込経理)
これまでの例は税込経理方式で示してきました。税抜経理方式を採用している場合は、売上と消費税を分けて計上します。110,000円(うち消費税10,000円)の掛け販売なら、発生時は次のようになります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 110,000 | 売上 100,000 仮受消費税等 10,000 |
回収時の仕訳は税抜経理でも税込経理でも同じで、「借方 普通預金/貸方 売掛金」で全額を消し込みます。消費税の区分は発生時の売上計上で処理済みのため、回収時に改めて消費税を分ける必要はありません。
一方、値引きや返品は売上そのものが減るため、税抜経理では売上(売上値引・売上戻り)と一緒に仮受消費税等も戻します。たとえば税抜経理で5,500円(うち消費税500円)を値引きするときの仕訳は、次のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上(売上値引) 5,000 仮受消費税等 500 | 売掛金 5,500 |
本記事の値引き・返品の仕訳例は税込経理を前提にしているため、税抜経理の場合はこの消費税分の戻しを加えてください。返品(売上戻り)も同様に、返品分の売上と仮受消費税等をあわせて戻します。
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つまずきやすい3つの回収仕訳(振込手数料の差引・一部入金・相殺)と使う科目の判断
回収の実務で特に迷いやすいのが、振込手数料が差し引かれて入金されたとき・一部だけ入金されたとき・買掛金と相殺したときの3つです。使う勘定科目の判断基準まで含めて確認します。
振込手数料が差し引かれて入金されたとき(支払手数料か売上値引か)
取引先が振込手数料を差し引いて入金してくると、入金額が請求額より少なくなります。差額を処理して売掛金を全額消し込む必要があり、このとき使う科目は「支払手数料」と「売上値引」のどちらかです。どちらを使うかは契約や商慣行でどちらが振込手数料を負担する取り決めになっているかで決まります。
手数料を自社が負担するという取り決めであれば、差し引かれた手数料は自社が支払った費用と考え、「支払手数料」で処理します。振込手数料を330円とすると、次のようになります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 109,670 支払手数料 330 | 売掛金 110,000 |
一方、手数料相当額を実質的な売上のマイナスとして扱う取り決めなら、「売上値引」で処理する方法もあります。自社の会計方針や取引先との合意に沿って、どちらで処理するかをあらかじめ決めておくと、担当者によって処理がぶれるのを防げます。
一部だけ入金されたとき(一部入金)
請求額の一部だけが入金されたときは、入金があった金額だけ売掛金を消し込み、残額は売掛金として残します。110,000円のうち60,000円が入金された場合の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 60,000 | 売掛金 60,000 |
この仕訳を切った後、売掛金の残高は50,000円になります。残った金額がいつまでも回収されない場合は、後述する貸倒の処理を検討することになります。
買掛金と相殺したとき
同じ取引先に対して売掛金と買掛金の両方がある場合、双方の合意にもとづいて相殺できます。相殺すると、その分だけ売掛金と買掛金の両方が減ります。買掛金80,000円と売掛金を相殺するときの仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 買掛金 80,000 | 売掛金 80,000 |
相殺は当事者間の合意が前提となるため、相殺通知や契約で相殺する旨を確認したうえで処理します。上の仕訳では、相殺(借方 買掛金80,000/貸方 売掛金80,000)によって売掛金が80,000円分だけ消し込まれます。同じ取引先への売掛金がもともと110,000円だった場合、相殺しきれずに残る30,000円は、通常どおり入金時に消し込みます。残額が普通預金に入金されたときの仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 30,000 | 売掛金 30,000 |
この相殺の仕訳(借方 買掛金80,000/貸方 売掛金80,000)と入金の仕訳を合わせると、売掛金110,000円(相殺80,000円+入金30,000円)が消し込まれます。相殺の仕訳を切らずに入金分だけを記帳すると、相殺した分の売掛金が帳簿に残ってしまうため、相殺と入金は必ずセットで処理します。
回収できなくなったときの仕訳(貸倒損失・貸倒引当金・償却債権取立益)と税務要件
取引先の倒産や長期の未入金で売掛金が回収できなくなったときは、貸倒れとして処理します。ただし、貸倒損失として費用(損金)に計上できるのは税務上の要件を満たした場合に限られ、要件を満たさないまま損金にすると否認されるおそれがあります。ここでは、いつ貸倒れにできるのか、その根拠とともに確認します。
以下で示す貸倒れの要件と貸倒引当金の取り扱いは、法人(会社)の法人税を前提としています。個人事業主・フリーランスは所得税の取り扱いとなり、貸倒損失や貸倒引当金の要件・計算方法が一部異なります。個人事業主の方は、所轄の税務署や税理士に確認したうえで処理してください。
貸倒損失にできるのはいつか(法律上・事実上・形式上の3類型)
国税庁は、貸倒損失として損金の額に算入できる場合を3つの類型に分けて示しています。売掛金が回収できなくなった状況が、どの類型に当てはまるかを確認します。

1つ目は、法律上の手続きなどによって債権そのものが切り捨てられた場合です。
出典:No.5320 貸倒損失として処理できる場合|国税庁
- 会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額
- 法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定および行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられた金額
- 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額
この場合、切り捨てられた金額を貸倒損失として計上します。仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒損失 110,000 | 売掛金 110,000 |
2つ目は、法的な手続きはなくても、債務者の資産状況や支払能力からみて売掛金の全額が回収できないことが明らかになった場合です。国税庁は次のように示しています。
債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することができます。ただし担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ損金経理はできません。
出典:No.5320 貸倒損失として処理できる場合|国税庁
この類型は「全額」が回収できないことが要件で、一部でも回収の見込みがある場合は当てはまりません。担保物があるときはそれを処分した後でなければ損金にできない点にも注意が必要です。仕訳は法律上の貸倒れと同じ形で、回収できない全額を貸倒損失として計上します(借方 貸倒損失/貸方 売掛金)。
3つ目は、取引を停止してから一定期間が経過した場合などです。この類型は対象が売掛債権に限られ、貸付金などは含まれません。
次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸付金などは含みません。)について、その売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をすることができます。
出典:No.5320 貸倒損失として処理できる場合|国税庁
- 継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき(ただし、その売掛債権について担保物のある場合は除きます。)
- 同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合
この類型は「継続的に取引していた相手との取引を停止してから1年以上経過した」ことなどが要件で、たまたま一度だけ取引した相手には適用されません。「回収できないまま1年経てば、どんな債権でも貸倒れにできる」わけではない点に注意が必要です。
形式上の貸倒れでは、売掛債権の全額を貸倒れにするのではなく、備忘価額(通常1円)を残して残額を貸倒損失に計上します。110,000円の売掛債権で備忘価額1円を残す場合は、次のようになります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒損失 109,999 | 売掛金 109,999 |
売掛金の残高として1円が帳簿に残り、その債権を管理していることを示す記録になります。全額を貸方に立ててしまうと備忘価額を残せないため、この点は形式上の貸倒れに特有の処理です。
貸倒引当金の仕訳(一括評価と個別評価)
まだ貸倒れが確定していなくても、将来の貸倒れに備えてあらかじめ費用として見積もっておくのが貸倒引当金です。貸倒引当金の繰入限度額は、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に区分して計算します。通常の売掛金は、一括評価金銭債権に含まれます。
期末に貸倒引当金を設定するときは「貸倒引当金繰入」を費用計上します。売掛金などの期末残高に一定の率を掛けて算定した金額が5,000円だとすると、次の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金繰入 5,000 | 貸倒引当金 5,000 |
実際に貸倒れが発生したときは、まず設定済みの貸倒引当金を取り崩して充当し、不足分があれば貸倒損失で処理します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金 5,000 | 売掛金 5,000 |
貸倒れの金額が設定済みの貸倒引当金を上回るときは、引当金を取り崩したうえで、不足分を貸倒損失で処理します。10,000円の売掛金が貸倒れて、貸倒引当金の残高が5,000円だった場合は、次のようになります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 貸倒引当金 5,000 貸倒損失 5,000 | 売掛金 10,000 |
一括評価金銭債権の繰入限度額は、原則として過去の貸倒れの実績にもとづく貸倒実績率で計算します。ただし、資本金1億円以下の中小法人などには、業種ごとに定められた法定繰入率を使える特例があります。法定繰入率は次のとおりです。
出典:No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定|国税庁
- 卸売業および小売業(飲食店業および料理店業を含むものとし、割賦販売小売業を除きます。)… 1,000分の10
- 製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業および修理業を含みます。)… 1,000分の8
- 金融業および保険業 … 1,000分の3
- 割賦販売小売業ならびに包括信用購入あっせん業および個別信用購入あっせん業 … 1,000分の7
- その他の事業 … 1,000分の6
一方、更生手続の開始や債務超過の継続など、特定の債務者について個別に回収可能性が低下した債権は、個別評価金銭債権として別に繰入限度額を計算します。個別評価の要件は法人税法施行令や法人税基本通達で定められており、たとえば「債務超過の状態が相当期間継続」の相当期間は「おおむね1年以上」とされています。
仕訳を切る場面では、通常の売掛金全体は一括評価、回収可能性が個別に低下した特定の債権は個別評価、と区分して考えると整理しやすくなります。
なお、期末に貸倒引当金を設定するときの処理には、前期末に設定した残高をいったん全額戻し入れ、当期末の見積額を改めて繰り入れる洗替法と、当期末の見積額と前期末残高との差額だけを繰り入れる(見積額が下回るときは差額を戻し入れる)差額補充法の2つがあります。どちらの方法でも期末の貸倒引当金残高は同じになります。上の「貸倒引当金繰入」で設定する仕訳は、いずれの考え方でも用いられます。
償却債権取立益(過年度に償却した債権を回収したとき)
前期以前に貸倒損失として処理した売掛金を、当期になって回収できたときは、回収した金額を「償却債権取立益」として収益に計上します。40,000円を回収した場合の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 40,000 | 償却債権取立益 40,000 |
償却債権取立益を使うのは、過年度に貸倒処理した債権を回収したときに限られます。同じ期のうちに貸倒処理と回収の両方が起きた場合は、その期の貸倒れの仕訳を取り消す(振り戻す)だけで足り、償却債権取立益は使いません。計上する金額は、貸倒処理した額ではなく、実際に回収できた金額です。
また、消費税の課税事業者(免税事業者を除く)は、課税売上に対応する売掛金が貸倒れになったとき、その売掛金に含まれる消費税額を、貸倒れが生じた課税期間の売上に係る消費税額から控除できます。これは貸倒れに係る消費税額の控除と呼ばれる制度です(消費税法第39条)。
ここまでの仕訳は法人税の損金の観点で示していますが、消費税の申告でもこの控除を反映する点に注意し、詳細は所轄の税務署や税理士に確認してください。
出典・参考資料(1件)
売掛金の残高が合わない・消込がずれるときの原因と対処
仕訳自体は正しく切っていても、売掛金の帳簿残高が実際の未回収額と合わないことがあります。原因の多くは、これまで見てきた仕訳のどこかが漏れているか、二重になっているかです。合わないときは、次の観点で切り分けると原因を見つけやすくなります。
- 売上の計上漏れ・二重計上:掛け販売の計上が抜けている、または同じ売上を二重に計上している
- 入金の消込漏れ・消込ミス:入金があったのに売掛金を消し込んでいない、別の取引先の入金と取り違えている
- 振込手数料の未処理:手数料が差し引かれた入金を、差額の処理をせずに入金額だけで消し込んでいる
- 値引き・返品の未反映:値引きや返品があったのに売掛金を減らしていない
取引先ごとに売掛金の補助簿(得意先元帳)を作り、請求額と入金額を突き合わせて消し込む運用にしておくと、どの取引でずれが生じたかを追いやすくなります。特に振込手数料の差引や一部入金は残高がずれる典型的な原因なので、入金額が請求額と違うときは差額の理由を確認してから消し込みます。
入金件数が増えて手作業での消し込みが追いつかない場合は、銀行の入金データと請求データを自動で照合して消し込む入金消込システムを使う方法もあります。振込名義の違いやまとめ入金、手数料の差引といった食い違いをどこまで自動で処理できるかは製品ごとに差があり、照合方式や会計ソフトとの連携で選び方が変わります。比較する際は以下の記事が参考になります。
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回収を滞らせない・貸倒を防ぐための打ち手
売掛金の回収が遅れたり、貸倒れが繰り返し発生したりする場合は、記帳の工夫だけでなく、回収そのものの仕組みを見直す方法もあります。打ち手は大きく分けて、未入金の督促を自動化する、請求から回収までを外部に代行してもらう、貸倒リスクを保証で移すという3つの方向があります。ここでは、それぞれの方向を代表するサービスを紹介します。
紹介するサービスは、法人間(BtoB)取引を主な対象とするものが中心です。一部は年商規模の小さい法人や個人事業主でも利用できるため、自社の取引形態に合うかを確認しながら見てください。
次の比較表では、6つのサービスを「打ち手のタイプ」「主な対応範囲」「売掛金の保証」「対象取引」「費用の目安」で並べています。自社が求めるのは督促の自動化か、回収の代行か、保証かを起点に見比べてください。
| サービス名 | 請求まるなげロボ | SMSマルチPay | DHKクラウドオートコール | 債権回収ロボ | RP掛け払い | URIHO(ウリホ) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 打ち手のタイプ | 請求・回収の代行 | 督促・回収の自動化 | 督促の自動化 | 督促の自動化 | 請求・回収の代行 | 売掛保証 |
| 主な対応範囲 | 与信審査〜請求書発行・代金回収・入金消込・督促までを代行 | SMSで請求通知〜本人認証〜決済まで完結(督促BPO連携) | 自動音声(IVR)による督促・入金案内の自動架電 | メール・SMS・オートコールの多チャネル督促を自動実行 | 掛け払いの与信審査〜請求書発行・代金回収・入金消込・督促を代行 | 取引先の倒産・支払い遅延時に売掛金を保証(請求・回収は自社) |
| 売掛金の保証 | ●与信通過した適格債権を100%保証 | × | × | × | ●与信通過した適格債権を100%保証 | ●倒産・1ヵ月以上の遅延で保証 |
| 対象取引 | 法人間(BtoB) | BtoB・BtoC 両対応 | BtoB・BtoC 両対応 | BtoB・BtoC 両対応 | 法人間(BtoB) | 法人間(BtoB) |
| 費用の目安 | 手数料型(手数料1.0%〜/初期費用は要問い合わせ) | 初期20,000円〜+従量(送信単価20円〜/月額0円) | 月額50,000円〜(月1,000件まで含む)+応答課金 | 要問い合わせ | 手数料型(手数料2.0%〜/初期・月額は要問い合わせ) | 月額定額(4,980円〜/保証する取引先数の上限なし) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る |
※上記は各社の公式情報にもとづく情報です(2026年6〜8月時点)。最新の料金・機能は各社の公式情報をご確認ください。
ここで取り上げるのは、督促の自動化・回収の代行・売掛保証という3つの方向を代表する6サービスです。依頼先のタイプ別の選び方や費用相場まで含めて、売掛金の回収を任せられるサービスを幅広く比較したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
1. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

株式会社ROBOT PAYMENTが提供する請求まるなげロボは、企業間(BtoB)取引の請求業務をまるごと代行するサービスです。与信審査・請求書の発行と送付・代金回収・入金消込・督促までを同社が引き受け、自社審査で与信を通過した適格債権については売掛金を100%保証します。
与信を通過した債権は、回収の結果にかかわらず指定の期日に入金されるため、未回収リスクを移転できます。未入金があった場合の督促も同社が担うため、回収業務そのものを手放したい場合の打ち手になります。手数料は1.0%からで、取り扱う金額や商材によって個別に算出されます(2026年6月時点、公式サイト)。
2. SMSマルチPay(株式会社ネクスウェイ)

料金が確定した後の請求や未収金の回収を、SMSを使ってオンラインで完結させるのがSMSマルチPayです。SMSで支払い通知を送り、利用者ごとに用意した専用ページで本人確認から請求内容の確認、決済までを行えます。
複数の決済手段から選んで支払える導線を用意することで、支払いのハードルを下げ、回収率の向上と貸倒れの低減を狙います。初期費用は20,000円から、月額費用は0円で、送信ごとの従量課金は20円からです。督促業務の代行と組み合わせて利用できます(2026年6月時点、株式会社ネクスウェイ公式サービスページ)。
3. DHKクラウドオートコール(株式会社電話放送局)

DHKクラウドオートコールは、未入金・滞納している顧客への支払い督促を、自動音声応答(IVR)による自動架電で行うサービスです。オペレーターが1件ずつ電話をかける代わりに、入金案内や支払いリマインドを無人で大量に処理できます。
料金は応答基準の課金体系で、月額費用は50,000円からです。月額費用に月間1,000件までの応答が含まれ、1,001件目からは固定電話21円、携帯電話32円の従量課金となります(2026年8月時点、公式サイト)。架電しても応答がなければ課金されないため、督促の初期接触を電話で効率化したい場合に向いています。
督促を自動で行うことには、案内の仕方によっては相手の反発や苦情を招きやすいという実務上の難しさもあります。督促架電を設計するうえで気をつける点について、サービスを提供する電話放送局の前田氏は次のように話しています。

入金案内や督促は、伝える内容が定型化しやすい一方で、案内の仕方によってはトラブルや苦情につながりやすい業務です。一方で、入金コールは人が案内する場合と比べて、トラブルや苦情を軽減できる側面ももあります。だからこそ、まずは“自動化しても顧客体験を損ねにくい設計”をすることが大切だと考えています。
オートコールは使い方を間違えると社会問題になりかねません。だから当社としては、用途の相性を見極めて、やめた方がいいケースは止める。その線引きも含めて一緒に考えています。
4. 債権回収ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

債権回収ロボは、未入金の督促・回収業務を自動化するSaaSです。メール・SMS・オートコールといった複数のチャネルを組み合わせた督促シナリオを自動で実行し、督促のやり取りをデータとして蓄積できます。督促を1つの手段に頼らず、相手に応じて連絡方法を切り替えたい場合に適しています。
2026年3月に提供が始まったサービスで、債務者の特性に応じて催促のスケジュールを最適化する技術について特許を出願しています。料金は要問い合わせです(2026年6月時点)。
5. RP掛け払い(株式会社ROBOT PAYMENT)

法人間取引の掛け払い(後払い)を対象に、与信審査から請求書発行・代金回収・入金消込・督促までを代行するのがRP掛け払いです。与信を通過した適格債権については売掛金を100%保証し、取引先が支払わなかった場合でも代金を受け取れます。
掛け払いという決済手段を起点に、与信から回収・保証までをまとめて任せられるため、後払い取引を扱いながら未回収リスクを抑えたい場合の打ち手になります。手数料は2.0%からで、初期費用・月額費用は要問い合わせです(2026年6月時点、公式サービスページ)。
6. URIHO(株式会社ラクーンフィナンシャル)

URIHOは、取引先の倒産や長期の支払い遅延で売掛金が回収できなくなったときに、保証会社が代金を支払う売掛保証サービスです。請求や回収は自社で続けたまま、貸倒れのリスクだけを移せる点が、回収そのものを代行するサービスとの違いです。
公式には「業界初のサブスク型(月額定額制)売掛保証」と位置づけられており、保証する取引先の数に上限を設けず、月額定額で複数の取引先を保証できる点を訴求しています。月額4,980円からのミニプランは年商1億円以下の法人・個人事業主向けで、個人事業主も対象に含みます。申し込みから取引先の登録、保証金の請求までをオンラインで完結できます(2026年6月時点、公式サイト)。
まとめ
売掛金を回収したときの仕訳は、「借方に受け取った資産、貸方に売掛金」という基本形を押さえたうえで、回収の形に応じて科目を使い分けるのが基本です。手形や電子記録債権は専用の科目にいったん振り替え、クレジット決済や振込手数料の差引では手数料を支払手数料などで処理します。振込手数料を支払手数料と売上値引のどちらで処理するかは、契約や商慣行での負担の取り決めで判断します。
回収できなくなったときは、法律上・事実上・形式上の3類型のいずれかに当てはまるかを確認したうえで貸倒損失を計上し、将来に備える場合は貸倒引当金を設定します。貸倒れの損金算入には税務上の要件があるため、国税庁の示す要件に照らして処理することが大切です。回収の遅れや貸倒れが続く場合は、督促の自動化・回収の代行・売掛保証といった打ち手も選択肢になります。
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よくある質問(FAQ)
Q. 売掛金とは何ですか?
A. 売掛金とは、商品やサービスを掛けで販売し、その代金を後日受け取る権利を表す資産の勘定科目です。掛け販売をした時点で「売掛金」として計上し、後日入金があった時点で消し込みます。回収時は「借方に受け取った現金・預金など、貸方に売掛金」を切るのが基本形で、多くの回収パターンはこの応用として処理できます。
Q. 売掛金と買掛金の違いは何ですか?
A. 売掛金と買掛金は、売掛金が代金を将来受け取る権利(資産)、買掛金が代金を将来支払う義務(負債)という正反対の関係にあります。同じ取引先に売掛金と買掛金の両方がある場合は、双方の合意にもとづいて相殺でき、相殺した分だけ売掛金と買掛金の両方が減ります。
Q. 売掛金から振込手数料が差し引かれて入金されたときの仕訳は?
A. 売掛金から振込手数料が差し引かれて入金されたときは、差し引かれた手数料を「支払手数料」または「売上値引」で処理し、入金額と合わせて売掛金を全額消し込みます。どちらの科目を使うかは、契約や商慣行で振込手数料をどちらが負担する取り決めになっているかで判断します。
自社が負担するなら支払手数料、手数料相当額を実質的な売上のマイナスとして扱うなら売上値引を用います。会計方針としてどちらで処理するかをあらかじめ決めておくと、担当者による処理のぶれを防げます。
Q. 売掛金が一部だけ入金されたとき、残りの金額はどう処理しますか?
A. 売掛金が一部だけ入金されたときは、入金があった金額だけ売掛金を消し込み、残額はそのまま売掛金として帳簿に残します。たとえば110,000円のうち60,000円が入金されたら「借方 普通預金 60,000/貸方 売掛金 60,000」と切り、売掛金の残高は50,000円のまま残ります。残った金額がいつまでも回収されない場合は、貸倒れの処理を検討することになります。
Q. 売掛金の残高が帳簿と合わないのはなぜですか?
A. 売掛金の残高が合わない主な原因は、売上の計上漏れ・二重計上、入金の消込漏れ・消込ミス、振込手数料の未処理、値引きや返品の未反映です。特に振込手数料の差引や一部入金は残高がずれる典型的な原因のため、入金額が請求額と違うときは差額の理由を確認してから消し込みます。
取引先ごとに補助簿(得意先元帳)を作り、請求額と入金額を突き合わせて消し込む運用にしておくと、どの取引でずれが生じたかを追いやすくなります。
Q. 売掛金が回収できなくなったとき、いつ貸倒損失として計上できますか?
A. 売掛金を貸倒損失として損金にできるのは、国税庁が示す「法律上の貸倒れ」「事実上の貸倒れ」「形式上の貸倒れ」の3類型のいずれかに当てはまる場合に限られます。
法的手続きで債権が切り捨てられた場合、債務者の資産状況から全額が回収できないことが明らかになった場合、継続的に取引していた相手との取引停止から1年以上経過した場合などが該当します。単に「入金がないまま1年経った」というだけでは要件を満たしません。要件を満たさないまま損金算入すると否認されるおそれがあるため、国税庁の示す要件に照らして処理します。
出典・参考資料(1件)
Q. 貸倒引当金の一括評価と個別評価は何が違いますか?
A. 貸倒引当金は、通常の売掛金など全体をまとめて見積もる「一括評価金銭債権」と、特定の取引先について個別に回収可能性が低下した債権を計算する「個別評価金銭債権」に区分して繰入限度額を計算します。
一括評価は原則として過去の貸倒実績率(資本金1億円以下の中小法人などは業種別の法定繰入率も選択可)で計算し、個別評価は更生手続の開始や債務超過の状態が相当期間継続した場合などの要件ごとに計算します。通常の売掛金は一括評価、回収可能性が個別に下がった債権は個別評価と整理すると分かりやすくなります。
出典・参考資料(1件)
Q. 償却債権取立益はどんなときに使いますか?
A. 償却債権取立益は、前期以前に貸倒損失として処理した売掛金を、当期になって回収できたときに使う収益の勘定科目です。計上する金額は、過去に貸倒処理した額ではなく、実際に回収できた金額です。同じ期のうちに貸倒処理と回収の両方が起きた場合は、その期の貸倒れの仕訳を振り戻すだけで足り、償却債権取立益は使いません。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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