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売掛金回収の進め方|初動から法的手段・時効・回収できないときの対処まで解説

売掛金回収の進め方のサムネイル画像

取引先に商品やサービスを提供したにもかかわらず、期日を過ぎても売掛金が入金されず、次に何をすべきか迷う場面は少なくありません。

売掛金の回収は、取引先への連絡といった初動から、内容証明郵便・支払督促・少額訴訟などの法的手段まで、相手の状況に応じて打ち手が分かれます。動く順番を誤ると、本来なら取り戻せたはずの代金を取りこぼすこともあります。

本記事では、入金遅延に気づいた直後の初動対応から、相手が応じないときの法的手段の使い分けまでを順を追って解説します。あわせて、消滅時効・回収できなかった場合の税務処理・外部への委託の判断材料も、条文や公的な手続き案内にもとづいて整理します。目の前の未回収が今どの段階にあるかを見極め、次の一手を選ぶための材料としてご活用ください。

売掛金回収の全体の流れは、次のとおりです。自社の未回収が今どの段階にあるかを確かめながら読み進めてください。

売掛金回収の全体の流れを示したフロー図。STEP1は初動対応(取引先へ連絡し支払意思を確認、相殺できる債権の確認、契約書の支払期日・期限の利益喪失条項の確認)。次に相手の対応で分岐し、支払意思があれば話し合いで回収・保全(残高確認書、分割払いの合意、担保・連帯保証の追加)、応じない・連絡不通なら法的手段を内容証明郵便→支払督促/少額訴訟→通常訴訟→強制執行の順にエスカレーション。回収できなかった場合は要件を満たせば貸倒損失として損金に算入する税務処理へ進む。
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売掛金の入金が遅れたら最初にすること

ここからは、売掛金の入金が遅れていることに気づいた直後に、まず取るべき初動を3つの順で解説します。焦って法的手段に進む前に、自社でできる確認を済ませておくことで、その後の回収を有利に進められます。

取引先へ連絡し、状況と支払意思を確認する

最初に行うのは、取引先への連絡です。単純な振込忘れや請求書の処理漏れであれば、連絡するだけで入金されることも多くあります。電話やメールで入金予定日を確認し、やり取りの内容と日付を記録に残しておきます。

この記録は、後で法的手段に進む際に「請求を続けてきた事実」を示す資料になります。相手の反応から、支払う意思があるのか、それとも資金繰りが厳しいのかを見極めることが、次の打ち手を選ぶ出発点です。

相殺できる債権(買掛金など)がないか確認する

自社が同じ取引先に対して買掛金などの支払い債務を負っている場合、その債務と売掛金を相殺できないかを確認します。相殺すれば、実質的に売掛金の一部または全部を回収したのと同じ効果が得られます。民法は相殺について次のように定めています。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

出典:民法第505条(相殺の要件等)|e-Gov法令検索

相殺には「双方の債務が弁済期にあること」が条件です。回収したい売掛金は支払期日が到来している必要がありますが、自社が負う買掛金は、期限の利益(支払う番を待ってもらえる利益)を自ら手放せば、弁済期の前でも相殺に使えます。取引先の経営が悪化している局面では、相殺は最も確実に回収できる手段の一つです。

契約書の支払期日・期限の利益喪失条項を確認する

取引の基本契約書や注文書を確認し、支払期日と「期限の利益喪失条項」の有無を見ます。期限の利益とは、支払期日まで支払いを猶予されるという債務者側の利益のことです。民法は、一定の場合にこの利益が失われると定めています。

次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

出典:民法第137条(期限の利益の喪失)|e-Gov法令検索

民法137条が定めるのは、破産手続の開始や担保の滅失など限られた場合です。実務では、これに加えて「支払いを1回でも遅滞したとき」「手形が不渡りになったとき」などを引き金に、支払期日が来ていない分もまとめて直ちに請求できるようにする条項を、契約書にあらかじめ定めておくのが一般的です。この契約上の特約があれば、分割払いの残額や他の取引分も一括で請求できる場合があります。

そのため、支払いが遅れた段階では、自社の契約書にこの条項が入っているかをまず確認しておきましょう。

話し合いで回収する方法(相手の協力が得られる場合)

取引先に支払う意思がある場合は、法的手段に進む前に、話し合いで回収と債権の保全を進めます。関係を保ちながら回収でき、後述する時効への対策にもつながります。

未払金残高確認書を作成してもらう

取引先に、未払いの売掛金の残高を認める「残高確認書(債務承認書)」に署名してもらいます。これは債権の存在と金額を証拠として固めるだけでなく、消滅時効の対策にもなります。民法は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」(民法第152条第1項)と定めており、債務者が残高を認める行為は「承認」に当たって、時効の期間がリセットされるためです。

出典・参考資料(1件)

決算書の提出を求め、支払能力を把握する

相手の支払いが滞る背景に資金繰りの悪化がある場合、決算書や資金繰り表の提出を求め、支払能力を把握します。回収可能な見込みがどの程度あるのかを把握できれば、一括か分割か、あるいは法的手段に切り替えるかの判断材料になります。

分割払いの合意・入金口座の変更を交渉する

一括での支払いが難しい場合は、分割払いを提案します。合意した内容は書面に残し、各回の支払いを承認として記録に残しておくと、時効対策と証拠化を兼ねられます。継続取引がある場合は、入金口座を自社が管理しやすい方法に変更してもらうことで、以降の回収を確実にできます。

債権譲渡担保・連帯保証を追加で設定する

回収の確実性を高めるため、取引先が持つ別の売掛債権を担保として譲り受ける「債権譲渡担保」や、代表者などの「連帯保証」を追加で設定してもらう方法もあります。担保や保証を確保しておけば、万一相手が支払えなくなった場合でも、担保からの回収や保証人への請求という選択肢が残ります。

相手が応じないときの法的手段

連絡しても支払いに応じない、あるいは連絡がつかない場合は、法的手段に進みます。手段によって、使える金額の目安・手続き先・効力・費用が異なります。まず全体像を一覧で確認し、自社のケースに合う手段を見極めましょう。

回収手段の一目比較

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内容証明郵便支払督促少額訴訟通常訴訟強制執行
対象金額の目安制限なし制限なし60万円以下制限なし制限なし
手続き先郵便局(自分で送付)簡易裁判所(書記官)簡易裁判所簡易裁判所(140万円以下)/地方裁判所地方裁判所など
効力・特徴請求した事実と日付・内容を証拠化。時効の完成を6か月猶予する書類審査のみで発付。異議がなければ仮執行宣言を経て強制執行へ。異議があれば通常訴訟に移行原則1回の審理で即日判決。控訴はできず、利用は年10回まで争いのある事案や高額債権に対応。判決で債務名義を得る債務名義にもとづき預金・給与・動産などを差押え。財産開示・情報取得の手続もある
費用感数千円程度(郵便料金)収入印紙は訴え提起の半額(例:請求60万円で3,000円)+郵便費用収入印紙は請求額に応じる(例:60万円で6,000円)+郵便費用収入印紙は請求額に応じる。弁護士費用がかかることが多い申立費用+対象財産の特定が必要

※上記は一般的な手続きの傾向です。手数料や要件の詳細は、各手続きの公式案内をご確認ください。

裁判所に納める手数料(収入印紙)は請求額に応じて決まります。たとえば請求額60万円なら訴え提起・少額訴訟で6,000円、支払督促はその半額の3,000円が目安です(別途、郵便費用がかかります)。自社の請求額に対応する金額は、裁判所の「手数料早見表」で確認できます。

出典・参考資料(2件)

内容証明郵便を送る(請求の証拠化・時効の完成猶予)

内容証明郵便は、支払いを求める最初の正式な一手としてよく使われます。日本郵便が証明するのは、次のとおり「いつ・どんな内容の文書を・誰から誰あてに差し出したか」であって、書かれた請求内容が正しいことまでは証明しません。

いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。当社が証明するものは内容文書の存在であり、文書の内容が真実であるかどうかを証明するものではありません。

出典:内容証明|日本郵便株式会社

証明されるのは請求した事実と日付・内容であり、売掛金が存在すること自体を証明するものではありません。それでも、請求を行った事実と時期を客観的な証拠として残せる点に意味があります。

この請求は民法上の「催告」に当たり、「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」(民法第150条第1項)ため、時効の完成を6か月先延ばしにできます。ただし、これは進行を一時的に止めるだけなので、その間に支払督促や訴訟へ進む必要があります。

取引先に請求できるのは、元金だけではありません。支払期日の翌日以降の遅延損害金も請求でき、契約で利率を定めていない場合は法定利率(民法第404条)によります。内容証明で請求する際に、あわせて記載しておきます。

出典・参考資料(2件)

支払督促を申し立てる

支払督促は、簡易裁判所の書記官に申し立てることで、書類審査だけで相手に支払いを命じる督促状を出してもらえる手続きです。民事訴訟法は「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる」(民事訴訟法第382条)と定めています。

裁判所の手続案内によると、相手の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立て、債務者は支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てることができます。異議がなければ債権者は仮執行宣言を申し立てることができ、これが発付されると強制執行へ進めます。一方、債務者が異議を申し立てると、手続きは通常訴訟に移行します。相手が争ってこないと見込まれる場合に、費用と手間を抑えて債務名義を得られる手段です。

申立書の様式は裁判所のウェブサイトで入手でき、要件を満たせば「督促手続オンラインシステム」からオンラインで申し立てることもできます。

出典・参考資料(2件)

少額訴訟を起こす(60万円以下)

請求額が60万円以下の場合は、少額訴訟を選べます。民事訴訟法は次のように定めています。

簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。

出典:民事訴訟法第368条(少額訴訟の要件等)|e-Gov法令検索

少額訴訟は、原則として1回の審理で即日判決が出るため、通常訴訟より短期間で決着します。裁判所の手続案内によると、利用回数は同じ裁判所で年10回までに制限され、判決への不服申立ては異議に限られ控訴はできません。1回の審理で終えるため、最初の期日までにすべての主張と証拠をそろえておく必要があります。

出典・参考資料(1件)

通常訴訟・仮差押えを行う(争いがある・高額の場合)

債権額が60万円を超える場合や、契約内容そのものに争いがある場合は、通常訴訟で判決を得ます。140万円以下は簡易裁判所、それを超える場合は地方裁判所が窓口です。訴訟の前後には、相手が財産を隠したり処分したりするのを防ぐため、預金や不動産を暫定的に凍結する「仮差押え」を検討します。仮差押えをしておくと、勝訴後の強制執行で回収できる財産を確保しやすくなります。

強制執行で回収する(債務名義にもとづく差押え)

判決や仮執行宣言付きの支払督促などの「債務名義」を得ても、相手が任意に支払わない場合は、強制執行で回収します。裁判所の手続案内では、差押えの対象として次のように説明されています。

債権執行(債務名義に基づく差押え) 判決や和解調書どおりにお金が支払われない場合などに、債務者の給与や銀行預金等を差し押さえ、債権者が債務者の勤務先や銀行等から支払を受けること等により、債権を回収する手続です。

出典:民事執行|裁判所

差押えの対象は、給与や銀行預金のほか、動産や不動産にも及びます。相手の財産の所在が分からない場合は、裁判所に相手を呼び出して財産を陳述させる「財産開示」や、勤務先・銀行などから情報を取得する手続きを利用できます。強制執行は、判決を得ても支払われないときの最終的な回収手段です。

取引先が倒産した場合の回収(動産売買先取特権)

取引先が破産や民事再生に入っても、回収の余地が残る場合があります。商品を掛けで売った売主は、売った商品が買主の手元に残っていれば、その商品について優先的に回収できる「動産売買の先取特権」を持ちます。民法は「動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する」(民法第321条)と定めています。

この先取特権は、取引先が倒産した場合でも、手続きの外で行使できる「別除権」として扱われるため、他の債権者に先んじて回収できる可能性があります。ただし、売った商品が既に転売されたり使われたりしていると行使は難しくなるうえ、実際の行使には裁判所の手続きが必要になるため、倒産の兆候をつかんだら早めに弁護士など専門家へ相談することが重要です。

出典・参考資料(1件)
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売掛金の時効(原則5年)と時効を止める方法

売掛金は、放置すると時効によって権利そのものが消滅します。回収を進めるうえで、時効までの期限と、時効を止める方法を押さえておく必要があります。民法は、債権の消滅時効を次のように定めています。

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

出典:民法第166条(債権等の消滅時効)|e-Gov法令検索

2020年に施行された改正民法により、それまでの職業別の短期時効は廃止され、この規定に一本化されました。売掛金の場合、債権者である自社は支払期日(権利を行使できる時)を当然に知っているため、実務上は支払期日から5年で時効にかかると考えておくのが安全です。

時効を止める方法は2種類あります。1つは、内容証明郵便による催告で6か月間だけ完成を先延ばしにする「完成猶予」です。もう1つは、経過した期間をリセットして再び進行を始めさせる「更新」で、裁判上の請求(訴訟・支払督促)や、債務者による残高の承認がこれに当たります。

民法は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」(民法第152条第1項)と定めており、話し合いの段階で残高確認書に署名してもらうことも、時効対策として有効です。時効が迫っている場合は、催告で時間を稼いだうえで、更新の効力がある手続きへ速やかに進みます。

出典・参考資料(2件)

回収できなかった場合の税務処理(貸倒損失)

あらゆる手を尽くしても回収できなかった売掛金は、一定の条件を満たせば「貸倒損失」として損金に算入できます。国税庁のタックスアンサーでは、貸倒損失として処理できる場合が3つの区分で示されています。ここでは、実務上の3類型(法律上・事実上・形式上の貸倒れ)に沿って、自社のケースがどれに当たるかを判定できるよう解説します。

法律上の貸倒れ(法的に切り捨てられた金額)

会社更生法・民事再生法・会社法などの規定により債権が切り捨てられた場合や、債権者集会の協議・関係機関のあっせんによる協議で合理的な基準により切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度に貸倒損失として損金算入できます。債務者の債務超過が相当期間続き、書面で明らかにした債務免除額も含まれます。

事実上の貸倒れ(全額回収不能が明らかな場合)

国税庁は、事実上の貸倒れについて次のように示しています。

債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することができます。ただし担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ損金経理はできません。

出典:No.5320 貸倒損失として処理できる場合|国税庁

担保があるときは、それを処分してからでなければ損金にできない点に注意が必要です。全額が回収できないことが明らかである、という判断には客観的な資料が求められます。

形式上の貸倒れ(取引停止後1年以上/少額)

継続的に取引していた債務者の資産状況や支払能力が悪化して取引を停止し、取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上が経過した場合は、備忘価額(1円など)を残して貸倒損失を計上できます。また、同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用に満たず、督促しても弁済がない場合も対象です。この区分は売掛債権に限られ、貸付金などは対象外である点に注意します。

貸倒れは、税務処理の問題にとどまらず、利益は出ていても資金が回らなくなる「黒字倒産」につながりかねない経営リスクでもあります。3つの要件のより詳しい判定基準や、貸倒れそのものを防ぐ手立ては、以下の記事で掘り下げています。

未回収を防ぐ仕組み(与信管理・契約整備・請求/入金消込の自動化)

ここまでは起きてしまった未回収への対処を解説しました。一方で、未回収は起こさない仕組みづくりがもっとも効果的です。予防は、与信管理・契約整備・請求業務の自動化という3つの観点で進めます。

1つ目の与信管理は、取引を始める前と取引中に、相手の支払能力を確認する取り組みです。取引開始時に商業登記簿や信用調査で相手の実在と信用状態を確かめ、取引額に上限(与信限度額)を設けます。取引が始まった後も、売掛金の年齢(発生からの経過期間)を定期的にチェックし、滞留が増え始めた取引先を早めに見つけることが、初動を早める前提になります。

与信管理の入り口となる取引先の信用調査には、登記情報や決算書から自社で調べる方法と、信用調査会社に依頼する方法があります。具体的な進め方と費用の目安は、以下の記事で解説しています。

2つ目の契約整備は、初動の節でも触れた期限の利益喪失条項に加え、支払期日・遅延損害金・連帯保証・担保などを契約書に明記しておくことです。取引条件を書面で合意しておけば、支払いが滞ったときに取れる打ち手が広がり、証拠としても機能します。

3つ目は、請求書発行から入金確認・消込(入金データと請求データの照合)・督促までの自動化です。消込を自動化すれば未入金がすぐに可視化され、督促のタイミングを逃しません。こうした請求・回収の業務は、後述する回収代行サービスに任せることで、社内の手間を抑えながら回収の抜け漏れを防げます。それでも起きてしまった未回収は、外部の力を借りて取り戻す方法があります。

自力で回収するか、外部に頼むか(督促・売掛金回収代行の活用)

回収を自力で進めるか、専門のサービスや弁護士に頼むかは、未回収額・手間・回収の見込みで判断します。まずは判断の目安を整理し、次に依頼先の種類を確認します。

自力で回収するか、外部に頼むかの判断

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未回収額が少額(数万〜数十万円)相手に支払意思はあるが資金繰りが厳しい連絡がつかない・支払いを拒む未回収が頻発し、督促の手間が大きい
目安となる対応まず自力で。連絡→内容証明→少額訴訟(60万円以下)話し合いで分割・残高確認書。督促・回収の代行や自動化も検討内容証明→支払督促・訴訟→強制執行。弁護士への依頼も検討請求〜督促〜回収の代行・自動化、売掛保証の導入
考え方手続きが簡易で費用も抑えられる関係を保ちつつ回収と時効対策を進められる法的手段で債務名義を取り、差押えにつなげる回収業務と未回収リスクそのものを外部に移せる

依頼先の地図(回収代行・売掛保証・サービサー/弁護士)

売掛金の回収を外部に頼む場合、依頼先は大きく3つの型に分かれます。自社の状況がどの段階にあるかで、適した依頼先が変わります。

1つ目は、請求代行・督促自動化を担う回収代行サービスです。請求書の発行から入金管理・督促・回収までを代行、あるいはSaaSで自動化し、未然防止から初期の督促までをカバーします。日々の回収業務の負担が大きい企業に向きます。

督促を自動化する際は、伝え方の設計が顧客対応の質を左右します。自動音声(オートコール)で督促・入金案内の架電を手がける電話放送局株式会社は、その勘所を次のように説明しています。

前田氏
電話放送局株式会社 営業部 営業推進課 課長
前田氏
独自インタビューより

入金案内や督促は、伝える内容が定型化しやすい一方で、案内の仕方によってはトラブルや苦情につながりやすい業務です。だからこそ、まずは“自動化しても顧客体験を損ねにくい設計”をすることが大切だと考えています。オートコールは使い方を間違えると社会問題になりかねません。だから当社としては、用途の相性を見極めて、やめた方がいいケースは止める。その線引きも含めて一緒に考えています。

2つ目は、売掛保証やファクタリングです。売掛保証は、取引先の倒産や長期の支払遅延で回収できなくなったときに保証会社が代金を支払う仕組みで、未回収リスクの移転が目的です。ファクタリングは売掛金を買い取って早期に資金化する手段で、回収そのものより資金繰りの改善に軸足があります。

3つ目は、すでに焦げ付いた債権を法的に回収する債権回収会社(サービサー)や弁護士です。サービサーは、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)にもとづく許可を得た業者で、譲渡された債権や特定の金銭債権の回収を担います。回収を装う違法業者との区別が必要なため、許可業者かどうかを必ず確認します。

以下では、督促・回収の自動化や代行、未回収リスクの移転に対応する督促・売掛金回収代行サービスを比較します。

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サービス名請求まるなげロボ債権回収ロボURIHO(ウリホ)
提供会社株式会社ROBOT PAYMENT株式会社ROBOT PAYMENT株式会社ラクーンフィナンシャル
サービス種別回収代行+売掛保証督促・回収の自動化売掛保証
主な対応与信審査・請求書発行/送付・代金回収・入金消込・督促を代行メール・SMS・オートコールによる督促を自動化取引先の倒産・支払い遅延時に代金を保証(回収代行は行わない)
未回収保証与信通過した適格債権を100%保証×保証なし(督促・回収の自動化)倒産・1か月以上の遅延を保証
料金の目安手数料1.0%〜
月額は請求件数に応じ変動
要お問い合わせ月額4,980円〜
初期費用無料
詳細情報公式資料を見るオンライン相談を予約サービス詳細を見る

1. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求まるなげロボのウェブサイト

請求まるなげロボは、株式会社ROBOT PAYMENTが提供する、企業間取引の請求業務を丸ごと代行するサービスです。与信審査・請求書の発行と送付・代金回収・入金消込・督促までを代行し、自社の審査で適格債権と判断され与信を通過した債権については、売掛金を100%保証します。

保証の対象は与信を通過した債権に限られますが、対象になった債権は入金の遅延や貸倒れが起きても指定日に全額が支払われるため、未回収リスクそのものを外部に移せます。督促はメール・電話に加え、弁護士法人による対応も含まれます。手数料は公式サイトで1.0%〜と案内されており、取引内容によって個別に算出されます。

与信を通過しなかった取引先分も同じ画面で自社管理できるため、請求業務全体を1つのサービスにまとめられます。回収業務の手間と未回収リスクの両方を外部に預けたい企業に適しています。

2. 債権回収ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

債権回収ロボのウェブサイト

請求まるなげロボと同じ株式会社ROBOT PAYMENTが2026年に提供を開始したのが、債権回収ロボです。未入金の督促・回収業務を自動化するサービスで、メール・SMS・オートコール(自動音声)を組み合わせた督促シナリオを設計し、債務者の状況に応じて自動で実行します。

督促の状況や受信・返信の履歴を一元管理できるため、担当者ごとにばらつきがちで心理的な負担も大きい電話督促を、仕組みとして標準化できます。同社の請求管理ロボと連携すれば請求から督促・回収までを一気通貫で管理でき、単独での利用も可能です。督促件数が多く、回収業務の効率化を進めたい企業に向いています。

3. URIHO(ウリホ)(株式会社ラクーンフィナンシャル)

URIHO(ウリホ)のウェブサイト

取引先の倒産や1か月以上の支払い遅延によって売掛金が回収できなくなったときに、保証会社が代金を支払うのがURIHO(ウリホ)です。株式会社ラクーンフィナンシャルが運営する、月額定額制の売掛保証サービスです。

保証する取引先の数に上限がなく、月額4,980円からのミニプランを用意しており、法人だけでなく屋号を持つ個人事業主も対象です。申し込みから取引先の登録、保証金の請求までをオンラインで完結でき、小さく始められる予防策として検討しやすいサービスです。売掛金の回収そのものを代行する仕組みではなく、未回収による損失を保証で肩代わりするサービスである点を押さえておきましょう。

ここで取り上げたのは代表的な3サービスですが、督促・売掛金回収代行には、対応できる回収・督促の範囲や売掛金保証の有無が異なる依頼先が数多くあります。依頼先タイプ別の選び方や費用相場までまとめて比較したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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まとめ

売掛金の回収は、初動で状況と相殺・契約内容を確認し、話し合いで回収と保全を進め、応じない相手には内容証明・支払督促・少額訴訟・強制執行を金額や争いの有無に応じて使い分ける、という順で動くのが基本です。あわせて、消滅時効(原則5年)を止める手当てと、回収できなかった場合の貸倒処理も押さえておく必要があります。

自力での回収に限界を感じたら、督促・回収の代行や自動化、未回収リスクを移す売掛保証といった外部の選択肢があります。自社の未回収の状況に合ったサービスを比較し、回収業務の負担と貸倒れのリスクを減らしていきましょう。

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よくある質問(FAQ)

Q. 売掛金回収とは何ですか?

A. 売掛金回収とは、掛取引で商品やサービスを提供した後、期日を過ぎても支払われない代金(売掛金)を取引先から取り戻す一連の対応を指します。取引先への連絡や相殺できる債権の確認といった初動から、内容証明郵便・支払督促・少額訴訟・強制執行といった法的手段までが含まれ、相手の支払意思や未回収額に応じて打ち手を使い分けます。

動く順番を誤ると本来取り戻せた代金を取りこぼすことがあるため、自社のケースが手順のどこにあるかを見極めることが出発点になります。

Q. 売掛金の時効は何年で、時効を止めるにはどうすればよいですか?

A. 売掛金の消滅時効は、2020年施行の改正民法により原則5年です(債権者が権利を行使できることを知った時から5年。民法第166条)。売掛金は自社が支払期日を当然に知っているため、実務上は支払期日から5年で時効にかかると考えておくのが安全です。

時効を止める方法は2つあり、1つは内容証明郵便による催告で6か月だけ完成を先延ばしにする「完成猶予」、もう1つは経過した期間をリセットする「更新」で、裁判上の請求(訴訟・支払督促)や債務者による残高の承認がこれに当たります。時効が迫っている場合は、催告で時間を稼いだうえで更新の効力がある手続きへ速やかに進みます。

出典・参考資料(3件)

Q. 少額訴訟と支払督促は、売掛金回収でどちらを選べばよいですか?

A. 売掛金回収では、相手が支払いを争ってこないと見込まれるなら支払督促、金額が60万円以下で相手が争う可能性があるなら少額訴訟が向いています。支払督促は簡易裁判所の書記官への申立てで書類審査だけで督促状を出してもらえ、費用も訴訟のおよそ半額に抑えられますが、相手が2週間以内に異議を申し立てると通常訴訟に移行します。

少額訴訟は60万円以下の金銭請求に限られ(民事訴訟法第368条)、原則1回の審理で即日判決が出る反面、控訴はできず利用は同じ裁判所で年10回までです。争いの有無と金額を基準に使い分けます。

出典・参考資料(3件)

Q. 内容証明郵便を送るだけで売掛金は回収できますか?

A. 内容証明郵便だけで支払いを強制することはできません。内容証明が証明するのは「いつ・どんな内容の文書を誰に送ったか」という請求した事実であり、相手に支払いを義務づける効力そのものはありません。

ただし、請求を行った事実と時期を客観的な証拠として残せるうえ、民法上の「催告」として時効の完成を6か月猶予できるため、支払督促や訴訟へ進む前段の正式な一手として有効です。相手がそれでも応じない場合は、支払督促・少額訴訟などの法的手段に進み、判決や仮執行宣言といった「債務名義」を得たうえで強制執行につなげます。

出典・参考資料(2件)

Q. 売掛金の回収を弁護士に依頼する費用はどのくらいかかりますか?

A. 弁護士費用は事務所や事案によって異なりますが、多くは依頼時に支払う「着手金」と、回収額に応じて支払う「報酬金(成功報酬)」の組み合わせで設定されます。回収額に対する一定割合を成功報酬とする体系を採る事務所もあります。

少額の売掛金では、回収できても費用の方が上回る「費用倒れ」になることがあるため、依頼前に見積もりを取り、未回収額・回収の見込み・手間と照らして自力対応か依頼かを判断することが重要です。中小企業向けには、日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」のように相談窓口を利用できる制度もあります。

出典・参考資料(1件)

Q. 個人事業主でも売掛金の回収代行や売掛保証は利用できますか?

A. 個人事業主でも利用できるサービスは多くありますが、代行会社によっては法人格を持つ企業のみを契約対象としている場合があるため、事前の確認が必要です。たとえば売掛保証サービスのなかには、法人だけでなく屋号を持つ個人事業主を対象とするものもあります。

回収代行・売掛保証・ファクタリングは、それぞれ対象範囲や審査の条件、担う役割(回収の代行か、未回収リスクの移転か、早期資金化か)が異なるため、自社の事業形態で利用できるかを申し込み前に確かめておきましょう。

Q. 回収できなかった売掛金は経費(損金)にできますか?

A. 回収できなかった売掛金は、一定の条件を満たせば「貸倒損失」として損金に算入できます。国税庁は、法律上の貸倒れ(会社更生法などで法的に切り捨てられた金額)・事実上の貸倒れ(資産状況や支払能力から全額回収不能が明らかな場合)・形式上の貸倒れ(取引停止後1年以上経過した場合など)の3区分を示しています。

自社のケースがどれに当たるかで処理できるタイミングや要件が変わり、担保があるときはそれを処分した後でなければ損金にできないなどの条件もあります。区分ごとの要件を確認して判定しましょう。

出典・参考資料(1件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
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