取引先からの入金が予定日を過ぎても振り込まれず、「この売掛金は不良債権になるのではないか」と不安を感じていませんか。不良債権という言葉は銀行の経営問題として語られることが多く、自社の売掛金や貸付金がそれに当たるのか、どこからが「不良」なのかは、意外と判断しづらいものです。
入金遅延を放置すれば、回収できないまま消滅時効を迎えたり、資金繰りを圧迫したりするリスクがあります。では、自社の遅延している売掛金は不良債権に当たるのか、当たるとすればどう回収し、どう会計処理すればよいのでしょうか。
本記事では、不良債権の定義と具体例、正常債権との線引き、回収の手順、貸倒損失と貸倒引当金の会計処理までを、公的な分類や法令の根拠とともに解説します。あわせて、そもそも売掛金を焦げ付かせないための予防策(与信管理・債権保証・ファクタリング)まで一度に把握できる構成としました。自社の債権リスクを判断する材料としてご活用ください。
目次
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不良債権とは?回収が困難・不能になった債権
不良債権とは、取引先の倒産や経営悪化などにより、回収できなくなった、または回収が著しく難しくなった債権のことです。もともとは金融機関が抱える貸出金について使われてきた言葉ですが、考え方は事業会社の売掛金や貸付金にもそのまま当てはまります。取引先に対して持っている「お金を受け取る権利」が、予定どおりに回収できる見込みを失った状態を指します。
公的な解説でも、不良債権は「金融機関の貸出等の債権のうち、企業倒産等により返済されなかったり、返済が遅れたりするなどの問題のある債権」と定義されています。自社の取引に置き換えれば、売上を計上したのに代金が入ってこない売掛金や、貸し付けたまま返済が滞っている貸付金が、これに該当します。
出典・参考資料(1件)
不良債権になる債権の具体例
ここからは、自社のどの債権が不良債権になり得るのかを整理します。不良債権は銀行の貸出金だけの話ではなく、事業会社が日常的に抱える次のような債権が、回収困難になれば不良債権に含まれます。
- 売掛金(売上債権):商品やサービスを提供した対価として受け取る権利。最も身近な不良債権の対象で、取引先の支払遅延・倒産で回収できなくなるケースが典型です。
- 受取手形:支払期日に決済される約束の手形。取引先が期日に決済できない(不渡り)と回収不能に陥ります。
- 貸付金:取引先や関係会社などに貸し付けた資金。返済が滞れば不良債権となります。
- 立替金:本来は相手が負担すべき費用を一時的に立て替えたもの。回収できなければ損失につながります。
- 未収入金:固定資産の売却代金など、本業の売上以外で発生した未回収の代金。こちらも回収困難になれば不良債権です。
立替金でも、本来は自社が負担すべき経費(従業員の出張旅費を会社が一時的に処理した場合など)は、取引先から回収する債権ではないため不良債権には当たりません。相手に請求して回収する性質のものかどうかで線引きします。
このうち、事業会社にとって金額も件数も多く、最も注意が必要なのが売掛金です。次章では、これらの債権が「どの状態になったら不良債権と呼ぶのか」という線引きを見ていきます。
どこからが不良債権か|正常債権との線引き
ここからは、正常に回収できる債権と不良債権をどこで区切るのかを整理します。「支払いが1日遅れたら不良債権」というような一律の基準はなく、債務者の状態と、公的な分類の両面から判断します。
状態別の線引き(延滞・倒産/法的整理・条件緩和)
実務では、次のような状態になった債権が不良債権として扱われます。自社の遅延している売掛金がどこに当てはまるかを確認する目安になります。
- 延滞している:約定の支払期日を過ぎても入金がない状態。延滞が長期化するほど回収可能性は下がります。後述する公的分類では「3か月以上の延滞」が一つの区切りになっています。
- 倒産・法的整理に入った:取引先が破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始などの申立てを行い、経営破綻に陥った状態。回収は法的手続きの中で行うことになります。
- 返済条件を緩和した:相手の経営が苦しく、金利減免や返済猶予など、当初より債務者に有利な条件変更に応じた状態。回収を続けるために譲歩している時点で、正常な回収からは外れています。
自社の売掛金に当てはめるなら、支払期日を過ぎた時点で「回収リスクあり」として管理を始め、3か月以上の延滞・返済条件の緩和・取引先の倒産に至った債権を、明確に不良債権として扱うのが実務的な目安です。次に見る公的分類は金融機関向けの厳密な区分ですが、この目安の裏づけとして押さえておくと判断がぶれません。
金融再生法の開示債権区分(破産更生債権・危険債権・要管理債権)
公的な分類としては、金融機関の債権査定に用いられる「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(金融再生法)」の開示債権区分がよく知られています。もともとは金融機関の債権を査定する枠組みですが、債権の傷み具合を段階で捉える考え方は、自社の債権リスクを理解するうえでも参考になります。同法施行規則第4条は、債権を次の4区分に分けています。
一 破産更生債権及びこれらに準ずる債権 二 危険債権 三 要管理債権 四 正常債権
出典:金融機能の再生のための緊急措置に関する法律施行規則 第4条|e-Gov法令検索
2 前項第一号に掲げる「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
3 第一項第二号に掲げる「危険債権」とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
4 第一項第三号に掲げる「要管理債権」とは、三月以上延滞債権(元金又は利息の支払が、約定支払日の翌日を起算日として三月以上延滞している貸出債権(同項第一号及び第二号に該当する債権を除く。)をいう。)及び貸出条件緩和債権(経済的困難に陥った債務者の再建又は支援を図り、当該債権の回収を促進すること等を目的に、債務者に有利な一定の譲歩を与える約定条件の改定等を行った貸出債権(同項第一号及び第二号に該当する債権並びに三月以上延滞債権を除く。)をいう。)をいう。
このうち、正常債権を除いた「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」「危険債権」「要管理債権」の3区分が、いわゆる不良債権に当たります。先ほどの状態別の線引き(倒産・法的整理/回収可能性の低下/3か月以上の延滞・条件緩和)が、そのまま公的区分に対応していることがわかります。
用語集では以前の「リスク管理債権」(破綻先・延滞・3か月以上延滞・貸出条件緩和の4区分)が今も紹介されていることがありますが、金融機関の開示はこの金融再生法の区分に一本化されています。自社の債権を見るうえでは、先ほどの状態別の目安と、この3区分を押さえておけば十分です。
出典・参考資料(1件)
不良債権が発生すると何が起きるか
ここからは、売掛金が焦げ付くと自社にどのような影響が及ぶのかを整理します。不良債権は「回収できないお金」にとどまらず、資金繰りと収益の両面に波及します。
運転資金の負担が増える
売掛金は「入金される予定のお金」を前提に資金繰りが組まれています。回収できないと、仕入代金や人件費などの支払いに充てる原資が不足し、その穴を新たな借入や手元資金で埋めることになります。予定していた入金が途絶える分、運転資金の負担が重くなります。
収益が減少し、財務健全性が悪化する
回収不能が確定した債権は、後述する貸倒損失として費用計上され、その分だけ利益が減少します。回収が危ぶまれる段階でも貸倒引当金の計上が必要になり、いずれも損益を押し下げます。不良債権が積み上がるほど自己資本や財務指標が悪化し、金融機関からの評価にも影響しかねません。
不良債権比率とは|計算式と自社の売掛金管理指標としての読み方
不良債権がどの程度あるかを測る指標が不良債権比率です。金融機関の健全性を測る指標として使われますが、考え方は自社の売掛金管理にも応用できます。
計算式は次のとおりで、保有する債権全体に占める不良債権の割合を示します。
不良債権比率(%)=不良債権の合計額 ÷ 債権の合計額 × 100
たとえば売上債権の合計が1億円で、そのうち回収が困難になっている債権が100万円あるとすると、不良債権比率は「100万円 ÷ 1億円 × 100=1.0%」です。同じ100万円でも、売上債権が2,000万円しかない会社なら比率は5.0%となり、規模に対する焦げ付きの重さが数値で見えてきます。
自社に当てはめる場合は、売掛金や受取手形などの売上債権の総額に対して、延滞・回収困難になっている債権がどれだけあるかを見ます。何%を超えたら危険という一律の基準はないため、絶対値そのものより、前期比での上昇や、特定の1社が滞留債権の大部分を占めるといった偏りに注目します。
取引先別・期間別に比率を追うと、どの取引先の債権が焦げ付きやすいか、どの時期に滞留が増えるかが見え、与信限度額の見直しや回収強化の判断材料になります。金融庁が公表する銀行セクターの不良債権比率は、経済環境全体の目安として参考になります。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:金融再生法開示債権の状況等|金融庁
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不良債権の回収方法・手順
ここからは、実際に焦げ付いた債権をどう回収するかを見ていきます。回収は、負担の軽い手段から段階的に強めていくのが基本です。時間が経つほど回収は難しくなるため、早めの着手が肝心です。
回収の段取り(連絡から強制執行まで)
- 取引先へ連絡する:まずは電話やメールで入金状況を確認し、支払いを促します。単純な処理漏れであればこの段階で解決することもあります。
- 督促状を送る:支払期日・金額・振込先を明記した書面で正式に督促します。
- 内容証明郵便を送る:いつ・どんな内容の請求をしたかを郵便局が証明する形で送付し、こちらの本気度と請求の記録を残します。
- 民事調停を申し立てる:裁判所を介して話し合いで解決を図る手続きです。
- 支払督促を申し立てる:簡易裁判所を通じて支払いを命じてもらう略式の手続きで、相手が異議を出さなければ強制執行に進めます。
- 訴訟を起こす:金額が大きい、争いがあるなどの場合は、通常訴訟で判決を得ます。
- 強制執行を申し立てる:判決や支払督促などの債務名義(強制執行の根拠となる公的文書)をもとに、相手の預金・不動産などの財産を差し押さえて回収します。
すべてを順に踏むわけではありません。まずは自社でできる連絡・督促状・内容証明までを行い、それでも支払われないときに、金額や争いの有無に応じて民事調停・支払督促・訴訟のいずれかを選びます。少額で争いがなければ支払督促、金額が大きい・相手が争う姿勢なら訴訟が向いており、勝ち取った債務名義をもとに強制執行へ進みます。
回収が見込めるケース/困難なケース
回収の見込みは、着手の早さと担保・保証の有無で大きく変わります。
- 見込めるケース:早い段階から回収に動いている/連帯保証人や担保が付いている/取引先の資産・支払能力を把握できている、といった場合は回収可能性が高まります。
- 困難なケース:債権が消滅時効を迎えている/取引先が倒産などの法的手続きに入っている/そもそも支払能力がない、といった場合は回収が難しくなります。
消滅時効に注意(原則5年)
債権は一定期間行使しないと、時効によって消滅します。民法第166条は、消滅時効について次のように定めています。
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
出典:民法 第166条|e-Gov法令検索
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
商取引の売掛金は、支払期日の到来を通常は把握しているため、実務上は「権利を行使できることを知った時から5年」で時効にかかると考えて対応します。2020年4月施行の改正民法で、それ以前にあった職業別の短期消滅時効(売掛金2年など)は廃止され、原則5年に統一されました。
ただし施行前に発生した債権には旧法が適用される場合があるため、古い債権は個別の確認が必要です。時効の完成が近い債権は、内容証明による催告や訴訟提起などで時効の進行を止める手当てを検討します。
時効は、進行中でも「更新(リセット)」できます。相手が債務を認める行為(一部でも弁済する、支払いを猶予してほしいと申し入れるなど)があると、そこから時効期間が新たに数え直しになります(民法第152条)。また、訴訟を提起すると時効の完成が猶予され、勝訴が確定すればそこから新たに数え直しになります(民法第147条)。
一方、単なる口頭の催促では時効は止められず、内容証明による催告も完成を6か月間だけ先延ばしする効果にとどまります。その間に訴訟などの手続きを取る必要があります。
ここまでの回収手続きを自社だけで進めるのが難しい場合は、督促や交渉を専門業者に委ねる選択肢もあります。請求代行型・弁護士型など依頼先タイプ別の選び方や費用相場は、次の記事で比較できます。
売掛金回収代行サービスおすすめ21選を徹底比較|依頼先タイプ別の選び方・費用相場・督促自動化まで解説
取引先に商品やサービスを納めたのに、支払期日を過ぎても売掛金が入金されない。督促の電話やメールを送っても先延ばしにされ、自社の手間ばかりがかさんでいく。そんな未回収の売掛金を前に、どう動けばよいか判断しかねていませんか。回収にかけられる人手…
不良債権の会計処理|貸倒損失と貸倒引当金の使い分け
不良債権の会計処理は、回収不能が確定したかどうかで方法が分かれます。確定していれば貸倒損失、まだ回収が困難な段階なら貸倒引当金を使うのが基本です。

回収不能が確定した場合=貸倒損失
回収できないことが確定した債権は、貸倒損失として費用計上します。国税庁のタックスアンサー No.5320は、貸倒損失として損金処理できる場合を次の3類型で整理しています。
- 金銭債権が切り捨てられた場合:会社更生法や民事再生法などの手続き、債権者集会の協議、または債務超過が相当期間続いた債務者への書面による債務免除などで、法的・実質的に債権が切り捨てられた金額。
- 金銭債権の全額が回収不能となった場合:債務者の資産状況・支払能力からみて全額回収できないことが明らかになった場合。ただし担保があるときは、処分した後でなければ損金経理できません。
- 一定期間取引停止後に弁済がない場合:継続取引していた相手との取引停止後、最後の弁済から1年以上経過したときなど。この類型は売掛債権のみが対象で、貸付金は含まれません。備忘価額(通常1円)を残して貸倒れとして損金経理します。
仕訳では、回収不能が確定した債権を貸倒損失に振り替えます。たとえば売掛金500万円が回収不能と確定した場合は、次のように処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒損失 | 5,000,000円 | 売掛金 | 5,000,000円 |
すでに貸倒引当金を積んである債権が貸倒れになったときは、まず引当金を取り崩し、引当金で足りない分だけを貸倒損失に計上します。
回収が困難な段階=貸倒引当金(業種別法定繰入率)
まだ回収不能とは確定していないものの、貸倒れの見込みがある段階では、あらかじめ損失に備えて貸倒引当金を計上します。中小法人などは、実績による繰入率のほかに、業種ごとに定められた法定繰入率を使って一括評価できる特例が認められています。国税庁が定める法定繰入率は次のとおりです(令和7年4月1日現在)。
| 業種 | 法定繰入率 |
|---|---|
| 卸売業・小売業(飲食店業等を含み、割賦販売小売業を除く) | 1.0%(1,000分の10) |
| 製造業(電気業・ガス業・修理業等を含む) | 0.8%(1,000分の8) |
| 金融業・保険業 | 0.3%(1,000分の3) |
| 割賦販売小売業・信用購入あっせん業 | 0.7%(1,000分の7) |
| その他の事業 | 0.6%(1,000分の6) |
割賦販売小売業などの区分は、令和3年4月1日前に始まる事業年度では1.3%(1,000分の13)が適用されていました。古い情報では旧税率が紹介されている場合があるため、現行の0.7%で確認してください。法定繰入率による計算は中小法人向けの特例で、原則は過去3年の貸倒実績に基づく繰入率を用います。
繰入額の目安は「一括評価の対象となる期末債権額 × 法定繰入率」で求めます。たとえば卸売業で対象債権が2,000万円ある場合、繰入率1.0%を掛けた20万円が繰入限度額の目安です。この20万円を引き当てる場合、仕訳で示すと以下になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 200,000円 | 貸倒引当金 | 200,000円 |
出典・参考資料(2件)
貸倒損失として損金算入するには、ここで挙げた3類型それぞれの要件を満たす必要があります。要件を満たさず損金にできないケースや、状況ごとのより複雑な仕訳、黒字倒産を避ける観点までは、次の記事で詳しく解説しています。
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不良債権を発生させない予防策
ここまで回収と会計処理を見てきましたが、最も負担が軽いのは、そもそも不良債権を発生させないことです。ここからは、売掛金を焦げ付かせないための代表的な予防策を、それぞれの役割とともに整理します。
与信管理による事前チェック
与信管理は、新規取引の開始時や取引の継続中に、取引先の信用力を調べて取引条件(与信限度額・支払サイトなど)を決める取り組みです。信用調査会社のレポートや決算情報をもとに、支払能力に見合った範囲で取引することで、焦げ付きそのものを起こりにくくします。代表者の経験と勘に頼りがちな与信判断を、データに基づく組織的な仕組みに置き換えることが第一歩です。
この与信管理の実態について、企業間取引の債権保証を手がける現場からは、次のような指摘があります。

自社で与信管理をしているつもりでも、信用機関の情報を見ているだけで十分な管理ができていない企業は少なくありません。将来の経営を支える重要な機能として、専門家に任せるという選択肢をもっと広く知っていただきたいです。特に事業承継を控えた中小企業にとって、与信管理の専門化は喫緊の課題だと考えています。
与信管理の出発点になるのが、取引先の支払能力を実際に調べる信用調査です。登記事項証明書や決算書を使って自社でできる調べ方と、調査会社に依頼する場合の費用・使い分けは、次の記事にまとめています。
債権保証(取引信用保険)で倒産・支払遅延に備える
債権保証は、取引先の倒産や支払遅延で売掛金が回収できなくなった場合に、あらかじめ設定した保証限度額の範囲で損失を補填してもらえる仕組みです。取引信用保険と呼ばれる形態もあり、いずれも「回収できなかったときに現金で穴埋めされる」点が共通します。
保証をかけるには取引開始前や継続取引中に対象先を設定しておく必要があり、焦げ付いた後から遡って保証をかけることはできません。与信管理とセットで使う事前対策として位置づけられます。
保証ファクタリングで回収不能に備える(買取型ファクタリングとの違い)
ファクタリングには、目的の異なる2つのタイプがあります。保証ファクタリングは、売掛先が倒産などで支払えなくなったときに保証金を受け取れるもので、債権保証に近い「未回収への備え」です。一方の買取型ファクタリングは、売掛金を期日前に売却して早期に資金化するもので、主目的は資金繰りの改善です。不良債権化を防ぐという観点では保証ファクタリングが該当し、資金調達をあわせて考えるなら買取型も選択肢になります。
売掛金を期日前に資金化して資金繰りを改善したい場合は、買取型ファクタリングの会社選び(手数料・入金スピード・買取可能額)を次の記事で比較できます。
局面別の使い分け(どの段階でどれが効くか)
これらの予防策は、取引のどの段階にいるかで効き方が変わります。取引を始める前・与信を判断する段階では与信管理が起点になり、取引が動き出したら債権保証や保証ファクタリングで未回収リスクをカバーします。回収と資金化を同時に外部へ任せたい場合は、請求代行や掛け払いといった、保証を組み込んだ回収代行サービスも選択肢です。次章では、こうした売掛金の未回収リスクに備えるサービスを紹介します。

売掛金の未回収リスクに備えるサービス
ここからは、これまで整理した予防策を実際に提供するサービスを紹介します。純粋な債権保証から、請求・回収の代行に保証を組み込んだものまで、アプローチはさまざまです。まずは主要な4サービスの特徴を一覧で比較します。
| サービス名 | リコーリースの債権保証(Mamotte) | ギャランティ for 弥生ユーザー | 請求まるなげロボ | RP掛け払い |
|---|---|---|---|---|
| 予防・保証のアプローチ | 債権保証 (取引先を選んで契約) | 月額定額制の 小口売掛保証(クラウド型) | 請求代行一体型 (与信〜請求・回収・督促を代行) | 掛け払い(後払い) 決済代行一体型 |
| 保証・対象範囲 | 倒産・夜逃げ・支払遅延による未回収を、設定した保証限度額の範囲で実損失分を補填。必要な取引先だけを選んで契約(最低5社〜) | 倒産(破産・民事再生・会社更生等)・支払い遅延による未回収を保証。プラン別に1社80万〜500万円・総額80万〜1,000万円が上限 | 与信通過した適格債権は回収結果にかかわらず100%保証。※保証は自社審査で適格債権と判定され与信を通過した債権に限る | 与信通過した適格債権は入金遅延・貸し倒れでも100%保証(利用上限枠なし)。※保証は自社審査を通過した適格債権に限る |
| 料金体系 | 初期費用0円 月額定額19,800円〜(パッケージプラン) 高額債権はオーダーメイドで個別見積 | 月額2,000円〜(フリーランス)/6,000円(ビジネス)/12,000円(ビジネスPro) 初月無料 | 月額利用料+手数料1.0%〜(商材・金額により個別算出) 初期費用は要問い合わせ | 手数料率・初期費用・月額費用とも要問い合わせ 請求書郵送費0円 |
| 特徴・向いている企業 | 東証プライム上場のリース会社が運営。リスクの高い取引先に絞って保証をかけたい卸売・製造業の中小企業向け | 弥生の会計・販売管理ソフトと連携。月額2,000円から小口の売掛保証を手軽に始めたい事業者向け | 請求から回収・督促までの手離れと、未回収リスクの移転を同時に実現したい企業向け | 取引先の支払い負担を軽くしながら、未回収リスクを負わずに掛け取引を始めたい・与信や回収を外部に任せたい企業向け |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
1. リコーリースの債権保証(Mamotte)(リコーリース株式会社)

リコーリースが2023年に開始した、取引先を選んで契約できる債権保証サービスです。売掛金の回収前に取引先の倒産・夜逃げ・支払遅延が発生した場合、あらかじめ設定した保証限度額の範囲内で、実損失分に相当する保証金が支払われます。焦げ付きが起きても貸倒損失をそのまま抱え込まずに済むのが特徴です。
保証は必要な取引先を選んで設定でき、月額定額のパッケージプラン(初期費用0円・月額19,800円〜)と、取引先ごとに保証審査を行うオーダーメイドプランが用意されています。2026年には契約申込から取引先の審査依頼・結果確認までをWebで完結できるサービスも始まり、リース事業で培った審査ノウハウを背景に、取引先の信用力を可視化しながら継続的にリスクを管理できます。
2. ギャランティ for 弥生ユーザー(アラームボックス株式会社)

弥生のグループ会社であるアラームボックスが運営する、月額定額制のクラウド型売掛保証サービスです。弥生の会計・販売管理ソフトのユーザー向けに提供され、取引先の倒産・支払遅延による売掛金の未回収を保証します。小口の売掛保証を手軽に始めたい事業者に向いています。
料金はフリーランス(月額2,000円)・ビジネス(月額6,000円)・ビジネスPro(月額12,000円)の3プランで、プランごとに1社あたりの保証額と総保証額が定められています。総保証額の範囲内であれば保証先を追加しても別料金は発生せず、初月は無料です。弥生IDで連携すれば書類提出は不要で、Webフォームの入力だけで利用を始められます。
3. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

企業間取引の請求業務をまるごと代行するサービスです。与信審査・請求書の発行と送付・代金回収・入金消込・督促までをROBOT PAYMENTが引き受け、自社審査で与信を通過した適格債権については、売掛金を100%保証します。回収業務の手離れと未回収リスクの移転を同時に実現できる点が特徴です。
与信を通過した債権は回収結果にかかわらず指定の営業日に入金され、未入金時の督促は弁護士法人による対応まで代行されます。与信を通過しなかった取引先分も、同じプラットフォーム上で請求書発行や入金管理を行えるため、請求業務を一元化できます。料金は月額利用料と手数料で構成され、詳細は取扱内容に応じて見積もりとなります。
4. RP掛け払い(株式会社ROBOT PAYMENT)

ROBOT PAYMENTが提供する、企業間取引向けの掛け払い(後払い)決済代行サービスです。都度の取引を一定期間でまとめて請求し、与信審査・請求書の作成と送付・代金回収・督促までを代行します。利用企業は請求情報をアップロードして入金を待つだけで、請求から回収までの業務が完結します。
与信を通過した適格債権については、入金遅延や貸し倒れが発生しても100%の債権保証が付き、利用上限枠はありません。掛け払いの導入によって取引先の支払い負担を軽くしながら、自社は未回収リスクを負わずに済みます。掛け取引を新たに始めたい、あるいは掛け取引の与信・回収を外部に任せたい企業に向いた選択肢です。
ここで取り上げた4サービスのほかにも、売掛保証サービスは数多くあります。保証範囲・料金・目的別の選び方をまとめて比較し、自社に合う一社を検討したい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
不良債権とは、取引先の倒産や経営悪化などで回収が困難・不能になった債権を指し、売掛金・受取手形・貸付金なども対象になります。どこからが不良債権かは、延滞・倒産・条件緩和といった状態と、金融再生法の開示債権区分(破産更生債権及びこれらに準ずる債権・危険債権・要管理債権)の両面で捉えられます。
焦げ付いた債権は、連絡から強制執行まで段階的に回収し、回収不能が確定すれば貸倒損失、回収困難な段階では貸倒引当金で会計処理します。
ただし、回収も会計処理も自社の負担は小さくありません。最も効果的なのは、与信管理・債権保証・保証ファクタリングといった予防策で、そもそも売掛金を焦げ付かせないことです。自社の与信・回収体制を見直す際は、関連サービスの資料を取り寄せて比較検討を進めてください。
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不良債権に関するよくある質問(FAQ)
Q. 不良債権とは何ですか?
A. 不良債権とは、取引先の倒産や経営悪化などにより、回収できなくなった、または回収が著しく難しくなった債権のことです。もともとは金融機関の貸出金について使われてきた言葉ですが、事業会社の売掛金・受取手形・貸付金・立替金・未収入金なども、予定どおり回収できる見込みを失えば不良債権に含まれます。
Q. 不良債権はいくらから(どこから)不良債権になりますか?
A. 不良債権になるかどうかは金額の大小ではなく債務者の状態で判断され、一律の金額基準はありません。約定の支払期日を過ぎた延滞(公的分類では3か月以上の延滞が一つの区切り)、取引先の倒産・法的整理、返済条件の緩和といった状態に至った債権が、不良債権として扱われます。金融再生法の開示債権区分では、破産更生債権及びこれらに準ずる債権・危険債権・要管理債権の3区分がこれに当たります。
Q. 不良債権(売掛金)の消滅時効は何年ですか?
A. 商取引で生じた売掛金の消滅時効は、原則として権利を行使できることを知った時から5年です(民法第166条)。2020年4月施行の改正民法で、それ以前にあった職業別の短期消滅時効(売掛金2年など)は廃止され、原則5年に統一されました。
ただし施行前に発生した債権には旧法が適用される場合があるため、古い債権は個別に確認が必要です。時効の完成が近い債権は、内容証明による催告や訴訟提起で時効の進行を止める手当てを検討します。
Q. 不良債権の会計処理は、貸倒損失と貸倒引当金でどう使い分けますか?
A. 使い分けの基準は回収不能が確定したかどうかで、回収不能が確定した債権は貸倒損失、まだ回収困難な段階の債権は貸倒引当金で処理します。
貸倒損失は国税庁タックスアンサーNo.5320の3類型(債権の切り捨て・全額回収不能・取引停止後1年以上)に沿って損金計上し、貸倒引当金は中小法人であれば業種別の法定繰入率(卸売・小売1.0%、製造0.8%、金融・保険0.3%、割賦販売小売業等0.7%、その他0.6%)で一括評価できます。
Q. 不良債権比率に、自社の売掛金管理での目安はありますか?
A. 事業会社の売掛金管理では一律の目安値はなく、自社の比率の推移や取引先別の偏りで判断するのが実務的です。不良債権比率は「不良債権の合計額 ÷ 債権の合計額 × 100」で計算し、比率が上昇傾向にあれば与信の甘さや特定取引先への依存が進んだサインになります。金融庁が公表する銀行セクターの不良債権比率は、経済環境全体の目安として参考にできます。
Q. 不良債権を防ぐにはどうすればよいですか?
A. 不良債権を防ぐ代表的な方法は、取引先の信用力を事前に調べる与信管理と、倒産・支払遅延による損失を補填する債権保証(取引信用保険)・保証ファクタリングです。取引開始前や与信判断の段階では与信管理が起点になり、取引が動き出した後は債権保証や保証ファクタリングで未回収リスクをカバーします。
保証は焦げ付いた後から遡ってかけることはできないため、取引開始前や継続取引中に対象先を設定しておくことが前提です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















