電子契約でメールを送り、相手がボタンを一つ押して契約が成立する——この運用を続けていて、社内監査や顧問弁護士、あるいは取引先から「その電子契約って、相手が本人だとどうやって確認しているのですか」と問われたとき、法的な根拠まで含めて答えられるでしょうか。契約の中身の議論に入る前に、まず本人確認の水準が問われるのは、実務のさまざまな場面です。
電子契約の本人確認方式には、メール認証・アクセスコード・SMS認証・当事者署名型(電子証明書)・マイナンバーカードによる公的個人認証・犯罪収益移転防止法(以下、犯収法)6条方式などがあり、「何を根拠に本人と確認するのか」「電子署名法上どこまで強い証拠力を持つのか」「相手方にどの程度の手間を求めるのか」が方式ごとに違います。
本記事では、まず方式の一覧表で全体像を示したうえで、立会人型と当事者型の区分・各方式の強度・契約類型ごとの推奨方式・主要サービスの機能対応まで、実務判断の説明材料として使える形で解説します。
目次
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電子契約における本人確認方法の一覧
まずは、実務でとり得る本人確認方式を一覧で示します。この一覧を最初に眺めておくと、「自社の契約類型で必要な水準はどこにあるか」「候補サービスがどの方式に対応していれば足りるか」の判断軸が最初に手に入ります。以降の各節(立会人型/当事者型の区分・強さ・契約類型別・サービス対応)を、自社ケースに引き寄せて読み進めてください。
| 本人確認方式 | メール認証(立会人型の基本形) | アクセスコード(送信者設定・別経路伝達) | SMS認証・ワンタイムパスワード | 電子証明書による当事者署名型(民間認証局) | マイナンバーカードによる公的個人認証(JPKI) | 犯収法6条1項各号方式(ホ・ヘ・ト(1)・ト(2)・ル・カ・ワ・ヨ) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 何を確認するか | 契約相手のメールアドレスへの到達性(メールアカウントの管理者を当該取引の意思決定者として扱う) | 送信者があらかじめ設定した文字列を、メール以外の経路で相手に伝えて入力させる | 契約相手の携帯電話番号の保有(SMSで受け取ったワンタイムパスワードを入力) | 認証局が住民票・印鑑登録証明書等で本人確認したうえで発行した電子証明書と署名鍵 | J-LISが対面での本人確認を経て交付したマイナンバーカード搭載の署名用電子証明書 | 本人確認書類の画像/ICチップ情報/容貌の画像/銀行等への顧客情報の照会/顧客名義口座への振込み/公的個人認証/民間事業者発行の電子証明書(各号で組み合わせが異なる) |
| 立会人型/当事者型 | 立会人型 | 立会人型(メール認証の補強) | 立会人型(二要素認証の要素) | 当事者型 | 当事者型(公的個人認証) | 犯収法上の非対面本人確認方法(1号カは公的個人認証・当事者型、1号ワ・ヨは民間認証局の電子証明書) |
| 本人確認の強さ | △(メールアカウントの乗っ取り・共有アドレスがあれば別人でも署名成立し得る) | ●(メールとは別経路の情報を組み合わせる二要素認証) | ●(メールと携帯電話の別経路による二要素認証) | ◎(実印相当。証明書の発行来歴が本人性の根拠) | ◎(対面本人確認を経て交付され犯罪収益移転防止法施行規則(以下、犯収法規則)6条1項1号カ方式に位置づけられる非対面確認方式) | ◎(特定事業者の非対面取引で法令上要求される水準) |
| 根拠となる法令・条項 | 電子署名法2条・3条/電子署名法3条関係Q&A(単独では推定効成立に不十分と評価される可能性) | 電子署名法3条関係Q&A 問2(メール以外の手段で取得したコードの入力を二要素認証の例示として明記) | 電子署名法3条関係Q&A 問2(メールアドレス+ログインパスワード+SMSワンタイムパスワードを固有性を満たす例として例示) | 電子署名法2条・3条/同法4条以下(認定認証業務) | 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律/犯収法規則6条1項1号カ | 犯収法4条1項/同法施行規則6条1項1号ホ・ヘ・ト(1)・ト(2)・ル・カ・ワ・ヨ/金融庁「オンラインで完結可能な本人確認方法の概要」 |
| 相手方の手間 | なし(届いたリンクから同意ボタンを押すだけ) | 別経路で伝達されたコードを入力 | SMSで受信したワンタイムパスワードを入力 | 認証局に本人確認書類を提出し電子証明書の発行を受ける | マイナンバーカードの取得とICカードリーダー等での読取 | 各号方式に応じた本人確認書類の提出・容貌撮影・口座保有等 |
◎=実印相当・非対面完結の高水準/●=二要素認証水準/△=単一要素での確認。2026年8月時点の各法令・当局公表資料に基づき整理。
犯収法6条1項各号方式の内訳(号別・確認材料・相手方の手間・実務用途)
犯収法6条1項各号方式は、金融・不動産などの特定事業者が非対面取引を行うときに必要になる本人確認方式群です。号ごとに要求される確認材料と相手方の手間が違うため、実務での主な用途を号別に並べると次のとおりです。
| 号 | 1号ホ | 1号ヘ | 1号ト(1) | 1号ト(2) | 1号ル | 1号カ | 1号ワ | 1号ヨ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 要求される確認材料 | 写真付き本人確認書類の画像+容貌の画像 | 写真付き本人確認書類のICチップ情報+容貌の画像 | 本人確認書類の画像またはICチップ情報+銀行等への顧客情報の照会 | 本人確認書類の画像またはICチップ情報+顧客名義口座への振込み | カード代替電磁的記録(マイナンバーカードのIC情報等) | マイナンバーカードの署名用電子証明書(公的個人認証) | 電子署名法4条1項の認定認証事業者が発行する電子証明書(例:サイバートラスト iTrust) | 総務大臣認定署名検証者が発行する電子証明書 |
| 相手方の手間 | 運転免許証等の撮影送付+自撮り送付(スマホ完結) | NFC対応スマホで身分証ICチップの読取+自撮り送付 | 本人確認書類の送付。銀行照会は事業者側で完結 | 本人確認書類の送付+自己名義口座の指定 | 対応端末での読取 | マイナンバーカードの取得(未取得の場合、市区町村での交付申請・受取が必要)とNFC対応スマホまたはICカードリーダー付きPCでの読取 | 認証局に本人確認書類を提出し電子証明書の発行を受ける(発行日数と年間更新の費用負担が発生) | 1号ワと同様(証明書発行手続き) |
| 実務主な用途 | 金融口座開設・貸金業の非対面本人確認(eKYCの主流) | 偽造耐性を高めたい金融・証券の口座開設 | 既存の銀行取引情報と突合できる金融取引 | 銀行口座を持つ既存顧客の追加サービス申込 | 他号方式との併用・簡易な本人確認補強 | オンライン完結の高水準本人確認(不動産・金融・保険) | 法人代表者・士業など事業として電子証明書を保有する主体との取引 | 電子証明書ベースの当事者型署名を用いる特定取引 |
2026年8月時点。犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則6条1項1号、金融庁「オンラインで完結可能な本人確認方法の概要」に基づき整理。
メール認証・アクセスコードによる本人確認(立会人型の基本形)
メール認証は、契約相手のメールアドレスに署名依頼リンクを送信し、リンククリックで「メールアドレスの管理者=意思決定者」として扱う方式です。相手方に事前準備を求めない反面、確認しているのは到達性のみで、契約権限を持つ本人か否かは別の手段で担保する必要があります。
アクセスコード(送信元があらかじめ設定した数字・文字列を、別経路で相手に伝えて入力させる方式)を組み合わせると、メールアドレス乗っ取り時のリスクを軽減できます。相手方の手間は数分・費用は不要・PCとメール環境があれば追加端末は不要で、主要サービスで標準機能として提供されています。
SMS認証・ワンタイムパスワードによる二要素認証
SMS認証は、契約相手の携帯電話番号にワンタイムパスワードを送信し、電子契約サービス上で入力してもらう方式です。メールアドレスが乗っ取られていても、携帯電話番号まで同時に押さえられていない限り署名は成立しないため、認証経路を分ける二要素認証として機能します。相手方の手間は数分・費用は不要・SMS受信可能な携帯電話があれば足ります。
後述する電子署名法3条関係のQ&Aでは、あらかじめ登録されたメールアドレスとログインパスワードに加えてSMSでワンタイムパスワードを送信する運用が、電子文書が利用者の作成に係るものであることを示すのに十分な固有性を満たす例として挙げられています。国内主要サービスの多くが標準またはオプションで対応しています。
電子証明書による本人確認(当事者署名型)
契約当事者本人が認証局から電子証明書の発行を受け、自らその証明書と署名鍵で電子文書に署名を付与する方式です。認証局が証明書発行時に本人確認書類の確認を行うため、電子契約サービス側のメール認証を経由せずとも、証明書の来歴自体が本人性の根拠になります。実印相当の証明力が必要な高額契約・不動産取引・金融取引で選ばれる形です。
相手方の負担は他方式より重く、認証局への本人確認書類の提出と発行手続きに数日〜数週間、電子証明書の年間更新費用が発生します。署名時はICカードリーダーやスマートフォンでの証明書読取が必要です。
マイナンバーカードによる公的個人認証(JPKI/犯収法6条1項1号カ)
マイナンバーカードに搭載された署名用電子証明書(公的個人認証サービス、JPKI)を使って電子署名を行う方式です。証明書は地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が発行し、対面での本人確認を経て交付されるため、民間認証局の証明書とは証明書の発行来歴の強度が異なります。
金融庁が公表する「犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要」では、マイナンバーカードの署名用電子証明書を使う方式が犯収法規則6条1項1号カに該当する非対面本人確認方法として整理されています。
相手方はマイナンバーカードとNFC対応スマホまたはICカードリーダー付きPCがあれば署名でき、初回は市区町村での交付申請と受取が必要ですが、以後の1件ごとの手間は数分に収まります。
犯収法6条1項各号方式(不動産・金融の非対面取引で必要になるオンライン本人確認)
宅地建物取引業者や金融機関など、犯収法上の特定事業者が特定取引を行う場合、同法施行規則6条1項各号に定める本人確認方法のいずれかを行う必要があります。電子契約でオンライン完結する場合に該当し得る方法は、金融庁の公式整理では次のように示されています。
出典:犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要(参考資料)|金融庁
- 「写真付き本人確認書類の画像」+「容貌の画像」を用いた方法:1号ホ
- 「写真付き本人確認書類のICチップ情報」+「容貌の画像」を用いた方法:1号ヘ
- 「本人確認書類の画像又はICチップ情報」+「銀行等への顧客情報の照会」を用いた方法:1号ト(1)
- 「本人確認書類の画像又はICチップ情報」+「顧客名義口座への振込み」を用いた方法:1号ト(2)
- 「カード代替電磁的記録」を用いた方法:1号ル
- 「公的個人認証サービスの署名用電子証明書(マイナンバーカードに記録された署名用電子証明書)」を用いた方法:1号カ
- 「民間事業者発行の電子証明書」を用いた方法:1号ワ・ヨ
各号の内訳(要求される確認材料・相手方の手間・実務主な用途)は、本節冒頭の「犯収法6条1項各号方式の内訳」表を参照してください。契約類型ごとに求められる水準の詳細は、後述の節で扱います。
立会人型(事業者署名型)と当事者型(当事者署名型)の違い ─ 電子署名法2条・3条との対応
電子契約の署名方式は、事業者の署名鍵で契約書に署名する「立会人型(事業者署名型)」と、契約当事者本人の電子証明書で署名する「当事者型(当事者署名型)」に大別されます。電子署名法2条(電子署名の定義)・3条(真正成立の推定)との対応が方式ごとに違うため、区分の意味と3省Q&Aの整理をここで確認します。
立会人型(事業者署名型)と3省Q&Aの整理
立会人型は、電子契約サービスの提供事業者が、利用者の指示に基づいて自らの署名鍵で電子文書に署名する方式です。相手方は認証局から電子証明書を取得する必要がなく、メールに届いたリンクから同意ボタンを押すだけで契約が成立するため、国内BtoB取引で最も広く使われています。
この方式の電子署名法上の位置づけは、総務省・法務省・経済産業省が令和2年7月17日公表の「電子署名法第2条第1項関係Q&A」で整理されました。事業者の意思が介在せず利用者の意思のみに基づき機械的に署名されたと認められれば、電子署名法2条の「電子署名」に該当し得るという整理です。国内主要立会人型サービスはこの整理を前提としています。原文は次のとおりです。
利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
出典:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第2条第1項関係)|総務省・法務省・経済産業省(令和2年7月17日)
当事者型(当事者署名型)と実印相当の位置づけ
当事者型は、契約当事者本人が認証局から発行を受けた電子証明書と署名鍵を使って、自ら電子文書に電子署名を付与する方式です。認証局は署名鍵の発行前に住民票や印鑑登録証明書などで本人確認を行うため、証明書の発行時点で強い本人性が担保される構造になります。
相手方にも電子証明書の取得を求めるため、立会人型に比べて運用の負担は増えますが、実印相当の証明力が必要な高額契約・不動産取引・金融取引で選ばれます。
立会人型と当事者型の対比 ─ 誰が署名し、証明書はどこにあるか
両方式の違いを、署名の主体・電子証明書の所在・相手方の手間・法的位置づけの4軸で並べると、次のように整理できます。
| 観点 | 誰が電子文書に署名するか | 電子証明書の所在 | 相手方の事前準備 | 電子署名法上の位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| 立会人型(事業者署名型) | 電子契約サービス提供事業者が、利用者の指示に基づき事業者自身の署名鍵で署名する | サービス提供事業者が保管(利用者は所持しない) | 認証局での手続き不要。メールに届いたリンクから同意するだけで完了 | 事業者の意思が介在せず利用者の意思のみに基づく場合、電子署名法2条の電子署名に該当し得る(電子署名法2条関係Q&A) |
| 当事者型(当事者署名型) | 契約当事者本人が、自ら発行を受けた電子証明書と署名鍵で署名する | 契約当事者本人が認証局から発行を受けて保管 | 認証局に本人確認書類(住民票・印鑑登録証明書等)を提出し、電子証明書の発行を受ける必要がある | 本人による電子署名として電子署名法2条・3条の要件を満たす典型的な構造 |
2026年8月時点。総務省・法務省・経済産業省の電子署名法2条関係Q&A、電子署名及び認証業務に関する法律に基づき整理。
当事者型で使う電子証明書の発行元 ─ パブリック認証局とプライベート認証局
当事者型で使う電子証明書は、発行元によってパブリック認証局とプライベート認証局に分けられます。パブリック認証局は電子署名法4条以下の認定認証業務を担う第三者機関で、不特定多数を相手にする社外契約や、対外的な証明力が求められる場面で使われます。サイバートラスト(iTrust)、セコムトラストシステムズなどが代表例です。
一方、プライベート認証局は特定の組織内での利用を想定した認証局で、主に社内契約や閉じた取引関係の中での署名に使われ、社外の重要契約では通常パブリック認証局の証明書を使います。
各方式の本人確認の強さ ─ 電子署名法3条の推定効はどこまで働くか
ここまで並べた方式は、なりすまされにくさや裁判で争われたときの証拠力に差があります。「電子契約の本人確認として使ってよい水準か」は、電子署名法3条が定める推定効の要件をどこまで満たすかで整理できます。
電子署名法3条の推定効とその成立要件(本人性・非改ざん性)
電子署名法3条は、電子文書が真正に成立したもの(本人の意思に基づいて作成されたもの)と推定されるための要件を定めています。裁判で契約書の成立が争われた場合、この推定効が働くと、相手方が「自分は署名していない」と主張してもそれを覆すだけの反証をしなければならず、事実上、契約を主張する側が有利になります。条文は次のとおりです。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第3条|e-Gov法令検索
ポイントは3つです。①「本人による電子署名」であること、②必要な符号(署名鍵)や物件(証明書等)を適正に管理していること、③その結果として本人だけが署名を行える状態になっていること。この3要件を全て満たしたときに、電子文書は本人の意思に基づき作成されたものと推定されます。
なりすまされにくさの順序 ─ メール認証単独から公的個人認証まで
本人確認の強さを、なりすまされにくさで並べると、おおむね次の順序になります。
- メール認証単独(立会人型):確認しているのはメールアドレスへの到達性のみで、メールアカウントの乗っ取りや共有アドレスがあれば別人でも署名し得る。証拠力は最も低い水準にとどまる
- メール認証+アクセスコード/SMS認証(立会人型・二要素認証):メールとは別経路の情報(アクセスコード・携帯電話SMS)を組み合わせるため、経路を1つ乗っ取られただけでは署名は成立しない
- 民間認証局発行の電子証明書による当事者型:認証局が住民票・印鑑登録証明書等で本人確認したうえで証明書を発行するため、証明書の来歴が本人性の根拠になる。実印相当
- マイナンバーカードによる公的個人認証(JPKI):J-LISが対面での本人確認を経て発行する公的な電子証明書を使用。犯収法規則6条1項1号カ方式に位置づけられる非対面本人確認方式
実務では「重要な契約はメール認証単独に頼らない」ことが繰り返し推奨されています。公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が公表する「電子契約活用ガイドライン Ver.3.0」(2026年3月)は、この点を明示的に指摘しています。
メールアドレスのみの審査は、後日否認されるリスクがあり推奨されない
出典:電子契約活用ガイドライン Ver.3.0(2026年3月)第38頁|公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)
裁判で争われたときの証拠力 ─ 立会人型で推定効が働く条件と限界
立会人型の署名で電子署名法3条の推定効が働くかは、令和2年9月4日公表の「電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」(令和6年1月改定でデジタル庁・法務省所管、以下、電子署名法3条関係Q&A)で整理されています。要点は、事業者の署名鍵で暗号化する立会人型でも「本人でなければ行うことができない」といえる固有性を満たせば3条の要件を満たし得るという整理です。
①のプロセスについては、例えば以下の方法により2要素認証を行っている場合は電子文書が利用者の作成に係るものであることを示すのに十分な水準の固有性を満たすと評価され得ると考えられる。
出典:電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)問2|令和2年9月4日 総務省・法務省・経済産業省連名(令和6年1月改定でデジタル庁・法務省所管)
- あらかじめ登録されたメールアドレス及びログインパスワードの入力並びにSMS送信又は手元にあるトークンの利用等当該メールアドレスの利用以外の手段により取得したワンタイム・パスワードの入力
- あらかじめ登録されたメールアドレスに配信された時限アクセス URL へのアクセス及び署名用のトークンアプリをインストールしたスマートフォンによる認証
- 利用者専用の電子契約システムログイン ID・パスワードを利用したアクセス及び利用者に対し配布されたトークンデバイスによる認証
ただし、身元確認そのものは電子署名法3条の推定効の必須要件ではないものの、有効な立証手段になると同Q&Aは述べています。実際には、契約の重要性・金額に応じてサービスを選ぶことが適当だとされており、次のように整理されています。
電子契約サービスにおける利用者の身元確認の有無、水準及び方法やなりすまし等の防御レベルは様々であるところ、現状では必要な基準についての裁判例の蓄積が十分でなく、身元確認の水準や防御レベルが低い場合には、実際の裁判において真正な成立を推定するためには不十分であると判断される可能性がある。したがって、各サービスの利用に当たっては、当該各サービスを利用して締結する契約等の重要性の程度や金額といった性質に鑑みて、裁判において真正な成立の推定が得られない場合に利用者に生ずる損害等を考慮した上で、適切なサービスを慎重に選択することが適当と考えられる。
出典:電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)問5|令和2年9月4日 総務省・法務省・経済産業省連名(令和6年1月改定でデジタル庁・法務省所管)
要は、少額のBtoB業務委託であれば、メール認証+アクセスコードや二要素認証を備えた立会人型で実務上必要な証拠力を確保できます。一方、高額契約・不動産取引・金融取引では、当事者型やマイナンバーカードの公的個人認証まで水準を引き上げることが望ましい――というのが公式見解の骨格です。
契約類型ごとの推奨本人確認方式 ─ BtoB業務委託/不動産/金融/雇用/個人相手
ここからは、これまで解説してきた方式群を、自社の契約類型に当てはめる視点で整理します。契約類型によって法令上求められる水準が異なるため、「うちの契約類型ならこの方式で妥当」の目安を、根拠条項とセットで把握してください。
契約類型 × 実務上一般的な本人確認方式 × 根拠条項
各契約類型で実務上一般的な本人確認方式と、その水準を支える根拠条項を並べると次のとおりです。
| 契約類型 | 一般のBtoB業務委託・売買契約 | 不動産取引(宅建業)の売買契約・重要事項説明 | 金融取引・融資契約・保険(銀行・貸金業・保険業) | 雇用契約・労働条件通知 | 個人相手の契約(消費者取引) |
|---|---|---|---|---|---|
| 実務上一般的な方式 | 立会人型メール認証(重要契約はアクセスコードやSMS認証を併用) | 電子書面に電子署名+犯収法6条方式(売買取引の当事者本人確認) | 犯収法6条方式(ホ〜ヨ)による非対面本人確認+当事者型電子署名 | 労働者の希望確認+電子メール等での通知交付(本人性は立会人型・当事者型で担保) | 立会人型メール認証+アクセスコード(高額なら当事者型・マイナンバーカード) |
| 法令上求められる水準 | 特段の水準規制なし。契約の重要性に応じて事業者が選択 | 重要事項説明書等は「改変防止措置」が必要(IT重説マニュアル)。売買契約の当事者本人確認は犯収法上の特定取引 | 特定事業者として取引時確認義務。オンライン完結する場合は施行規則6条1項1号ホ・ヘ・ト(1)・ト(2)・ル・カ・ワ・ヨのいずれか | 書面交付が原則。労働者が希望した場合に限りFAX・電子メール等での交付が可能 | 重要性・金額に応じて選択(契約の性質次第で犯収法・特定商取引法などが関わる) |
| 主な根拠条項 | 電子署名法2条・3条/電子署名法3条関係Q&A | 宅地建物取引業法35条・37条/犯収法4条1項・犯収法規則6条1項各号/国交省IT重説実施マニュアル | 犯収法4条1項・犯収法規則6条1項各号/金融庁「オンラインで完結可能な本人確認方法の概要」 | 労働基準法施行規則5条4項/電子署名法2条・3条 | 電子署名法2条・3条/電子署名法3条関係Q&A(重要性・金額に応じた選択) |
2026年8月時点。e-Gov法令検索の各法令、金融庁「オンラインで完結可能な本人確認方法の概要」、国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和6年12月版)に基づき整理。
一般のBtoB業務委託・売買契約(立会人型メール認証を基本に、リスクに応じて補強)
一般のBtoB業務委託・売買契約には、本人確認水準を法令が直接規制するものはありません。実務では立会人型メール認証が主流で、契約の重要性が上がるほどアクセスコード・SMS認証・IP制限などを追加して、電子署名法3条関係Q&Aが示す「二要素認証」の水準まで引き上げるのが標準的な選択肢です。
引き上げの目安は、取引金額が数百万円以上の基本契約、契約期間5年超の継続的取引、訴訟時の想定損害額が大きい類型(機密情報を含む業務委託・ライセンス供与など)です。こうしたケースでは、当事者型やマイナンバーカードの公的個人認証まで引き上げるのが合理的です。金額・期間・想定損害額の3軸で線を引き、社内基準として整えておくと運用が安定します。
不動産取引(宅建業法のIT重説と犯収法6条方式)
宅地建物取引業者が売買や貸借に関与する場合、宅建業法上の重要事項説明書(35条書面)・契約書(37条書面)・媒介契約書(34条の2書面)は電子交付が可能です。ただし電子書面には改変防止措置が必要で、国土交通省IT重説実施マニュアル(令和6年12月版)は次の要件を示しています。
提供する重要事項説明書等の電子書面は、以下の要件を満たす必要があります。
出典:重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル(令和6年12月版)第12〜14頁|国土交通省
ⅰ 説明の相手方等が出力することにより書面(紙)を作成できるものであること。
ⅱ 電子書面が改変されていないかどうかを確認することができる措置を講じていること。
(…)電子書面が改変されていないかどうかを確認することができるという要件を満たす措置としては、電子署名やタイムスタンプが想定されます。
加えて、宅建業者は犯収法上の特定事業者であり、「宅地・建物の売買契約の締結又はその代理若しくは媒介」は特定取引に該当します。売買取引の当事者本人確認については、同マニュアル第35頁でも次のように注意喚起されています。
売買取引(その媒介や代理を含む。)においては、マネー・ローンダリングを防止する観点から、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯罪収益移転防止法」という。)に基づき、契約当事者本人であることの確認を行う必要がありますので、注意ください。
出典:国交省IT重説実施マニュアル(同上)第35頁
実務としては、電子契約サービスの当事者型署名で契約書自体の非改ざん性を担保しつつ、売買取引の当事者本人確認は犯収法6条1項各号方式(マイナンバーカードによる公的個人認証や、身分証画像+容貌の画像を組み合わせる非対面eKYC)で別途行う、という組み合わせが定着しつつあります。
不動産取引に用いる電子契約サービスの選定では、賃貸管理システムとの連携、IT重説フローとの一本化、売主・買主・連帯保証人・仲介担当など複数当事者の同時署名可否など、業界特有の要件で候補を絞り込む必要があります。以下の記事では、不動産業向けに公式対応する電子契約サービスを業界特化型・汎用大手・法務BPaaS連動型のタイプ別に比較しています。
金融取引・融資契約・保険(犯収法特定取引と6条1項各号方式)
銀行・貸金業者・保険業者・保険代理店などは、犯収法上の特定事業者として取引時確認義務を負います。口座開設・融資契約・保険契約締結などの特定取引を非対面で行う場合、犯収法規則6条1項各号のいずれかの方法で本人確認を実施する必要があります。オンライン完結の主要方式は、記事前半の一覧で示したホ・ヘ・ト(1)・ト(2)・ル・カ・ワ・ヨの各号が該当します。
2018年改正犯収法以降、身分証コピー郵送のみの旧方式が使えなくなり、マイナンバーカードの署名用電子証明書(1号カ)や、身分証のICチップ情報+容貌の画像(1号ヘ)を組み合わせる方式が実務の中心になっています。電子契約サービス単体で完結できるとは限らず、外部eKYCサービスや電子債権記録機関と連携する構成も選ばれます。
雇用契約・労働条件通知(労基則の電磁的交付規定と本人性の担保)
労働条件通知書の交付方法は、労働基準法施行規則5条4項が定めています。書面交付が原則ですが、労働者が希望した場合に限り、FAXや電子メール等の電磁的方法で交付することができるという枠組みです。
法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
出典:労働基準法施行規則 第5条第4項|e-Gov法令検索
一 ファクシミリを利用してする送信の方法
二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
労基則5条4項はあくまで交付方法の規定であって、労働者本人であることを確認する方法までを定めていません。雇用契約書や労働条件通知書自体の本人性は、電子署名法2条・3条の枠組みや、電子契約サービスの立会人型・当事者型で担保します。実務では、社員に配布する会社メールアドレスとログインパスワード+SMSの二要素認証を組み合わせた運用が広く使われています。
雇用契約書の電子化は、労働者の希望確認・電磁的交付要件・人事労務システムとの連携・入社時のワークフローなど、雇用実務ならではの論点があります。導入検討から実装までの全体像や、2024年の労働条件明示ルール改正への対応まで含めて詳しく整理したい場合は、以下の記事もあわせてご参照ください。
個人相手の契約(消費者との契約で追加的に注意する点)
個人相手の契約では、相手方が電子契約サービスにアカウントを持たないケースが大半で、アクセスコードやSMS認証の案内も相手の負担になります。金額の小さい消費者取引なら立会人型メール認証+アクセスコードが実務的です。高額な借入・不動産購入・保険契約など特定取引に該当する場面では、事業者側で犯収法6条方式(マイナンバーカードや身分証画像+容貌画像)を別途用意します。
また、消費者契約法・特定商取引法など消費者保護の規制が関わる領域では、契約の重要事項の説明方法や、電磁的方法での書面交付の可否について個別の規制がかかるため、本人確認方式の設計と並行して確認します。
電子契約でなりすまし・無権代理を防ぐための運用対策
本人確認は認証手段の選択だけで完結せず、日々の運用ルールがあって初めて水準が担保されます。ここでは、電子契約で実際に問題になりやすいなりすまし・無権代理のパターンと、それを防ぐための運用面の対策を整理します。
電子契約で問題になるなりすまし・無権代理のパターン
実務でよく指摘されるパターンとしては、次のようなものがあります。
- 取引先のメールアドレスが乗っ取られ、第三者が同意ボタンを押して契約書に署名がついてしまう
- 「代表メールアドレス」「部署共有アドレス」に署名依頼が届き、権限のない担当者が同意する
- 退職者のアカウントが停止されず、退職後も電子契約サービスにログインできる状態が続いている
- 社内決裁を経ずに担当者が独断で署名依頼を送り、事後に会社として否認したい状況が発生する
これらのケースでは、契約の効力そのものが争われる可能性があります。とくに権限のない担当者が結んだ契約は、民法113条の無権代理として、本人が追認しない限り本人に対して効力を生じないとされています。
(無権代理)
出典:民法 第113条第1項|e-Gov法令検索
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
メール認証単独のリスクと補強手段(多要素認証・アクセスコード・SMS併用・IP制限)
メール認証のみで運用している場合、メールアカウントが乗っ取られたり、担当者以外もアクセスできる共有アドレスで運用したりすると、本人性の根拠が実務上ほぼ機能しません。前述のJIIMAガイドラインが「メールアドレスのみの審査は、後日否認されるリスクがあり推奨されない」と明言しているのは、この構造への警鐘です。
補強策としては、電子署名法3条関係Q&Aが例示するとおり、メール以外の経路(SMS・トークンアプリ・アクセスコード)による認証を組み合わせるのが基本です。加えて、社内側では会社ドメインメールしか使わない、送信元と別経路でアクセスコードを共有する、契約金額・重要度ごとに水準を分けるといった運用ルールを整えることで、認証手段そのものの限界を補います。
アカウント管理・権限設計・退職者アカウントの停止フロー
電子契約サービスの管理者・一般ユーザーアカウントの権限設計と、入退社時のアカウント発行・停止フローの整備は、認証手段の選定と同じくらい重要です。退職者アカウントを放置すると、元従業員のIDで署名依頼が送られる可能性が残ります。人事システムと連携し退職日にアカウント停止・パスワードリセット・多要素認証端末の解除まで自動化する設計が望ましい形です。
権限設計では、契約書のテンプレート編集権・送信権・管理者権限を役割ごとに分離し、担当者が独断で署名依頼を送れない構成にすることで、無権代理の発生を防ぎます。金額の上限で承認者を段階的に切り替える設計を組み込むサービスも一般化しつつあります。
監査ログ・承認フローによる社内統制の担保
誰がいつ、どの契約書を送信・承認・受信・署名したかを追跡できる監査ログは、事後に契約の効力が争われたときの立証材料になります。ログイン履歴・IPアドレス・端末情報・承認履歴が改ざん不能な形で残るサービスであれば、なりすましが疑われた場合にも、事実関係を客観的に再現できます。
あわせて、社内の承認フローを電子契約サービス上で回す運用にすると、送信前の稟議・法務レビュー・上長承認までが電子契約サービスに集約され、権限のない担当者が独断で外部に署名依頼を送るリスクを減らせます。J-SOX対応の観点でも、証跡が自動で残る仕組みへの移行は求められる方向にあります。
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主要な電子契約サービスの本人確認機能への対応
ここまで整理した本人確認の水準を、実際に採用できるサービスに落とし込むには、各サービスがどの方式に対応しているかを個別に確認する必要があります。以下では、立会人型・当事者型・マイナンバーカード連携まで含めて幅広く対応する代表的な3サービスの本人確認機能の位置づけを紹介します。
ここで紹介する3サービスは本人確認機能の幅で代表例を選んだものです。料金体系・タイプ別の使い分け・その他の主要サービスまで含めて電子契約システム全般を横並びで比較したい場合は、以下の記事をあわせてご参照ください。
本人確認の要件からサービスを選ぶ視点
自社の契約類型で必要な本人確認水準(メール認証/二要素認証/当事者型/犯収法6条方式)が固まったら、その水準を満たすサービスに候補を絞り込みます。「立会人型と当事者型を書面ごとに使い分けできる」「マイナンバーカード連携」「監査ログ・IP制限・SSO」の3点が揃っていると、契約類型の追加にも対応しやすくなります。
比較検討時は、公式ドキュメント(料金表・機能一覧・セキュリティ仕様書)で本人確認機能の記述を確認し、資料請求で運用時の制約(アクセスコードの文字列制限、同時セッション数、SSO対応の追加費用など)まで併せて聞いておくと、導入後のギャップを避けやすくなります。
次に、代表的な3サービスの本人確認機能への対応を横並びで比較します。
| サービス | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン | freeeサイン |
|---|---|---|---|
| 立会人型メール認証 | ○(標準) | ○(契約印タイプ) | ○(電子サイン) |
| SMS認証 | 要問合せ | ○(本人確認強化オプション/アクセスコードSMS送信) | ○(SMS/電話での追加認証) |
| アクセスコード | ○(2段階認証) | ○(アクセスコード認証) | 要問合せ |
| 当事者型(電子証明書) | ○(マイナンバーカード署名、2023年提供開始) | ○(実印タイプ/ハイブリッド署名可) | ○(電子署名/PAdES準拠の長期署名対応) |
| マイナンバーカード連携 | ○ | ○(マイナンバー実印オプション) | 要問合せ |
| IP制限 | ○(IPアドレス制限) | ○(IPアドレス制限) | ○(Advance & Enterpriseプラン) |
| 二要素認証 | ○(アプリによる2要素認証) | ○(標準) | ○(SMS/電話) |
| 監査ログ | ○(Corporateプラン以上) | ○ | 要問合せ |
2026年8月時点、各サービスの公式サイト・料金ページ・機能一覧・セキュリティページに基づき整理。「要問合せ」は公式ページで対応可否を明示的に確認できなかった項目。
クラウドサイン ─ 本人確認機能の位置づけ

クラウドサインは、富士キメラ総研2025年版調査で電子契約ツール部門シェア首位を占める電子契約サービス(提供元:弁護士ドットコム株式会社)。立会人型メール認証にアクセスコード2段階認証・アプリでの2要素認証を組み合わせられ、当事者署名型のマイナンバーカード署名(2023年提供開始)にも対応する。立会人型の運用しやすさを保ちながら、実印相当の本人確認が必要な契約まで同じサービス上で扱える点が特徴。
受信者側にアカウント登録を求めない導線を維持したまま、承認機能・登録制限・監査ログといった社内統制の仕組みも標準で備えているため、まずは立会人型で電子契約を導入し、契約類型の広がりに合わせて当事者型・マイナンバーカードまで水準を引き上げていく運用に向いています。料金は月額基本料+送信件数従量が基本で、監査ログはCorporateプラン以上での提供です(詳細プランは公式料金ページ参照)。
電子印鑑GMOサイン ─ 本人確認機能の位置づけ

電子印鑑GMOサインは、契約印タイプと実印タイプの二層構造で立会人型と当事者型を1サービスに束ねている点が最大の特徴(提供元:GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)。契約印タイプはメール認証+アクセスコード+SMS認証の組み合わせで、実印タイプは認証局が本人確認した電子証明書で署名する構造。書面ごとに水準を切り替えられます。
マイナンバー実印オプションを追加すれば、マイナンバーカードの公的個人認証を使った署名まで可能になり、犯収法6条1項1号カに位置づけられる本人確認水準を電子契約プラットフォーム上で実現できます。当事者型・公的個人認証まで含めた「本人確認の上限」を1つのサービスで押さえたい場合の代表選択肢です。
料金は月額基本料+送信件数従量(契約印タイプで1件あたり100円、実印タイプで1件あたり300円、いずれも税抜)で、SMS送信機能とマイナンバー実印オプションが別料金です。
freeeサイン ─ 本人確認機能の位置づけ

バックオフィスSaaSの freee シリーズの一員として提供される freeeサインは、立会人型の「電子サイン」と当事者型の「電子署名」を明確に区分して提供します(提供元:フリー株式会社)。当事者型の「電子署名」はPAdES準拠の長期署名に対応する設計です。契約期間10年超の契約や長期の業務委託基本契約など、長期間にわたって真正性を担保する必要のある類型でも証拠力を維持できます。
本人確認はメール認証を基本に、SMS・電話での二要素認証まで組み込まれており、電子署名法3条関係Q&Aが例示する二要素認証の構成にそのまま合致します。freee会計・人事労務との連携を前提とした運用フローが整っているため、バックオフィスSaaSと同じ管理体系で電子契約の本人確認水準を上げたい企業に適しています。
法人向け有料プランはStarter(実質月額5,980円/年払い・税抜)〜。IP制限・SSOはAdvance & Enterpriseプランでの提供で、当事者型「電子署名」は1通200円(税抜)の従量です。
まとめ ─ 自社の必要水準に合わせて次の一歩を
電子契約の本人確認は、立会人型メール認証から公的個人認証まで、選択肢の幅が広く、契約類型と契約金額・訴訟時の想定損害に応じて水準を選ぶ設計です。一般のBtoB業務委託であれば立会人型に二要素認証を組み合わせた構成で電子署名法3条関係Q&Aの水準に届き、不動産・金融・高額契約では犯収法6条方式や当事者型署名まで引き上げる、というのが実務の骨格です。
自社の契約類型でどこまでの水準が必要かを一度整理したうえで、それを満たす機能を持つ電子契約サービスに候補を絞り込むと、稟議・監査への説明も一貫します。主要な電子契約サービスの料金・機能・本人確認対応をまとめて確認したい場合は、MCB FinTechカタログから資料を一括ダウンロードして比較検討にご活用ください。
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参考資料(法令・当局公表資料・業種別ガイドライン)
本記事の根拠となる法令・当局公表資料・業種別ガイドラインを一覧にまとめます。関連法令・当局公表資料へのリンク集としてご参照ください。
出典・参考資料(12件)
- 出典:電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)|e-Gov法令検索
- 出典:電子署名及び認証業務に関する法律施行規則|e-Gov法令検索
- 出典:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第2条第1項関係)|総務省・法務省・経済産業省(令和2年7月17日)
- 出典:電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)|令和2年9月4日 総務省・法務省・経済産業省連名(令和6年1月改定でデジタル庁・法務省所管)
- 参考資料:電子署名|デジタル庁
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)|e-Gov法令検索
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(第6条第1項第1号)|e-Gov法令検索
- 出典:犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要(参考資料)|金融庁
- 参考資料:犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法に関する金融機関向けQ&A|金融庁
- 出典:重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル(令和6年12月版)|国土交通省
- 参考資料:重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明について|国土交通省
- 出典:電子契約活用ガイドライン Ver.3.0(2026年3月)|公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)
よくある質問(FAQ)
Q. 電子契約に本人確認は法的に必須ですか?
A. 電子契約の本人確認は、契約の種類によって法令で必須とされる場合と、事業者の選択に委ねられている場合に分かれます。一般のBtoB業務委託・売買契約には本人確認水準を直接規制する法令はありませんが、犯収法上の特定事業者(銀行・貸金業・保険業・宅建業者など)が特定取引を行う場合は、犯収法4条1項の取引時確認義務により、施行規則6条1項各号のいずれかの方式で本人確認を行う必要があります。
法令上必須でない契約類型でも、電子署名法3条の推定効を働かせて訴訟時の証拠力を確保するために、実務上は何らかの本人確認を行うのが標準的です。
Q. 電子契約でメール認証だけを使う運用は法的に有効ですか?
A. メール認証単独の運用は、電子署名としては成立し得るものの、電子署名法3条の推定効を確実に働かせるには不十分とされています。電子署名法3条関係Q&Aは、メールとログインパスワードにSMSやトークンによるワンタイムパスワードを組み合わせる二要素認証を、固有性を満たす例として挙げています。
JIIMA「電子契約活用ガイドライン Ver.3.0」も「メールアドレスのみの審査は、後日否認されるリスクがあり推奨されない」と明示しています。少額のBtoB取引でも、アクセスコードやSMS認証の併用が実務の標準です。
Q. ハイブリッド運用(立会人型と当事者型の使い分け)の社内基準はどう設計するのが実務的ですか?
A. ハイブリッド運用の社内基準は、契約金額・契約期間・訴訟時の想定損害額の3軸で線を引き、線を超えた類型のみ当事者型やマイナンバーカード認証を使う設計が実務的です。目安は「金額300万円未満・期間1年以内」は立会人型+二要素認証、「数百万円以上・期間5年超」は当事者型、「金融・不動産の特定取引」は犯収法6条方式。段階的な閾値を稟議規程や電子契約運用規程に明記します。
閾値は業種・取引特性・過去の紛争経験によって調整すべき性質のものです。社内基準の策定時には顧問弁護士に想定損害額と証拠力のバランスを確認し、契約類型ごとに使う方式を先に決めておくと、担当者が案件ごとに判断で迷わずに済みます。
Q. 取引先が個人事業主の場合の本人確認オペレーションはどう組めばよいですか?
A. 個人事業主との電子契約は、相手方が電子契約サービスのアカウントを持たない前提で、立会人型+アクセスコード(別経路配布)を基本に、金額に応じてSMS認証・マイナンバーカード署名を段階的に上乗せする設計が現実的です。
相手方が電子証明書を保有しないケースが大半なため、電子印鑑GMOサインのハイブリッド署名(自社側は実印タイプ・相手方は契約印タイプ)や、クラウドサインのマイナンバーカード署名など「自社側の水準を上げて相手方の負担を最小化する」構成が使いやすい形です。
加えて、相手方向けの操作案内文書・アクセスコード伝達フロー(電話や別メールでの共有ルール)・契約金額別の本人確認水準を、社内で標準化しておくと、担当者ごとの運用ばらつきを防げます。特定商取引法や消費者契約法など消費者保護規制がかかる類型では、それぞれの規制に応じた説明義務・書面交付要件の充足も並行して確認します。
Q. 電子契約サービスは不動産・金融など業種別に求められる本人確認レベルに対応できますか?
A. 業種別本人確認レベルへの対応は、不動産・金融は犯収法6条1項各号方式が求められるため、サービス単体だけでなく外部eKYCサービスとの連携も含めて確認する必要があります。国内では電子印鑑GMOサインのマイナンバー実印オプションやクラウドサインのマイナンバーカード署名機能が、犯収法6条1項1号カに位置づけられる本人確認水準を電子契約プラットフォーム上で実現しています。
不動産取引で必要な重要事項説明書の改変防止措置(電子署名+タイムスタンプ)と、犯収法上の契約当事者本人確認は別要件です。前者は電子契約サービスの当事者型署名で、後者は犯収法6条方式で担保する組み合わせが実務の主流です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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