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FAX受注を効率化する方法|クラウドFAX・AI-OCR・受発注システムの選び方と費用

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取引先の都合でFAXを止められないまま、日々届く注文書の仕分け・手入力・保管に手が回らない受発注部門は少なくありません。「効率化のためにやり方を変えたい」という結論は出ていても、選択肢が「クラウドFAX」「OCR」「RPA」「受発注システム」と並んだところで、どれが自社の痛みを取ってくれるのか、いくらから始まるのか、取引先を巻き込まずに進められるのかは、なかなか見えないままです。

本記事では、FAX受注を楽にする7つの打ち手をひとつの表で俯瞰したあと、打ち手ごとの機能と向く会社、自社側だけで完結できるか取引先の乗り換えが要るかの切り分け、初期・月額の実額、稟議を通しやすい3段階の進め方、そして電子帳簿保存法・法人税法の保存義務までを一気通貫で整理します。

相手が動かない前提のまま、自社の受信枚数と規模でどこまで進められるかを判断できるように書きました。読み終えたら、まず試す打ち手と、その先に検討する候補群のあたりを付けられる状態を目指します。

この記事を読むとわかること
  • FAX受注効率化の7つの打ち手(クラウドFAX/PC-FAX/AI-OCR/RPA/受発注システム/Web EDI/BtoB EC)が、それぞれどの痛みを解消するかの俯瞰表
  • 打ち手ごとの機能・向く会社・向かない会社、代表的なサービス名
  • 「取引先が動かない」前提でどこまで進められるか=自社完結型と取引先協力型の切り分け
  • 各打ち手の初期費用・月額の実額と、公式料金ページの根拠
  • まずクラウドFAX → AI-OCR → 受発注システムへ進む3段階の道筋
  • FAX発注書の保存義務(法人税法施行規則第59条・電子帳簿保存法第7条)の条文根拠
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【この記事の答え】FAX受注効率化の打ち手カタログ

FAX受注を楽にする打ち手は、大きく分けて7種類あります。それぞれが解消できる痛みと、自社側だけで完結できるかを1枚の表で並べました。「まず全体像を掴んでから、自社の受信枚数と規模で使える打ち手を絞り込む」順で読み進める土台になります。

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打ち手クラウドFAXPC-FAX(複合機連携)AI-OCRRPA受発注システムWeb EDIBtoB EC
仕分け受信を可視化メール転送で共有注文の一元管理注文の一元管理注文の一元管理
転記文字認識で自動化OCRデータの自動投入Web注文で不要データ交換で不要取引先が自分で入力
保管クラウド保管PDF保存注文履歴として保存取引履歴として保存注文履歴として保存
検索クラウド検索メール検索データ化で可能注文履歴検索取引履歴検索注文履歴検索
テレワークどこでも受信社外から確認可Web上で完結Web上で完結Web上で完結
ミス手入力ミス削減手入力ミス削減注文フォーマット統一フォーマット統一取引先入力で削減
属人化作業標準化作業標準化業務標準化業務標準化業務標準化
導入タイプ自社完結型自社完結型自社完結型自社完結型併用型(両パターン)取引先協力型取引先協力型

※ 表は各打ち手の代表機能から編集部でまとめたもので、実装形態やサービスにより解消できる痛みの範囲は異なります。

ここからは、各打ち手が何をどう変えるのかを機能・向く会社・向かない会社の順で詳しく見ていきます。「取引先の協力が要るか」の切り分けと実額の費用感は、その後の節で改めて整理します。

表内の「-」は、その痛みに対して該当機能を持たない、または別の打ち手との併用が前提となることを示します。

打ち手別の機能と向く会社/向かない会社

ここからは、7つの打ち手それぞれについて機能・強み・向く会社・向かない会社の順で解説します。自社の受信枚数と業務規模と照らして、絞り込みの手がかりにしてください。

クラウドFAX(インターネットFAX)

クラウドFAXは、FAX番号をクラウド事業者側で持ち、受信内容をPDFとしてメールやWeb管理画面に届けるサービスです。複合機と紙を介さず、担当者は自分の席や社外から受信済みのPDFを開けます。既存のFAX番号を移行できるサービスも多く、取引先には「FAX番号は変わりません」と伝えられます。

代表的なサービスは、j2 Global Japan 有限会社の「eFax」、株式会社エディックワークスの「isana」、株式会社Nexway(ネクスウェイ)の「FNX e-受信FAXサービス」、日本テレネット株式会社の「MOVFAX」、株式会社グラントンの「03FAX」などがあります。

取引先にはFAXを送り続けてもらいながら、自社側の受信をPDFに置き換えられるため、「取引先を巻き込まずに始められる打ち手」の代表例です。

向く会社は、受信枚数が多く紙の仕分け・仮置き・回覧に工数を取られている会社、テレワークで受信対応ができない状態を解消したい会社。向かない会社は、既に受信面より入力面(転記・データ化)の負荷の方が重く、PDFで届いても手入力の手間は変わらないという段階の会社です。この場合はAI-OCRやRPAとの組み合わせを検討します。

PC-FAX(複合機からのメール転送・データ化)

PC-FAXは、社内の複合機で受信したFAXを紙に印字せず、指定のメールアドレスや共有フォルダにPDFとして自動転送する機能です。多くの複合機に標準搭載されており、既存の複合機と回線を残したまま、受信面だけを電子化できます。

クラウドFAXが「回線ごとクラウド化する」のに対し、PC-FAXは「回線は既存のまま、出力先だけPDFに変える」形。既存の複合機のリース契約や社内ネットワーク構成を大きく変えずに始められるのが強みです。代表的な機能名としては、株式会社リコーの「Ridoc Smart Director」や「Ridoc Document System」など、複合機メーカー各社の同種機能があります。

向く会社は、複合機の入れ替え時期ではないが受信を電子化したい会社、テレワーク時に社外から受信PDFを確認したい会社。向かない会社は、複合機の設定変更やメール転送のセキュリティ運用を情シスに依頼できない体制、受信件数が多く仕分けまで自動化したい会社です。仕分けや検索の効率まで踏み込む場合は、後述のクラウドFAX・受発注システムに寄せる方が適合します。

発注書 AI-OCR

AI-OCRは、FAXやスキャンで届いた注文書のPDF・画像をAIが読み取り、品番・数量・単価などを構造化データとして出力する仕組みです。手書き文字やかすれた文字にも対応できる製品が増えており、単純な文字認識のOCRより読み取り精度が高いのが特徴です。

代表的なサービスは、株式会社PFUの「DynaEye 11」、株式会社invox(株式会社インフォマート協業提供)の請求書・発注書向けAI-OCR「invox」ファミリー、アライズイノベーション株式会社の「AIRead」、ワークスモバイルジャパン株式会社の「LINE WORKS OCR」(旧 CLOVA OCR)などがあります。

取引先にお願いすることなく、届いた注文書をそのままデータ化できる点でクラウドFAX・PC-FAXと相性が良く、実際の運用ではセットで導入されることが多い打ち手です。

向く会社は、注文書の手入力に時間を取られている会社、注文フォーマットが取引先ごとに異なる会社。向かない会社は、読み取ったデータの確認・修正フローを設計する余力がない会社、注文書が完全に手書きで書式もバラバラで確認工数がOCRの効果を上回りそうな会社です。

AI-OCRは「完全自動化」ではなく「人が確認する場所を絞る」ためのツール、と割り切ることが実務上の落とし穴を避けるコツになります。

RPA(受注データ入力の自動化)

RPA(Robotic Process Automation)は、AI-OCRで構造化した注文データを、基幹システム・販売管理システム・在庫管理システムへ自動転記するソフトウェアです。担当者がキーボードで打ち込んでいた「注文書の読み取り結果を1件ずつ販売管理に入力する」作業を、ロボットが同じ画面操作で繰り返します。

代表的なサービスは、ユーザックシステム株式会社の「Autoジョブ名人」と「Knowfa(ノウファ)受注AIエージェント」、日本マイクロソフト株式会社の「Power Automate」など。単独で使うより、AI-OCRとの組み合わせで「OCRで注文書をデータ化→RPAで販売管理へ投入」まで通しで組むケースが典型です。

向く会社は、AI-OCRを既に導入しているか導入予定で、基幹システムへの転記が最大のボトルネックになっている会社。向かない会社は、基幹システムの画面仕様がRPAロボットの改修コストに見合わないほど頻繁に変わる会社、業務の8割が例外処理でロボット化の余地が小さい会社です。基幹システムがAPIやCSVで直接連携できるなら、そちらを優先した方が保守が軽く済みます。

受発注システム(Web受発注)

受発注システムは、取引先が発注をWeb画面から行い、受注側は届いた注文を画面上で承認・出荷指示・請求まで一元管理するシステムです。FAX・電話・メールに散在していた受注チャネルを一本化し、注文フォーマットや商品コードの取り違えを構造的に減らせます。取引先ごとに異なる掛率や単価をシステム側で管理できるため、既存の見積・請求フローをそのまま乗せられるのが強みです。

代表的なサービスは、株式会社マルウェブの「DX BtoB Web受発注システム」(本記事末尾で個別紹介)、竹田印刷株式会社の「TS-BASE 受発注」、カシオヒューマンシステムズ株式会社の「BC受発注」などがあります。FAX受注が残っている取引先には従来通り送ってもらいつつ、Web発注に移行した取引先から順に「受注業務のWeb画面での一元管理」に切り替えていく併用パターンが現実的です。

向く会社は、受注業務の抜本改革を検討している会社、取引先ごとに違う価格・見積・支払条件をシステム上で管理したい会社、注文履歴の分析まで含めて業務を統合したい会社。向かない会社は、少数の主要取引先とのFAX運用が長年安定しており、切り替えの合意形成にコストが見合わない会社です。

後者の場合は、まず自社側だけで完結する打ち手(クラウドFAX+AI-OCR)で受信〜転記の負荷を先に下げる方が現実的な選択になります。

Web EDI

Web EDI(Electronic Data Interchange)は、取引先と自社の間で発注・受注・出荷・請求などの取引データを標準フォーマットで直接交換する仕組みを、ブラウザ経由で実現するものです。従来のレガシーEDIが専用回線と専用ソフトを必要としたのに対し、Web EDIはインターネット経由で使え、初期投資が抑えられます。

取引先が同じフォーマットで発注データを送ってくれるため、受信後のフォーマット吸収・目視確認・手入力が原則不要になります。逆に言えば、取引先にWeb EDIへの参加を促す必要があり、業界標準のEDIプロトコル(流通BMS、全銀EDIなど)を扱えるかがサービス選定の要になります。

受発注EDIの業界標準としては、流通業向けの流通BMS、自動車業界のJAMA・JAPIA-EDI、家電業界のECALGAなどがあり、業界共通の項目定義に沿ってデータを送受信します(金融資金決済で使う全銀EDIとは用途が別)。

向く会社は、大手取引先との継続的な発注が業務の中心で取引先側もEDIに対応する体力がある会社、業界としてEDIプロトコルが定着している会社(食品卸・小売・自動車部品など)。向かない会社は、取引先の顔ぶれが多様で個社ごとの合意形成コストが高い会社、EDIの導入・保守を担える情シス体制がない会社です。

BtoB EC

BtoB ECは、取引先が自社のECサイト(法人向けカタログサイト)を開いて、商品を検索し、そのまま発注する仕組みです。取引先が入力するため、FAXの手書き文字を読み取る作業も、Web EDIのようなプロトコル調整も不要になります。取引先ごとの掛率・価格・与信を、ログイン後の会員機能で自動反映するのが標準的な作り方です。

受発注システムとの違いは、UIの方向性です。受発注システムが「受注側の管理画面」を主軸に、取引先には最低限の発注画面を提供するのに対し、BtoB ECは「取引先が使うカタログ画面」を主軸に据え、商品検索・カート・お気に入り・注文履歴などをEC的なUXで提供します。取引先が中小の小売店・飲食店などのケースや、扱う品目数が多く検索・比較の使いやすさが受注件数に響くケースで馴染みやすい打ち手です。

向く会社は、扱う品目数が多く、取引先に対して検索性と再注文のしやすさで差別化したい会社、既にECサイト構築のノウハウを持つ会社。向かない会社は、取引先が高齢化・IT習熟度にばらつきがあり、EC画面の操作研修を提供できない会社です。

「取引先が動かない」前提の打ち手選び:自社完結型と取引先協力型の使い分け

ここまでの7つの打ち手は、「取引先の協力が要るか」という視点で3群に分けられます。「取引先にFAXを止めさせられない」現実がある場合、まず自社側だけで進められる打ち手はどれかを確定させると、意思決定がぶれません。

自社側だけで完結できる打ち手:クラウドFAX/PC-FAX/AI-OCR/RPA

取引先には「FAXは今まで通り送ってください」と伝えたまま、自社側だけで受信・データ化・転記の効率を上げられるのが、クラウドFAX・PC-FAX・AI-OCR・RPAの4つです。取引先のシステム・運用・書式・タイミングは一切変わらないため、合意形成の会議も、フォーマット変更のお願いも要りません。

この4つは組み合わせて使うのが基本です。クラウドFAXまたはPC-FAXで受信をPDFに変え、AI-OCRで注文内容を構造化データにし、RPAで販売管理システムへ自動転記する——という順序で、担当者が手を動かす場所を段階的に減らしていく設計が組めます。稟議を通す観点でも、取引先を巻き込まないので「まず自社側だけでやります」と説明できるのが強みです。

取引先の乗り換えが必要な打ち手:Web EDI/BtoB EC

Web EDIとBtoB ECは、取引先がFAXから離れて、こちらのシステムを使う運用に切り替わることが前提です。効果は大きい代わりに、取引先ごとに「切り替えのお願い→運用研修→FAXとの並走期間」というプロジェクトが必要になります。

実務では、大手取引先・売上上位の取引先から順に切り替えていくのが定石です。Web EDIは業界標準プロトコル(流通BMS等)がある領域では合意形成が進めやすく、BtoB ECは扱う品目が多く「検索して発注する」体験が取引先の負担を下げるケースで効きます。

両パターンある打ち手:受発注システム

受発注システムは、導入形態によって「自社完結」にも「取引先協力」にもなります。取引先にWebから発注してもらう本来の使い方に切り替えれば「取引先協力型」、既存FAX受注を残しつつ受注側のオペレーターが取引先アカウントで代理入力する運用にすれば「自社完結型」に近づけます。

後者は、受発注システムのLogin as Customer機能(運営者が取引先アカウントで操作する機能)や、Web入力に至らない取引先向けの受注代行運用を組み合わせて実現します。「まず自社完結で受注業務をWebに一元化し、順次取引先をWeb発注に切り替える」というロードマップが現実的です。

打ち手別の実額の費用感(初期・月額・従量課金の内訳)

自社が使える打ち手が絞れたら、費用の実額を並べて比較します。各サービスの公式料金ページから、初期費用・月額費用・従量課金の目安を整理しました。プランごとの詳細機能や個別条件は公式ページで最新情報を確認してください。

公式サイトが価格を公開している代表サービスを取り上げているため、PC-FAXは既存複合機に標準搭載される機能(機体リース料に含まれ別途費用ゼロ)として本表からは省き、Web EDI・BtoB ECは受注件数・取引先数・扱う品目数に応じた個別見積りが基本のため代表例として掲載していません。DynaEye 11のようなパッケージ買切製品は「月額費用」列に「—」と記載します。

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打ち手クラウドFAXクラウドFAXAI-OCRAI-OCRRPA受発注システム受発注システム
代表サービス03FAX(株式会社グラントン)eFax(j2 Global Japan 有限会社)invox 受取請求書(株式会社invox)DynaEye 11(株式会社PFU)Autoジョブ名人(ユーザックシステム株式会社)DX BtoB Web受発注システム(株式会社マルウェブ)TS-BASE 受発注(竹田印刷株式会社)
初期費用要問い合わせ(基本プラン+オプション構成)要問い合わせ(プランにより異なる)要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ150万円(税抜)〜要問い合わせ
月額費用月額1,078円(税込)〜(基本プラン)要問い合わせ(月払プランを提供)フリープラン 0円/ベーシックプラン以上は要問い合わせパッケージ販売・要問い合わせ要問い合わせ(フル機能パッケージ)年間クラウド利用料300万円(税抜)+システム保守(標準価格の15%を12分割)+サーバー保守月額4万円〜要問い合わせ
従量課金プランごとの受信枠を超える送受信は従量課金送受信ページ数に上限を設ける方式(超過分は従量)。詳細は公式ページ参照月内処理件数に応じた課金個別対応(AI OCR・EDI連携・ERP連携等は別途見積り)
出典公式料金ページ公式料金ページ公式サイト公式製品ページ公式サービスページ公式料金ページ公式サービスページ

※ 2026年8月時点、各サービス公式料金ページから編集部が抜粋。プラン改定・キャンペーン等で変わり得るため、稟議時は必ず公式ページ・資料で最新情報を確認してください。

クラウドFAXは月額数千円から始められる「自社完結型」のなかで最も金銭的な入口が低い打ち手で、AI-OCRは無料枠のあるサービスも登場しています。抜本策の受発注システムは初期・年額とも桁が上がる代わりに、受注業務全体の統合による削減効果を狙う位置づけです(DX BtoB Web受発注システムの年額300万円は月額換算で約25万円)。

稟議では、まず月額数千円〜数万円で入れる自社完結型で足元を整え、削減した工数・ミスの実測をもとに、次の抜本策の投資対効果を組み立てるルートが通しやすくなります。

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3段階で進める:まずクラウドFAX → AI-OCR → 受発注システム/BtoB EC

7つの打ち手を一度に導入する必要はありません。稟議・現場合意・費用対効果の3つを踏まえると、受信の可視化 → 注文内容の構造化 → 業務そのものの抜本策、という3段階で進めるのが現実的です。各段階で「何ができたか」を実測できるため、次の稟議の材料にもなります。

Step 1: クラウドFAXで受信と共有を可視化する

Step 1では、「取引先には今まで通り送ってもらいながら、自社側の受信をPDFに置き換える」ことだけを目標にします。クラウドFAX(または既存複合機のPC-FAX機能)で受信をPDF化し、担当者が席や社外から確認・仕分けできる状態を作ります。

この段階の効果は、「紙の仮置き場・回覧・仕分けの物理作業がなくなる」「テレワーク時にも受信対応できる」「PDFで検索・共有ができる」の3点に絞られます。担当・工数は情シス(複合機の設定変更または新規契約)と受発注担当(受信フローの周知)で1〜2週間、月額は数千円〜数万円のレンジで着地します。

Step 2: AI-OCRで発注内容を構造化する

Step 2では、Step 1でPDF化した注文書をAI-OCRに通して、品番・数量・単価などを構造化データにします。「読み取り結果を人が確認する場所を絞る」設計が肝で、100%自動化を目指さないのがコツです。無料枠のあるサービスから試して、自社の注文書フォーマットで実用精度が出るかを検証してから本契約に進みます。

この段階まで進むと、「担当者は転記ではなくOCRの読み取り結果を目視確認する」フローに変わります。担当・工数は情シスの初期セットアップと受発注担当の運用検証で1〜2ヶ月、月額は無料〜数万円で開始できるサービスも選べます。

Step 3: 受発注システム/BtoB ECで抜本策を実行する

Step 3は、受注業務そのものをWeb化する抜本策です。まず売上上位・切り替えに前向きな取引先から受発注システム・BtoB EC・Web EDIへ移行し、FAX受注は残った取引先向けの並走運用として続けます。全取引先の切り替えを目標にせず、「Web化率を段階的に上げる」進め方が現実的です。

この段階の効果は、注文フォーマットの取り違えの構造的な削減、注文履歴の一元検索、取引先ごとの価格・与信の自動反映など、業務そのものを標準化するレベルまで踏み込みます。工数の実測例として、カシオヒューマンシステムズ株式会社の「BC受発注」導入コラムでは、有限会社三金の事例として1日20〜30分の作業時間短縮が示されています。

担当・工数は受発注担当・営業・情シスを巻き込むプロジェクトとなり、3〜6ヶ月かけて主要取引先の切り替えを進めるのが目安です。初期費用・月額は数十万円〜数百万円のレンジに入るため、Step 1・Step 2の実測をもとに投資対効果を試算してから進めます。

出典・参考資料(1件)

FAX受注データの保存義務:電子帳簿保存法・法人税法の条文根拠

FAX受注をデジタル化するときは、保存義務についても押さえておきます。取引に関して受け取った注文書は、法人税法の帳簿書類として原則7年間の保存が義務付けられており、電子的に受け取った取引データは電子帳簿保存法の要件に沿った保存が必要です。それぞれの条文根拠を確認します。

法人税法施行規則第59条:帳簿書類の保存(法人7年)

法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号)第五十九条は、青色申告法人に対して、注文書を含む取引書類の7年間保存を義務付けています。取引先から受け取ったFAX発注書は、この条文の「相手方から受け取つた注文書」に該当します。

(帳簿書類の整理保存)
第五十九条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。

三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

出典:法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号)第五十九条|e-Gov法令検索

青色申告以外の普通法人については、同規則第六十七条が「第五十九条第二項に規定する起算日から七年間」の保存を同様に義務付けています。青色申告か否かで条文は分かれますが、いずれも「起算日から7年間」であることは同じです。起算日は、書類を作成または受領した日の属する事業年度終了の日の翌日から2ヶ月を経過した日と規定されており、実務的には事業年度終了時点から数えて7年+2ヶ月ほどの保存期間になります。

電子帳簿保存法第7条:電子取引データの保存要件

クラウドFAXでPDFとして受け取った注文書は、電子帳簿保存法(正式名称: 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律。以下、電子帳簿保存法)第七条の「電子取引」に該当し、電子データのまま保存する必要があります。この条文が電子取引データの保存義務の根拠です。

(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

出典:電子帳簿保存法(平成十年法律第二十五号)第七条|e-Gov法令検索

「電子取引」の定義は同法第二条第五号で「取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。)の授受を電磁的方式により行う取引」とされています。

クラウドFAXでPDFを受信する形態は電磁的方式に該当するため、電子帳簿保存法第七条の保存要件が発生します。

保存要件の細目(真実性の確保・可視性の確保・検索機能の確保など)は電子帳簿保存法施行規則第四条や国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」で定められており、タイムスタンプの付与や訂正削除履歴の保存、日付・取引先・金額での検索性の確保などが求められます。

クラウドFAXや受発注システムの選定時は、電子帳簿保存法対応をうたうサービスかを確認し、要件を満たすタイムスタンプ付与や検索機能を備えているかまで押さえます。

出典・参考資料(1件)

電子帳簿保存法そのもののメリットや導入時の実務ポイントを、条文よりも一段広い視点で押さえておきたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。「デメリットしかない」と言われる背景と、対応するうえで押さえる勘所が整理されています。

サービス個別紹介

本記事で紹介した「受発注システム」を検討する方向けに、1社を個別に紹介します。

また、以下の記事では受発注システム全体について、タイプ別の分類・主な機能・料金の相場までまとめて比較しています。1社だけでなく他の候補も横並びで検討したい方は、こちらもあわせてご覧ください。

1. DX BtoB Web受発注システム(株式会社マルウェブ)

DX BtoB Web受発注システムのウェブサイト

Magento(Adobe Commerce)をベースにしたパッケージ型のBtoB Web受発注システムです。SaaS型ではなく、顧客企業のサーバー環境へシステム一式を展開する形態のため、取引先ごとに異なる価格・見積・支払条件・注文条件など、汎用SaaSでは対応しきれない複雑な商流のカスタマイズに応えられます。

FAX受注の効率化文脈では、公式FAQで「FAX受注のWeb化と並行して、AI OCRなどの個別対応を組み合わせることで、FAXやメール起点の注文も段階的にデータ化できる」と明記されている点が特徴です。

ただしAI OCR連携は標準機能ではなく個別対応(別途見積り)となる点、ERP連携・基幹システム連携・外部API連携もすべて個別対応である点は、稟議前に押さえておきたい仕切りです。標準機能としてのシステム連携はCSVエクスポートで対応します。

主要機能としては、クイックオーダー・CSVカート投入・カートテンプレート、取引先別の条件別価格設定、Login as Customer(運営側が顧客アカウントで代理操作)、見積依頼・請求書機能などを備えます。加えて、AIチャットボット・AIレコメンド・AIスマート検索・生成AIによる商品カタログ自動生成が標準搭載されています。

料金は、初期費用(導入サポート・基本パック)が150万円(税抜)〜、年間クラウド利用料が300万円(税抜)。これに加えてシステム保守(標準価格の15%を12分割の月額)、サーバー保守(月額4万円〜)、24時間365日対応オプション(追加月額6万円)が構成要素となります。

運営会社の株式会社マルウェブは、2021年3月にAdobe Experience Cloud ソリューションパートナー(ブロンズ)に加盟しています。

出典・参考資料(2件)

よくある質問(FAQ)

Q. FAX受注の効率化とは何ですか?

A. FAX受注の効率化とは、届いた注文書の仕分け・手入力・保管・検索を、クラウドFAX・AI-OCR・受発注システムなどの打ち手で置き換え、担当者が手を動かす場所を段階的に減らしていく取り組みです。

主要な打ち手はクラウドFAX/PC-FAX/AI-OCR/RPA/受発注システム/Web EDI/BtoB ECの7つで、それぞれ解消できる痛みの範囲と、自社側だけで進められるか取引先の乗り換えが要るかが違います。自社の受信枚数・規模・取引先の顔ぶれに合わせて組み合わせて使うのが基本形です。

Q. FAX受注の効率化は何から始めるのがおすすめですか?

A. FAX受注の効率化は、まずクラウドFAX(または既存複合機のPC-FAX機能)で受信をPDF化し、紙の仕分け・仮置き・回覧をなくす段階から始めるのが現実的です。

月額数千円〜のレンジで自社側だけで始められ、テレワーク時にも受信対応できるようになるため、稟議も通しやすい入口になります。ここで生まれた「受信PDF」を土台に、次の段階でAI-OCRを追加して転記の手間を減らし、最終的に受発注システムやBtoB ECで業務そのものをWeb化していく3段階の進め方が定石です。

Q. FAX受注の効率化は、取引先にFAXを止めてもらう必要がありますか?

A. FAX受注の効率化は、取引先にFAXを止めてもらう必要はありません。クラウドFAX・PC-FAX・AI-OCR・RPAの4つは自社側だけで完結する打ち手で、取引先には従来通りFAXを送り続けてもらいながら、自社側の受信・データ化・転記の効率を上げられます。

一方でWeb EDIとBtoB ECは、取引先がFAXを離れてこちらのシステムを使う運用への切り替えが前提になります。受発注システムは両パターンあり、Login as Customer機能などで受注側が取引先アカウントを代理操作する運用にすれば、自社完結型に近い形で始めることも可能です。

Q. FAX受注はAI-OCRを入れれば完全自動化できますか?

A. AI-OCRを入れてもFAX受注は完全自動化できません。AI-OCRは「人が確認する場所を絞る」ためのツールで、読み取り結果の目視確認・修正フローの設計が前提です。

手書き文字・かすれた文字・取引先ごとに異なる書式の影響で、読み取り精度はどうしても変動します。100%自動化を目指すのではなく、「担当者は転記ではなくOCRの読み取り結果を目視確認する」フローに切り替える設計にしておくのが、実務上の落とし穴を避けるコツです。まずは無料枠のあるサービスで自社の注文書フォーマットの実用精度を検証してから本契約に進むのが安全です。

Q. FAX受注の効率化にはいくらかかりますか?

A. FAX受注の効率化にかかる費用は、自社完結型の打ち手なら月額数千円〜数万円、受発注システムなどの抜本策は初期数十万円〜・年額数百万円のレンジで、段階と規模で幅があります。

クラウドFAXは03FAX・eFaxのいずれも月額1,000円〜数千円のレンジで基本プランが用意されており、受信枠を超える送受信は従量課金というのが共通の設計です(プラン改定・キャンペーンで変わり得るため、稟議時は必ず公式ページで最新値を確認してください)。

AI-OCRは「invox 受取請求書」のようにフリープランを用意しているサービスもあり、まず0円で自社の注文書フォーマットで読み取り精度を試してから有料プランに進める設計が組めます。

抜本策の受発注システムは、DX BtoB Web受発注システムで初期150万円(税抜)〜+年間クラウド利用料300万円(税抜)+システム保守・サーバー保守が構成の一例で、桁が上がる代わりに受注業務全体の統合効果を狙う位置づけです。

Q. AI-OCRとRPAはどう違い、どちらを先に導入すべきですか?

A. AI-OCRは注文書のPDF・画像から品番・数量・単価などを構造化データにする「読み取り」の役割、RPAはそのデータを販売管理システム・基幹システムへ自動転記する「入力」の役割で、通常はAI-OCRを先に導入します。

読み取り工程が手作業のままではRPAが投入するデータが手に入らないため、「AI-OCRで注文書をデータ化 → RPAで販売管理へ投入」の順で組むのが典型パターンです。基幹システムがAPIやCSVで直接連携できる場合は、RPAを挟む前にそちらの連携を検討した方が、画面仕様変更時のロボット改修コストがかからず保守が軽く済みます。

Q. どんな会社がFAX受注から受発注システムへの切り替えを検討すべきですか?

A. FAX受注件数が多く、手入力や確認作業に時間がかかり、特定の担当者に業務が集中している会社は、受発注システムへの切り替え効果が出やすい会社です。

加えて、取引先ごとに異なる価格・見積・支払条件をシステム上で管理したいケースや、注文履歴の分析まで含めて業務を統合したいケースも向いています。

逆に、少数の主要取引先とのFAX運用が長年安定していて切り替えの合意形成コストが見合わない場合は、まず自社側だけで完結するクラウドFAX+AI-OCRで受信〜転記の負荷を先に下げ、受発注システムへの投資は削減工数の実測をもとに次段階として組み立てるルートが現実的です。

Q. クラウドFAXで受け取ったPDF発注書は、電子帳簿保存法にどう対応すればよいですか?

A. クラウドFAXで受け取ったPDF発注書は電子帳簿保存法第7条の「電子取引」に該当し、電子データのまま保存する必要があります。タイムスタンプの付与・訂正削除履歴の保存・日付/取引先/金額での検索性の確保が主な保存要件です。

クラウドFAXや受発注システムを選定する際は、電子帳簿保存法対応をうたっているサービスであれば、こうしたタイムスタンプ付与や検索機能を備えているかを公式ドキュメントで確認します。加えて、法人税法施行規則第59条により、青色申告法人は注文書を含む取引書類を起算日から7年間、納税地に保存する義務があります。要件の細目は国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」で確認できます。

まとめ

FAX受注の効率化は、7つの打ち手(クラウドFAX/PC-FAX/AI-OCR/RPA/受発注システム/Web EDI/BtoB EC)から、自社の受信枚数・規模・取引先の顔ぶれに合うものを選び、組み合わせて使うのが基本です。

「取引先が動かない前提でどこまで進められるか」を先に見極めるなら、自社完結型の4つ(クラウドFAX/PC-FAX/AI-OCR/RPA)から入るのが定石です。抜本策として受発注システムやBtoB ECを検討するなら、まずクラウドFAX→AI-OCR→受発注システムの3段階で稟議を通しやすい形に組み立てます。

保存義務は法人税法施行規則第59条(青色申告法人7年)/電子帳簿保存法第7条(電子取引データの保存要件)が根拠となります。クラウドFAXでPDF受信する運用は電子取引に該当するため、対応をうたうサービスかを選定時に確認します。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
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