脆弱性診断やペネトレーションテストは実施しているものの、実際にサイバー攻撃を受けたときに自社が検知・対応できるのか、組織全体としての防御力に不安を感じていないでしょうか。レッドチーム演習は、実際の攻撃者になりきったチームが技術・人・物理を横断して疑似攻撃を仕掛け、検知や対応を担うブルーチームの実力までを実戦形式で評価するサービスです。
特定システムの脆弱性を洗い出すペネトレーションテストとは目的も範囲も異なり、提供各社でも攻撃手法の対応範囲や脅威シナリオの設計力、TLPT(脅威ベースペネトレーションテスト)への対応に差があります。自社に必要なのはどのタイプの演習で、どの提供会社が合うのでしょうか。
本記事では、レッドチーム演習サービス10社を「一般的なレッドチーム演習」と「TLPT対応型」の2タイプに分けて比較します。ペネトレーションテストとの違い、演習の進め方、攻撃手法の対応範囲やブルーチーム連携、費用の目安まで整理しました。提供会社を見極める材料としてご活用ください。
また、自社に合うタイプと提供会社を短時間で絞り込めるよう、選定診断ツールもご用意しています。あわせてお役立てください。
目次
一括ダウンロードする
レッドチーム演習とは
レッドチーム演習とは、実際の攻撃者を模したチーム(レッドチーム)が、あらかじめ設定した目標の達成を狙って疑似的なサイバー攻撃を仕掛け、組織全体のセキュリティと対応力を多角的に評価する取り組みです。評価の対象は特定のシステムにとどまらず、情報システム・人(標的型メールなど)・物理的な侵入経路まで横断します。
特徴は、防御・検知を担うブルーチームには演習の実施を知らせず、実際の攻撃と同じ条件で検知・対応の実力を試す点にあります。技術的な脆弱性の有無だけでなく、「攻撃に気づけるか」「気づいた後に適切に対応できるか」という運用面の実戦力を可視化できるため、脆弱性診断やペネトレーションテストを一通り実施した組織が、次の段階として選ぶケースが多く見られます。
逆に、まだ脆弱性診断そのものを実施していない段階であれば、レッドチーム演習に進む前に、基本的な脆弱性診断で自社の弱点を洗い出すほうが費用対効果は高くなります。診断方法(手動・ツール・ハイブリッド)や費用相場から自社に合う診断サービスを選びたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
レッドチーム演習が必要とされる理由
攻撃者の手口は年々巧妙になり、防御側がどれだけ対策を講じても、実際に攻撃を受けたときに気づき、被害を最小限に抑えられるかは別の問題です。レッドチーム演習は、机上では見えにくい「検知と対応の実力」を、現実に近い攻撃で可視化します。顧客情報や機密データを扱う企業ほど、規模を問わず標的になりうるため、実戦形式で自社の弱点を洗い出す意義が大きくなります。
ペネトレーションテストとの違い
すでにペネトレーションテストを実施している場合、レッドチーム演習との違いが気になるところです。両者は「疑似攻撃で評価する」点は共通しますが、目的・範囲・期間・防御側への情報共有などが異なります。一般的な違いは次のとおりです。
| 観点 | レッドチーム演習 | ペネトレーションテスト |
|---|---|---|
| 目的 | 組織全体のセキュリティと検知・対応力の評価 | 特定のシステム・アプリの技術的な脆弱性の特定 |
| 対象範囲 | 情報システム・人・物理など対象を限定しない | 関係者間で協議し対象を絞った箇所 |
| 実施期間 | 数週間〜数か月に及ぶことがある | 数日〜数週間程度 |
| 防御側への情報共有 | 攻撃シナリオを含め、ごく一部の関係者のみに共有 | 事前に共有し、検知時の対応まで取り決める |
| 検知・対応の評価 | ブルーチームが実際の攻撃と同様に検知・対応し、その実力を評価 | 取り決めた内容に沿って対応を確認 |
ただし、両者の線引きは語義として厳密に定義されているわけではありません。
金融庁の資料では、後述するTLPT(脅威ベースペネトレーションテスト)を、脅威インテリジェンスにもとづくシナリオでレッドチームが攻撃する発展的なペネトレーションテストとして位置づけており、レッドチーム演習とほぼ同義に扱っています。実務では「脅威インテリジェンスにもとづく現実的なシナリオで、組織全体と対応力まで評価するか」で捉えると分かりやすくなります。
出典・参考資料(1件)
ここまでの違いを踏まえて、自社に必要なのは組織全体を評価するレッドチーム演習ではなく、特定システムの脆弱性を攻撃者目線で深く検証するペネトレーションテストだと感じた場合は、診断シナリオや料金、認定資格から提供会社を絞り込む方法をタイプ別に整理した以下の記事が参考になります。
ペネトレーションテストサービスおすすめ17選を徹底比較|診断シナリオ・料金・認定資格から選ぶ発注先の見極め方
自社のWebアプリケーションや社内ネットワークが「実際の攻撃で本当に突破されないか」を、経営層・監査部門に説明する材料が不足していると感じていませんか。脆弱性診断だけでは検知できない複数脆弱性の組み合わせや、侵入後の横展開・権限昇格までを検…
ブルーチームとの関係と連携
レッドチームが攻撃側を担うのに対し、ブルーチームは自社側で検知・防御・対応を担うチームを指します。レッドチーム演習では、ブルーチームに演習の実施を知らせないことで、実際の攻撃と同じ条件で対応力を評価します。
提供会社によっては、演習後にレッドチームとブルーチームが手口と対応を突き合わせる場(パープルチーム的な振り返り)を設け、検知・対応の改善につなげる連携まで支援します。この連携の深さは、演習を防御力の向上に結びつけられるかを左右します。
レッドチーム演習の進め方(実施の流れ)
ここからは、レッドチーム演習が実際にどのように進むのかを見ていきます。提供会社によって呼び方は異なりますが、おおむね次の4段階で進行します。導入後のイメージを持つと、各社の提案を比較しやすくなります。

- 事前調査・シナリオ策定:自社が直面しうる脅威を分析し、達成目標(機密情報への到達など)と攻撃シナリオを設計します。
- 疑似攻撃の実施:レッドチームがシナリオに沿って、技術・人・物理の経路から実際の攻撃者と同じ手口で侵入を試みます。
- 検知・対応の評価:ブルーチームが攻撃に気づき、遮断・隔離などの対応を行えたかを評価します。
- 報告・改善提案:攻撃の成否と検知・対応の実態を報告し、組織的な改善策を提示します。
レッドチーム演習サービスの選び方
ここからは、提供会社を見極める比較ポイントを整理します。運用面では、攻撃手法の対応範囲(技術だけか、標的型メールなどの人的経路や物理侵入まで含むか)、脅威分析とシナリオ設計の力量、そして検知・対応を担うブルーチームとどこまで連携するかが、演習の実戦性を左右します。自社と同じ業種・規模での実績があるかも、提案の的確さを見るうえで参考になります。
また、自社のセキュリティ体制の成熟度も、向くサービスを左右します。CSIRTを組成済みで態勢の有効性を検証したい段階か、これから段階的に始めたい段階かによって、適した提供会社やプランは変わります。個別紹介では、この観点にも触れながら各社を整理しています。
TLPT(脅威ベースペネトレーションテスト)に対応しているかも重要な観点ですが、これは金融機関の当局要件と深く関わるため、次章とタイプ分類であらためて詳しく取り上げます。ここでは、演習後の価値を大きく左右する「報告書と改善支援」を掘り下げます。
報告書の質と改善支援(アフターフォロー)は十分か
レッドチーム演習の価値は、攻撃の成否そのものよりも、演習後に組織の防御力を実際に高められるかで決まります。攻撃経路と検知・対応の実態を、経営層にも技術者にも伝わる形で報告してくれるか、そして検出された課題に対する具体的な改善策や、次のアクションへの支援まで提供されるかを確認しましょう。
報告会の実施や、報告後の一定期間の質問対応、再演習の提案まで含まれるかは提供会社ごとに差があります。演習を一度きりのイベントで終わらせず、継続的な改善につなげたい場合は、この報告・支援の手厚さが選定の決め手になります。
TLPT(脅威ベースペネトレーションテスト)とは|金融当局が求める要件
TLPT(Threat-Led Penetration Test:脅威ベースペネトレーションテスト)は、実際の脅威情報にもとづく攻撃シナリオで、レッドチームが組織横断的に疑似攻撃を行う手法です。金融庁の報告書では、従来のペネトレーションテストを発展させたものとして位置づけられ、英国のCBESTや欧州のTIBER-EUといった海外の当局主導の枠組みが参照されています。
金融機関にとって重要なのは、TLPTが当局の考え方のなかでどう扱われているかです。金融庁が2024年10月に公表した「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」では、脆弱性診断やペネトレーションテストの定期的な実施が基本的な対応事項とされる一方、TLPTは「対応が望ましい事項」=推奨として位置づけられています。全金融機関に一律で義務づけられているわけではない点に注意が必要です。
自社が金融機関で、当局の考え方に沿ったTLPTを実施したい場合は、脅威インテリジェンスにもとづくシナリオ設計や、金融分野の実績を持つ提供会社を選ぶと安心です。金融機関以外でも、より現実に近い脅威シナリオで演習したい場合はTLPT対応型が候補になります。
レッドチーム演習サービスのタイプ
レッドチーム演習サービスは、TLPTに対応しているかどうかで大きく2つのタイプに分けられます。自社が金融当局の要件を意識する必要があるか、まず一般的な演習で実戦力を測りたいかで、近いタイプを掴んでおくと、次の比較表と個別紹介を読み進めやすくなります。
| タイプ | 向いている企業 | 該当する主なサービス |
|---|---|---|
| 一般的なレッドチーム演習 | 脆弱性診断・ペネトレを終え、実際の攻撃を想定して組織全体と検知・対応力を評価したい企業 | GMOサイバーセキュリティ byイエラエ/NRIセキュア/NTTセキュリティ・ジャパン/GSX/CrowdStrike/サイバーディフェンス研究所 |
| TLPT対応型(金融当局要件に対応) | 金融機関など、脅威インテリジェンスにもとづくシナリオで当局の考え方に沿った演習を行いたい企業 | ラック/三井物産セキュアディレクション/NTTデータ先端技術/PwC |
一般的なレッドチーム演習で実戦的な防御力を評価したい企業向け
実際の攻撃者を模した多角的な疑似攻撃で、組織全体のセキュリティと検知・対応力を評価する標準的なタイプです。技術・人・物理を横断した攻撃で、自社が「攻撃に気づき、対応できるか」を実戦形式で確かめたい企業に向きます。脆弱性診断やペネトレーションテストを一通り終えた次の段階として選ばれます。
金融当局要件(TLPT)に対応した脅威ベースの演習が必要な企業向け
脅威インテリジェンスにもとづく攻撃シナリオで、金融当局が示すTLPTの考え方に沿って実施するタイプです。金融機関で当局の考え方に沿った演習を行いたい場合や、より現実に近い脅威シナリオで組織を評価したい企業に向きます。金融分野の実績や、脅威分析・シナリオ設計の力量が選定の軸になります。
2つのタイプのどちらが自社に近いか、まだ迷う場合は、以下の2つの質問に答えると候補となる提供会社を絞り込めます。必要な演習のタイプと評価したい攻撃経路にもとづいて、比較表・個別紹介のどこから読めばよいかの手がかりにしてください。
一括ダウンロードする
レッドチーム演習サービスの比較表
ここからは、掲載する10社を先ほどの2タイプに分けて比較します。TLPT対応・攻撃手法の対応範囲・ブルーチーム連携・報告書とアフターフォロー・費用感・実績を横並びで確認できます。気になる会社は、表のサービス名から個別の紹介へ移動できます。
対応状況の記号は次の意味で示しています。◎は●のなかでも特に手厚い対応(セル内の注記を参照)、●は公式情報で対応を確認できたもの、△は一部のみ・条件付きの対応(セル内の注記を参照)、要確認は公式情報で対応を確認できなかったものです。「要確認」は「非対応」ではなく、開示されている情報が乏しいため資料請求や問い合わせで確かめる必要がある、という意味です。
表では数値化しにくい脅威分析・シナリオ設計の力量は、各社の個別紹介で確認してください。
一般的なレッドチーム演習の比較
| サービス名 | GMOサイバーセキュリティ byイエラエ | NRIセキュア | NTTセキュリティ・ジャパン | GSX | CrowdStrike | サイバーディフェンス研究所 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| TLPT対応 | 要確認 | 要確認 | 要確認 (上位区分でTLPT併記) | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 攻撃手法の対応範囲 | 技術・人・物理 | 技術中心 (人・物理は公式記載なし) | 技術・人・物理 | 技術中心 (人・物理は公式記載なし) | 技術中心 (人はAdvancedメニュー) | 技術・人・物理 |
| ブルーチーム連携 | ● | ● | ● | △(報告会・事前すり合わせ中心) | ◎(ハンズオン訓練を同時実施) | ● |
| 報告書・改善支援 | 要確認 | ● | ● | ● | ● | ● |
| 費用 | 要問い合わせ | 1,200万円〜(税別) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 実績 | 導入実績を公表 (Sansan・freee等) | 非公開 | 非公開 | 非公開 | 非公開 | 導入実績を公表 (メルカリ・freee等) |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
一般型の6社はTLPTを主目的として掲げていないため、TLPT対応列はいずれも「要確認」です。金融当局のTLPT要件を前提にする場合は、次のTLPT対応型の比較を軸に検討してください。
TLPT対応型の比較
| サービス名 | ラック | 三井物産セキュアディレクション | NTTデータ先端技術 | PwC |
|---|---|---|---|---|
| TLPT対応 | ● | ● | ● | ● |
| 攻撃手法の対応範囲 | 技術・人 | 技術中心 | 技術中心 | 技術中心 |
| ブルーチーム連携 | ● | ● | ● | ◎(パープルチーム演習に対応) |
| 報告書・改善支援 | ● | ● | ● | ● |
| 費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 実績 | 官公庁・金融で実績 | 非公開 | 非公開 (2019年〜提供) | FISC手引書に参画 |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
レッドチーム演習サービスの個別紹介
ここからは、各社のレッドチーム演習サービスを個別に紹介します。攻撃手法の対応範囲、脅威分析・シナリオ設計の強み、TLPT対応、報告・改善支援を、公式情報にもとづいて整理しました。自社のタイプに近いところから読み進めてください。
一般的なレッドチーム演習
1. レッドチーム演習(GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社)

GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社のレッドチーム演習は、同社のペネトレーションテストの一メニューとして提供され、事前に定めたゴールの達成を目指して実際の攻撃者と同じ条件で疑似攻撃を仕掛けます。ネットワークやオフィス、SNS、漏洩情報まで組織全体をスコープに含め、実施の事実や詳細をごく一部の関係者にしか共有しない点が、通常のペネトレーションテストとの違いです。
攻撃はフィッシングやマルウェア感染、Web攻撃、無線アクセスポイント、物理侵入、漏洩情報の悪用など複数の経路を組み合わせて行います。機密情報の取得や業務システムの掌握といった具体的なゴールへの到達可能性を検証します。ブルーチームによる検知の回避を前提に攻撃を進め、検知された場合も経路の切り替えや永続化を行うため、SOCやCSIRTの実践的な訓練に活用できます。
レッドチーム演習を含む同社のペネトレーションテストサービスは経済産業省の情報セキュリティサービス基準に適合しています(登録番号019-0004-60)。TLPTへの対応可否は公式に明記されていません。料金は公開されておらず、実施費用は個別見積もりのため問い合わせが必要です。Sansan・freeeなど複数の導入事例を公式サイトで公表している点も、提案の実績を見るうえで参考になります。
2. レッドチームオペレーションサービス(NRIセキュアテクノロジーズ株式会社)

対応ルールや手順を整え、CSIRTを組成済みの企業に向くのが、NRIセキュアテクノロジーズ株式会社のレッドチームオペレーションサービスです。攻撃者の視点からセキュリティ態勢や対策の有効性を確認し、すでに整備した体制が実際の攻撃に対して機能するかを検証します。
環境ヒアリングから攻撃シナリオの作成、疑似攻撃の実施、対応の振り返り、改善策の検討まで、公式に示された6段階のプロセスで進み、標準期間は約6ヶ月です。シナリオは対象組織の懸念事項や環境ヒアリングの結果に合わせて個別に設計され、遠隔操作マルウェアによる社内侵害などの疑似攻撃に対するSOC・CSIRTの検知・対応を評価します。
料金は1,200万円〜(税別)で、攻撃シナリオにより変動すると公式に明記されています。対象範囲の絞り込みやSOC・CSIRTのトレーニングを目的とした実施など、形態を変えた提供にも対応します。なお、TLPTへの対応可否は公式サービスページに記載がないため、金融機関向けに検討する場合は個別の確認が必要です。
3. RedTeam(エヌ・ティ・ティ・セキュリティ・ジャパン株式会社)

人・プロセス・テクノロジーの3観点から組織の攻撃耐性を評価するのが、エヌ・ティ・ティ・セキュリティ・ジャパン株式会社のRedTeamです。攻撃者の視点で侵入・内部偵察・権限昇格・目的達成までの攻撃フェーズをシミュレートし、従業員の対応能力からCSIRT・SOCの検知フロー、技術的な脆弱性までを横断的に確認します。
標的型メールや物理侵入、ソーシャルエンジニアリングなど複数の攻撃手法を組み合わせ、事前に定めた最終目的の達成にコミットする「フリースタイル」型のアプローチを採ります。
実施してよい行為を限定せず禁止事項のみを事前合意することで攻撃側の自由度を高め、防御側がいつ・何を・どのように検知・対応できたかを評価対象に含めます。攻撃シナリオは、グループ横断の専門組織「Team V」と連携して策定するとしています。
料金は公式サイトに記載がなく、資料ダウンロードや問い合わせを通じた個別対応となります。上位カテゴリのメニュー区分では「RedTeam/TLPT」と併記されるものの、RedTeamサービス単体のページにはTLPTや脅威ベースという語がないため、金融機関のTLPT要件への対応可否は個別に確認する必要があります。
4. レッドチーム評価サービス(グローバルセキュリティエキスパート株式会社)

グローバルセキュリティエキスパート株式会社が「リスクを見つける(FindRisk)」シリーズの一つとして提供するのが、レッドチーム評価サービスです。IPA(情報処理推進機構)の「高度標的型攻撃」対策システム設計ガイドで定義された脅威シナリオ・攻撃手法に準拠し、最新の攻撃と同等の手法で、ネットワークセキュリティ対策が標的型攻撃にどこまで対応できるかを検証します。
同社のペネトレーションテストではシナリオCとして位置づけられ、マルウェア感染を起点とした社内ネットワークへの侵入、内部の横展開、データ持ち出しに至る一連の攻撃プロセスを通しで評価します。キックオフミーティングから対象環境の確認、評価作業(原則1日以内)、証跡収集、報告書作成、報告会までの7段階で進み、報告会後1ヶ月間は追加の質疑・対応にも応じます。
対応範囲は技術的な攻撃が中心で、標的型メールなどの人的手法や物理侵入が含まれるかは公式サイトに記載がありません。料金は個別見積もりで、TLPTへの対応も公式には明記されていません。金融機関向けに検討する場合は、これらの点を問い合わせで確認するとよいでしょう。
5. レッドチーム/ブルーチーム演習(クラウドストライク合同会社)

攻撃側のレッドチームと防御側のブルーチームをセットで動かす点が、クラウドストライク合同会社のレッドチーム/ブルーチーム演習の特徴です。CrowdStrikeのコンサルタントが2チームに分かれ、レッドチームが実践的な攻撃手法で顧客環境への侵入を試みる一方、ブルーチームは顧客担当者と同席し、実際に運用しているツールで検知・評価・対応にあたります。
演習はアクティブ偵察からデリバリーとエクスプロイト、コマンド&コントロール、オペレーション、事後レビューまでキルチェーンの5段階に沿って進み、途中で攻撃を一時停止してブルーチームのハンズオン訓練を挟む運用が組み込まれています。
演習後には、悪用された脆弱性やTTP(戦術・技術・手順)の分析、対応に関する見解、改善提言がガイダンスとして提供されます。日本語でのメニュー提供は2022年9月から行われています。
料金は公式に公開されておらず、対象範囲や期間に応じた個別見積もりとなります。AD(Active Directory)環境に特化した基本メニューや、事前通知なしでフィッシング・ソーシャルエンジニアリングを含める実戦的なメニューも用意されています。TLPTとしての対応表明は公式に確認できないため、金融機関向けの要件は個別に確認が必要です。
6. レッドチーム演習(株式会社サイバーディフェンス研究所)

伊藤忠商事の社内セキュリティ研究組織から分社化した株式会社サイバーディフェンス研究所は、擬似サイバー攻撃によるレッドチーム演習を提供しています。自動化ツールに頼らずエンジニアの手作業を軸に据え、実際の攻撃に近い条件で組織のセキュリティと防御側の対応力を検証します。
対応するシナリオは、内部犯による情報窃取や、フィッシング・マルウェア感染を用いた標的型攻撃、Webサービスへの攻撃、無線アクセスポイントや制御システムへの攻撃など幅広く用意されています。ヒアリングでの攻撃手法・目標の定義から、シナリオ決定、OSINT・Web・フィッシング・無線AP・物理侵入などを用いた侵入テスト、脅威分析と報告書作成までの5段階で進み、防御側の検知・対応の適切性まで評価します。
演習を担う技術者は、OSCPやCRTO、CRTLといったレッドチーム系の資格を保有しています。料金は対応内容・期間により変動する個別見積もりで、具体額は非公開です。メルカリ・freeeなどの導入実績を公式に掲げています。TLPTなど特定規格への準拠は公式ページに明記がないため、必要に応じて問い合わせで確認してください。
TLPT対応型
7. TLPT/レッドチーム演習(株式会社ラック)

株式会社ラックは、1995年から脆弱性診断やペネトレーションテストを手がけ、官公庁・金融分野で実績を重ねてきたセキュリティベンダーです。そのなかでTLPTを、レッドチームとブルーチームによる実戦型の攻防演習として提供しています。
演習では、攻撃者視点のホワイトハッカーが標的型メールやマルウェア感染などのシナリオで疑似攻撃を行い、システムだけでなく人・組織・プロセスを含めて検知・対応力を包括的に評価します。金融庁が推奨するTLPTの文脈にも対応し、脅威分析にもとづいてシナリオを設計する点が特徴です。
セキュリティ監視センター「JSOC」や緊急対応の窓口を自社に持ち、演習で見つかった課題を監視・インシデント対応の運用改善までつなげられる点が、診断専業のベンダーとの違いです。料金は対象範囲や診断の深さに応じた個別見積もりで、公式には明示されていません。TLPT提供を前提に、金融・官公庁の実績やJSOC連携による運用改善まで含めて、自社の要件に合うかを確認するとよいでしょう。
8. TLPT/レッドチーム演習(三井物産セキュアディレクション株式会社)

三井物産セキュアディレクション株式会社(MBSD)のTLPTは、対象組織の脅威を分析して攻撃シナリオを作成し、実際の攻撃者と同じ手法で疑似攻撃を行って、組織が検知・ブロックできるかという対応力(サイバーレジリエンス)を評価するサービスです。評価の対象はITシステムにとどまらず、SOCやCSIRTなどの運用体制を含む組織全体に及びます。
脅威情報の調査・分析を担うThreat Intelligence Provider、攻撃を実行するRed Team、防御側のBlue Team、全体を統括するWhite Teamという4つの役割を、組織の状況に応じて組み合わせられる体制を持ちます。
2025年6月には、脅威シナリオ策定とブルーチーム評価の2要素に絞ったエントリー向けの「TLPT Essential Plan」を追加し、本格的な実施が難しい組織でも段階的に取り組めるようにしています。
金融庁がTLPTを推奨していることを公式サイトで紹介していますが、金融機関向けの実施実績を社数や事例として公表してはいません。脆弱性発見の面では、脆弱性情報データベースJVNで2022年4月からの期間に報告件数1位を記録しています。料金は公式に公開されておらず、スコープやシナリオに応じた個別の問い合わせが必要です。
9. INTELLILINK 脅威ベースペネトレーションテストサービス(株式会社NTTデータ先端技術)

金融庁は2018年にTLPTを金融機関の取り組むべき施策として位置づけ、FISCが実施の手引書を公開しました。株式会社NTTデータ先端技術はこの流れを受けて、2019年11月に「INTELLILINK 脅威ベースペネトレーションテストサービス」の提供を開始しました。攻撃シナリオにもとづく疑似攻撃で、システム環境だけでなく組織や人のインシデント対応能力までを総合的に評価します。
攻撃を担うレッドチームを同社が務め、防御側のブルーチームは顧客企業、両者を統括するホワイトチームは中立の立場で采配するという三者体制を明確に定義しています。攻撃可否の判断やスケジュール調整を担うホワイトチームの体制構築支援まで提供し、「入口→内部→出口」の段階に沿って疑似攻撃を進めます。
対象は金融機関に限らず、サイバーレジリエンス強化を検討する企業を広く想定しています。料金は公式に公開されておらず、実施規模に応じた個別見積もりとなります。TLPTサービス単体の導入社数や事例は公表されていないため、自社の要件に合うかは問い合わせで確認するとよいでしょう。
10. レッドチーム演習/TLPT(PwC Japanグループ)

サイバー攻撃の観測・分析に従事する専門家が攻撃者役となり、サイバーキルチェーンの各段階に沿って標的型攻撃を仕掛けるのが、PwC Japanグループのレッドチーム演習です。組織ごとにカスタマイズした攻撃ツールで疑似攻撃を行い、CSIRT・SOCのインシデント対応体制や運用ポリシー、導入製品の有効性、ログの保全状況までを確認します。
関連サービスのTLPTは、金融機関向けの文脈で提供されています。FISCが2019年に刊行した「金融機関等におけるTLPT実施にあたっての手引書」にPwCあらた有限責任監査法人がオブザーバーとして参画し、金融庁の委託を受けて諸外国のTLPT手法を調査した実績を公式に示しています。
EU DORAにもとづくTLPT義務化の動向を詳しく解説し、欧州の枠組みTIBER-EUに準拠したサービスや、攻撃側と防御側が合同で改善に取り組むパープルチーム演習にも対応します。サイバーセキュリティ最高技術顧問には、JPCERT/CC出身の名和利男氏が就いています。料金は公式に公開されておらず、個別の問い合わせが必要です。
レッドチーム演習の費用相場
レッドチーム演習の費用は、演習の範囲・シナリオ数・実施期間によって大きく変わります。公的な統計はなく、提供各社も個別見積もりとしている場合が多いため、ここでの金額はあくまで目安として捉えてください。
費用を左右する主な要因は、対象範囲の広さ・シナリオ数・実施期間に加え、技術的な攻撃だけを対象にするか標的型メールや物理侵入まで含めるか、報告会や再演習といったアフターフォローまで含めるかです。人的・物理経路まで広げるほど工数が増え、費用も上がる傾向があります。
目安として、小規模で範囲を絞った演習であれば数百万円規模から、対象を広く取り数か月かけて実施する大規模な演習では数千万円規模になることもあります。なかには公式に料金を示す会社もあり、1,200万円〜(税別)とする例があります。多くは個別見積もりのため、目的に対して妥当かを複数社で比べるのが現実的です。
まとめ
レッドチーム演習サービスは、まず自社が「一般的なレッドチーム演習で実戦力を測りたいのか」「金融当局の考え方に沿ったTLPT対応が必要なのか」という2つのタイプのどちらに近いかを見極めるのが選定の近道です。そのうえで、攻撃手法の対応範囲・脅威シナリオの設計力・ブルーチーム連携・報告書とアフターフォロー・実績を比べると、自社に合う提供会社が絞り込めます。
費用は演習の範囲と期間で大きく変わるため、目安をつかんだうえで複数社から見積もりを取るのが現実的です。まず選定診断で自社に合うタイプを確かめ、比較表で候補を絞ってから、気になる会社の資料を取り寄せて具体的に比べてみてください。
一括ダウンロードする
レッドチーム演習サービスのよくある質問(FAQ)
Q. レッドチーム演習とは何ですか?
A. レッドチーム演習とは、実際の攻撃者を模したチームが技術・人・物理を横断して疑似攻撃を仕掛け、組織全体のセキュリティと検知・対応力を実戦形式で評価する取り組みです。
防御・検知を担うブルーチームには実施を知らせず、実際の攻撃と同じ条件で「攻撃に気づけるか」「気づいた後に適切に対応できるか」という運用面の実力までを可視化します。脆弱性診断やペネトレーションテストを一通り終えた組織が、次の段階として選ぶケースが多く見られます。
Q. レッドチーム演習とペネトレーションテストはどう使い分ければよいですか?
A. レッドチーム演習とペネトレーションテストは、「組織全体の検知・対応力まで評価したいか」か「特定システムの技術的な脆弱性を洗い出したいか」で使い分けます。
ペネトレーションテストは対象を絞って脆弱性を検証するのに向き、レッドチーム演習は情報システム・人・物理を横断した現実的なシナリオで、ブルーチームの検知・対応まで実戦形式で試したい段階に向きます。金融庁の資料では両者は明確に対立する概念として定義されておらず、脅威インテリジェンスにもとづく現実的なシナリオで組織全体を評価するのがレッドチーム演習(TLPT)と整理すると分かりやすくなります。
Q. レッドチーム演習は中小企業でも必要ですか?
A. レッドチーム演習が必要かは企業規模だけでは決まらず、扱う情報資産の重要度と、脆弱性診断・ペネトレーションテストなど基本的な対策をすでに終えているかで判断します。
顧客情報や機密データを扱う事業者は規模に関わらず標的になり得ますが、まだ脆弱性診断やペネトレーションテストを実施していない段階では、そちらを先に固めるほうが費用対効果は高くなります。中小規模であれば、範囲を絞った小規模な演習から始める選択肢もあります。
Q. レッドチーム演習の実施期間はどれくらいですか?
A. レッドチーム演習の期間は範囲やシナリオ数によって変わりますが、疑似攻撃そのものは数週間、事前のシナリオ策定から報告・改善提案まで含めると数か月に及ぶこともあります。標準プロセスの期間を約6か月と公式に示している会社もあります。対象を広く取るほど期間は長くなるため、提案時にスケジュールの目安を確認しておくと安心です。
Q. レッドチーム演習で情報漏えいや業務への影響はありませんか?
A. レッドチーム演習は、事前に取り決めたスコープと禁止事項、厳格な監視のもとで実施されるため、通常は業務や情報資産に実害が及ばないように管理されます。
ただし、TLPTのように本番環境でブルーチームに予告せず行う演習もあるため、想定外の影響を避けるには、実施範囲・停止条件・緊急連絡体制を事前に合意しておくことが欠かせません。安全に進める前提として、リスク管理と監視体制をどこまで用意できるかを提供会社と詰めておきましょう。
Q. レッドチーム演習を実施するには社内でどんな準備や体制が必要ですか?
A. レッドチーム演習を有効に行うには、演習の実施を把握する「ホワイトチーム」(統括・調整役)を社内に置き、攻撃可否の判断やスコープ・停止条件を管理する体制が必要です。
検知・対応を担うブルーチーム(SOC・CSIRT)が機能していることも前提になり、体制が整っていない段階では、対応ルールの整備やCSIRT組成を先に進めるほうが演習の価値を引き出せます。提供会社によってはホワイトチームの体制構築支援まで用意しているため、自社のリソースに応じて相談するとよいでしょう。
Q. レッドチーム演習(TLPT)は金融機関に義務づけられていますか?
A. TLPT(脅威ベースペネトレーションテスト)は、金融庁のガイドライン上「対応が望ましい事項」=推奨として位置づけられており、全金融機関に一律で義務づけられているわけではありません。
一方で、脆弱性診断やペネトレーションテストの定期的な実施は「基本的な対応事項」とされています。自社のリスクの大きさを踏まえてTLPTの要否を判断し、実施する場合は脅威インテリジェンスにもとづくシナリオ設計や金融分野の実績を持つ提供会社を選ぶと安心です。
出典・参考資料(1件)
Q. レッドチーム演習の費用の目安はどのくらいですか?
A. レッドチーム演習の費用は範囲・シナリオ数・期間で大きく変わり、小規模で範囲を絞った演習で数百万円規模から、対象を広く取る大規模な演習では数千万円規模になることもあります(公的な統計はなく目安です)。料金を公表する会社は少なく、1,200万円〜(税別)と明記している例があります。個別見積もりが基本のため、複数社を比べて判断してください。
Q. レッドチーム演習は1回だけで十分ですか?
A. レッドチーム演習は1回でも防御力の課題を把握する効果がありますが、攻撃手法が絶えず変化するため、定期的・継続的に実施することが望ましいとされています。
金融庁のガイドラインもTLPTを「定期的に実施すること」としており、一度の演習で見つかった課題を改善したうえで、再演習で改善効果を確かめる進め方が有効です。ただし具体的な実施頻度に公的な基準はないため、自社のリスクや前回からの環境変化を踏まえて判断してください。
レッドチーム演習サービスの料金・機能を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、レッドチーム演習を含む脆弱性・セキュリティ診断サービスのうち、カタログに掲載している各社の資料を無料でまとめて請求できます。気になるサービスの対応範囲や費用を並べて比較する材料としてご活用ください。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















