顧問税理士に決算や申告を任せているなら、「会計ソフトはそもそも自社で入れる必要があるのか」「入れたら税理士との役割分担はどう変わるのか」と迷うことはないでしょうか。会計ソフトを検討し始めた経理担当者や経営者の多くが、税理士との線引きがはっきりしないまま製品選びに入り、手が止まってしまいます。
結論から言えば、会計ソフトと税理士は役割が重なりません。日々の記帳や集計はソフトで自動化できる一方、決算や税務申告、税務の判断は税理士の領域として残ります。両者は置き換え合う関係ではなく、分担してこそ経理と申告がスムーズに進みます。
本記事では、会計ソフトと税理士の役割分担、導入後に顧問先と税理士がどう連携するか、税理士事務所で使われる定番の会計ソフトの顔ぶれ、そして税理士連携を前提にした選び方までを解説します。連携のしやすさで選べる具体的なクラウド会計ソフトも、料金や法令対応とあわせて紹介します。
目次
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会計ソフトを入れても税理士は必要?役割分担の結論
ここでは、会計ソフトと税理士がそれぞれ何を担うのかを整理し、両者の役割分担をはっきりさせます。
会計ソフトでできること・できないこと
会計ソフトが得意とするのは、日々の取引を帳簿に落とし込む作業です。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取得し、勘定科目を提案して仕訳を作り、総勘定元帳や試算表、決算書の下地となる帳簿を自動で集計します。多くのクラウド会計ソフトは、金融機関やクレジットカードとのデータ連携、レシートの読み取り、インボイス制度・電子帳簿保存法に沿った記録までを標準で備えています。
一方で、会計ソフトが自動でやってくれるのはあくまで「入力と集計」までです。決算書をもとに税額を計算して申告書を作る、税務署への申告を代理で行う、節税や税務上の判断について相談に乗る、といった業務はソフトの範囲外になります。ここが、税理士の専門性が必要になる領域です。
会計ソフトと税理士の担当範囲を業務ごとに整理すると、次のようになります。
| 業務 | 日々の記帳・仕訳・集計 | 決算書の作成 | 税務申告書の作成・申告の代理 | 節税・税務判断の相談 |
|---|---|---|---|---|
| 会計ソフトが担う範囲 | 明細の自動取得・自動仕訳で対応できる | 帳簿から下地を自動作成できる | 対象外 | 対象外 |
| 税理士が担う範囲 | 内容の確認・助言 | 最終的な確定とチェック | 独占業務として対応 | 独占業務として対応 |
税務代理・税務書類の作成は税理士の独占業務
税務の申告や相談を税理士に任せる必要があるのは、慣習ではなく法律で定められているためです。税理士法は、次の3つの事務を「税理士業務」と定めています。
税理士は、他人の求めに応じ、租税〔略〕に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
出典:税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第二条第一項|e-Gov法令検索
一 税務代理〔略〕
二 税務書類の作成〔略〕
三 税務相談〔略〕
この税務代理・税務書類の作成・税務相談は、税理士または税理士法人でなければ業として行えません。税理士法第52条は「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」と定めています。
無資格者が業として(反復・継続して報酬を得て)申告を代理したり申告書を作成したりすることは認められていません。会計ソフトを導入しても、決算・申告・税務判断の部分で税理士が必要になるのはこのためです。
反対に、日々の記帳そのものは税理士だけができる業務ではありません。税理士法第2条第2項は、会計帳簿の記帳の代行を税理士業務に「付随して」行える事務と位置づけており、記帳は独占業務ではないと読み取れます。つまり、帳簿入力は会計ソフトで自動化したり自社で対応したりできる一方、その先の決算・申告・税務判断は税理士の領域という分担になります。
出典・参考資料(1件)
税理士に依頼する場合のメリットと注意点
会計ソフトで記帳を自社対応しつつ、決算・申告を税理士に依頼する形には、いくつかの利点があります。申告書の作成や税務署への対応を専門家に任せられるため、申告ミスや税務調査のリスクを抑えられます。節税の余地や資金繰り、融資の相談まで踏み込んでもらえる点も、ソフト単体では得られない価値です。
会計ソフトのデータを税理士と共有すれば、日々の記帳は自社、チェックと申告は税理士、という分担がそのまま運用に落ちます。
注意点は、税理士への顧問料と会計ソフトの利用料が二重にかかることです。ただし、税理士がその会計ソフトに対応していない、あるいは操作に不慣れだと、データ共有がうまくいかず、せっかくの分担の効果が薄れます。後述するように、顧問税理士が使い慣れているソフトかどうかは選定の重要な判断材料になります。
顧問先と税理士はどう連携する?導入後の運用イメージ
ここでは、会計ソフトを導入したあと、顧問先企業と税理士が実際にどう作業を分担して進めるのかを整理します。
記帳から決算・申告までの連携の流れ
クラウド会計ソフトを使う場合、典型的な流れは次のようになります。まず顧問先企業が、日々の取引を会計ソフトに記帳します。銀行やクレジットカードの明細は自動で取り込まれ、勘定科目の提案を確認しながら仕訳を確定していきます。
次に、顧問税理士が同じデータをクラウド上で閲覧し、仕訳の内容や勘定科目の使い方をレビューします。多くのクラウド会計ソフトは、税理士をメンバーとして招待したり、専門家向けの閲覧・チェック権限を付与したりする仕組みを備えており、顧問先と税理士が同じ画面を見ながら月次でやり取りできます。
そして決算期には、税理士がそのデータをもとに決算書と申告書を作成し、税務署へ申告します。日々の記帳は顧問先、チェックと申告は税理士という分担が、ひとつのデータの上で完結する形です。

この運用がうまく回るかどうかは、顧問先が入力したデータを税理士がどれだけスムーズに確認・修正できるかにかかっています。ソフトを選ぶ際は、この連携のしやすさを軸に据えると、導入後のやり取りで詰まりにくくなります。
クラウド型とインストール型、税理士連携ならどちらを選ぶか
会計ソフトには、大きく分けてクラウド型とインストール型(パッケージ型)があります。クラウド型は、インターネット経由で同じデータに複数人がアクセスできるため、顧問先が入力したデータを税理士がその場で確認できます。税理士をメンバーに追加すれば、離れた場所からでもリアルタイムで同じ帳簿を見られる点が、連携のしやすさにつながります。
インストール型は、パソコンにソフトを入れて使う買い切りに近い形態で、ランニングコストを抑えやすい一方、税理士とデータを共有するには同じソフト同士でデータをやり取りするか、作成した帳簿をファイルで受け渡す手順が必要です。
顧問税理士とこまめにデータをやり取りしたい場合は、クラウド型のほうが運用の相性は良く、買い切りでコストを抑えたい・すでに使い慣れたソフトがあるといった事情があればインストール型も選択肢になります。
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税理士・顧問先の間でよく使われる会計ソフトの顔ぶれ
ここでは、税理士や顧問先の間でよく使われる会計ソフトの顔ぶれと、市場での利用状況を整理します。
よく使われる会計ソフトの顔ぶれと利用状況
顧問先が使うクラウド会計ソフトとして名前が挙がりやすいのは、弥生・freee会計・マネーフォワード クラウド会計といった製品です。いずれも顧問先が自分で契約して記帳し、税理士を招いてレビューを受ける使い方を想定した製品です。
これに加えて、勘定奉行クラウドやPCAクラウド会計のように、税理士・会計事務所とデータを共有する使い方に対応した製品も利用されています。
市場での普及度を示すデータとして、株式会社MM総研の調査があります。個人事業主を対象とした調査(2025年3月末時点)では、クラウド会計ソフトの利用率は38.3%で、事業者別のシェアは弥生が55.4%、freeeが24.0%、マネーフォワードが14.3%と報告されています。
これは個人事業主のクラウド会計ソフト利用者を対象とした割合で、税理士事務所での採用状況そのものを示すものではありませんが、ここまで挙げた製品が市場で広く使われていることの裏づけになります。
出典・参考資料(1件)
会計事務所向けソフトと顧問先が使うソフトの関係
会計ソフトには、顧問先企業が主に使うものと、税理士・会計事務所側が導入して顧問先を巻き込む形で使うものがあります。前者は弥生会計 Nextやfreee会計、マネーフォワード クラウド会計のように、企業が自分で契約して記帳し、税理士を招待するタイプです。
後者の代表がTKC FXクラウドシリーズで、TKC全国会に所属する会計事務所による月次の巡回監査・経営助言とセットで提供され、顧問先は会計事務所を通じて導入します。日本ビズアップ株式会社のクラウド発展会計や、株式会社ミロク情報サービスのかんたんクラウド会計も、会計事務所が顧問先に導入して同じデータを共有し、事務所側から遠隔でサポートする運用に対応しています。
どちらの型を選ぶかは、自社主導で記帳して税理士に見てもらいたいのか、事務所のサポートを前提に進めたいのかで変わります。顧問税理士がいる場合は、その事務所がどのソフトを使っているかを確認してから選ぶと、連携がスムーズです。
税理士連携で選ぶ5つのポイント
ここからは、税理士との連携を前提に会計ソフトを選ぶとき、どこを見て判断すればよいかを5つの観点で整理します。
① 会計事務所とのデータ共有・やり取りのしやすさ
最初に確認したいのが、税理士と同じデータをどう共有できるかです。ここは前述の連携の仕組みを、選定時の確認項目として見る観点になります。招待の手続きが簡単か、税理士側に追加費用がかからないか、権限を細かく設定できるかは、日々のやり取りの快適さに直結します。
顧問税理士が離れた場所にいても同じ帳簿をリアルタイムで確認できるか、という視点で見ておくと、導入後の連携で詰まりにくくなります。
② 顧問税理士が対応・推奨しているか
どれほど機能が優れていても、顧問税理士がそのソフトに対応していなければ連携の効果は限られます。すでに顧問税理士がいる場合は、契約前に「このソフトで問題ないか」「事務所として推奨・対応しているソフトはあるか」を確認するのが確実です。
税理士側が使い慣れたソフトなら、初期設定や仕訳のチェックもスムーズに進みます。これから税理士を探す場合は、自社が使いたいソフトに対応している事務所を選ぶ、という順序も選択肢になります。
③ 料金体系と、税理士費用とのバランス
会計ソフトの費用は、税理士への顧問料と合わせた総額で考えるのが実務的です。クラウド会計ソフトは月額数千円から使えるものが多く、記帳を自社で行えば、税理士に記帳代行まで依頼する場合より顧問料を抑えられる可能性があります。反対に、記帳の手間を省いて税理士に丸ごと任せたい場合は、ソフト費用が抑えめでもトータルの顧問料が上がることがあります。
税理士の顧問料は、毎月の顧問料と年1回の決算料に分かれているのが一般的で、記帳代行を含めるか、面談の頻度、事業規模によって金額が変わります。会計ソフトの月額費用と、この顧問料の内訳を並べたうえで、日々の記帳をどこまで自社で担うかを決めると、ソフト費用と顧問料を合わせた総額の見通しが立てやすくなります。
④ 銀行・クレジットカードの自動連携
記帳の手間を左右するのが、銀行口座やクレジットカードとのデータ連携です。連携できる金融機関やサービスが多いほど、明細を手入力する場面が減り、仕訳の自動化も進みます。連携数は製品によって差があるため、自社が使っている銀行やカード、決済サービスが連携対象に含まれているかを事前に確認しておくと、導入後に「肝心の口座が連携できない」という事態を避けられます。
⑤ インボイス制度・電子帳簿保存法への対応
インボイス制度と電子帳簿保存法への対応も、会計ソフト選びで外せない観点です。インボイス制度は、令和5年10月1日から始まった適格請求書等保存方式で、仕入税額控除を受けるには一定の事項が記載された帳簿と適格請求書(インボイス)の保存が要件となります。会計ソフトが適格請求書の作成や登録番号の管理に対応していれば、この要件を満たす記録がしやすくなります。
電子帳簿保存法については、対応範囲を正しく理解しておくことが大切です。同法には電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3区分があり、このうち義務となっているのは電子取引データ保存です。国税庁は、電子取引を行った場合に「その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない」と示しています。
メールやインターネットで受け取った請求書などの電子データは、令和6年1月以降、そのまま保存する必要があり、可視性・真実性を確保した保存が求められます。
会計ソフトが電子取引データの保存・検索に対応していれば実務対応の助けになりますが、事務処理規程の整備など運用面での対応も含めて、ソフトと税理士のどちらで何を担保するかを整理しておくとよいでしょう。
出典・参考資料(3件)
電子帳簿保存法の3区分や、いつから何を電子で保存する必要があるのかをより詳しく知りたい場合は、以下の記事で制度の全体像と実務対応のポイントを解説しています。
税理士連携を前提に選ぶ会計ソフト
ここからは、税理士との連携を前提に検討できる会計ソフトを紹介します。まずは提供形態・税理士連携のかたち・料金・法令対応を一覧で比較し、そのうえで各サービスの特徴を見ていきます。
| サービス名 | 弥生会計 Next | Tenbook(テンブック) | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 勘定奉行クラウド | TKC FXクラウドシリーズ | PCAクラウド 会計 | ジョブカン会計 | かんたんクラウド会計(MJS) | クラウド発展会計 | 会計王(ソリマチ) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド | クラウド | クラウド | クラウド | クラウド | クラウド(会計事務所の月次関与が前提) | クラウド | クラウド | クラウド | クラウド | インストール型(Windows)+一部クラウド連携。買い切り型 |
| 税理士連携のかたち | 顧問税理士に会計データをリアルタイム共有し、決算申告まで進められる | 記帳から決算・法人税申告まで公認会計士・税理士のチームに委託(原則3名体制) | 税理士・会計事務所向けの窓口と認定アドバイザー制度で税理士を招待し、記帳をレビュー | メンバー追加で税理士を招待し、「監査」を含む7種の権限から選んで付与 | 税理士・会計事務所との無償リアルタイム共有ができる専門家ライセンスが標準付帯 | TKC全国会所属の会計事務所による月次巡回監査・経営助言とセット(事務所経由で導入) | ファイル共有「PCA Arch」で税理士専用フォルダを作り、必要なデータを共有 | クラウド上で複数ユーザーが同じ帳簿を共有(ビジネスプラン以上で権限管理) | 会計事務所と顧問先が同じデータをリアルタイム共有し、事務所が遠隔でサポート | 同時閲覧機能で会計事務所と顧問先が同じデータを見ながら共同作業(事務所経由で導入) | アカウント共有はなく、同一バージョン間のデータ授受か「安心データバンク」で元帳PDFを共有 |
| 主な料金 | 年額34,800円(税抜)〜(エントリープラン)/初期費用0円 | 月額29,500円〜(免税事業者)/43,500円〜(課税事業者)、決算料不要 | 月額2,980円(税抜・年払い)〜(ひとり法人)/初期費用0円 | 月額2,480円(税抜・年払い)〜(ひとり法人)/初期費用0円 | 年額93,000円(税抜)〜(Eシステム)/初期費用0円〜 | 要問い合わせ(会計事務所経由) | 月額19,200円(税抜)〜(会計hyper単体)/初期費用0円 | 月額2,500円〜(スタートアップ/3ユーザー)/初期費用0円 | 月額2,160円(税抜)〜(Basic/年額21,600円) | 月額8,000円/1ライセンス(会計事務所経由・要問い合わせ) | 44,000円(税込)買い切り(月額なし、2年目以降は年間保守) |
| インボイス・電子帳簿保存法 | 対応(インボイス・電子帳簿保存法) | 対応(インボイス・電子帳簿保存法) | 対応(インボイス・電子帳簿保存法。電子帳簿保存法はJIIMA認証取得) | 対応(インボイス・電子帳簿保存法) | 対応(インボイス・電子帳簿保存法。電子帳簿保存法はJIIMA認証4種取得) | 対応(インボイス・電子帳簿保存法。ペポル〔電子インボイスの国際規格〕対応) | 対応(インボイス・電子帳簿保存法。電子帳簿保存法はJIIMA認証取得) | 対応(インボイス・電子帳簿保存法) | 対応(インボイス・電子帳簿保存法。電子取引はファイルBOX) | 対応(発展ストレージで電子帳簿保存法・インボイス) | 対応(インボイス・改正電子帳簿保存法) |
| こんな読者におすすめ | 会計・請求・経費・証憑をまとめて効率化したい法人 | 記帳から決算・申告までまとめて委託したい創業期〜中小企業 | 簿記の知識が浅くても使いたい小規模事業者 | 複式簿記で細かく設定したい経理担当のいる法人 | 奉行シリーズで基幹業務を揃えたい中小企業 | 会計事務所の月次関与や金融機関への信頼性提示を重視する企業 | 仕訳の承認機能や部門・グループ管理が必要な中堅企業 | 低コストで始めたい・ジョブカンシリーズを併用する中小企業や個人 | 会計事務所のサポートを受けたい小規模事業者 | 経営助言(財務MAS)まで踏み込む会計事務所とその顧問先 | 買い切りでコストを抑えたい・パッケージを好む中小企業や個人 |
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1. 弥生会計 Next(弥生株式会社)

会計ソフトで長年の実績を持つ弥生株式会社が、2025年に提供を始めた法人向けクラウド会計サービスです。会計に加えて請求書発行・経費精算・証憑管理を1つのサービスに統合し、これらのデータが自動で会計処理へ流れる構成が特徴です。2,500以上の金融機関と連携し、取り込んだ明細からAIが勘定科目を提案して仕訳を自動化します。
税理士連携の面では、顧問税理士に会計データをリアルタイムで共有し、決算申告まで進められる仕組みを備えます。料金はエントリープランが年額34,800円(税抜)からで、初期費用は無料、全機能を最大3か月試せる無料体験も用意されています(2026年9月時点)。弥生シリーズは登録ユーザー数350万を超え、導入事例や操作の情報を得やすい製品です。
2. Tenbook(シンアカウンティングサービス株式会社)

Tenbookは、顧問税理士をこれから探す方や、記帳から申告までまとめて専門家に任せたい方に向く選択肢です。ここまでのソフトが「自社で記帳し、顧問税理士と連携する」形なのに対し、Tenbookは「記帳から決算・申告まで税理士に任せる」という役割分担そのものをサービスにしています。
公認会計士・税理士が代表を務めるシンアカウンティングサービス株式会社が、自社開発のクラウド会計ソフト「10book」を基盤に、記帳代行・月次処理・決算・法人税申告までをオンラインで代行・サポートします。
ソフトと人的サポートを一体で提供する点が特徴で、契約者には10bookが無料提供されます。料金は免税事業者向けが月額29,500円、課税事業者向けが月額43,500円で、決算料は別途かかりません(相談料込み、2026年9月時点)。対応税目は法人税・所得税・消費税が中心で、相続税や贈与税は含まれないなど範囲が定められているため、依頼したい業務が対応範囲に入るかを確認しておくと安心です。
記帳から決算・申告までを一つの窓口に任せる形について、同社を運営するシンアカウンティングサービスの上田氏は、依頼を検討する際の判断軸を次のように話しています。
比較検討の中で決め手になりやすいのは、経理だけで終わらず、決算書・申告書の作成や経営会議の資料作成まで含めて一貫して委託できる点だと思っています。最後まで責任範囲がつながっていることは、判断材料として分かりやすいはずです。
3. freee会計(フリー株式会社)

簿記の知識が浅くても使える設計を掲げるクラウド会計ソフトです。フリー株式会社が提供し、質問に答える形での記帳やAIによる自動仕訳で、経理の専任者がいない小規模事業者でも扱いやすいことを重視しています。1,000を超える金融機関・サービスと連携し、取引データの自動取得から決算書作成までを1つのプラットフォームで完結できます。
税理士との連携では、税理士・会計事務所向けの窓口と認定アドバイザー制度を設けており、顧問先が記帳して税理士がレビューする運用に対応します。電子帳簿保存法(電子データ保存の要件適合を示すJIIMA認証を取得)やインボイス制度にも対応し、法改正時の自動アップデートを提供します。
料金はひとり法人向けプランが月額2,980円(年払い、税抜)からで、事業規模に応じて5つのプランから選べます(2026年9月時点)。
4. マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)

株式会社マネーフォワードが提供する、ひとり法人・中小企業向けのクラウド会計ソフトです。2,300以上の金融関連サービスと連携して明細を自動取得し、AIが勘定科目を提案します。複式簿記を前提とした運用で、簿記の知識がある経理担当者が細かく設定・調整しやすい点が、初心者向けに振り切った製品との違いです。
税理士連携は、通常の「メンバー追加」で顧問税理士を招待し、公認会計士・税理士向けの「監査」権限を含む複数の権限から選んで付与できます。請求書・経費・給与など他のマネーフォワード クラウド製品と同じ基盤で連携できるのも利点です。
料金は新設法人・経営者1名向けのひとり法人プランが月額2,480円(年払い、税抜)から、小規模企業向けのスモールビジネスプランが月額4,480円(年払い、税抜)からで、初期費用は無料、1か月の無料トライアルが用意されています(2026年9月時点)。
5. 勘定奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

株式会社オービックビジネスコンサルタントが提供するクラウド会計ソフトで、金融機関の明細や領収書、Excelデータから仕訳を自動起票し、月次決算の短縮を狙う構成です。標準で50種を超える帳票を備え、給与奉行や固定資産奉行など同社の他の奉行シリーズや外部システムとデータ連携できる点が特徴です。
税理士連携の面では、税理士・会計事務所との無償リアルタイム共有ができる専門家ライセンスが標準で付帯し、顧問税理士が同じデータを確認できます。電子帳簿保存法のJIIMA認証を取得し、インボイス制度にも対応します。料金はEシステムが年額93,000円(税抜)からで、利用人数や伝票明細件数に応じてエディションを選べます(2026年9月時点)。
6. TKC FXクラウドシリーズ(株式会社TKC)

TKC FXクラウドシリーズは、税理士・会計事務所との連携を前提に設計されている点が、市販の会計ソフトとの最大の違いです。株式会社TKCが提供し、TKC全国会に所属する会計事務所による月次の巡回監査・経営助言とセットで利用されます。経営者や経理担当者が自社で日々記帳し、会計事務所がそれを監査・助言する自計化支援の考え方が製品の柱です。
記帳の適時性・正確性を担保する記帳適時性証明書により、決算書の信頼性を金融機関へ提示できる仕組みも備え、融資審査や資金調達の場面で役立ちます。FXクラウドシリーズは市販されておらず、TKC全国会に所属する会計事務所を通じて導入するため、料金は会計事務所との顧問契約の内容によって決まります。導入を検討する場合は、TKC会員の会計事務所に相談する形になります。
7. PCAクラウド 会計(ピー・シー・エー株式会社)

ピー・シー・エー株式会社が提供する、老舗パッケージ会計ソフト「PCA会計」をクラウド形態で使える財務会計システムです。1980年設立・東証プライム上場のベンダーで、日常の伝票入力から元帳・試算表・決算書、経営分析帳票までを作成できます。仕訳の承認機能や部門・予算管理を備え、担当者が入力し責任者が確認する組織的な運用に向いています。
税理士連携では、ファイル共有サービス「PCA Arch」で税理士専用のフォルダを作り、必要なデータを共有する使い方が公式に案内されています。電子帳簿保存法のJIIMA認証を取得し、インボイス制度にも対応します。料金は会計hyperの単独構成が月額19,200円(税抜)からで、データセンター版とAWS版など提供基盤を選べます(2026年9月時点)。
8. ジョブカン会計(株式会社DONUTS)

勤怠管理や給与計算などのジョブカンシリーズを展開する株式会社DONUTSが提供する、クラウド型の会計ソフトです。パッケージ型会計ソフトの操作性を踏襲したキーボード中心の入力と自動集計を特徴とし、低コストで始められる価格帯を打ち出しています。法人・個人事業主の双方に対応します。
料金は初期費用が無料で、スタートアッププランが月額2,500円(3ユーザーまで)からと手ごろで、契約前に30日間の無料トライアルを利用できます(2026年9月時点)。インボイス制度・電子帳簿保存法に対応し、有償の証憑管理オプションではAI-OCRやAIによる仕訳作成も利用できます。ジョブカンシリーズの勤怠・給与・経費精算などと横断して使いたい場合にも相性が良い製品です。
9. かんたんクラウド会計(株式会社ミロク情報サービス)

会計事務所向けソフトを長く手がける株式会社ミロク情報サービス(MJS)が提供する、小規模事業者向けのクラウド会計ソフトです。スタートアップや中小企業を主な対象とし、取引例のプリセットやレシートの読み取りで、簿記に不慣れでも入力しやすいことを重視しています。
特徴は、会計事務所主導の導入・運用に対応している点です。会計事務所と顧問先が同じデータをリアルタイムで共有でき、事務所の職員が顧問先のシステムにログインして遠隔でサポートできます。MJSの事務所向け基幹システムを使う会計事務所であれば、事務所側のデータから顧問先の利用を始められ、入力データを事務所システムへ取り込むこともできます。
料金はBasicプランが月額2,160円(税抜)からで、電子帳簿保存法にも対応します(2026年9月時点)。
10. クラウド発展会計(日本ビズアップ株式会社)

日本ビズアップ株式会社が提供する、会計事務所向けのクラウド会計システムです。会計事務所と顧問先企業の連携を前提とした構成で、自動仕訳・財務資料の自動作成から、経営助言のための財務MAS、税理士業務の書面添付までを一連で扱えます。全国1,400件の会計事務所が利用しています。
同時閲覧機能により、会計事務所と顧問先が同じデータを見ながら共同で作業できる点が特徴で、税理士が経営助言まで踏み込む運用を想定した機能がそろっています。会計事務所向けの製品のため、顧問先企業は契約する会計事務所を通じて導入する形になります。
料金は1ライセンスあたり月額8,000円が目安ですが、実際の条件は会計事務所との契約形態によって変わるため、導入時に確認するとよいでしょう(2026年9月時点)。
11. 会計王(ソリマチ株式会社)

ソリマチ株式会社が提供する、中小企業・個人事業主向けの会計ソフトです。ここまで紹介したクラウド型と異なり、パソコンにインストールして使う買い切り型が主力で、ランニングコストを抑えたい層やパッケージソフトを好む層に向きます。銀行・クレジットカードのWeb明細を取り込む「MoneyLink」や、データ保管用のクラウドストレージ「安心データバンク」など、クラウド連携機能も備えます。
税理士との連携は、クラウド型のようにアカウントを付与して同じ画面を共有する形ではありません。同じバージョンのソフト同士でデータをやり取りするか、「安心データバンク」に元帳のPDFを置いて会計事務所と共有する方法が公式に案内されています。
料金は製品本体が44,000円(税込)の買い切りで、購入後最大15か月の電話サポートが付属し、インボイス制度・改正電子帳簿保存法にも対応します(2026年9月時点)。
ここまで税理士連携を前提に候補を紹介しましたが、クラウド会計ソフトは料金やタイプの幅が広く、選択肢はほかにもあります。以下の記事では、クラウド会計ソフトを規模・タイプ別に整理し、選び方と料金をまとめています。より多くの選択肢から網羅的に比較して絞り込みたい方は、あわせてご覧ください。
まとめ
会計ソフトと税理士は、どちらかがあればもう一方は不要という関係ではありません。日々の記帳や集計は会計ソフトで自動化できる一方、決算・申告・税務相談は税理士の独占業務として法律で位置づけられており、両者を分担してこそ経理と申告がスムーズに進みます。会計ソフトを導入しても、決算・申告の部分では税理士の役割が残ります。
税理士連携を前提に会計ソフトを選ぶなら、データ共有のしやすさ、顧問税理士の対応状況、料金と顧問料のバランス、金融機関との自動連携、インボイス制度・電子帳簿保存法への対応という5つの観点で見比べると、自社に合う製品を絞り込みやすくなります。顧問税理士がいる場合は、その事務所が使っている・推奨しているソフトを確認してから選ぶのが、導入後の連携をスムーズにする近道です。
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税理士と会計ソフトに関するよくある質問(FAQ)
Q. 会計ソフトの税理士連携とは何ですか?
A. 会計ソフトの税理士連携とは、顧問先が入力した会計データを、顧問税理士がクラウドなどを通じて同じ画面で確認・チェックし、決算や申告に活用できる仕組みのことです。
多くのクラウド会計ソフトは、税理士をメンバーとして招待したり、専門家向けの閲覧・チェック権限を付与したりできます。これにより、日々の記帳は顧問先、内容の確認と申告は税理士、という役割分担がひとつのデータの上で完結します。
Q. 会計ソフトを入れれば税理士は不要になりますか?
A. 会計ソフトを導入しても、決算・税務申告・税務相談は税理士の領域として残るため、税理士が不要になるわけではありません。
会計ソフトが自動化できるのは日々の記帳と集計までで、決算書をもとにした申告書の作成や税務署への申告代理、節税の相談はソフトの範囲外です。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法で税理士(または税理士法人)の独占業務と定められており、会計ソフトがこの部分の代わりを務めることはできません。記帳はソフトで、決算・申告は税理士で、と分担するのが基本の形です。
出典・参考資料(1件)
Q. 税理士に頼まず、会計ソフトだけで自分で確定申告できますか?
A. 自分自身の確定申告であれば、税理士に依頼せず会計ソフトだけで行うこともできます。
税理士法が独占業務としているのは、報酬を得て「他人」の税務申告を代理・作成する行為です。自分の事業の申告を自分で行うこと自体は制限されておらず、会計ソフトの申告書作成機能を使えば、個人事業主や小規模法人が自力で申告することもできます。ただし、取引が複雑な場合や、節税・税務調査への備えを重視する場合は、税理士に依頼したほうが申告ミスのリスクを抑えられます。
出典・参考資料(1件)
Q. 会計ソフトを導入すると、税理士の顧問料は安くなりますか?
A. 会計ソフトで記帳を自社対応すれば、税理士に記帳代行まで任せる場合と比べて顧問料を抑えられる可能性があります。
顧問料は、記帳をどこまで税理士に任せるかで変わります。日々の記帳を会計ソフトで自社が行い、税理士には決算・申告とチェックを依頼する形にすれば、記帳代行分の費用を圧縮できます。一方で、記帳の手間ごと税理士に任せたい場合は顧問料が上がることもあります。会計ソフトの利用料と顧問料は別々にかかるため、両方を合わせた総額でコストのかけ方を判断するのが実務的です。
Q. 顧問税理士が対応していない会計ソフトを選んでも大丈夫ですか?
A. 顧問税理士が対応していない会計ソフトでも使えますが、データ共有やチェックがスムーズに進まず、税理士連携のメリットが得られにくくなります。
税理士が使い慣れていないソフトだと、閲覧権限の設定や仕訳の確認に手間がかかり、ファイルでのやり取りが増えることもあります。すでに顧問税理士がいる場合は、契約前に「このソフトで問題ないか」「事務所として推奨・対応しているソフトはあるか」を確認するのが確実です。これから税理士を探すなら、使いたいソフトに対応した事務所を選ぶ、という順序も選択肢になります。
Q. 税理士を変更する場合、会計ソフトのデータは引き継げますか?
A. クラウド会計ソフトを自社名義で契約していれば、税理士を変更してもデータはそのまま引き継げます。
自社でソフトを契約し、税理士をメンバーとして招待している場合、契約先の税理士を入れ替えても会計データは自社に残ります。新しい税理士を改めて招待すれば、過去の帳簿を引き継いだまま連携を続けられます。注意したいのは、会計事務所が主導して導入するタイプ(TKC FXクラウドや会計事務所向け製品など)で、この場合はソフト自体が事務所との契約に紐づくため、税理士を変えるとソフトも切り替わることがあります。
契約名義がどちらにあるかを、導入時に確認しておくとよいでしょう。
Q. 記帳は自分で行うべきですか、税理士の記帳代行に任せるべきですか?
A. 記帳の手間を減らしたいなら記帳代行、コストを抑えたいなら会計ソフトでの自社記帳が向いています。
会計ソフトの自動仕訳を使えば、銀行・カードの明細取り込みで記帳の負担はかなり軽くなるため、自社で記帳して税理士にはチェックと申告を任せる形が主流になりつつあります。一方、経理に手が回らない、簿記の知識に不安があるといった場合は、記帳代行を含めて税理士に任せる選択もあります。記帳代行を頼むと顧問料は上がる傾向があるため、自社のリソースとコストのバランスで決めるとよいでしょう。
Q. 無料の会計ソフトでも税理士と連携できますか?
A. 無料プランでも税理士を招待できるソフトはありますが、機能や取引件数に制限があり、税理士連携を本格的に使うなら有料プランが前提になることが多いです。
無料で使える会計ソフトは、登録できる仕訳数や使える機能が限られていたり、一定期間だけの無料お試しだったりします。顧問税理士と継続的にデータを共有し、決算・申告まで見据えるなら、法令対応やサポートが整った有料プランを選ぶほうが安心です。まずは無料体験で操作性や税理士との連携のしやすさを確かめ、本運用は有料プランに切り替える、という進め方が現実的です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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