会員サイトやECサイト、金融サービスへの不正ログイン・アカウント乗っ取りが後を絶ちません。ID・パスワードだけの認証では、パスワードが漏えいした時点で第三者の侵入を防げず、かといって全員に毎回追加認証を課すと利用者の離脱を招きます。セキュリティの強化と利便性の両立が、Webサービスを運営する企業の共通の課題になっています。
この課題への打ち手として広がっているのが「リスクベース認証」です。普段どおりのアクセスはID・パスワードだけで通し、いつもと違う・あやしいと判断したアクセスのときだけ追加の本人確認を求める仕組みで、手間を増やさずに不正ログインを防ごうとするものです。ただ、多要素認証(MFA)や二段階認証との違いが分かりにくく、導入判断で迷う担当者も少なくありません。
本記事では、リスクベース認証とは何かという一言の定義から、危険度を判定する仕組み、多要素認証・二段階認証との違い、メリットとデメリット、活用例、そして自社への導入手段までを、順を追って解説します。
目次
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リスクベース認証とは
リスクベース認証(RBA:Risk-Based Authentication)とは、ログインのたびにアクセス状況(IPアドレス・利用端末・場所・時間帯など)から危険度を判定し、普段と異なる=あやしいと判断したときだけ追加の本人確認を求める認証方式です。通常どおりのアクセスはID・パスワードだけで通すため、利用者の手間を増やさずに不正ログインへの備えを強められます。
従来のID・パスワード認証は、正しい組み合わせを入力できれば誰でも・いつでも同じように通します。これに対してリスクベース認証は、同じ利用者でもアクセスの状況に応じて認証の強さを変える「動的な認証」である点が根本的に異なります。
この考え方は、デジタル認証の国際的な指針である NIST(米国国立標準技術研究所)の「SP 800-63B」にも示されています。同文書は、予期しない場所やIPアドレスからのアクセスなど不正の兆候があるときに、追加のリスクベースの対策を用いてよいと記しています。
At all AALs, indicators of potential fraud, including applicable indicators described in Sec. 5.3, MAY be used to lower the risk of misauthentication. For example, authentication from an unexpected geolocation or IP address block (e.g., a cloud service) might prompt the use of additional risk-based controls.
出典:NIST Special Publication 800-63B(Digital Identity Guidelines, Revision 4)|米国国立標準技術研究所(NIST)
(訳:すべての認証保証レベルにおいて、不正の可能性を示す兆候は誤認証のリスクを下げるために用いてよい。たとえば、予期しない地理的位置やIPアドレス帯からの認証は、追加のリスクベースの管理策の発動を促し得る。)
総務省も、パスワードだけに頼らない多要素認証などの本人確認の強化を、事業者向けに解説しています。リスクベース認証は、利便性を保ったままこの本人確認を必要な場面だけで強める手段だといえます。
出典・参考資料(1件)
リスクベース認証の仕組み
ここからは、リスクベース認証が何を見て危険度を判定し、あやしいと判断したときに実際に何が起きるのかを、順を追って解説します。
危険度を判定する要素
リスクベース認証は、ログイン時に得られるアクセスの状況を、その利用者の普段のパターンと照らし合わせて危険度を測ります。代表的な判定材料は次のとおりです。
- IPアドレス:普段と違うネットワークや、匿名化サービス経由でないか
- 位置情報:いつもと異なる国・地域からのアクセスでないか
- 時間帯・曜日:普段ログインしない時間帯のアクセスでないか
- デバイス情報・OS・ブラウザ:登録済みの端末や、いつものブラウザ環境か
- 操作・行動パターン:入力の仕方や画面遷移が普段の傾向から外れていないか
これらのうち、IPアドレス・地理的位置・アクセスのタイミング・ブラウザの情報は、前述の NIST SP 800-63B が判定材料として名指ししているものです。同文書は、これらを使って「いつもの範囲に収まるか、外れるか」を見分ける手法を、リスクベース認証(アダプティブ認証)の技術として挙げています。
Leveraging other risk-based or adaptive authentication techniques to identify claimant behaviors that fall within or outside of typical norms (e.g., the use of the claimant’s IP address, geolocation, timing of request patterns, or browser metadata)
出典:NIST Special Publication 800-63B(Digital Identity Guidelines, Revision 4)Sec. 3.2.2|NIST
(訳:利用者の振る舞いが通常の範囲に収まるか外れるかを見分けるために、リスクベースまたはアダプティブ認証の手法を活用する。たとえば、利用者のIPアドレス、地理的位置、リクエストのタイミングの傾向、ブラウザのメタデータの利用などである。)
ただし、IPアドレスや位置情報だけでの判定には限界があります。VPNやiCloudプライベートリレーを使うと、正規の利用者でもIPや位置が普段と変わることが珍しくなく、IP単独の判定では誤検知が増えがちです。
そのため実際には、端末の特徴(デバイス情報)や、入力・操作のくせといった行動パターンも組み合わせ、複数の要素の相関で「普段と違うか」を見ます。単一の要素に頼らないほど、誤検知を抑えつつ不正を捉えやすくなります。
判定から追加認証発動までの流れ
実際の判定と追加認証は、おおむね次のステップで進みます。
- 利用者がID・パスワードを入力する
- システムがアクセス元の情報(IP・場所・端末・時間帯など)を取得し、普段のパターンと照合して危険度を判定する
- 危険度が低ければそのままログインを許可し、高ければSMS認証・ワンタイムパスワード・秘密の質問などの追加認証を求める

実際のサービスでの挙動も同様です。たとえば楽天証券は、リスクがあるときにだけ追加認証を行うと公式に説明しており、旅行・出張など普段と異なる場所からのアクセスや、機種変更・買い替えで普段と異なる端末からのアクセスでは追加認証が求められやすくなるとしています。
出典・参考資料(1件)
追加認証の種類(アクティブ認証・パッシブ認証)
追加認証のやり方は、一般に「アクティブ認証」と「パッシブ認証」の2つに分けて説明されます。両者は排他ではなく、組み合わせて使われるのが一般的です。
- アクティブ認証:利用者に操作を求めるタイプ。ワンタイムパスワードの入力、SMS認証、秘密の質問への回答などが該当します
- パッシブ認証:利用者の操作を必要とせず、IPアドレスや端末情報、位置情報などを裏側で自動的に照合するタイプです
危険度が低い通常時はパッシブ認証だけで判定を終え、あやしいと判断したときにアクティブ認証を上乗せする——この使い分けが、利便性と安全性を両立させる要になります。

リスクスコアリング(判定エンジン)の考え方
危険度の判定は、複数の要素を総合して「リスクスコア」として数値化し、あらかじめ定めたしきい値を超えたら追加認証を発動する、という考え方が基本です。しきい値を厳しくすれば不正は止めやすくなりますが、正規の利用者が追加認証を求められる場面も増えます。逆に緩めれば利便性は上がりますが、不正を見逃すおそれが高まります。
たとえば、いつもと違う国のIPアドレスからのアクセスに、初めて使う端末・深夜といった条件が重なるほどスコアは高くなり、追加認証が発動しやすくなります。逆に、登録済みの端末で普段の時間帯にアクセスした場合はスコアが低く、そのまま通されます。
スコアをしきい値で区切り、段階ごとに対応を変える設計が一般的です。スコアを0〜100で表す場合の一例を示します(具体的な区切りや点数は製品・運用方針により異なります)。
| リスクスコア(例) | 低(0〜30) | 中(31〜60) | 高(61〜85) | 最高(86〜100) |
|---|---|---|---|---|
| 状態の目安 | 普段どおりのアクセス | ややいつもと異なる | 複数の異常が重なる | 明らかに不審 |
| 対応の例 | 追加認証なしでそのまま通す | ワンタイムパスワードなど軽めの追加認証 | SMS・認証アプリなど強めの追加認証 | いったんログインを拒否し、管理者へ通知 |
導入の初期は、いきなり厳しいしきい値で運用しないのが無難です。まずは判定結果をログに記録するだけにとどめ、正規の利用者がどの程度ひっかかるか(誤検知)を見ながら、追加認証を発動させる範囲を少しずつ広げます。こうすると、利用者の不満を抑えながら精度を高められます。
このバランスは一度決めて終わりではなく、継続的な見直しが求められます。国内のクレジットカード業界の実務基準である「クレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】」も、リスクベース認証の精度を継続的に高めることを求めています。
リスクベース認証(RBA)の精度向上 自社カード会員取引のリスク度合いを適切に判定するために、データ処理能力の向上や認証精度の分析及びルール設定等の最適化を行い、リスクベース認証の精度向上に継続的に取組むことが求められる。
出典:クレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】|クレジット取引セキュリティ対策協議会(事務局:一般社団法人日本クレジット協会)
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リスクベース認証と多要素認証(MFA)・二段階認証の違い
ここからは、リスクベース認証ともっとも混同されやすい多要素認証(MFA)・二段階認証との違いを整理します。ここを押さえると、自社にどれが向くかの判断がしやすくなります。
違いを一覧で整理
多要素認証(MFA)は、総務省の定義では「知識情報」「所持情報」「生体情報」という認証の3要素のうち2つ以上を組み合わせて認証する方式で、そのうち2要素を使うものを二段階認証(二要素認証)と呼びます。すべての利用者に、原則としてログインのたびに複数の認証を求める点が特徴です。
一方リスクベース認証は、危険度が高いと判断したときにだけ追加認証を求めます。両者は対立するものではなく、リスクベース認証の「追加認証」として多要素認証を用いる、という組み合わせも一般的です。主な違いを次の表にまとめます。
| 観点 | 追加認証のタイミング | 利用者の手間 | 危険度の判定 | 主な狙い |
|---|---|---|---|---|
| リスクベース認証 | あやしいと判定したときだけ | 通常時は増えない | あり(状況を分析して動的に変える) | 利便性を保ちつつ不正を検知 |
| 多要素認証(MFA)・二段階認証 | 原則すべてのログインで毎回 | 毎回、追加の認証操作が必要 | なし(一律に複数要素を要求) | 認証そのものの強度を底上げ |
出典・参考資料(1件)
多要素認証(MFA)そのものの仕組みや、知識・所持・生体という3要素、二段階認証との違いをより詳しく知りたい方は、以下の記事で基礎から解説しています。
また、認証の強さには段階があります。NIST SP 800-63B は認証保証レベル(AAL)を3段階で定義し、単一要素で足りるレベルから、2要素の所持・管理を求めるレベル、公開鍵暗号による鍵の所持証明を求めるレベルへと強度が上がります。リスクベース認証は、この「どの強度を求めるか」を、リスクに応じて動的に選ぶ発想だと捉えると分かりやすいでしょう。
アダプティブ認証・IDaaSとの関係
リスクベース認証は「アダプティブ認証(適応型認証)」と呼ばれることもあります。両者はほぼ同義で、NIST SP 800-63B も「risk-based or adaptive authentication(リスクベースまたはアダプティブ認証)」と並べて記しています。文脈によって、リスクに応じて認証を変えるという同じ考え方を指しています。
また、これらの機能は多くの場合、IDaaS(Identity as a Service:クラウドで提供されるID管理・認証サービス)に標準的に組み込まれています。そのため、リスクベース認証を自社でゼロから作らなくても、こうしたサービスを利用することで導入できるケースが少なくありません。具体的な導入手段は後述します。
IDaaSとは何か、どのようなサービスがあり、どう選べばよいのかを詳しく知りたい方は、以下の記事で主要サービスの比較とあわせて解説しています。
リスクベース認証のメリット・デメリット
ここからは、リスクベース認証を導入する是非を判断するために、メリットと注意すべきデメリットを両面から整理します。
メリット:不正防止と利便性の両立
最大のメリットは、不正アクセス・なりすましを抑えつつ、正規の利用者の手間を増やさない点にあります。不正ログインの被害は依然として大きいのが現状です。
警察庁の統計によると、令和6年(2024年)の不正アクセス行為の認知件数は5,358件でした。このうち不正アクセス後に行われた行為では、インターネットバンキングでの不正送金などが4,342件と最多を占めています。ログインを守る仕組みが、金融をはじめとするサービスで重みを増しています。
情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2025」でも、インターネットサービスへの不正ログインやフィッシングは、個人に関わる脅威として取り上げられています。
こうした被害を、通常時のログイン体験を損なわずに抑えられることが、リスクベース認証の大きな利点です。全員に毎回追加認証を課す方式に比べ、離脱やサポート問い合わせの増加を抑えやすい点も、事業者にとってのメリットになります。
リスクベース認証は不正アクセスへの備えの一つですが、実務では他の対策と組み合わせて多層で守るのが基本です。従業員・管理者がやるべき不正アクセス対策を具体的に押さえたい方は、以下の記事でチェックリスト形式に整理しています。
デメリット・注意点
一方で、導入前に押さえておきたい注意点もあります。
- 誤検知による影響:出張や新しい端末への買い替えなど、正当なアクセスを「あやしい」と判定してしまい、正規の利用者に余計な追加認証を求めてしまう場合があります
- 導入・運用のコスト:アクセス情報を分析する仕組みが必要で、専用のサービス導入や運用体制の整備にコストがかかります
- 追加認証情報を失うと入れない:登録した電話番号が使えない、秘密の質問の答えを忘れたなどの場合、正規の利用者でもログインできなくなることがあります
- 万能ではない:リスクベース認証は不正を検知して確認を強める仕組みであり、すべての不正アクセスを完全に遮断するものではありません。他の対策と組み合わせる前提で考える必要があります
特に誤検知は、利便性というメリットを損なう要因になります。しきい値の設計や、追加認証の代替手段(複数の認証方法を用意しておく)などの運用面の工夫が、導入効果を左右します。
リスクベース認証の活用例
ここからは、リスクベース認証が実際に使われている場面を紹介します。身近な例に当てはめると、仕組みのイメージがつかみやすくなります。
- 海外・出張先からのアクセス:普段と異なる国・地域からのログインで、追加認証を求める。金融機関のログインで広く使われています
- 機種変更・買い替え直後:登録のない新しい端末からのアクセスを検知し、本人確認を挟む
- EC・オンライン決済(3Dセキュア2.0):クレジットカード決済の本人認証であるEMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)で、取引の危険度に応じて追加認証の要否を切り替える
とくにEC・オンライン決済での必要性は高まっています。日本クレジット協会の統計では、2025年(1月〜12月)のクレジットカード不正利用被害額は510.5億円にのぼりました。そのうち番号盗用(盗まれたカード番号を非対面取引で悪用する手口)が475.4億円と、全体の9割超(93.1%)を占めています。
前述のクレジットカード・セキュリティガイドラインも、こうした非対面取引の不正対策としてリスクベース認証の活用を明記しています。
リスクベース認証を導入する方法
ここからは、自社のサービスにリスクベース認証を取り入れるための手段と、選定時に見るべきポイントを整理します。
導入手段と判断のポイント
導入手段は、大きく次の3つに分けられます。
- 自前で開発する:判定ロジックを自社で実装する方法。要件に合わせて細かく作り込める一方、判定の精度向上や運用を自社で担う必要があり、負担は大きくなります
- 認証サービス・IDaaSを導入する:リスクベース認証やアダプティブ認証を標準機能として備えるサービスを使う方法。既存のログイン基盤に後付けしやすく、多くの企業にとって現実的な選択肢です
- 不正検知サービスを組み合わせる:ECサイトの不正注文対策など、決済・取引の不正検知に強いサービスと組み合わせる方法です
このうち本記事の比較表では、リスクベース認証・アダプティブ認証を標準機能として持つ認証サービス・IDaaSを中心に取り上げます。EC・決済の不正注文対策に特化した不正検知サービスは専門分野が異なるため、目的に応じて別途検討するとよいでしょう。
選定時は、既存のID管理基盤や多要素認証との組み合わせやすさ、判定に使えるシグナルの種類、誤検知が起きたときの利用者の逃げ道(代替の認証手段)が用意されているか、そして運用にかかる費用と体制を確認します。自社の利用者層やリスクの特性に合わせて、追加認証をどの場面で発動させるかを設計できる柔軟さも重要です。
あわせて、プライバシーへの配慮も欠かせません。リスクベース認証は判定のためにIPアドレス・位置情報・端末情報・行動履歴といった利用者のデータを収集します。これらは個人に関する情報として扱われる場合があります。プライバシーポリシーで収集・利用目的を明示して必要に応じて同意を得ること、判定に使うデータを必要な範囲に絞ること(データ最小化)に留意しましょう。
海外の利用者を含む場合は、GDPR(EUの一般データ保護規則)やCCPA(米カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、各国のデータ保護法への対応も確認しておくと安心です。
本記事では代表的な数サービスを取り上げますが、認証方式・料金・タイプ別の選び方まで含めて多要素認証(MFA)システム全体を比較検討したい方は、以下の記事で詳しく解説しています。導入を検討される方はぜひこちらもご覧ください。
多要素認証(MFA)システムおすすめ17選を徹底比較|認証方式・料金・タイプ別の選び方
ID とパスワードだけのログインは、もはや「鍵をかけていない」のと同じ状態に近づいています。攻撃者は流出したパスワードのリストを使い回し、本物そっくりの偽サイトで認証情報を抜き取り、正規利用者になりすまして社内システムやクラウドサービスへ侵…
次に、リスクベース認証やアダプティブ認証に対応する代表的なサービスを比較します。いずれも危険度や利用状況に応じて認証を動的に変える機能を備えています。並び順は特定の優劣を示すものではないため、自社の環境や求める保証レベルに合うものをお選びください。
| サービス名 | CloudGate UNO | DZ Security® | Okta | Microsoft Entra ID | Cisco Secure Access by Duo | RSA ID Plus(SecurID) | OneLogin |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社インターナショナルシステムリサーチ | 株式会社AnchorZ | Okta, Inc. | Microsoft Corporation | Cisco Systems | RSA Security | One Identity(旧OneLogin) |
| リスクベース/アダプティブ認証の呼称(公式) | セキュリティプロファイルによる条件付き・コンテキストベースのアクセス制御 (※公式は「リスクベース認証/アダプティブ認証」の語を用いていない) | バックグラウンド認証®(継続認証) | Adaptive MFA(アダプティブ/リスクベース認証) | リスクベース条件付きアクセス(Microsoft Entra ID Protection、P2) | リスクベース認証(Risk-Based Authentication、Advantage以上) | RSA Risk AI(リスクベース認証。E3プラン・アドオンで提供) | SmartFactor Authentication(アダプティブ認証) |
| 判定に使う主なシグナルの例 | 利用環境(社内/社外)・デバイスの状態・役職/業務、端末・場所・時間帯・ブラウザ | 顔・声紋などの生体情報+行動的特徴(使い方の癖・利用場所・利用時間帯) | デバイス・IP/ネットワーク・位置情報(新規IP/新規デバイス/旅行パターン検出)・ユーザー行動・外部リスクシグナル | サインインリスク・ユーザーリスク、場所・デバイス・アプリ・ユーザーなどの条件 | デバイスの健全性やアクセス状況をリアルタイムに評価し、認証要件を動的に調整 | アクセス履歴の統計分析+ルールベース分析からリスクレベルを算出 | 機械学習基盤「Vigilance AI」でログインのリスク・コンテキストを評価 |
| 提供形態 | 国産IDaaS(SSO・MFA統合のクラウド型) | 継続認証(アプリに組み込むSDK/API。国産) | クラウド(IDaaS) | クラウド(IAM/IDaaS) | クラウド(MFA/SaaS。既存VPN・SSOへ後付け) | クラウド/ハイブリッド/オンプレミス(IDaaS) | クラウド(IDaaS。日本は代理店経由) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※呼称・シグナルは各社の公式情報にもとづく整理です。CloudGate UNOは公式が「リスクベース認証/アダプティブ認証」の語を用いておらず、セキュリティプロファイルによる条件付き・コンテキストベースのアクセス制御として記載しています。提供形態は異なるため、料金・最新の機能仕様は各社の公式情報・資料でご確認ください。
リスクベース認証に対応する主なサービス
1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNO(クラウドゲートウノ)は、1993年創業のインターナショナルシステムリサーチが100%自社開発する国産のクラウド型ID管理基盤(IDaaS)です。SSO・多要素認証・アクセス制限・ID管理を1つに束ね、2008年のSSO提供開始、2014年のFIDOアライアンス加盟と、早くから認証技術に取り組んできた実績があります。
「セキュリティプロファイル」機能により、利用者の役職や社内・社外といった利用環境、デバイスの状態に応じて認証方式を動的に切り替えられます。アクセス制限としてIPアドレス・デバイス証明書・国や地域・時間帯・ブラウザなどの条件を細かく設定でき、状況に応じた本人確認の強化を、日本語の手厚いサポートのもとで導入できる点が特徴です。
2. DZ Security®(株式会社AnchorZ)

DZ Security®は、「認証行為そのものをなくす」という発想から生まれた、株式会社AnchorZの本人認証プラットフォームです。核となる特許技術「バックグラウンド認証®」は、ログイン時の一回きりの認証で終わらせず、サービスの利用中ずっと本人確認を続ける継続認証を実現します。
顔や声紋などの生体情報に加え、スマートフォンの持ち方・使い方の癖、利用場所や時間帯といった行動的な特徴を端末内のAIが常時照合し、本人でないと判断すると自動でロックします。判定に使うデータを端末内に保存しサーバーへ送らない設計で、金融機関やオンラインチケットの不正転売防止での導入実績があります。SDKとしてアプリに組み込んで利用します。
継続認証は、あやしいときだけ本人確認を強めるリスクベース認証と「利用状況を捉えて危険なときに反応する」考え方を共有しつつ、その確認をログイン後もずっと続ける点に特徴があります。開発元である株式会社AnchorZの徳山氏は、従来のログイン認証と継続認証との違いを次のように説明します。
ID・パスワードが初めて使われたのは70年ほど前ですが、それ以来ずっと、ユーザーを識別するには使い始める前にIDとパスワードを入力してもらう仕組みでした。パスワードが覚えられないから生体認証にしよう、顔にしよう、指紋にしようと進化してきましたが、いずれも「使い始める前に認証する」ログイン認証である点は変わりません。そして、ログイン認証でセキュリティを高めようとすると、どんどん複雑で分かりにくくなってしまいます。一方で私たちのバックグラウンド認証®は、言い方を変えると継続認証です。使い始めるときには何もチェックをしませんが、アプリやサービスを使い始めてからフォアグランドで動くアプリやサービスの裏でずっと継続した認証を続けます。利用中もずっと本人性を担保し続ける、この点が一番の差別化ポイントです。
3. Okta(Okta, Inc.)

Oktaは、SSO・多要素認証・ID管理を統合したIDaaSの世界的大手で、日本法人や国内の代理店網も整っています。リスクベース認証にあたる機能は「Adaptive MFA(アダプティブMFA)」の名称で提供され、アクセス要求ごとにコンテキストを評価し、リスクに応じて求める認証ステップを動的に変えます。
判定にはデバイスのセキュリティ状態、IPアドレス、位置情報(新規デバイスや旅行パターンの検出)、外部のリスクシグナルなどを用います。7,000を超える事前構築済みのアプリ連携を持ち、フィッシング耐性のあるパスワードレス認証「FastPass」など認証方式も豊富です。Adaptive MFAは上位プランに含まれるため、必要な機能とプランの対応は資料で確認するとよいでしょう。
4. Microsoft Entra ID(Microsoft Corporation)

Microsoft 365やAzureをすでに使っている組織にとって導入しやすいのが、その認証基盤である Microsoft Entra ID(旧 Azure Active Directory)です。追加のMFA製品を入れなくても、既存環境のまま有効化でき、アプリの改修も不要です。
リスク連動の制御は「条件付きアクセス」と、リスクをリアルタイムに評価する「Microsoft Entra ID Protection」が担い、社内・登録済みデバイスは通常どおり、リモートや個人デバイスからは追加検証を求める、といったアダプティブな制御ができます。無償版でも基本的な多要素認証は使え、条件付きアクセスは上位プラン(P1以上)、リスクベースの制御はP2で提供されます。
5. Cisco Secure Access by Duo(Cisco Systems)

既存のVPNやオンプレミスのサーバー、クラウドサービスに後付けで多要素認証を被せられる手軽さが、Cisco Secure Access by Duo の特徴です。新しいID基盤を丸ごと構築しなくても、いまの認証ポイントにMFAを追加できます。
公式に「Risk-Based Authentication(リスクベース認証)」を掲げ、認証要件をリアルタイムに動的調整します。デバイスの正常性(OSやパッチの状態、root化の検出など)をチェックする「デバイストラスト」と組み合わせてアクセス可否を判定できる点も強みです。10ユーザーまで恒久無料のプランがあり、小さく試してから広げやすい構成です。リスクベース認証は上位プランで提供されます。
6. RSA ID Plus(SecurID)(RSA Security)

ハードウェアトークンによるワンタイムパスワード認証を源流とする「SecurID」で知られるRSAは、40年を超える歴史を持つ多要素認証の老舗です。クラウド型の「ID Plus」とオンプレミス型「SecurID」、両者を組み合わせたハイブリッド構成を単一の基盤で運用できます。
リスクベース認証は独自エンジン「RSA Risk AI」が担い、アクセス履歴の統計分析とルールをもとにリスクレベルを算出して、必要に応じて追加認証を求めます。政府・金融・高い保証レベルを求める組織向けという位置づけで、ハードウェアトークンの物理的なフィッシング耐性を強みとします。オンプレミス資産を持つ大企業が段階的にクラウドへ移行する構成にも向きます。
7. OneLogin(One Identity)

OneLoginのリスクベース認証は「SmartFactor Authentication」と呼ばれ、機械学習基盤「Vigilance AI」がログインごとのリスクとコンテキストを評価して、認証要件を動的に調整します。固定的な多要素認証を超えた、状況に応じた保護を掲げています。
SSO・ディレクトリ連携・ユーザープロビジョニングを備えたIDaaSの一部としてMFAを提供し、数千規模の事前統合アプリに対応します。認証方式も、専用アプリのプッシュやFIDO2、YubiKeyやRSA SecurIDなどのサードパーティ認証器まで幅広く扱えます。日本国内では複数の代理店を通じて販売・サポートが提供されています。
まとめ
リスクベース認証は、アクセスの状況から危険度を判定し、あやしいときだけ追加認証を求めることで、セキュリティと利便性を両立させる認証方式です。すべての利用者に毎回複数の認証を課す多要素認証(MFA)とは異なり、通常時の使い勝手を保ったまま不正ログインへの備えを強められます。
導入にあたっては、次のポイントを押さえておくとよいでしょう。
- 誤検知への備え:しきい値の設計と、追加認証の代替手段を用意し、正規の利用者が締め出されない運用にする
- 既存基盤との組み合わせ:多くのIDaaS・認証サービスがリスクベース認証を標準搭載しており、自前開発にこだわらず導入できる
- 他の対策との併用:完全な遮断ではないため、多要素認証や不正検知など他の対策と組み合わせて設計する
自社の利用者層やリスクの特性に合ったサービスを選ぶことが、導入効果を左右します。各サービスの資料を取り寄せ、機能や費用を比較したうえで検討を進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. リスクベース認証とは何ですか?
A. リスクベース認証とは、ログインのたびにアクセス状況(IPアドレス・端末・場所・時間帯など)から危険度を判定し、あやしいと判断したときだけ追加の本人確認を求める認証方式です。普段どおりのアクセスはID・パスワードだけで通すため、利用者の手間を増やさずに不正ログインへの備えを強められます。ほぼ同じ意味で「アダプティブ認証(適応型認証)」と呼ばれることもあります。
Q. リスクベース認証で毎回追加認証が表示されるのはなぜですか?
A. リスクベース認証で毎回追加認証が出る場合、ブラウザのプライベートブラウズ(シークレットモード)やCookieの削除により、本人と確認するための情報が毎回リセットされていることが代表的な原因のひとつです。この状態では「いつもの端末・環境」と判定できず、アクセスのたびに普段と異なるログインとみなされて追加認証が求められやすくなります。
プライベートブラウズをオフにする、普段使う端末・ブラウザでログインするといった対応で、認証の回数を減らせる場合があります。VPNや社内ネットワーク、共有端末の利用など、ほかの要因が重なっていることもあります。
Q. リスクベース認証で海外からログインできないときはどうすればよいですか?
A. 海外からのログインで弾かれる場合は、サービスに登録済みの電話番号やメールアドレス宛の追加認証(SMS認証・ワンタイムパスワードなど)を完了させる必要があります。旅行や出張で普段と異なる場所・端末からアクセスすると、通常と違う環境と判定されて追加認証が求められやすくなるためです。
登録情報が古いと認証コードを受け取れずログインできないため、渡航前に連絡先が最新か確認し、必要なら変更手続きを済ませておくと安心です。
Q. リスクベース認証と多要素認証(MFA)はどちらを導入すべきですか?
A. リスクベース認証と多要素認証(MFA)は、どちらか一方を選ぶものではなく、組み合わせて使うのが基本です。多要素認証で認証そのものの強度を底上げし、その追加認証をリスクベース認証で「あやしいときだけ」発動させれば、安全性と利便性を両立できます。多くのIDaaS・認証サービスは両方の機能を備えているため、片方だけに絞り込む必要はありません。
Q. リスクベース認証の導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
A. リスクベース認証の費用は、提供形態・利用者数・プランによって大きく異なり、一概には示せません。リスクベース認証は多くの場合、認証サービスやIDaaSの上位プランに含まれる機能として提供されます。無料枠や小規模向けプランを持つサービスもあるため、正確な費用は各サービスの資料を取り寄せ、自社の利用者数や必要な機能に照らして見積もることをおすすめします。
Q. 中小規模のWebサービスでもリスクベース認証は導入できますか?
A. リスクベース認証は、中小規模のWebサービスでも導入できます。自前でゼロから開発しなくても、リスクベース認証を標準機能として備えるIDaaS・認証サービスを使えば、既存のログイン基盤に後付けで導入できます。一定ユーザー数まで無料で使えるプランや無償版を提供するサービスもあり、小さく試してから段階的に対象を広げることも可能です。
Q. リスクベース認証を導入すれば不正ログインを完全に防げますか?
A. リスクベース認証だけで、すべての不正アクセスを完全に遮断できるわけではありません。あやしいアクセスを検知して本人確認を強める仕組みであり、判定をすり抜ける攻撃や、正規の認証情報そのものが奪われたケースまでを完全には防げません。多要素認証や不正検知サービスなど他の対策と組み合わせ、多層で守る前提で設計することが重要です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。















