「立替経費」と「立替金」、どちらの言葉で呼び、どの勘定科目で処理するのか、迷ったことはありませんか。従業員が個人カードで新幹線を予約した、取引先との会食を自分の財布で払った——そんな申請が上がってくるたびに、判断の分岐が次々と出てきます。仕入税額控除は誰が受けるのか、領収書が個人名宛でも大丈夫か、電子データで受け取った領収書はどう保存するのか、といった論点が絡み合います。
本記事では、立替経費の定義と類似用語(立替金・仮払金・預り金・小口現金)との違いを1枚の比較表で確定します。その上で、精算フロー・金額入りの仕訳・インボイス制度と立替金精算書・電子帳簿保存法の電子取引データ保存義務・社内規程で決めておくべきことまでを整理します。
実務の型が固まったところで、立替払いそのものを減らすための効率化の選択肢(法人カード・経費精算システム・BPO)にも触れます。立替経費の運用を見直したい方の判断材料としてご活用ください。
目次
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立替経費とは
立替経費とは、本来は会社が負担すべき費用を、従業員が業務のために一時的に自分の資金で支払い、後日会社から精算を受ける経費のことです。出張の新幹線代を個人のクレジットカードで購入した、取引先との会食代を自分の財布から支払った、備品を業務のためにECサイトで買った、といったケースが該当します。
実務で紛らわしいのは、「立替経費」が簿記の正式な勘定科目ではなく、業務現場での呼称にあたるという点です。会計処理で使う勘定科目は、立て替えたのが従業員か取引先かで変わります。この分岐は次章の五者比較表で1枚に整理します。
この呼称の使い分けが曖昧なまま処理を進めると、勘定科目の選択ミスや消費税の仕入税額控除の判断ミスにつながります。次章の五者比較表で、実務呼称としての立替経費と、正式な勘定科目である立替金・仮払金・預り金・小口現金の違いを1枚で押さえます。
立替経費と立替金・仮払金・預り金・小口現金の違い(五者比較表)
立替経費が実務呼称であるのに対し、立替金・仮払金・預り金・小口現金は複式簿記の正式な勘定科目です。誰が誰の費用を負担しているのか、貸借対照表(BS)に載る資産か負債か、どんな場面で使うのか、精算はどう流れるのか、代表的な仕訳の借方・貸方はどうなるのかを、次の表で1枚に整理します。
| 用語 | 誰の費用を誰が負担するか | BS / PL の位置づけ | 典型シーン | 精算の流れ | 代表的な仕訳(借方 / 貸方) |
|---|---|---|---|---|---|
| 立替経費(実務呼称) | 会社が負担すべき費用を従業員がいったん自腹で立替 | 簿記の勘定科目ではない業務現場の呼称。会計処理は下記の未払金や費用直接計上で行う | 出張旅費・接待交際費・少額備品などを社員が個人カードや現金で支払う | 社員が申請書+領収書を提出→上長承認→経理が費用計上→翌月給与などで社員に返金 | 旅費交通費 5,000 / 未払金 5,000 |
| 立替金(勘定科目) | 会社が本来第三者(取引先・従業員個人)が負担すべき費用を先に支払う | BS 資産(一時的な債権) | 取引先が負担すべき経費を当社が先に支払い、後日取引先に請求する。従業員が支払うべき私的費用を会社が仮払いした場合も含む | 会社が支払時に立替金計上→請求書送付→取引先から入金で相殺 | 立替金 10,000 / 現金 10,000(後日)現金 10,000 / 立替金 10,000 |
| 仮払金(勘定科目) | 会社が金額未確定の費用を従業員などに事前に前渡し | BS 資産(一時的な債権) | 出張前に旅費として概算 5万円を先渡しし、帰社後に精算する | 出張前に仮払金計上→出張後に領収書と一緒に精算書提出→過不足を返金・追加支給 | 仮払金 50,000 / 現金 50,000(後日)旅費交通費 47,000・現金 3,000 / 仮払金 50,000 |
| 預り金(勘定科目) | 会社が第三者(従業員・取引先など)から一時的に金銭を預かる | BS 負債(一時的な債務) | 源泉所得税・社会保険料の従業員負担分を給与から控除して国・年金機構に納付するまで会社が預かる | 給与支給時に控除→月末や指定日に国・年金機構へ納付 | 給与 300,000 / 現金 270,000・預り金 30,000 |
| 小口現金(勘定科目) | 会社が少額の経費支払用に手元に置いておく現金 | BS 資産(現金の一部) | 切手・収入印紙・少額備品などを社員が経理カウンターの現金で支払う | 都度出金→残高補充。近年は法人カード・経費精算システム普及で廃止が進む | 通信費 500 / 小口現金 500 |
表の要点を1文で整理すると、立替金は「会社が第三者の分を先に払う」場面、預り金は「会社が第三者から一時的に預かる」場面、仮払金は「金額未確定で先に渡す」場面、小口現金は「経理カウンターの手元現金」で、いずれも BS に載る勘定科目です。立替経費だけが正式な勘定科目ではない実務呼称で、社員立替の場合は「未払金」または費用直接計上で会計処理をします。
立替経費が発生する典型例
立替経費が発生するのは、業務のために従業員が金銭を先に支払い、後で会社に精算してもらうケース全般です。実務では次のような場面が典型的に該当します。
- 出張旅費・交通費: 新幹線・航空券・タクシー代・宿泊費を個人のクレジットカードや現金で支払うケース。ICカードで乗車したものを後で申請する場合も含みます
- 接待交際費: 取引先との会食・手土産などを社員が個人の財布で支払うケース。1件あたりの金額が大きくなりやすいのが特徴です
- 少額備品・消耗品の購入: 業務で必要になった文具・書籍・ソフトウェアなどを社員がECサイトや店舗で購入するケース。宛名を個人にすることが多く、後述の消費税上の扱いに注意が必要です
- 切手・収入印紙: 郵便局・コンビニで購入するケース。日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡と印紙の売渡し場所における印紙の譲渡は非課税取引にあたり(国税庁タックスアンサーNo.6201)、原則として仕入税額控除の対象になりません。金券ショップなどからの購入は非課税の対象外なので区別が必要です
- 慶弔金・お祝い・餞別: 取引先や社員の慶弔対応で社員が現金を持参するケース。祝金、餞別、弔慰金などを支出した場合には、課税仕入れとなりません(国税庁タックスアンサーNo.6463)。仕訳では交際費として計上しますが、消費税上は不課税として扱います
- オンライン購入・サブスクリプション: 業務用のクラウドサービス・AI ツール・スタッフの資格試験受験料などを社員のカードで決済するケース。近年増えており、領収書は電子データ(メール・Webダウンロード)で受け取ることが多く、電子帳簿保存法の対象になります
これらのうち出張旅費・接待交際費・オンライン購入は金額が大きくなりやすく、切手/印紙・慶弔金は消費税上の扱いを間違えやすい項目です。自社の伝票がどれに該当するかを当てはめてから、次章のフロー・仕訳に進みます。
立替経費の精算フロー
ここでは立替経費が発生してから会社が精算するまでの流れを、登場人物(従業員・上長・経理)別に5段階で整理します。企業ごとに書類名や承認ルートは異なりますが、基本の型はほぼ共通です。

①従業員が立替払いを行い領収書を受領する
従業員は業務のために個人の資金(現金・個人カード・電子マネー)で支払いを行い、領収書またはそれに代わる証憑を受け取ります。
宛名は会社名にできるならしてもらうのが安全ですが、コンビニ・ECサイト・タクシーなど宛名が個人名になる場面も多く、その場合の消費税上の扱いは後述の「消費税・インボイスと立替金精算書」の章で扱います。電子データで受け取った領収書は、紙に印刷せず電子のまま保管しておきます(後述の電子帳簿保存法の要件)。
②経費精算書を作成・提出する
従業員は経費精算書(紙・Excel・経費精算システム)に、日付・用途・支払先・金額・勘定科目を記入し、領収書と一緒に提出します。会社が消費税の仕入税額控除を受けるかどうかに直結する情報なので、税抜金額・税込金額の区別、軽減税率の対象か否か、適格請求書(インボイス)としての要件を満たすか、といった点を確認できる書式にしておくのが望ましいです。
③上長が申請内容を確認・承認する
直属の上長が業務関連性と金額の妥当性を確認して承認します。上限額を超える場合や勘定科目の判断が迷う場合は、経理へエスカレーションする社内ルールを決めておくと後段のミスを防げます。私的利用の疑いがある場合の差し戻しルールもここで運用されます。
④経理が仕訳・支払を行う
経理は承認済みの精算書と領収書を照合し、勘定科目に振り分けて仕訳を計上します。支払は月次まとめての給与振込に含める会社もあれば、都度振込で対応する会社もあります。金額入りの具体的な仕訳例は次章で扱います。
⑤証憑を保管する(電子取引データは電子保存)
紙で受け取った領収書は法令で定められた期間(法人は原則7年、欠損金の繰越が絡む事業年度は10年)、原本を保管します(タックスアンサー No.5930「帳簿書類等の保存期間」|国税庁)。メール添付やWebダウンロード・スマートフォン撮影で受領した領収書は、電子帳簿保存法第7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)により、原則として電子データのまま保存する必要があります。
従業員のスマホに一時保存してから会社側で集約する運用も認められる余地があります(電子取引 一問一答 問12)。詳しくは後段の「電子帳簿保存法と立替経費」の章で扱います。
立替経費の仕訳(金額入り・複数パターン)
立替経費の仕訳は、「誰の分を誰が立て替えたか」で使う勘定科目が変わります。ここでは実務で頻出する4パターンを、税抜経理を前提に金額入りで示します。取引先立替の「立替金」勘定と、社員立替の「未払金」の使い分けは、複式簿記の一般ルールに沿った標準的な処理です。
パターン1: 社員立替(会食費 7万円を個人カードで立替、月内精算)
営業担当が取引先との会食代 70,000円(税込 77,000円、うち消費税 7,000円)を個人のクレジットカードで支払い、経費精算書を提出したケース。会食は接待交際費として税抜経理で処理し、精算金は翌月給与と一緒に振込で返金する運用とします。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 精算書提出・費用計上時 | 接待交際費 70,000 仮払消費税等 7,000 | 未払金 77,000 |
| 従業員への支払時 | 未払金 77,000 | 普通預金 77,000 |
本パターンでは「立替金」勘定は使わず、費用計上と同時に未払金で従業員への返金債務を計上します。飲食料品や新聞などの軽減税率対象取引が含まれる場合は、税率ごとに区分して計上する必要があります。
パターン2: 取引先立替(取引先が負担すべき費用を当社が一時的に立替)
取引先の依頼で運送料 10,000円(税込 11,000円)を当社が一時的に立替払いし、後日取引先に請求するケース。取引先分は当社の費用ではないため、費用計上ではなく「立替金」勘定を使います。消費税上も課税仕入れではないため、仮払消費税等は計上しません(税額計算上の扱いは、後述のインボイス制度下では立替金精算書とセットで判断します)。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 取引先分を当社が支払時 | 立替金 11,000 | 普通預金 11,000 |
| 取引先から入金時(請求書送付後) | 普通預金 11,000 | 立替金 11,000 |
取引先立替は、当社の資産(立替金=債権)が増える取引です。パターン1の社員立替と混同すると、費用計上のタイミング・仕入税額控除の可否・BS の資産負債構成が実態と食い違ってしまうので、両者は明確に区別します。
パターン3: 月・年度をまたぐ立替(発生月に費用計上、翌月に未払金決済)
3月末に社員が出張し、旅費 40,000円(税込 44,000円)を個人カードで支払ったが、精算書提出が4月にずれ込み、支払いも翌月給与と一緒になったケース。会計原則としては費用は発生した3月に計上します(発生主義)。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 3月末(発生月・決算月の費用計上) | 旅費交通費 40,000 仮払消費税等 4,000 | 未払金 44,000 |
| 4月(実際の支払時) | 未払金 44,000 | 普通預金 44,000 |
精算書の提出が遅れて未計上のまま決算をまたぐと、費用の期間帰属を誤ります。決算前に「未提出の立替経費がないか」を全社員に確認する運用や、経費精算システムで月次の未提出リマインドを自動化する運用が現実的です。年度またぎ(3月末〜4月)は特にチェック対象になります。
パターン4: 法人カードで立替(従業員個人ではなく法人カードで支払い)
社員に法人ビジネスカードを支給し、業務経費を法人カードで直接支払うケース。厳密にはこれは「従業員による立替」ではなく「会社が直接支払い、カード会社に後日一括支払い」で、立替経費そのものが発生しない構造です。仕訳では「未払金」勘定(またはカード会社ごとの補助科目)で処理します。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 法人カード決済時(利用明細確定時) | 旅費交通費 40,000 仮払消費税等 4,000 | 未払金 44,000 |
| カード会社への一括引落時 | 未払金 44,000 | 普通預金 44,000 |
法人カードで支払うと、従業員による立替そのものが発生しないため、精算業務・給与への上乗せ振込・従業員の一時的な金銭負担がなくなります。後段の「立替経費を効率化する選択肢」で、この法人カード+会計連携のアプローチと、経費精算システム・BPOとの比較を扱います。
消費税・インボイスと立替金精算書
2023年10月に適格請求書等保存方式(インボイス制度)が施行されて以降、立替払いで会社が仕入税額控除を受けるための書類要件は明確に定まりました。ここでは国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(以下「インボイスQ&A」)の該当問を根拠に、実務判断の分岐を整理します。
個人名宛の領収書でも仕入税額控除できるのか
結論から言えば、個人名(従業員名)宛の適格簡易請求書(レシート等)をそのまま受領・保存するだけでは、原則として会社は仕入税額控除ができません。国税庁のインボイスQ&A問94-2は、この従業員立替の類型を名指しで扱っています。

従業員が事業に必要なものとして購入した消耗品等の代金を貴社が負担する場合には、それは貴社が負担すべき費用を従業員から立替払を受けたことになります。
出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問94-2「従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除」(令和6年4月追加)|国税庁
原則として、本来宛名の記載を求められない適格簡易請求書であったとしても、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称として仕入税額控除を行う事業者以外の者の氏名又は名称が記載されている場合には、当該適格簡易請求書をそのまま受領し保存したとしても、これをもって、仕入税額控除を行うことはできません。
しかしながら、当該従業員が貴社に所属していることが明らかとなる名簿や当該名簿の記載事項に係る電磁的記録(以下「従業員名簿等」といいます。)の保存が併せて行われているのであれば、宛名に従業員名が記載された適格簡易請求書と、当該従業員名簿等の保存をもって、貴社は当該消耗品費に係る請求書等の保存要件を満たすこととして、仕入税額控除を行うこととして差し支えありません。
なお、従業員名簿等がなく、立替払を行う者である従業員を特定できない場合には、宛名に従業員名が記載された適格簡易請求書と、従業員が作成した立替金精算書の交付を受け、その保存が必要となります。
従業員立替のケースで会社が仕入税額控除を受けるための実務判断の分岐は、次のとおりです。
- 従業員名簿等(電磁的記録を含む)を保存している場合 → 従業員名宛の適格簡易請求書+従業員名簿等で足りる(立替金精算書は不要)
- 従業員名簿等がなく立替を行った従業員を特定できない場合 → 従業員名宛の適格簡易請求書+従業員が作成した立替金精算書の保存が必要
取引先が当社の代わりに支払を立替えるケース(当社が取引先に精算するケース)は、同じインボイスQ&A問94で扱われています。取引先が発行する立替金精算書と適格請求書の両方を保存すれば、消費税法基本通達11-6-2に基づき当社の仕入税額控除が認められます。
立替金精算書に記載すべき事項
立替金精算書には、会社が課税仕入れの主体であることを示すため、次の項目を記載します。国税庁のインボイスQ&A問94の記載イメージに準じた構成です。
- 立替金精算書の発行日
- 立替金精算書の宛先(会社名)
- 立替払を行った者の氏名(従業員名)または名称(取引先名)
- 実際の支払先(適格請求書発行事業者)・支払日
- 立替対象の内訳(取引内容・金額)
- 税率区分ごとの消費税額と算出方法(軽減税率対象取引がある場合は区分)
- 実際の適格請求書(レシートなど)の写し
従業員立替の場合は経費精算書に上記の情報が含まれる書式にしておくと、実質的に立替金精算書として機能します。経費精算システムを導入すると、これらの記載事項が申請フォームに組み込まれているため、書類の作り込みが不要になります。
インボイス制度後に立替払いで起こりやすい失敗
インボイス制度下で立替払い関連の実務ミスとして頻出するのは、次のようなケースです。
- 従業員名宛のレシートだけを保存して仕入税額控除している: 従業員名簿等または立替金精算書のいずれも保存していないと、上記Q&A問94-2により仕入税額控除は認められません
- 支払先が免税事業者・登録番号なしなのに仕入税額控除している: 立替払いであっても、実際の支払先(Q&A問94の言葉ではC社)が適格請求書発行事業者でなければ、原則として会社は仕入税額控除できません。ただし80%控除等の経過措置は別途適用可能な場合があります
- 取引先立替を費用計上している: 取引先が本来負担すべき費用を当社が立替えた場合は、費用ではなく「立替金」勘定を使う必要があります。費用計上してしまうと課税所得の計算にも影響します
特に従業員数の多い企業では、従業員名簿等を電磁的記録として整備しておくことで、個々の精算書に立替金精算書を添付する運用負荷を大きく減らせます。会社の実務にどちらの方式(従業員名簿等 or 立替金精算書ごと)が向いているかは、規程整備の段階で決めておくのが安全です。
電子帳簿保存法(電帳法)と立替経費——電子取引データの保存義務
従業員がメールや Web からダウンロードで受領した領収書は、電子帳簿保存法上の「電子取引データ」に該当し、原則として電子データのまま保存する必要があります。ここでは条文と国税庁の一問一答を根拠に、立替経費に絡む論点を整理します。
紙の領収書を受け取った場合の保存要件
紙の領収書は、法人税法上の保存義務期間(原則7年、欠損金の繰越が絡む事業年度は10年)にわたり原本を保管します。スキャナ保存(スキャンして電子データ化して原本を破棄する運用)を行うには電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を別途満たす必要があり、単にスキャンして保存するだけでは原本を破棄できません。会社としてスキャナ保存に切り替える場合は、事前に社内規程・システム対応を整備するのが実務的です。
スキャナ保存に本格的に切り替える場合の要件(解像度・カラー画像・タイムスタンプの要否・検索性・入力期間・重要書類/一般書類の区分)は、次の記事で条件別に整理しています。原本廃棄まで踏み込むかを検討する際にご参照ください。
電子データ(メール・Web ダウンロード・スマホ撮影)で受け取った場合の保存要件
電子取引データの保存義務は、電子帳簿保存法第7条に明記されています。
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)|e-Gov 法令検索
ここで言う電子取引には、メール添付のPDF、Webサイトからダウンロードした請求書・領収書、スクリーンショットで取得した領収書、電子請求書・電子領収書サービス、クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリの決済データなどが幅広く該当します(電子取引 一問一答 問4・問5)。
立替経費で頻出する「新幹線をチケットレスで購入したときの領収書PDF」「オンラインで購入したソフトウェアの領収メール」なども、この範囲に含まれます。
立替経費で最も判断に迷うのは、「従業員個人のスマホやパソコンで領収書PDFを受け取った場合、会社の電子取引に該当するのか」という点です。国税庁の電子取引一問一答問12がこのケースを名指しで扱っています。
従業員が支払先から電子データにより領収書を受領する行為についても、その行為が会社の行為として行われる場合には、会社としての電子取引に該当します。そのため、この電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、従業員から集約し、会社として取りまとめて保存し、管理することが望ましいですが、集約するまでの一定の間、従業員のパソコンやスマートフォン等に電子データ自体は保存しておきつつ、検索機能を損なうことがないよう会社としても日付、金額、取引先の検索条件に紐づく形でそうした保存状況にあることを情報として管理しておくことも認められます。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和7年6月 問12「従業員が会社の経費等を立て替えた場合」|国税庁
実務としては、会社側でクラウドストレージや経費精算システムに集約して保存するのが基本形です。集約までの間、従業員のスマホ・パソコンに一時保存する運用も認められる余地はありますが、税務調査の際に日付・金額・取引先で速やかに検索・出力できる体制を整えておく必要があります。
宥恕措置・猶予措置の現状
電子取引データの保存義務は令和4年(2022年)1月から本格施行されましたが、実務対応が間に合わない企業のため、令和5年12月末までの経過期間として「宥恕措置」が設けられていました。令和6年1月以降は宥恕措置が終了し、代わりに「猶予措置」が設けられています。国税庁の一問一答問79がこの到達点を明確に示しています。

令和5年12月31日までに行う電子取引については、令和4年度の税制改正で経過措置として整備された「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行に向けた宥恕措置」を踏まえ、電子データを単に保存しておくか、保存すべき電子データを出力することにより作成した書面(以下「出力書面」といいます。)を保存し、税務調査等の際に提示又は提出(以下「提示等」といいます。)ができるようにしておいていただければ差し支えありません。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和7年6月 問79|国税庁
また、令和6年1月1日以後に行う電子取引については、税務署長が相当の理由があると認め、かつ、保存義務者が税務調査等の際に、税務職員からの求めに応じ、その電子データ及び出力書面の提示等をすることができる場合には、その保存時に満たすべき要件にかかわらず電子データの保存が可能となる措置(猶予措置)が講じられています。
このように、令和5年12月末までに行う電子取引を対象とした宥恕措置では、出力書面のみを保存する方法で対応することが認められていましたが、令和6年1月以降に行う電子取引を対象とした猶予措置では、出力書面のみを保存することで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要がありますので、そのために必要な準備をお願いします。
要点は、令和6年1月以降は出力書面(紙)のみで代替することはできず、電子データ本体の保存が必須という点です。「紙に印刷しておけばよい」という宥恕措置は既に終了しています。立替経費に関わる領収書PDFも同じルールが適用されるため、電子データを削除したり出力書面のみで運用したりせず、電子のまま保存する体制を整えておきます。
社内規程で決めておくべきこと(立替経費規程チェックリスト)
立替経費の運用でトラブルを防ぐには、就業規則や経費精算規程に運用ルールを明文化しておくのが基本です。ここでは規程整備で決めておくべき事項を6項目のチェックリストとしてまとめました。実費弁償として明記しないと給与課税の対象となる場合があるため、判断に迷う場合は所轄税務署への確認をおすすめします。
- 立替期間と精算期限: 立替発生から精算書提出までの期限(例: 発生から◯日以内、月次締めなら翌月◯日まで)、経理側の支払期限(例: 承認から◯営業日以内)を規程に明記します。決算月・年度末は特に前倒しの締めを設けると、費用の期間帰属ミスを防げます
- 上限額の目安と高額立替の切り替え基準: 1回あたりの立替上限額を規程で決め、超過分は仮払金・法人カード・BPO への切り替えなど別ルートを指定します。数十万円規模の宿泊費・出張旅費は個人カードの利用枠を圧迫し、従業員負担が過大になるため、事前手続きに切り替えるのが実務的です
- 対象範囲と私的利用の禁止: どの費目・どんな用途を立替経費として認めるか(業務関連性の要件)、私的利用や業務外の同伴者分は認めないこと、私的併用の疑義があった場合の差し戻しフローを明確にします。曖昧なまま運用すると、経理側の判断負荷が上がり、社員間の不公平感にもつながります
- 月・年度またぎの扱い: 費用は発生月に計上する原則(発生主義)を規程で確認し、月末近くの立替は当月中に処理する運用を徹底します。年度末をまたぐ立替は、決算前に未提出リストを全社確認する体制を作っておくと安全です
- 証憑(領収書)の宛名ルールと電子データ受領時の運用: 領収書の宛名は原則会社名にするが、コンビニ・タクシー・オンライン購入など個人名宛でも受け付ける旨と、その場合の従業員名簿等または立替金精算書の添付ルールを明記します。電子データで受領した領収書は紙で保存せず電子のまま保存する運用を規程に落とし込み、電子帳簿保存法の要件を満たす保存体制(クラウドストレージ・経費精算システムなど)を指定します
- 実費弁償として給与課税を回避するための規程の書き方: 立替経費の精算は、原則として実費弁償にあたり給与課税の対象外です。ただし、規程で「立替経費は業務のために従業員が支払った実費の精算であり、給与ではない」旨を明記し、実際の運用でも定額支給・私的利用と混同しないことが前提になります。日当・出張手当など定額支給部分の税務上の扱いは複雑になりやすく、判断に迷う場合は所轄税務署への確認が確実です
規程を整えてもチェックの現場運用が回らなければ意味がないため、経費精算システムで金額上限・締切・電帳法対応の証憑要件を自動チェックできる状態にしておくと、規程と運用のギャップが埋まります。次章で効率化の選択肢を扱います。
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立替経費を効率化する選択肢(法人カード/経費精算システム/BPO)
ここまで整理してきた立替経費の型は、企業規模や立替頻度によっては手作業でも回りますが、件数が増えると経理・従業員双方の負担が大きくなります。効率化の選択肢は大きく4つあり、それぞれ適するケースと限界が異なります。
手作業+Excel での運用(適するケース/限界)
従業員数が少なく、立替件数も月に数件程度の小規模事業者では、Excel の経費精算書テンプレートと紙の領収書ファイリングでも運用は成立します。初期投資は不要で、既存の会計ソフトへの手入力で十分回ります。
ただし、件数が増える・電子取引データが増える・インボイス制度で立替金精算書の運用が必要になる、といった段階で手作業の限界が顕在化します。電子帳簿保存法の要件(検索機能の担保、令和6年1月以降の猶予措置での電子データ本体保存)を Excel と手動フォルダ管理で厳密に満たすのは負担が大きく、税務調査時の対応にも時間がかかります。
法人カード+会計連携(適するケース/限界)
従業員に法人ビジネスカードを支給し、業務経費を法人カードで支払うと、そもそも「従業員が自分の資金で立て替える」構造がなくなります。前章のパターン4で示したように、仕訳は「未払金/普通預金」で完結し、従業員への振込業務も不要です。カードの利用明細を会計ソフトに自動連携すれば、経理側の入力工数も大幅に減ります。
限界は、カード決済ができない場面(コンビニでの少額購入・慶弔金・現金でしか支払えない取引先)が残ることと、カード発行対象を全従業員に広げる運用管理(利用限度・利用先の統制・退職時のカード回収)を整えておく必要があることです。全社対応するには法人カードとカード運用ルールの整備・審査を通す期間が必要になります。
経費精算システムの導入(適するケース/主な機能)
従業員数が数十名を超え、立替件数が月に数百件規模になる企業では、経費精算システムの導入が有力な選択肢になります。主な機能は次のとおりです。
- スマートフォンからの領収書撮影・AI-OCR(画像認識と AI 補正で領収書のテキストを自動読み取る機能)による日付・金額・取引先の自動読み取り
- 交通系ICカードの読み取り・経路検索連携(乗降駅から自動で運賃計算)
- 適格請求書発行事業者番号の自動照合・軽減税率の自動判定(インボイス対応)
- 電子帳簿保存法対応の証憑保管(検索機能・タイムスタンプ・訂正削除履歴)
- 会計ソフトへの API 自動仕訳・仕訳データの科目自動判定
- ワークフロー(申請・承認・差し戻し)の電子化と、月次締めのリマインド自動化
料金体系は「1ユーザー月額数百円〜」の従量課金型が主流で、規模と機能で選択肢が分かれます。単体で導入するタイプと、会計ソフトのセット製品として提供されるタイプがあり、既に会計ソフトを使っている企業ではセット製品の方が連携面で有利です。
経理業務の BPO(適するケース/限界)
経理担当者を割く余裕がなく、システム導入・運用にも人手が回らない場合は、経理業務のアウトソーシング(BPO)を選択する手もあります。領収書の受領・仕訳・支払処理を専門業者に委託する形で、経費精算システムと BPO を組み合わせて提供するサービスも存在します。
限界は、社内に経理ノウハウが蓄積しにくいこと、月次締めの柔軟性が下がること、機密情報を外部に渡す運用ルールの整備が必要になることです。少人数体制で経理業務の負担軽減を最優先する組織に向きます。
立替経費の負担軽減に寄与する経費精算サービス
ここでは立替経費の負担軽減という観点で読者が具体的に検討しやすいよう、アプローチが異なる3類型の代表サービスを紹介します。汎用的な経費精算システム全般の比較は、後段の関連記事に接続します。
| サービス名 | Bill One 経費 | 弥生経費 Next | マネーフォワード クラウド経費 |
|---|---|---|---|
| 立替払い削減アプローチ | 専用ビジネスカードを全社員に配布し、立替払い自体を発生させない設計 | スマホ撮影・AI科目予測・NFC読み取りで申請〜精算の手作業を電子化 | AI-OCR・2,300以上のサービス連携・法人カード併用で入力と立替の双方を削減 |
| 領収書のAI-OCR/データ化 | ◎OCR+AI+入力オペレーター(Sansan規定条件下で精度99.9%) | ●AI科目予測(スマホ撮影→取引先・勘定科目候補を自動提案) | ●AI-OCR+2,300以上のサービスから明細データ自動取込(2024年2月自社調べ) |
| 交通系IC読み取り | △交通系モバイルアプリからの明細連携のみ(対応カード・方式は要問い合わせ) | ●Suica/PASMO等9種のFeliCa対応、スマホNFC+ブラウザ用ICカードリーダーで読み取り | ●11種(Suica/PASMO/ICOCA等)、スマホNFC+モバイルSuica等のアカウント連携 |
| 電帳法・インボイス対応 | ●適格請求書の自動判定・電帳法対応(公式機能ページ明記) | △電帳法対応チェック機能あり/インボイス単体対応は公式明記なし | ◎JIIMA認証取得(スキャナ保存2017年/電子取引2021年)、適格請求書発行事業者番号の自動読み取り |
| 初期費用・料金体系 | 初期費用・年額とも要問い合わせ(経費精算件数に応じ個別設定) | 初期費用0円/セット版 50,400円/年〜、エキスパートプラン 252,000円/年〜(30名分・税抜) | 初期費用0円/ひとり法人 2,480円/月〜(年払い)、ビジネス 6,480円/月〜+アクティブユーザー従量課金 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
Bill One 経費(Sansan株式会社)

Sansan 株式会社が提供する経費精算サービスで、「立替経費をなくし、月次決算を加速する」を公式コンセプトに掲げています。専用の Bill One ビジネスカードを全社員に配布し、業務経費は原則このカードで支払う設計にすることで、従業員による立替払い自体を発生させない構造にする点が最大の特徴です。カードの利用明細と領収書データを自動で紐づけ、承認・仕訳・保管までオンラインで完結します。
法人カードと領収書のOCR・承認ワークフロー・仕訳・電子帳簿保存法対応の証憑管理を1つのサービス内で一体設計しており、カード決済で立替経費そのものが発生しない前提で全体を組んでいます。これにより、従業員の一時的な金銭負担・給与への上乗せ振込・立替金精算書の運用そのものが不要になります。全社員へのカード配布・与信設定が前提になるため、法人カード運用ルールの整備を並行して進める企業に向きます。
弥生経費 Next(弥生株式会社)

次世代クラウド会計「弥生 Next」シリーズの一環として、弥生株式会社が提供する経費精算サービスです。領収書のスマートフォン撮影と AI による勘定科目予測、交通系IC カードの NFC 読み取り、通勤定期区間の自動控除といった申請者側の負担軽減機能を備え、承認された精算データは弥生会計 Next へ1分間隔で自動連携します。
会計ソフトとセットで運用する前提の設計になっているため、既に弥生会計を利用中の小規模〜中小企業で、立替精算フローをそのまま電子化したい場合に導入が滑らかです。会計セット版と単体プランの両方があり、規模と運用に合わせて選べます。
マネーフォワード クラウド経費(株式会社マネーフォワード)

株式会社マネーフォワードが提供する汎用クラウド経費精算サービスです。
AI-OCR による領収書読み取り、複数の交通系 IC カードの NFC(近距離無線通信)読み取り、コーポレートカード・銀行口座との連携、電帳法対応(JIIMA 認証取得済み)、インボイス制度への対応(適格請求書発行事業者番号の自動読み取り)、会計ソフトへの API 自動仕訳など、立替経費フロー全域を自動化する機能を汎用 SaaS として一通り備えています。
アクティブユーザー課金の料金設計により、立替経費の発生量が月によって変動する組織や、経費申請頻度が従業員間で偏る組織にも料金上の適合が取りやすい点も特徴です。既に他社会計ソフトを利用中でも、API 連携で経費データを取り込む運用が可能です。
実際に導入した企業でどの程度の作業時間削減や差し戻し解消が生じているかは、当サイトのインタビューで具体的な数値とともに語られています。

紙ベースの煩雑な経費精算フローが店舗と本社双方の業務時間を圧迫していて、毎月60店舗中50店舗で申請の差し戻しが発生している企業がいらっしゃいました。しかし、クラウドの導入後は、月初の作業時間が最大60時間から約6時間へ削減されたとのお声をいただいています。電子帳簿保存法への対応とセットで導入していただくことで、紙でのレシート・領収書管理自体が店舗で不要になり、現場と経理担当者の双方で迅速な効果を感じていただいています。
上記の3類型は立替払いへのアプローチが異なる代表例で、他にも用途・料金体系・会計連携の相性で選べる経費精算システムが多数あります。全体を横並びで比較して自社の運用に合うサービスを絞り込みたい方は、以下の記事で主要製品を料金・機能・使いやすさ・導入方法まで詳しく整理しています。
まとめ
立替経費は簿記の正式な勘定科目ではなく、会社が負担すべき費用を従業員が一時的に自分の資金で立て替えることを指す実務呼称です。会計処理では社員立替なら「未払金」(または費用直接計上)、取引先立替なら「立替金」勘定を使い、仮払金・預り金・小口現金とは扱いが異なります。
実務のポイントは次の4点です。
- 金額入りで複数パターン(社員立替/取引先立替/月またぎ/法人カード決済)の仕訳を押さえる
- インボイス制度下では、従業員名宛のレシートに従業員名簿等または立替金精算書を組み合わせて仕入税額控除を受ける
- 電子データで受領した領収書は令和6年1月以降の猶予措置下で電子データ本体を保存する
- 社内規程で立替期間・上限額・対象範囲・電帳法対応・実費弁償の位置づけを明確に決めておく
実務の型が固まったら、次のステップは効率化の選択肢の比較検討です。手作業+Excel で回るのは小規模事業者のみで、従業員数が増えると法人カード・経費精算システム・BPO のいずれかを組み合わせるのが現実的になります。自社の運用に合うサービスを比較する場合は、下記から資料を一括ダウンロードして検討材料にしてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 経費の立替は違法ですか?
A. 経費の立替そのものは違法ではなく、従業員に業務経費を立て替えさせること自体を禁じる法令はありません。ただし、精算が著しく遅れる・上限額の目安がなく高額な立替を求める・返金が定額支給と混同される、といった運用は、労働条件や税務上の観点から問題を生じさせる可能性があります。就業規則や経費精算規程で、立替期間・上限額・実費弁償である旨を明記し、運用上も規程を守ることが実務的な安全策です。
Q. 個人名宛の領収書でも会社の経費として仕入税額控除できますか?
A. 個人名(従業員名)宛の適格簡易請求書をそのまま受領・保存するだけでは、原則として会社は仕入税額控除を行えません。
国税庁のインボイスQ&A問94-2により、会社が仕入税額控除を受けるには、①従業員が自社に所属することを示す従業員名簿等(電磁的記録を含む)を保存する、または②従業員が作成した立替金精算書を領収書と併せて保存する、のいずれかが必要です。実務判断の詳細は本文の消費税・インボイスと立替金精算書を参照してください。
Q. 電子データで受け取った領収書は紙に印刷して保存してもよいですか?
A. 令和6年1月以降に行う電子取引については、出力書面(紙)のみでの保存は認められておらず、電子データ本体の保存が必須です。令和5年12月末で宥恕措置が終了し、現在は「猶予措置」の下でも電子データそのものを保存しておき、税務調査等の際に電子データと出力書面の両方を提示等できる状態にしておく必要があります(国税庁 電子取引一問一答 問79)。
従業員がメール添付やWebダウンロードで受領した領収書PDFも同じ扱いになるため、会社側のクラウドストレージや経費精算システムに集約して保存する運用に切り替えるのが基本形です。
Q. 立替経費の上限額はいくらまでにすべきですか?
A. 法令で一律に定められた上限額はなく、社内規程で会社が独自に決めるのが実務的です。目安としては1回あたり数万円〜10万円程度で線を引き、超過分は仮払金(事前概算払い)や法人カードでの直接決済など別ルートに切り替える運用が現場でよく採られます。上限額の具体的な水準は自社の立替頻度・従業員規模・カード利用の可否によって決まるため、規程整備の段階で経理・総務で協議して決めるのが実務的です。
上限を設けずに高額な立替を認めると、従業員の個人カード枠を圧迫し、心理的負担がハラスメント論点に発展したり、実費弁償の範囲を超えて定額支給・給与課税リスクが生じたりする可能性があるため、規程での明文化が推奨されます。
Q. 立替金と立替経費、仮払金の違いは何ですか?
A. 立替金は「会社が第三者(取引先など)の分を先に支払う」場面で使う勘定科目、仮払金は「金額未確定の費用を従業員などに事前に前渡しする」場面で使う勘定科目、立替経費は「従業員が会社の分をいったん立て替える」場面を指す実務呼称です。
立替金・仮払金はいずれも貸借対照表(BS)の資産に載る正式な勘定科目ですが、立替経費は簿記上の勘定科目ではなく、会計処理では未払金または費用の直接計上で扱います。1枚の表で違いを確認したい場合は本文の五者比較表を参照してください。
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出典・参考資料(8件)
- 出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問94「立替金」(令和6年4月改訂)|国税庁
- 出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問94-2「従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除」(令和6年4月追加)|国税庁
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第7条|e-Gov 法令検索
- 出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和7年6月 問1・問4・問5・問12・問79|国税庁
- 出典:タックスアンサー No.6201「非課税となる取引」|国税庁
- 出典:タックスアンサー No.6463「寄附金や交際費の取扱い」|国税庁
- 参考資料:インボイス制度 通達・Q&A ポータル|国税庁
- 参考資料:電子帳簿保存法一問一答 一覧|国税庁

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















