法人決算と税務申告は税理士に依頼せず自社で完結させる余地が制度上残されています。ただし、会計ソフト本体は決算書までで、法人税申告書(別表)は別ラインの申告製品と組み合わせて自力で作る2段構成が現実的です。
一方で、実態としては約9割の法人が税理士を通じて申告している(詳細と出典は次章)ため、「法的にできるかどうか」と「自社にとって現実的な選択肢か」は別の問いになります。
本記事では、自力可否の自己判定チェックリストを軸に、提出書類の実物名・条文根拠つき期限、決算〜申告の手順、e-Tax/eLTAXの電子申告フロー、素人がハマる落とし穴を扱います。手順は別表番号・記入例まで具体化し、仕上げに本体+別ライン申告製品セットの横比較と年間コスト目安まで、法令条文・国税庁通達・財務省評価書などの出典とともに整理します。詰まったときの頼み先も併せて示します。
目次
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結論:法人決算は法的には自分でできる/ただし約9割の法人は税理士に依頼している
法人税法は、法人に対して確定した決算に基づく申告書の提出を義務づけていますが、その申告書を誰が作成するかまでは指定していません。税理士法により有償の税務代理・書類作成は税理士の独占業務ですが、会社自身が自社の申告書を作成・提出することは制度上認められた行為です。したがって「自分で法人決算を行う」という選択肢は、法令の枠組みの中に存在します。
とはいえ、実態としては税理士関与が9割前後で推移する多数派です。財務省が公表する国税庁実績評価書の参考指標「税理士関与割合」によれば、法人税の関与割合は令和元年度の89.3%から令和5年度の89.8%まで、5年連続で89%台を維持しています。
参考指標2:税理士関与割合(所得税・相続税・法人税)(単位:%)
出典:令和5事務年度国税庁実績評価書 参考指標2 税理士関与割合|財務省
法人税:令和元年度 89.3/2年度 89.4/3年度 89.5/4年度 89.5/5年度 89.8
(注3)「法人税」は、4月決算から翌年3月決算法人について、翌年7月末までに申告書の提出があったものを対象としています。
読み方として大切なのは、「9割が税理士に依頼しているから残り1割にとどめておけ」と決めつけないことです。関与率は結果であって、自社が判定する材料ではありません。自社にとって自力で行うのが妥当かどうかは、売上規模・取引の性質・融資予定・会計ソフトの熟達度などの実務条件で分かれます。次章のチェックリストで、その条件を順に当てはめて判定してください。
自力可否の自己判定チェックリスト
以下の6軸について、自社の状態をYES条件/NO条件に当てはめて確認してください。YES側に全項目寄れば自力で完結できる可能性が高く、NO側が1つでもあれば税理士への相談・部分委託を強くおすすめします。ボーダーの場合は、後述の「落とし穴」節と「詰まったときの頼み先」で補強する使い方が有効です。
| 自力で行きやすいYES条件 | 自力を避けたいNO条件 | その条件で分岐する理由 | |
|---|---|---|---|
| 売上規模 | 年商1,000万円以下または数千万円規模でシンプルな売上構成 | 年商1億円超または急成長中で仕訳量が多い | 売上と取引件数は決算整理と申告書ボリュームに直結し、ミスの累積確率も増える |
| 従業員規模 | 経営者1名〜数名程度(給与計算・年末調整の対象が少ない) | 10名超で給与計算・社会保険・年末調整の負荷が重い | 給与・社会保険・源泉徴収の帳票が増えるほど税務調査での指摘の入口が増える |
| 取引の性質 | 国内取引中心、外貨・仮想通貨・組織再編・グループ通算などの特殊論点なし | 外貨建取引・グループ会社との取引・M&A・組織再編がある | 特殊論点は個別の条文・通達を横断する必要があり、独学の負担と誤処理リスクが高い |
| 融資・出資予定 | 決算後1年以内に金融機関融資や資本政策の予定がない | 融資審査・VC出資・IPO準備が控えている(第三者が決算書を精査する) | 第三者に読まれる決算書は科目分類・注記の妥当性が問われ、専門家関与が心証面でも有利 |
| 消費税ステータス | 基準期間の課税売上高1,000万円以下でインボイス未登録(免税事業者) | 本則課税で複雑な仕入税額控除計算が必要(インボイス登録済みでも基準期間の課税売上高1,000万円以下+簡易課税選択なら自力寄り。ここは白黒ではなく段階判定) | 課税事業者は消費税法第37条ほかの届出期限を守れないと本則課税で強制計算になるなど、実務上の落とし穴が多い |
| 会計ソフトの熟達度 | 月次でBS/PLを自力で読め、決算整理仕訳を検索しながら組める | 会計ソフトの操作は可能だが決算整理・別表の意味が理解できない | 会計ソフトは仕訳の入口を助けるだけで、決算整理と別表の判断は人間に残る(後述の手順・落とし穴を参照) |
消費税ステータスと会計ソフト熟達度は、条文と実装の両方に根拠があります。消費税法第9条第1項は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者(適格請求書発行事業者を除く)について納税義務を免除する規定です。したがって免税事業者であれば消費税申告書は不要ですが、インボイス登録済みの場合は基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者となる点に注意してください。
グレーゾーン(売上5,000万〜1億円、従業員5〜10名など)は、取引の性質と会計ソフト熟達度の他軸で最終判断してください。1軸のNOだけで委託に振り切らず、後述の落とし穴節で自社が該当する論点を確認したうえで踏み出すのが実務的です。
出典・参考資料(1件)
税理士に依頼せず自分でやると何が得られ、何を失うのか
自力判定でボーダー寄りの読者向けに、得られるもの・失うものを対で整理します。追徴パターンの実務詳細は後述の「落とし穴」節で扱うので、ここでは判断軸に絞ります。
得られるもの:費用の削減と自社の会計理解
最も分かりやすいのは、税理士報酬の削減です。税理士報酬の公的統計は取得できる範囲では公表されておらず、事務所・条件によって幅が大きく出るため、複数の事務所の公表料金を並べて比較するのが実務的です。
参考として、大阪CPA(永安栄棟税理士事務所)は「月2万円〜(売上1,000万円以下)」「月2.5万円(売上2,000万円以下)」を公表しています(決算料の扱いは事務所ごとに異なるため、契約前に個別に確認してください)。
税理士報酬の一般的な実務の目安としては、決算料が別途10〜30万円必要になる契約形態もあり、月次顧問なら年間30〜60万円、決算のみのスポット契約なら年間10万円台後半〜30万円台が中心です。
自力2段構成の年間費用は、会計ソフト(弥生会計 Next エントリー年34,800円/freee会計 ひとり法人約3.6万円/マネーフォワード クラウド会計 ひとり法人約3万円)+別ライン申告製品(freeeは自社の「freee申告」年29,800円〜、弥生・マネーフォワードは本体で別表を作成できず外部のNTTデータ「法人税の達人」等で年7万円台〜が目安)が中心です。
これに電子証明書等の実費が加わります。法人本体の電子証明書(商業登記の電子認証局)を取得する場合の目安は数千〜1万円ですが、マイクロ法人・ひとり社長は代表者のマイナンバーカードで足りるケースが多く、その場合は交付手数料は原則無料です。合算すると、初年度でも年間6万〜15万円台が目安です。
去年スポット税理士に20万円を支払っていた読者が自力2段構成に切り替えた場合、年間5万円〜14万円の削減余地があります。ただし後述の時間コストと落とし穴の把握が前提で、追徴になれば節約分を上回るコストになる点は事前に頭に入れておく必要があります。
金額の直接効果に加えて、自社の会計を自分で処理することで、月次のキャッシュフローと勘定科目の意味を経営者自身が理解できるようになります。銀行融資の面談や資金繰り判断で「この項目は何を含むか」を即答できる状態は、外部委託では代替しにくい経営基盤です。
失うもの:時間・税務判断の負荷・追徴リスクの入り口
まず、時間コストが確実に発生します。マイクロ法人・仕訳量数百件・免税事業者の初年度目安が20〜40時間、課税事業者(簡易課税)で+10〜20時間、本則課税や仕訳量数千件で+30時間以上が中心値です。2年目以降は半分程度に圧縮できますが、事業本来の業務を止めて集中できる期間を確保できるか事前に見積もっておく必要があります。
次に、税務判断の負荷です。役員給与の定期同額給与、交際費の除外基準、少額減価償却資産の特例、簡易課税選択届の提出期限など、後述の落とし穴節で扱う論点は、条文と通達を横断して初めて正しく処理できます。
誤った処理は追徴課税・加算税・延滞税の入り口となり、削減した税理士報酬を上回るコストになる可能性があります。ボーダー判定で自力を選ぶ場合は、落とし穴節の実務パターンをすべて把握したうえで踏み出してください。
決算・申告で提出する書類の一覧(実物名で網羅)
提出書類は税目ごとに提出先も期限も分かれます。以下は法人税・消費税・地方税の主要書類を実物名で網羅した一覧で、会計ソフトが自動で作れるものと自分で計算するものも列に分けています。
| 貸借対照表(決算書一式1/4) | 損益計算書(決算書一式2/4) | 株主資本等変動計算書(決算書一式3/4) | 個別注記表(決算書一式4/4) | 法人税申告書 別表1(各事業年度の所得に係る申告書) | 別表4(所得の金額の計算に関する明細書) | 別表5(1)(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書) | 別表5(2)(租税公課の納付状況等に関する明細書) | 別表15(交際費等の損金算入に関する明細書) | 事業概況説明書 | 勘定科目内訳明細書 | 消費税及び地方消費税の確定申告書 | 法人道府県民税・事業税の申告書(第六号様式) | 法人市町村民税の申告書(第二十号様式) | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提出先 | 税務署(法人税申告書の添付書類として) | 税務署(法人税申告書の添付書類として) | 税務署(法人税申告書の添付書類として) | 税務署(法人税申告書の添付書類として) | 税務署 | 税務署 | 税務署 | 税務署 | 税務署 | 税務署 | 税務署 | 税務署 | 都道府県税事務所 | 市町村(東京23区所在の法人は東京都に一本化のため不要) |
| 期限 | 事業年度終了の日の翌日から2月以内 | 事業年度終了の日の翌日から2月以内 | 事業年度終了の日の翌日から2月以内 | 事業年度終了の日の翌日から2月以内 | 同上(法人税法第74条第1項) | 同上 | 同上 | 同上 | 同上 | 同上 | 同上 | 課税期間の末日の翌日から2月以内(消費税法第45条) | 法人税の申告期限に連動(地方税法第53条)/均等割は赤字でも発生:東京都特別区で資本金1,000万円以下×従業員50人以下は年7万円 | 法人税の申告期限に連動(地方税法第321条の8) |
| 作成元 | 会計ソフト自動(決算書出力機能) | 会計ソフト自動(決算書出力機能) | 会計ソフト自動(決算書出力機能) | 会計ソフト自動(記載内容は自社で最終確認) | 会計ソフトの申告機能または申告書作成ソフトで作成 | 会計ソフトのPL数値を基に、加算・減算項目を自分で判定して記入 | 別表4の結果を反映して自分で整合を取る | 会計データの租税公課勘定から自分で組み立て | 交際費勘定の内訳を自分で集計 | 会社の事業内容・株主・従業員数などを自分で記入 | 会計ソフトの科目残高を基に、内訳を自分で入力 | 会計ソフトの消費税集計機能を基に自分で確認 | 法人税額を基に自分で計算・記入(eLTAXでの作成推奨) | 法人税額を基に自分で計算・記入(eLTAXでの作成推奨) |
期限の根拠は法人税法第74条第1項に「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない」と規定されています。
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
出典:法人税法 第74条第1項|e-Gov 法令検索
期限の延長についても補足します。定款で定時株主総会が事業年度終了後3月以内に招集されない常況にある場合、法人税法第75条の2第1項により所轄税務署長への申請で原則1月の延長が可能です。
会計監査人設置法人で、かつ定時総会が3月以内に招集されない常況の場合は最長4月まで指定されますが、多くのマイクロ法人・ひとり社長は会計監査人がおらず、この特例には該当しません。原則の1月延長で理解しておけば実務上は足ります。
出典・参考資料(4件)
決算〜税務申告の手順(会計ソフト画面・別表番号まで具体化)
ここからは、会計ソフトのどの画面を触り、どの別表を作成するかを、ステップ番号順に降ろします。電子送信・納税は次章(e-Tax/eLTAXの電子申告手順)で独立して扱うため、本章は帳簿締めから申告書作成までを担当します。
ステップ1:期末残高の確定と決算整理仕訳
会計ソフトの「仕訳帳」または「振替伝票」画面で、期末日付の決算整理仕訳を入力していきます。作業の順番の目安は、まず棚卸資産の期末残高を計上し、次に減価償却費を計上、続いて前払費用・未払費用の期ズレを調整し、最後に該当があれば引当金を設定する流れです。マイクロ法人では貸倒引当金が不要なケースが多く、減価償却費は国税庁「耐用年数の適用等に関する取扱通達」を解釈の基準に計算します。
入力が終わったら、「試算表」または「決算報告書」画面で貸借対照表・損益計算書の残高を確認します。ここで違和感がある勘定科目は、期中の入力ミスの可能性が高いので、月次に遡って修正してください。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:耐用年数の適用等に関する取扱通達|国税庁
ステップ2:決算書の作成(BS・PL・株主資本等変動計算書・注記表)
会計ソフトの「決算書出力」機能で、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表の4点セットをPDFまたは電子申告用ファイルとして出力します。株主資本等変動計算書は、資本金・利益剰余金・自己株式などの期首から期末までの動きをまとめた書類で、注記表は継続企業の前提や重要な会計方針を記載する書類です。会計ソフトが自動生成しますが、注記の記載内容は自社で確認して過不足を調整します。
ステップ3:法人税申告書の作成(別表4・5(1)・5(2)の記入イメージ)
申告書は税務署からの用紙、または会計ソフトの申告機能・国税庁のe-Taxソフト(無料)で作成できます。作成の入り口は別表4(所得の金額の計算に関する明細書)で、損益計算書の当期純利益から出発し、加算項目(損金不算入となる交際費・役員給与・引当金繰入など)と減算項目(益金不算入となる受取配当金など)を積み上げて、課税所得を算出します。
マイクロ法人サイズの記入例(別表4のイメージ)は次のとおりです。
- 当期純利益(PLから):500万円
- 加算:交際費損金不算入額 +50万円
- 加算:損金経理をした納税充当金 +20万円
- 減算:受取配当金益金不算入額 −5万円
- 課税所得(別表4末尾):565万円
- 別表5(1)期末利益積立金額:期首利益積立金額+別表4留保欄の増減を積み上げて記入
別表5(1)(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)は、別表4のうち翌期以降に繰り越す留保欄を記録し、別表4との整合が申告書の基本チェック項目となります。別表5(2)(租税公課の納付状況等に関する明細書)は、期中に発生・納付した法人税・住民税・事業税・源泉所得税の動きを税目別に管理する明細書で、決算整理と連動して記入します。
これらの別表の記入例は、国税庁「法人税のあらましと申告の手引」にPDFで詳しい解説が掲載されています。初めて自力で申告書を作る場合は、当該手引きの「別表作成の留意点」と「適用者別の記載例」をダウンロードして、自社の申告書と対照しながら進めてください。
出典・参考資料(1件)
ステップ4:消費税申告書・地方税申告書(第六号・第二十号様式)の作成
消費税の課税事業者は、会計ソフトの「消費税集計」画面で本則課税または簡易課税の別に応じた集計を行い、消費税及び地方消費税の確定申告書を作成します。免税事業者は本ステップは不要ですが、インボイス登録済みの場合は課税事業者となるため対象となります。
地方税は、都道府県税事務所への法人道府県民税・事業税(第六号様式)と、市町村への法人市町村民税(第二十号様式)を作成します。地方税法第53条第1項および第321条の8第1項により、いずれも法人税の申告期限までに提出する必要があるため、法人税と同じ2月以内の期限で並行して仕上げます。
提出先の分岐(東京23区所在は東京都に一本化のため第二十号様式が不要)は書類一覧を参照してください。地方税の計算・作成はeLTAXの「PCdesk」で行うのが最も効率的で、電子申告と一体で処理できます。
e-Tax/eLTAXの電子申告手順
電子申告は資本金1億円超などの大法人には義務化されていますが、それ以外の法人(本記事の想定読者を含む)は任意選択です。義務対象の範囲は法人税法第75条の4第2項と国税庁の公式解説で明示されています。
2.対象法人の範囲
出典:大法人の電子申告の義務化について|国税庁 e-Tax
(1)法人税及び地方法人税
① 内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額(以下「資本金の額等」といいます。)が1億円を超える法人
② 通算法人、相互会社、投資法人及び特定目的会社
資本金1億円以下の法人は義務対象外ですが、電子申告は紙提出より処理が速く、控えの管理も電子データで一元化できるため、任意選択でもe-Taxを使うメリットは大きいです。手順は次の流れです。
- 利用者識別番号を取得:e-Taxホームページの「開始届出書(法人用)」をオンライン提出すれば即時発行、または税務署窓口で発行できます
- 電子証明書を準備:マイクロ法人・ひとり社長は代表者のマイナンバーカードで足りるケースが多いです(法人本体の電子証明書=商業登記の電子認証局は別途取得コストが発生)
- e-Taxソフト(無料)または会計ソフトの申告機能で申告書データを作成し、XMLで出力します
- 電子署名を付与して送信:マイナンバーカードは対応ICカードリーダー、またはスマホ読取(マイナポータル連携)で読み込みます
- 「受信通知(メッセージボックス)」で受付状態と受付日時を確認し、PDFで7年間保存します(帳簿書類の保存年限に合わせる場合は10年)
地方税(第六号・第二十号様式)は、国税とは別に地方税ポータルシステム「eLTAX」を利用します。eLTAXの「PCdesk」ではまず利用者IDを発行し、次に提出先(都道府県・市町村)を追加登録、続いて電子証明書を登録する順で初期設定を進めます。国税と地方税でログイン基盤が分かれる点だけ初回の準備で戸惑いやすいので、両方を並行して立ち上げるのが実務上の定石です。
出典・参考資料(2件)
素人がハマる落とし穴(症状→原因→回避策)
自力で決算を組む際に、追徴課税や損金不算入につながりやすい代表的な7論点を、症状(どういう申告になるか)・原因(該当条文)・回避策(実務での見分け方)の3点で整理します。
| 役員報酬の期中変更(定期同額給与) | 交際費の1人あたり基準(飲食費除外) | 少額減価償却資産の特例(30万円未満) | 繰越欠損金の別表7添付漏れ | 消費税の簡易課税選択届の提出期限 | 期ズレ(前払費用・未払費用の計上漏れ) | 棚卸資産の評価損計上 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 症状 | 改定タイミング(決算月確定後3月以内)を外すと、増額分または全額が損金不算入。マイクロ法人でありがちなのは、期中に業績が上振れて「せっかくだから月10万円上げよう」で12ヶ月分120万円まるごと否認され、実効税率換算で数十万円の追加負担 | 本来交際費に含めなくてよい飲食費を交際費として集計し、定額控除限度額を超えて損金不算入が発生 | 特例を知らずに固定資産計上して耐用年数で償却し、初年度の損金算入額が小さくなる | 過去の欠損金を繰り越せず、当期に多額の課税所得が計上される | 簡易課税を選ぼうとしていたが期限を過ぎて本則課税で強制計算になり、税負担が増える | 翌期の費用を当期に、当期の費用を翌期に計上してしまい税務調査で否認 | 陳腐化・破損した在庫の評価損を計上したが税務調査で否認され追徴 |
| 原因(該当条文) | 法人税法第34条第1項(定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも該当しないものは損金不算入) | 租税特別措置法第61条の4/中小企業庁「交際費課税の特例」(令和6年4月1日以後の支出から、1人あたり10,000円以下の飲食費は交際費から除外) | 租税特別措置法第67条の5第1項(30万円未満・年間合計300万円まで、令和8年3月31日までに取得したものが対象) | 法人税法第57条第1項(青色申告法人は10年間繰越可能。中小法人は所得の100%まで控除可能) | 消費税法第37条第1項(適用したい課税期間の開始日の前日までに届出が必要) | 法人税法第22条第3項(当期に係る費用・損失の額は当期の損金) | 法人税法第33条第2項(評価損は物理的損傷・著しい陳腐化など限定的事由のみ損金算入) |
| 回避策 | 決算月の翌月から3月以内に一度だけ改定。それ以外の期中改定は臨時改定事由(役職変更等)・業績悪化改定事由(業績著しく悪化)に限定される(法人税法施行令第69条)。改定不可の場合は当期は現状維持で走り、次期の3月以内改定に回すのが安全 | 参加者氏名・関係・人数・日付・店名・金額を書類保存する。1人あたり10,000円を1円でも超えると全額が交際費扱いになる点に注意 | 取得価額30万円未満の資産は事業供用年度で全額損金経理して申告書に明細を添付。年間300万円の枠管理も忘れない | 別表7(1)を毎期継続して添付する。青色申告の承認を失うと繰越欠損金を使えなくなるため、青色申告書は期限内に必ず提出 | 適用課税期間の前の課税期間中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する。決算後に気づいても遡及適用は不可 | 決算整理仕訳で前払費用・未払費用・前受収益・未収収益を洗い出す。長期前払費用(1年超)と短期の区分も忘れない | 評価損計上には具体的事由と証拠(写真・保管状況等)を残す。単なる時価下落では損金算入不可 |
特に注意が必要なのが交際費の1人あたり基準です。令和6年度税制改正で、社外の人との飲食費の除外基準が5,000円から10,000円へ引き上げられ、令和6年4月1日以後の支出から適用されています。旧基準の5,000円で書かれた解説を参考にすると本来除外できる飲食費を交際費に含めてしまい、定額控除限度額(中小法人は年800万円)超過分が損金不算入となる誤処理につながります。
交際費等から除外される飲食費の基準 社外の人との飲食等で1人当たり1万円以下の飲食費は交際費等の範囲から除かれています。令和6年度税制改正において、5000円から1万円に引き上げ。ただし、飲食等のあった年月日、参加した者等の氏名・名称や関係、参加した者の数、飲食等に要した費用の額、飲食店の名前と所在地、その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項を記載した書類を保存する必要があります。
出典:交際費課税の特例|中小企業庁
出典・参考資料(3件)
帳簿・書類の保存年限も併せて押さえておきましょう。会社法第432条第2項および第435条第4項により、会計帳簿および計算書類は10年間の保存が義務です。法人税法施行規則第59条第1項では青色申告法人の帳簿書類は原則7年間ですが、繰越欠損金の繰越期間が10年になった実務では、税務上も10年保存に合わせておくのが安全です。
出典・参考資料(2件)
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「申告書まで」自分で作れる会計ソフトはどれか(横比較)
ここまでの手順を踏んで自力で完結させる読者向けに、日々の記帳から決算書、そして法人税申告書までをどこまでカバーできるかを横並びで確認します。3組のうちfreeeだけが本体+自社別ラインの申告製品(freee申告)で完結し、弥生・マネーフォワードは本体で別表を作成できず、公式にはNTTデータの外部税務申告ソフト「法人税の達人」等へ連携する運用が案内されています。
| セット名 | freee会計 + freee申告(自社の別ライン製品) | 弥生会計 Next + 法人税の達人(NTTデータの外部税務ソフト) | マネーフォワード クラウド会計 + 法人税の達人(NTTデータの外部税務ソフト) |
|---|---|---|---|
| 本体で作れる範囲 | 決算書一式を自動作成/記帳・請求・給与・電子帳簿保存法対応まで統合 | 決算書一式(BS・PL・株主資本等変動計算書・個別注記表)/記帳・請求・経費・証憑を統合 | 決算書一式を自動作成/2,300以上の金融関連サービス連携・AI仕訳提案・AI-OCR |
| 別表を作る手段 | 自社別ラインの「freee申告」で別表1・4・5(1)・5(2)・7・15等を会計データ連携で作成 | 本体では別表を作成できず、弥生公式はNTTデータ「法人税の達人」への達人連動コンポーネント(無償配布)経由でのエクスポートを案内。達人側で別表1・4・5(1)・5(2)・7・15等を作成 | 本体では別表を作成できず、マネーフォワード クラウド会計サポートはNTTデータ「法人税の達人」への中間ファイル出力による連携を案内。達人側で別表1・4・5(1)・5(2)・7・15等を作成 |
| セット合算年額(実額) | 本体ひとり法人 年払い月額2,980円〜/「freee申告」は法人プランで年29,800円〜(スタータープラン、税抜。スタンダードは年48,800円)/合算 年換算約65,000円〜 | 本体エントリー年34,800円(税抜)+「法人税の達人」年7万円台〜(達人連動コンポーネントは無償配布、価格はNTTデータ公式で最新確認)/合算 年換算約110,000円〜 | 本体ひとり法人 年払い月額換算2,480円(税抜、年約29,760円)+「法人税の達人」年7万円台〜(価格はNTTデータ公式で最新確認)/合算 年換算約100,000円〜 |
| 電子申告連携 | 「freee申告」で電子申告データを作成し、e-Tax/eLTAXへ送信 | 「法人税の達人」で電子申告データを作成し、e-Tax/eLTAXへ送信 | 「法人税の達人」で電子申告データを作成し、e-Tax/eLTAXへ送信(顧問税理士連携も選択可) |
| サポート範囲 | チャット・メール(アドバンス以上で電話サポート+専任サポートメンバー) | 本体はWebFAQ・チャット・メール・電話(電話サポート・仕訳相談はベーシックプラス以上) | 本体はプラン別のチャット・メール(対応時間の具体は要問い合わせ) |
別ライン申告製品の料金は改定が頻繁なため、契約前に公式ページ(freeeは「freee申告」の公式ページ、弥生・マネーフォワードはNTTデータ「法人税の達人」の公式ページ)で最新の実額を確認してください。(参考)自力で完結しない場合の受け皿として、記帳〜決算〜申告までを代行するサービス(Tenbook等)は下記「迷ったら/詰まったら」節を参照してください。
本記事では本体+別ライン申告製品で自力完結できる主要な3セットを取り上げていますが、法人向けクラウド会計ソフトはこの他にも複数あります。規模やタイプ別の選び方を含めて全体を比較検討したい場合は、以下の記事も参考にしてください。
1. 弥生会計 Next(弥生株式会社)

弥生株式会社が2025年4月8日に正式リリースした法人向けクラウド会計サービスで、前身の「弥生会計 オンライン」を発展的に置き換えた後継製品です。会計(帳簿・決算書作成)に加え、見積・請求書発行、経費精算、証憑管理を1つのサービスに統合し、これらのデータが自動で会計処理に流れる設計を採用しています。
料金は年契約でエントリー34,800円/ベーシック50,400円/ベーシックプラス84,000円の3プランで、初期費用は0円、最大3か月の無料体験(1事業者1回まで)が用意されています。銀行・クレジット明細の自動取得はAI仕訳提案付きで、勘定科目候補を提示しながら記帳を進められます。
決算書作成までを標準機能で行い、法人税申告書(別表)は本体では作成できません。弥生公式は「弥生会計は法人税の申告書(別表)の作成はできません」と明記し、代替としてNTTデータ「法人税の達人」への達人連動コンポーネント(無償配布)経由でのエクスポートや、会計事務所での作成を想定した運用を案内しています。
個人事業主は「やよいの青色申告 オンライン」など別製品が対象で、弥生会計 Nextは法人契約に絞られています。既存の弥生ユーザーがクラウド移行する際のデータ移行にも対応しているのが実務上の乗り換えやすさです。
2. freee会計(フリー株式会社)

1,000超の外部サービス(銀行・クレジット・電子マネー・POSレジ・人事労務システムなど)と連携し、明細の自動取得から仕訳の自動反映、決算書作成までを1つのクラウドで完結できる統合型クラウド会計SaaSです。運営はフリー株式会社(東証グロース上場)で、有料課金ユーザー企業数62万(2025年3月末時点、個人事業主含む)の実績を持ちます。
法人向けは、ひとり法人(年払い月額2,980円〜、記帳特化)/スターター(同5,480円〜、新設法人向け)/スタンダード(同8,980円〜)/アドバンス(同39,780円〜)/エンタープライズ(要問い合わせ、IPO準備・上場企業向け)の5プラン構成で、いずれも税抜表示・初期費用0円・30日間の無料体験付きです。
スターター以上は基本料金に加えて従量課金(メンバー数・利用機能による加算)が別途発生します。
法人税申告書(別表)作成は、freee会計本体ではなく別ラインの「freee申告」で対応する構成で、会計データと申告書の継ぎ目のないデータ連携を打ち出しています。電子帳簿保存法はJIIMA認証(電帳法スキャナ保存・電子取引ソフト法的要件認証)を取得済みで、インボイス制度対応の請求書発行機能も標準搭載です。
3. マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)

AIによる勘定科目提案とAI-OCRを核に、2,300以上の金融関連サービスとデータ連携する法人向けクラウド会計ソフトです。提供元は株式会社マネーフォワード(東証プライム上場)で、ひとり法人・中小企業(想定50名以下)を主対象に、複式簿記の帳簿類(仕訳帳・総勘定元帳・試算表)と決算書作成を1つの基盤で行えます。
料金は2025年6月改定後の3プラン構成で、ひとり法人が月額3,980円(年払い月額換算2,480円、仕訳500件/年まで)、スモールビジネスが月額5,980円(年払い4,480円、3名まで)、ビジネスが月額7,980円(年払い6,480円、4名以上は1名月300円の従量課金)です。初期費用は0円で、1か月の無料トライアルはクレジットカード登録不要で開始できます。
法人税申告書(別表)の作成は、マネーフォワード クラウド会計本体では行えません。マネーフォワード クラウド会計サポートは「現在、マネーフォワード クラウド会計では法人税の申告には対応しておりません」と明記し、NTTデータ「法人税の達人」への中間ファイル出力による連携や、顧問税理士連携での対応を案内しています。
マネーフォワード クラウドシリーズの請求書・経費・給与・勤怠・年末調整などとは同一基盤で連携できるため、バックオフィス全体を1社に集約したい読者に向きます。
弥生・freee・マネーフォワードいずれも本体は決算書までで、法人税申告書(別表)は別ラインの申告ソフトや税理士連携で作成する構成でした。会計ソフト側で申告書までは自動で作れないため、対応別表・会計ソフト連携・料金の観点で申告ソフト側を比較したい場合は、以下の記事に整理しています。
迷ったら/詰まったら|自力で完結しない場合の頼み先
自己判定でNOやボーダーが出た場合、または自力で進めていて途中で詰まった場合の受け皿を、受付範囲と費用感の目安とともに整理します。自力判定と手順の全体像を踏まえたうえで、条件に合う受け皿を選ぶ材料としてご活用ください。
- 税務署の税務相談(無料):国税局電話相談センターは、税目・論点別に匿名でも回答してもらえる公式窓口で、費用は電話代のみです。「別表4のこの欄の考え方」など個別論点の確認に向きます。個別具体的な計算指導は行わない範囲がある点は前提としてください
- スポット税理士(決算だけ・単発):決算・申告書作成だけを単発で依頼する形態で、事務所によって10万円台後半〜30万円台まで幅があります。継続顧問契約ではないため、月次記帳は自社で行い、決算チェックと申告書作成のみを外部化する運用に向きます
- 経理代行・記帳代行サービス:Tenbookのような会計サービス型を含む、月次記帳から決算・申告まで一括委託する選択肢です。マイクロ法人〜中小企業帯で月額数万円〜十数万円の水準が中心で、継続的な業務安定化を狙う場合に有効です
- 会計ソフト各社のサポート:弥生・freee・マネーフォワードなど各社のチャット・電話サポートは、ソフト操作の質問に加え、上位プランでは仕訳相談まで対応する場合があります。ソフトの操作面で詰まった際の一次対応先です
- e-Taxヘルプデスク:電子申告そのものの操作(利用者識別番号取得・電子署名・送信エラー・受信通知の確認)は、国税庁のe-Taxヘルプデスクに問い合わせるのが確実です。作業当日に送信で詰まった場合の緊急対応先として控えておいてください
経理代行・記帳代行は、事務所ごとに委託できる業務範囲(月次記帳のみ/決算・申告まで/給与や年末調整も含むか)と料金体系が大きく異なります。委託先の候補を広く比較して自社の負荷分担を決めたい場合は、以下の記事でタイプ別の選び方と料金相場をまとめています。
継続委託の受け皿の一例:Tenbook(テンブック/シンアカウンティングサービス株式会社)

公認会計士・税理士が代表を務めるシンアカウンティングサービス株式会社が、記帳代行・月次処理・決算・法人税申告までの人的サポートをワンストップで提供する会計アウトソーシング型サービスです。自社開発のクラウド会計ソフト「10book」を軸に、決算書・法人税申告書までを同一の専門チームが一貫して仕上げます。会計サービス契約者には10bookソフトを無料提供します。
料金は免税事業者向けが月額29,500円(月額24,000円+相談料5,500円、売上1,000万円以下が目安)、課税事業者向けが月額43,500円(月額36,000円+相談料7,500円、売上5億円以下が目安)で、決算料は不要と明示されています。対応税目は法人税(グループ通算制度・組織再編税制・国際税務を除く)・所得税・消費税に限られ、相続税・贈与税は対象外です。
自力可否判定で「NO」または「ボーダー」と判断した読者に向けた、決算・申告まで含めた継続委託の受け皿となります。経理担当者の採用が難しい新設法人・経理リソース不足のマイクロ法人が、経理フローの構築から申告書作成までを外部化しつつ、10bookソフトで自社側でも取引状況をリアルタイムに確認できる運用が実務的です。
自己判定で「NO」や「ボーダー」に振れる場合、代行側にはどのような相談が寄せられるのでしょうか。シンアカウンティングサービス代表取締役の上田氏は次のように語っています。
分かりやすいのは、経理リソースが不足している企業です。特に新設法人だと、経理に時間も人も割けないですし、経理フローを構築する知識や経験も不足しがちです。
それと、経理担当者の退職などで業務が不安定になるケースもよくあります。属人的なフローになっていると引き継ぎが大変ですし、退職に伴って経理が回らなくなるリスクが出てきます。そこを専門家に任せることで、経理業務の安定性を提供したいと考えています。
まとめ
法人決算・税務申告は制度上、税理士に依頼せず会社自身で行えます。本記事では、自力可否を判定する6軸のチェックリスト、提出書類の実物名と条文根拠つき期限、決算〜電子申告までの手順、7つの落とし穴、本体+別ライン申告製品セットの横比較と年間コスト目安を出典付きで整理してきました。
自力で完結させる読者は、会計ソフト(弥生会計 Next・freee会計・マネーフォワード クラウド会計)+別ラインの申告製品(freeeは自社の「freee申告」、弥生・マネーフォワードは外部のNTTデータ「法人税の達人」等)の2段構成で申告書まで作成する運用が現実的です。
自力で完結しない読者は、月額数万円台から決算・申告まで委託できるTenbookのような会計サービスや、単発のスポット税理士・経理代行の受け皿を活用してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 法人決算は税理士に依頼せず自分でできますか?
A. 法人決算は制度上、会社自身の手で自力完結できます。税理士法により有償の税務代理・書類作成は税理士の独占業務ですが、会社自身が自社の申告書を作成・提出することは制限されていないためです。
売上規模・取引の性質・融資予定・消費税ステータス・会計ソフトの熟達度を軸にした自己判定チェックリストで、自社が自力に向いているかを確認してから踏み出してください(先述のとおり関与率は約9割で実態としては委託が多数派です)。
Q. 法人決算・税務申告の期限はいつまでですか?
A. 法人税・地方税・消費税のいずれも、原則として事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内が申告・納付の期限です(法人税法第74条第1項、地方税法第53条第1項・第321条の8第1項、消費税法第45条第1項)。3月決算の会社であれば5月末が期限で、法人税・住民税・事業税・消費税の全税目を同じ期日で並行して仕上げる必要があります。
定時株主総会が事業年度終了後3ヶ月以内に招集されない常況にある場合は、所轄税務署長への申請で原則1ヶ月の期限延長が可能です(法人税法第75条の2第1項)。
Q. 消費税の免税事業者でも法人決算・申告は必要ですか?
A. 消費税の申告は不要ですが、法人税・地方税の決算と申告は消費税免税事業者でも必要です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納税義務が免除されますが(消費税法第9条第1項)、法人税法・地方税法上の申告義務は売上規模を問わずすべての内国法人に課され、赤字でも均等割は必ず発生します(金額の具体は先述の書類一覧を参照)。
インボイス発行事業者として登録している法人は基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者となり、消費税申告書の提出が必要です。
Q. 会計ソフトを使わなくても自分で法人決算はできますか?
A. 制度上は手書きや表計算ソフトでも申告可能ですが、電子帳簿保存法の要件対応と別表計算・消費税集計の煩雑さを踏まえると、会計ソフトの利用が現実的な選択肢です。電子帳簿保存法は電子取引データの電子保存を原則義務化しており(2024年1月以降、猶予措置終了)、メール添付やダウンロードで受け取った請求書・領収書を紙印刷して保存する運用は原則認められません。
決算書までを作れる会計ソフトと、法人税申告書(別表)まで作れる申告ソフトを組み合わせる構成が、自力で完結させる読者にとってもっとも実務的です。
Q. 法人の電子申告(e-Tax・eLTAX)は義務ですか?紙で提出してもよい?
A. 資本金1億円超の大法人は電子申告が義務、それ以外の中小法人は任意選択です(法人税法第75条の4)。相互会社・投資法人・特定目的会社・通算法人も電子申告義務の対象です。ただし義務対象外の法人でも、電子申告は申告書控えの管理・訂正のしやすさ・処理速度で紙提出より優位です。
会計ソフトの申告連携機能や国税庁の無料ソフト「e-Taxソフト」で作成した申告データを電子送信でき、地方税(第六号様式・第二十号様式)はeLTAXの「PCdesk」で並行送信できます。
Q. 法人決算の申告期限を過ぎるとどうなりますか?
A. 申告遅れは無申告加算税、納付遅れは延滞税、2期連続なら青色申告の承認取消しもあります。
無申告加算税は、納付税額のうち50万円までの部分に15%、50万円超300万円までの部分に20%、300万円超の部分に30%が加算されます(令和6年1月1日以後の期限到来分から)。ただし税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告すれば5%まで軽減されます(国税通則法第66条)。
延滞税は法定納期限の翌日から発生し、青色申告の承認取消しは繰越欠損金の10年繰越(法人税法第57条第1項)が使えなくなる副作用が大きいため、間に合わない見込みが立った時点で早めにスポット税理士へ切り替える判断が実務的です。
Q. 途中で自力を諦めて税理士に切り替えることはできますか?
A. 可能です。決算・申告のみ単発の「スポット税理士」で移行できます。期中は自社で記帳を続けたまま決算作業のみを外部化できます。スポット税理士の費用は事務所によって10万円台後半〜30万円台までの幅があり、決算月から離れているほど選択肢が広く費用も抑えやすい一方、期日直前の依頼は割増料金や受注拒否のリスクがあります。
会計ソフトのデータをそのまま引き継げる形態を選べば、記帳内容の再入力なしで移行でき、判定NOに切り替わった場合も慌てずに対応できます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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