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新リース会計基準で賃貸借契約はどう変わる?オンバランス対象の判定と会計処理を解説

新リース会計基準で賃貸借契約はどう変わる?のサムネイル画像

2024年9月に企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)により、2027年4月1日以後に開始する事業年度から、借手が結ぶ賃貸借契約の会計処理が変わります。オフィスや店舗、借上社宅、車両やOA機器のレンタルなど、これまで支払家賃として費用処理してきた契約の多くが、資産・負債として貸借対照表に計上(オンバランス)する対象になり得ます。

もっとも、すべての賃貸借契約が一律に対象となるわけではありません。対象かどうかは契約の名称ではなく実態で判定され、短期リースや少額リースといった例外もあります。自社のどの契約が対象になるのかを、契約の種類ごとに見極めることが対応の出発点です。

この記事では、まず適用時期と対象企業を確認します。そのうえで、賃貸借契約がオンバランス対象になるかの判定基準と契約類型別の早見表、会計処理、リース期間の見積り、敷金やフリーレントなど不動産特有の論点までを整理します。あわせて、対応の第一歩となる契約の洗い出しと一元管理の進め方も解説します。

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まず確認したい前提|適用時期・決算月別の開始タイミングと対象企業

賃貸借契約の判定に入る前に、「いつから」「どの会社が」対象になるのかという前提を押さえておきます。この2点で、自社が今すぐ対応すべきかどうかの大枠が決まります。

適用時期は2027年4月1日以後に開始する事業年度から

新リース会計基準の強制適用は、2027年4月1日以後に開始する事業年度からです。これより前倒しで適用する早期適用も認められており、2025年4月1日以後に開始する事業年度から適用できます。基準では次のように定められています。

本会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用することができる。

出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第58項|企業会計基準委員会(ASBJ)

決算月によって開始タイミングは変わる

適用は「事業年度の期首から」であるため、開始時期は決算月によって変わります。基準第58項を各決算月に当てはめると、次のように整理できます(基準が決算月ごとの表を定めているわけではなく、第58項の考え方を当てはめた整理です)。

決算月強制適用の開始早期適用の開始(任意)
3月決算2027年4月開始の事業年度から2025年4月開始の事業年度から
12月決算2028年1月開始の事業年度から2026年1月開始の事業年度から
9月決算2027年10月開始の事業年度から2025年10月開始の事業年度から

上表にない決算月でも、「自社の決算月の直後に始まる事業年度から」と読み替えれば当てはめられます。対象契約の洗い出しや会計方針の決定には相応の時間がかかるため、決算月を確認したうえで早めに着手しておくと、期首からの適用に余裕をもって備えられます。

対象企業は上場企業・大会社などが中心

新リース会計基準を適用するのは、日本の会計基準(J-GAAP)に従って財務諸表を作成する企業です。具体的には、金融商品取引法にもとづき有価証券報告書を提出する上場企業などと、会社法上の大会社が中心になります。

大会社は会社法で「資本金として計上した額が五億円以上であること」または「負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること」のいずれかに該当する株式会社と定義され、会計監査人による監査を受けます。

一方、中小企業の会計に関する指針や基本要領に拠る中小企業は、原則として新リース会計基準の強制適用の対象外です。これらの中小企業では、リース取引について従来どおりの会計処理を継続できます。

ただし、単体では大会社に当たらない会社でも、上場企業などの連結対象となる子会社は、連結財務諸表の作成上、親会社と同じ会計基準にそろえる必要があり、新リース会計基準の対象になります。自社がどの枠組みで財務諸表を作成しているか、また連結に含まれるかをあわせて確認しておくとよいでしょう。

出典・参考資料(3件)
  • 出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第58項|企業会計基準委員会(PDF
  • 出典:会社法 第2条第6号・第328条|e-Gov法令検索(条文
  • 参考資料:中小企業の会計に関する指針|企業会計基準委員会ほか(PDF

自社の賃貸借契約はオンバランス対象か|判定の2軸と契約類型別早見表

ここが多くの経理・財務担当者が最初に知りたいところです。結論から言えば、賃貸借契約であっても、特定の資産の使用を借手が支配していると認められれば、原則としてリースに該当しオンバランスの対象になります。判定は契約書のタイトル(賃貸借・レンタルなど)ではなく、取引の実態で行います

対象かどうかは、次の流れで見極めます。全体像を押さえたうえで、各ステップを順に確認していきましょう。

新リース会計基準で賃貸借契約がオンバランス対象かを判定する流れの図。STEP1で特定された資産か、STEP2で使用を支配しているか(経済的利益のほとんどすべてを享受し、使用を指図する権利をもつか)を確認し、両方満たせばリースに該当する。STEP3で短期リース(12か月以内・購入オプションなし)や少額リースの例外に当たるかを判定し、当たらなければ使用権資産とリース負債を計上するオンバランス対象、当たれば従来どおり費用処理する対象外となる。判定は契約の名称ではなく取引の実態で行う。

判定の入口は「特定された資産か」「使用を支配しているか」

新基準では、契約が「特定された資産の使用を支配する権利」を一定期間にわたって移転する場合に、その契約はリースを含むと判断します。判定は大きく2つの軸で見ます。1つ目は契約が「特定された資産」を対象としているか、2つ目は借手がその資産の「使用を支配」しているかです。2つ目の支配は、さらに次の2点を両方満たすかで判断します。

前項の判断にあたり、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む。(基準 第26項)

特定された資産の使用期間……全体を通じて、次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合、……当該資産の使用を支配する権利が移転している……。(1) 顧客が、特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。(2) 顧客が、特定された資産の使用を指図する権利を有している。(適用指針 第5項)

出典:企業会計基準第34号 第26項・企業会計基準適用指針第33号 第5項|企業会計基準委員会(ASBJ)

オフィスや店舗のように区画が特定され、その空間を自社が自由に使える契約は、この2要件を満たしてリースに該当することが多くなります。判定が契約の名称ではなく実態にもとづく以上、「賃貸借」や「レンタル」といった呼び方の違いで扱いが変わるわけではない点に注意が必要です。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第6項・第25項・第26項|企業会計基準委員会(PDF
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第5項|企業会計基準委員会(PDF

契約類型別のオンバランス対象 早見表

この2つの軸を主要な契約類型に当てはめると、対象になりやすい契約と、例外で対象外になり得る契約が見えてきます。自社の契約を当てはめる出発点として、不動産だけでなく車両やOA機器などの動産まで含めて整理します。

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契約類型事務所・店舗・倉庫の賃貸借借上社宅土地・駐車場車両・複合機・サーバー等のレンタル/リース
主な例オフィス・店舗・倉庫の賃貸借契約会社が従業員向けに借りる住宅事業用地・月極駐車場社用車・複合機・IT機器
新基準での原則的な扱い区画が特定され使用を支配していれば原則リースに該当し、オンバランス対象会社が賃借し使用を支配していれば原則対象。契約単位・実態で判定特定された土地・区画を支配していれば原則対象特定された資産を支配していれば契約名(レンタル/リース)を問わず原則対象
対象外になり得る場合借手のリース期間が12か月以内(購入オプションなし)の短期、または少額に該当する場合短期・少額に該当する場合、または実態として使用の支配が認められない場合貸手が区画を随時変更でき特定された資産といえない場合、短期・少額の場合短期(12か月以内・購入オプションなし)または少額に該当する場合

※上記は企業会計基準第34号・適用指針第33号にもとづく一般的な整理です。個別の契約の該当性は契約条件と実態により判定されます。判断に迷う契約は監査人・顧問の会計士にご確認ください。

なお、社用車や複合機のレンタル、クラウドサービスのサブスクリプションなど、動産のレンタル・サブスク契約に絞って、オンバランスの判定基準と実務対応を確認したい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。

対象外になる例外は「短期リース」と「少額リース」

リースに該当しても、短期リースと少額リースについては、使用権資産・リース負債を計上せず、従来どおり費用として処理する簡便的な取扱いが認められています。まず短期リースは、次のように定義されています。

「短期リース」とは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいう。(適用指針 第4項(2))

借手は、短期リース……について、会計基準第33項の定めにかかわらず、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができる。(適用指針 第20項)

出典:企業会計基準適用指針第33号 第4項(2)・第20項|企業会計基準委員会(ASBJ)

ここで注意したいのは、12か月の判定に使う「借手のリース期間」が、契約書上の期間そのものではないことです。後述するとおり、延長が合理的に確実な場合はその期間も含めて判定するため、契約期間が1年でも短期リースに該当しないことがあります。

少額リースの簡便的な取扱いには、いくつかの経路があります。適用指針第22項では、次の3つのいずれかに当てはまる場合に、簡便的な費用処理を認めています。

  • 自社が重要性の乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合で、借手のリース料がその基準額以下のリース
  • 事業内容に照らして重要性が乏しく、リース契約1件当たりの金額にも重要性が乏しいリース(旧・企業会計基準適用指針第16号を踏襲し、1件当たりのリース料総額が300万円以下かどうかで判定する方法)
  • 新品時の原資産の価値が少額であるリース(IFRS第16号と同様の方法で、新品時におおむね5千米ドル以下程度の資産を念頭に置いたもの)

よく「少額リースは300万円まで」と紹介されますが、この300万円は新基準の本文に定められた数値ではなく、旧・適用指針第16号の判定方法を踏襲する目的で結論の背景に示されているものです。基準が用いるのは取得価額ではなくリース料総額である点、金額だけで機械的に判定するわけではない点に注意が必要です。自社での適用範囲は、会計方針として整理しておくことが望まれます。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第4項(2)・第20項・第22項・結論の背景(BC43・BC45)|企業会計基準委員会(PDF

対象契約の会計処理|使用権資産・リース負債の計上と家賃の仕訳

賃貸借契約がオンバランスの対象になると、これまで支払家賃として費用処理していた金額の扱いが変わります。ここでは、計上する資産・負債と、家賃の仕訳がどう変化するかを整理します。

使用権資産とリース負債を計上する

借手は、これまでファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分けていた区分をなくし、原則としてすべてのリースについて、資産(使用権資産)と負債(リース負債)を計上します。これが「オンバランス化」と呼ばれる変更の中心です。

借手は、リース開始日に、第34項に従い算定された額によりリース負債を計上する。また、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上する。

出典:企業会計基準第34号 第33項|企業会計基準委員会(ASBJ)

従来オフバランスだったオペレーティング・リース(多くの不動産賃貸借がこれに当たりました)も、この単一のモデルによってオンバランスの対象になります。なお、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類する処理は、新基準では貸手側にのみ残り、借手側にはありません。

家賃の仕訳は「減価償却費」と「支払利息」に分かれる

従来は毎月の家賃をそのまま「支払家賃」として費用計上していました。新基準の対象契約では、この費用が次の2つに分かれます。

  • 使用権資産の減価償却費:計上した使用権資産を、原則としてリース期間にわたって(残存価額をゼロとして)償却する費用です。
  • リース負債の支払利息:リース料に含まれる利息相当額を、原則として利息法によりリース期間にわたって配分した費用です。

金額のイメージをつかむために、月額10万円・5年間の事務所賃貸(リース料総額600万円)を考えます。新基準では、この総額から利息相当額を控除した現在価値を、使用権資産とリース負債として計上します。その後、使用権資産を5年にわたって減価償却し、リース負債の残高に応じた支払利息を計上します。従来は毎月10万円を支払家賃としていたものが、この2つの費用に置き換わります。

勘定科目の対応で見ると、従来と新基準の違いは次のように整理できます。

項目従来(オペレーティング・リース)新基準(対象契約)
貸借対照表計上なし使用権資産(資産)/リース負債(負債)を計上
損益計算書の費用支払家賃(賃借料)使用権資産の減価償却費+リース負債の支払利息
費用の計上パターン期間を通じて定額利息法により初期ほど費用が大きくなる傾向

支払利息を利息法で配分すると、リース期間の初期ほど利息部分が大きくなります。その結果、家賃の総額が同じでも、費用の計上が契約初期に厚くなる傾向があります。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第33項・第34項・第36項・第38項・第43項|企業会計基準委員会(PDF

貸借対照表・財務指標への影響

オンバランス化により、これまで貸借対照表に載っていなかった使用権資産とリース負債が計上されます。資産と負債の両方が増えるため、財務指標にも影響が及びます。

負債が増える分、総資産に占める自己資本の割合(自己資本比率)は低下しやすくなります。また、総資産が増えることで、総資産利益率(ROA)も低下する方向に働きます。オフィスや店舗を多く賃借している企業ほど影響は大きくなるため、金融機関との財務制限条項(コベナンツ)や社内の予算・投資判断への波及も、早い段階で確認しておきたいところです。

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リース期間をどう見積もるか

使用権資産・リース負債の金額は、リース期間の長さで大きく変わります。不動産賃貸借では契約書の期間がそのままリース期間になるとは限らないため、見積りの考え方を押さえておく必要があります。

解約不能期間に「合理的に確実な」延長・解約を加える

借手のリース期間は、解約できない期間(解約不能期間)を基礎に、延長・解約オプションのうち行使が合理的に確実なものを加減して決めます。基準では次のように定義されています。

「借手のリース期間」とは、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、次の(1)及び(2)の両方を加えた期間をいう。(1) 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間 (2) 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間

出典:企業会計基準第34号 第15項|企業会計基準委員会(ASBJ)

延長や解約が「合理的に確実」かどうかは、経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮して判断します。適用指針では、例として次の要因を挙げています。

  • 延長・解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)
  • 大幅な賃借設備の改良の有無
  • リースの解約に関連して生じるコスト
  • 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
  • 延長・解約オプションの行使条件

たとえば内装に大きな投資をした店舗や、事業上その立地でなければ困る拠点は、更新して使い続ける可能性が高いと評価され、リース期間が契約書の期間より長く見積もられることがあります。不動産賃貸借については、適用指針が普通借地・普通借家を念頭に置いた設例(設例8-2から8-5)を示しており、判断の参考になります。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第15項・第31項|企業会計基準委員会(PDF
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号 第17項・設例8-2〜8-5|企業会計基準委員会(PDF

普通借家と定期借家で見積りが変わる

賃貸借契約の形態によって、更新の見込みは大きく異なります。ここで関係してくるのが借地借家法です。

普通借家契約では、期間満了時に貸主から更新を拒むには「正当の事由があると認められる場合」でなければならず(借地借家法第28条)、当事者が更新拒絶などの通知をしなければ「従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす」とされています(同第26条)。借手の権利が強く保護され、更新される蓋然性が高いため、延長オプションの行使が合理的に確実と評価されやすく、リース期間が長く見積もられる傾向があります。

一方、定期借家契約(同第38条)は更新がない前提の契約で、契約期間の満了で終了します。この場合は契約期間が解約不能期間とほぼ一致し、リース期間の見積りは普通借家より短くなりやすくなります。自社の賃貸借契約が普通借家か定期借家かを確認しておくと、リース期間の見積りの当たりを付けやすくなります。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:借地借家法 第26条・第28条・第38条|e-Gov法令検索(条文

不動産賃貸で判断に迷う論点

家賃本体以外にも、不動産賃貸借には処理に迷いやすい項目があります。ここでは共益費・敷金・フリーレント・サブリースの考え方を整理します。個別の判断は契約条件によるため、実際の処理は監査人・会計士に確認することをおすすめします。

共益費・管理費の区分

契約には、資産(区画)を使う対価であるリースの部分と、清掃や設備の保守といった役務提供の対価であるリースを構成しない部分が含まれることがあります。新基準では、原則としてこの2つを分けて会計処理します。

共益費・管理費のうち役務提供の対価にあたる部分は、リース料と区分して従来どおり期間費用として処理するのが出発点です。なお、区分せずにまとめてリースとして処理する簡便的な取扱いを選べる場合もあります。

敷金・保証金・原状回復

敷金・保証金のうち、退去時に返還される部分は、資産の使用の対価ではなく預け金の性質を持つため、差入保証金などとして別に管理し、使用権資産には含めないのが基本的な考え方です。

また、テナントが貸主に差し入れる建設協力金などの差入預託保証金(敷金を除く)は、支払額と現在価値との差額を使用権資産の取得価額に含めて処理します。原状回復の費用が見込まれる場合の資産除去債務の取扱いとあわせて、契約条件ごとに確認しておきたい論点です。

フリーレント・段階賃料・建設協力金

入居当初の一定期間だけ賃料が無料になるフリーレントや、期間の経過で賃料が変わる段階賃料は、リース料の総額をリース期間にわたって配分して考えるのが基本です。無料期間があるからといってその期間の費用がゼロになるわけではありません。テナント側が内装工事などのために貸主から受け取る建設協力金は、その性質に応じて負債や資産の調整として扱う必要があり、契約の内容を確認したうえで判断します。

サブリース(借手が実質的に貸手になる場合)

借りた物件をさらに第三者へ転貸するサブリースでは、自社は原契約の借手であると同時に、転貸取引の貸手にもなります。この場合、借手としての使用権資産・リース負債の処理に加えて、貸手としての会計処理も必要になります。オフィスの一部を他社に転貸しているようなケースは、借手・貸手の両面から整理する必要がある点に注意します。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第9項・第29項/企業会計基準第34号 第28項|企業会計基準委員会(PDF

対応は何から始めるか|全契約の洗い出しと一元管理

ここまで見てきたとおり、新基準への対応は「どの契約が対象か」の判定から始まります。そしてその判定には、契約期間・更新条件・金額・敷金といった契約条件を、契約ごとに正確に把握しておくことが欠かせません。つまり、最初の一歩は自社が結んでいる賃貸借契約を含む全契約の洗い出しと、条件の一元管理です。

対応の全体像は、次のような流れになります。

  1. 賃貸借契約を含む全契約の洗い出し
  2. 各契約が対象かの判定(短期・少額の例外を含む)
  3. リース期間や割引率など会計方針の決定
  4. 監査人との協議
  5. 会計システムでの計上・運用

この最初の洗い出しと判定を支えるのが、契約情報を集約する契約管理システムです。

なお、適用初年度には、既存の契約について移行の負担を軽減する経過措置が設けられています。過去の契約をどこまでさかのぼって処理するか、簡便的な方法を使えるかは選ぶ経過措置によって変わるため、会計方針の一つとして監査人と早めに相談しておくと安心です。

契約が多い企業ほど、紙とファイルサーバーに散在した契約書を手作業で棚卸しするのは負担が大きく、対象契約の見落としも起きやすくなります。契約書を取り込んで期間・更新期日・金額などを台帳化し、更新期限を通知できる契約管理システムを使うと、洗い出しと一元管理の工数を抑えられます。ここでは、既存の賃貸借契約を含む契約書を取り込んで台帳化できるサービスを紹介します。

なお、リース負債や使用権資産の会計計算そのものは固定資産管理システムなどが担う領域です。契約管理システムは、その前段にあたる「対象契約の洗い出しと契約情報の整備」を担うものとして位置づけると、役割を整理しやすくなります。

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※記載内容は2026年9月時点の各社公開情報に基づきます。「要お問い合わせ」は公式サイトで金額が公表されていない項目です。最新の料金・機能は各社の公式資料でご確認ください。

ここでは賃貸借契約の洗い出しに使いやすいサービスを絞って取り上げましたが、契約管理システムはこのほかにも数多くあります。タイプ別の選び方や料金の実額、電子帳簿保存法への対応まで含めて幅広く比較したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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契約書を台帳化する作業が現場でどの程度変わるかについて、提供元の株式会社Hubble(安田氏)は、導入企業での例を次のように挙げています。

安田氏
株式会社Hubble Partner Sales Manager
安田氏
独自インタビューより

分かりやすい事例で申し上げますと、ある企業様では契約書の件数が多く、台帳への入力作業に週1時間ほどかかっていましたが、Hubble miniを使ってPDFをアップロードしていただくと、相手方や契約期間といった項目をAIが代わりに入力してくれますので、1時間かかっていた作業が5分で終わるようになりました。

まとめ

新リース会計基準では、賃貸借契約であっても、特定された資産の使用を借手が支配していれば原則としてオンバランスの対象になります。判定は契約の名称ではなく実態で行い、借手のリース期間が12か月以内の短期リースや少額リースは簡便的な取扱いの対象です。対象になった契約では、家賃が使用権資産の減価償却費とリース負債の支払利息に分かれ、自己資本比率やROAといった財務指標にも影響します。

強制適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度からで、決算月によって開始時期は変わります。対応の第一歩は、賃貸借契約を含む全契約を洗い出し、契約期間・更新条件・金額・敷金といった条件を一元管理することです。契約管理システムを使えば、この棚卸しと情報整備を効率化できます。自社の契約状況を早めに把握し、余裕をもって備えておきましょう。

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よくある質問(FAQ)

Q. 新リース会計基準とは何ですか?

A. 新リース会計基準とは、借手が結ぶリース(賃貸借)契約の多くを、使用権資産とリース負債として貸借対照表に計上(オンバランス)することを求める会計基準です。2024年9月に企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を指します。

借手はこれまでのファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分をなくし、原則としてすべてのリースを資産・負債に計上する単一のモデルに変わります。強制適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度からです。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第33項・第58項|企業会計基準委員会(PDF

Q. 新リース会計基準で事務所や店舗の賃貸借契約もオンバランスの対象になりますか?

A. 新リース会計基準では、区画が特定され、その空間の使用を自社が支配している事務所・店舗の賃貸借契約は、多くがリースに該当し原則としてオンバランスの対象になります

判定は契約書のタイトルが「賃貸借」かどうかではなく、「特定された資産か」「使用を支配しているか(経済的利益のほとんどすべてを享受し、使用を指図できるか)」という実態で行われます。ただし、短期リースや少額リースに該当する契約は簡便的な取扱いの対象で、オンバランスしなくてよい場合があります。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:企業会計基準第34号 第26項|企業会計基準委員会(PDF
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号 第5項|企業会計基準委員会(PDF

Q. 新リース会計基準は中小企業や非上場企業も対象ですか?

A. 新リース会計基準の強制適用の対象は、金融商品取引法にもとづき有価証券報告書を提出する上場企業などと、会社法上の大会社が中心です。中小企業の会計に関する指針・基本要領に拠る中小企業は、原則として対象外で、リース取引について従来どおりの会計処理を継続できます。

大会社は、資本金として計上した額が5億円以上、または負債の合計額が200億円以上の株式会社と定義され、会計監査人による監査を受けます。自社がどの枠組みで財務諸表を作成しているかを確認しておくとよいでしょう。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:会社法 第2条第6号・第328条|e-Gov法令検索(条文
  • 参考資料:中小企業の会計に関する指針|企業会計基準委員会ほか(PDF

Q. 新リース会計基準で家賃はもう経費として処理できなくなりますか?

A. 対象となる契約では、家賃をそのまま「支払家賃」として費用計上する処理はなくなり、使用権資産の減価償却費とリース負債の支払利息に分かれます。損益計算書に費用が計上される点は変わりませんが、科目と計上パターンが変わり、利息法による配分で契約初期ほど費用が大きくなる傾向があります。一方、短期リースや少額リースに該当する契約は、従来どおり費用として処理を続けられます。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計基準第34号 第33項・第36項・第38項|企業会計基準委員会(PDF

Q. 新リース会計基準ではリースとレンタルで会計上の扱いは変わりますか?

A. 新リース会計基準では、契約の名称が「レンタル」でも「賃貸借」でも、特定された資産の使用を支配していればリースとして判定され、扱いは変わりません。社用車・複合機・サーバーなどのレンタルも、資産が特定され使用を支配していれば対象になり得ます。名称ではなく取引の実態で判断される点は、不動産でも動産でも共通です。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:企業会計基準第34号 第26項|企業会計基準委員会(PDF
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号 第5項|企業会計基準委員会(PDF

Q. 契約期間が1年の賃貸借契約は、新リース会計基準の短期リースとして扱ってよいですか?

A. 契約期間が1年でも、必ずしも短期リースになるとは限りません。短期リースの判定に使う「借手のリース期間」は契約書上の期間そのものではなく、延長オプションの行使が合理的に確実な場合はその期間も加えて判定するためです。

たとえば更新される蓋然性が高い普通借家契約では、契約期間が1年でもリース期間が12か月を超え、短期リースに該当しないことがあります。加えて、短期リースには「購入オプションを含まない」ことも要件となります。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号 第4項(2)・第20項|企業会計基準委員会(PDF
  • 出典:企業会計基準第34号 第15項|企業会計基準委員会(PDF

Q. 新リース会計基準の少額リースは「300万円以下」と考えてよいですか?

A. 「少額リース=300万円以下」と単純に判定するのは正確ではありません。300万円という金額は新基準の本文に定められた数値ではなく、旧・企業会計基準適用指針第16号の判定方法(リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下かどうか)を踏襲する目的で、結論の背景に示されているものです。新基準が判定の基準とするのは「取得価額」ではなく「リース料総額」である点にも注意が必要です。

このほかにも、自社が少額の減価償却資産で採用する基準額以下とする方法や、新品時の価値が少額(IFRS第16号と同様の考え方)とする方法があります。自社での適用範囲は会計方針として整理しておくことが望まれます。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号 第22項・結論の背景(BC43・BC45)|企業会計基準委員会(PDF

Q. 新リース会計基準で敷金や保証金は資産(使用権資産)に含めますか?

A. 敷金・保証金のうち、退去時に返還される部分は使用権資産に含めず、差入保証金などとして別に管理するのが基本的な考え方です。一方、建設協力金などの差入預託保証金(敷金を除く)は、支払額と現在価値との差額を使用権資産の取得価額に含めて処理します。個別の扱いは契約条件によるため、監査人・会計士に確認することをおすすめします。

原状回復の費用が見込まれる場合の資産除去債務の取扱いとあわせて、契約条件ごとに確認しておきたい論点です。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第9項・第29項/企業会計基準第34号 第28項|企業会計基準委員会(PDF

Q. 新リース会計基準の対応はいつまでに準備すればよいですか?

A. 強制適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度からで、決算月によって開始時期が変わります(たとえば3月決算なら2027年4月開始の事業年度から、12月決算なら2028年1月開始の事業年度から)。2025年4月1日以後に開始する事業年度からの早期適用も認められています。

対象契約の洗い出しや会計方針の決定には相応の時間がかかるため、決算月にかかわらず早めに着手しておくと、期首からの適用に余裕をもって備えられます。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:企業会計基準第34号 第58項|企業会計基準委員会(PDF

Q. 契約管理システムがあれば、新リース会計基準のリース負債や使用権資産の会計計算までできますか?

A. 一般的な契約管理システムが担うのは、リース負債や使用権資産の会計計算そのものではなく、その前段にあたる「対象契約の洗い出しと契約情報の整備」です

契約書を取り込んで契約期間・更新条件・金額・敷金などを台帳化し、リースに該当する可能性を判定・出力する機能を持つサービスもありますが、実際の会計計算は固定資産管理システムなどが担う領域です。契約管理システムは「対象契約を漏れなく把握する土台づくり」を担うものと位置づけると、対応の道具立てを整理しやすくなります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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