電子契約サービスの導入を検討していると、「立会人型」「事業者署名型」「当事者型」といった署名方式の呼び方に行き当たります。契約書は後で有効性が問われたときに効力を持たなければ意味がないため、方式の違いと法的な裏づけを正しく理解しておくことが、サービス選定の出発点になります。
立会人型(事業者署名型)は、契約当事者ではなくサービス提供事業者が署名を付与する方式です。相手方に電子証明書の取得などの準備を求めないため導入しやすく、国内の電子契約サービスの多くが採用しています。一方で「事業者が署名して法的に有効なのか」という疑問も生まれやすい方式です。
本記事では、立会人型の意味と当事者型との違いを整理したうえで、電子署名法や2020年の政府見解にもとづく法的な有効性の根拠、メリット・デメリット、自社に合う方式の選び方までを解説します。方式を理解したうえで、実際に検討したい電子契約システムの当たりをつけられる状態を目指します。
目次
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立会人型(事業者署名型)電子契約とは
立会人型とは、契約当事者の指示にもとづき、電子契約サービスを提供する事業者が、その事業者名義の電子証明書を使って電子署名を付与する方式です。「事業者署名型」とも呼ばれ、両者は同じ方式を指します。契約当事者は届いたメールから内容を確認して合意の操作を行うだけで、自分の電子証明書を用意する必要はありません。
電子署名は、署名に用いる「鍵」が誰の名義かによって性質が変わります。立会人型では、契約当事者本人ではなくサービス事業者の署名鍵で暗号化などの措置が行われ、本人確認はメールアドレスの認証などで担保します。
当事者が認証局から電子証明書を取得する手間がかからないため、導入のハードルが低いことが特徴です。クラウド型の電子契約サービスの多くが、この立会人型を標準としています。
あわせて、締結した電子文書には認定タイムスタンプが付与されるのが一般的です。タイムスタンプは「その時刻にその文書が存在し、以後改ざんされていないこと」を示すもので、立会人型でも文書の非改ざん性を裏づける役割を果たします。
立会人型と当事者型の違い
まず、両方式で誰がどの署名鍵で契約に署名するのか、その流れの違いを確認します。

電子契約の署名方式は、立会人型(事業者署名型)と、契約当事者本人が電子証明書で署名する当事者型(実印タイプ)に大きく分かれます。サービスによっては立会人型を「契約印タイプ」、当事者型を「実印タイプ」と呼ぶこともあります。両者は、署名する人・本人確認の方法・相手方の準備・導入コスト・証拠力の重みの点で異なります。以下は、立会人型と当事者型の比較表です。
| 立会人型と当事者型の比較 | 署名する人(署名鍵の名義) | 本人確認の方法 | 相手方の事前準備 | 導入コスト・スピード | 証拠力(本人性の担保) |
|---|---|---|---|---|---|
| 立会人型(事業者署名型) | サービス提供事業者 | メールアドレス認証など | 不要(届いたメールから署名) | 低コストで短期間に始めやすい | 要件を満たせば推定効は及び得るが、本人性の担保は相対的に弱い |
| 当事者型(実印タイプ) | 契約当事者本人 | 認証局が発行する電子証明書 | 必要(電子証明書の取得など) | 証明書発行の費用と手間がかかる | 本人性の担保が強く証拠力が高い |
※上記は各方式の一般的な傾向です。個別の運用や本人確認の強度はサービスや設定によって異なります。
もっとも大きな違いは、相手方に負担が生じるかどうかです。当事者型は契約の相手も電子証明書を用意する必要があるため、不特定多数や取引先との契約では準備が壁になりやすいのに対し、立会人型は相手方がメールを受け取って操作するだけで締結できます。一方で、本人性の担保という点では、認証局による厳格な本人確認を経た当事者型のほうが強いとされます。
立会人型は法的に有効か(電子署名法・政府見解の根拠)
立会人型で最も気になるのは「事業者が署名して、裁判になっても契約は有効に扱われるのか」という点です。結論として、立会人型は電子署名法上の電子署名に該当し得るもので、一定の要件を満たせば同法第3条の推定効が働き得ると、2020年に国の見解が示されています。
実務上は「二要素認証などで一定の要件を満たせば、立会人型でも推定効が及ぶ」と押さえれば十分です。以下は、その根拠となる条文と政府見解を、出所つきで詳しく確認したい方向けに整理したものです。
電子署名法第2条・第3条とは(電子署名の定義と推定効)
電子契約の法的な土台となるのが、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)です。まず第2条第1項が「電子署名」を定義しています。
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(略)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第2条第1項|e-Gov法令検索
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
このように電子署名法は、署名鍵の名義が本人か事業者かを問わず、作成者を示すことと改変の有無を確認できることの2つの要件を満たす措置を電子署名として位置づけています。次に、電子文書の証拠力にかかわるのが第3条です。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第3条|e-Gov法令検索
第3条は、「本人による電子署名」が行われていれば、その電子文書は真正に成立したものと推定する(=作成者の意思にもとづいて作られた文書だと法的に扱う)と定めています。この推定効が働くと、争いになったときに文書の成立を主張する側の立証負担が軽くなります。立会人型が第3条の推定効の対象になり得るかが、長らく論点になっていました。
2020年の3省連名Q&Aで示された立会人型が認められる要件
この論点について、2020年(令和2年)に総務省・法務省・経済産業省の3省が連名でQ&Aを公表し、立会人型(事業者署名型)の位置づけを整理しました。まず同年7月17日に電子署名法第2条に関するQ&Aが、続いて9月4日に第3条に関するQ&Aが示されています。
第2条のQ&Aが扱うのは、利用者の指示にもとづき事業者が自らの署名鍵で暗号化などを行う立会人型のサービスです。技術的・機能的に見て事業者の意思が介在せず、利用者の意思のみで機械的に暗号化されたといえる場合には、その措置を行った者は利用者であると評価でき、電子署名法第2条第1項の「電子署名」に該当し得るとの考え方が示されました。Q&Aは次のように述べています。
技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
出典:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第2条関係)|総務省・法務省・経済産業省(令和2年7月17日)
続く第3条のQ&Aでは、立会人型が推定効の対象となるための要件が整理されています。第3条は第2条よりも要件が加重されており、暗号化などに用いる符号について「他人が容易に同一のものを作成することができない」といえること(固有性の要件)が前提になります。
立会人型がこの固有性の要件を満たすには、①利用者とサービス事業者の間で行われるプロセスと、②その行為を受けて事業者内部で行われるプロセスの双方で、十分な水準の固有性が満たされている必要があるとされています。
①のプロセスについては、登録済みのメールアドレスとパスワードの入力に加え、SMSや手元のトークンで取得したワンタイムパスワードを入力する二要素認証などが、十分な水準の固有性を満たす例として挙げられています(この具体例は令和6年1月9日の一部改定で追記されました)。
二要素認証が必須というわけではなく、ほかの方法によることも妨げられません。メールアドレスの認証だけでなく、こうした本人確認の仕組みを適切に備えることで、立会人型でも第3条の推定効が及び得るという整理です。
この政府見解によって、立会人型は「手軽だが法的な裏づけが弱い方式」という従来の受け止めが改められ、要件を満たす運用であれば推定効を得られることが明確になりました。
ただし、推定効はあくまで文書の成立を推定するもので、これだけで契約の有効性がすべて決まるわけではありません。第3条のQ&Aでも、文書の成立の真正は最終的に裁判所が諸事情を総合して判断するもの(民事訴訟法第247条)とされています。契約の重要度や金額に応じて方式や本人確認の水準を選ぶことが大切です。
出典・参考資料(3件)
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立会人型のメリット・デメリット
ここからは、方式を選ぶ判断材料として、立会人型の利点と留意点を整理します。法的な有効性が確認された今、多くの企業がまず立会人型から検討していますが、向き不向きを踏まえて選ぶことが大切です。
立会人型のメリット
最大のメリットは、契約の相手方に負担をかけない点です。相手はメールを受け取り、内容を確認して合意の操作をするだけで締結でき、電子証明書の取得や専用ソフトの導入は必要ありません。取引先の数が多い場合や、初めて取引する相手との契約でも、スムーズに電子化を進められます。
導入コストと期間の面でも優位です。認証局から電子証明書を発行する費用や手続きが不要なため、月額料金と送信件数に応じた従量料金が中心の料金体系で、比較的低コストに始められます。申し込みから利用開始までの期間も短く、紙と押印の運用を早期に置き換えられます。
立会人型のデメリット・留意点
留意点は、本人確認の水準が当事者型ほど厳格ではないことです。当事者型が認証局による本人確認を経た電子証明書を用いるのに対し、立会人型はメールアドレスの認証などで本人性を担保します。そのぶん、万一の紛争で本人性が争われた場合の証拠力は、当事者型のほうが強いと位置づけられます。
そのため、係争リスクが高い高額な契約や、法令・業界規制で厳格な本人確認が求められる契約では、当事者型やハイブリッド運用を検討する余地があります。日常的な業務委託契約や取引基本契約など、多くのビジネス契約では立会人型で十分に対応できるケースが大半ですが、契約の性質に応じて方式を使い分ける視点が重要です。
メール認証は安全か(本人性・非改ざん性を補強する対処)
「メールアドレスの認証だけで安全なのか」という懸念に対しては、多くのサービスが本人確認を強化する機能を用意しています。署名時にアクセスコードを別途入力させる2段階認証や、SMS・アプリを用いた2要素認証を組み合わせることで、なりすましのリスクを下げられます。前述の政府見解でも、こうした二要素認証の仕組みが推定効の要件を満たす水準の例として挙げられています。
また、締結した文書には認定タイムスタンプが付与され、署名後に改ざんされていないことを確認できます。あわせて、いつ・誰が操作したかを記録する監査ログやIPアドレス制限を備えるサービスも多く、これらを組み合わせることで、立会人型でも本人性と非改ざん性を実務上十分に担保できます。
立会人型と当事者型はどちらを選ぶべきか
ここからは、「自社はどちらを選ぶべきか」を具体的に整理します。判断の軸は、契約金額や紛争リスクの大きさ、相手方のITリテラシー、業界の規制です。どちらか一方に決め切る必要はなく、契約の種類に応じて使い分けるのが実務的です。
立会人型が向くケース/当事者型が向くケース
立会人型が向くのは、取引先を含めてスピーディーに電子化を進めたい契約です。業務委託契約、取引基本契約、発注書・請書、雇用契約など、日常的に数多く発生し、相手方に準備の負担をかけたくない契約に適しています。相手がメールを受け取れればすぐに締結できるため、電子契約を全社に広げる起点にもなります。
当事者型が向くのは、本人性の厳格な担保が求められる契約です。金額が大きく紛争リスクの高い契約や、M&A関連の契約、商業登記の申請に用いる書面など、より強い証拠力が望まれる場面では、認証局の本人確認を経た当事者型が安心です。相手方にも準備を求めることになるため、対象を絞って使うのが現実的です。
ハイブリッド運用という選択肢
近年は、立会人型と当事者型の両方に対応し、契約ごとに方式を選べるサービスが一般的になっています。自社側は当事者型(実印タイプ)で署名し、相手方はメール認証による立会人型で署名する、といった組み合わせも可能です。この運用なら、相手方に電子証明書の取得を求めずに、自社側の署名の本人性を高められます。
契約の重要度に応じて、日常的な契約は立会人型、重要な契約は当事者型やハイブリッドと使い分ければ、利便性と証拠力のバランスを取れます。両方式に対応するサービスを選んでおくと、契約の種類が増えても方式を切り替えられ、将来の運用変更にも柔軟に対応できます。
自社に合う電子契約システムの選び方とおすすめサービス
方式の理解を踏まえて、実際にどの電子契約システムを検討するかを見ていきます。選ぶ際は、対応する署名方式(立会人型のみか、当事者型も使えるか)、送信件数に応じた料金、本人確認や内部統制の機能、電子帳簿保存法への対応を軸に比較すると、自社の契約実務に合うサービスを絞り込めます。ここでは、立会人型を主体とするサービスと、立会人型・当事者型の両方に対応するサービスを代表として取り上げ、比較します。
| 立会人型に対応する主な電子契約システムの比較 | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン |
|---|---|---|
| 対応する署名方式 | 立会人型(事業者署名型)=標準 当事者型(マイナンバーカード署名) | 立会人型(契約印タイプ) 当事者型(実印タイプ) ハイブリッド署名も可 |
| 無料プラン | あり(月2件まで・1名) 立会人型の電子署名+タイムスタンプ利用可 | あり(月5件まで・1名) 立会人型のみ |
| 初期費用 | 要問い合わせ (公式料金ページに明示記載なし) | 0円 (基本サービス、オプションは別途) |
| 月額(最安有料プラン) | 月額11,000円(税込12,100円)〜 ※Lightプラン | 月額8,800円(税込9,680円)〜 ※ライトプラン(年間契約) |
| 送信料 | 1件220円(税込242円) | 立会人型 1件100円(税込110円) 当事者型 1件300円(税込330円) |
| 本人確認の強化 | メール認証に加え 2段階認証・2要素認証に対応 | メール認証に加え 二要素認証・アクセスコード認証に対応 |
| 電子帳簿保存法対応 | ●認定タイムスタンプを標準付与 | ●JIIMA認証(契約印&実印プラン向け) |
| セキュリティ認証 | ISO/IEC 27001・27017 SOC2 Type1・ISMAP登録 | ISO/IEC 27001・27017 SOC2 Type2・ISMAP登録 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※料金・機能は2026年9月時点の各社公式情報にもとづきます。最新の内容は各社の資料・公式サイトでご確認ください。
クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が提供する電子契約サービスです。事業者署名型(立会人型)を標準とし、書類の送信から電子署名・認定タイムスタンプの付与、契約書の保管・検索までをオンラインで完結できます。富士キメラ総研の調査(ソフトウェアビジネス新市場2025年版・電子契約ツール)でシェア首位とされ、導入社数は250万社を超えます。
立会人型に加えて、2023年からはマイナンバーカードの電子証明書を使う当事者署名型の機能も提供しており、契約に応じた使い分けができます。本人確認はメール認証に加え、アクセスコードによる2段階認証やアプリによる2要素認証に対応します。
承認フローやIPアドレス制限、監査ログなど内部統制の機能も備え、初めて電子契約を導入する企業から大企業まで幅広く使えます。料金は送信月2件までのフリープランのほか、Lightプランが月額11,000円(税込12,100円)から用意されています。
電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインは、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供するクラウド型の電子契約サービスです。立会人型(契約印タイプ)と当事者型(実印タイプ)の両方に対応し、両者を組み合わせたハイブリッド署名も利用できるため、契約の重要度に応じて方式を選べます。導入は350万社以上、累計送信件数は5,000万件を超えると公表しています。
2021年には、グレーゾーン解消制度を活用した照会に対して、GMOサインの立会人型・当事者型署名が記名押印に代わる有効な電子署名として適法性を有することが確認されています。認定タイムスタンプを標準付与し、電子帳簿保存法の要件を満たすとしてJIIMA認証も取得しています。
料金は送信月5件までのお試しフリープランのほか、ライトプランが年間契約で月額8,800円(税込9,680円)から。送信料は立会人型が1件110円(税込)、当事者型が1件330円(税込)で、立会人型を低コストに運用しやすい体系です。
ここで取り上げた2サービスのほかにも、電子契約システムは数多くあります。以下の記事では、立会人型・当事者型の対応状況や料金体系、タイプ別の選び方まで含めて主要な電子契約システムを比較しています。方式の理解を踏まえて自社に合う一社を絞り込みたい方は、あわせてご覧ください。
まとめ
立会人型(事業者署名型)は、サービス提供事業者が当事者の指示にもとづいて署名を付与する方式で、相手方に準備を求めず低コストに導入できることが特徴です。当事者型との違いは、署名する人・本人確認の方法・証拠力の重みにあります。
法的な有効性については、電子署名法第2条・第3条と、2020年の総務省・法務省・経済産業省による3省連名Q&Aによって、一定の要件を満たす立会人型でも第3条の推定効が及び得ることが整理されています。
日常的な契約は立会人型、より強い証拠力が求められる契約は当事者型やハイブリッドと使い分け、両方式に対応するサービスを選んでおくと、契約の種類が増えても柔軟に運用できます。自社の契約実務に合うサービスの資料を取り寄せ、比較して選んでください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 立会人型(事業者署名型)電子契約とは何ですか?
A. 立会人型(事業者署名型)とは、契約当事者ではなく電子契約サービスの提供事業者が、事業者名義の電子証明書で電子署名を付与する方式です。契約当事者は届いたメールから内容を確認して合意の操作を行うだけで、自分の電子証明書を用意する必要がありません。
本人確認はメールアドレスの認証などで担保し、導入のハードルが低いため、国内のクラウド型電子契約サービスの多くが標準として採用しています。
Q. 立会人型の電子契約は法的に有効ですか?
A. 立会人型の電子契約は、一定の要件を満たせば法的に有効で、電子署名法第3条の推定効(文書が真正に成立したという推定)が働き得ます。2020年(令和2年)に総務省・法務省・経済産業省の3省が連名Q&Aを公表し、事業者が利用者の指示にもとづき機械的に署名する立会人型でも、二要素認証などで十分な水準の固有性を満たせば第3条の推定効が及び得ると整理されました。
推定効が働くと、争いになったときに文書の成立を主張する側の立証負担が軽くなります。ただし推定効だけで契約の有効性がすべて決まるわけではなく、文書の成立の真正は最終的に裁判所が諸事情を総合して判断します(民事訴訟法第247条)。
出典・参考資料(2件)
Q. 立会人型に電子署名法は適用されますか?
A. 立会人型にも電子署名法は適用されます。電子署名法第2条は、署名鍵の名義が本人か事業者かを問わず、「作成者を示す」「改変の有無を確認できる」という2つの要件を満たす措置を電子署名と定義しています。
2020年7月17日の3省連名Q&A(電子署名法第2条関係)では、事業者の意思が介在せず利用者の意思のみで機械的に暗号化されたといえる場合、その措置を行った者は利用者と評価でき、立会人型も同法の電子署名に該当し得るとされています。したがって、方式が立会人型か当事者型かにかかわらず、電子署名法の枠組みのなかで効力が判断されます。
Q. 立会人型は当事者型より証拠力が弱いのですか?
A. 立会人型は、要件を満たせば当事者型と同じく第3条の推定効が及び得ますが、本人性の担保という点では、認証局の本人確認を経た当事者型のほうが証拠力は強いとされます。立会人型はメールアドレスの認証などで本人確認を行うため、万一の紛争で本人性が争われた場合には、当事者型より手厚い備え(二要素認証や監査ログなど)が立証を支えます。
日常的な業務委託契約や取引基本契約の多くは立会人型で十分に対応できますが、高額で紛争リスクの高い契約では当事者型やハイブリッド運用を検討する余地があります。
Q. 取引先が電子契約に対応していなくても立会人型は使えますか?
A. 取引先が電子契約サービスを導入していなくても、立会人型なら締結できます。立会人型は相手方に電子証明書の取得や専用ソフトの導入を求めず、届いたメールから内容を確認して合意の操作をするだけで契約が成立します。
相手がメールを受け取れれば締結できるため、取引先の数が多い場合や、初めて取引する相手との契約でも、準備の負担をかけずに電子化を進められます。この導入のしやすさが、立会人型が国内で広く採用されている理由の一つです。
Q. 立会人型はメール認証だけで本人確認は大丈夫ですか?
A. 立会人型は、メール認証に本人確認を強化する機能を組み合わせることで、実務上十分な安全性を確保できます。署名時にアクセスコードを入力させる2段階認証や、SMS・アプリによる2要素認証を追加すると、なりすましのリスクを下げられます。前述の3省連名Q&A(第3条関係)でも、二要素認証は推定効の要件(十分な水準の固有性)を満たす水準の例として挙げられています。
加えて、締結文書には認定タイムスタンプが付与され、監査ログやIPアドレス制限とあわせて、本人性と非改ざん性を担保できます。
Q. 立会人型と当事者型はどちらを選ぶべきですか?
A. 契約金額や紛争リスク、相手方のITリテラシー、業界規制を軸に判断し、日常的な契約は立会人型、強い証拠力が求められる契約は当事者型を選ぶのが基本です。業務委託契約や発注書・請書のように数多く発生し、相手方に準備の負担をかけたくない契約は立会人型が向きます。
一方、金額が大きく紛争リスクの高い契約やM&A関連の契約など、より強い証拠力が望まれる場面では、本人性を厳格に担保する当事者型が安心です。どちらか一方に決め切る必要はなく、契約の種類に応じて使い分けるのが実務的です。
Q. 立会人型と当事者型を併用するハイブリッド運用はできますか?
A. 立会人型と当事者型の両方に対応するサービスを選べば、契約ごとに方式を選ぶハイブリッド運用ができます。例えば、自社側は当事者型(実印タイプ)で署名し、相手方はメール認証による立会人型で署名する、といった組み合わせも可能です。この運用なら、相手方に電子証明書の取得を求めずに、自社側の署名の本人性を高められます。
日常的な契約は立会人型、重要な契約は当事者型と使い分ければ、利便性と証拠力のバランスを取れ、契約の種類が増えても方式を切り替えて柔軟に運用できます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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