取引先とのやり取りが紙とメールに分かれ、請求書や領収書の保管方法が担当者ごとにばらばらのままになっていませんか。2024年1月以降、電子データで受け取った請求書等を紙に印刷して保管する運用が原則として認められなくなりました。名前は聞いても、自社が何をどこまで対応すればよいかを一枚で押さえられないまま、日々の業務に流されている企業も少なくありません。
本記事は、法律の全体像を「何の法律か・誰が対象か・現在の状況・守らないと何が起きるか」の4項目でまず先に押さえたうえで、3区分の違い・保存要件・罰則・実務対応の道筋までを解説します。
読み終えたときに、自社が今すぐ手を打つべき保存区分と対応の道筋が判断できる状態になることを目指しています。
目次
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電子帳簿保存法とは?まず押さえたい4項目
細かい要件に入る前に、地面から立ち上がるつもりで押さえたい4項目を先に示します。この4項目で自社の現在地が掴めれば、そのあとの3区分・要件・罰則・実務対応の各節は自社に必要な範囲を絞って読み進められます。
- 何の法律か:帳簿書類を電子データで保存する場合の要件と、電子取引で授受した取引情報(メール添付のPDF請求書やEDI取引データなど)を電子データのまま保存する義務を定めた法律です。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」で、電子データの保存期間は紙の帳簿書類と同じく法人は原則7年(青色申告で欠損金が生じた事業年度分は10年)、個人事業主も原則7年です。
- 誰が対象か:所得税(源泉徴収に係るものを除く)と法人税の保存義務者、つまり法人と個人事業主のいずれも対象です。企業規模による適用除外はありません。
- 今の現状:2024年1月1日(令和6年1月1日)以降、電子取引データについては電子データのまま保存することが原則として義務です。令和5年(2023年)12月末で終了した宥恕(ゆうじょ)措置に代わり、令和6年(2024年)1月以降は「相当の理由」がある場合の猶予措置に一本化されました。
- 守らないとどうなるか:青色申告承認の取消し対象になり得るほか、電子取引データに関する隠蔽・仮装があった場合には重加算税が通常より10%加重(過少申告分35%→45%、無申告分40%→50%相当)されます。ただし取消しは違反の程度や改善可能性を「総合勘案」して判断される運用が公表されています。
この法律の趣旨は、法第1条で次のように示されています。細部の裏づけを確かめたい方は開いてご確認ください。
(趣旨)
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第一条|e-Gov 法令検索
第一条 この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)その他の国税に関する法律の特例を定めるものとする。
出典・参考資料(1件)
電子帳簿保存法の3区分(電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存)を表で比較
電子帳簿保存法で最も混同しやすいのが、保存区分の違いです。3つの区分はそれぞれ対象書類・義務/任意・主な要件が異なり、混同したまま対応方針を決めると要件を満たしていないつもりで違反状態になる、または任意の区分に過剰対応してコストが膨らむ、といった歯車の食い違いが起きます。まずは横並びで違いを掴んでください。
3区分の比較表(区分×対象書類×義務/任意×主な要件)
| 区分 | 区分1:電子帳簿等保存(法第4条第1項・第2項) | 区分2:スキャナ保存(法第4条第3項) | 区分3:電子取引データ保存(法第7条) |
|---|---|---|---|
| 対象書類の例 | 会計ソフトで作成した仕訳帳・総勘定元帳、自社発行の請求書・見積書の控え(電子的に作成したもの) | 紙で受領・発行した請求書、契約書、領収書などをスキャナ・スマホで電子化したもの | メール添付で受領・送信したPDF請求書、EDIで授受した取引データ、クラウド請求書サービスで受け取ったデータ、Webサイトからダウンロードした領収書など |
| 義務/任意 | 任意(電子か紙かを事業者が選択) | 任意(紙原本を保存し続ける選択も可) | 義務(所得税・法人税の保存義務者に義務化) |
| 主な要件(概略) | 電磁的記録の備付け・保存を財務省令で定めるところにより行う。優良な電子帳簿の要件を満たすと過少申告加算税5%軽減の特例あり | 解像度・カラー要件、タイムスタンプまたは訂正削除履歴が残るシステム、検索要件(日付・金額・取引先)などを満たす | 真実性の確保(タイムスタンプ/訂正削除履歴/訂正削除できないシステム/事務処理規程のいずれか)と可視性の確保(検索要件・見読可能装置の備付け等)を満たす |
出典・参考資料(2件)
区分1:電子帳簿等保存(任意)
区分1は、自社が最初の記録段階から会計ソフト等を使って一貫して電子的に作成した国税関係帳簿・書類を、そのまま電磁的記録として保存できる制度です。任意の制度であり、紙で出力して保存する運用も引き続き可能です。
第四条 保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。……)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
出典:電子帳簿保存法 第4条第1項・第2項|e-Gov 法令検索
2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。
条文の「代えることができる」という文言のとおり、区分1は任意選択の制度です。優良な電子帳簿の要件(訂正削除履歴の確保、相互関連性の確保、検索要件の充足など)まで満たせば、過少申告加算税を5%軽減する特例が受けられます。
区分2:スキャナ保存(任意)
区分2は、紙で受領または発行した国税関係書類(請求書、契約書、領収書など)をスキャナやスマートフォンで電子化して保存できる制度です。こちらも任意で、紙原本のまま保存し続ける運用が引き続き可能です。ただし電子化を選ぶ場合は、解像度・カラー・タイムスタンプ・訂正削除履歴・検索要件などの技術要件を満たす必要があります。
スキャナ保存の解像度・タイムスタンプ・検索要件を条文と一問一答から詳しく確認したい方や、タイムスタンプが不要となる条件を整理したい方は、以下の記事で要件を掘り下げています。
区分3:電子取引データ保存(義務)
区分3は、メール添付のPDF請求書・EDI取引データ・クラウド請求書サービス・Webからダウンロードした領収書など、電子的に授受した取引情報を電子データのまま保存する義務です。所得税と法人税の保存義務者に対して法第7条で明示的に義務化されています。
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
出典:電子帳簿保存法 第7条|e-Gov 法令検索
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
条文の「保存しなければならない」が義務を示す文言です。2024年1月1日以後にやり取りする電子取引データについては、これを紙に印刷して保管するだけの運用は原則として認められません(後述の猶予措置の要件を満たす場合を除く)。
電子帳簿保存法の対象者(法人・個人事業主・規模要件はあるか)
電子取引データ保存(区分3)の対象者は、法第7条本文に「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者」と明記されています。読み解くと、所得税または法人税の申告義務がある事業者は、法人か個人事業主かを問わず対象です。企業規模による適用除外はなく、従業員数や売上高で区切りが設けられているわけではありません。
ただし可視性要件のうち検索機能については、令和5年度税制改正で、基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の事業者や、電子取引データをプリントアウトした書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示できる事業者について、検索機能の全部を不要とする免除の対象が拡大されています。「対象者」からの除外ではなく、「保存要件の一部を免除」する枠が用意されている、という位置づけです。
イ 検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000 万円以下」の保存義務者から「5,000 万円以下」の保存義務者に拡大されました。
出典:電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜|国税庁(PDF)
ロ 対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。
電子帳簿保存法の時系列(令和3年度改正から2024年1月完全義務化まで)
「いつから何が義務になったのか」は、混同されやすい論点の一つです。令和3年度の税制改正で電子取引データの出力書面代替保存が廃止され、令和4年から令和5年末までは経過措置として宥恕措置が置かれ、令和5年度改正でその宥恕措置は廃止されて別建ての猶予措置が新設されました。順を追って整理します。
改正の年表
| 時期 | 令和3年度税制改正(2022年1月1日施行) | 令和4年1月〜令和5年12月末(2年間) | 令和5年度税制改正(2024年1月1日以後の電子取引に適用) | 2024年1月1日以降 |
|---|---|---|---|---|
| 改正・措置 | 電子取引データの出力書面代替保存の廃止/事前承認制度の廃止/タイムスタンプ・検索要件の緩和/重加算税10%加重措置の整備 | 宥恕措置(経過措置) | 宥恕措置の廃止/新猶予措置(相当の理由)の整備/検索機能免除対象者の拡大(1,000万円以下→5,000万円以下) | 電子取引データ保存の完全義務化 |
| 内容の要点 | 電子取引データを紙に印刷して保管する運用が原則として認められなくなる方向性が確定。ただし直後に激変緩和のため経過措置が入る | 電子取引の電磁的記録をやむを得ない事情で保存要件に従って保存できない場合、電子データの単なる保存または出力書面の保存で差し支えないとされた。事前申請不要 | 宥恕措置は適用期限をもって廃止。代わりに「相当の理由」があると認められる場合の新猶予措置が創設された(事前申請不要) | 電子取引データは電子データのまま保存が原則。相当の理由による猶予措置の要件を満たさない限り、出力書面のみの保存は認められない |
出典・参考資料(2件)
宥恕措置(令和4年〜5年12月末)と相当の理由による猶予措置(令和6年以降)の違い
読者が最も取り違えやすいのが、この2つの措置の違いです。名称が近く、両方とも「電子データを電子で保存できない場合の緩和策」として説明されがちですが、認められる対応の範囲と、税務調査で求められる対応が明確に異なります。国税庁は一問一答で次のように区別しています。
令和5年12月末までに行う電子取引を対象とした宥恕措置では、出力書面のみを保存する方法で対応することが認められていましたが、令和6年1月以降に行う電子取引を対象とした猶予措置では、出力書面のみを保存することで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要があります。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月 問89|国税庁(PDF)
要点を整理すると、宥恕措置は「出力書面の保存だけで済ませる」ことを許容していた経過措置で、令和5年12月末で終了しました。令和6年以降の新猶予措置は、電子データ自体を保存しておくことが前提で、そのうえで書面と電子データの両方について税務調査時の提示・提出に応じる必要があります。単なる紙保管への回帰ではありません。
また、「相当の理由」は無条件に認められるものではなく、システム整備が間に合わない・社内ワークフローの整備中である、といった事情が想定される一方、資金繰りや人手不足を単独の理由に据えて要件対応を怠る運用は認められないと国税庁は明言しています。
令和5年度の税制改正において創設された新たな猶予措置の「相当の理由」とは、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められ、保存時に満たすべき要件に従って保存できる環境が整うまでは、そうした保存時に満たすべき要件が不要となります。……ただし、システム等や社内のワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存時に満たすべき要件に従って保存できるにもかかわらず、資金繰りや人手不足等の理由がなく、そうした要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用は受けられないことになります(取扱通達7-12)。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月 問93|国税庁(PDF)
電子帳簿保存法の保存要件をチェックリストで(真実性の確保・可視性の確保)
ここからは、電子取引データ保存(義務化された区分3)で満たすべき要件を、抽象語で終わらせずチェックリスト形式で降ろしていきます。要件は大きく「真実性の確保」と「可視性の確保」の2軸で、それぞれに具体的な選択肢と条件が用意されています。国税庁の一問一答は要件の全体像を次のように示しています。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等に当たっては、真実性や可視性を確保するための要件を満たす必要があります(規則2②一イ、二、⑥五、六、4①)。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月 問18|国税庁(PDF)
○ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件の概要
電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。)
見読可能装置の備付け等
検索機能の確保
次のいずれかの措置を行う(規4①)
一 タイムスタンプが付された後の授受
二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う
四 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、備付け、運用する
真実性の確保(4つの選択肢のいずれかを満たす)
真実性の確保は、次の4つの措置のいずれか1つを満たせば要件を充足します。すべてを実装する必要はありません。国税庁施行規則第4条第1項に、次の4号が明記されています。
- タイムスタンプが付された後の授受:取引情報のやり取り自体を、タイムスタンプが付された電磁的記録として行う。
- 速やかにタイムスタンプを付す:受領後、速やかに(またはその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付与する。通常の期間を採る場合は、期間を規定した事務処理規程を備え付ける。
- 訂正削除の履歴が残るシステム/訂正削除ができないシステムの利用:訂正・削除の事実および内容を確認できるシステム、または訂正・削除自体ができないシステムで授受・保存を行う。クラウドサービスなどで採用される方式。
- 事務処理規程の備付け:正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、規程に沿った運用を行い、電磁的記録の保存と併せて規程を備え付ける。システム導入なしでも要件充足が可能な選択肢。
一 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
出典:電子帳簿保存法施行規則 第4条第1項|e-Gov 法令検索
二 次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことを当該取引情報の授受後、速やかに行うこと。
ロ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
三 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
ロ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
四 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。
可視性の確保(検索要件・見読可能装置・システム概要書)
可視性の確保は、税務調査などで電磁的記録を必要なときに読み出せる状態にしておくための要件です。主な内訳は、モニターやプリンター等の見読可能装置の備付け、システム概要書の備付け(自社開発システムを使う場合)、そして検索機能の確保の3点です。
検索機能は、単に「検索できる」だけでは不十分で、施行規則が3つの具体項目を条件として指定しています。
五 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
出典:電子帳簿保存法施行規則 第2条第6項第5号|e-Gov 法令検索
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
要約すると、日付・金額・取引先の3項目を検索条件として設定でき、日付と金額は範囲指定が可能で、任意の2項目以上を組み合わせられる必要があります。ただし、税務職員によるダウンロードの求めに応じられる状態であれば、ロ(範囲指定)とハ(組合せ)の要件は不要とされる緩和も別途あります(施行規則第4条第1項の括弧書き)。
加えて、令和5年度税制改正では、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者、または電子取引データをプリントアウトした書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出できる事業者について、検索機能の全てが不要となる免除の対象が拡大されました(前掲・令和5年度改正パンフレット)。自社が該当するかは、直近2課税年度の売上高で確認できます。
自社が満たしているかのチェックリスト
ここまでの要件を、自社の運用に当てはめて確認できるチェックリストに落とし込みます。電子取引データ保存(区分3)を対象にした運用チェックです。
- 真実性の確保:タイムスタンプ/訂正削除履歴が残るシステム/訂正削除ができないシステム/事務処理規程の備付、のいずれかが少なくとも1つ実装されているか
- 見読可能装置の備付け:モニター・プリンター等の見読可能装置と操作説明書が備え付けられているか
- システム概要書(自社開発システムを使う場合のみ):システムの概要を記載した書類が備え付けられているか
- 検索機能:日付・金額・取引先の3項目で検索できる状態か(免除対象事業者を除く)
- 範囲指定と組合せ検索:日付・金額の範囲指定と、2項目以上の組合せ検索ができる状態か(税務職員のダウンロード要求に応じられる場合は不要)
- 猶予措置の該当有無:「相当の理由」に該当する事情があり、電子データと出力書面の両方について税務調査時の提示に応じられる状態か(該当する場合は保存要件が不要になる)
電子帳簿保存法に違反したときの罰則(青色申告承認取消・追徴課税・重加算税10%加重)
電子帳簿保存法違反への直接的なペナルティは、要件に従って保存していない状態が青色申告承認の取消し対象になり得ること、電子取引データに関する隠蔽・仮装で重加算税が10%加重されること、の2つが中心です。実処分名と根拠条文を、条文の逐語とセットで示していきます。会社法上の過料との関係は本節末尾で補足します。
青色申告承認取消(法人=法人税法127条/個人事業主=所得税法150条)
電子取引データを法定要件に従って保存していない場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。国税庁は一問一答で次のように示しています。
令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存をもって、当該電磁的記録の保存に代えることはできません。したがって、災害その他やむを得ない事情又は税務署長が相当の理由があると認める事由がなく、その電磁的記録が保存時に満たすべき要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月 問98|国税庁(PDF)
なお、青色申告の承認の取消しについては、違反の程度等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうかを検討した上、その適用を判断しています。
ここで重要なのは、「取消対象となり得る」という表現と「違反の程度等を総合勘案」の運用です。要件を1つ満たしていないことが直ちに自動的に取消しへつながるわけではなく、電磁的記録の備付け・保存の程度、代替となる書面等の備付け・保存の有無、今後の改善可能性などを勘案して判断される、と国税庁は事務運営指針で公表しています。
6 電子帳簿保存法の要件に従っていない場合における青色申告の承認の取消し
出典:法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)第6項|国税庁
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律の要件に従っていない場合における青色申告の承認の取消しに当たっては、電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムの備付け又は保存の程度(電磁的記録に代わる書面等による備付け又は保存の有無とその程度を含む。)、今後の改善可能性等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしいと認められるかどうかを検討し、法第127条第1項の規定の適用を判断する。
根拠条文としては、法人の場合が法人税法第127条第1項第1号、個人事業主の場合は所得税法第150条第1項第1号にあたります。電子帳簿保存法第8条第3項は、これらの条項が電子帳簿保存法第4条・第7条違反にも適用されるよう読み替えを規定しています。
出典・参考資料(1件)
追徴課税
青色申告承認が取り消されると、青色申告特典(青色欠損金の10年繰越し、少額減価償却資産の即時償却、青色専従者給与など)の適用が受けられなくなり、過去に遡っての税負担増(追徴課税)が発生する可能性があります。
また、税務調査で申告漏れや所得の過少計上が指摘されれば、修正申告や更正処分に伴って本税と加算税が課されます。金額の水準は個々の事案によりますが、青色申告取消しの影響は単年度の税額よりも欠損金繰越しの取消しなど中長期にわたる場合があります。
重加算税10%加重(電子帳簿保存法8条5項・国税通則法68条1〜3項)
電子取引データに関して、隠蔽・仮装された事実が電磁的記録に記録されていた場合には、国税通則法上の重加算税(過少申告分35%、無申告分40%、不納付分35%)に加えて、電子帳簿保存法第8条第5項により10%が加重されます。これは電子データが複製・改ざんしやすく痕跡が残りにくいという特性に対応した措置で、国税庁が令和3年度税制改正で整備しました。
5 ……前条の保存義務者により行われた電子取引の取引情報に係る電磁的記録に記録された事項に関し……同法第六十八条第一項から第三項まで(重加算税)の規定に該当するときは、同条第一項から第三項までの重加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、これらの規定に規定する基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で当該期限後申告等の基因となるこれらの電磁的記録に記録された事項に係るもの(隠蔽し、又は仮装された事実に係るものに限る。以下この項において「電磁的記録に記録された事項に係る事実」という。)以外のものがあるときは、当該電磁的記録に記録された事項に係る事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額に限る。)に百分の十の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
出典:電子帳簿保存法 第8条第5項|e-Gov 法令検索
加重の対象になる「隠蔽・仮装」の範囲について、国税庁は「電子データを削除・改ざんするなどして、売上除外や経費の水増しが行われた場合のほか、保存された電子データの内容が取引実態を表していないような場合(架空取引等)」と例示しています。単なる要件不備ではなく、意図的な改ざん行為が対象になる、という位置づけです。
電子取引データは、紙の書類等を保存する場合に比べ、複製・改ざん行為が容易で、その痕跡が残りにくいという特性にも鑑みて、こうした複製・改ざん行為を未然に防止する観点から、電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については、重加算税を10%加重することとされています。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月 問65(要旨)|国税庁(PDF)
参考:会社法上の過料規定(会社法976条)との関係
電子帳簿保存法違反そのものを直接罰する過料規定はありません。ただし会社法第976条は会社法上の会計帳簿の記載・備置き義務違反への一般規定として100万円以下の過料を定めており、電磁的記録の備置義務違反が同時に会社法上の会計帳簿義務違反として問題になり得る、という間接的な関係にあります。
(過料に処すべき行為)
出典:会社法 第976条|e-Gov 法令検索
第九百七十六条 発起人、設立時取締役……取締役、会計参与……監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、……又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。……
七 定款、株主名簿……議事録、財産目録、会計帳簿、貸借対照表、損益計算書……の書面若しくは電磁的記録に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
八 ……帳簿又は書類若しくは電磁的記録を備え置かなかったとき。
電子帳簿保存法違反への直接的なペナルティとしては、青色申告承認取消しと重加算税10%加重が中心線と位置づけて把握するのが適切です。
電子帳簿保存法でよくある誤解(全て電子化しないといけない?/システム導入は必須?/今すぐ対応しなくても罰則はない?)
実務対応の道筋に入る前に、はじめて電子帳簿保存法に向き合う読者が抱きがちな3つの誤解を先回りで解消しておきます。ここを整理せずに次節に進むと、必要以上のシステム投資や、逆に対応の必要性の見落としを招きます。
誤解1:全て電子化しないといけない?
いいえ、義務化されたのは電子取引データ保存(区分3)のみです。電子帳簿等保存(区分1)とスキャナ保存(区分2)は依然として任意で、紙の帳簿・紙の請求書は紙のまま保存する運用が引き続き可能です。紙で受領した請求書は紙のまま7年保存でも問題ありません。義務化の範囲は「電子的に授受した取引情報」に限定されていることを、まず押さえてください。
誤解2:システム導入は必須?
いいえ、システム導入なしでも要件充足は可能です。真実性の確保の4つの選択肢の第4号「事務処理規程の備付け」を選び、可視性の確保の検索要件をファイル名・フォルダ管理で満たせば、既存のPCとフォルダ・共有ストレージだけで運用できます。国税庁は一問一答で具体的なレシピを次のように示しています。
例えば、以下のような方法で保存すれば要件を満たしていることとなります。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月 問19|国税庁(PDF)
1 請求書データ(PDF)のファイル名に、規則性をもって内容を表示する。
例) 2021年(令和3年)1月31日に株式会社霞商店から受領した110,000円の請求書
⇒「20210131_㈱霞商店_110000」
2 「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存する。
3 【問33】に記載の事務処理規程を定めて備付け、定めた規程に沿って運用する。
※ 税務調査の際に、税務職員からダウンロードの求めがあった場合には、上記のデータについて提出してください。
ただし取引件数が増え、担当者が複数になると、命名規則の徹底やフォルダ管理の一貫性を保つのが難しくなり、税務調査時に検索要件を満たせない状態に陥りやすくなります。件数と担当者数が増えたら、システム導入の投資対効果を検討するタイミングになります。
誤解3:今すぐ対応しなくても罰則はない?
いいえ、罰則の対象になり得ます。ただし「相当の理由」の猶予措置により、システム整備が間に合わないなどの事情がある場合には、電子データを単に保存しておき、税務調査時に電子データと出力書面の両方を提示できれば保存要件が不要とされます。事前申請は不要です。
ただし前述のとおり、資金繰りや人手不足を単独の理由に据えて要件対応を怠るケースは猶予措置の対象外と国税庁は明言しており、「後回しにしておけば大丈夫」ではありません。少なくとも電子データそのものは残しておく必要があります。
電子帳簿保存法への対応は負担ばかりが目立つように見えがちですが、実務目線での意味やメリットも押さえたうえで方針を決めたい方は、以下の記事でデメリットとメリットの整理と導入のポイントをまとめています。
電子帳簿保存法への実務対応の道筋(受領チャネル別/手運用/システム導入)
ここからは、実務でどう対応すればよいかを、受領チャネル別の判断と、手運用で乗り切る道/システム導入で自動化する道の選択に分けて整理します。自社の書類の流れに合わせて、必要な範囲を絞り込んでください。
書類の受領チャネル別の対応(紙で受け取った請求書/メール添付PDF・EDI=電子取引)
- 紙で受領した請求書・領収書:紙のまま7年保存する運用で問題ありません。任意でスキャナ保存(区分2)を選ぶ場合のみ、解像度・タイムスタンプ・検索要件などの技術要件を満たす必要があります。
- メール添付のPDF請求書・領収書:電子取引データ保存(区分3)に該当し、電子データのまま保存が義務です。メール本文と添付ファイルをセットで保存する、あるいはPDFをファイル名規則に沿って命名し検索できるフォルダに保管する対応が必要です。
- EDIによる取引データ:法第2条第5号の「電子取引」に該当し、区分3の義務対象です。EDIシステムのログや電文をエクスポートし、真実性・可視性の要件を満たす形で保存します。
- クラウド請求書サービス・Webからダウンロードした領収書:これも区分3の対象です。ダウンロードしたPDFを社内で保存するか、サービスが電子帳簿保存法対応の保管機能を備えている場合はそこに集約する運用も選べます。
メール添付PDFやEDIで届く請求書の受領を、代理受領・データ化・電子保存まで一体で仕組み化したい場合は、請求書受領サービスの比較記事もあわせてご覧ください。
手運用で乗り切る道(事務処理規程+日付・金額・取引先の命名規則+検索できるフォルダ管理)
取引件数が少なく、まずコストをかけずに要件を満たしたい場合の道筋です。国税庁は事務処理規程のひな型(法人の例・個人事業者の例)を一問一答問33で公開しています。
この規程については、どこまで整備すればデータ改ざん等の不正を防ぐことができるのかについて、事業規模等を踏まえて個々に検討する必要がありますが、必要となる事項を定めた規程としては、例えば、次のようなものが考えられます。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和8年7月 問33|国税庁(PDF)
(法人の例)
電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程
第1章 総則
(目的)
第1条 この規程は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律第7条に定められた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務を履行するため、○○において行った電子取引の取引情報に係る電磁的記録を適正に保存するために必要な事項を定め、これに基づき保存することを目的とする。
手順の骨格は次のとおりです。
- 国税庁の事務処理規程ひな型をベースに、自社の担当者名・保存場所・訂正削除の手続きを定めて備え付ける。
- PDF請求書などのファイル名を「日付_取引先_金額」の規則で統一する(例:20260131_株式会社霞商店_110000.pdf)。
- 取引先ごと、または月ごとにフォルダを分けて共有ストレージに保管し、OSやクラウドストレージの検索機能で日付・金額・取引先を検索できる状態を保つ。
- 税務調査時にダウンロードの求めがあった場合に応じられるよう、電子データそのものを保存し続ける。
システム導入で自動化する道(判断のポイント)
取引件数が多い、複数拠点や複数担当者で運用する、既存の会計・請求書・経費精算システムと連携させたい、といったニーズがある場合は、電子帳簿保存法対応システムの導入が現実的な選択肢になります。国税庁は認証制度としてJIIMA認証(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が発行)を案内しています。
公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA(ジーマ))の認証を受けたソフト(「デジタルシームレスソフト」と「電子帳簿ソフト」)は、税制上の優遇措置を受けるための機能要件を満たしています。パッケージや説明書に、「JIIMA認証マーク」がついていますので、ご購入の際に参考にしてくださいね! 認証を受けたソフトの一覧は、JIIMAのホームページに掲載されていますので、是非ご活用ください。
出典:電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月)|国税庁(PDF)
手運用で乗り切る道もありますが、取引件数や担当者数が増えると命名規則の徹底やフォルダ管理の一貫性の維持が難しくなり、投資対効果を検討するタイミングになります。カテゴリ全体の資料を一括で取り寄せて比較したい方は、まず下記から資料請求できます。
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電子帳簿保存法に対応するシステム/サービスを活用する
電子帳簿保存法対応システムの選び方の要点を押さえた上で、電子帳簿等保存(会計ソフト側)と電子取引データ保存(請求書受領側)の両方をカバーする代表的なサービスを紹介します。
電子帳簿保存法対応システムの選び方
電子帳簿保存法対応システムを検討する際は、次の3つの軸で候補を絞り込むと、自社に合う選択肢が明快になります。
- JIIMA認証の有無と取得区分:電子帳簿ソフト認証、スキャナ保存ソフト認証、電子取引ソフト認証、電子書類ソフト認証の4種類があり、自社が対応したい区分(電子帳簿等保存/スキャナ保存/電子取引データ保存)と一致するものを備えているかを確認する。
- 対応区分の広さ:会計ソフト側で3区分のうちどこまでをカバーするか、請求書受領側で電子取引データの検索・訂正削除履歴・タイムスタンプ機能をどう実装しているかを確認する。
- 既存の会計・請求書・経費精算システムとの連携:新規導入だけでなく、現在利用中のシステムとどう接続するか(API連携・CSV連携・シリーズ内連携)を確認する。仕訳への自動反映まで含めると業務効率が大きく変わる。
| サービス名 | 弥生会計 Next | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 勘定奉行クラウド | Bill One 請求書受領 | マネーフォワード クラウド債務支払 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| サービス種別 | 会計ソフト | 会計ソフト | 会計ソフト | 会計ソフト | 請求書受領 | 請求書受領・支払 |
| カバーする電帳法区分 | 区分1・区分3 (電子帳簿等保存/電子取引データ) | 区分1・区分2・区分3 (会計本体+AI-OCR+電子取引) | 区分1・区分2・区分3 (会計本体+AI-OCR+電帳法対応Box) | 全3区分 (電子帳簿等保存/スキャナ/電子取引) | 区分2・区分3 (受領側の実務対応) | 区分2・区分3 (受領・支払を一体化) |
| JIIMA認証 | 要問い合わせ (Next単体の認証情報を 公式で未確認) | 2区分取得 (電帳法スキャナ保存/電子取引) | 要問い合わせ (無印単体の認証情報を 公式で未確認) | 4区分すべて取得 (電帳法スキャナ保存/電子帳簿/ 電子取引/電子書類) | 電子取引ソフト認証取得 (2022年4月) | 2区分取得 (電帳法スキャナ保存/電子取引) |
| 対象読者層 | 中小法人 | 個人事業主〜中堅・上場 | ひとり法人〜中小 (〜50名想定) | 小規模〜中小 (中堅・大企業は上位ERP) | 中小〜大企業 | 中小〜中堅 (内部統制含む) |
| 既存システム連携 | 弥生シリーズ内で 会計・請求・経費・証憑を一体化 | 1,000超の金融機関・ 外部サービスとAPI連携 | 2,300以上の金融関連サービスと連携 MFクラウドシリーズ内連携 | 奉行シリーズ内連携 奉行APIコネクトサービス | API連携 FBデータ生成 | MFクラウド会計と API/CSV連携 |
| 月額料金(税抜・目安) | 2,900円〜 (エントリー年契約) | 2,980円〜 (ひとり法人・年払い) | 2,480円〜 (ひとり法人・年払い) | 7,750円〜 (Eシステム・年額の月額換算) | 要問い合わせ (受領件数に応じた年額制) | 2,480円〜 (税抜・年払い、パッケージ) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
電子帳簿保存法対応の主要サービス
1. 弥生会計 Next(弥生株式会社)

弥生会計 Next は、1978年に事業を開始した弥生株式会社が2025年4月に正式リリースした法人向けクラウド会計ソフトです。証憑管理と会計を一体化しているため、電子取引データの受領から仕訳登録までを同一画面で完結でき、電子帳簿等保存の運用に沿ったUIになっています。
はじめて会計ソフトを検討する方でも名前を聞いたことがある中小法人〜個人事業主層向けの老舗ブランドで、個人事業主は同シリーズの「やよいの青色申告 オンライン」が該当します。
JIIMA認証は弥生会計 Next 単体としての取得情報が公式に公表されていないため、電子取引データ保存で認証取得の裏づけを重視する場合は姉妹製品の認証状況を弥生公式サイトで確認するか、認証取得を明示している他候補を検討してください。
2. freee会計(フリー株式会社)

証憑管理と会計を統合した中小事業者向けクラウド会計として運営されているのが、フリー株式会社(東証グロース上場)の freee会計です。JIIMA認証のうち「電子取引ソフト法的要件認証」と「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」を2022年8月に取得済みで、電子取引データ保存とスキャナ保存の両方に法的要件を満たす形で対応します。
個人事業主から中小企業までを想定したUI設計と、銀行・クレジットカード・請求書サービスとのAPI連携の広さが特徴です。JIIMA認証を目印に電子帳簿保存法対応を確かめたい場合、候補に入りやすいサービスです。
3. マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド会計は、ひとり法人〜中小企業を主対象とするクラウド会計サービスです。電子帳簿保存法対応の証憑保管Box機能と、インボイス制度・電子帳簿保存法対応のAI-OCR自動仕訳機能を2023年7月に提供開始しています。
freeeと並ぶ中小事業者向けの選択肢で、既存の会計運用からの乗り換えでも仕訳ルールを引き継ぎやすい設計です。同社は上位版「マネーフォワード クラウド会計Plus」(IPO準備・中堅企業向け)も別プロダクトとして提供しています。
JIIMA認証は無印のクラウド会計単体としての取得情報が公式に明示されていないため、対応区分の裏づけを重視する場合はマネーフォワード公式サイトの最新の対応状況を確認してください。
4. 勘定奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

奉行シリーズの中核を担うクラウド会計として、株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC、1980年設立、東証プライム上場)から提供されているのが勘定奉行クラウドです。JIIMA認証を「電帳法スキャナ保存ソフト」「電子帳簿ソフト」「電子取引ソフト」「電子書類ソフト」の4種すべて取得しており、電子帳簿保存法対応の証跡の明快さが特徴です。
中堅企業以上の内部統制ニーズに応える承認フロー・権限管理・監査ログを備え、奉行シリーズの人事・給与・販売など他モジュールとの連携も強みです。電帳法対応の証跡を稟議書に添付したい規模の企業に向いています。
5. Bill One 請求書受領(Sansan株式会社)

紙・メール添付PDF・アップロード・Peppol e-invoiceなどあらゆる形式の請求書を代理受領してデータ化する請求書受領クラウドが、Sansan株式会社(東証プライム上場)の Bill One 請求書受領です。電子帳簿保存法対応の保管・原本管理を標準装備で提供します。
2024年1月に義務化された電子取引データ保存の実務対応を、受領側で一元化したい企業に向く選択肢です。紙で届く請求書もスキャン代行で電子化されるため、区分2(スキャナ保存)と区分3(電子取引データ保存)を横断して統一運用できます。
6. マネーフォワード クラウド債務支払(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド債務支払は、請求書受領からデータ化、承認フロー、支払処理、内部統制まで一体で扱う「クラウド債務支払」型のサービスです。電子帳簿保存法対応の保管機能に加えて、中堅企業以上の承認プロセスを組み込んだ運用に対応します。
Bill Oneが代理受領・データ化を軸に据えるのに対し、こちらは支払・内部統制まで一気通貫でカバーする点が異なります。マネーフォワード クラウドシリーズの他プロダクト(会計・請求書・給与など)との連携も同シリーズ内で強みです。
また、電子帳簿保存法対応に限らず、資金繰り管理や予実管理まで含めたクラウド財務管理システム全体をタイプ別に比較検討したい方は、以下の記事もご参照ください。
財務管理システムおすすめ18選を比較|機能・料金・タイプ別の選び方を解説
決算や資金繰り、予算と実績の管理を表計算ソフトと手作業で回し、月次の集計や転記に追われていませんか。担当者しか中身がわからない、入力ミスに気づけない、経営層が求める数字をすぐに出せないといった悩みは、多くの経理財務部門に共通します。 こうし…
まとめ
電子帳簿保存法は、電子取引データについては2024年1月以降、原則として電子データのまま保存することが義務化された法律です。読了時点で押さえておきたい要点を、冒頭の4項目に戻って再掲します。
- 何の法律か:電子取引データの電子保存義務と、電子帳簿等保存・スキャナ保存の任意選択制度を定めた法律です。
- 誰が対象か:所得税・法人税の申告義務がある法人・個人事業主すべて。規模要件はなく、検索機能は基準期間売上高5,000万円以下で全部免除の対象になります。
- 今の現状:2024年1月から電子取引データ保存は義務。宥恕措置は令和5年12月末で終了、令和6年以降は「相当の理由」による猶予措置に一本化されました。
- 守らないと:青色申告承認の取消し対象(総合勘案で判断)と、電子取引データの隠蔽・仮装があった場合の重加算税10%加重が主要なペナルティです。
実務対応は、取引件数が少ないうちは事務処理規程+命名規則+フォルダ管理の手運用で乗り切る道があり、件数が増えたら会計ソフト側(電子帳簿等保存)と請求書受領側(電子取引データ保存)の両方向からシステム導入を検討する道があります。自社の運用に合った道筋を、まずは3区分のどれが該当するかの見極めから始めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 電子帳簿保存法とは何ですか?
A. 電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿書類を電子データで保存する場合の要件と、電子取引で授受した取引情報を電子データのまま保存する義務を定めた法律です。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」で、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3区分から構成されます。
このうち電子取引データ保存だけが所得税・法人税の保存義務者に義務化されており(法第7条)、残る2区分は任意選択の制度です。
Q. 電子帳簿保存法で保存義務の対象となる「電子取引」には具体的にどのような取引が含まれますか?
A. 電子取引は、取引情報(注文書・契約書・請求書・領収書等に通常記載される事項)を電磁的方式でやり取りしたすべての取引を指します。代表例は、メール添付で受領・送信したPDFの請求書や領収書、EDIで授受した取引データ、ECサイトから購入した明細、クラウド請求書サービスで発行・受領したデータ、Webサイトからダウンロードした領収書などです。
同じ取引先と紙のやり取りも並行して行っている場合でも、電子で授受した分は電子データのまま保存する必要があります(法第7条)。
Q. 電子帳簿保存法で電子取引データを保存すべき期間は何年ですか?
A. 電子取引データの保存期間は、紙の帳簿書類と同じく法人は原則7年、青色申告で欠損金が生じた事業年度分は10年です(法人税法施行規則59条ほか)。個人事業主も青色申告・白色申告のいずれも原則7年(一部書類は5年)で、電子データの場合も紙の場合と同じ期間の保存が求められます。
要件を満たした状態で指定期間保存し続けられるよう、途中でシステム変更や退職者の引継ぎがあっても検索・提示できる運用設計が前提になります。
Q. 電子帳簿保存法は個人事業主やフリーランスも対象になりますか?
A. 個人事業主やフリーランスも電子取引データ保存の対象です。法第7条が「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く)及び法人税に係る保存義務者」と定めており、法人格の有無や規模による適用除外はありません。
ただし令和5年度税制改正で、基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の事業者、または電子取引データをプリントアウトした書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示できる事業者は、可視性要件のうち検索機能の全部が不要とされました。多くの個人事業主・フリーランスがこの免除に該当し得ますが、電子データそのものの保存義務と真実性の確保(事務処理規程の備付け等)は変わらず必要です。
Q. 電子帳簿保存法の対象データを紙に印刷したうえで元の電子データを削除してしまった場合はどうなりますか?
A. 2024年1月以降にやり取りした電子取引データについては、紙の出力だけを残して元の電子データを削除した状態は原則として要件違反にあたります。
国税庁は令和6年以降の猶予措置について「出力書面のみを保存することで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要があります」と一問一答で明示しており(問89)、紙保管への回帰は認められません。
誤って削除した場合は、まず取引先やクラウドサービスから電子データを再取得できるかを確認し、再取得が難しい場合は事務処理規程で再発防止の手順を明文化したうえで、税務調査時に経緯を説明できる社内記録を残しておくことが実務的な対応になります。
Q. クラウド請求書サービス上で請求書を閲覧できる状態なら、自社で別途データを保存する必要はありませんか?
A. クラウドサービス側で閲覧できるだけでは要件充足とは言えず、そのサービスが電子帳簿保存法対応(真実性・可視性の要件を満たす保管機能)を明示している場合に限り、サービス側の保管を自社の保存に位置づけることができます。
判断軸としては、JIIMA認証(電子取引ソフト認証など)の有無、検索要件(日付・金額・取引先)の実装、訂正削除履歴が残るか訂正削除自体ができない仕様か、を確認するのが実務的です。
対応の明示がないサービスや、契約解除・サービス終了で過去データにアクセスできなくなるリスクがある場合は、自社側で定期的にエクスポートして保管する運用を並行して持つ必要があります。
Q. 電子帳簿保存法の「相当の理由」による猶予措置を受けるには税務署への事前申請が必要ですか?
A. 猶予措置に事前申請は不要です。税務調査等で「相当の理由」があると認められれば、保存時に満たすべき要件が不要となる救済措置で、書面や電子データの提示・提出に応じられる状態であれば適用を受けられます。
ただし国税庁は「システム等や社内のワークフローの整備が間に合わない」等の事情を例示する一方、「システム等や社内のワークフローの整備が整っており……資金繰りや人手不足等の理由がなく、そうした要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用は受けられない」と明言しています(一問一答問93)。
事前申請がないぶん、税務調査時に理由を説明できる社内記録(システム選定の検討経緯・導入スケジュール等)を残しておくことが実質的な備えになります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















