顧問税理士に決算や税務を任せている中小企業では、毎月の給与計算がひとりの経理担当者に集中しがちです。住民税の更新、社会保険料の改定、通勤手当や残業代の集計、そして年末調整まで抱え込む状況が続くと、「そういえば、この給与計算も顧問税理士にお願いできないだろうか」という発想が自然に浮かびます。
もっとも、給与計算は税務と労務が交わる業務です。税理士に頼んでよい範囲、社労士でなければ扱えない範囲、そして給与計算アウトソーシング会社という第三の選択肢のあいだで、どの依頼先にどこまで任せられるかは、税理士法と社会保険労務士法の条文で線引きされています。
本記事では、税理士に給与計算を依頼できるかという結論を条文レベルで示したうえで、税理士・社労士・給与計算アウトソーシング会社の3者について、業務範囲と規模別の費用相場を比較します。まず顧問税理士にいくらで頼めるかを確認し、必要に応じて他の依頼先と比較検討する際の判断材料としてご活用ください。
目次
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税理士に給与計算を依頼できるのか|税理士法・社労士法から見た結論
結論として、税理士に給与計算を依頼することは違法にはなりません。ただし、給与計算に付随する業務を細かく見ていくと、次の三区分に分かれます。給与計算の実務そのものには資格制限がなく誰でも扱えますが、年末調整に伴う源泉徴収票や給与支払報告書などの税務書類の作成は税理士の独占業務、社会保険や労働保険の手続きは社労士の独占業務です。
この線引きを踏まえたうえで、給与計算を税理士に頼む場合と、社労士や給与計算アウトソーシング会社に頼む場合とで、扱える範囲がどう変わるかを整理していきます。
先に依頼者側の目線で結論を明示すると、顧問税理士や資格を持つ税理士事務所に給与計算を依頼するぶんには、依頼者である事業者側に罰則が科されることはありません。以下で触れる税理士法・社会保険労務士法の罰則条項は、いずれも「無資格の受託者が業として独占業務を行った場合」を対象とした規定です。
依頼先が資格保有者である限り、線引きの整理はあくまで「どの依頼先にどこまで任せられるか」を判断するための知識として押さえておけば十分です。
給与計算業務そのものに資格制限はない
毎月の給与計算業務、つまり支給額の算定・所得税や住民税の源泉徴収額の計算・社会保険料や雇用保険料の控除計算・給与明細の発行までは、いずれの法律でも特定の資格を必要としていません。企業内の担当者が自社で行うこともでき、外部に委託する場合の受託者にも資格要件はありません。
ただし、外部委託の場合に限っては、後述する年末調整に伴う税務書類の作成と、社会保険・労働保険の手続き代行の2つが独占業務として関わってきます。ここが違法性の分岐点になります。
税理士の独占業務は税務書類の作成
税理士法第2条は、税理士が行う業務として税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つを定めています。給与計算に関わってくるのは第1項第2号の「税務書類の作成」で、年末調整の結果として作成される源泉徴収票や給与支払報告書は、税務官公署に提出する法定調書として本号の対象になります。
(税理士の業務)
出典:税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第2条|e-Gov 法令検索
第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(略)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(略)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。
第2条第2項では、税理士業務に付随する範囲で、財務書類の作成や会計帳簿の記帳代行などを税理士が業として行えることも定めています。給与計算は「会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務」の一部として、この付随業務の範囲に含まれると解されており、税理士が顧問先の給与計算を月次で受託しても差し支えありません。
また、税理士法第52条は「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」と定めており、無資格者が税務書類の作成を業として行うことを禁じています。違反した場合は、税理士法第59条により2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。
出典・参考資料(1件)
社労士の独占業務は社会保険手続きと帳簿書類の作成
社会保険労務士法第2条は、社労士の業務として労働・社会保険諸法令に基づく申請書等の作成(1号業務)、その提出代行(1号の二業務)、帳簿書類の作成(2号業務)、労務相談(3号業務)などを定めています。給与計算に関わる社会保険料や労働保険料の月額改定手続き、算定基礎届・月額変更届・雇用保険資格取得届などが1号業務にあたります。
(社会保険労務士の業務)
出典:社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)第2条|e-Gov 法令検索
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(略)をいう。以下同じ。)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(略)を作成すること。
三 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること(略)。
社労士法第27条は、社労士または社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から2号に掲げる事務を業として行うことを禁じています。違反した場合は、社労士法第32条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。無資格者が算定基礎届や雇用保険資格取得届などの申請書等を業として作成すれば、この禁止に抵触する可能性があります。
ただし第27条にはただし書きがあり、政令で定める業務に付随して行う場合は禁止から外れます。具体的な範囲は社会保険労務士法施行令第2条が定めており、税理士が税理士業務に付随して行う場合はこの例外にあたります。
つまり、税理士が顧問先の給与計算に付随して賃金台帳などの帳簿書類を扱っても、社労士法違反にはあたりません。ただし、税理士業務そのものと切り離せない付随の範囲を超え、算定基礎届の作成・提出代行など社会保険手続き自体を業として担うと、施行令の射程から外れて社労士法違反となる余地があります。
給与計算を外注する場合の費用相場|税理士・社労士・アウトソーシング会社の規模別比較
給与計算の外注費用は、依頼先(税理士・社労士・給与計算アウトソーシング会社)と従業員規模で幅があります。ここでは、月額の目安と料金の構造、そして規模別に3者を並べた費用感を整理します。
相場を見る前提として、税理士や社労士の給与計算業務について、公的団体が公表する料金相場データは現在存在しません。税理士報酬規程は2002年4月に、社会保険労務士報酬基準は2003年に、いずれも法改正で廃止されており、日本税理士会連合会や全国社会保険労務士会連合会が公式に相場を公表する仕組みは残っていません。
本節で示す金額は、2026年時点で個別の税理士事務所・社労士事務所・給与計算アウトソーシング会社が公式サイトで公開している料金体系を横断的に集めた目安です。全社連の「2024年度 社労士実態調査 調査結果 概要」でも、給与計算業務の需要は5年前と比べて50.1%の社労士が「増えた・やや増えた」と回答しており(増えた16.9%+やや増えた33.2%)、外注需要そのものは拡大局面にあります。
費用の基本構造
依頼先を問わず、給与計算の外注費用は「基本料金+従業員1人あたりの単価」の組み合わせで見積もられるのが一般的です。基本料金は毎月固定でかかる部分、1人あたり単価は従業員数に応じて増える変動部分になります。従業員数が少ないと基本料金の割合が重く1人あたり単価が割高に感じられ、規模が大きくなると1人あたり単価の水準が全体費用を左右するようになります。
これに加えて、年末調整・賞与計算・住民税更新などの季節業務は、多くの場合、月額とは別のオプション料金として設定されます。年末調整は「1人あたり◯円×従業員数」で加算されるのが典型で、住民税更新(5〜6月)や社会保険の算定基礎(7月)も別料金となる事務所があります。見積もりを比較する際は、月額の数字だけでなく年間の合計費用でそろえて確認するのが実務上は分かりやすくなります。
規模別に見る3者の費用感
以下は、従業員5・10・20・30・50・100人の規模別に、税理士・社労士・給与計算アウトソーシング会社それぞれの月額の目安を並べたものです。前述のとおり公的な相場データは存在しないため、複数の事務所・サービスが公式サイトで公開している料金体系を集めた目安として参照してください。
| 従業員規模 | 税理士 | 社労士 | 給与計算アウトソーシング会社 | 年末調整オプション (年1回・別途/税理士に依頼する場合。 社労士・アウトソーシング会社は 提携税理士経由となり別建て) |
|---|---|---|---|---|
| 5人 | 10,000〜15,000円 | 15,000〜25,000円 | 30,000〜50,000円 | 5,000〜15,000円 |
| 10人 | 15,000〜25,000円 | 20,000〜30,000円 | 30,000〜60,000円 | 10,000〜30,000円 |
| 20人 | 25,000〜40,000円 | 30,000〜45,000円 | 40,000〜70,000円 | 20,000〜60,000円 |
| 30人 | 40,000〜55,000円 | 40,000〜55,000円 | 50,000〜90,000円 | 30,000〜90,000円 |
| 50人 | 60,000〜85,000円 | 60,000〜80,000円 | 70,000〜130,000円 | 50,000〜150,000円 |
| 100人 | 100,000〜150,000円 | 100,000〜140,000円 | 100,000〜200,000円 | 100,000〜300,000円 |
3者の月額を横並びで見ると、給与計算アウトソーシング会社の水準が税理士・社労士より2〜3倍程度高く見えます。ただしこれは同じ「給与計算だけの料金」を単純比較したものではありません。
給与計算アウトソーシング会社の月額は、記帳・請求書発行・支払・月次決算などを含む経理BPOのパッケージ料金として提示されるケースが多く、税理士・社労士に給与計算だけを頼む料金と単純比較はできません。給与計算単体プランを提供している事業者もあるので、比較検討時は「月額に何が含まれるか」を必ず確認してください。
参考として、上記の目安の集計に含めた代表的な公開料金の例を挙げます(いずれも2026年6月時点)。
給与計算アウトソーシング会社の側では、Wheat Accounting が公式サイトで「スモール 30,000円〜/スタンダード 40,000円〜/アドバンス 60,000円〜」の3プランを提示、マネーフォワード おまかせ経理は個別見積もりを前提に「従業員5名規模で月10万円(税抜)」の事例を公式に提示しています。
税理士・社労士側は複数事務所の料金ページを横断集計しており、上記の幅の下限側は「基本料金+1人あたり単価」を最小構成で見積もった水準、上限側はオプションを含めた実勢寄りの水準として捉えてください。
出典・参考資料(3件)
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税理士・社労士・給与計算アウトソーシング会社の3者比較(役割・独占業務)
費用の目安を掴んだら、次に確認したいのは「誰にどこまで頼めるのか」という業務範囲です。給与計算そのものは3者いずれにも依頼できますが、年末調整の税務書類作成や社会保険・労働保険の手続きなど、独占業務が絡む領域では依頼先が変わります。ここでは、給与計算に関わる主要業務について、税理士・社労士・給与計算アウトソーシング会社の3者を横並びで整理します。
3者の業務範囲を一覧で見る
給与計算に関連する主要な業務を行ごとに並べ、3者がそれぞれ対応できるかを整理しました。独占業務にあたる項目は、根拠となる条文を右端の列に添えています。
| 業務 | 税理士 | 社労士 | 給与計算アウトソーシング会社 | 独占業務の根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 毎月の給与計算 | ● | ● | ● | ―(独占業務なし) |
| 年末調整(税務書類作成) | ● | × | △(提携税理士が担当) | 税理士法 第2条第1項第2号 |
| 扶養控除等申告書の受領・保管 | ● | ● | ● | ―(給与支払者の事務) |
| 社会保険手続き(算定基礎届等) | × | ● | △(提携社労士が担当) | 社労士法 第2条第1項第1号 |
| 労働保険手続き(労災・雇用保険) | × | ● | △(提携社労士が担当) | 社労士法 第2条第1項第1号 |
| 就業規則の作成・変更 | × | ● | △(提携社労士が担当) | ―(独占業務なし) |
| 助成金申請 | × | ● | △(提携社労士が担当) | 社労士法 第2条第1項第1号 |
| 労務相談 | × | ● | △(提携社労士が担当) | ―(独占業務なし) |
税理士に依頼できる範囲
税理士に依頼できるのは、毎月の給与計算・源泉徴収税額の計算・年末調整・源泉徴収票や給与支払報告書などの法定調書の作成・法人税や所得税に関する税務相談の一連の業務です。年末調整に伴う税務書類の作成は税理士の独占業務なので、月次から年末調整・法定調書提出までを一本化しやすい点が特徴です。
一方、社会保険や労働保険の手続き代行、就業規則の作成・変更、労務相談、助成金申請などは税理士の業務範囲ではありません。これらを併せて依頼したい場合は、社労士との連携が必要になります。
社労士に依頼できる範囲
社労士に依頼できるのは、毎月の給与計算・社会保険料や雇用保険料の控除計算・算定基礎届や月額変更届などの社会保険手続き・労災や雇用保険の労働保険手続き・就業規則の作成や変更・労務相談・助成金申請などです。
給与計算と社会保険手続きは実務上ひとつながりの業務なので、社労士事務所では両方をセットで受託するのが一般的です。前節でも触れた全国社会保険労務士会連合会「2024年度 社労士実態調査 調査結果 概要」の需要増加データも、この実務動向を裏づけています。
ただし、年末調整の税務書類作成は税理士の独占業務にあたるため、社労士単独では完結できません(分業の考え方は後述の第5節「年末調整はどちらに頼むか」で扱います)。
給与計算アウトソーシング会社に依頼できる範囲
給与計算アウトソーシング会社は、給与計算・住民税更新・賞与計算・給与明細の発行・振込データの作成などを、専門のオペレーションと給与計算システムを組み合わせて受託します。多くの事業者では、税理士や社労士と提携し、年末調整の税務書類作成や社会保険手続きは提携先の資格者が担う体制を組んでいるため、実務上は依頼窓口を一本化しつつ独占業務も適法にカバーできます。
強みは、従業員数の増減に応じて処理能力を柔軟に調整できる点と、給与計算システムの導入・保守を含めた費用が定額化しやすい点です。従業員数が数十人を超え、税理士事務所や社労士事務所のキャパシティを圧迫し始める規模になると、アウトソーシング会社が有力な選択肢に入ってきます。
税理士・社労士それぞれに依頼するメリットと注意点
3者の業務範囲を踏まえたうえで、税理士・社労士それぞれに給与計算を依頼する場合の利点と注意点を整理します。判断材料になるように、両者を対称の構造で並べています。
税理士に依頼するメリットと注意点
メリット
税理士に給与計算を依頼するメリットは、月次計算から年末調整・法人税申告までを税務の観点で一本化できる点にあります。給与データは法人税の損金算入や役員報酬の期中改定と密接に関わるため、税務判断とセットで動かせる依頼先は経理業務の連動性を高めます。顧問税理士がいる企業では既存の情報連携ルートに乗せられ、追加の情報共有負担が小さく済みます。
注意点
注意点は、社会保険・労働保険の手続き、就業規則、労務相談、助成金申請などが対象外になる点です。従業員数が増えて労務まわりの手続きが煩雑になると、税理士だけでは対応しきれない領域が広がります。また、給与計算業務そのものを税理士事務所内でどこまで内製しているかは事務所によって差があり、社労士や給与計算専門スタッフとの提携体制を確認しないと、料金や納期がぶれる場合があります。
社労士に依頼するメリットと注意点
メリット
社労士に給与計算を依頼するメリットは、社会保険料・労働保険料の月額改定、算定基礎届や月額変更届の手続き、労務相談、助成金申請までをまとめて任せられる点です。従業員数の増加に伴って発生する手続き業務を実務のワンフローとして扱えるため、規模拡大局面での運用負荷を抑えられます。就業規則の整備や労働基準法対応の相談窓口としても機能します。
注意点
注意点は、年末調整の税務書類作成が税理士の独占業務にあたるため社労士単独では完結できないことです(分業パターンは後述の第5節「年末調整はどちらに頼むか」で扱います)。税務相談・法人税申告についても社労士の対象外なので、税務判断が必要な局面では別の専門家が必要になります。
年末調整はどちらに頼むか|税理士独占業務の範囲を切り分ける
月次の給与計算を社労士に頼んだ場合、年末調整もまとめて任せられるかが実務上の論点になります。ここでは、年末調整のどの部分が税理士の独占業務にあたり、どの部分が社労士や自社でも扱えるのかを切り分けたうえで、月次と年末調整を分業する運用パターンを示します。

年末調整のうち税理士独占業務にあたる範囲
年末調整そのものの定義は、国税庁「令和7年分 年末調整のしかた」が次のように示しています。
このような不一致を精算するため、1年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税額を正しく計算し、それまでに徴収した税額との過不足額を求め、その差額を徴収又は還付し精算することが必要となります。この精算の手続を「年末調整」と呼んでいます。
出典:令和7年分 年末調整のしかた|国税庁
年末調整の主体は給与の支払者(雇用主)である点も同解説で明示されており、実務を外部に業として委託する場合、税理士の独占業務にあたる範囲がどこかを条文と対応させて確認する必要があります。
税理士法第2条第1項第2号は「税務書類の作成」を税理士業務と定めています。年末調整で作成される源泉徴収票や市区町村に提出する給与支払報告書は、国税庁「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」でも法定調書として位置づけられ、税務官公署に提出する書類の作成にあたります。これらを第三者に業として委託する場合、受託者は税理士でなければなりません。
社労士・自社でも可能な周辺業務
年末調整に関連する業務のうち、扶養控除等(異動)申告書の受領と保管、保険料控除申告書・住宅ローン控除申告書などの必要書類の回収は、給与の支払者としての事務であり、税務書類の「作成」にはあたりません。
国税庁「令和7年分 年末調整のしかた」でも、これらの申告書は原則として本年最初に給与の支払を受ける時までに給与の支払者に提出することとされており、受領・保管は自社(給与の支払者)の役割として整理されています。
したがって、扶養控除等申告書の配布・回収・確認・保管や、給与所得者から提出された保険料控除証明書の整理までは、社労士・給与計算アウトソーシング会社・自社の総務いずれでも実務上取り扱えます。年末調整のうち税理士でなければ扱えないのは、集約されたデータをもとに年税額を計算し、源泉徴収簿への記載を経て、源泉徴収票や給与支払報告書を法定調書として仕上げる部分です。
月次を社労士・年末調整を税理士に分業する運用パターン
この切り分けを踏まえた実務上の運用パターンとして、月次の給与計算と社会保険手続きを社労士に、年末調整の税務書類作成を税理士に分けて依頼する形が取れます。従業員からの申告書の回収と1次確認は自社(または社労士側)で行い、年末調整期には社労士から税理士へ集計データを引き継いで、税理士側で源泉徴収票・給与支払報告書の作成と提出を担う流れになります。
この運用を採る場合は、社労士と税理士のあいだの情報連携ルート、年末調整期のデータ提出期限、料金分担(社労士の月次料金と税理士の年末調整オプション)をあらかじめ整理しておくと、繁忙期のトラブルを避けやすくなります。給与計算アウトソーシング会社を使う場合も、多くは提携先の税理士・社労士が独占業務を担う体制のため、窓口を一本化しつつ同様の分業を実現できます。
顧問税理士に給与計算を追加で頼む場合の考え方|顧問料内か別料金か
すでに顧問税理士がいる中小企業では、給与計算をどう扱うかを最初に顧問に相談するのが自然な流れです。ここでは、顧問料に含まれる範囲と別料金になる範囲の一般的な傾向と、顧問への切り出し方、対応不可・高額な場合の次の一手を整理します。
顧問料に含まれる範囲・別料金になる範囲の一般傾向
税理士報酬規程が2002年に廃止されて以降、顧問料の内訳や付随業務の扱いは事務所ごとに異なる料金体系となっています。ただし各事務所が公開している料金表を横断的に見ると、月次の記帳指導・決算・法人税申告書の作成までを顧問料の基本パッケージとする形が一般的で、給与計算・年末調整・償却資産税申告・法定調書作成などは付随業務として別料金に切り出されるケースが多く見られます。
給与計算については、従業員数が数人程度なら顧問料に含めて対応する事務所もありますが、10人を超えるあたりから「基本料金+1人あたり単価」で別途見積もる形が一般的です。年末調整も、1人あたり数千円程度の別料金として設定されるのが典型的です。
顧問への切り出し方
顧問税理士に給与計算を追加で頼む相談を切り出す際は、以下の5点を整理して伝えると、見積もりが具体化しやすくなります。
- 現在の従業員数と今後の見込み
- 毎月の給与支給日と締め日
- 賞与の有無と年何回か
- 年末調整の対象人数
- 現在利用している給与計算ソフトの有無
事務所側は、この情報から月あたりの想定工数と、年末調整の追加費用を積み上げて回答することになります。
相談のタイミングは、決算や年末調整といった繁忙期を外して、事務所の閑散期(1〜3月・6〜9月)に打診する方がじっくり検討してもらいやすくなります。切り替え開始時期は、新年度・年度替わり・住民税切替(6月)・社会保険料改定(9月)などの区切りに合わせると、双方の負担が軽減されます。
顧問が対応不可・高額な場合の次の一手
顧問税理士から「給与計算までは受託していない」「受託は可能だが人数規模に対して割高」といった回答が返ってきた場合、次の選択肢は以下の3つに整理できます。
- 給与計算に対応している別の税理士事務所からセカンドオピニオン的に見積もりを取る
- 社労士事務所に依頼して社会保険手続きとセットで運用する
- 給与計算アウトソーシング会社の資料を2〜3社取り寄せて比較する
いずれの場合も、顧問税理士との関係を維持したまま他社と並行検討することは実務上一般的です。相場感を得たうえで顧問に条件交渉をするか、給与計算だけ別の事業者に切り出すか、判断材料が揃ってから決めるのが安全です。次節の「選び方フロー」も参考にしてください。
従業員数・自社状況別の依頼先の選び方フロー
ここまでの費用相場・業務範囲・年末調整の切り分け・顧問追加の考え方を踏まえ、従業員規模と自社の状況ごとに、どの依頼先が向くのかを整理します。

顧問税理士がいる場合の第一歩
すでに顧問税理士がいる場合の第一歩は、顧問に「給与計算もお願いできますか、月いくらになりますか」と確認することです。顧問との情報連携ルートに乗せられるため、事業者側の追加負担が最小で済み、年末調整の税務書類作成まで一本化できます。相場感を持って相談するために、前節「給与計算を外注する場合の費用相場」で示した規模別の目安と、給与計算アウトソーシング会社の料金表を先に見ておくと交渉しやすくなります。
数人〜10人程度で税理士に頼むケース
従業員数が数人〜10人程度で、社会保険手続きの複雑さがまだ小さい規模では、税理士に月次給与計算と年末調整を一本化するのが運用負担・情報連携ともに軽くなる形です。年末調整の税務書類作成が税理士の独占業務なので、期末に別事業者へ引き継ぐ手間が発生しない点も利点になります。就業規則や労務相談は当面自社で対応するか、必要になった時点で社労士に個別相談する形で回せます。
10〜30人で社労士・アウトソーシング会社を検討するケース
従業員数が10〜30人規模になると、算定基礎届・月額変更届・雇用保険手続きなど社会保険関連の業務量が増え、税理士単独では対応しきれない領域が広がります。この規模では、月次の給与計算と社会保険手続きを社労士にまとめて依頼し、年末調整の税務書類作成部分を税理士に分業する運用が有効です。
給与計算アウトソーシング会社を選ぶ場合は、提携先の社労士・税理士が独占業務を担う体制になっている事業者を選ぶと、実務上のワンストップ性を確保できます。
30人以上でアウトソーシング会社が有力になるケース
従業員数が30人を超え、給与計算の月次工数が事務所のキャパシティを圧迫し始める規模では、給与計算アウトソーシング会社が有力な選択肢になります。専用の給与計算システムと専任のオペレーションチームを持つため、従業員数の増減に応じて処理能力を柔軟に調整でき、月額費用も定額化しやすくなります。
給与計算アウトソーシング会社の候補と、規模拡大時の選び方については、次節以降で扱います。
給与計算を外注するときの実務ポイント
依頼先を決めた後、実際に依頼を開始する際に押さえておきたい実務ポイントを、必要書類・情報セキュリティ・依頼範囲・切り替えタイミングの4つに整理します。
事前に整える必要書類
依頼開始時に受託者から求められる基本書類は、就業規則・賃金規程・雇用契約書・従業員名簿・扶養控除等(異動)申告書・保険料控除申告書・住民税課税決定通知書・被保険者標準報酬決定通知書などです。給与計算ソフト利用時は直近の給与データのエクスポートも準備します。就業規則や賃金規程が未整備なら、依頼開始前に整備しておくと運用がスムーズです。
守秘義務契約(NDA)と情報セキュリティ確認
給与計算の外部委託は、従業員の氏名・住所・給与額・扶養親族・マイナンバーなどの個人データを外部に取り扱わせる行為にあたります。個人情報の保護に関する法律第25条は、個人データの取扱いの全部または一部を委託する場合、委託先に対する必要かつ適切な監督を行うことを個人情報取扱事業者に義務づけています。
(委託先の監督)
出典:個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第25条|e-Gov 法令検索
第二十五条 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、法第25条に関する監督の内容を、①適切な委託先の選定、②委託契約の締結、③委託先における個人データ取扱状況の把握の3ステップで整理しています。
実務では、依頼先の情報セキュリティ体制(アクセス権限管理・ログ保存・データ授受方法)を選定段階で確認し、守秘義務条項と安全管理措置を織り込んだ委託契約を締結したうえで、契約後も定期的に取扱状況を把握できる体制を整えます。
依頼範囲・納期・報酬の事前合意
依頼開始前に、対応範囲と納期・報酬を書面で合意しておくと、月次運用のトラブルを避けやすくなります。
具体的には、月次給与計算に含まれる作業項目(勤怠データの受領・支給控除の計算・給与明細発行・振込データ作成の範囲)、年末調整・賞与計算・住民税更新などの季節業務の扱い、月次締切から支給日までのスケジュール、月額料金と季節業務の追加料金、イレギュラー処理(中途入退社・出向・海外赴任など)の費用の扱いなどをあらかじめ定義します。
繁忙期・切り替えタイミング
切り替えの開始時期は、双方の繁忙期を避けるとスムーズです。年末調整(11〜1月)、決算前後(3月・9月)、住民税切替(6月)、社会保険料改定(9月)といった集中期にぶつけると、引き継ぎが手薄になりミスが起きやすくなります。前任者からの引き継ぎ期間として1〜2か月程度を確保し、初回月次は並行運用で結果を突き合わせる形にすると、切り替え後の異常検知がしやすくなります。
従業員規模が拡大したときの選択肢|給与計算アウトソーシング会社
従業員規模が拡大し、税理士や社労士のキャパシティを超えるようになったときには、給与計算アウトソーシング会社という第三の選択肢が現実的になります。ここでは、選ぶ理由と、給与計算アウトソーシング会社のスポット比較、および代表的な2サービスの個別紹介を整理します。
給与計算アウトソーシング会社を選ぶ理由
給与計算アウトソーシング会社を選ぶ理由は、専用の給与計算システムと専任オペレーションを組み合わせることで、従業員数の増減に応じた処理能力の調整と、月額費用の定額化を両立できる点にあります。税理士・社労士事務所と比べて、業務プロセスが標準化されているため、複数拠点・多雇用形態・変則的な勤務体系にも対応しやすい傾向があります。
年末調整や社会保険手続きなど独占業務が絡む部分は、多くの場合、提携先の税理士・社労士が担う体制なので、依頼窓口を一本化しつつ実務は資格者が扱う構成になります。
従業員数が数十人を超え、税理士事務所の月次工数を圧迫し始めた段階、あるいは複数拠点・海外赴任者・専門職の複雑な賃金体系を抱えるようになった段階で、比較検討の候補に入れる価値があります。
給与計算アウトソーシングサービスの比較
以下は、給与計算アウトソーシングサービスのうち、税理士・社労士との対比で候補になる代表的な2サービスの比較表です。
| サービス名 | Wheat Accounting | マネーフォワード おまかせ経理 |
|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社Wheat | 株式会社マネーフォワード (実務はグループ会社 株式会社キャシュモ) |
| 料金体系 | スモール 30,000円〜(年商数千万〜1億円・従業員1〜10人) スタンダード 40,000円〜(年商1〜10億円・従業員10〜30人) アドバンス 60,000円〜(年商10〜100億円・従業員30〜100人) | 業務量に応じた個別見積もり 公式提示例: 従業員5名で月10万円(税抜) |
| 給与計算の位置づけ | 経理アウトソーシングの一部として給与計算を代行 社会保険手続きは提携社労士、税務申告は提携税理士が担当 | 経理BPOの一部として給与計算を代行 決算申告等の税務業務は対象外(公認メンバー税理士を紹介) |
| 対象企業タイプ | 年商数千万〜100億円の中小企業 経理業務を仕組みから設計し直したい企業 | 中小企業(1〜数十名規模) マネーフォワード クラウドを活用してBPOで運用したい企業 |
| 月次決算納期 | 資料提出完了から10〜15営業日 | 最短5営業日で月次試算表を提供 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
また、以下の記事では給与計算アウトソーシングについて、選び方や機能などを詳細に解説しています。導入を検討される方は、ぜひこちらもご覧ください。
給与計算アウトソーシングおすすめ34選を比較|業務範囲・料金体系・規模別の選び方
毎月の給与計算や賞与計算、年末調整、社会保険の手続きに、特定の担当者が追われていないでしょうか。社会保険料率や税制は毎年のように改正され、その都度の確認作業まで含めると、経理や人事、総務の少人数体制では業務が属人化しやすくなります。担当者が…
給与計算アウトソーシングサービスの個別紹介
ここからは、上記の比較表で挙げた各サービスの特徴と、想定される導入企業を紹介します。
1. Wheat Accounting(株式会社Wheat)

株式会社Wheatが提供する、記帳・請求書発行・経費精算・給与計算・月次決算までを月次で代行する経理アウトソーシングサービスです。税務申告は連携税理士、社会保険・労働保険の代理申請は連携社労士が担う体制で、給与計算単体ではなく経理業務と一体で外注したい中小企業を主な対象としています。
月額料金は3プラン構成(スモール30,000円〜/スタンダード40,000円〜/アドバンス60,000円〜)で、対象規模の目安はスモールが年商数千万〜1億円・従業員1〜10人、スタンダードが年商1〜10億円・従業員10〜30人、アドバンスが年商10〜100億円・従業員30〜100人です。月次決算は資料提出完了から10〜15営業日で仕上げます。
既存の顧問税理士を維持したまま月次の経理・給与計算だけを切り出す構成が取れる点も特徴で、導入時は約1ヶ月のテスト運用期間で業務フローをすり合わせます。
顧問税理士を残したまま月次の経理・給与計算だけを外部に切り出す構成が成り立つ背景について、株式会社Wheatの佃誠吾氏は、税理士と経理代行の役割分担を次のように整理しています。

税務の専門家である税理士の先生方は、主に決算や税務申告を担われますが、日々の振込作業や請求書発行、細かな業務プロセスの構築などは、一般的に業務範囲外となります。当社は、いわば「企業の中の経理部門」として組織の内部に入り込み、実務を動かしていく立場です。税理士の先生が「外側」から会計・税務をチェックされるのに対し、私たちは「内側」から日々のオペレーションを支えるという役割分担になります。
2. マネーフォワード おまかせ経理(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウドを提供する株式会社マネーフォワードが2025年6月にラインナップへ追加した経理BPOサービスです。実務は同月にグループ入りした株式会社キャシュモが担い、記帳・請求書発行・支払・給与や賞与の計算・月次試算表の作成までを一括で受託します。
決算申告など税務業務はサービス対象外で、必要な場合はマネーフォワード公認メンバーの税理士を別途紹介する形をとります。料金は業務量に応じた個別見積もりで、公式の提示例として従業員5名規模で月10万円(税抜)が挙げられています。月次試算表は最短5営業日、無料相談から運用開始までは最短2ヶ月を目安として案内しています。
まとめ
税理士に給与計算を依頼することは違法にはならず、税理士法第2条第2項の付随業務として扱えます。年末調整に伴う源泉徴収票・給与支払報告書の作成は税理士の独占業務、社会保険・労働保険の手続きは社労士の独占業務なので、依頼先を選ぶ際はこの線引きを踏まえて、月次と季節業務・独占業務が絡む領域をどう分担するかを設計するのが実務上の要点になります。
すでに顧問税理士がいる場合の第一歩は、顧問に「給与計算もお願いできますか、月いくらになりますか」と確認することです。相場感を持って相談するには、給与計算アウトソーシング会社の料金表を先に見ておくと交渉しやすくなります。
まずは自社の顧問に月額を確認したうえで、顧問が対応不可・高額な場合や従業員数が数十人を超えて規模拡大局面に入った場合は、社労士や給与計算アウトソーシング会社の資料を2〜3社取り寄せ、比較検討を進めてください。
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給与計算の税理士依頼に関するよくある質問
Q. 税理士に給与計算を依頼するのは違法になりませんか?
A. 税理士に給与計算を依頼することは違法にはなりません。給与計算業務そのものには資格制限がなく、税理士は税理士法第2条第2項が定める「税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務」の一部として、顧問先の給与計算を月次で受託できます。
ただし、年末調整に伴う源泉徴収票・給与支払報告書の作成は税理士法第2条第1項第2号「税務書類の作成」にあたる税理士の独占業務、算定基礎届・雇用保険資格取得届などの社会保険手続きは社会保険労務士法第2条の1号業務にあたる社労士の独占業務です。税理士が付随の範囲を超えて社会保険手続き自体を業として担うと、社会保険労務士法施行令第2条による例外の射程を外れ、社労士法違反となる余地があります。
出典・参考資料(3件)
Q. 月次の給与計算を社労士に頼んだ場合、年末調整も社労士に任せられますか?
A. 社労士は年末調整のうち源泉徴収票・給与支払報告書などの税務書類の作成を業として行えないため、社労士単独で年末調整を完結させることはできません。これらの法定調書の作成は税理士法第2条第1項第2号「税務書類の作成」にあたり、税理士の独占業務です。
国税庁「令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」でも、源泉徴収票・給与支払報告書は税務官公署に提出する法定調書として位置づけられています。
実務上は、月次給与計算と社会保険手続きを社労士に、年末調整の税務書類作成を税理士に分けて依頼する分業パターンが取れます。従業員から集める扶養控除等(異動)申告書の受領・保管は給与の支払者としての事務で、税務書類の「作成」には該当しないため、社労士や自社の総務でも扱えます。
Q. 顧問税理士がいる場合、社労士も別途契約する必要はありますか?
A. 従業員数が数人〜10人程度で社会保険手続きの発生頻度が少ないうちは、顧問税理士に月次給与計算と年末調整まで一本化する形で運用でき、社労士の別途契約は必須ではありません。社会保険関係の手続きは自社総務で扱うか、算定基礎届や資格取得届などが発生した都度、社労士に個別相談する形で回せます。
一方、従業員数が10〜30人規模を超え、算定基礎届・月額変更届・雇用保険手続きの業務量が増える段階では、月次給与計算と社会保険手続きを社労士にまとめて依頼し、年末調整の税務書類作成を税理士に分業する運用が有効です。契約先を増やすかどうかは、社会保険関係の実務量が「税理士業務に付随」の範囲を超え、社労士の独占業務が反復的に発生するようになったかを目安に判断します。
Q. 給与計算を税理士や社労士にスポットで依頼できますか?
A. 給与計算は毎月継続する業務のため、月次顧問契約として受託するのが一般的で、単月だけのスポット依頼は受けていない事務所が大半です。給与体系の把握・給与計算ソフトの初期設定・従業員データの引き継ぎに一定の初期コストがかかるため、単月のみの受託は事務所側の採算に合わないためです。
ただし、年末調整のみ・賞与計算のみ・産休育休対応のみといった特定業務のスポット代行を受け付ける事務所や、給与計算アウトソーシング会社は存在します。月次は自社で回しつつ季節業務だけ外注したい場合は、スポット対応の可否と料金体系を個別に確認する形になります。
Q. 顧問税理士の顧問料に給与計算は含まれますか?
A. 顧問料には月次記帳指導・決算・法人税申告書の作成までを含めるのが一般的で、給与計算は付随業務として別料金に切り出す事務所が多く見られます。税理士報酬規程は2002年4月に廃止されており、顧問料の内訳や付随業務の扱いは事務所ごとの料金体系に委ねられているためです。
従業員数が数人程度なら顧問料に含めて対応する事務所もありますが、10人を超えるあたりからは「基本料金+従業員1人あたり単価」で別途見積もる形が一般的です。年末調整も1人あたり数千円程度の別料金として設定される例が多く、顧問への切り出し時は「月額いくらか」「年末調整のオプション料金がいくらか」の両方を確認しておくと、年間の総額で相場感を掴みやすくなります。
Q. 年末調整や住民税更新の繁忙期に給与計算の依頼先を切り替えても大丈夫ですか?
A. 年末調整(11〜1月)、住民税切替(6月)、社会保険料改定(9月)といった集中期に依頼先の切り替えを重ねると、引き継ぎが手薄になりミスが起きやすくなるため、繁忙期を避けた切り替えが基本です。事務所側も繁忙期は新規案件の受け入れ余力が下がるため、閑散期(1〜3月・6〜9月)に打診する方が丁寧な引き継ぎを組んでもらいやすくなります。
前任者からの引き継ぎ期間として1〜2か月程度を確保し、初回月次は並行運用で結果を突き合わせる形にすると、切り替え後の異常検知がしやすくなります。切り替え開始時期は、新年度・年度替わり・住民税切替の前月・社会保険料改定前など、業務の区切りに合わせて設計すると、双方の負担を軽減できます。
Q. 依頼先が資格違反にあたる業務を行った場合、依頼した事業者側も罰せられますか?
A. 税理士法第59条・社会保険労務士法第32条の2の罰則は、いずれも違反行為をした者(=無資格で業として受託した者)を対象としており、条文上、依頼した事業者側に対する直接の罰則は規定されていません。
無資格者が税理士業務を業として行えば税理士法第59条により2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、社労士業務を業として行えば社労士法第32条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。
ただし、給与計算は従業員の氏名・給与額・扶養親族・マイナンバーなどの個人データを外部に取り扱わせる委託にあたるため、個人情報保護法第25条により、事業者側は委託先の選定・監督義務を負います。
実務上は、契約前に「税理士登録番号」「社会保険労務士登録番号」の有無と、依頼する業務が受託者の資格範囲に収まるか(例:社労士に年末調整の税務書類作成を求めていないか、税理士に社会保険手続きを求めていないか)を確認すれば、両者の罰則リスクとレピュテーションリスクを避けられます。
出典・参考資料(3件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















