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年末調整を税理士に依頼する|費用相場と業務範囲、給与計算アウトソーシングとの使い分け

年末調整を税理士に依頼する|費用相場と業務範囲、給与計算アウトソーシングとの使い分けのサムネイル画像

毎年11〜12月の年末調整で、扶養控除や保険料控除の確認に追われ、法改正のチェックにも神経を使う。専任の税務担当者を置きにくい中小企業では、この負担を税理士に外注できないかを検討する場面が増えています。

本記事では、税理士に年末調整を代行してもらう場合の費用相場(人数別の実額目安と、実在する税理士事務所の料金表)、税理士がやる業務と自社に残る業務の切り分け、税理士・社労士・代行業者(BPO)で法令上どこまでを担えるか、依頼までの流れと税理士の選び方を整理します。あわせて、給与計算アウトソーシングや経理BPOなど、税理士以外の選択肢との使い分けまで解説します。

読み終えたときには、自社の従業員規模で税理士に頼んだ場合の金額感がつかめ、税理士がフィットするケースと給与計算アウトソーシングがフィットするケースを見分けたうえで、次の一歩(税理士事務所への見積もり依頼や、給与計算アウトソーシングの資料請求)に進める状態を目指します。

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年末調整を税理士に依頼するといくら?費用相場の内訳と人数別の目安

まず、税理士に年末調整を頼んだ場合の金額感を、相場の式と人数別の目安、そして実在する税理士事務所の料金表で確認します。単なるレンジではなく、自社の従業員数を代入して見積もれる形で示します。

費用相場は「基本料金+従業員1人あたり単価」で決まる

税理士に年末調整をスポットで依頼するときの費用は、「基本料金」と「従業員1人あたりの計算料金」の二層構造で組まれるのが一般的です。基本料金は事務所側の固定的な事務コスト(書類のセットアップ、法定調書の合計や税務署提出など)、1人あたり単価は従業員数に比例して増える計算・チェック作業に対応します。

この式は、後述する実在の税理士事務所の料金表(税理士法人YFPクレア、石川忠比古公認会計士事務所)で共通して確認できる構造で、業界メディアが提示する相場観(基本料金1万〜3万円、1人あたり1,000〜3,000円)とも整合します。

顧問税理士に依頼する場合は、月額の顧問料を支払っているぶん基本料金が抑えられる、あるいは顧問料に含まれるかたちで対応してもらえるため、単発依頼と比べて総額が下がるのが実務の相場感です。

従業員数別の目安(20人・50人・100人 × 顧問/単発)

複数の税理士事務所の公表料金と、業界解説の試算例をもとに、従業員規模別の目安を整理します。あくまで公表料金からの試算で、扶養家族数や書類不備の量、法定調書の提出範囲などにより変動するため、正確な金額は事務所への見積もりで確認してください。

従業員規模単発依頼(スポット)の目安レンジ顧問契約あり(目安)備考
20人約4〜10万円約2〜5万円石川会計は約4.2万円、YFPクレアは約6.5万円、YTK相場観で約9〜10万円と幅がある
50人約8〜13万円顧問料に組み込むケース多い石川会計・YFPクレアの規模別料金と1人単価から試算した幅
100人約14〜24万円顧問料+計算料金のみ石川会計は約14.3万円、YFPクレアは約23.5万円が理論値
101人以上別途見積もり別途見積もりYFPクレア・石川会計とも101名以上は個別見積もり

試算の考え方(それぞれ本文の実料金表を参照)

  • 石川会計=規模別基本料金+1人単価(20人: 13,200+1,430×20≒4.2万円/50人: 22,000+1,210×50≒8.3万円/100人: 33,000+1,100×100≒14.3万円)
  • YFPクレア=規模別基本料金+1人あたり2,000円〜(20人: 25,000+2,000×20≒6.5万円/50人: 30,000+2,000×50≒13.0万円/100人: 35,000+2,000×100≒23.5万円)
  • YTK=20名の相場観 約9〜10万円・顧問契約なら半額程度

※ 上記は2026年8月時点のYFPクレア・石川会計の公表料金と、YTK税理士事務所が示す相場観に基づく試算です。付随業務(給与支払報告書の市町村提出、法定調書合計表の作成など)は事務所によって別料金の場合があるため、下段の実料金表とオプション欄も併せて確認してください。

実在する税理士事務所の料金表を並べて比べる

相場の目安を、複数の税理士事務所の公表料金で裏付けます。ここに挙げるのは、規模別の料金を公式サイトで公開している事務所です。

税理士法人YFPクレア — 給与計算依頼あり/なしの2料金体系

YFPクレアは、給与計算をセットで依頼するかどうかで基本料金体系が分岐します。給与計算をセットで依頼する場合は基本料金が0円になり、1人あたり2,000円〜の計算料金だけになります。

【給与計算のご依頼あり】
基本料金:0円/回
計算料金:2,000円〜(従業員数1〜100名)
101名以上は別途見積もり

【給与計算のご依頼なし】
1〜10名:基本料金 20,000円/回 + 計算料金 2,000円〜
11〜30名:基本料金 25,000円/回 + 計算料金 2,000円〜
31〜50名:基本料金 30,000円/回 + 計算料金 2,000円〜
51〜100名:基本料金 35,000円/回 + 計算料金 2,000円〜

税理士法人YFPクレア「税理士の年末調整 代行サービス」https://www.yfpcrea.com/335/nemmatsu(2026年8月26日確認)

石川忠比古公認会計士事務所 — 規模が大きくなるほど1人単価が下がる逓減構造

石川会計は、規模が大きくなると1人あたり単価が下がる逓減型の料金表を公表しています。加えて、法定調書合計表・給与支払報告書などのオプションが1つずつ明示されており、「基本の年末調整代行」と「税務署・市町村への提出書類作成」の切り分けが読み取れます。

【年末調整代行 基本料金】
1名〜5名:8,800円/回、1,650円/人
6名〜10名:11,000円/回、1,540円/人
11名〜20名:13,200円/回、1,430円/人
21名〜30名:16,500円/回、1,320円/人
31名〜50名:22,000円/回、1,210円/人
51名〜100名:33,000円/回、1,100円/人
101名〜:別途見積り

【オプションサービス】
法定調書合計表作成:5,500円/枚
支払調書作成(報酬・料金・不動産):1,650円/枚
給与支払報告書(総括表)の作成、市町村への提出:330円/1市町村
償却資産申告書の作成・提出(増減なし):5,500円/1市町村
償却資産申告書の作成・提出(増減有り):増減なし料金+550円/1増減

石川忠比古公認会計士事務所「年末調整代行サポート」https://ishikawa-ac.jp/adjustment-support(2026年8月26日確認)

YTK税理士事務所 — 「20名で約9〜10万円、顧問契約なら半額程度」

YTK税理士事務所は、20名規模の年末調整代行の相場観を実額と顧問契約時の削減水準まで具体的に示しています。個別料金表ではなく実務家目線の相場観として引用します。

年末調整を税理士にスポット依頼(単発依頼)した場合、従業員数にもよりますが、約20名ほどであれば約9〜10万円ほどが相場であると考えられます。顧問契約を結べば、月額の顧問料がかかりますが(顧問料は事業規模によります)、年末調整も半額程度で対応してくれると考えられます。

YTK税理士事務所「年末調整は税理士に代行依頼するべき?費用やメリットを解説」https://ytk-tax.com/column/kaikei/nencho.html(2026年8月26日確認)

税理士に頼める業務と自社に残る業務|「税理士がやる/自社に残る/別料金」の対比

次に、税理士に依頼したときに自社に残る作業を明らかにします。「頼んだのに工数が思ったほど減らない」という失敗を避けるためには、書類配布・従業員からの問い合わせ対応など、税理士側では受けにくい工程を先に把握しておく必要があります。

年末調整の業務を工程で分解する

年末調整は、国税庁「年末調整のしかた」の章立てにも沿って、大きく「事前準備」「年末調整計算」「法定調書・市町村提出」の3段階で進みます。それぞれをさらに工程で分けると、次のような業務項目に分解できます。

  • 扶養控除等(異動)申告書・保険料控除申告書・住宅ローン控除申告書の配布
  • 従業員からの申告書・添付書類の回収と、記入不備・添付漏れへの問い合わせ対応
  • 申告内容のチェックとデータ入力(給与ソフト・自作台帳への転記を含む)
  • 年税額の計算・過不足額の精算(還付/追加徴収)
  • 源泉徴収票の作成・従業員への交付
  • 税務署への法定調書合計表・源泉徴収票(該当者のみ)の提出
  • 市町村への給与支払報告書(総括表・個人別明細書)の提出

これらの各工程で、税理士がどこまでを引き受けるか、自社に残る作業はどれか、別料金のオプションになるのはどれかを、次の対比表で確認します。

「税理士がやる/自社に残る/別料金」の対比表

年末調整代行として税理士が引き受ける中心業務は「計算」と「税務署提出書類の作成」であり、書類配布や従業員からの問い合わせ対応は自社に残る場合が多く、市町村向けの給与支払報告書などは別料金のオプションとして提示されるのが一般的です。以下は、公表料金・作業フローで実務の切り分けを開示している税理士法人YFPクレア、石川忠比古公認会計士事務所の記述をもとに整理した対比です。

業務項目税理士がやる自社に残る別料金オプション
申告書・案内書類の配布○(従業員に直接配布)
従業員からの記入不備・添付漏れへの問い合わせ対応○(1次窓口は自社が担うのが一般的)△(一部の代行事業者は”問い合わせ対応まで代行”を用意)
回収した申告書のチェックと不備連絡○(税理士側で確認)△(不備の再確認・再提出は自社経由)
申告内容のデータ入力・給与ソフトへの登録○(税理士側で入力)△(給与ソフトが特殊な場合は個別調整)
年税額の計算・過不足額の精算(還付/追加徴収)◎(税理士の中心業務)
源泉徴収票の作成◎(税理士の中心業務)
源泉徴収票の従業員への交付○(自社が配布)△(電子交付システムへの流し込みを別料金で対応する事務所あり)
法定調書合計表の作成・税務署提出◎(税理士の中心業務)○(事務所によっては1枚単位の別料金=石川会計 5,500円/枚)
給与支払報告書(総括表・個人別明細書)の市町村提出△(対応する事務所もある)○(多くは市町村数単位の別料金=石川会計 330円/1市町村)

「税理士がやる」に◎が付く工程が代行の中心的な価値、○や△が付く工程は事務所・料金プランによって扱いが変わる部分です。実在事務所の作業フローを一例として引くと、税理士法人YFPクレアは以下のように「弊社作業」と「お客様作業」を明示しています。

[弊社作業]年末調整関連書類をお客様に送ります
【お客様作業】年末調整対象者に年末調整関連書類を配布
【お客様作業】対象者から年末調整関連書類を回収&YFPクレアに提出
[弊社作業]書類を確認後、不備がある場合はお伝えします
【お客様作業】不備の確認をして頂き再提出
[弊社作業]年末調整計算、計算後に過不足税額(還付・徴収)をPDFにて提出
[弊社作業]源泉徴収票の発行&給与支払い報告書の電子申告

税理士法人YFPクレア「年末調整代行サービスの作業の流れ」https://www.yfpcrea.com/335/nemmatsu(2026年8月26日確認)

書類の配布・回収は【お客様作業】として自社側に残るのが実務の通例です。「頼めばすべてがなくなる」わけではないため、この境目を把握してから見積もりを比べると、自社の削減効果を過剰に見積もらずに済みます。

税理士 vs 社労士 vs 代行業者(BPO)の使い分け

年末調整の外注先は、税理士だけではありません。社会保険労務士(社労士)や、給与計算・年末調整を専門に扱う代行事業者(BPO)にも依頼できる部分があります。ここでは「誰が法的にどこまでを担えるか」を条文レベルで確認したうえで、実務上どのように役割を分担できるかを整理します。

税理士の独占業務(税理士法2条・52条を条番号で示す)

税理士法は、税務に関する3つの業務を税理士の独占業務として定めています。日本税理士会連合会は、これらを読者向けに次のように説明しています。

【税務代理】あなたを代理して、確定申告、青色申告の承認申請、税務調査の立会い、税務署の更正・決定に不服がある場合の申立てなどを行います。
【税務書類の作成】あなたに代わって、確定申告書、相続税申告書、青色申告承認申請書、その他税務署などに提出する書類を作成します。
【税務相談】あなたが税金のことで困ったとき、わからないとき、知りたいとき、ご相談に応じます。

日本税理士会連合会「税理士の仕事について紹介します」https://www.nichizeiren.or.jp/cpta/about/(2026年8月26日確認)

この3類型は、税理士法第2条第1項の各号にそれぞれ規定されています。

(税理士の業務)
第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(略)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 税務代理(税務官公署に対する租税に関する法令(略)に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(略)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(略)を作成することをいう。)
三 税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(略)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)

税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第二条/e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-At_2

この独占業務を、税理士・税理士法人以外の者が業として行うことは、税理士法第52条で明確に禁止されています。

(税理士業務の制限)
第五十二条 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。

税理士法 第五十二条/e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-At_52

年末調整における「年税額の計算」「源泉徴収票・法定調書合計表など税務署提出書類の作成」は、この2条第1項第2号(税務書類の作成)に該当します。したがって、これらの業務を業として代行できるのは税理士・税理士法人だけです。実務界ではこの解釈が、平成14年6月6日の全国社会保険労務士会連合会・日本税理士会連合会の「両会確認事項」で明文化されています。

なお、年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。

全国社会保険労務士会連合会・日本税理士会連合会「税理士又は税理士法人が付随業務として行う社会保険労務士業務の範囲」(平成14年6月6日)/逐語引用として 税理士法人YFPクレア公認会計士古川事務所など複数の事務所サイトに掲載

社労士が担える業務範囲(社労士法2条)

一方、社会保険労務士は「労働社会保険諸法令」に基づく業務を独占業務としています。年末調整の実務では、社会保険手続き(健康保険料・厚生年金保険料の月額変更届など)や労働保険手続きが該当します。

(社会保険労務士の業務)
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(略)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
一の三 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(略)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(略)について、代理すること。
二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(略)を作成すること。
三 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること(略)。

社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)第二条/e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000089#Mp-At_2

年末調整に含まれる「所得税額の計算」「源泉徴収票・法定調書の作成」は「労働社会保険諸法令」ではなく税務に関する業務のため、社労士単独では業として引き受けられません(社労士法第27条による業務制限)。ただし、税理士事務所と提携する社労士法人が、年末調整計算部分を提携税理士に任せる形で「年末調整代行」を掲げているケースは実在します。

代行業者・BPOが担える業務範囲(税務代理を含まない実務)

年末調整代行を掲げるBPO事業者・給与計算アウトソーシング事業者の多くは、税理士事務所と提携するか、税務書類の作成部分を明確に切り離して業務範囲を設定しています。具体的には、次のような工程を「税務代理を含まない実務」として担うのが一般的です。

  • 申告書・案内書類の作成・従業員への配布と回収
  • 従業員からの記入方法・添付書類に関する問い合わせ対応(1次窓口)
  • 回収した申告書のチェック・不備の督促
  • 申告内容の給与ソフトへの入力・データ化
  • 年末調整計算の下準備(税務書類の最終作成は提携税理士が行う場合が多い)

したがって、事務量の大きい書類配布・回収・問い合わせ対応・データ入力の部分をBPOに任せ、年税額の計算・法定調書の作成・税務署提出を税理士に任せる合わせ技が現実的な選択肢になります。次項の3者比較表で、対応可能業務と料金相場、向いている会社規模を整理します。

3者の対応可能業務・料金相場・向いている会社規模を1枚で比べる

比較項目税理士社労士代行業者・BPO
年税額の計算◎(独占業務)×(社労士単独では不可)△(提携税理士経由なら可能)
源泉徴収票・法定調書の作成◎(独占業務)×△(提携税理士経由なら可能)
税務署への提出×△(提携税理士経由なら可能)
申告書の配布・回収・問い合わせ対応△(一部の事務所は対応)◎(給与計算とセットで対応する事務所が多い)◎(多くのBPOで中心業務)
社会保険手続き(月額変更届など)△(提携社労士経由)◎(独占業務)△(提携社労士経由)
料金相場(20人規模)単発 約4〜10万円/顧問 半額程度給与計算パックに含めるのが一般的1人あたり1,000〜3,000円+基本料金
向いている会社規模顧問契約中の中小〜中堅/決算と一貫で任せたい労務・社保手続きと合わせて任せたい50人以上/繁忙期の事務量を抜本的に外部化したい

税理士に年末調整を依頼するメリット・デメリット

ここまでで費用と法的な役割分担が整理できたので、税理士に依頼する場合のメリットとデメリットを実務目線で整理します。とくにデメリット側は競合記事で薄く扱われがちな「スポットは受けてもらえないことがある」「自社の給与ソフトとの相性」「個人情報の外部委託リスク」まで踏み込みます。

税理士に依頼するメリット(正確性・法改正対応・繁忙期の負担軽減)

税理士に年末調整を依頼する主なメリットは、次の3点に集約されます。

  1. 計算・書類作成の正確性:税理士は税務書類の作成を独占業務とする専門家です(税理士法第2条第1項第2号)。扶養控除等申告書の記入不備の検出、控除計算の適用漏れなど、社内対応で起きがちなミスを避けやすくなります。
  2. 法改正への追随:所得税法・租税特別措置法は毎年改正され、扶養控除・保険料控除・住宅ローン控除の要件も更新されます。税理士は業務として最新の改正内容を把握しており、担当者が個別に情報収集する負担を抑えられます。
  3. 繁忙期の担当者負担の軽減:11〜12月に集中する書類チェック・計算・提出を外部化することで、担当者が自分の本業に集中できます。担当者が退職した場合の属人化リスクの分散にもつながります。

これらは複数の税理士事務所・HRベンダーの解説記事で共通して挙げられているメリットで、実務上も広く合意されている論点です。

デメリットと依頼前の落とし穴(顧問契約でないと割高・自社の給与ソフトとの相性・スポット依頼を断られる現実・個人情報リスク)

一方で、依頼前に把握しておくべきデメリットや落とし穴もあります。ここは競合記事で語られにくい部分なので、実務で見落としやすい4点を掘り下げます。

1. 顧問契約でないと割高になりやすい

単発(スポット)依頼は基本料金がかさむため、顧問契約中の場合と比べて総額が高くなります。20人規模で見ると単発では約4〜10万円、顧問契約では半額程度に収まる可能性があります。

年末調整だけを外注したい場合は、他の税理士業務(決算・申告など)を今後どこに委託するかを含めて、顧問契約の是非も検討したほうが経済的です。

2. 自社の給与ソフトとの相性

税理士事務所によっては、自社が使っている給与ソフト(給与奉行、マネーフォワード クラウド給与、freee人事労務など)との連携経験が限定される場合があります。データ入力を税理士側に任せるつもりでも、ソフトが変わると入力形式のすり合わせに時間がかかり、初年度は逆に工数が増えることがあります。依頼前の見積もり時に「使用中の給与ソフトへの入力・出力に対応できるか」を必ず確認しておくと安全です。

3. スポット依頼を断られる現実

年末調整は11〜12月に業務が集中するため、多くの税理士事務所は繁忙期のスポット受注枠が限られており、既に締切っているケースがあります。例えば税理士法人YFPクレアは、公式サイトで単発依頼の受付終了を告知しています。

今年の年末調整の単発受付は終了いたしました。ご覧いただいたにもかかわらず、お力になれず申し訳ございません。なお、税務顧問契約をいただいているお客様につきましては、年末調整を含むサポートを引き続き承っております。

税理士法人YFPクレア「税理士の年末調整 代行サービス」(2026年8月26日確認)https://www.yfpcrea.com/335/nemmatsu

スポットで探す場合は、9月頃までに複数の税理士事務所に打診して枠を確保する動きが現実的です。11月に入ってから探し始めると、既に受付が終わっている事務所が多く、選択肢が急に狭まります。

4. 個人情報の外部委託リスクと監督義務

年末調整の書類には、従業員のマイナンバーや扶養家族の氏名・生年月日・所得情報など、個人情報保護法上の「個人データ」に該当する情報が多く含まれます。税理士に依頼することは同法上の「委託」に該当し、依頼側の会社には委託先を監督する法律上の義務があります。

(委託先の監督)
第二十五条 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第二十五条/e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057#Mp-At_25

個人情報保護委員会の通則ガイドライン §3-4-4「委託先の監督(法第25条関係)」は、この監督義務が①適切な委託先の選定/②委託契約の締結/③委託先における個人データ取扱状況の把握の3要素で構成されると解説しています。

この監督義務は税理士に個人データを引き渡した後も継続して負う責任で、「税理士に渡せば終わり」ではありません。委託契約書に安全管理措置(同法第23条)の条項を含め、定期的に取扱状況を確認できる仕組みを整えることが実務上求められます。

※ 税理士に個人データを引き渡す行為は個人情報保護法上の「委託」に該当し、同法第27条第5項第1号により委託先は「第三者」に該当しないため、第三者提供の制限(第27条本則)の適用は受けません。適用される主な義務は第25条(委託先の監督)と第23条(安全管理措置)です。

税理士に年末調整を依頼するまでの流れ|税理士がやる/自社がやるの役割分担付き

実際に税理士に年末調整を依頼する場合の流れを、税理士がやる工程と自社がやる工程の対比で整理します。国税庁「年末調整のしかた」の記載順序(対象者の確認 → 各種控除額の確認 → 年税額の計算 → 過不足額の精算 → 税額の納付)に沿った流れです。

ステップ税理士がやる自社がやる時期の目安
1. 依頼先の選定・見積もり取得複数事務所に打診・見積もり比較9〜10月
2. 業務範囲・スケジュールのすり合わせ業務範囲の提案・作業フロー提示自社側の対応範囲(配布・回収・問い合わせ)の合意10月
3. 案内書類・申告書のセット書類テンプレートの送付従業員への配布10月末〜11月上旬
4. 申告書の回収・問い合わせ対応従業員からの1次回収・記入相談への回答11月中旬
5. 書類提出・不備確認受領・チェック・不備連絡不備者への再提出依頼11月下旬
6. 年税額の計算・過不足精算年税額計算・還付/追加徴収額の算定・報告12月
7. 源泉徴収票の交付・法定調書の提出源泉徴収票作成・税務署提出/給与支払報告書の電子申告(対応事務所のみ)従業員への源泉徴収票配布12月〜翌年1月

スポット依頼で税理士を探す場合は、ステップ1の打診を9月頃までに済ませておくと、繁忙期による受付終了に遭遇しにくくなります。

顧問税理士がいない場合の探し方

すでに顧問税理士がいる場合は、まずその税理士に年末調整の対応可否と追加料金を確認するのが最短ルートです。顧問がいない場合は、次の3つの経路から複数の候補にあたるのが一般的です。

  • 税理士紹介サービス:規模・業種・予算を伝えると、条件に合う税理士事務所を紹介してもらえる仕組みです。仲介手数料は基本無料で、複数事務所からの見積もりを比較できます。代表例として弥生の税理士紹介、税理士ドットコム、ミツモアなどがあります。
  • 地元の税理士事務所への直接問い合わせ:日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」(https://www.zeirishikensaku.jp/)で、都道府県・地域・得意分野で絞り込んで問い合わせる方法です。
  • 会計ソフトベンダー経由:使用中の会計・給与ソフトのベンダーが提携している税理士事務所を紹介するサービス(弥生・freeeなど)を利用すると、ソフトとの相性を最初から確保できます。

いずれの経路でも、繁忙期の受付終了を避けるために、最低2〜3事務所に並行して打診しておくのが安全です。

年末調整を依頼する税理士の選び方

複数の候補が集まったら、感覚評価ではなく実務でどう効くかの観点から比較します。以下は、見積もり・商談時に必ず確認したいチェック項目です。

顧問契約の有無と料金差

すでに触れたとおり、顧問契約中と単発依頼では総額が大きく変わります。年末調整だけを外注したいのか、決算・申告や日常の税務相談も含めて任せたいのかを最初に整理し、複数プラン(顧問契約時の年末調整料金/単発料金)で比較すると判断が付きやすくなります。

得意分野・業種経験

税理士事務所ごとに、得意な業種・企業規模があります。飲食・IT・不動産など特定業種の顧問経験が多い事務所は、業種特有の控除項目や従業員構成(アルバイト比率が高いなど)への対応もスムーズです。自社の業種・規模と近い顧問先を持つ事務所を選ぶと、初年度の説明コストが下がります。

料金体系の透明性

公式サイトで基本料金・1人あたり単価・オプション料金の内訳を公開している事務所は、後から想定外の追加請求が発生しにくく、社内の稟議も通しやすくなります。YFPクレアや石川会計のように規模別料金表・オプション料金を明示している事務所を1つの基準として、他事務所の見積もりを比較すると、料金体系の妥当性を確認できます。

繁忙期のスポット対応力

スポット依頼の受付をいつまでで締め切るか、対応可能人数の上限があるかを事前に確認します。「単発は受けていない(顧問契約前提)」の事務所もあるため、要件を伝える段階で受注可否を明確にしておくと、11月以降の急ぎの調整を避けられます。

セキュリティ体制(Pマーク・ISO27001・NDA・マイナンバー管理)

年末調整書類にはマイナンバー・扶養家族情報が含まれるため、事務所側の情報セキュリティ体制は必須の確認項目です。プライバシーマーク(Pマーク)・ISMS(ISO/IEC 27001)認証の有無、NDA(秘密保持契約)締結の条件、マイナンバーの受渡・保管方法(郵送/専用ポータル/暗号化)を必ず確認します。

個人情報保護法第25条の「委託先の監督」義務を果たすためにも、これらの体制を選定段階で押さえておく必要があります。

DX対応(クラウド給与連携/書類授受のオンライン化)

クラウド給与ソフト(マネーフォワード クラウド給与、freee人事労務、SmartHRなど)との連携経験がある事務所は、書類授受をオンラインで完結できるため、郵送・持参の手間が減り、担当者の工数削減効果が大きくなります。オンライン年末調整(従業員がスマートフォン・PCから入力できる仕組み)に対応しているかも合わせて確認すると、従業員側の記入負担も軽減できます。

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税理士以外の選択肢との使い分け|給与計算アウトソーシング・社労士・年末調整専門代行

ここまでの費用・業務範囲・法令上の役割分担を踏まえると、年末調整の外注先は税理士だけではないことが分かります。自社の課題によっては、給与計算アウトソーシング・社労士・年末調整専門代行のほうがフィットするケースもあります。それぞれ、どんな会社に向くかを整理します。

税理士がフィットするケース(決算・申告と一貫で任せたい/税務相談も必要)

すでに顧問税理士がいる、あるいは決算・申告も含めて税務全般を1つの事務所に任せたい場合は、税理士に年末調整も依頼するのが最も効率的です。年税額の計算・法定調書の作成・税務署提出はいずれも税理士の独占業務のため、切れ目のない対応を受けられます。税務調査への対応や、日常の税務相談まで含めた顧問関係を築きたい会社に向きます。

給与計算アウトソーシング・経理BPOがフィットするケース(毎月の給与計算とセットで年末調整も外に出したい/属人化・法改正対応の負担を通年で軽減したい)

毎月の給与計算・社会保険料の算定・源泉徴収税の納付までを含めて、通年で外部に任せたい場合は、給与計算アウトソーシングや経理BPOがフィットします。年末調整はこれらのサービスの標準対応範囲に含まれるケースが多く、書類配布・回収・問い合わせ対応まで代行してもらえるBPO事業者もあります。担当者の属人化を根本から解消したい、法改正への追随を通年で外部化したい会社に向きます。

年税額の計算や税務署提出書類の作成は税理士の独占業務のため、給与計算アウトソーシング事業者は提携税理士と組む形で年末調整を含めているのが実務です。この場合、依頼側は事業者1社と契約するだけで、税理士との個別契約は不要になるケースが多くなります。

給与計算アウトソーシングの候補を業務範囲・料金体系・対応規模の観点で比較したい場合は、以下の記事で34サービスをタイプ別に整理しています。年末調整を含む委託範囲や、既存の給与ソフトを使い続けられるかまで比較の観点を揃えています。

社労士がフィットするケース(労働・社会保険手続きと一緒に任せたい)

労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届、月額変更届など、労働・社会保険手続きに大きな事務負担があり、年末調整もそれらと一緒に任せたい場合は、社労士事務所が候補になります。年末調整の税務部分は社労士単独では受けられないため、税理士と提携している社労士事務所を選ぶ、あるいは税務部分は税理士に別途依頼する分業構成になります。

年末調整専門代行がフィットするケース(繁忙期だけスポットで大量処理を任せたい)

従業員が100人以上いて、11〜12月の書類配布・回収・問い合わせ対応が繁忙期の大きな負担になっている会社では、年末調整専門のBPO事業者にスポットで委託する選択肢があります。年末調整の事務量をピンポイントで外部化することで、社内担当者は年税額の確認や他業務に集中できます。オフィスステーション年末調整BPO、エコミック、StepBaseなどが該当します。

年末調整も任せられる給与計算アウトソーシング・経理BPO

「毎月の給与計算とセットで年末調整も通年で外に出したい」場合の選択肢として、経理BPO・給与計算アウトソーシングの中から税務業務の扱い方が対照的な3サービスを紹介します。

Wheat Accounting・Tenbookは年末調整を代行業務に含む経理BPO、マネーフォワード おまかせ経理は税務業務そのものは対象外とし提携税理士を紹介する建て付けです。いずれの型が自社に合うかを比較表と個別紹介で確認してください。

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サービス名Wheat AccountingTenbook(テンブック)マネーフォワード おまかせ経理
年末調整対応要問い合わせ(税理士事務所併設の経理代行)税務部分は公認メンバー税理士を紹介
給与計算対応併設ソフト「10book」で対応
対応規模従業員1〜100名
(3プラン制)
中小企業
(売上15億円以下が目安)
中小企業
(従業員1〜50名の導入事例)
料金体系月額30,000円〜(スモール)
40,000円〜(スタンダード)
60,000円〜(アドバンス)
月額50,000円〜
(要見積もり)
個別見積もり
(例: 従業員5名で月10万円〜・税抜)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約

※2026年8月時点。掲載サービスの一部を対象に、各サービスの公式情報から作成

Wheat Accounting(株式会社Wheat)

Wheat Accountingのウェブサイト

Wheat Accountingは、株式会社Wheatが提供する経理アウトソーシングサービスです。毎月の記帳・請求管理・給与計算に加え、年末調整など特定月の業務量増加にも対応できることを特徴として掲げています。

代表インタビューが示す「税理士は外側から会社を見る立場、経理代行は内側で日々の数字を回す立場」という整理どおり、税務代理そのものは提携税理士に任せつつ、事務量の大きい経理・給与計算・年末調整の実務を通年で担う設計です。中小企業の担当者退職リスクや、繁忙期の業務量増加に悩む会社にフィットします。

この役割分担については、代表の佃氏がインタビューで次のように語っています。

佃誠吾氏
株式会社Wheat 代表取締役
佃誠吾氏
独自インタビューより

税務の専門家である税理士の先生方は、主に決算や税務申告を担われますが、日々の振込作業や請求書発行、細かな業務プロセスの構築などは、一般的に業務範囲外となります。

当社は、いわば「企業の中の経理部門」として組織の内部に入り込み、実務を動かしていく立場です。税理士の先生が「外側」から会計・税務をチェックされるのに対し、私たちは「内側」から日々のオペレーションを支えるという役割分担になります。

なお、当社と税理士の先生は競合ではなく、むしろ強力なパートナー関係にあります。既存の先生を変更する必要はなく、多くの場合、密に連携しながらお客様を支援させていただいています。

Tenbook(テンブック)(シンアカウンティングサービス株式会社)

Tenbookのウェブサイト

Tenbookは、シンアカウンティングサービス株式会社(2012年設立)が運営する経理代行サービスです。代表が税理士のため、給与計算・記帳・決算・税務申告までを1つの窓口で一貫して任せられるのが特徴で、年末調整も税理士事務所併設の経理代行として対応可能なケースが多く、詳細は要問い合わせです。

「決算・申告まで含めて年末調整もまとめて外に出したい」「税理士との別契約を増やしたくない」といったニーズを持つ中小企業に向く構成です。

マネーフォワード おまかせ経理(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード おまかせ経理のウェブサイト

マネーフォワード おまかせ経理は、株式会社マネーフォワードが提供する経理BPO(経理アウトソーシング)サービスで、実際の業務は同グループの株式会社キャシュモが担います。毎月の記帳・請求・支払・給与計算・月次試算表作成に加え、マネーフォワード クラウド会計・給与などの導入支援・財務コンサルまでを提供する範囲です。

税務業務そのものは対象外とし、必要に応じて連携先の税理士を紹介する建て付けが公式に明示されているため、税理士がやる範囲と経理BPOが担える範囲の切り分けが明確な選択肢です。マネーフォワード クラウドを既に使っている、またはこれから統合的に導入したい会社に向きます。

まとめ|税理士に依頼するかを判断するための3つの軸

年末調整を税理士に代行してもらうかどうかは、次の3つの軸で判断できます。

  1. 費用対効果:自社の従業員数を基本料金+1人単価に当てはめて総額を試算し、担当者が年末調整に費やしている時間コストと比較する。20人規模の単発依頼は事務所により約4〜10万円と幅があるので、複数事務所の見積もりで自社の実額を確定します。
  2. 業務範囲:書類配布・従業員問い合わせ対応は自社に残ることが多いため、「税理士がやる/自社に残る」の切り分けを見積もり段階で確定する。事務量の多い工程を外部化したいなら、給与計算アウトソーシング・経理BPOも並行して比較検討する価値があります。
  3. 継続関係:年末調整だけを毎年スポット依頼するのは繁忙期の受付難と割高感が課題になるため、決算・申告や日常の税務相談も含めた顧問契約か、給与計算アウトソーシングでの通年委託かを検討する。

税理士に頼む場合は9月頃までに、税理士紹介サービス(弥生の税理士紹介・税理士ドットコム・ミツモアなど)や日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで複数事務所へ打診するのが実務の目安です。給与計算アウトソーシング・経理BPOの選択肢も並行して比較したい場合は、下記のカタログから対象サービスの資料をまとめて取得できます。

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よくある質問(FAQ)

Q. 年末調整の税理士代行とは何ですか?

A. 年末調整の税理士代行とは、税理士(または税理士法人)が事業者に代わって年末調整の年税額計算と源泉徴収票・法定調書などの税務書類の作成・提出を行うサービスです。これらの業務は税理士法第2条第1項第2号の「税務書類の作成」に該当し、税理士・税理士法人以外の者が業として行うことは同法第52条で禁じられています。

社労士事務所や代行業者が「年末調整代行」を掲げる場合は、税務書類の作成部分を提携税理士に任せる建て付けにするのが実務の通例です。

ただし、書類配布・回収や従業員からの記入相談の1次対応は多くの事務所で自社側に残るため、「代行を頼めば年末調整の作業がすべてなくなる」わけではありません(本文の「税理士がやる/自社に残る/別料金」対比表を参照)。

Q. 税理士1事務所には従業員何人までの年末調整を頼めますか?

A. 税理士1事務所への発注可能人数に法令上の上限はありませんが、規模別料金表を公開している事務所の多くは100名までを段階料金の対象とし、101名以上は個別見積もりとしています。本文で引用した税理士法人YFPクレアと石川忠比古公認会計士事務所はいずれも100名までを規模別料金で提示し、「101名以上は別途見積り」の取り扱いを共通で明示しています。

100名を超える規模で事務量を根本的に外部化したい場合は、年末調整専門のBPO事業者や給与計算アウトソーシングとの併用(税理士は税務書類作成、BPOは書類配布・回収・問い合わせ対応)が現実的な選択肢になります。

Q. 決算期と年末調整の時期が重なる税理士事務所には依頼を断られることがありますか?

A. 12月決算法人を多く抱える税理士事務所や、確定申告期(2〜3月)と地続きで動く事務所では、11〜12月の年末調整スポット枠が絞られることがあります。日本の法人は3月決算が最も多く、その申告期限は5月末のため、多くの税理士事務所では年末調整と法人決算のピークが直接重なりません。

ただし顧問先の決算期構成によっては繁忙期が重複し、新規スポットを受ける余力がなくなるケースは実在します。見積もり依頼の段階で「11〜12月に貴事務所の他業務ピークと重なる予定があるか」「うちの規模の年末調整を最後まで完了できるスケジュールか」を確認しておくと、締切間際のトラブルを避けられます。

Q. 年末調整だけを顧問契約なしのスポットで税理士に頼めますか?

A. スポット(単発)依頼を受け付けている税理士事務所はありますが、11〜12月の繁忙期は既に受付を締め切っている事務所が多く、9〜10月までに打診を終えるのが実務上の目安です。例えば税理士法人YFPクレアは公式サイトで「今年の年末調整の単発受付は終了いたしました」と告知しており(2026年8月26日確認)、スポット枠は顧問契約より優先度が下がるのが実務の通例です。

11月に入ってから探し始めると選択肢が急に狭まるため、単発依頼を検討する場合は、夏〜初秋のうちに最低2〜3事務所へ並行して打診しておく必要があります。

Q. 従業員のマイナンバーの取得・保管まで税理士事務所に任せられますか?

A. 税理士事務所への委託は個人情報保護法上の「委託」に該当するため取得・保管まで任せる契約自体は可能ですが、依頼側の会社は同法第25条により委託先を監督する義務を負い続けます。個人情報保護委員会の通則ガイドライン §3-4-4は、委託先の監督義務が①適切な委託先の選定、②委託契約の締結、③委託先における個人データ取扱状況の把握、の3要素で構成されると整理しています。

実務上は、Pマーク・ISMS認証の有無、マイナンバーの受渡方法(郵送/専用ポータル/暗号化ファイル)、保管期間と廃棄手順を契約段階で明文化することが求められます。「税理士に渡せば依頼側の責任は終わり」ではない点は、稟議段階で必ず押さえておいてください。

Q. 現在の顧問税理士とは別の税理士に、年末調整だけをセカンド依頼できますか?

A. 税理士法上、複数の税理士に業務を分けて依頼することに制約はなく、顧問税理士とは別の税理士に年末調整だけをスポット依頼することは可能です。ただし実務上は、給与データや扶養情報が二拠点で管理される、給与ソフトからのデータ受渡ルートが2つに増える、税務調査時の対応窓口や資料共有ルールを別途整理する必要があるといったデメリットが発生します。

顧問税理士が年末調整に対応可能であればそちらに一本化するのが最も効率的で、顧問先が対応しない・料金差が大きすぎるなどの理由がある場合の代替策としてセカンド依頼を検討するのが、実務的な判断順序です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
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